◯山中弁護士への事件のご依頼・ご相談は「交通事故のお問い合わせ」から可能です。
第1 この記事の対象と結論
1 大腿骨顆部・顆上骨折とは何か
大腿骨顆部骨折及び大腿骨顆上骨折は,いずれも膝に近い大腿骨遠位部の骨折である。顆部骨折は膝関節面に及ぶことがあり,顆上骨折は主として関節面の上に生じるが,実際の診断名は医療機関によって「大腿骨遠位端骨折」「顆間骨折」「通顆骨折」等と表記される。したがって,傷病名だけで関節内骨折か,粉砕を伴うか,骨幹端部まで及ぶかを決めてはならない。
この骨折は,乗用車の前面衝突で膝が車内のインストルメントパネルに衝突した場合のほか,バイク又は自転車から投げ出された場合,歩行者の大腿部又は膝周囲へ車両が衝突した場合等に生じ得る。とりわけ前面衝突では,膝蓋骨が大腿骨滑車部へ楔状に入り,外力が膝―大腿部―股関節複合体を圧縮することで顆部又は顆上部の骨折が生じ,外力が大きいと顆上部粉砕骨折に至り得る。
2 骨折名だけで後遺障害等級は決まらない
結論を先に述べると,後遺障害等級は「大腿骨顆部骨折」又は「大腿骨顆上骨折」という診断名に対して与えられるものではない。等級判断は,①膝関節の可動域制限,②骨性又は靭帯性の不安定性,③偽関節,④変形癒合,⑤下肢短縮,⑥疼痛・神経症状,⑦人工膝関節置換,⑧これらの併存関係に分解して行う。
実務では,事故外力から骨折型及び合併損傷へ,そこから整復・固定・手術,骨癒合又は非癒合,アライメント,関節面,リハビリテーション,症状固定時の機能へと至る因果の鎖を,時系列の画像と診療録でつなぐ必要がある。本記事は令和8年8月1日現在の一般的な情報であり,個別事案の認定結果を保証するものではない。
3 既存の膝関節記事との役割分担
膝関節の屈曲・伸展の合算方法,他動値の原則,参考可動域,5度刻みの測定,深屈曲を必要とする生活動作,代償歩行及び膝関節の裁判例一般は,膝関節の可動域制限と後遺障害12級7号で詳しく説明している。本記事は重複を避け,大腿骨遠位部骨折に固有の骨折型,関節面損傷,変形,骨性支持性,偽関節及び証拠の選び方に重点を置く。
第2 骨折型を画像と手術記録で確定する
1 関節外・部分関節内・完全関節内を分ける
大腿骨遠位部のAO Surgery Referenceは,大腿骨遠位部骨折を,関節外骨折,部分関節内骨折,完全関節内骨折に大別する。部分関節内骨折には外側顆又は内側顆の矢状断骨折のほか,冠状断骨折が含まれ,完全関節内骨折では関節面と骨幹端部の両方の粉砕程度が問題となる。
この区分は治療計画と画像の読み方を整理するためのものであり,分類記号と後遺障害等級は対応しない。同じ骨折型でも,関節面がおおむね整復されて骨癒合した事案と,内外反変形,骨欠損,感染又は非癒合が残った事案とでは,等級判断の出発点が異なる。
2 単純X線,CT,MRI及びストレスX線の役割は異なる
受傷時の単純X線は,骨折部位,転位,大きな骨片及び事故直後の状態を示す。CTは,関節面の段差,顆間骨折,冠状断骨折,骨欠損及び複雑な粉砕の把握に適する。経時的な単純X線及びCTは,架橋仮骨,骨折線,プレート又はスクリューの破損,内外反及び屈曲伸展変形,非癒合の推移を示し得る。
MRIは,半月板,十字靭帯,側副靭帯,軟骨,骨髄及び周囲軟部組織の合併損傷の評価に用いられる。不安定性の主張では,徒手検査だけでなく,健側と同じ方向・荷重条件で撮影したストレスX線が重要になり得る。検査の適応及び撮影方向は,動揺関節の立証手段としてのストレスレントゲン撮影で説明している。
画像は病変の存在,部位,形態及び経時変化を立証するが,それだけで事故因果関係又は等級を決定するものではない。読影報告書だけで終えず,必要に応じて全シリーズのDICOMデータ,撮影条件,手術記録,受傷前画像,健側画像及び症状固定時画像を対応させる必要がある。
3 術後のアライメントと非癒合を分けて評価する
大腿骨遠位部骨折140例を対象とした多施設後ろ向き研究では,冠状面アライメントが5度を超えた群で,術後3か月,6か月及び12か月の膝機能評価が不良であり,原著は5度未満の整復を推奨している。これは,症状固定時の膝機能だけでなく,術後正面像における内外反の経時比較が重要であることを示す。
側方ロッキングプレートで治療された560例の研究では,骨癒合促進の再手術を要した非癒合が54例,9・6パーセントであった。多骨片性の骨幹端粉砕,内側皮質骨粉砕,内外反アライメント等との関連が検討されている。もっとも,この対象には人工関節周囲骨折が41パーセント含まれ,年齢中央値も68歳である。したがって,集団データは個別の交通事故被害者の非癒合を証明するものではなく,個別事案では画像,再手術記録,感染所見及び荷重経過を確認すべきである。
第3 後遺障害等級の全体像
1 主要な等級ルート
自動車損害賠償保障法施行令別表第二と,自賠責の等級認定が原則として準拠する厚生労働省の障害等級認定基準を本骨折に引き付けると,主要な評価枝は次のとおりとなる。
| 障害の系統 | 自賠責の主要等級 | 判断の中心 |
|---|---|---|
| 膝関節の用廃 | 第8級7号 | 強直又はこれに近い状態,重度の完全弛緩性麻痺,人工関節置換後の所定の制限等 |
| 膝関節の著しい機能障害 | 第10級11号 | 屈曲・伸展の合計が原則として健側の2分の1以下,又は人工関節置換等 |
| 膝関節の機能障害 | 第12級7号 | 屈曲・伸展の合計が原則として健側の4分の3以下 |
| 偽関節 | 第7級10号又は第8級9号 | 大腿骨の骨幹部等の癒合不全と硬性補装具の必要性 |
| 長管骨変形 | 第12級8号 | 角状・回旋変形,骨端部の癒合不全・欠損等の所定要件 |
| 下肢短縮 | 第8級5号,第10級8号又は第13級8号 | 5センチメートル以上,3センチメートル以上又は1センチメートル以上 |
| 疼痛・神経症状 | 第12級13号又は第14級9号 | 症状の他覚的証明又は医学的説明可能性 |
表は各障害の入口を示すものであり,複数の障害が存在すれば必ず併合繰上げとなるわけではない。同一の骨折部の変形又は癒合不全から通常派生する疼痛は,原則としていずれか上位の等級で評価される。等級の系列,通常派生関係,併合,準用及び序列を個別に確認すべきである。
2 自賠責と労災で号数が異なる項目がある
自賠責と労災は同じ障害の号数が必ずしも一致しない。例えば,一下肢の三大関節中の一関節に著しい機能障害を残すものは,自賠責では第10級11号,労災では第10級10号である。また,3センチメートル以上の下肢短縮は,自賠責では第10級8号,労災では第10級7号である。意見書又は申請書では,どちらの等級表を引用するかを明記する必要がある。
第4 等級別の判断分岐
1 第8級7号――用廃,重度動揺又は人工関節置換後の高度制限
膝関節が完全強直した場合だけでなく,可動域が原則として健側の10パーセント程度以下に制限されると,強直に近い状態が問題となる。膝の可動域が10度以下であれば,認定基準上はすべてこの状態として扱われる。人工膝関節を置換し,その可動域が健側の2分の1以下に制限される場合も用廃に含まれる。
下肢の動揺関節は,常に硬性補装具を必要とするものが第8級相当である。ここで問われるのは,本人が装具を所持しているかではなく,骨性支持性の喪失,多方向不安定性,膝崩れ,荷重不能又は転倒危険のため,装具が医学的に常時必要かという点である。
2 第10級11号と第12級7号――他動可動域と器質的裏付け
膝関節の屈曲・伸展を合計した可動域が,原則として健側の2分の1以下であれば第10級11号,4分の3以下であれば第12級7号が問題となる。厚生労働省の関節可動域測定要領は,原則として他動運動の測定値を用い,他動値の採用が医学的に適切でない場合に自動値を参考とする。
数値だけでは足りない。可動域制限の原因として,関節面不整,内外反変形,関節包拘縮,筋腱癒着,長期固定,感染,偽関節,外傷後変形性膝関節症等のいずれが存在し,制限方向及び終末感と整合するかを示す必要がある。関節面に達しない顆上骨折であっても,骨幹端部の変形,長期固定,手術侵襲,膝周囲軟部組織の瘢痕等が拘縮を説明することがある。
末梢神経損傷による弛緩性麻痺のため,他動では動くが自動では動かない場合,又は関節を他動させると耐え難い疼痛が生じるため自動運動で評価すべきと医学的に判断される場合は,例外となり得る。単に自動値の方が悪いことを理由として,自動値を選ぶことはできない。
3 動揺関節――「装着している」と「必要とする」は異なる
下肢の動揺関節は,他動的なものか自動的なものかを問わず,常に硬性補装具を必要とするものが第8級相当,時々必要とするものが第10級相当,重激な労働等の際以外は必要としないものが第12級相当である。習慣性脱臼及び弾発膝も第12級相当とされる。
この分岐では,後日作成された「装具が必要」という一文だけでは弱い。ラクマンテスト,前方・後方引き出しテスト,内外反ストレステスト,ストレスX線,荷重時の膝崩れと転倒歴,装具処方の内容,日ごとの使用時間及び外出時の使用状況を積み上げ,なぜその頻度で必要かを示すべきである。靭帯損傷という診断名は,動揺関節の等級そのものではない。
4 偽関節・変形障害――非癒合の位置を固定する
公表認定基準は,大腿骨の「骨幹部等」に癒合不全がある場合と,「骨端部」に癒合不全がある場合を異なる枝に置いている。骨幹部等の癒合不全は,常時硬性補装具を必要とすると第7級10号,それ以外でも第8級9号の偽関節に当たり得る。これに対し,骨端部の癒合不全は,長管骨の変形として第12級8号の対象となる。
「顆上部非癒合」「遠位大腿骨非癒合」という手術名又は診断名だけでは,この分類は決まらない。骨折線と骨幹部・骨幹端部・骨端部の位置関係,荷重に対する骨性支持性,内固定材料の破損,再手術の目的,骨移植の要否及び補装具の必要性を,全長撮影及び断層画像で確定する必要がある。
角状変形は,外部から想見できる程度,すなわち15度以上屈曲して不正癒合したもの等が問題となる。大腿骨の回旋変形癒合は,外旋45度以上又は内旋30度以上という角度だけでなく,股関節可動域及び両大腿骨全長のX線所見を組み合わせて判定する。単に骨折部が肥厚しただけで,良方向に短縮なく癒合した場合は,長管骨の変形とは扱われない。
5 疼痛――可動域が基準に届かない場合の別ルート
可動域が健側の4分の3を超えていても,関節面損傷,外傷後変形性膝関節症,骨髄・軟骨変化,非癒合,感染又は内固定材周囲の異常等により,疼痛が他覚的に証明できるときは第12級13号が問題となる。他覚的証明に至らない場合でも,受傷態様,症状発現時期,治療経過,症状の一貫性及び医学的説明可能性があれば,第14級9号が問題となる。
もっとも,同一の骨折,変形又は可動域制限から通常伴う疼痛は,骨の障害又は機能障害と別個に併合されるとは限らない。数学的に有利な組合せを選ぶのではなく,それぞれの障害が別の解剖学的原因と別の機能損失を持つかを検討すべきである。
第5 紛争処理事例が示す判断の分水嶺
1 複合靭帯損傷と骨性不安定性が重なった事例
書籍に収録された紛争処理事例H17-12は,前十字靭帯,後十字靭帯及び内側側副靭帯の損傷に,大腿骨顆部及び脛骨近位部の骨折後の変形癒合,骨壊死及び高度の変形性膝関節症が重なった事案である。常時硬性装具を必要とするとの医学的判断を含む全体から,第8級7号が認められた。
同事例が示すのは,「多数の傷病名があるから上位等級」ということではない。骨性支持と主要靭帯の両方が破綻し,装具がなければ荷重時の安定を保てないことを,画像,診察,処方及び実生活で一貫させた点が重要である。
2 変形,動揺,可動域,装具及び動画を重ねた事例
紛争処理事例H17-51は,大腿骨顆部から骨幹部に及ぶ完全粉砕骨折後に,約25度の過伸展変形癒合があり,15度の過伸展及び外反動揺性が認められた事案である。可動域が健側の2分の1以下であったことに加え,動画上の不安定性及び常時装具必要性を含めて第8級7号が認められた。
この事例は,可動域だけであれば第10級11号の数値でも,可動域制限とは異なる荷重下の不安定性を立証できれば,動揺関節として別の基準が働くことを示す。静的な診察室の角度と,立位・歩行・方向転換時の安定性は,分けて評価すべきである。
3 骨性支持性を失った非癒合と自動値を扱った事例
紛争処理事例H29-32は,大腿骨顆上開放骨折後の膝上部偽関節に加え,プレート破損,骨性支持性の著しい低下,車椅子移動及び生活機能低下があった事案である。通常の他動可動域だけでは障害実態を捉えられないとして,自動可動域を基礎に第8級7号が認められた。
他動値の例外は,本人に有利な方の数値を選ぶ制度ではない。骨性支持性の喪失により,他動的に膝を動かせる範囲と,本人が実際に荷重・移動に利用できる範囲とが決定的に乖離することを,画像,内固定材料の破損,移動方法及び生活状況から説明できた点に例外の理由がある。
4 靱帯損傷だけでは動揺関節にならない
これと対照的な紛争処理事例H20-36は,内側側副靭帯損傷は認めたものの,ストレスX線に動揺関節と評価できる異常可動性がないとして,不安定性の等級ではなく,疼痛を第12級13号と評価した。「靱帯損傷の診断」と「後遺障害認定基準上の動揺関節」との間には,客観的な異常可動性及び装具必要性という追加の立証が必要である。
5 健側も低下した場合の比較対象
紛争処理事例H22-27は,長期入院により健側にも退行性の筋力低下があるとして,患側を低下した健側とは比較せず,参考可動域角度と比較した。この問題は,高齢者,長期免荷,両側性変形性膝関節症,反対側の別事故又は両側下肢外傷で特に重要である。
健側比較を排除するには,健側にも障害があるという事実を示す必要がある。事故前の関節可動域,健診,既往受診,受傷前画像,入院中の両下肢筋力及び理学療法記録を用い,なぜ通常の健側比較が公平でないかを説明すべきである。
第6 因果関係と症状固定の立証
1 一枚の時系列表を先に作る
事故日から症状固定日までの時系列表を作り,各時点の症状,荷重制限,画像,手術,創部,感染,骨癒合,可動域,筋力,歩行及び装具を対応させる。文章を先に作ってから都合の良い記録を探すのではなく,空白又は矛盾を表で発見することが重要である。
事故因果関係は,①車両の衝突方向,車内の接触痕,転倒又は直接打撃,②事故直後の同一部位の症状と画像,③骨折型と外力の整合性,④手術前後の画像,⑤骨癒合・変形・感染・軟骨及び靭帯の合併損傷,⑥症状固定時の残存機能という順序で立証する。事故前から膝痛又は変形性膝関節症がある場合は,事故前後の質的変化と程度の増悪を分けて示す。
2 骨癒合と症状固定は同義ではない
骨癒合は重要な節目であるが,骨癒合と症状固定は同義ではない。抜釘,関節授動術,偽関節手術,骨移植,再固定,靭帯再建,人工膝関節置換等の追加治療の適応があるか,リハビリテーションで可動域又は筋力がなお改善中かを確認する必要がある。
一方,プレート破損,荷重不能,異常可動性,感染又は骨端部の骨欠損が残る場合は,単に「骨折線が見える」という理由だけでなく,現在の治療が骨癒合を得るための療養中か,将来も回復が困難と見込まれる状態かを医学的に区別すべきである。将来の人工膝関節置換可能性だけで,症状固定時に人工関節置換後の等級を先取りすることはできない。
3 既存疾患と事故後の変化を分ける
既存の変形性膝関節症,骨粗鬆症,糖尿病又は過去の下肢骨折があるだけで,事故因果関係が否定されるわけではない。もっとも,事故前から同じ疼痛,歩行障害,可動域制限又は装具使用があり,事故直後の診療録に新しい症状が記録されていないのに,長期間後の検査で初めて異常が示された場合は争われやすい。
糖尿病,肥満,喫煙,骨粗鬆症等は,骨癒合又は感染の医学的評価に関係し得るが,事故と無関係という結論を直接導くものではない。事故前画像,健診結果,診療録,投薬,受傷後の創部・感染経過及び荷重管理を評価し,事故外力による骨折と,治癒を遅延させる可能性のある因子を混同しないことが重要である。
第7 申請及び訴訟のために収集する資料
1 最低限の資料セット
①事故について,交通事故証明書,実況見分関係資料,事故状況図,車両写真,車内の接触痕及び映像を収集し,膝周囲への直接打撃,軸圧,転倒又は多方向外力を確認する。
②診療録について,初診救急記録,紹介状,入退院サマリー,手術記録,麻酔記録,創傷・感染記録,荷重許可の記載,リハビリテーション実施計画書,理学療法記録,装具処方箋及び後遺障害診断書を収集する。
③画像について,初診時,整復後,手術直後,荷重開始前,骨癒合過程,再手術前後,抜釘前後及び症状固定時の全DICOMデータと読影報告書を収集する。関節面の立証にはCT,靭帯・半月板・軟骨にはMRI,動揺にはストレスX線,アライメントと短縮には全長撮影と,立証目的に応じて選ぶ。
④機能について,同一日・同一条件での健側と患側,屈曲と伸展,自動と他動を明記した可動域表を作る。そのほか,大腿四頭筋筋力,伸展ラグ,大腿周径,関節液,圧痛,感覚,膝崩れ,転倒,松葉杖・杖・車椅子及び装具の使用状況を時系列に置く。
⑤損害について,事故前の職務,立位及び歩行時間,階段,中腰,しゃがみ込み,重量物,車両運転,休業,配置転換,家事,育児及び介護の支障を,事故前後で比較できる資料にする。後遺障害等級と個別の労働能力喪失は同じ問題ではないため,職業上の支障は別に立証する。
2 費用と負担に応じて段階的に進める
最初に行うべきなのは,後遺障害診断書,診療録,既存の画像及びリハビリテーション記録の収集である。それらを並べると,例えば,①可動域は明らかに4分の3以下か,②骨折線は骨幹部等と骨端部のどちらにあるか,③装具必要性に客観所見があるか,④治療による改善余地が残るかという,結論を左右する穴が見える。
新たなCT,MRI,ストレスX線,医師意見書,専門医の再読影又は動作観察等へ進むのは,既存資料に具体的な争点が残り,その手段で何が判明すれば結論が変わるかを説明できる場合に限るのが合理的である。申請前に判断ゲートを設け,結論を変えない資料を惰性的に増やさないことも,被害者の負担を抑えるために重要である。
第8 出典・参考資料
1 法令・行政資料
自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)2条・別表第二
厚生労働省労働基準局長「せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」(平成16年6月4日基発第0604003号)
厚生労働省「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」
2 医学・外傷学資料
AO Foundation, AO Surgery Reference, Distal femur
一杉正仁・西山慶編『交通外傷――メカニズムから診療まで』名古屋大学出版会,2020年,77頁
3 後遺障害認定実務
榎木貴之・小杉晴洋『自賠責・紛争処理事例と判例から読み解く後遺障害等級認定の判断――傾向を踏まえた交通事故事件処理――』新日本法規出版,令和8年3月,396頁~417頁(本記事で利用した紛争処理事例は411頁~416頁)