第1 法人文書と自分の個人情報の開示を分ける
1 法人文書は誰でも開示請求できる
自動車技術総合機構の規程,審査業務に関する資料,契約関係の文書等を調べるときは,公式サイトでの公表資料の確認と,法人文書の開示請求を使い分ける。
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律3条は,何人も,独立行政法人等の保有する法人文書の開示を請求できると定めている。
事故の当事者や自動車の所有者であることを,法人文書一般の請求資格として要求する制度ではない。
法人文書とは,役員又は職員が職務上作成・取得し,組織的に用いるものとして法人が保有する文書,図画及び電磁的記録である(同法2条2項)。
請求するのは,保有されている文書の開示であり,法律相談への回答,新しい集計表の作成又は請求者向けの説明文の作成ではない。
本記事は,令和8年10月13日時点の法令と,機構の情報公開ページから案内される公表規程等をもとに,請求の順序を説明する。
2 自分の個人情報は別の制度がある
個人情報保護法76条は,自己を本人とする保有個人情報の開示請求を定めている。
同法77条2項では,本人又は代理人であることを示す書類の提示・提出が必要となる。
法人文書の開示請求に個人情報が含まれている場合の扱いと,自分の保有個人情報を請求する場合の手続は同じではない。
機構の情報公開ページには,法人文書の開示請求書と,保有個人情報開示請求書が別に掲載されている。
自分に関する予約・届出等の記録を取得したい場合は,情報の内容と保有主体を特定したうえで,どちらの制度を使うべきかを確認する。
他人の個人情報を取得したいというだけでは,本人開示の制度は利用できない。
第2 公表資料と文書管理簿から請求対象を絞る
1 まず公表済みの資料を確認する
機構公式サイトには,審査事務規程,情報公開関係の規程,入札・契約情報,計画・目標,業務実績報告及び財務情報等の入口がある。
例えば,現行の審査事務規程本文を読みたいだけであれば,まず公表されている閲覧ページを利用する。
その規程の改正理由や検討経過が必要な場合は,公表資料で足りる範囲と,別の保有文書の開示が必要な範囲を分ける。
機構の情報公開ページには,平成27年度以前の旧自動車検査独立行政法人の資料と,旧交通安全環境研究所の資料に関する案内もある。
古い文書を調べるときは,現在の機構名だけで検索せず,作成当時の組織名と文書を保有している部門も確認する。
公式入口:https://www.naltec.go.jp/publication/disclosure.html
2 名称・対象期間・担当部門を組み合わせる
情報公開ページから法人文書ファイル管理簿を開き,業務名,文書の分類,対象年度,担当組織及び保存期間等を手掛かりに対象を絞る。
管理簿は,個々の文書内容の全てを証明する資料ではない。
掲載されたファイル名に関連資料が含まれる可能性があっても,必要な文書の現存や保有範囲は別に確認する必要がある。
情報公開法4条1項2号は,文書名その他,対象文書を特定するに足りる事項の記載を求めている。
同条2項は,形式上の不備がある場合の補正と,補正の参考となる情報の提供について定めている。
文書名が分からない場合は,知りたい問題を具体化し,窓口へ文書の特定方法を相談する。
例えば,規程改正の経過を調べる請求では,次のように対象と期間を組み合わせることが考えられる。
「令和8年7月30日付けの審査事務規程改正に関し,改正案の作成から届出までの間に作成又は取得し,機構が保有する改正理由を記載した文書及び決裁文書」。
これは特定のための記載例であり,その名称の文書が必ず存在し,全て開示されることを意味しない。
第3 請求書の提出先・書類・手数料
1 機構の様式で提出する
機構の公表する文書公開規程2条は,窓口を総務部総務課とし,請求書の直接提出又は郵送による方法を定めている。
規程3条は様式を定め,公式ページから法人文書の開示請求書(様式1)を入手できる。
送付する前に,公式の窓口案内で,最新の所在地・担当部署・受付方法を確認する。
請求書には,請求者の氏名又は名称・住所又は居所,法人等であれば代表者の氏名と,対象文書を特定する事項を記載する。
複数の対象を請求するときは,対象ごとに番号を付け,期間,担当部門及び知りたい文書内容を分けると,不備の照会や決定通知との対応を追いやすい。
機構の公開規程で案内される提出方法によって提出し,メールやFAXを送っただけで正式な開示請求が受理されたと判断しない。
2 開示請求手数料と開示実施手数料は別である
情報公開法17条に基づき,具体的な手数料は法人が定める。
機構の公表規程6条1項1号は,法人文書1件につき開示請求手数料300円と定めている。
請求書を1枚にまとめれば,どれほど多くの文書を請求しても常に300円になるわけではない。
同条2項には,一つの法人文書ファイルにまとめられた文書や,相互に密接に関連する文書を,一つの請求書で請求する場合に,1件とみなす規定がある。
複数年度・複数事務所の資料をまとめて請求するときは,件数と必要額を窓口へ確認するとよい。
開示実施手数料は,閲覧・写しの交付等の方法と文書の種別により異なる。
公表規程6条1項2号では,基本額が300円に達するまでは無料で,300円を超える場合は原則として基本額から300円を減じる仕組みである。
公表別表の白黒の紙の複写(A3判以下1面10円)を50面受ける例では,基本額500円から300円を引いた200円が開示実施手数料となり,開示請求手数料300円と併せて500円となる。
郵送で写しを受け取る場合の郵送料は別に必要である。
3 支払方法と取得方法を混同しない
公表規程7条は,直接提出時は現金又は郵便小為替,郵送時は定額小為替証書又は普通為替証書を添える方法を定めている。
写しの郵送料は,郵便切手で納付すると定められている。
国の行政文書の請求で使う収入印紙や,自動車登録・検査の手数料で使う印紙を,機構の法人文書開示の手数料と混同しない。
取得を希望する形式も確認する。
公表されている実施方法の表には,紙の複写,閲覧,電磁的記録の媒体への複写等があるが,任意のPDFのメール送付や任意形式への変換が常に選べるとは限らない。
文書の元の形式,希望する方法,手数料及び郵送料を,開示決定の通知と窓口案内に照らして選ぶ。
第4 決定と実際の取得には別々の期限がある
1 開示決定等は原則30日以内
情報公開法10条1項は,請求があった日から30日以内に開示決定等をすることを原則とし,補正に要した日数を算入しないとしている。
事務処理上の困難等の正当な理由がある場合は,同条2項により30日以内の延長が可能であり,延長後の期間と理由が書面で通知される。
著しく大量の文書については,同法11条の特例がある。
その場合は,60日以内に相当部分を決定し,残りを相当の期間内に決定する仕組みであり,特例適用の理由と残りの決定期限の通知が必要となる。
請求から30日で全資料が必ず手元に届くという制度ではない。
2 開示の実施方法の申出
開示決定を受けた後は,閲覧又は写しの交付等の希望する方法を申し出る。
情報公開法15条4項は,決定通知があった日から30日以内の申出を原則としている。
決定通知だけを保管して手続を止めず,実施方法,支払額,郵送料及び申出期限を確認する必要がある。
最初に開示を受けてから,別の方法による取得が必要となった場合には,同条5項の更なる開示の申出が問題となる。
同項も最初の開示から30日以内を原則としているため,閲覧後に写しが必要になった場合は,早期に窓口へ相談する。
第5 不開示・部分開示・文書不存在の確認
1 不開示理由と対象部分を対応させる
情報公開法5条は,個人情報,法人等の正当な利益に関する情報,審議・検討に関する情報及び事務・事業の遂行に支障を及ぼす情報等の不開示事由を定めている。
メーカーの技術情報,検査方法の詳細又は個人に関する記録が含まれる場合は,文書の内容に応じてこれらの規定が問題となり得る。
「検査関係の文書だから全部非公開」「安全に関係するから全部公開」という結論にはならない。
不開示部分が容易に区分・除去できる場合の部分開示は,同法6条に定められている。
通知書では,どの文書のどの部分について,どの不開示事由が用いられているかを確認する。
部分開示を求める場合も,残る部分に意味のある情報があるかなど,同条の条件を踏まえて主張する。
2 不存在と存否応答拒否を区別する
機構が文書を保有していない場合の不開示決定と,文書の存在の有無を答えるだけで不開示情報を明らかにするため存否を示さない同法8条の判断は,理由が異なる。
文書不存在とされた場合は,請求の対象・期間・担当部門の特定,作成・取得・保存の見込み及び探索の説明を確認する。
機構が持っていないからといって,国土交通省やメーカー等の別の主体も持っていないことにはならない。
第6 不服がある場合の審査請求と訴訟
1 機構に対する審査請求
情報公開法18条1項は,開示決定等又は請求に対する不作為について,法人に対する審査請求を認めている。
現行制度では,旧案内にある「異議申し立て」という表記だけを頼りにせず,決定通知の教示と現行法を確認する。
同法19条により,一定の例外を除いて情報公開・個人情報保護審査会への諮問が行われる。
処分についての審査請求期間は,行政不服審査法18条により,原則として処分を知った日の翌日から3か月,処分があった日の翌日から1年である。
正当な理由による例外があるが,理由の確認や窓口への相談をしているだけで期限が止まると考えてはならない。
不作為についての審査請求と,処分に対する審査請求の期間は分けて検討する。
2 取消訴訟等を検討する場合
不開示決定等について取消訴訟を検討する場合には,行政事件訴訟法上の被告,管轄,訴えの利益及び出訴期間等を確認する必要がある。
同法14条は,取消訴訟の出訴期間を原則として処分・裁決を知った日から6か月,処分・裁決の日から1年と定め,審査請求がされた場合について別の規定を置いている。
審査請求の3か月と取消訴訟の6か月を混同しない。
争う対象が,個人情報の不開示,技術上の秘密,検査業務への支障,文書の不存在又は存否応答拒否のいずれかによって,必要な事実と主張が変わる。
請求書,補正のやり取り,決定通知,開示された資料及び管理簿の該当箇所を保存し,期限内に対応方法を検討する。
第7 関連記事・出典
1 関連記事
機構の業務と問い合わせ先の違いは,自動車技術総合機構とはで説明している。
公表された検査基準を探す手順は,審査事務規程の読み方を参照されたい。
2 出典
①独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律2条~11条,15条,17条~19条。
https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000140
②個人情報の保護に関する法律76条・77条。
https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057
③行政不服審査法18条及び行政事件訴訟法14条。
https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC0000000068
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000139
④自動車技術総合機構「情報公開」。
https://www.naltec.go.jp/publication/disclosure.html
⑤同「保有する文書等の公開に関する規程」2条~7条,PDF1頁。
https://www.naltec.go.jp/publication/gtg5d20000000e1k-att/gtg5d20000000ec1.pdf#page=1
⑥同「情報の公開に関する手数料」別表第2,PDF1頁~2頁。
https://www.naltec.go.jp/publication/gtg5d20000000e1k-att/gtg5d20000000eas.pdf#page=1
⑦同「情報公開について」PDF1頁~3頁。
この案内の不服申立てに関する旧表記は,①及び③の現行法と区別して参照した。
https://www.naltec.go.jp/publication/gtg5d20000000e1k-att/gtg5d20000000e41.pdf#page=1