第1 この記事の対象と結論
平成26年司法試験・刑事系科目第2問(刑事訴訟法)の解答例と評価表である。
宿泊を伴う任意取調べ,起訴後の被告人取調べ,主張・立証前の検察官による訴因変更を扱う。
評価項目は全40項目,重み5は5項目,重み合計は154であり,項目の分け方と重みは本記事独自の分析である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象問題 | 平成26年司法試験・刑事系科目第2問 |
| 公式問題文 | 法務省・刑事系問題PDFのPDF5~8頁の第2問 |
| 答案の基準時 | 平成26年の試験実施時。法令の確認版と範囲は第7に示す。 |
| 資料の状態 | 問題・出題趣旨・採点実感はいずれも対象範囲を実読済み。 |
| 主要事項 | 強制手段と相当性,起訴後取調べの根拠と限界,訴因変更の要否・可否 |
| 項目数と重み | N=40,重み5=5,W=154。法務省の配点ではない。 |
| 主要裁判例 | 最高裁昭和59年2月29日決定(昭和57年(あ)第301号,刑集38巻3号479頁)。最高裁昭和36年11月21日決定(刑集15巻10号1764頁)・最高裁平成13年4月11日決定(平成11年(あ)第423号,刑集55巻3号127頁)は公式資料の紹介による。 |
| 答案分量 | 改行除外3656字(見出し・空白を含む)。全設問合計5000字以内。 |
| 試験後の法制度 | 現行法の拘禁刑表記等を当時の答案へ置き換えない。 |
| 同年度への導線 | 第6の1に同年度の記事を示す。 |
| 確認日 | 令和8年11月2日 |
本答案は①を適法,②を違法,③を適法とし,検察官は殺人と窃盗の両公訴事実について訴因変更を請求すべきであるとする。
特に②の結論は公式資料が一つに限定しているものではなく,反対事情を含む具体的な理由付けが重要である。
第4の評価表,第5の答案・対応表・設問別解説を併せて参照されたい。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一項目は一つの評価上の役割を単位とし,関連する判断を一行にまとめたものも含め,公式資料の記述が答案のどの判断に対応するかを示した。
「注意」は誤りの回避,「許容分岐」は一定の立場を採る場合だけに適用する事項であり,重みとは別の区分である。
番号14・15は②について強制手段の使用を否定する立場のための項目であり,本答案に累積して要求しない。
根拠欄の短抜粋は,PDF上の行折返し・空白を除いて示し,PDF頁と見出しを付した。
明示的な記述に対応するものと,一般的記述からの「間接」の抽出を区別した。
「記載なし」は本問の対象範囲を読んだ結果,当該点の明示がないという意味であり,その見解が誤りであるという意味ではない。
同じ不足を肯定形の項目と注意項目で二重に減点する趣旨ではない。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 本記事の基準 |
|---|---|
| 5 | 設問の結論・論証構造を決める中核 |
| 4 | 主要な理由付け・当てはめ |
| 3 | 通常の論点処理・事実評価 |
| 2 | 補助的な論点・細部・注意 |
| 1 | 周辺的な補充事項 |
重みは,各項目が答案で果たす役割から個別に判断した。
注意事項を一律に2とせず,両公式資料に登場することだけで4ともしない。
本問では重み1・2の行を置かず,各段階に一定数を割り当てることはしていない。
重み合計を公式得点,順位,合格確率や他科目との難易度比較に換算することはできない。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
詳しくは公式問題PDFを参照されたい。
Vの殺害と指輪の窃盗について,指輪を質入れした甲が任意同行され,宿泊を挟んで①②の取調べを受ける。
一回目は甲が自費で単独宿泊し,二回目は警察官3名が襖を隔てた間に待機する。
逮捕・起訴後,乙の窃盗を裏付ける新証拠が現れ,Rは③の取調べを行い,殺害日と指輪の取得経緯について従来と異なる心証を得る。
| 時点 | 主要な出来事 |
|---|---|
| 2月11日夜~12日 | 甲の自費・単独宿泊後,①は午前10時~午後9時。殺人の自白・供述録取書・図面を得る。 |
| 2月12日夜~13日 | 二回目の宿泊では警察官が同じ客室の別の間に待機。翌朝から②,午後4時に通常逮捕。 |
| 3月5日・8日 | 殺人・窃盗で起訴された後,乙の窃盗供述と客観的な裏付けが判明。 |
| 3月24日以後 | 第1回公判前整理手続期日前に③。Rは2月3日の殺人と2月2日夜の盗品無償譲受けを立証する方針へ。 |
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・仮定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1の1 | 警察官の①②の取調べ | 各取調べより前の事情を区別する。自白の証拠能力は独立の問いではない。 | 各取調べの適法性 |
| 1の2 | 検察官の③の取調べ | 起訴後・公判前整理手続期日前。被告事件の取調べである。 | 根拠・許容条件と本件の適法性 |
| 2 | ④の方針を採る検察官R | 殺人と窃盗の双方。主張・立証を展開する以前。 | 変更の要否・可否と採るべき措置 |
第4 評価項目と重み
1 任意取調べ①②
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 被疑者の任意取調べの法的根拠と出頭拒否・退去の自由を示す | 3 | 間接:PDF12頁・〔第2問〕「適法性を論じさせることにより,刑事訴訟法第198条に基づく任意捜査の一環としての被疑者取調べがいかなる限度で許されるか,」 | 間接:PDF38頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「刑事訴訟法第198条に基づく任意捜査の一環としての被疑者の取調べがいかなる限度で許されるかにつき」 |
| 2 | 強制手段の有無と任意捜査としての相当性を二段階で判断する | 5 | 〔第2問〕・PDF12頁「第一に,強制手段を用いることは許されない」/PDF12頁「社会通念上相当と認められる方法・態様及び限度において許容されるという二段階の適法性の判断枠組み」 | PDF38頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において許容されるという二段階の適法性の判断枠組みを示しており,本問では,この判例法理の正確な理解を踏まえ,適法性の判断枠組みを示すことが求められる。」 |
| 3 | 意思抑圧・身体の自由の制約から実質的な強制手段を判定する | 4 | PDF12頁・〔第2問〕「それらが甲の意思を制圧するに至っているか,甲の行動の自由を侵害しているかという観点から評価することが求められる。」 | 記載なし(当該点の明示) |
| 4 | 事案の性質・嫌疑・態度等から相当性の判断基準を示す | 4 | PDF12頁・〔第2問〕「強制手段を用いない場合でも,事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法・態様及び限度において許容される」 | 刑事系科目第2問・PDF38頁「事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において許容される」 |
| 5 | ①直前の自費宿泊・単独移動等を自由の保障として評価する | 4 | PDF12頁・〔第2問〕「宿泊に至った経緯,費用負担,警察による監視の有無,翌日の出頭経緯及び取調べ状況等を具体的に指摘しつつ」 | 間接:PDF39頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「初日の宿泊と2日目の宿泊とでは,その態様に大きな差異があるのであるから,その差違を明確に意識し」 |
| 6 | ①の中止・退去申出の不存在を他の事情と併せて評価する | 3 | 間接:PDF12頁・〔第2問〕「翌日の出頭経緯及び取調べ状況等を具体的に指摘しつつ,それらが甲の意思を制圧するに至っているか,甲の行動の自由を侵害しているかという観点から評価する」 | 記載なし(当該点の明示) |
| 7 | ①時点の重大性と指輪質入れ等を殺人・窃盗の嫌疑及び必要性に結び付ける | 4 | 〔第2問〕・PDF13頁「殺人・窃盗は同一犯人によって実行された可能性が高く,甲には窃盗のみならず殺人の嫌疑も存在する」 | 記載なし(当該点の明示) |
| 8 | ①の長時間取調べと食事・休憩等を比較して負担を評価する | 4 | 間接:PDF12頁・〔第2問〕「被疑者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法・態様及び限度において許容される」 | 記載なし(当該点の明示) |
| 9 | ①直前の宿泊を相当性の段階でも休息・自由への影響から検討する | 3 | PDF12頁・〔第2問〕「第二段階の相当性の判断においても,宿泊を伴うことは判断要素の一つとなる。」 | PDF39頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「宿泊に関する具体的な事情が強制処分性及び任意処分としての相当性の判断においていかなる意味を持つのかについて適切な分析・検討を加えた上で」 |
| 10 | ②の宿泊応諾と警察官同室への拒否・諦めを分けて同意を評価する | 4 | 〔第2問〕・PDF13頁「やはり説得によって諦めたこと」/PDF13頁「宿泊とそれに引き続く取調べについて有効な承諾があったと見得るかどうか」 | 間接:PDF39頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「具体的事情の抽出が恣意的であったり,その分析がいささか非常識ではないかと感じさせたりするものも散見され」 |
| 11 | ②の客室構造・警察官の配置を退去の自由への制約として評価する | 4 | 間接:PDF13頁・〔第2問〕「両者は,宿泊の態様が大きく異なっているから,この点を意識して論じる必要がある。」 | 間接:PDF39頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「初日の宿泊と2日目の宿泊とでは,その態様に大きな差異があるのであるから」 |
| 12 | ②を直前の宿泊・警察車両での移動と連続して評価する | 4 | PDF13頁・〔第2問〕「評価が分かれ得る事情であり,宿泊とそれに引き続く取調べについて有効な承諾があったと見得るかどうかに関し,丁寧な検討と説得的な論述が求められる。」 | PDF39頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「2日目の宿泊はその翌日の「②甲の取調べ」のための出頭確保の手段として,それぞれ用いられている。」 |
| 13 | ②の中止・退去申出がないことを直ちに自由な同意と扱わない | 3 | PDF13頁・〔第2問〕「「②甲の取調べ」において中止や途中退出を求めることはなかったことについては,評価が分かれ得る事情であり」 | 記載なし(当該点の明示) |
| 14 | 【許容分岐】②を任意とする場合は既存の具体的自白等による嫌疑・必要性の変化を①と比較する | 4 | 〔第2問〕・PDF13頁「「②甲の取調べ」の時点では,甲がその前日,窃盗に加えて殺人の事実についても具体的に自白して供述録取書の作成に応じ」 | 刑事系科目第2問・PDF39頁「「②甲の取調べ」について,強制処分性を否定し,任意処分としての相当性を論じる場合には」/PDF39頁「「①甲の取調べ」時点と「②甲の取調べ」時点とでは,甲に対する容疑の程度に差異が生じている」 |
| 15 | 【許容分岐】②を任意とする場合は二回目の宿泊態様を相当性の段階でも評価する | 3 | 〔第2問〕・PDF13頁「「②甲の取調べ」の前提となったHホテルにおける宿泊について,第二段階の相当性の判断においても検討が必要であることは,「①甲の取調べ」と同様である。」 | PDF39頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「宿泊に関する具体的な事情が強制処分性及び任意処分としての相当性の判断においていかなる意味を持つのかについて適切な分析・検討を加えた上で」 |
| 16 | 【注意】相当性の限度を超えたことだけを理由に強制手段としない | 4 | 〔第2問〕・間接:PDF13頁「両者を混同することなく,段階を追った検討が求められる。」 | 刑事系科目第2問・PDF39頁・批判された答案の例:「相当性を逸脱していることを理由に強制処分に該当するとの結論を導くような答案も見られた。」 |
| 17 | 【注意】二回目の宿泊事情をそれ以前の①へ遡って使わない | 4 | 記載なし(当該点の明示) | 刑事系科目第2問・PDF39頁・誤りとして指摘された例:「「①甲の取調べ」の適法性について,それに引き続く同日夜の宿泊(2日目の宿泊)が及ぼす影響を論じたもの」/PDF39頁「このような答案は,上述のような宿泊と取調べの関係を適切に把握できていないものといわざるを得ない。」 |
| 18 | ①と②それぞれについて理由と整合する適法性の結論を示す | 3 | 〔第2問〕・PDF12頁「「①甲の取調べ」及び「②甲の取調べ」のそれぞれについて」/PDF12頁「具体的事実がその判断枠組みにおいてどのような意味を持つのかを意識しながら,その適法性を検討する必要がある。」 | 刑事系科目第2問・間接:PDF37頁「各取調べの適法性を論じることを求めている。」 |
2 起訴後の取調べ③
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 19 | 198条の被疑者という文言から被告人取調べの直接の根拠がない問題を示す | 4 | PDF13~14頁・〔第2問〕「刑事訴訟法第198条の取調べの客体は「被疑者」とされていることから,「被告人」の取調べの法的根拠も問題となる。」 | 刑事系科目第2問・PDF39頁「刑事訴訟法第198条は取調べの対象を「被疑者」とするのみで,「被告人」の取調べについては何ら規定がない」 |
| 20 | 起訴後取調べと公判中心主義との緊張関係を説明する | 4 | 〔第2問〕・PDF13頁「公判廷外で真相解明に向けた証拠収集活動が行われることになるという観点からは,公判中心主義に抵触する可能性があり」 | 刑事系科目第2問・PDF39頁「起訴後の被告人の取調べが公判中心主義及び当事者主義の要請の少なくともいずれかと抵触するおそれがあり」 |
| 21 | 起訴後取調べと被告人の対等な当事者の地位との緊張関係を説明する | 4 | 〔第2問〕・PDF13頁「検察官と訴訟上対等な地位にある被告人を取調べの対象とするという観点からは,当事者主義に抵触する可能性がある。」 | 間接:PDF40頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「どのような取調べであれば当事者主義との抵触を避けることができるか,任意性を確保するにはどのような方策が必要かを意識しつつ」 |
| 22 | 起訴後にも公訴の適正な維持のため捜査が必要な場合があると説明する | 4 | PDF13頁・〔第2問〕「他方,起訴後,公訴維持のために被告人の取調べを含む捜査が必要になることがあることも否定できない。」 | 刑事系科目第2問・PDF37頁「起訴後においても公訴維持のために被告人の取調べが必要となる場合があること」 |
| 23 | 179条・226条・227条の制度と起訴後捜査の解釈を整合させる | 3 | 〔第2問〕・PDF13頁「公判廷外での証拠収集活動(第1回公判期日前の証人尋問(法第226条,第227条),証拠保全(法第179条)など)が認められている」 | PDF40頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「刑事訴訟法上,少なくとも第1回公判期日前の証拠収集活動が一定程度認められていること(同法第179条,第226条,第227条等)にも注意が払われてよかった。」 |
| 24 | 197条1項の任意捜査として限定的に許容する規範を示す | 5 | PDF14頁・〔第2問〕「刑事訴訟法第197条第1項の任意捜査として許されることがある旨判示した」 | PDF40頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「刑事訴訟法第197条第1項の任意捜査として許される場合がある旨判示している。」 |
| 25 | 【注意】被告人勾留を取調べ受忍義務の根拠としない | 4 | 記載なし(当該点の明示) | 刑事系科目第2問・PDF42頁・「不良の水準」の答案例:「被告人が勾留されていることを理由に取調べ受忍義務があるとして取調べを適法とするような答案」 |
| 26 | 乙の供述と客観的裏付けから従来の起訴内容を再検討する具体的必要性を示す | 4 | 〔第2問〕・PDF14頁「乙の自白及びそれに基づき明らかとなったその他の具体的事情に照らし」/PDF14頁「公訴維持にいかなる問題を生じているか,その問題を解決するために甲の取調べが必要か」 | 刑事系科目第2問・間接:PDF37頁「起訴後においても公訴維持のために被告人の取調べが必要となる場合があること」 |
| 27 | 取調べ拒否・供述拒否の告知と甲の応諾を任意性の確保として評価する | 4 | 〔第2問〕・間接:PDF14頁「どのような方策を講じれば取調べの任意性を確保できるか」 | 刑事系科目第2問・間接:PDF40頁「任意性を確保するにはどのような方策が必要か」 |
| 28 | 【注意】必要性や甲に有利な変更という理由だけで③を適法としない | 3 | 記載なし(当該点の明示) | 刑事系科目第2問・PDF40頁・安易な理由付けとして指摘:「捜査の必要性があることを理由にこれを適法としたり」/PDF40頁「それは被告人に有利な変更であるからという理由でこれを適法としたりするなど,安易な理由付けで結論に至っている」 |
3 訴因変更
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 29 | 殺人と窃盗の双方について訴因変更の要否と可否を区別して検討する | 5 | 〔第2問〕・PDF14頁・殺人・窃盗の両事実の変動を受けた記述:「訴因変更が必要か,また,訴因変更が可能かについて,検討する必要がある。」 | 刑事系科目第2問・PDF40頁「第1事実,第2事実それぞれについて,訴因変更の要否及び可否を論じることが求められている。」 |
| 30 | 検察官が主張・立証前に異なる事実を意識的に立証する局面を識別する | 5 | PDF14頁・〔第2問〕「公判前整理手続開始前,すなわち具体的な主張・立証を展開する以前に訴因と異なる心証を得て,その心証に基づく主張・立証活動を行おうとする場合」 | PDF40頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「公判前整理手続の開始前,検察官による具体的な主張・立証がされておらず,それに対する被告人側のアリバイ等の主張も何ら行われていない段階での訴因変更が問題であり」 |
| 31 | 訴因を主張・防御及び将来の争点整理の基礎として変更の要否を論じる | 5 | 〔第2問〕・間接:PDF14頁「変動が生じた事実が「罪となるべき事実」を特定して記載した訴因においていかなる意味を持つ事実であるか」 | PDF40頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「公判において主張・立証を主導する検察官の立場やそのような検察官が設定する訴因の役割,後の公判前整理手続における争点整理の要請等を踏まえた上で,検察官が立証方針を変更した場合に何が求められるかとの視点や」 |
| 32 | 殺害日時の変更が今後のアリバイ等の防御対象を変えるため変更を要すると論じる | 4 | 〔第2問〕・間接:PDF14頁「第1事実(殺人)については,犯行の日時に変化を生じており」 | 刑事系科目第2問・間接:PDF40頁「訴因を変更すること,又は変更しないことが,被告人の将来の防御権行使にいかなる影響を与えるか」 |
| 33 | 窃取から盗品無償譲受けへの変更が行為・認識等の防御対象を変えると論じる | 4 | PDF14頁・〔第2問〕「第2事実(窃盗)については,実行行為が盗品等無償譲受行為へと変化し,犯行の日時及び場所にも変化を生じている。」 | PDF41頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「変動した事実が「罪となるべき事実」を特定した訴因においていかなる意味を持つ事実かを端的に指摘し,訴因変更が必要である理由を明瞭に示す」 |
| 34 | 312条1項の公訴事実の同一性を基本的事実関係の同一性で判断する | 4 | PDF14頁・〔第2問〕「最高裁の判例は,「基本的事実関係が同一」かどうかを基準とした判断を積み重ねてきている」 | PDF41頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「「公訴事実の同一性」につき,基本的事実関係が同一であるか否かを判断基準とし」 |
| 35 | 殺人の新旧訴因を同じ被害者の一回の殺害として具体的に比較する | 3 | 間接:PDF14頁・〔第2問〕「犯罪の日時,場所,行為の態様・方法・相手方,被害の種類・程度等の共通性に着目して結論を導くもの」 | 記載なし(当該点の明示) |
| 36 | 窃盗と譲受けの日時・場所・行為態様の相違を具体的に比較する | 4 | PDF14頁・〔第2問〕「犯行の日時及び場所にも変化を生じている。」 | PDF41頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「両者の具体的な事実を比較検討して当てはめ,結論を導くことが求められている。」 |
| 37 | 同一の指輪と犯行日時の近接という共通性を同一性判断へ結び付ける | 4 | 〔第2問〕・間接:PDF14頁「犯罪の日時,場所,行為の態様・方法・相手方,被害の種類・程度等の共通性に着目して結論を導く」 | 刑事系科目第2問・PDF41頁「指輪1個と盗品無償譲受けの目的物である指輪1個とが同一のものである点や,窃盗の犯行日時と盗品無償譲受けの犯行日時とが十分近接している点」 |
| 38 | 本件の取得過程を比較して共通性と非両立性の関係を説明する | 4 | 〔第2問〕・間接:PDF14頁「共通性に着目して結論を導くものと,両訴因の非両立性に着目して結論を導くものがある」 | 刑事系科目第2問・PDF41頁「基本的事実関係の同一性と訴因の非両立性との関係については,明確に整理されていないものも少なくなかった。」/PDF41頁「事案ごとの具体的な事実関係を前提に,変更前後の訴因の共通性や非両立性を検討し」 |
| 39 | 【注意】構成要件の相違や抽象的な非両立性だけから同一性を決めない | 3 | 記載なし(当該点の明示) | 刑事系科目第2問・PDF41頁・不十分な答案として指摘:「具体的事実を十分比較することなく,窃盗と盗品等無償譲受けは構成要件上両立しないとして」/PDF41頁・不十分な答案として指摘:「逆に,両事実は構成要件が異なっているとして,そこから直ちに基本的事実関係の同一性を否定する答案も存在した。」 |
| 40 | 変更後の事実と罰条を特定して検察官の採るべき措置を示す | 3 | 間接:PDF14頁・〔第2問〕「主張・立証活動を行おうとする場合に採るべき措置について検討を求めるものである」 | 間接:PDF40頁・刑事系科目第2問・2 採点実感「検察官が講じるべき措置として訴因変更が問題となることはおおむね理解されていた。」 |
4 重みの分布
重み5が5項目,4が24項目,3が11項目,2・1が各0項目で,合計40項目,重み合計154である。
重み5は番号2・24・29・30・31であり,二段階審査,起訴後取調べの限定的許容,両公訴事実の要否と可否,立証前の手続段階及び訴因の機能を中核とした。
条件付きの番号14・15を除いた本答案の適用対象は38項目・重み合計147となるが,これも公式得点の満点を意味しない。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
平成26年の試験実施時を基準とするAI作成の解答例である。
法令の確認版と判例原文の確認範囲は第7に示す。
第1・第2で設問を分け,1・2及び⑴等で論述を整理し,規範,事実評価,結論を接続した。
答案本体は改行を除き3656字(見出し・空白を含む)であり,枠外の解説はこの字数に含めない。
2 答案
第1 設問1
1 ①及び②の取調べ
⑴ 判断枠組み
刑事訴訟法(以下「法」という。)198条1項は捜査に必要な被疑者取調べを認めるが,逮捕・勾留されていない被疑者には出頭拒否・退去の自由を保障している。
任意取調べとして,意思を制圧し身体の自由を制約して捜査目的を強制的に実現するなど,特別の根拠なしに許容できない強制手段を用いることはできない(197条1項ただし書)。
直前の宿泊・移動と取調べを一連のものとして,実質的に自由を奪っていないかを判断する。
強制手段を用いない場合にも,事案の性質,嫌疑の程度,被疑者の態度,時間・方法等を総合し,捜査の必要性と意思決定・行動の自由への負担を比較して,社会通念上相当な方法・態様及び限度にとどまる必要がある。
この相当性を欠くことと,強制手段に当たることとは別である。
⑵ ①の取調べ
甲は勤務を理由に翌日の出頭に難色を示したが,説得後は1日休んで応じる旨を述べた。
深夜の帰寮のタクシー代よりホテル代が安いと考えて自ら宿泊先の紹介を求め,自分で歩いて行き,自費で宿泊した。
警察官は同行も宿泊中の監視もせず,翌朝も甲が単独で出頭した。
仕事を巡る説得はあっても,宿泊・出頭を選ぶ自由は確保されていた。
取調べ中にも中止・退去の申出はなく,これを妨げる事情は示されていない。
したがって,強制手段を用いたとはいえない。
次に,Vが頭部を多数回殴打され死亡した重大事件であり,甲は被害品の指輪を質入れし,その入手経緯を変遷させ,窃盗を認めた後に撤回していた。
同じ家での殺人・窃盗が一連の犯行である可能性から,嫌疑は窃盗だけでなく殺人にも及ぶ。
他の手掛かりが乏しく,甲から入手経緯や事件への関与を確かめる必要性は高い。
確かに,前日の取調べに続き,①も午前10時から午後9時まで11時間に及び,負担は大きい。
しかし,前夜は監視のないホテルで休息でき,当日も食事・休憩が適宜与えられた。
供述拒否権の告知がされ,強圧的な追及等の事情は示されていない。
午後6時の自白後には供述録取書や図面の作成もされている。
宿泊による自由への負担も含めて必要性と比較すれば,相当な限度を超えたとはいえず,①は適法である。
⑶ ②の取調べ
甲は帰寮して社長に相談したいと述べたが,Pが社長には電話で相談するよう勧め,警察の費用負担を申し出て説得すると宿泊に応じた。
警察官が襖を隔てた隣の間にも泊まると知った後も最終的には就寝し,②でも中止・退去を求めていない。
これらは同意の存在をうかがわせる。
しかし,宿泊への応諾は警察官3名と同じ客室で過ごすことへの承諾とは異なる。
甲は警察官らに帰ってほしい,少なくとも個室にしてほしいと明確に訴えた。
7階の客室で,甲の6畳間から通路へ出るには警察官3名が待機する8畳間を必ず通り,両室は施錠できない襖で仕切られるだけである。
のぞかない旨の説明でも,退去経路が警察官の管理下にある状況は変わらない。
この構造と人数,拒否後も待機が続いたことを併せると,諦めて就寝したことを自由な同意と評価するのは困難であり,実質的に身体の自由を制約したといえる。
翌朝も警察車両で移動してそのまま②が始まり,前夜の拘束を解いて自由な出頭を選び直せる状況に戻った事情は示されていない。
退去の申出がないことや供述拒否権の告知だけでは,継続する身体拘束は解消しない。
したがって,②は逮捕前に強制手段を用いた取調べであり,違法である。
①で具体的自白,供述録取書及び凶器の投棄場所の図面が得られ,②では嫌疑が強まり裏付け捜査の必要があった。
しかし,その変化は令状のない実質的拘束を正当化せず,後の通常逮捕も②を遡って適法にしない。
2 ③の取調べ
③は起訴された事件についての被告人取調べである。
198条が対象とするのは「被疑者」であり,被告人取調べの直接の根拠規定とはならない。
起訴後は,公判の攻撃防御を通じて事実を明らかにする公判中心主義が妥当し,公判外の証拠収集としての取調べはこれと緊張する。
また,検察官と対等な訴訟当事者となった被告人を取調べの客体として扱うことは,その地位を損なうおそれがある。
他方,起訴後に新証拠が判明すれば,適正な公訴維持のための捜査が必要な場合もある。
法も,179条の証拠保全,226・227条の証人尋問を第1回公判期日前まで認め,起訴後の公判外の証拠収集を一律には排除していない。
これらは被告人取調べの直接の授権規定ではないが,公判中心主義から直ちに全面禁止を導くこともできない。
そこで,被告人取調べはその当事者の地位に照らしてなるべく避けるべきであるが,197条1項の任意捜査として,公訴維持に必要で,被告人の真に任意の協力に基づき,防御上の地位を害しない相当な限度で許されると解する。
被告人勾留から取調べ受忍義務を導くことはできない。
本件では,乙が指輪等の窃盗を供述し,宝石箱の指紋,乙の質入先から発見されたペンダント及びその所有関係が裏付けとなり,クラブにも乙の指紋があった。
従来の甲の自白と起訴内容に誤りがある可能性が生じており,甲・乙の関与を確かめる必要は高い。
単に自白を重ねて得るための取調べではない。
Rは,第1回公判前整理手続期日前に,甲へ取調べ自体を拒否できることと,応じても供述を拒否できることを告知し,応諾後に新事情を尋ねた。
拘置所内で弁護人を立ち会わせていない点も踏まえ,甲の当事者としての地位が不当に侵害されていないかを検討する。
拒否の自由を告げて応諾を得ており,接見を妨げたり応諾を強いたりした事情は示されていない。
必要性のみならず任意性と態様を併せれば,③は許容限度内であり適法である。
第2 設問2
1 訴因変更の要否と可否
訴因は,検察官が罪となるべき事実を特定して主張することで審判対象を画定し,被告人に防御対象を知らせるものである(256条3項)。
訴因と異なる事実への変更が必要かという要否と,その変更が許されるかという可否は区別する。
本件は,証拠調べ後の裁判所が異なる事実を認定する場面ではなく,検察官が主張・立証前に別の事実を意識的に立証しようとする場面である。
審理の経過から不意打ちや具体的不利益がないとして変更を不要とする考え方を,そのまま当てはめるべきではない。
検察官の訴因が,これからの主張・立証,公判前整理手続の争点整理及び被告人の防御準備の基礎になるから,防御上重要な事実を異なるものとして立証するなら,それに合わせて訴因を変更して対象を明示すべきである。
変更の可否については,312条1項により公訴事実の同一性を害しないことを要する。
新旧訴因の基本的事実関係の同一性を,日時・場所・対象・行為態様等の共通性と相違,具体的な非両立性を併せて判断する。
2 資料第1の殺人
④では殺害日時を2月2日午後1時頃から翌3日午後1時頃に変える。
日時は殺人罪の構成要件そのものではないが,どの日の行動やアリバイを調査・主張するかを左右する。
まだ具体的な攻撃防御を始めていない以上,甲が新日時を供述したことだけで将来の防御への影響を否定できない。
Rは立証予定に合わせて日時変更を請求すべきである。
他方,被告人甲,被害者V,W方居間という場所,クラブで頭部等を殴打する方法及びVの死亡結果は共通し,同じ一回の殺害を対象としている。
日時の相違によって別の殺害事実に変わるものではないから,基本的事実関係の同一性があり,変更は許される。
3 資料第2の窃盗
④の事実は,2月2日午後7時頃,U建設会社従業員寮の居室で,甲が乙の盗んだ物と知りながら指輪を無償で受領したという盗品無償譲受け(刑法256条1項)である。
W方での窃取とは実行行為が異なり,受領の有無及び盗品の認識が防御対象となる。
訴因を窃盗のままにしてその主張・立証を進めることは防御対象を不明確にするため,変更を要する。
可否については,場所がW方から寮へ,行為が窃取から譲受けへと異なる。
しかし,対象は同一の指輪1個であり,日時も同日午後1時頃と午後7時頃で近接している。
いずれも,この指輪が被害者側の占有を離れて翌日の質入れをした甲の手に入る過程についての事実である。
甲自身が奪取して取得したとの説明と,乙が奪取した物を甲が乙から初めて取得したとの説明は,本件の一個の取得過程の説明として両立しない。
犯罪類型が異なるから直ちに同一性を否定するのでも,抽象的に窃盗と譲受けが両立しないから直ちに肯定するのでもなく,この共通性・近接性と具体的非両立性を総合すれば,基本的事実関係の同一性があり,変更は許される。
したがって,Rは第1事実の殺害日時を変更し,第2事実について上記の日時・場所・乙からの無償受領及び盗品の認識を明示した訴因と刑法256条1項の罰条への変更を請求すべきである。
同一性の範囲内の変更で対応できるため,公訴を取り消して別途起訴する必要はない。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案第1の1は番号1~18,第1の2は19~28,第2は29~40に対応する。
中核の番号2は第1の1⑴,24は第1の2,29~31は第2の1で論じている。
重み3以下の通常項目では,番号1・6・9は第1の1⑴⑵,13は同⑶,18は同⑵⑶,23・28は第1の2,35は第2の2,39・40は第2の3に対応する。
第4の重み5・4の項目及び条件付きの項目について,模範解答との対応を次の表に示す。
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 2 | 5 | 強制手段の有無と任意捜査としての相当性を二段階で判断する | ⑴ 判断枠組み。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 3 | 4 | 意思抑圧・身体の自由の制約から実質的な強制手段を判定する | ⑴ 判断枠組み。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 4 | 4 | 事案の性質・嫌疑・態度等から相当性の判断基準を示す | ⑴ 判断枠組み。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 5 | 4 | ①直前の自費宿泊・単独移動等を自由の保障として評価する | ⑵ ①の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 7 | 4 | ①時点の重大性と指輪質入れ等を殺人・窃盗の嫌疑及び必要性に結び付ける | ⑵ ①の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 8 | 4 | ①の長時間取調べと食事・休憩等を比較して負担を評価する | ⑵ ①の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 10 | 4 | ②の宿泊応諾と警察官同室への拒否・諦めを分けて同意を評価する | ⑶ ②の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 11 | 4 | ②の客室構造・警察官の配置を退去の自由への制約として評価する | ⑶ ②の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 12 | 4 | ②を直前の宿泊・警察車両での移動と連続して評価する | ⑶ ②の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 14 | 4 | 【許容分岐】②を任意とする場合は既存の具体的自白等による嫌疑・必要性の変化を①と比較する | 本答案は②を強制手段とするため不適用。任意説を採る場合だけ追加する。 |
| 15 | 3 | 【許容分岐】②を任意とする場合は二回目の宿泊態様を相当性の段階でも評価する | 本答案は②を強制手段とするため不適用。任意説を採る場合だけ追加する。 |
| 16 | 4 | 【注意】相当性の限度を超えたことだけを理由に強制手段としない | ⑴ 判断枠組み。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 17 | 4 | 【注意】二回目の宿泊事情をそれ以前の①へ遡って使わない | ⑵ ①の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 19 | 4 | 198条の被疑者という文言から被告人取調べの直接の根拠がない問題を示す | 2 ③の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 20 | 4 | 起訴後取調べと公判中心主義との緊張関係を説明する | 2 ③の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 21 | 4 | 起訴後取調べと被告人の対等な当事者の地位との緊張関係を説明する | 2 ③の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 22 | 4 | 起訴後にも公訴の適正な維持のため捜査が必要な場合があると説明する | 2 ③の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 24 | 5 | 197条1項の任意捜査として限定的に許容する規範を示す | 2 ③の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 25 | 4 | 【注意】被告人勾留を取調べ受忍義務の根拠としない | 2 ③の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 26 | 4 | 乙の供述と客観的裏付けから従来の起訴内容を再検討する具体的必要性を示す | 2 ③の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 27 | 4 | 取調べ拒否・供述拒否の告知と甲の応諾を任意性の確保として評価する | 2 ③の取調べ。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 29 | 5 | 殺人と窃盗の双方について訴因変更の要否と可否を区別して検討する | 第2 設問2。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 30 | 5 | 検察官が主張・立証前に異なる事実を意識的に立証する局面を識別する | 1 訴因変更の要否と可否。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 31 | 5 | 訴因を主張・防御及び将来の争点整理の基礎として変更の要否を論じる | 1 訴因変更の要否と可否。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 32 | 4 | 殺害日時の変更が今後のアリバイ等の防御対象を変えるため変更を要すると論じる | 2 資料第1の殺人。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 33 | 4 | 窃取から盗品無償譲受けへの変更が行為・認識等の防御対象を変えると論じる | 3 資料第2の窃盗。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 34 | 4 | 312条1項の公訴事実の同一性を基本的事実関係の同一性で判断する | 1 訴因変更の要否と可否。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 36 | 4 | 窃盗と譲受けの日時・場所・行為態様の相違を具体的に比較する | 3 資料第2の窃盗。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 37 | 4 | 同一の指輪と犯行日時の近接という共通性を同一性判断へ結び付ける | 3 資料第2の窃盗。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
| 38 | 4 | 本件の取得過程を比較して共通性と非両立性の関係を説明する | 3 資料第2の窃盗。規範・事実評価又は当該誤りの回避として対応。 |
(2) 設問1の1――二段階の判断と宿泊の意味
出題の趣旨は,強制手段の有無を先に検討し,これを否定した場合に任意捜査としての相当性を検討する構造を示す。
採点実感は,相当性を超えたから強制処分であるという混同や,後の宿泊事情を①の評価に使う時系列の誤りを指摘する。
答案は二段階を分け,①の自由な宿泊・出頭と,②の明示的な同室拒否後も警察官が退去経路に待機する状況を対比した(番号2~17)。
②では応諾,諦めて就寝したこと,中止・退去を求めなかったことの評価が分かれ得る。
答案はこれらを反対事情として扱った上で,客室構造と拒否後の待機を併せ,実質的拘束を肯定する。
施錠や現実の退去阻止という与件を補っているわけではない。
②の強制手段を否定する立場では,①で具体的自白・録取書・図面を得たことによる嫌疑・必要性の変化と,二回目の宿泊態様を相当性の段階で論じる必要がある(番号14・15)。
宿泊取調べに関する昭和59年決定は,特定の事情の下で違法とまでは断じ難いとした事例である。
同判例の結論を本問へそのまま移すのではなく,承諾,監視,退去の自由などを比較すべきである。
採点実感も,判例が適法・違法の境界でどの位置を占めるかまで理解することの重要性を述べている。
(3) 設問1の2――被告人取調べの根拠と限界
公式資料は,公判中心主義・当事者主義と公訴維持の必要を調整し,198条が被疑者を対象とすること及び179・226・227条等との整合性を考えるよう求める。
答案は,関連条文を被告人取調べの直接の授権規定とはせず,公判外の証拠収集を一律に排除する制度ではないことの裏付けとした上で,197条の任意捜査として限定的に許容する(番号19~27)。
採点実感が批判するのは,捜査の必要性があることや,予定される訴因変更が甲に有利であることだけで適法とする論述である。
答案は乙の供述と客観的証拠から必要性を示し,取調べ拒否と供述拒否の双方の告知,応諾及び実施態様を別に評価する(番号26~28)。
弁護人が立ち会っていないという与件も,甲の当事者としての地位を不当に侵害したかという本答案の具体的評価の中で考慮した。
公式資料が弁護人不立会いに関する独立の採点項目や一般的な適法要件を示したものではない。
(4) 設問2――立証前の訴因変更
出題の趣旨と採点実感は,裁判所が証拠調べ後に異なる事実を認定する局面と,検察官が主張・立証前に別の事実を立証しようとする局面の違いを重視する。
答案は,既に経た審理における不意打ちの有無を中心にせず,今後の主張・立証,争点整理及び防御準備の基礎となる訴因を整える必要を説明した(番号29~33)。
殺害日時はアリバイ等の防御対象を変える一方,同じVの一回の死亡を対象とするため変更が許される。
窃盗から盗品無償譲受けへの変更では,行為・場所の相違を示した上で,同一指輪,同日内の日時の近接,甲への取得経路について競合する具体的説明であることを評価する(番号34~40)。
「乙から初めて取得」は新しい取引の事実を付け加える趣旨ではなく,問題の二つの取得経緯を比較するための説明である。
構成要件の相違又は抽象的な非両立性だけで同一性を決めるべきではない。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
②の有効な同意や実質的拘束,③における任意性の評価には争いの余地がある。
本答案の結論だけを正解として採点することはできず,異なる結論でも,反対事情・基準・適用が整合しているかを検討する必要がある。
自白の証拠能力,派生証拠の排除,逮捕・勾留の期間計算は,本問で独立に問われていないため展開していない。
判例・法令の確認範囲は第7のとおりであり,評価項目を列挙したことだけで答案の十分性が保証されるわけではない。
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第7 出典及び確認状態
1 公式資料
平成26年司法試験・刑事系科目問題
平成26年司法試験論文式試験問題出題趣旨
平成26年司法試験の採点実感等に関する意見
問題はPDF5頁の第2問見出しから8頁末尾まで,趣旨は全科目PDF12頁の第2問見出しから14頁の選択科目見出し直前まで,採点実感は全科目PDF37~42頁の刑事系科目第2問全体を確認した。
採点方針・採点実感・答案の評価・法科大学院教育に求めるものを含む。
三資料とも本問の対象範囲は実読済みであり,公式の掲載資料の保存PDFを用いている。
2 法令
刑事訴訟法・法務省日本法令外国語訳データベース日本語版(平成23年法律74号反映)
刑法・同日本語版(平成19年法律54号反映)
刑訴法179・197・198・199・226・227・256・312条,刑法256条の本文を確認した。
これらの版から平成26年試験実施時までの全改正履歴を独立に照合したものではない。
答案の基幹となる構成は,平成26年の公式出題趣旨・採点実感と対照した。
3 裁判例
最高裁昭和59年2月29日第二小法廷決定(昭和57年(あ)第301号,刑集38巻3号479頁)
昭和59年決定は,裁判所掲載PDF1~5頁及び6頁途中の本文を読み,任意取調べの基準と本件に関係する事情を確認した。
最高裁昭和36年11月21日決定(刑集15巻10号1764頁)及び最高裁平成13年4月11日決定(平成11年(あ)第423号,刑集55巻3号127頁)は,公式資料が示す問題設定・説明を参照した。
これら二決定及び公訴事実の同一性に関して公式資料が挙げる各判例の原文を,本記事で独立に全件確認したものではない。
4 確認状態
資料の本文と直接照合した事項,公式資料が述べる要求・判例紹介,本記事の規範整理・当てはめ・重み,原文や全改正履歴を直接確認できていない範囲を区別して記載した。
本記事は公式配点や公式解答を再現したものではなく,公式資料を手掛かりに一つの答案の理由付けを示すものである。
確認日は令和8年11月2日である。