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令和元年司法試験倒産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した29項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は,令和元年司法試験倒産法第2問を対象に,法務省の出題の趣旨及び採点実感から29項目を抽出し,5段階で重み付けしたものである。
重みは本記事独自の分析であり,法務省の公式採点基準,項目別配点又は予測得点ではない。

項目概要
対象問題令和元年司法試験倒産法第2問。株式会社の民事再生に関する問題
公式問題文論文式試験問題集・選択科目の3~4頁を実読済み
出題の趣旨公式出題の趣旨の23~24頁・倒産法第2問を実読済み
採点実感公式採点実感・選択科目の1頁・第2問採点方針,3~6頁・第2問,関連総論及び6~7頁末尾を実読済み
答案の基準時令和元年司法試験実施当時。法令は当時施行版を使用
主要事項清算価値保障の基準時,平等原則の例外の許容と義務,事業譲渡の二つの許可,決議要件と否決後の手続
評価項目29項目,重み5は6項目,重みの合計は115
主要判例特定の判例を答案の根拠として掲げていない
答案分量改行込み2406字。上限2500字
年度別の案内司法試験の過去問・参考答案一覧
確認日令和8年10月19日

答案例は,設問1(a)では開始決定時を基準として清算価値保障違反を認める。
設問1(b)では,平等原則の例外が一定の場合に義務付けられるとの解釈から,Bの債権を劣後させず同率弁済する計画は付議できないとする。
いずれも,公式資料が唯一の結論として指定したものではなく,理由と事実評価を一貫させた答案の一例である。

設問2⑴は,42条の許可と43条の代替許可を分ける。
設問2⑵は,Bのみ賛成しても頭数過半数を満たさず,続行の可否を検討した後,結局否決なら廃止,廃止確定後には職権破産の可能性があると整理する。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一つの項目に一つの判定対象を置き,答案又は解説のどこを見れば充足を判断できるかが分かる形に言い換えた。
必須,高評価,負例及び許容分岐の区分と,重みの大小は別のものである。
高評価項目や条件付き項目を,全答案への累積的な要求とはしない。

裏返しの負例は,理由なしの基準時選択を番号5,清算配当率同士の比較を番号7,1(b)の条文の取り違えを番号9,本文の説明の欠落を番号10,許容と義務の混同を番号13,信義則だけでの処理を番号14,付議結論の欠落を番号16,半数と過半数の混同を番号25にまとめた。
これらは独立の公開項目に重ねず,各番号の正しい書き方と一緒に確認する。
番号29は,設問の段階を取り違える独立の負例として掲げた。

両公式資料の所在は,合冊PDFの実頁と第2問の設問を示す。
「記載なし」は,関連範囲を実読した結果,その具体的事項の記載を確認しなかったという意味であり,他の資料にも存在しないという意味ではない。
公式の文章は原則として要約した。

2 5段階の重み付けの基準

重み判断基準
5採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの
4出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した)
3どちらか一方が明示する中核の理由付け
2一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項
1一方が控えめに触れるだけの事項

段階ごとの件数は割り当てていない。
本問では重み1と2の公開項目は0件であり,重みの合計から公式得点や合格可能性を導くことはできない。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

機械メーカーAは,完全親会社Bの支配下にあり,Bの指示による無謀な投資や取引先の破産で支払不能となり,再生手続を開始した。
Bは20億円,Cは10億円の再生債権を届け出てAに認められ,他の再生債権者はいない。
Cは一度取引を停止していたが,Bの支援継続の表明を受けて取引を再開している。

設問1では,開始時の予想清算配当率10%に対し,認可想定日の予想清算配当率は5%へ下がっている。
Aの5%分割弁済案に対し,Cが清算価値保障違反とB債権の劣後化を主張する。
設問2⑴は乙への計画外全部事業譲渡にBが反対する場面,⑵はBの完全子会社のまま15%を分割弁済する計画案にCが同意しない場面である。

公式問題文3~4頁の各設問は独立している。
設問1の5%計画を設問2⑵の15%計画へ混ぜず,設問2⑴の事業譲渡を⑵で行ったものとして扱わない。

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・仮定・除外到達点
1(a)裁判所・清算価値保障169条1項3号に照らし条文を摘示基準時を理由付けし,計画弁済率と比較して付議可否を示す
1(b)裁判所・平等原則と例外親会社・責任・Cへの説得を評価ただし書の許容/義務と自説から付議可否を示す
2⑴Aによる計画外全部事業譲渡Bは唯一株主でもある42条許可と43条代替許可の手続を説明する
2⑵C不同意後の再生手続他の計画案なし。事業譲渡せず自力再建決議・続行・廃止とその後の破産可能性まで示す

第4 評価項目と重み

1 設問1(a)―清算価値保障

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1【必須】1(a)の付議審査を169条1項3号と174条2項4号へ接続する423頁・第2問(付議要件と清算価値保障の接続)3頁・第2問(付議要件と清算価値保障の接続)
2【必須】清算価値保障を,計画弁済が破産配当を下回らないことと説明する423頁・第2問(清算価値保障の内容)3頁・第2問(清算価値保障の内容)
3【高評価】清算価値保障の趣旨として,多数決に反対する債権者の最低限保護を示す523頁・第2問(反対債権者の最低限保護)3頁・第2問(反対債権者の最低限保護)
4【必須】清算価値の基準時を問題とし,開始時・認可時等から自説を定める523頁・第2問(基準時の検討)3頁・第2問(基準時の検討)
5【高評価】選んだ基準時を,制度趣旨と結び付けて理由付けする423頁・第2問(自説を理由付けて当てはめる)3頁・第2問(自説を理由付けて当てはめる)
6【高評価】開始時説では,長期間の協力負担と開始時の財産評定の関係を説明する(開始時説の場合)3記載なし3頁・第2問(開始時の長期協力と財産評定)
7【必須】採用時点の清算配当率と計画弁済率を比較し,清算配当率同士の比較で済ませない523頁・第2問(比較対象は計画弁済率)4頁・第2問(比較対象は計画弁済率)
8【許容分岐】認可時5%を採る場合には,分割弁済の現存価値・業績悪化の危険も評価する構成を示し得る(認可時説を採る場合の許容分岐)3記載なし4頁・第2問(現存価値と債権者のリスク)

2 設問1(b)―債権者平等原則と例外

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
9【必須】1(b)を155条1項及び174条2項1号で扱い,同項2号・4号や付議から除外される3号に置き換えない523頁・第2問(1(b)は174条2項1号)4頁・第2問(1(b)は174条2項1号)
10【必須】平等原則の内容を,原則として債権額に応じた同一割合の権利変更と説明する423頁・第2問(本文の平等原則の内容)4頁・第2問(本文の平等原則の内容)
11【高評価】債権者平等原則の制度趣旨を示す423頁・第2問(平等原則の趣旨)4頁・第2問(平等原則の趣旨)
12【必須】155条1項ただし書の不利益者の同意・衡平を害しない差別等の例外を説明する423頁・第2問(ただし書の例外)4頁・第2問(ただし書の例外)
13【高評価】ただし書が差別を許容することと,差別を義務付けることを区別する523頁・第2問(許容と義務の区別)4頁・第2問(許容と義務の区別)
14【高評価】本文・ただし書の文理と趣旨から自説を論証し,専ら価値判断と信義則で処理しない423頁・第2問(文理・趣旨と自説の論証)5頁・第2問(文理・趣旨と自説の論証)
15【必須】Bの親会社としての支配・破綻責任・Cへの取引再開の説得を自説に沿って評価する423頁・第2問(支配・破綻責任・C信頼の事実)5頁・第2問(支配・破綻責任・C信頼の事実)
16【必須】採った解釈と当てはめに応じ,1(a)(b)それぞれの付議可否を明示する323頁・第2問(付議可否の結論)5頁・第2問(付議可否の結論)

3 設問2⑴―計画外の全部事業譲渡

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
17【必須】計画外の全部事業譲渡に42条1項1号の裁判所許可を要することを示す424頁・第2問(42条1項1号の許可)5頁・第2問(42条1項1号の許可)
18【高評価】42条の制度趣旨を踏まえ,再生のための必要性を解釈し当てはめる424頁・第2問(再生必要性と制度趣旨)5頁・第2問(再生必要性と制度趣旨)
19【必須】42条2項・3項に基づく再生債権者及び労働組合等の意見聴取を示す324頁・第2問(42条2項・3項の所要手続)5頁・第2問(42条2項・3項の所要手続)
20【必須】全部事業譲渡の株主総会特別決議と,唯一株主Bの反対による承認困難を結び付ける424頁・第2問(特別決議とBの反対)5頁・第2問(特別決議とBの反対)
21【必須】Aの申立てによる43条代替許可と債務超過要件を示し当てはめる424頁・第2問(代替許可と債務超過)5頁・第2問(代替許可と債務超過)
22【必須】43条1項ただし書の事業継続必要性を早期譲渡の事情へ当てはめる424頁・第2問(事業継続必要性)5頁・第2問(事業継続必要性)
23【高評価】42条の再生必要性と43条の継続必要性を,両制度の趣旨・機能から対比する3記載なし5頁・第2問(再生必要性と継続必要性の対比)

4 設問2⑵―決議と否決後の手続

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
24【必須】可決に頭数過半数と議決権総額2分の1以上の両要件を求める趣旨を示す424頁・第2問(二つの決議要件の趣旨)6頁・第2問(二つの決議要件の趣旨)
25【必須】Bのみ賛成では,額20/30を満たしても出席2名中1名は頭数過半数を満たさないとする524頁・第2問(頭数の過半数)6頁・第2問(頭数の過半数)
26【必須】172条の5の続行の可否を,金額要件と将来の可決見込みを踏まえて検討する324頁・第2問(続行の規律)6頁・第2問(続行の規律)
27【必須】結局否決又は続行期限内不成立なら191条3号により職権廃止する424頁・第2問(否決時の職権廃止)5頁・第2問(否決時の職権廃止)
28【必須】廃止決定確定後,破産原因があれば250条1項の職権破産開始が可能とする424頁・第2問(職権破産開始の規律)5頁・第2問(職権破産開始の規律)
29【負例】不同意後の帰すうを問う場面で,集会中の計画案変更や認可後の計画変更へ論述を逸らさない3記載なし6頁・第2問(不同意後という段階への応答)

5 重みの分布

重み5が6項目,重み4が16項目,重み3が7項目,重み2と1はいずれも0項目である。
総項目数は29,重みの合計は115である。

重み5は,番号3の反対債権者の最低限保護,番号4の清算価値の基準時,番号7の比較対象,番号9の1(b)の条文接続,番号13の許容と義務の区別,番号25の頭数過半数である。
番号13は高評価項目であっても,その区別を落とすと劣後化の可否と義務を混同するため,答案の骨格に関わる。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

試験実施当時の民事再生法及び会社法に基づき,設問1と2の各場面を独立に検討する。
設問1(a)は開始時説,1(b)は実質的衡平から例外的な差別取扱い義務を認める構成を採る。
別の基準時や劣後義務を否定する構成も,趣旨・文理・事実評価を一貫させて論じれば許容される。
答案原稿は改行込み2406字,改行除外2387字であり,上限2500字以内である。

2 答案

1 設問1

(1)Cの主張(a)
ア 民事再生法(以下「法」という。
)169条1項3号は,174条2項各号(3号を除く。
)の不認可事由がある計画案の付議を認めない。
同項4号の「再生債権者の一般の利益」は清算価値保障を含む。
これは,計画による弁済が破産配当を下回らないことを要求し,多数決で権利を変更される反対債権者の最低限の利益を保護するものである。
イ 基準時を認可決定時とすれば,その時点で破産へ移行した場合と比較できる。
しかし,債権者は再生手続の開始時から個別的権利行使を制約され,長期の協力を求められる。
開始後の経営悪化の危険まで負わせて保護水準を切り下げるべきではない。
124条1項・2項も開始時の財産評価を求めているから,開始決定時を基準と解する。
ウ 4月25日に提出された財産目録等は開始時を対象とし,予想清算配当率は10%である。
本計画の弁済率5%はこれを下回る。
認可時の予想配当率が5%に下がったことによって不足は解消せず,174条2項4号,169条1項3号により付議できない。

(2)Cの主張(b)
ア 問題となるのは155条1項及び174条2項1号である。
155条1項本文は,各債権者に負担を公平に分担させるため,原則として債権額に応じた同一割合の権利変更を求める。
ただし書は,不利益を受ける者の同意等のほか,差を設けても衡平を害しない場合に例外を認める。
イ ただし書の文言は不平等取扱いを許すものであり,例外に当たることだけから差を設ける義務は導けない。
しかし同項の目的は実質的公平の確保にある。
同一取扱い自体が著しく衡平を害する特段の事情があれば,例外的に差を設けることまで要請する趣旨と解する。
衡平を害する同率取扱いまで本文により強制すれば,公平な負担分担という原則自身に反するからである。
親会社であるという地位のみでは足りない。
ウ Bは役員過半数の出向や社長指名によってAの経営を支配し,無謀な投資及び甲との取引を指示して破綻の主因を作った。
しかも,支援を続けるとCを説得して取引を再開させ,Cが10億円の債権を有するに至らせた。
Cも設備投資の危険を知っていたが,それゆえ一度取引を停止した。
Bの支援表明によって取引再開を決めたのであり,危険を知っていたというだけでBと同じ負担を甘受させるべきではない。
支配と破綻責任に加え,Cの信頼を利用して危険を負担させた関係にあるBがCと同率の弁済を受けることは,著しく衡平を害する。
Bの債権を劣後させるべきであり,同順位のままの計画は155条1項に反する。
補正されない限り174条2項1号,169条1項3号により付議できない。

2 設問2⑴

(1)Aは開始後も事業遂行・財産処分権を持つが(法38条1項),全部事業譲渡には42条1項1号の許可を要する。
同項後段は債権者の利益を害する譲渡を防ぐため,事業再生の必要性を要求する。
裁判所は,対価等を踏まえ,顧客離れによる事業価値の毀損を防いで乙の下で再生する必要性を判断する。
乙の申入れは開始決定から約1か月後であり,計画認可を待つ間の顧客離れによる価値減少を避ける必要がある。
同業者乙が全事業を引き継ぐことは事業価値の維持に資する。
他方,譲渡価額等は不明であり,単に早期譲渡を望むだけでは足りず,条件の相当性や他の再生手段も踏まえて必要性を疎明する。
その際,B・C及び労働組合等の意見を聴く(同条2項・3項)。
Bの同意は要件ではない。

(2)会社法467条1項1号,309条2項11号による株主総会特別決議も必要だが,唯一株主Bの反対により得られない。
そこでAは法43条1項の代替許可を申し立てる。
同項は,債務超過により残余財産への期待を失う株主の反対によって事業継続を阻害させない趣旨である。
42条が債権者保護から再生の必要性を審査するのに対し,43条は株主の承認に代えるため,債務超過及び事業継続の必要性を要求する。
43条では株主の承認を省く以上,単なる換価ではなく,当該事業を存続させるための譲渡であることを要する。
Aは債務超過であり,乙への早期譲渡で事業価値の毀損を防いで事業を続ける必要があるから,代替許可を得られる。
これは42条の許可とは別である。
代替許可はAへの裁判書送達時に効力を生じ,要旨を記載した書面はBにも送達する(43条2項・3項)。
Bは即時抗告できるが執行停止効はなく,株式買取請求規定も適用されない(同条6項~8項)。

3 設問2⑵

(1)法172条の3第1項は,少数の大口債権者による支配を防ぐ頭数過半数の同意と,債権額に応じた利害を反映する議決権総額2分の1以上の同意を累積的に要求する。
Bのみが賛成しても,金額は20億/30億で2号を満たすが,出席するB・C2名のうち1名の賛成にとどまり,過半数ではないから1号を満たさず,可決しない。

(2)ただし,金額要件を満たす以上,172条の5第1項1号により,Aの申立て又は職権で続行期日を定める。
続行期日に可決される見込みがないことが明らかなら続行しない。
本計画がBの支配を維持する点は,Bの指示によって破綻し,Bの説得で取引を再開したCの同意転換を見込む上で消極的に働く。
ただし,今回の不同意だけで将来の同意も不可能とは断定せず,Cの意向等を確認する。
可決は最初の集会期日から2か月以内で,必要があれば1か月を限度に伸長できる(同条2項・3項)。
他に計画案はなく,別案の可決による手続存続の余地もない。
結局否決された場合,又は続行しても期限内に可決されない場合には,191条3号により裁判所は職権で再生手続を廃止しなければならない。
廃止決定が確定し,Aの支払不能等の破産原因が認められれば,裁判所は250条1項により職権で破産手続を開始できる。
廃止と同時に当然に破産が開始するわけではない。
以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

番号答案・解説の対応扱い
11(1)ア答案で検討
21(1)ア答案で検討
31(1)アの反対債権者保護答案で検討
41(1)イ答案で検討
51(1)イ答案で検討
61(1)イの長期協力と124条答案で検討
71(1)ウ答案で検討
8解説(2)の認可時説の分岐条件付き分岐・解説
91(2)ア答案で検討
101(2)アの比例的平等答案で検討
111(2)アの公平な負担分担答案で検討
121(2)アのただし書答案で検討
131(2)イの許容と義務答案で検討
141(2)イの文理解釈と実質的公平答案で検討
151(2)ウ答案で検討
172(1)答案で検討
182(1)答案で検討
202(2)の株主総会特別決議答案で検討
212(2)の代替許可申立てと債務超過答案で検討
222(2)の早期譲渡による継続答案で検討
243(1)の趣旨答案で検討
253(1)の頭数1/2答案で検討
273(2)の廃止答案で検討
283(2)の破産答案で検討
16,19,23,26,29付議結論,意見聴取,許可の趣旨対比,続行,手続段階を答案・以下の解説で確認する重み3の補足対応

(2) 清算価値保障の基準時と比較対象

番号3~7は,清算価値保障の趣旨と基準時を結び付ける部分である。
単に124条に開始時評価と書かれているから結論も開始時とするのではなく,反対債権者に開始時から協力を求めることと,開始後の経営悪化の危険の負担を説明した。

公式出題趣旨は開始時説,認可時説及び両時点説を挙げ,採点実感は自説の根拠と適切な当てはめを重視している。
認可時説なら5%と計画の5%を比較するが,名目額が同じことだけで保障を肯定する必要はない。
番号8のとおり,分割弁済の現存価値と業績悪化による回収の危険を評価し,保障違反とする構成も採点実感が許容している。
開始時10%と認可時5%の清算配当率同士を比較するだけでは,計画による弁済が清算価値を保障するかに答えたことにならない。

(3) 不平等取扱いを許すことと義務付けること

番号9~16の中心は,155条1項本文とただし書の関係である。
債権額に応じて同じ割合で減免することが本文の原則であり,ただし書により差を設けられるとしても,直ちにその差を設けなければ違法になるわけではない。
許容と義務を分けた上で,どのような場合に同率取扱い自体が実質的衡平を害するかを論じる必要がある。

答案は,特段の事情がある場合には実質的公平を確保するため例外的な義務も認める解釈を採り,Bの支配,破綻への寄与及びCの信頼という三群の事実を評価した。
支配や責任があるという価値判断だけから,一般信義則を掲げて劣後化を導くものではない。
ただし書は許容規定にとどまり,Bの債権を劣後させることができても,同率取扱いがただちに155条違反にはならないと解する別構成もある。
その構成を採る場合も,本文・ただし書の文理と制度趣旨を説明し,1(b)に関する付議可否まで示す。
本答案は,Cの危険認識を反論として受け止めた上で,一度取引を停止した判断をBの支援表明が変更させた点を評価した。
危険認識の存在だけでCにBと同じ割合の負担を甘受させることと,破綻をもたらした支配・信頼誘引を負担配分へ反映することを区別している。

(4) 二つの許可とBの二つの地位

番号17~23では,Bを債権者と株主に分ける。
42条の意見聴取でBが反対することと,会社法上の株主総会承認が得られないことは,別の障害である。
前者には裁判所の再生必要性判断,後者には債務超過と事業継続必要性を要件とする43条の代替許可が対応する。

42条は債権者保護を伴う事業再生の審査であり,譲渡の対価や他の方法も判断に関わる。
43条は株主の承認を代替する制度であり,債務超過により残余財産への期待を失った株主が事業継続を妨げることへの調整が中心となる。
同じ早期譲渡の事情を使っても,それぞれ何のための必要性を評価するかを分ける。
開始決定から申入れまでは約1か月であり,計画認可を待つ間の価値毀損を検討した。
ただし譲渡価額等は与件から分からないので,相当な価額や契約条件を創作せず,42条の許可ではこれらの確認・疎明を要することを示した。
43条についても,単なる換価と事業の存続を区別して,乙による継続の必要性を評価した。
送達,効力,即時抗告,株式買取請求不適用は当時法の条文に基づく補足である。

(5) 頭数と金額,初回不成立と終局的否決

番号24・25は,過半数と2分の1以上を区別する。
Bは20億円の議決権を持つため金額要件を満たせても,B・C2名中の1名は頭数過半数ではない。
少数の大口債権者だけで計画を決定することを防ぐ頭数要件と,債権額に応じた利害を反映する金額要件の両方を示した。

番号26~29では,初回で可決しないときの続行を検討し,結局否決又は期限内不成立なら職権廃止に進む。
廃止確定と破産原因の認定を経て,250条1項による職権破産が可能となる。
B支配を維持する計画はCの同意転換を見込む上で消極事情と評価したが,今回の不同意だけで将来の不同意まで確定しない。
他の計画案がないという明示の前提も踏まえ,続行の可否と終局的否決を分ける。
集会中の計画案変更を定める172条の4や,認可後の計画変更を定める187条を中心に書いても,Cが同意しなかった後の帰すうという設問の終点には届かない。

(6) 答案の弱点と扱わなかった事項

本答案の1(b)は,155条1項から例外的な差別取扱い義務を導く解釈を採用しており,許容規定の文理を重視する立場からは批判があり得る。
公式資料が結論を一つに限定していないことを踏まえ,この解釈を唯一の正解として扱わない。
Bの保証責任や損害賠償,役員責任の査定及びCの不同意の権利濫用は,設問が直接求める手続判断と分け,答案の中心に置いていない。

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第7 出典及び確認状態

1 公式資料

問題は法務省の論文式試験問題集・選択科目の3~4頁である。
出題趣旨は令和元年司法試験論文式試験問題出題の趣旨の23頁「第2問」から24頁の次科目見出し直前までを実読した。
採点実感は法務省の令和元年司法試験の採点実感に掲載された選択科目PDFについて,1頁の第2問採点方針,3~6頁の第2問及び関連総論・6~7頁末尾を実読した。

2 法令

民事再生法・試験当時施行版の38条,42条,43条,124条,155条,169条,172条の3~5,174条,191条及び250条等を確認した。
会社法・試験当時施行版の309条2項11号及び467条1項1号等を確認した。
根拠は当時施行版の条文であり,試験後の改正内容を当時の答案へ遡及させていない。

3 裁判例

本問の公式資料は,ここで取り上げた検討に特定の判決名を必須の根拠として挙げていない。
本答案も特定判例を引用していない。
個別判例原文の独立照合はしておらず,判例により解釈の射程まで確定したものとしては扱わない。

4 確認状態

問題,出題の趣旨及び採点実感は,上記の第2問関連範囲を実読済みである。
法令の文言,公式資料が述べる評価及び本記事が採った解釈・事実評価は区別した。
清算価値の基準時,155条1項ただし書から義務を認めるか,その場合に本件事情が足りるかは,理由付けを要する解釈・評価の問題である。
評価項目の重みと答案例は本記事独自の分析であり,公式の採点基準や唯一の模範解答を示すものではない。