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血液でがんを調べる民間検査の広告をどう読むか―CTC検査,科学的根拠,医療広告及び契約前の確認事項(AI作成)

第1 記事の対象と結論

本記事は,自覚症状のない人を主な対象として,血液中の循環腫瘍細胞(CTC)等を調べる有料検査の広告を見たときに,科学的根拠,広告規制及び契約上の確認事項をどの順序で検討すべきかを整理するものである。

CTCを捕捉又は計数できること,CTCの有無又は数が既にがんと診断された患者の予後と関連すること,無症状者に対するがん検診として有効であること,及び広告文言どおりに「今,身体のどこかにがんがある」と判断できることは,それぞれ別の命題である。

したがって,CTCに関する論文又は海外の承認例が存在するという理由だけで,特定の民間検査について,すべてのがんを早期に発見できる,陰性なら安心できる,又は陽性ならがんが存在すると直ちに結論付けることはできない。

また,個別の広告が医療法,景品表示法又は医薬品医療機器等法に違反するかは,広告主体,申込先,表示全体,実際に使用する試薬・機器,承認等の状況及び表示時点で保有していた根拠資料を確認して判断する必要がある。

第2 がん検診,診断及び治療後の監視を分ける

1 がん検診の目的

がん検診は,症状のない集団から精密検査が必要な人を選び,検診,精密検査,診断及び治療へつなげる一連の仕組みである。

厚生労働省及び国立がん研究センターは,がん検診について,単にがんらしい所見を拾えることではなく,対象となるがんの死亡を減らす効果が確実であり,利益が偽陰性,偽陽性,過剰診断及び偶発症等の不利益を上回ることを重視している。

このため,検査の精度だけでなく,陽性後の精密検査が定まっているか,治療可能な段階で見つかるか,死亡又は進行がんを減らすか,及び検査による不利益が許容できるかを検討する必要がある。

2 国が推奨するがん検診の意味

国が住民検診として推奨しているのは,対象年齢及び受診間隔を定めた胃がん,大腸がん,肺がん,乳がん及び子宮頸がんの検診である。

この五つは,国が科学的根拠と利益・不利益の均衡を確認して推奨する対象であり,日本で実施されている検査又は発見可能ながんの種類が五つしかないという意味ではない。

例えば,前立腺特異抗原(PSA)検査は国の指針に基づく五つの検診には含まれないものの,厚生労働省の令和五年度調査では,多くの市区町村が国の指針に基づかない前立腺がん検診として実施していた。

したがって,「国の推奨対象ではない」と「検査又は自治体検診が存在しない」は区別しなければならない。

3 検診,診断,予後予測及び再発監視の違い

検診は無症状者を対象とし,診断は症状,画像又は検診結果等から病気が疑われる人について病気の有無を確定する過程である。

予後予測は,既に病気と診断された患者について進行又は生存との関連を評価するものであり,再発監視又は治療反応の評価も,無症状の一般集団を対象とする検診とは目的及び対象者が異なる。

既に転移性がんと診断された患者でCTC数と生存期間との関連が示されても,その研究だけでは,無症状者について同じ方法で早期がんを見つけ,がん死亡を減らせることの証明にはならない。

第3 CTC検査の根拠は四つの層に分ける

1 測定の妥当性

第一は,目的とする細胞を検体から再現性よく捕捉,染色,識別及び計数できるかという測定の妥当性である。

ここでは,採血量,検体の保存時間,捕捉原理,使用する抗体又はマーカー,判定者間の一致,偽陽性及び偽陰性並びに品質管理を確認する。

「CTCを扱う技術が存在する」ことと,「広告されている特定の検査法が同じ性能を有する」ことは同じではないため,論文で用いた装置,試薬及び判定基準が実際の検査と一致するかが重要である。

2 臨床的な妥当性

第二は,検査結果が対象者におけるがんの有無,部位,病期又は予後とどの程度対応するかという臨床的な妥当性である。

感度,特異度,陽性的中率及び陰性的中率は,対象集団,がん種,病期,基準となる確定診断及び判定の閾値によって変わる。

特に,がん患者と健康な人をあらかじめ選んで比較した研究の特異度を,症状のない一般集団にそのまま適用することはできない。

3 臨床的な有用性

第三は,検査を受けることにより,進行がん又はがん死亡が減る,治療の負担が軽くなるなど,受検者にとって重要な結果が改善するかという臨床的な有用性である。

早く異常を示すことができても,発生部位を特定できず,標準化された精密検査の経路がなく,又は偽陽性による追加検査が増えるだけであれば,検診としての利益が不利益を上回るとは限らない。

国立がん研究センターは,血液又は尿からがんのリスクを調べる新たな検査法について,がん検診としての効果が十分に検証されておらず,異常値となった後の行動の流れも明確に示されていないと説明している。

4 結果表示と意思決定

第四は,検査結果の表示が,受検者の意思決定に耐える内容になっているかである。

陽性が何を意味するか,陰性でも除外できないがんが何か,部位を特定できるか,血液がんを含むか,次に受ける検査と費用は何かを,申込み前に確認する必要がある。

「リスク検査」と表示しながら,別の箇所で「がんが今,身体のどこかにあることが分かる」と断定している場合は,免責文言だけでなく,ページ,メール,画像,申込画面及び説明書を含む表示全体を読む必要がある。

第4 広告の数字及び論文を読むときの注意点

1 罹患数の割合と検診の検出率は異なる

五つのがんが全がん罹患数に占める割合を合計しても,それは検診が実際に発見する割合又は見逃す割合を示すものではない。

検診の対象となる年齢及び性別,受診率,検査感度,受診間隔,精密検査の受診率並びに対象外のがん種が混在するため,「五大がんの罹患割合がおおむね半分である」ことを「国の検診ではがんの半分しか見つからない」と言い換えることはできない。

2 感度,特異度及び的中率を分ける

感度は病気がある人のうち陽性となる割合であり,特異度は病気がない人のうち陰性となる割合である。

陽性的中率は陽性者のうち実際に病気がある割合であり,陰性的中率は陰性者のうち病気がない割合である。

無症状者のように病気の有病率が低い集団では,特異度が高くても偽陽性が無視できない数になることがあるため,特異度だけを大きく表示しても,陽性結果ががんの存在をどの程度示すかは分からない。

便潜血検査等について「偽陰性率何%」と示す場合も,検査回数,対象病変,病期,採便方法及び研究集団を確認し,単一の幅をあらゆる場面に一般化しないことが必要である。

3 論文の対象と広告の対象を照合する

論文は,①対象者,②がん種及び病期,③検査装置・試薬・判定基準,④比較対象,⑤評価項目並びに⑥追跡期間を確認する。

研究が査読誌に掲載されていることは重要であるが,査読を経た研究の結論を超えて,別の検査法,別の患者集団又は別の目的に広げてよいことにはならない。

事業者の論文紹介が治療中又は転移性がん患者の予後研究に集中している場合は,無症状者の全身がん検診という広告上の用途を直接裏付けているかを別に確認する必要がある。

4 FDAのCellSearchに関する資料の限界

米国食品医薬品局(FDA)のCellSearch Circulating Tumor Cell Kitに関するK073338は,転移性の乳がん,大腸がん又は前立腺がんの患者について,他の臨床的方法と併用して連続的にCTCを計数し,予後又は進行を監視する補助として用いるものである。

これは,無症状者を対象とする全がん検診の承認ではなく,CellSearchと捕捉原理又は判定法が異なる別のCTC検査についての承認でもない。

海外規制当局の資料を根拠として示す場合も,製品,対象者,目的及び表示範囲が一致するかを確認する必要がある。

第5 広告規制を検討する順序

1 まず表示全体と取引経路を保存する

広告の法的評価では,一つの文章だけでなく,メール本文,画像内の文字,リンク先,申込画面,価格・割引条件,FAQ,利用規約,検査説明書及び結果通知の見本を一体として確認する。

同じ検査について「がんの有無を判定する」と「確定診断ではない」が別ページに書かれている場合は,受検者が通常たどる順序及び各表示の目立ち方も重要になる。

2 医療法上の広告規制

医療法六条の五は,医業,病院又は診療所に関する広告について,虚偽広告を禁止し,比較優良広告,誇大広告,患者の主観又は伝聞に基づく治療内容・効果の体験談等を規制している。

ウェブサイト等も,患者の受診等を誘引する意図があり,医療を提供する者又は医療機関を特定できる場合には,医療広告に当たり得る。

もっとも,検査会社だけが表示主体であるのか,提携医療機関の広告として一体に評価されるのか,検査が医療機関でどのように提供されるのかは個別に確認する必要がある。

自由診療について広告可能事項の限定解除を問題にするときは,問い合わせ先,通常必要な治療等の内容及び費用,主なリスク・副作用等が十分に示されているかも確認する。

3 景品表示法上の優良誤認と不実証広告規制

景品表示法五条一号は,商品又は役務の品質,規格その他の内容について,実際より著しく優良であると一般消費者に示す表示等を禁止している。

同法七条二項の不実証広告規制では,効果又は性能の表示について合理的な根拠資料の提出を求められ,資料が提出されない場合等には,措置命令との関係で優良誤認表示とみなされる。

消費者庁の運用指針では,根拠資料が客観的に実証された内容であることに加え,表示された効果又は性能と資料によって実証された内容が適切に対応することが必要とされている。

したがって,「CTC一般に関する論文がある」だけでは足りず,広告対象となる検査法,無症状者という対象集団,全身がんリスク検査という目的及び具体的な表示内容に対応する資料かを確認する必要がある。

4 医薬品医療機器等法の確認

医薬品医療機器等法六十八条は,承認又は認証を受けていない医薬品,医療機器又は再生医療等製品について,名称,製造方法,効能,効果又は性能に関する広告を禁止している。

ただし,検査サービスの広告を見ただけで同条違反と断定することはできず,実際に使用する試薬,装置又は検査キットが同法上の何に当たり,どの承認,認証又は届出を得ているかを特定する必要がある。

5 価格,期限及び付帯条件

会員価格,期間限定価格,家族・友人にも適用できる特典又は精密検査費用の補助を表示する場合は,通常価格の販売実績,期限,対象者,補助の上限,適用除外,申請期限及び解約・返金条件を確認する。

配信時期と申込期限が整合しない,リンク先で価格が変わる,又は重要な条件が申込後に初めて示される場合は,表示時点の画面を保存しておくことが重要である。

第6 申込み前の確認事項

確認分野確認する質問保存する資料
検査の目的検診,診断補助,予後予測又は治療後監視のどれか広告,説明書,結果見本
対象者無症状者,既往者又は治療中患者のどれを想定しているか適応・除外基準,FAQ
検査方法採血量,捕捉原理,マーカー,判定者及び品質管理は何か検査概要,論文,認証資料
検査性能がん種・病期別の感度,特異度,陽性的中率及び陰性的中率はあるか原著論文,研究計画,集計表
陽性後部位をどう調べ,誰が紹介し,追加費用を誰が負担するかフォロー手順,費用補助規約
陰性後国が推奨するがん検診を省略してよいか陰性結果の注意書き
費用検査料,診察料,送料,精密検査費用及び補助条件は何か料金表,申込画面,領収書
契約キャンセル,返金,検体不良及び再検査の扱いは何か利用規約,同意書,メール
個人情報検体,画像及び結果が研究・AI学習等に二次利用されるか同意書,プライバシーポリシー

国が推奨するがん検診を受けるかどうかと,任意の民間検査を追加するかどうかは別に判断し,民間検査の陰性結果だけを理由に推奨検診又は症状に応じた受診を省略しないことが重要である。

個人の年齢,症状,既往歴及び家族歴によって適切な検査は異なるため,具体的な受検判断は主治医その他の医療専門職に相談する必要がある。

第7 トラブルになった場合の証拠整理

1 表示と契約資料を時系列で保存する

受信メールは転送又は印刷だけでなく,可能であればヘッダーを含む原本形式で保存し,画像,リンク先,申込画面,決済記録,問診票,同意書,検査結果,医師の説明及び問い合わせ回答を日付順に整理する。

ウェブ表示は変更され得るため,URLだけでなく,取得日時が分かる画面保存又はPDFを残し,画像内の文言も検索できるように転記しておくとよい。

2 表示根拠と因果関係を分ける

事業者に説明を求める場合は,広告文言ごとに,表示時点で存在した根拠資料,使用した検査法との同一性,対象集団,評価項目及び限界を具体的に確認する。

返金又は損害賠償等を検討するときは,表示が不適切であるかという問題と,その表示を信じて契約したか,どの損害が生じたか,追加検査又は治療との因果関係があるかという問題を分けて検討する必要がある。

3 判例及び個別法令の確認

CTC検査の無症状者向け広告に直接適用できる裁判例は,本記事の作成時点では確認していない。

個別事件では,景品表示法上の行政規制だけでなく,契約の取消し,錯誤,説明義務,債務不履行又は不法行為等の成否を,実際の表示,説明,契約内容及び損害に即して検討する必要がある。

また,医療法,景品表示法及び医薬品医療機器等法の適用関係は,広告主体及び製品の規制上の地位を確認した上で判断すべきであり,一般論から個別の違反を断定してはならない。

第8 検査費用と医療費控除

人間ドック,健康診断その他の検診費用は,疾病の治療を目的とするものではないため,原則として所得税の医療費控除の対象にならない。

ただし,健康診断等の結果,重大な疾病が発見され,かつ,その診断等に引き続いてその疾病の治療を行った場合は,治療に先立つ診察と同様に考えられ,その健康診断等の費用も医療費控除の対象になり得る。

自由診療であること,医療機関で採血したこと,又は高額であることだけで控除対象になるわけではなく,検査の目的,疾病の発見及び引き続く治療の有無を確認する必要がある。

詳しくは,所得税の確定申告に関するメモ書き(AIリライト)を参照されたい。

第9 主な資料と本記事の限界

1 法令及び公的資料

e-Gov法令検索「医療法」,e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法」及びe-Gov法令検索「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」を参照した。

厚生労働省「がん検診」,国立がん研究センターがん情報サービス「がん検診について」,厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」及び消費者庁「不実証広告規制」を参照した。

FDA「CellSearch Circulating Tumor Cell Kit, K073338」は,海外の別製品について,承認対象となった用途の範囲を確認するために参照したものであり,日本の特定の民間CTC検査の性能又は承認を裏付ける資料ではない。

医療費控除については,国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」を参照した。

2 事業者資料の位置付け

個別の検査事業者のウェブサイト,論文紹介,FAQ及び広告メールは,その事業者がどのような表示をしているかを確認するための当事者資料である。

当事者資料は,広告内容及び契約条件を立証する資料にはなるが,それだけで検診としての有効性を独立に証明するものではない。

3 判例秘書等による裏付け

本記事の中心的な医学上の整理は,厚生労働省,国立がん研究センター,消費者庁及びFDAの公的資料に基づく。

景品表示法の一般的な裁判例は,景品表示法の仕組み―景品規制・不当表示・ステマ規制・法執行(AI作成)で整理している。

もっとも,CTC検査又は無症状者向け民間がん検査の広告,説明義務,返金又は損害賠償に直接関係する判例秘書の網羅検索は本記事の作成過程では実施していないため,個別事件で裁判例の有無又は傾向を論じる際は別途検索する必要がある。