法科大学院の費用は,授業料だけでなく,入学料,施設費等の諸経費と,修了までの生活費を合わせて考える必要がある。
一般に既修者コースは2年,未修者コースは3年であるため,同じ学校でも修了までの学費総額は異なる。
本記事では,文部科学省の令和8年度調査に掲載された費用の例と,JASSOの授業料後払い制度を整理する。
第1 学費の総額に含まれるもの
1 初年度と修了までの総額
文部科学省の「授業料,入学料その他の徴収する費用」は,令和8年4月1日現在の調査であり,初年度経費,既修者コース2年,未修者コース3年の修了までの経費を分けて示している。
各区分には,入学料,授業料,施設整備費その他諸経費の欄がある。
授業料の年額に年数を掛けるだけでは,入学料や諸経費を含む総額にならない。
また,減免制度の適用,出身大学や住所に応じた特例などにより,実際の負担が変わる場合がある。
2 調査の総額と生活費を分ける
調査に掲載された学校納付金の総額だけで,進学に必要な資金が全て分かるわけではない。
住居費,食費,通学費,教材費,転居費,試験の受験費用及び就業を減らすことによる収入減も,自分の生活条件に応じて見積もる。
留年,休学,長期履修等の扱いは,学校の規程と費用の説明を確認する。
第2 2年・3年の学費総額の例
1 文部科学省の令和8年度調査の掲載額
次の表は,各校の費用を一律の条件に補正したランキングではなく,文部科学省の調査の主表に掲載された合計額の例である。
初年度欄も同じ主表の値を示し,年度や免除条件の異なる別シートの数字は混ぜていない。
| 大学 | 初年度 | 既修2年の総額 | 未修3年の総額 |
|---|---|---|---|
| 東京大学 | 1,086,000円 | 1,890,000円 | 2,694,000円 |
| 大阪大学 | 1,086,000円 | 1,890,000円 | 2,694,000円 |
| 神戸大学 | 1,086,000円 | 1,890,000円 | 2,694,000円 |
| 東京都立大学 | 945,000円 | 1,608,000円 | 2,271,000円 |
| 学習院大学 | 1,451,200円 | 2,752,400円 | 4,053,600円 |
| 中央大学 | 1,600,000円 | 2,600,000円 | 3,600,000円 |
| 早稲田大学 | 1,573,000円 | 3,141,000円 | 4,709,000円 |
原資料の備考には,出身大学,住所,選抜区分等に関する特例や,保険料等の追加説明がある。
支払額を確定するときは,各校の志望年度の学費案内と募集要項を優先して照合する必要がある。
上表の数字は令和9年度以降の学費を保証するものではない。
2 年額80万4000円の授業料を例にした計算
入学料28万2000円,授業料年額80万4000円を,2年又は3年とも同額で納める場合,入学料と授業料の合計は2年で189万円,3年で269万4000円となる。
これは28万2000円+80万4000円×年数という計算であり,東京大学,大阪大学,神戸大学の調査掲載額とも対応する。
全ての国公立大学がこの費用であるという意味ではなく,諸経費や特例がある学校は別途確認する。
未修者コースを比較する際は,授業料1年分の差だけでなく,生活費と収入減の1年分も考える必要がある。
第3 授業料減免と奨学金の確認方法
1 給付・貸与・減免を分ける
奨学金という名称でも,返還が不要な給付と,返還が必要な貸与では性質が異なる。
授業料減免は,学校に納める授業料等を減らす仕組みであり,生活費を受け取る制度とは限らない。
学校独自の制度とJASSOの制度について,対象者,金額,採用人数,申請期限及び併用の条件を確認する。
2 入学時だけでなく継続条件も見る
「全額免除」等の表示があっても,全ての入学者に適用されるとは限らない。
入試成績,学業成績,家計,出身大学,選抜区分等の条件と,2年目以降の継続審査を確認する。
採用されなかった場合や継続できなかった場合も含めて,修了までの資金計画を立てる。
制度の存在と自分の採用可能性を分けて考えることが大切である。
第4 JASSOの授業料後払い制度
1 授業料が無料になる制度ではない
JASSOの授業料後払い制度は,大学院修士課程等や専門職学位課程の在学者を対象とする貸与の制度である。
原則として授業料相当額を学校へ振り込み,修了後の所得等に応じてJASSOへ返還する仕組みであり,授業料の免除とは異なる。
JASSOと学校との契約の状況等によっては本人の口座への振込みとなり,授業料に直接充当されない場合もある。
学校振込みと本人振込みを奨学生が選べる制度ではない。
2 支援対象授業料の上限と自己資金
JASSOが示す支援対象授業料の年額上限は,国公立で53万5800円,私立で77万6000円である。
実際の授業料として学校が指定した額がこれより少ない場合は,指定額となる。
返還する貸与額には,指定された額に機関保証に係る保証料相当分を加えた額が含まれる。
| 区分 | 支援対象授業料の年額上限 | 2年間の上限合計 | 3年間の上限合計 |
|---|---|---|---|
| 国公立 | 53万5800円 | 107万1600円 | 160万7400円 |
| 私立 | 77万6000円 | 155万2000円 | 232万8000円 |
2年・3年の欄は,年額上限を単純に掛けた支援対象授業料の計算であり,保証料を含む返還総額ではない。
毎年度の採用・継続や学校指定額を確認する必要がある。
たとえば授業料が年額80万4000円の国公立大学では,最大53万5800円が対象となるとしても,授業料との差額は年26万8200円となる。
さらに入学料,諸経費及び生活費等も別に考えるため,「後払いで入学時の資金が全く要らない」と考えてはいけない。
3 申込条件と生活費奨学金
JASSOは,申込資格,学力基準及び家計基準を第一種奨学金と同様としている。
授業料後払い制度と第一種奨学金は併用できず,第二種奨学金との併用には条件がある。
生活費奨学金は月額2万円又は4万円から選び,受けないこともできる。
実際の生活費奨学金の振込額は,選択額から保証料を差し引いた額となる。
法科大学院での取扱い,募集時期,申請書類及び自分の申込資格は,学校の奨学金窓口とJASSOの最新案内で確認する。
第5 自分の費用を見積もる順序
まず,学校へ納める初年度費用と修了までの費用を,既修・未修の志望コースで調べる。
次に,住居費等の月額に学修期間を掛け,転居費や教材費等を加える。
その上で,確定した給付・減免を差し引き,貸与の奨学金については受取額と将来の返還額を分けて記録する。
最後に,留年や減免打切り,修了後も受験を続ける場合の資金を別に検討する。
未採用の奨学金や予定するアルバイト収入だけに頼らず,不足額と支払時期を確認することが重要である。
第6 よくある質問
1 国公立の法科大学院なら全て同じ学費ですか
全て同じではない。
授業料,入学料,諸経費,住所等に応じた特例や免除条件が異なるため,大学ごとの合計と備考を確認する必要がある。
2 未修者コースは既修者コースよりいくら高くなりますか
同じ学校でも,1年分の授業料だけでなく,諸経費や継続的な減免の条件によって差額が変わる。
年額80万4000円が3年間変わらず,それ以外の条件も同じであれば,授業料部分の差は80万4000円となる。
実際には生活費と収入減も1年分増え得るため,総額で比較する必要がある。
3 授業料後払い制度だけで全ての学費を賄えますか
授業料の支援には年額上限があり,学校の授業料が上限を超える場合は差額が残る。
入学料,諸経費及び生活費についても,別の資金や制度の確認が必要である。
後払い制度は返還を伴うため,将来の返還も含めて利用を検討する。
第7 関連記事と出典
制度全体は,法科大学院とは,進学先の比較は,法科大学院の選び方で説明している。
文部科学省「令和8年度法科大学院関係状況調査」の「5 授業料,入学料その他の徴収する費用」の主表を参照した。
JASSO「授業料後払い制度(大学院修士段階)」と「授業料後払い制度の貸与額」を制度説明の根拠とした。
本記事の確認日は令和8年10月13日である。