第1 本記事の対象と結論
1 対象と基準日
観光客の増加に伴い,地方公共団体が管理する観光施設や公営交通の料金を,住民と住民以外,又は日本人と外国人で分ける動きが出ている。
姫路市は令和8年3月1日から姫路城の縦覧料(入城料)を市民と市民以外で分け,京都市は市バスの「市民優先価格」を令和9年度中に実施する予定である。
本記事は,令和8年10月4日を基準日として,観光庁の「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会」の公表資料,京都市交通局の資料,e-Gov法令検索で確認した地方自治法,道路運送法,地方公営企業法等の現行条文及び裁判所HPで全文を確認した裁判例を基に,料金を住民か否か又は国籍で分けることの法的な枠組みを整理する。
世界経済フォーラムの旅行・観光開発指数2026年版で日本が1位になったことを素材に,観光の費用の負担について,国籍でも市の住所でもなく日本に住んでいるかどうかで線を引くべきだと論じたYouTube動画(海外Yパパラジオ,令和8年10月3日公開)が,姫路城と京都市バスを例に挙げていたことが,本記事の発端である。
国の段階で訪日客や出国者に負担を求める制度(国際観光旅客税,宿泊税,免税販売のリファンド方式,JESTA)は,出国税(国際観光旅客税)3,000円,宿泊税,免税販売のリファンド方式及びJESTA―訪日客と日本人旅行者が負担する制度で扱う。
2 結論
① 地方自治法244条3項は,普通地方公共団体が,住民が公の施設を利用することについて不当な差別的取扱いをすることを禁じている。
最高裁平成18年7月14日判決(高根町簡易水道事件)は,住民でなくても区域内に家屋敷等を有して地方税を納付する者など「住民に準ずる地位にある者」には同項の規律が及び,施設の性質や地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由のない差別的取扱いは同項に違反するとして,別荘給水契約者の水道基本料金を大幅に引き上げた条例の改正部分を無効とした。
② したがって,住民と住民以外で料金を分けること自体が直ちに違法になるわけではないが,区別の理由と料金差の大きさを合理的に説明できる必要がある。
区域内に家屋や事業所を持ち地方税を納める者まで一律に「住民以外」として扱うときは,同判決の基準で説明できるかを確かめる必要がある。
③ 姫路市は,当初議論された外国人・日本人の区分を採らず,市税の負担,景観規制による私権制限及び清掃活動という「多重的な市民負担」を理由に市民の料金を据え置き,市民以外の料金を今後10年間の事業費から積算した。
区別の理由を負担の違いで説明し,料金差を事業費の積算で説明する構成は,同判決が求める合理性の説明に沿うものと考えられる(本記事の評価であり,姫路市の資料が同判決に言及しているわけではない)。
④ 京都市バスの市民優先価格は,国への上限運賃の変更申請と運賃条例の改正を経て実施する予定とされている。
道路運送法9条7項2号は,「特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするもの」である運賃について国土交通大臣が変更を命ずることができると定めているから,居住地による割引が合理的な区別として説明できるかが論点になる。
⑤ 国籍による区別は,地方公共団体が行えば憲法14条1項及び地方自治法244条3項との関係が問題になり,外国人住民も外国人料金の対象になるという難点がある。
私人による区別でも,札幌地裁平成14年11月11日判決は,外国人に見えることを理由とする公衆浴場の一律の入浴拒否を不法行為と認めた。
動画が国籍ではなく居住地で線を引くべきだとする点は,この法的な枠組みと整合する。
第2 姫路城の縦覧料改定
1 改定の内容
姫路市が観光庁の調査・研究会の第2回(令和8年5月27日)で配布した資料「姫路城縦覧料改定の取組事例」によれば,姫路城の縦覧料は,令和8年3月1日から次のとおりとなった。
| 区分 | 改正前 | 改正後(令和8年3月1日から) |
|---|---|---|
| 18歳以上の姫路市民 | 1,000円 | 1,000円(据置き) |
| 18歳以上の市民以外 | 1,000円 | 2,500円(引上げ) |
| 小中高生・18歳未満 | 300円(小人) | 無料 |
改定は,令和7年第1回定例会(2月)で可決された姫路城縦覧料等徴収条例の一部を改正する条例によるもので,施行の約1年前に条例を改正して周知期間を長く確保した。
姫路城の所有者は国(文部科学省),管理者は姫路市であり,令和7年度の入城者数は156万7,674人(うち外国人54万7,426人)である。
2 国籍ではなく居住地で分けた理由
同資料は,制度設計の変遷として,当初話のあった「外国人・日本人」の区分に対し,議会や有識者の意見を反映させ,「居住地による負担の公平性」に軸足を置いて,「市民とそれ以外」という区分にしたと説明している。
市民の料金を据え置く根拠として挙げられているのは,次の「多重的な市民負担」である。
① 財政的寄与(玄関口である姫路駅から城下全域の景観整備に多額の市税を投入していること)
② 制度的協力(景観維持のための広告規制や建物高さ制限等,長年の私権制限を受け入れていること)
③ 直接的貢献(市民ボランティアによる継続的な清掃・美化活動)
市民以外の料金は,令和7年から16年までの10年間の事業費約280億円に基づく「適正な縦覧料」とされている。
観光庁の「ヒアリング結果のポイント」(令和8年7月)は,この事業費を入城者数の見込みで割り戻して一人当たり約2,500円と算出したと整理している。
同研究会の第2回の議事概要でも,姫路市は,市民が税負担や景観規制の甘受などの負担をしていることを考慮し,国籍に着目するのではなく居住地に着目して市民の価格を据え置くことで,実質的に公平性を担保すると整理したと説明している。
3 改定後の状況
令和8年3月の縦覧料収入(速報値)は約2.7億円で,前年比約1.3億円の増加であった。
他方,令和8年3月から4月までの入城者数(速報値)は約30万人で,前年比約15.8%減少した。
市民か市民以外かの判定は,マイナンバーカードや運転免許証などによる証明で行われ,判定に伴う混乱や証明書の不携帯によるトラブルはほとんど生じなかったとされている。
同資料には,姫路城管理事務所に「姫路城は国宝なのになぜ市民だけ割引なのか」との問い合わせがあったことや,報道の多くが「二重価格」と表現したのに対し,姫路市は市民であることの証明書の提示により縦覧料を据え置いていると説明していることも記載されている。
第3 京都市バスの市民優先価格
1 制度概要
京都市交通局が令和8年3月に市会の産業交通水道委員会に提出した「市バスの市民優先価格の制度概要について」によれば,市民優先価格は,市民の普通運賃を市民以外よりも相対的に割安にするもので,全国初のパイロットプロジェクトと位置付けられている。
均一区間の普通運賃は,オーバーツーリズム対策の費用や人件費・物価の上昇分を運賃改定で確保した上で,改定後の新運賃を350円から400円程度とし,市民については割り引いて200円とする案である。
令和7年7月1日現在の均一区間の片道乗車券の大人運賃は230円である。
実施時期は,均一区間で令和9年度中とされている。
市民と市民以外の識別は,マイナンバーカードと交通系ICカード等の決済手段を紐づける方法で行い,クレジットカードのタッチ決済も対象とすることを検討するとされている。
現金と回数券は,支払のたびに運転士が市民であることを確認する必要があり,定時運行の支障となるおそれがあるため,対象外とされている。
市外在住者については,定期運賃を据え置き,一定頻度で利用する人に利用頻度に応じた負担軽減策を検討するとされている。
2 道路運送法と地方公営企業法の枠組み
同資料は今後の予定として,国や民間バス事業者との詳細な制度設計のための協議,市会への運賃条例の改正議案の提案及び国への上限運賃変更の申請を挙げている。
一般乗合旅客自動車運送事業者は,運賃等の上限を定めて国土交通大臣の認可を受けなければならず(道路運送法9条1項),認可を受けた上限の範囲内で運賃等を定めて,あらかじめ国土交通大臣に届け出なければならない(同条3項)。
国土交通大臣は,届け出られた運賃等が「特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき」は,期限を定めて変更を命ずることができる(同条7項2号)。
また,地方公営企業の料金は,公正妥当なものでなければならず,かつ,能率的な経営の下における適正な原価を基礎とし,地方公営企業の健全な運営を確保することができるものでなければならない(地方公営企業法21条2項)。
したがって,市民優先価格では,居住地による運賃の区別が「不当な差別的取扱い」に当たらず,公正妥当な料金であると説明できるかが問われる。
京都市の資料は,オーバーツーリズム対策の費用や人件費・物価の上昇分を反映すれば本来は値上げが必要であるとして,市民の運賃を「30円+αの割引」と理解してほしいと説明しており,市民以外の運賃を費用に基づく本来の運賃とし,市民の運賃をそこからの割引と位置付ける構成をとっている。
国土交通大臣がこの区別をどう評価するかについて,基準日の時点で公表された判断は確認できなかった。
第4 地方自治法244条3項と住民以外の者
1 条文
地方自治法244条は,次のとおり定めている。
1項「普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。」
2項「普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」
3項「普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。」
普通地方公共団体は,公の施設の利用につき使用料を徴収することができ(地方自治法225条),使用料に関する事項は条例で定めなければならない(同法228条1項前段)。
同法10条1項は,市町村の区域内に住所を有する者を当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とし,同条2項は,住民は,法律の定めるところにより,その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し,その負担を分任する義務を負うと定めている。
住民は日本国籍を有する者に限られず,住民基本台帳法30条の45は,市町村の区域内に住所を有する中長期在留者,特別永住者等を「外国人住民」として,その住民票の記載事項を定めている。
なお,姫路城は国が所有して姫路市が管理する国宝・特別史跡であり,文化財保護法は,管理団体が重要文化財を公開する場合や史跡名勝天然記念物について観覧料を徴収することができると定めている(同法47条の2第3項,116条3項)。
姫路城の縦覧料が地方自治法上の公の施設の使用料として徴収されているのか,文化財保護法上の観覧料として徴収されているのかは,条例の条文を確認できなかったため,本記事では断定しない。
2 最高裁平成18年7月14日判決(高根町簡易水道事件)
(1) 事案
山梨県の旧高根町は,簡易水道事業給水条例を改正し,水道メーターの口径が13ミリメートルの場合の1か月の基本料金を,同町の住民基本台帳に記録されていない別荘に係る給水契約者(別荘給水契約者)は3,000円から5,000円に引き上げる一方,別荘以外の給水契約者は1,300円から1,400円に引き上げるにとどめた。
平成8年度,別荘給水契約者は給水契約者全体の約30.4%を占めていたが,その年間使用量は総使用量の約4.7%にすぎなかった。
別荘の所有者らが,条例の無効確認,差額分の債務不存在確認,支払済みの水道料金の返還等を求めた。
(2) 判示
最高裁は,まず,「普通地方公共団体が設置する公の施設を利用する者の中には,当該普通地方公共団体の住民ではないが,その区域内に事務所,事業所,家屋敷,寮等を有し,その普通地方公共団体に対し地方税を納付する義務を負う者など住民に準ずる地位にある者が存在することは当然に想定されるところである。」とした。
その上で,地方自治法244条3項が憲法14条1項の法の下の平等の原則を公の施設の利用関係につき具体的に規定したものであることを考えれば,住民に準ずる地位にある者の利用関係に同項の規律が及ばないと解するのは相当でなく,「これらの者が公の施設を利用することについて,当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは,同項に違反するものというべきである。」とした。
そして,別荘給水契約者は,生活の本拠を有しない点で住民とは異なるが,別荘を使用する間は住民と異ならない生活をするものであることなどから,住民に準ずる地位にある者に当たるとした。
料金の区別そのものについて,最高裁は,夏季等の一時期に水道使用が集中する別荘給水契約者に年間を通じて相応な水道料金を負担させるため,その基本料金を別荘以外の給水契約者より高額に設定すること自体は,水道事業者の裁量として許されないものではないとした。
しかし,「公営企業として営まれる水道事業において水道使用の対価である水道料金は原則として当該給水に要する個別原価に基づいて設定されるべきもの」であるという原則に照らし,町が主張した料金の設定方法は,基本料金の大きな格差を正当化するに足りる合理性を有するものではなく,一般会計から毎年多額の繰入れをしていたことなどの事情も,その格差を正当化するに足りるものではないとして,改定は同項にいう不当な差別的取扱いに当たるとした。
(3) 結論
最高裁は,別荘給水契約者の基本料金を改定した部分は地方自治法244条3項に違反して無効であるとして,差額分の未払水道料金の債務不存在確認,支払済みの水道料金相当額の不当利得返還及び給水停止の禁止を求める請求を認容した原審の判断を,結論において是認した。
憲法14条1項違反の点については,判断するまでもないとして判断していない。
他方,条例の無効確認を求める訴えは,条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとして却下した。
したがって,同判決は条例の無効を理由中で判断したものであり,主文で条例の無効を確認したものではない。
古田佑紀裁判官の補足意見は,区域内に生活の本拠を有しなくても,固定した生活等の拠点を有して継続的な活動を予定し,そのために租税等を負担すべき立場にある者は,同項にいう「住民」に含まれるとしている。
法廷意見は,こうした者を「住民」に含めるのではなく,「住民に準ずる地位にある者」として同項の規律が及ぶとしている点で,補足意見と構成が異なる。
3 住民と住民以外で料金を分けるときの確認事項
同判決を踏まえると,地方公共団体が施設の料金を住民と住民以外で分けるときは,次の点を確かめることになる(本記事の整理)。
① 区別の基準
住民票上の住所によるのか,市内在勤・在学者や市内に事業所・別荘を持つ者を含めるのかを決める。
姫路城では,マイナンバーカードや運転免許証などで市民であることを証明する運用とされ,市内に事業所や別荘を持つが住所のない者の扱いは,公表資料からは分からない。
② 区別の理由
料金差を正当化する事情として,税負担,規制の受忍,維持管理への寄与等を具体的に示す。
姫路市が挙げた3つの負担は,この説明に当たる。
③ 料金差の大きさと積算の根拠
高根町事件では,個別原価に基づく料金設定という原則に照らして格差の大きさが正当化できないとされた。
料金差を事業費や原価の積算で説明できるかが重要になる。
④ 住民に準ずる地位にある者の扱い
区域内に家屋敷や事業所を持ち地方税を納める者を住民以外の料金としたときに,施設の性質と結び付きの程度に照らして合理的な理由があるかを検討する。
⑤ 施設の性質
生活に不可欠な給水と,観光施設や文化財の公開とでは,住民以外の者と地方公共団体との結び付きの程度や,料金差が許される幅が異なり得る。
同判決が「当該公の施設の性質」を考慮要素に挙げていることによる。
第5 国籍による区別
1 地方公共団体が行う場合
高根町事件の最高裁判決は,地方自治法244条3項を,憲法14条1項が保障する法の下の平等の原則を公の施設の利用関係につき具体的に規定したものと位置付けている。
地方公共団体が国籍だけを基準に施設の料金を変えると,市内に住所を有して地方税を負担する外国人住民も外国人料金の対象となり,住民の間で国籍による差別的取扱いをすることになるから,同項及び憲法14条1項との関係で説明が難しくなると考えられる。
姫路市の資料は外国人・日本人の区分を採らなかった理由を議会や有識者の意見の反映と説明するにとどまるが,居住地で区分することにより,この問題は生じない構成になっている。
2 私人が行う場合―札幌地裁平成14年11月11日判決
民間の事業者は契約自由の原則の下で料金や取引の相手方を決めることができるが,国籍や外見による区別が違法と評価されることがある。
札幌地裁平成14年11月11日判決(小樽市の公衆浴場の入浴拒否事件)は,外国人の入浴を一律に拒否した公衆浴場の経営会社に対し,原告3名にそれぞれ慰謝料100万円の支払を命じた。
同判決は,国際人権B規約及び人種差別撤廃条約は私人相互の間の関係を直接規律するものではないとしつつ,私人による基本的な自由や平等の侵害が社会的に許容しうる限度を超えるときは,民法1条,90条や不法行為に関する諸規定等により違法とすべきであり,「憲法14条1項,国際人権B規約及び人種差別撤廃条約は,前記のような私法の諸規定の解釈にあたっての基準の一つとなりうる。」とした。
そして,帰化して日本国籍を取得した原告も拒否されたことを踏まえ,本件の拒否は「実質的には,日本国籍の有無という国籍による区別ではなく,外見が外国人にみえるという,人種,皮膚の色,世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく区別,制限であると認められ」,私人間においても撤廃されるべき人種差別に当たるとした。
公衆浴場の公共性を踏まえ,「外国人一律入浴拒否の方法によってなされた本件入浴拒否は,不合理な差別であって,社会的に許容しうる限度を超えているものといえるから,違法であって不法行為にあたる。」とした。
他方,小樽市が人種差別撤廃条例を制定しなかった不作為については,違法ということはできないとして,市に対する請求を棄却した。
同判決は入浴の拒否に関する事案であり,料金の区別について判断したものではない。
もっとも,外見や国籍で客を一律に区別する運用は,見分けの過程で日本国籍の利用者や外国人住民も対象になり得るため,同判決が問題にした外見に基づく区別と同じ問題を生じやすいと考えられる。
第6 実務上の確認事項
1 地方公共団体が料金区分を設けるとき
① 料金の根拠となる条例と,地方自治法228条1項の条例事項に当たるかを確認する。
② 区分の基準(住所,在勤・在学,納税等)と,第4の3の確認事項に沿った理由の説明を,議会への報告やパブリックコメントの段階から文書で残す。
③ 市民以外の料金を事業費や原価から積算した根拠と,増収分の使途を公表する。
④ 旅行会社のツアー造成に間に合うよう,施行までの周知期間を確保する(姫路市は約1年前に条例を改正した)。
⑤ 住所の確認にマイナンバーカードを使うときは,券面の住所を確かめるにとどめ,個人番号を書き写したり保管したりしない。
番号法20条は,同法19条各号のいずれかに該当する場合を除き,何人も他人の個人番号を含む特定個人情報を収集し,又は保管してはならないと定めている。
2 民間の事業者が料金区分を設けるとき
① 国籍や外見を基準とする区別は,第5の2の札幌地裁判決のとおり不法行為となるおそれがあるため避け,会員,居住地,予約経路など客観的に確認できる基準による。
② 「訪日客向けの価格」と「通常価格」を並べて表示するときは,景品表示法の有利誤認表示(いわゆる二重価格表示)の問題として,比較対照価格の根拠を確認する。
景品表示法の二重価格表示は,ここでいう客層ごとの料金の区別とは別の問題であり,景品表示法の仕組み―景品規制・不当表示・ステマ規制・法執行で扱っている。
第7 今後の見通しと別の機会に掘り下げる点
1 今後の見通し
観光庁の調査・研究会は,令和8年7月28日に「ヒアリング結果のポイント」を公表し,料金には過度の混雑をコントロールする手段と観光資源の保全・活用の財源を確保する手段という二つの役割があると整理した。
同研究会は,料金設定は各施設管理者やサービス提供者が主体的に判断して設定すべきものという前提に立っており,住民料金や外国人料金の適法性について国の解釈を示したものではない。
京都市バスの市民優先価格について国土交通大臣が上限運賃の変更を認可するか,同種の料金区分が他の地方公共団体に広がるかは,今後の資料で確かめる必要がある。
2 別の機会に掘り下げる点
① 京都市の上限運賃変更の申請内容と,道路運送法9条7項2号の「不当な差別的取扱い」の解釈について国土交通省が示す考え方
② 市内に事業所や別荘を持つ者,通勤・通学者を市民料金の対象とするかについて,各地方公共団体の条例の比較
③ 姫路城縦覧料等徴収条例の条文と,縦覧料の法的性格(公の施設の使用料か,文化財保護法上の観覧料か)
④ 札幌地裁平成14年11月11日判決のその後の経過(控訴審の有無と判断)
⑤ 国立の施設(独立行政法人が設置する博物館等)で料金を区分する場合の法的な枠組み
第8 関連記事
①出国税(国際観光旅客税)3,000円,宿泊税,免税販売のリファンド方式及びJESTA―訪日客と日本人旅行者が負担する制度
②公園・広場で政治的集会を不許可にできるか―泉佐野市民会館・上尾市福祉会館・金沢市庁舎前広場事件
③条例は法律より厳しい規制を定められるか―自主条例・委任条例・上乗せ・横出し規制
④景品表示法の仕組み―景品規制・不当表示・ステマ規制・法執行
⑤日本の世界遺産
第9 出典
1 法令
①地方自治法10条,225条,228条1項及び244条(e-Gov法令検索,令和8年10月4日時点で施行中のもの)
②道路運送法9条(e-Gov法令検索)
③地方公営企業法21条(e-Gov法令検索)
④住民基本台帳法30条の45(e-Gov法令検索)
⑤文化財保護法47条の2第3項及び116条3項(e-Gov法令検索)
⑥行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律19条及び20条(e-Gov法令検索)
2 裁判例
①最高裁平成18年7月14日第二小法廷判決(平成15年(行ツ)第35号,給水条例無効確認等請求事件,民集60巻6号2369頁) 裁判所HP
②札幌地裁平成14年11月11日判決(平成13年(ワ)第206号,損害賠償等請求事件) 裁判所HP
3 公的資料
①観光庁「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会」
②姫路市観光経済局観光コンベンション室「姫路城縦覧料改定の取組事例」(同研究会第2回資料3)1頁~12頁
③観光庁「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会(第1回)議事概要」(令和8年4月27日開催)
④観光庁「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会(第2回)議事概要」(令和8年5月27日開催)
⑤観光庁「ヒアリング結果のポイント」(令和8年7月)
⑥観光庁「「ヒアリング結果のポイント」公表について」(令和8年7月28日)
⑦京都市交通局「市バスの市民優先価格の制度概要について」(令和8年3月,産業交通水道委員会資料)
⑧京都市会ウェブサイト掲載の刊行物(令和7年版)「交通」289頁~290頁(市バスの運賃は令和7年7月1日現在)
4 その他
①海外Yパパラジオ「日本が世界観光ランキング1位!全然嬉しくなさそうなあなたの頭を整理します」(YouTube,令和8年10月3日公開)