第1 この記事の対象と結論
本問は,点滴針メーカー間の水平合併について,競争制限の有無と実効的な問題解消措置を検討する問題である。
公式資料から独自に抽出した評価項目は24項目,重み5は8項目,重みの合計は97である。
以下の重みは法務省の公式採点基準・項目別配点・予測得点ではない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 令和元年司法試験・経済法第2問 |
| 問題文 | 法務省・選択科目問題(物理14~15頁)(https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf) |
| 基準時 | 令和元年司法試験実施時。法令は平成30年12月30日施行版を確認 |
| 出題の趣旨 | 実読済み:経済法第2問・物理29頁途中~30頁途中 |
| 採点実感 | 実読済み:物理16~22頁の関係総論・第2問の各節・末尾。第1問本文を除く |
| 評価 | 24項目/重み5:8項目/重み合計:97 |
| 答案 | 改行除外2424字。2500字以内 |
| 主要法源 | 独占禁止法15条1項1号。特定の裁判例の判旨を答案の根拠として引用していない |
| 試験後の改定 | 企業結合指針の令和元年12月改定版を,試験当時版として用いていない |
| 確認日 | 令和8年10月19日(日本時間) |
原案は,日本国内の針甲市場で競争を実質的に制限することとなると考える。
修正案としてX社の針甲事業をM社へ包括譲渡し,独立競争を回復するとともに,情報集中の懸念に応じた情報遮断を提案する。
評価項目は第4,答案と各項目の対応は第5,資料の範囲と限界は第7に示す。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
公式の記載を,答案を読んで充足を判断できる単位に言い換えた。
必須,高評価,負例,許容分岐の区分と,重みの数字は別のものであり,高評価や条件付き事項を全答案の必須要件にはしない。
負例「私的独占等へのすり替え」は番号1の裏返しなので,独立の公開項目にせず番号1にまとめた。
負例「問題解消措置と排除措置命令の同一視」は番号12の裏返しなので,番号12にまとめた。
頁はPDFの物理頁であり,出典欄の記載は原文の逐語引用ではなく要旨である。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | 採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの |
| 4 | 出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した) |
| 3 | どちらか一方が明示する中核の理由付け |
| 2 | 一方が軽く触れる補強,又は典型的な誤りとして指摘された事項 |
| 1 | 一方が控えめに触れるだけの事項 |
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
X社30%とY社25%が合併し,国内の針甲市場では統合会社55%とA社45%の2社になる。
販売承認,A社の供給余力の不足,輸入・参入の困難,医師の品質・使い慣れの重視が示されている。
設問2では,流通業者M社の販売経験,製造資産の活用能力,事業意欲,独立性と,流通6社間の激しい競争等が追加される。
問題文の全体は法務省公表の選択科目問題を参照(https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf)
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・仮定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 中立的に合併の独禁法上の問題を検討 | 届出基準は充足済み。合併を私的独占等に置換しない | 市場画定,単独・協調効果,15条1項1号の判断 |
| 2 | 問題ありとの前提で計画修正を設計 | M社に関する追加事実を用いる。排除命令の発令を必須としない | 競争回復の実効性と,新たな垂直関係・情報集中による問題まで評価 |
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 【必須】合併を独占禁止法15条1項1号による水平型企業結合として検討する。 | 5 | 29頁:15条による水平合併の検討 | 19頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 2 | 【必須】需要代替性を基礎に,針甲・針乙の用途と形状の差から針甲の商品市場を画定する。 | 4 | 29頁:用途・形状による商品範囲 | 19頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 3 | 【必須】販売承認制度と顧客の購買慣行を結び付け,日本国内の地理的市場を理由付きで画定する。 | 5 | 29頁:承認制度・購買慣行による地域 | 19頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 4 | 【必須】価格等をある程度自由に左右できる市場支配状態として競争の実質的制限を説明する。 | 3 | 29頁:競争制限概念の解釈 | 19頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 5 | 【必須】「こととなる」は将来の競争制限の蓋然性を問題とし,現実の値上げ発生を要求しない。 | 3 | 29頁:将来の競争制限判断 | 19頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 6 | 【必須】X・Y間競争の消滅,合算55%・市場1位を値上げの能力・誘因に結び付ける。 | 4 | 29頁:55%と値上げ誘因 | 19頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 7 | 【必須】A社の輸出振替・委託生産の可能性と限界から,増供給による値上げ牽制の弱さを説明する。 | 4 | 29頁:供給余力・委託生産の限界 | 19頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 8 | 【必須】海外業者の少なさ,販売承認,国内販売実績への選好から輸入圧力を評価する。 | 4 | 29頁:海外業者・承認・実績 | 19頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 9 | 【必須】参入には新機能の開発に期間・投資を要するため,迅速な参入圧力が弱いと評価する。 | 4 | 29頁:新機能開発の期間・投資 | 19頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 10 | 【必須】見積合せの価格圧力と,品質・使い慣れによる切替困難を対置して需要者圧力を評価する。 | 4 | 29頁:価格選好と慣れの対置 | 19頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 11 | 【高評価】協調的行動を論ずる場合は,2社化だけでなく対称性・透明性と外部牽制力により機序を説明する。(条件付き) | 3 | 29頁:対称性・透明性による協調 | 19頁:分析の深さを高評価 |
2 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 12 | 【必須】問題解消措置を,当事会社が審査上の懸念を解消するため自主的に提案するものと位置付ける。 | 5 | 30頁:審査上の懸念を解消する提案 | 17頁:位置付けの誤りを指摘 |
| 13 | 【必須】牽制力が弱い水平結合では構造的措置を原則に,独立競争単位の創出による競争回復を説明する。 | 5 | 30頁:構造・行動の効果と競争回復 | 20頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 14 | 【必須】X又はYの針甲事業のどの範囲を誰へ譲渡するかを具体化し,設備・人材・ノウハウ等の包括移転を設計する。 | 5 | 30頁:譲渡元・範囲・譲受先の特定 | 20頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 15 | 【必須】M社の販売経験と,設備等を包括取得すれば製造できる能力を区別して実効性を評価する。 | 4 | 30頁:M社の経験・ノウハウ | 20頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 16 | 【高評価】M社の品ぞろえの弱点克服と競争意欲を結び付け,事業継続の誘因を説明する。 | 3 | 30頁:品ぞろえ・競争意欲 | 20頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 17 | 【必須】第三者M社を独立した競争単位とし,3社間競争を維持・回復する効果を説明する。 | 5 | 30頁:有効な競争単位の創出 | 20頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 18 | 【必須】事業譲渡自体を新たな垂直型企業結合として捉え,新たな競争上の懸念を点検する。 | 5 | 30頁:譲渡自体の新たな結合関係 | 20頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 19 | 【高評価】M社によるセット販売等が下流市場を閉鎖する能力・誘因を具体的に検討する。 | 4 | 30頁:関連商品を含む新規弊害 | 20頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 20 | 【必須】チューブ丙15%,流通6社の激しい競争,メーカーの取引先変更可能性から閉鎖効果が小さい理由を示す。 | 4 | 30頁:流通業者・市場の状況 | 20頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
| 21 | 【高評価】流通業者M社への他社のセンシティブ情報の集中が協調を促す可能性を,取引関係と情報経路に即して検討する。(条件付き) | 3 | 30頁:流通業者への情報集中 | 20頁:分析の深さを高評価 |
| 22 | 【許容分岐】情報集中による協調の懸念が残るときは,流通と製造販売間の情報遮断など追加措置を設計する。(条件付き) | 3 | 30頁:追加的な情報遮断 | 20頁:分析の深さを高評価 |
| 23 | 【許容分岐】事業譲渡以外を採用する場合は,どの反競争効果をどの仕組みで抑えるか具体的に説明する。(条件付き) | 3 | 30頁:他の措置の反競争効果抑制 | 関連範囲に個別記載なし |
3 答案全体
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 24 | 【必須】問題文の事実を適切な競争圧力へ分類し,自らの言葉で因果関係と結論を説明する。 | 5 | 29頁:事実を評価して結論へつなぐ | 21頁:理由・事実の分類と評価を確認 |
4 重みの分布
重み5は8項目,4は9項目,3は7項目,2と1は各0項目である。
合計は24項目,重みの合計は97であり,難易度や合格可能性を示す数字ではない。
重み5は,番号1の規制類型,3の地理的市場,12の自主提案という位置付け,13の構造的措置,14の移転範囲,17の競争単位回復,18の新たな垂直結合,24の事実評価である。
番号11は協調分析の深さに関する高評価,21・22は情報集中の懸念がある場合の高評価・追加措置,23は事業譲渡以外を採用する場合の許容分岐である。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
試験実施時を基準とし,X社の針甲事業をM社に包括譲渡する構成を採る。
答案は改行を除き2424字である。
法務省が公表した模範解答ではなく,公式資料を踏まえた独自の答案例である。
2 答案
第1 設問1
1 X社・Y社の合併は,競合メーカー間の水平型企業結合であり,独占禁止法15条1項1号が適用される。
届出基準は充足済みであるから,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるかを検討する。
2 一定の取引分野は,主として需要者からみた代替性により商品及び地域の範囲を画定する。
針甲は短時間の点滴用であり,形状・用途が異なる針乙では代替できない。
点滴容器・チューブは補完品であるため,商品市場は針甲とする。
国内では種類・用途ごとの販売承認を受けた製品だけが販売され,医療機関もこれだけを購入・使用する。
世界にメーカーが存在しても,国内需要者が国外製品へ直ちに切り替えられるわけではない。
国内販売実績を重視する購買慣行も踏まえ,地理的市場は日本国内とする。
他の重複製品ではシェアが低く競合も多数存在し,競争制限の問題は小さい。
3 競争の実質的制限とは,競争が減少し,特定の事業者又は事業者集団が価格等をある程度自由に左右できる状態をいう。
「こととなる」はその蓋然性であり,現実の値上げ発生までは要しない。
本件ではX・Y間の競争が消滅し,当事会社の国内シェアは55%・1位となる。
従来,相手へ流出していた需要も統合後には自社内に取り込めるため,単独で値上げする誘因が強まる。
A社は45%を有し,輸出向け製品を国内に振り向けられるものの,供給余力は十分でない。
世界シェアも20%にとどまり,製造委託先も見当たらないため,増供給によって当事会社の値上げを牽制する力は弱い。
海外の他の製造販売業者は少数で,国内実績がない。
販売承認に加え,実績のない製品を医療機関が敬遠する事情があり,輸入圧力は弱い。
新規参入にも新機能の開発に期間・投資を要するため,迅速な参入圧力は期待し難い。
針乙も用途が異なり,隣接市場からの圧力は乏しい。
一定規模以上の病院による見積合せは価格を抑える方向に働く。
しかし,医師は品質と使い慣れを重視し,メーカーごとに使用方法も若干異なるため頻繁には製品を変更しない。
需要者圧力も十分でない。
以上から,単独行動による市場支配力の形成が見込まれる。
協調的行動についても,供給者が3社から2社へ減り,55%対45%と地位が近接することは協調を容易にする方向に働く。
値下げをしても相手の追随によって利益が失われるとの予測が共有されれば,競争的な値下げを控えやすい。
外部の競争圧力も弱い。
ただし,使用方法等の差もあり,地位の対称性や市場の透明性を2社化だけから当然に認めるべきではない。
協調効果の深度には留保があっても,単独効果から競争の実質的制限の蓋然性が認められ,本件計画は同号に抵触する。
第2 設問2
1 問題解消措置は,当事会社が審査上の懸念を解消し,排除措置を命じない旨の通知を得るために自主的に提案する計画修正であり,17条の2の排除措置命令そのものではない。
本件では外部の牽制力が弱く,単に値上げをしないと約束するだけでは独立した競争が戻らず,履行の監視も必要になる。
失われる競争単位を回復する構造的措置を原則として選び,X社の針甲製造販売事業を合併実行前にM社へ包括譲渡する案が適切である。
2 対象は製造設備だけでなく,人材・製造及び販売ノウハウ,顧客関係等,独立供給に必要な事業一式とする。
M社は現在針甲を製造も販売もしていないため,M社の既存事業を取り込むだけでは供給者数は回復しない。
しかし,過去にX社製の針甲を販売して一定のシェアを得た経験があり,他社製品にもノウハウを活用できる。
製造経験がない点も,設備・人材・ノウハウを包括取得すれば有効に活用できるとの与件から補える。
既存の製品と販売基盤を承継すれば,全く新しい製品への切替えと異なり,病院が重視する実績や使い慣れという障壁にも対応できる。
点滴針の品ぞろえの弱点を克服できるため参入意欲も高い。
X・Y・A社との資本・人的関係もなく,独立して競争することが期待できる。
X社の事業をその競争力とともに移せれば,統合会社・M社・A社という従前に対応する3社間競争を維持できる。
単なる販売権又はノウハウ供与だけで競争回復を断定せず,製造・供給の独立性,承認を維持又は取得して供給を継続できることも実行条件として確認する。
3 他方,この譲渡は,針甲の製造と流通を結ぶ新たな垂直型企業結合になる。
M社が針甲を自社の流通部門へ優先供給し,他の流通業者への供給を拒絶・不利にすれば,川下の流通市場が閉鎖され得る。
逆に,M社が他メーカーの製品の取扱いを制限して販路を奪えば,川上の製造販売市場の閉鎖も問題となる。
針甲とチューブ丙等のセット販売にも,他の流通業者が同様の品ぞろえを確保できず取引を失って退出するなど,競争的な対抗を封じる効果があるかを問う。
しかし,チューブ丙でのM社のシェアは15%にとどまる。
この数値だけから針甲や流通全体の支配力は認められず,流通6社間では激しい競争がありシェアも変動する。
メーカーは取引先・取引内容を随時見直せるため,M社への販路依存を強制されにくい。
針甲の供給者もM社だけにはならず,A社・統合会社が残る。
取引先変更や他社調達による対抗が期待でき,M社が競争者を排除して価格等を左右する蓋然性は小さい。
さらに,M社が流通業務を通じて得る統合会社・A社等の非公開の価格・数量情報がM社の針甲部門へ流れれば,競合間の価格等の把握を容易にし,協調を促す懸念がある。
流通市場の激しい競争から発生可能性は低いとしても,流通部門と針甲部門の間でアクセス・担当者を分離し,競争上重要な情報の共有・目的外利用を禁止する情報遮断措置を併せて提案する。
譲受事業の操業に必要なノウハウの移転と,残存競合の秘密情報の共有は区別する。
以上の包括譲渡と必要な情報遮断により,独立競争を回復しつつ新たな弊害を防ぐ修正を試みるべきである。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
| 番号 | 答案の所在 | 対応と限界 |
|---|---|---|
| 1 | 第1・1 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 2 | 第1・2 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 3 | 第1・2後段 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 4 | 第1・3冒頭 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 5 | 第1・3冒頭 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 6 | 第1・3第2段落 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 7 | 第1・3A社段落 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 8 | 第1・3輸入段落 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 9 | 第1・3参入段落 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 10 | 第1・3需要者段落 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 11 | 第1・3末尾 | 上位要求・条件付き。透明性を2社化から当然に推定しない。 |
| 12 | 第2・1冒頭 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 13 | 第2・1後段 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 14 | 第2・2冒頭 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 15 | 第2・2中段 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 16 | 第2・2中段 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 17 | 第2・2後段 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 18 | 第2・3冒頭 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 19 | 第2・3冒頭 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 20 | 第2・3中段 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
| 21 | 第2・3情報段落 | 懸念がある場合。具体的なアクセス分離等は答案独自の設計。 |
| 22 | 第2・3末尾 | 懸念がある場合。具体的なアクセス分離等は答案独自の設計。 |
| 23 | 本案は非採用 | 包括譲渡を主案とするため,別の主案の累積要求としない。 |
| 24 | 答案全体 | 規範・事実・競争への影響を対応させる。 |
(2) 市場画定と競争圧力
針甲と針乙を分けるのは,用途と需要代替性の問題である。
世界シェアは,直ちに世界市場を画定する根拠ではなく,国内への供給振替や競争圧力を評価する材料として用いる。
HHIは合併前3550,合併後5050,増分1500となるが,出題の趣旨は指数やセーフハーバーを必須とはしていない。
数字だけで違法とせず,A社,輸入,参入,需要者の各圧力が値上げを抑えられるかを説明する。
(3) 問題解消措置の実効性と新たな問題
M社に設備だけを渡す案と,独立した製造販売に必要な事業を渡す案は異なる。
包括譲渡によって従前に対応する3社間競争を維持するという説明が,構造的措置の理由になる。
譲渡後のシェアや能力の維持は,顧客・人材・ノウハウ等の移転が実効的であることを前提とし,資産移転だけで当然に同じ売上が生じるという意味ではない。
流通市場の競争が激しいことは閉鎖効果を弱めるが,情報の集中・利用経路は別に点検する。
情報遮断は,市場競争を回復する包括譲渡を代替する万能な措置ではなく,追加的な懸念に応じて組み合わせるものである。
(4) 答案の弱点と扱わなかった事項
協調効果の精密な判断には,価格等の透明性や競争条件の対称性に関する具体的情報が限られるため,単独効果を主軸とした。
販売承認の承継手続の詳細,届出金額の再計算,民事損害賠償は設問の中心ではないため論じていない。
事業譲渡以外の措置も一律に排除されるわけではないが,本問の弱い競争圧力を十分補える機序を具体化する必要がある。
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企業結合の規制内容は,公正取引委員会の資料でも確認できる。
公正取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(現行)(https://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/guideline/guideline/shishin.html)
この現行版は試験後の改定を含むため,試験当時の法状態と同一視してはいけない。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
法務省「令和元年司法試験論文式試験問題・選択科目」(https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf)
経済法第2問,物理14~15頁を実読した。
法務省「令和元年司法試験論文式試験問題出題趣旨」(https://www.moj.go.jp/content/001305186.pdf)
経済法第2問,物理29頁の同問見出しから30頁の次科目見出し直前までを実読した。
法務省「令和元年司法試験の採点実感・選択科目」(https://www.moj.go.jp/content/001308864.pdf)
物理16~22頁の関係総論,第2問の採点方針・採点実感・解答水準・答案区分及び末尾を実読した。
同じ合冊内の第1問本文は,本記事の内容根拠としていない。
2 法令
e-Gov「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」平成30年12月30日施行版(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000054/20181230_428AC0000000108?occasion_date=20181230)
15条及び17条の2を確認した。
企業結合指針の現行ページは令和元年12月17日の改定を含むため,当時版の条項・文言をすべて確認した資料として扱っていない。
3 裁判例
本記事の答案には,特定の裁判例の判旨を確認済みとして引用した部分はない。
公式資料に記載された問題解消措置の説明と,裁判例原文の独立確認は別のものである。
4 確認状態
問題,出題の趣旨,採点実感は,上記の対象範囲を実読・比較済みである。
評価項目・重み・答案は記事独自の分析であり,公式資料の逐語的な採点表ではない。
企業結合指針の令和元年12月改定の公式新旧対照表では,改定前の第5が流通業者を通じた他メーカーの価格情報の入手と協調的行動を既に取り上げている。
本記事の情報経路の検討は,試験後の新設規定に依存していない。
旧第6の問題解消措置は対照表で省略されているため,旧版単独原本の全文を直接確認したとは扱っていない。
直接対応判例の原文は未確認であり,判決の事件名・日付・判旨を確認済みの根拠として引用していない。
公正取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」新旧対照表(旧欄:実頁6~7・13・15・35~39・54頁)(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/dec/kiketu/attachment.pdf)
試験後の法令・指針・判例を,当時の答案要求を変更する根拠には用いていない。