第1 この記事の対象と結論
1 対象
本記事は,A8.netのメディア会員利用規約,禁止事項,PR表記の案内及び関係行政機関の公表資料に基づき,メディア会員が特に確認しておくべき事項を整理するものである。
A8.netを運営する株式会社ファンコミュニケーションズの公開規約は,共通規約とメディア向け利用規約から成り,共通規約と各利用規約が異なる場合は各利用規約が優先するとされている。
また,個々の広告プログラムには別の成果条件及び掲載条件がある。
したがって,公開規約だけで個別プログラムの可否を判断することはできない。
以下は令和8年11月2日に公開ページで確認した内容である。
管理画面だけで提供される広告主名,成果条件,成果報酬額,商品名,掲載条件及び画面のキャプチャは,公開規約上,秘密情報又は公開禁止情報に当たり得るため,本記事では扱わない。
2 結論
結論は次の7点である。
① アフィリエイト広告については,広告であることが一般消費者に明瞭に分かる表示が必要であり,サイト冒頭の一括表示だけで常に足りるわけではない。
② A8.netの公開規約は,未登録のサイト,個人宛てのメール又はSNSメッセージ,PDF及び紙媒体等への広告掲載を原則として禁じている。
掲載媒体を登録したか,公開範囲に制限がないか,個別プログラムの条件を満たすかを分けて確認する必要がある。
③ 成果発生の依頼,不正なクリック,申込みの意思がない注文,虚偽情報による申込み,代理申込み等は,禁止行為として具体的に列挙されている。
④ 禁止行為があった場合,公開規約は,未払成果報酬の没収及び支払拒否,既払額の返還請求並びに強制退会時の調査費用等の請求を定めている。
ただし,これは公開規約の内容を説明するものであり,個別事案における条項の有効性又は請求の成否を確定するものではない。
⑤ 自主退会では,未払成果報酬から振込手数料と税別1000円の事務手数料を差し引く精算方法が定められている。
精算額がマイナスでも,事務手数料を別途徴収しないとされている。
⑥ 管理画面を通じて提供される情報は,秘密である旨の表示がなくても常に秘密情報とされている。
問い合わせ等に備えて手元に保存することと第三者への公開とは区別する必要があり,第三者への開示には原則として事前の書面同意が必要である。
⑦ A8.netの審査・承認はメディアサイト等の適法性等を保証するものではなく,同社のガイドも運営会社の解説にとどまる。
ASPの規約,広告主の条件並びに景品表示法,薬機法,医療広告規制,電気通信事業法,著作権法その他の法令を別々に確認する必要がある。
第2 A8.netの規約と法令を分けて読むこと
1 公開規約の位置付け
A8.netのメディア会員利用規約は,ファンコミュニケーションズとメディア会員との契約内容を定めるものである。
禁止行為,報酬の支払,秘密保持及び退会後の処理は,まず規約の文言を確認する必要がある。
これに対し,景品表示法等の法令は,国が定める規制である。
規約違反と法令違反は重なることがあるが,同じではない。
法令違反がなくても規約違反となる場合があり,A8.netのルールに従っていても別の法令に違反する場合がある。
2 A8.netの案内と行政機関の資料
A8.netの「禁止事項」,「メディア運営のNG事例集」及び各種ガイドは,運営会社が規約の運用又は注意点を説明した資料である。
行政機関の法解釈又は裁判所の判断そのものではない。
例えば,A8.netのPR表記案内は,不当表示が確認された場合に事業者(広告主)が措置命令や懲役・罰金の対象となる場合があると説明している。
他方,消費者庁のステルスマーケティングQ&Aは,ステルスマーケティング告示違反には措置命令があり,同告示違反だけでは課徴金の対象とならないと説明する。
刑罰は,措置命令に違反した場合の景品表示法46条と,令和5年法律第29号による改正(令和6年10月1日施行)で設けられ,優良誤認表示又は有利誤認表示を対象とする同法48条に定められている。
ステルスマーケティング告示違反一般に直ちに刑罰が科されるという意味ではない。
第3 PR表記
1 誰が景品表示法の規制対象となるか
消費者庁は,ステルスマーケティング告示の規制対象を,自己の供給する商品又は役務について表示内容の決定に関与した事業者,すなわち広告主としている。
広告主から依頼を受けたアフィリエイターは,広告主と共同して商品等を供給する例外的な場合を除き,通常は同告示の直接の規制対象ではない。
しかし,A8.netの規約及び運用案内はメディア会員にPR表記を求めている。
広告主が景品表示法上の責任を負うことと,メディア会員が契約上の義務を負うことを混同してはならない。
2 サイト冒頭の一括表示だけで足りるとは限らないこと
消費者庁Q&AのQ13は,アフィリエイトサイトの冒頭に「このサイトはアフィリエイト広告を利用しています。」等と記載しても,文字の大きさ及び色を含む表示全体から,広告であることが一般消費者に明瞭でなければならないとしている。
さらに,専門家の客観的な意見のように見える部分が,実際には報酬を支払ってコメントを依頼した「事業者の表示」である場合には,その部分だけを見ても「事業者の表示」であることが明瞭となるよう,付近に依頼関係の説明等を置く必要があるとされている。
A8.netも,広告を掲載するサイト又はメディア内でアフィリエイトプログラムの利用を一般消費者が認識できる表記を求めている。
サイト共通の表示,個々の記事又は投稿の表示,誤認を招きやすい箇所の近接表示を分けて点検するのが安全である。
3 PR表記だけでは足りないこと
PR表記があっても,商品の効果,価格,比較,ランキング又は体験談の内容が虚偽又は誤認を招くものであれば,別の問題が残る。
A8.netのNG事例集も,根拠のないランキング,他の商品又はサービスに不当に悪い印象を与える宣伝及び虚偽の体験談等を挙げている。
第4 広告を掲載できる場所
1 登録外の媒体及び個別送信
A8.netの公開規約は,A8.net又はA8appに登録していないサイト若しくはアプリ,メールマガジン,個人宛てのメール若しくはSNSメッセージ,PDF又は紙媒体等へ広告を掲載して配布・配信することを原則として禁じている。
また,メディア自身が管理・運営していないサイト又はアプリへの掲載も原則として禁止している。
SNSを利用できるかどうかは,SNS全体について一律に決まるのではなく,登録の有無,アカウントの公開範囲,投稿か個別メッセージか及びSNS別ガイドラインによって異なる。
2 閲覧制限のある媒体
ファンコミュニケーションズが特に認めた場合を除き,外部非公開又は閲覧制限のあるサイト及びSNS等への広告掲載も禁止事項として列挙されている。
限定公開,鍵付きアカウント及び会員だけが閲覧できるページへ掲載する場合は,公開規約だけで可否を推測せず,個別に確認する必要がある。
3 終了したプログラム及び退会後
終了したプログラム又は提携を解除されたプログラムの広告を掲載し続けることは禁止されている。
メディア向け利用規約は,契約又はサービス利用の終了後も広告素材,コンテンツ又はアフィリエイトリンクコードを掲載することを禁止している。
サイト運営者は,広告を貼った時点だけでなく,提携解除,プログラム終了及び退会時に広告素材を探して撤去できるよう,掲載URLの台帳を持つことが望ましい。
第5 禁止される成果発生及び広告表現
1 クリック又は申込みの依頼
公開規約は,自らの利益,サイト運営,募金又は支援を目的として,クリック,申込み又はインストールを依頼することを禁止している。
金品,ポイント,情報又はデータ等の対価と引き換えに申込み等をさせること,クラウドソーシング又は覆面調査として広告経由の申込みを指示することも含まれる。
2 自己申込み,不正クリック及び代理申込み
不正なクリック,申込み意思のない注文,同一広告への繰返し申込み,広告経由で入手した商品の転売,成果確定後の返品,虚偽又は他人の情報による申込み,代理申込み及びテスト目的の申込み等が禁止事項として列挙されている。
セルフバックその他,A8.netが別に設ける仕組みを利用する場合は,禁止事項とは別に,その仕組みの条件と所定の経路を確認する必要がある。
3 広告素材及び個別条件
広告主が提供する広告素材を無断で改変したり,成果条件を誤って説明したりすると,規約,知的財産権又は表示規制の問題が生じ得る。
A8.netの審査を通過したメディアであっても,掲載する個々の表現及び方法の適法性が保証されるわけではない。
第6 成果報酬,退会及び精算
1 成果の確定と証拠保存
成果が発生しても,成果の承認・確定又は否認・キャンセルを経て成果発生の有無が確定するため,発生しただけで支払対象として確定するとは限らない。
メディア会員は,プログラムの成果条件,否認条件,掲載ページ,広告素材,掲載期間及び管理画面上の成果記録を確認する必要がある。
ただし,管理画面を通じて提供された情報は常に秘密情報とする旨が公開規約に定められている。
問い合わせ又は紛争に備えて保存することと,ブログ又はSNSで公開することは別である。
公開規約には,秘密情報の第三者への開示に事前の書面同意を要する定め,目的外使用の禁止及び契約終了時の使用終了・返還・廃棄の定めもあるため,保存の範囲及び提示の方法も規約に照らして確認する必要がある。
2 自主退会
メディア会員は所定の方法で自主退会できる。
公開規約上の精算額は,未払成果報酬から金融機関所定の振込手数料と税別1000円の事務手数料を控除した額である。
精算額がマイナスの場合,ファンコミュニケーションズの支払義務がなくなるだけで,事務手数料を別途徴収しないとされている。
口座情報の不備,住所不明又はメール不達等により振込みができなかった場合の免責条項もあるため,退会前に登録情報及び受信設定を確認する必要がある。
3 強制退会
公開規約は,相当期間内に改善されない規約違反,法令違反,禁止行為,連絡不能,実質的な活動の停止,資格喪失,信用不安又はサービス提供に支障を及ぼす行為等を強制退会事由としている。
ファンコミュニケーションズは,自己の裁量により,これらの事由に該当する(該当するおそれがある場合を含む。)と判断したときは,通知又は催告なく退会させることができるとされている。
強制退会時の措置として,未払成果報酬の没収及び支払拒否,既払相当額の返還請求並びに強制退会に要した一切の費用(調査費用,訴訟等に要した合理的な弁護士費用等)の請求が掲げられている。
もっとも,規約に条項があることと,個別の紛争でその条項に基づく請求がすべて認められることは同じではない。
違反行為,成果との関係,通知経過,証拠及び適用される民法・消費者契約法等を個別に検討する必要がある。
本記事の調査の範囲では,A8.netの強制退会又は成果報酬没収条項の効力を直接判断した裁判例を公開ウェブ上で確認できなかった。
第7 秘密情報,個人情報及び外部送信
1 管理画面の情報
共通規約は,ファンコミュニケーションズの管理画面を通じて提供された情報を,秘密である旨の表示の有無にかかわらず,常に秘密情報とする。
メディア会員登録をしなければ閲覧できない広告主名,プログラム名,成果条件,成果報酬額,商品名,掲載条件及びそのキャプチャ等の公開も禁止事項として列挙されている。
2 登録情報の提供
公開規約は,アフィリエイトプログラム等の運営上の必要性から,ファンコミュニケーションズが広告主(運用代行を委託された代理店を含む。)へメディアの登録情報を告知する場合を定めている。
また,メディアサイト名,メディアID,氏名及びメディアサイトURLの広告主への開示,並びにトラッキング漏れ等の補てん対応又は不正調査の目的での登録外の個人情報を含む情報の開示・提供も定めている。
個人情報の取扱いについては,ファンコミュニケーションズの個人情報保護方針及び「個人情報の取扱いについて」も併せて確認する必要がある。
3 外部送信規律
A8.netは,リンクマネージャー及びインプレッション計測の仕組みが電気通信事業法の外部送信規律に該当する可能性があると案内している。
同社は,送信先を株式会社ファンコミュニケーションズ,送信される情報をIPアドレス,ユーザーエージェント,Cookie並びに広告の表示・閲覧又はクリックに関する情報,利用目的を広告配信及びそのデータ集計と説明している。
サイト運営者が外部送信規律の対象者となるか,どの措置が必要かは,提供する電気通信役務及び実際の送信内容に基づき確認しなければならない。
A8.netの案内を掲載するだけで足りると一律に判断することはできない。
第8 広告分野ごとの法令
1 薬機法及び医療広告
医薬品,医薬部外品,化粧品,医療機器及び再生医療等製品の広告には,薬機法上の広告規制がある。
医療機関のウェブサイト,治療内容及び体験談等には,医療法上の広告規制も問題となり得る。
A8.netには薬機法ガイド及び医療広告ガイドがあるが,運営会社の解説である。
具体的な表現を採用する前に,法令,厚生労働省の通知・ガイドライン及び個別商品の承認内容等を確認する必要がある。
2 著作権,商標及び肖像
広告素材,商品画像,ロゴ及び第三者のレビューを使用できる範囲は,広告主の条件及び権利者の許諾によって異なる。
提供された素材であることだけから,切抜き,改変,他媒体への転用又は契約終了後の利用まで許されるとは限らない。
第9 令和8年9月1日の規約改定
令和8年9月1日の改定により,登録外媒体への広告掲載禁止の記載のうち,「SNSのメッセージ」に付された「(LINE等)」の括弧書きと「Twitterアカウント」の語が削除された。
この改定は,個人宛てのSNSメッセージへの広告掲載を解禁したものではない。
改定後の公開規約にも,個人宛てのメール又はSNSメッセージ,PDF及び紙媒体等への掲載禁止が記載されている。
第10 確認の手順
1 掲載前
①掲載する媒体をA8.netに登録したか,②公開範囲に制限がないか,③個別プログラムの掲載条件,禁止キーワード及び成果条件を確認したか,④PR表記が個々の表示から見ても明瞭か,⑤表示内容の根拠があるか,⑥広告素材の使用方法が許されているか,⑦薬機法等の分野別規制及び外部送信規律を確認したか,を点検する。
2 掲載後及び終了時
掲載URL,掲載日,広告素材,表示内容,個別条件及び変更履歴を保存し,提携解除又はプログラム終了時に広告を撤去する。
問い合わせ又は調査を受けた場合は,管理画面情報を無関係な第三者へ公開せず,必要な範囲でA8.netへ提示する。
弁護士等の専門家へ相談する場合も,秘密情報の第三者への開示に当たり得るため,該当部分を伏せるか,事前に同社の書面同意を確認する。
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第12 出典
1 A8.net及び運営会社の公表資料
個人情報の取り扱いについて(株式会社ファンコミュニケーションズ)