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弁護士・税理士がOpenAIのdotsを使う前に―常時稼働のAIエージェントと守秘義務,接続アプリ,消せない記憶及び承認ルール(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

OpenAIは,令和8年9月29日,ChatGPTの中で常時稼働するAIエージェント「dots」を公表した。
dotは,専用のクラウドコンピューターを持ち,利用者が接続したメール・カレンダー・クラウドストレージ等のアプリを使って,会話の合間にも作業を進める。
本記事は,弁護士・税理士がdotを業務に使う場合に,守秘義務との関係で何を確認し,どのような条件で使うべきかを,令和8年10月19日に確認したOpenAIの公表文・ヘルプその他の一次資料に基づいて整理するものである。

結論として,本ブログの学習オフ設定のClaudeコード及びGoogle AI Ultraの利用は弁護士の守秘義務等に違反しないという個人的意見(AIリライト)と同じ枠組みで検討すると,dotについても,学習利用の停止,接続先の限定,送信の承認,定期的な削除等の運用条件を満たす限り,守秘義務に反しない運用が可能であると考える。
ただし,dotには,頼んでいない情報まで接続アプリから先回りで読むこと,記憶を個別に消せないこと,削除しても一部の成果物が残ることという,対話型の生成AIにはない特徴がある。
また,個人向けプランについては,OpenAI自身が,見られたり使われたりしたくない機密情報を入力しないよう求めている。
以下では,公式資料で確認できる事実と,それを守秘義務に当てはめた本記事の見解を分けて説明する。

第2 dotsとは何か

1 公式資料で確認できる仕組み

OpenAIの公表文「dots のご紹介」によれば,dotはGPT-6 Astraを搭載し,専用のクラウドコンピューターを持ち,24時間いつでも作業できる。
プラグインを通じて4,000以上のアプリに接続でき,ChatGPT,Slack及びTeamsのどこからでもやり取りでき,チャネルをまたいで文脈を引き継ぐとされている。
dotからは,進捗状況,質問及び利用者の判断が必要な事項についてメッセージが届く。

ヘルプ「Getting started with your dot」によれば,利用者はdotの会話画面の電話ボタンからdotに通話できるが,公開時点では,dotから利用者へ電話を掛けることはできない。
また,dotは自分のクラウドコンピューターで作業し,利用者のパソコンへのアクセスは任意で,初期状態では無効である。

2 対象プランと数

公表文及びヘルプによれば,dotは,欧州経済領域・スイス・英国を除く地域のProプランと,Businessのプレミアムシートで順次提供され,Enterprise(Edu及びHealthcareを含む。)では管理者が有効にした場合のベータ版とされている。
最初のdotは追加料金なしでプランに含まれる。
公表文は,「将来的には、複数の dot がチームを組んで連携し、あなたのために働く姿を思い描いています。」と述べており,現時点で利用できるのはメインのdot1つである。

3 先回りリサーチ

ヘルプ「Dots privacy, security, and safety FAQs」によれば,dotは,利用者が依頼する前に,接続したアプリの情報を読み,自分用のメモを残すことができ,これを「先回りリサーチ」と呼ぶ。
先回りリサーチに使う道具は,他人へのメッセージ送信,プラグインを通じた内容の変更,ブラウザー又はコンピューターの操作を直接行うことができないとされている。
つまり,読むことは頼まなくても行われるが,読んだ結果に基づく送信等は,通常の承認の規律に服する。

第3 記憶と削除

1 記憶は見られず,個別に消せない

同じFAQによれば,dotはChatGPTのメモリを受け取り,接続アプリからも自分の記憶を作る。
dotの文脈は,dotを保持している限り保持される。
現時点では,dotの記憶を個別に見る,削除する又は直接修正することはできず,プラグインから入った特定の情報も同じである。
dotの記憶を消すには,dotを削除するしかない。

2 接続の解除やメモリの停止では消えない

ChatGPTのメモリをオフにすると,ChatGPTとdotの間の共有は止まるが,dotが既に受け取った情報は削除されない。
プラグインで接続したサービスの接続を解除しても,新たなアクセスが止まるだけで,dotが既に文脈に取り込んだ情報は削除されない。
このため,依頼者の情報が入ったアカウントを一度接続すると,接続を外しても,その情報はdotを削除するまで残ることになる。

3 削除(Reset)で消えるものと残るもの

ヘルプによれば,Resetは,dotの会話,保存された記憶及び定期タスクを削除する。
他方,dotが作成したファイル,Codexのスレッド及びChatGPTの会話は別に保存されており,dotを削除しても削除されない。
他のChatGPTの会話から作られたメモリも残り,ChatGPTのメモリ設定で別に管理する。
依頼者の情報を消す必要があるときは,dotの削除に加え,これらを個別に削除する必要がある。

4 サーバー側で消えるまでの期間

dotsのヘルプには,Resetの後にサーバー側の記録がいつまでに消去されるかの記載はない。
ChatGPT一般については,ヘルプ「Chat and file retention in ChatGPT」が,削除した会話を30日以内に完全に削除する予定とし,既に匿名化してアカウントから切り離したもの及び安全上又は法的義務のために長く保持するものを例外としている。
dotの会話もChatGPT上の会話である以上,同じ扱いになると考えられるが,dots固有の説明としては公表されていない。

第4 承認ルールと誤送信の防止

1 既定の承認の規律

FAQによれば,パスワードの変更や送金のような最も機密性の高い操作は,利用者自身が引き継いで行う。
データの完全削除やソフトウェアの導入は,その都度の承認を要する場合がある。
定期的なメッセージの送信等は事前に承認できるが,承認は承認した範囲に限られ,1通のメッセージを承認しても,利用者に代わって継続的に連絡する許可にはならない。

ヘルプは,「Asking for a draft doesn’t authorize sending it.」と明記しており,下書きを頼んだことは,送信を許可したことにならない。
事件の連絡では,宛先,内容及び送信の時期を確定させてから,その都度送信を承認する運用が適切である。

2 カスタムルールと自動点検

利用者は,カスタムルールで,特定の操作について,確認なしに行う(Take action without asking),事前承認があれば行う(Take action if pre-approved),行う前に確認する(Ask before taking action),利用者に引き継ぐ(Hand off to you)のいずれかを選ぶことができる。
メールを送る前には,自動点検(Auto-review)が宛先とメッセージを確認し,誤った宛先や意図しない情報の共有を防ぐとされている。
もっとも,ヘルプ自身が,dotは間違えることがあり,重要な作業は必ず確認するよう求めている。

ウェブサイト,メール又は文書に,dotに意図しない行動を取らせる指示が埋め込まれていること(プロンプトインジェクション)についても,FAQは,作業中に読んだ内容がそれだけで権限を与えるものではない設計としつつ,危険をなくすものではないと述べている。
依頼者や相手方から届いたメールの中の指示が,dotの行動に影響しうることを前提に,送信・削除等の承認を外さないことが重要である。

第5 学習利用,人による確認及び保存場所

1 学習利用

FAQによれば,ChatGPT Business,Enterprise及びEduのワークスペースでは,既定でデータを学習に使わない。
個人向けプランでは,「すべての人のためにモデルを改善する」の設定により,dotの会話・作業,他のエージェントに委任した作業,自動化及び接続アプリのデータが学習に使われうるかが決まる。
先回りリサーチとそのメモは,直接は学習に使わないとされている。

2 人による確認

ヘルプ「How OpenAI handles data in consumer services」は,個人向けサービスの内容に,権限のある担当者等がアクセスする場面として,①不正利用又はセキュリティ事案の調査,②利用者からの問合せへの対応,③法的事項への対応,④モデルの改善(オプトアウトしていない場合)を挙げ,アクセスは必要な者に限られ,全件記録されるとしている。
そのうえで,「Please do not enter sensitive information that you would not want reviewed or used.」と記載している。
FAQも,モデルの改善をオフにしていても,安全に関する場合等の限られた場面では,人が確認することがあるとしている。

この種の注意書きは,OpenAIに限らない。
Googleの「Gemini Apps Privacy Hub」にも,「Please don’t enter confidential information that you wouldn’t want a reviewer to see or Google to use to improve our services, including machine-learning technologies.」とある。
本ブログの前記記事は,個人向けのGoogle AI Ultraについて,同様の記載があることを前提に結論を述べている。

3 訴訟による保存命令の例

OpenAIの「How we’re responding to The New York Times’ data demands in order to protect user privacy」によれば,ニューヨーク・タイムズ社との訴訟で,Free,Plus,Pro及びTeamの会話等を無期限に保存する命令が出され,その義務は令和7年9月26日に終了した。
同ページ(令和7年10月22日更新)は,令和7年4月から9月までの一部のデータを法的保全のために保存しているが,少人数の監査された法務・セキュリティ担当者だけがアクセスでき,同社にも裁判所にも渡していないと説明している。
ChatGPT Enterprise及びEduは,この命令の対象外とされた。
個人向けプランを使う場合は,外国の訴訟手続によって削除済みの会話が保存されうることを前提にする必要がある。

4 第三者認証と保存場所

OpenAIの「製品のコンプライアンス状況」(令和8年8月4日更新)では,SOC 2 Type 2の対象はBusiness,Enterprise,Edu,Healthcare,Teachers,API,Codex等の業務向け製品であり,ISO/IEC 27001及び27701の対象はこのうちBusinessを除く製品である。
個人向けのChatGPTとdotsは,この表に記載されていない。
「OpenAI のセキュリティとプライバシー」によれば,ISO/IEC 42001は,個人向けとビジネス向けのAI製品及びモデルを対象とする。

個人向けサービスの内容は,米国及び世界各地のOpenAIと委託先のシステムに保存される。
日本を保存場所に選べるデータレジデンシーは,ヘルプ「Data residency and inference residency for ChatGPT」によれば,対象となるAPIと新規のEnterprise・Eduに限られ,dotsへの適用は記載されていない。

第6 守秘義務との関係

1 適用される規定

弁護士法23条は,「弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。」と定める。
弁護士職務基本規程23条は,「弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない。」と定め,同18条は,事件記録の保管又は廃棄に際し,秘密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意することを求める。
税理士法38条は,「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。」と定める。
刑法134条1項は,弁護士等が正当な理由がないのに業務上知り得た人の秘密を漏らしたときの処罰を定めている。

2 前記記事の枠組みへの当てはめ

前記記事は,東京弁護士会のガイドラインが示す5つの選定基準,すなわち,①利用規約に違反しないこと,②入出力を学習に使わない又は使わない設定ができること,③正当な理由なく入出力にアクセスできないこと,④暗号化と厳格なセキュリティ対策,⑤一定期間後の自動削除又は利用者による削除が可能なことを物差しとして使っている。
dotにこれを当てはめると,次のとおりである。

①について,OpenAIの利用規約(令和8年1月1日発効)に業務上の秘密の入力を禁止する条項は見当たらない。
使用に関するポリシーは,「有資格者の適切な関与なく、資格を要する個別の助言(法律や医療に関する助言など)を提供する行為」を禁止しており,弁護士・税理士自身が確認して用いる限り,これに当たらない。
ただし,利用規約は,法律等の重要な決定を含め,個人に法的又は重大な影響を与える目的で,その個人に関するアウトプットを使用しないよう定めているから,アウトプットは専門家が検証した上で,自らの判断の材料として用いる必要がある。

②について,業務向けプランは既定で学習に使わず,個人向けプランも設定で停止できる。
③について,人が見る場面のうち,モデル改善は設定で止まり,問合せへの対応は利用者が問い合わせた場合に限られ,不正利用の調査と法的事項は,前記記事が既に前提としている安全目的の確認と法律による強制に当たる。
④について,保存時・転送時の暗号化はFAQで確認できる。
ガイドラインの基準は第三者認証の取得を要件としていないが,業務向けプランのほうが,第三者監査で裏付けられた範囲が広い。
⑤について,dotの削除により利用者が削除できる。
ただし,自動削除はなく,特定の依頼者の情報だけを消すこともできないから,前記記事が利点に挙げた情報の滞留期間の短縮は,定期的な削除を運用で行わない限り成り立たない。

3 受信箱全体を読むことと業務上の必要性

dotに受信箱やカレンダーを接続すると,個々の事件に必要な情報だけでなく,他の依頼者や相手方の情報も読まれる。
もっとも,受任事件の期限,返信漏れ及び日程の矛盾を見張ることは,弁護士職務基本規程35条が求める「速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない」事件処理に資するものであり,受信箱全体を対象とすることには業務上の必要性がある。
個人データの取扱いを委ねる点は,個人情報保護法27条5項1号の委託として整理できるが,外国にある第三者への提供(同法28条)の当てはめは,前記記事と同様にOpenAIについても別に検討する必要がある。

4 依頼者への説明

依頼者の個別の同意は必須ではないと考えるが,委任契約書で生成AIの利用に包括的な同意を得ておけば,疑義を避けることができる。
常時稼働のエージェントに受信箱を接続する場合は,その事務所の運用方針として,接続するアカウントと削除の頻度を説明できるようにしておくことが望ましい。

第7 弁護士・税理士がdotを使うときの運用条件

以上を踏まえ,依頼者・顧問先の情報を含むアカウントをdotに接続する場合は,次の条件をすべて満たす運用を勧める。
①可能であれば,既定で学習に使わず第三者監査の対象となっている業務向けプランを選ぶ。
②個人向けプランを使う場合は,「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする。
③依頼者の情報を含む会話で,OpenAIへの問合せ及び評価等のフィードバックをしない。
④アカウントに二段階認証を設定する。
⑤接続するアカウント・フォルダを業務に必要な範囲に限り,事件と関係のない私的なアカウントは接続しない。
⑥メールの送信,ファイルの削除及び共有の変更は,カスタムルールで毎回確認とする。
⑦一定の期間ごとにdotを削除し,同時にdotが作成したCodexのスレッド,ファイル及びChatGPTの会話も削除する。
⑧申告書,準備書面,依頼者への回答等の重要な成果物は,弁護士・税理士が原資料と照合してから使う。

条件⑦は,dotを長く育てる秘書としてではなく,期間を区切って使う道具として扱うことを意味する。
dotは使うほど利用者の好みや仕事の基準を学ぶ設計であるため,削除のたびにその蓄積も失われる点は,あらかじめ受け入れる必要がある。
公開情報だけを扱う作業,例えばブログのアクセス解析や公開判例の定期確認であれば,これらの条件の多くは問題にならない。

第8 解説動画との関係

dotsについては,中田敦彦氏の「【dotsでAI秘書革命】ChatGPTの新機能!あらゆる業務を丸ごと任せる大AIエージェント時代の到来」(令和8年10月17日公開)のように,多数の解説動画が公開されている。
同動画が紹介するGPT-6 Astraの搭載,専用のクラウドコンピューター,24時間の稼働,先回りの通知,電話での会話等は,公表文・ヘルプの内容と整合する。
他方,LINEやマネーアプリとの連携,個人向けニュースの配信及び完全自動で運営されるSNSは,話者の予想として語られており,今回確認した公式資料には記載がない。
また,最初の設定はパソコンで行うとの説明は公表時の案内に沿うが,ヘルプの現行版では,iOS・Androidのアプリからも作成できる。

同動画は,メールやLINEをdotと共有することを広く勧めている。
弁護士・税理士がこれに従う場合は,第7の条件を満たすかどうかを先に確認する必要がある。

第9 関連記事

①学習オフ設定のClaudeコード及びGoogle AI Ultraの利用は弁護士の守秘義務等に違反しないという個人的意見(AIリライト)
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第10 出典・参考資料

①弁護士法23条,税理士法38条,刑法134条,個人情報の保護に関する法律27条及び28条(e-Gov法令検索)
②弁護士職務基本規程18条,23条及び35条(日本弁護士連合会)

③OpenAI「dots のご紹介」(令和8年9月29日)
④OpenAI Help Center「Getting started with your dot」及び「Dots privacy, security, and safety FAQs」
⑤OpenAI Help Center「Chat and file retention in ChatGPT」,「How OpenAI handles data in consumer services」,「ChatGPT のデータ管理」及び「Data residency and inference residency for ChatGPT」
⑥OpenAI「製品のコンプライアンス状況」(令和8年8月4日更新)及び「OpenAI のセキュリティとプライバシー」
⑦OpenAI「利用規約」(令和8年1月1日発効)及び「使用に関するポリシー」(令和7年10月29日発効)
⑧OpenAI「How we’re responding to The New York Times’ data demands in order to protect user privacy」(令和7年10月22日更新)
⑨Google「Gemini Apps Privacy Hub」
⑩中田敦彦「【dotsでAI秘書革命】ChatGPTの新機能!あらゆる業務を丸ごと任せる大AIエージェント時代の到来」(YouTube,令和8年10月17日公開)

各資料は令和8年10月19日に該当箇所を確認した。
OpenAIのヘルプは更新日が随時変わるため,利用を始める際には現行の記載を確認されたい。
dotsそのものを扱った裁判例は確認していない。