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令和6年司法試験経済法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した40項目と5段階の重み付け(AI作成)

放射性医薬品の供給を利用した競争者排除を,市場・行為・効果の順に整理する。三行為の評価表と完成答案を対応させ,αと新型γに生じる影響を分けて解説する。

第1 この記事の対象と結論

本記事は,令和6年司法試験の経済法第2問について,法務省の公式資料から独自に抽出した40の評価項目と,2500字以内の模範解答を示す。評価項目及び重みは法務省の公式採点基準・配点ではない。

本問の中心は,放射性医薬品αの既存供給者X社が,新規参入したY社に対して行った三つの妨害である。本答案は南関東・近畿の各α市場における排除型私的独占を主として論じ,(a)(b)の不公正な取引方法と,(c)の新型γ取引への妨害を別個に検討する。

重み5は11項目である。両規制の検討(番号2),地域市場(6),流通経路・顧客の封鎖(12・19),異なる商品間の競争関係(23),競争手段の不公正さ(26),排除の規範とγからαへの因果経路(28・31),総合評価(32),競争の実質的制限(33),論述の完結と配分(36)を重視する。総合評価などの高評価項目を全答案の必須要件へ一律に格上げするものではない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一つの項目を一つの判定対象とし,必須・高評価・負例・許容分岐を重みと別に表示する。許容分岐は適切な一つの構成を選び理由を示せばよく,全ての構成を並べる必要はない。負例は避けるべき記述であり,取引拒絶を採らない答案に番号21の検討を加える必要はない。

出題の趣旨は合冊PDF28頁末尾~29頁の経済法第2問,採点実感は選択科目PDF15~16頁の関連採点方針及び18~20頁の第2問を根拠とする。頁はPDFの一から数えた頁数である。「記載なし」は当該関連範囲を読んだ結果を,「間接」は一般的記述を本問の要件・事実へ具体化した推論を表す。表の短い根拠語句以外は記事の言葉で整理した。

2 5段階の重み付けの基準

①重み5:採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの。
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項。
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け。
④重み2:一方が軽く触れる補強,又は典型的な誤り。
⑤重み1:一方が控えめに触れる事項。

本記事の重み4は,採点実感が高く評価した場合だけでなく,評価や具体的な不足・誤りの指摘を通じて取り上げた場合も含む。重み5は骨格に当たる理由を第1及び第5で示す。件数の割当てや旧3段階からの換算は行っていない。

第3 本問の概要

αはβ検査に必要な放射性医薬品で,使用可能時間が短く安定製造が難しい。X社は最初に商品化し,12地域の製造拠点からZを通じ全国一律価格で供給していた。Y社は同じ12地域に参入し,南関東・近畿では安価なαを販売し,新型自動投与装置γの供給により需要拡大も目指した。

X社は,(a)地域別価格でY社製品を扱えばZへの供給を止めると通知し,(b)Y社から購入した医療機関への供給停止を通知し,(c)検査も根拠もなく新型γではX社製αを使えないと説明した。Y社は高費用の直接販売を強いられ,多くの医療機関が購入を断念し,新型γの導入も妨げられた。設問はX社の行為の独占禁止法上の問題点を中立的に検討するものである。

第4 評価項目と重み

1 主体・市場画定

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1X社が事業者に当たることを製造販売の事実と結び付ける。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
3記載なし(関連範囲を実読)18頁・経済法 第3 2 第2問:「事業者」
2私的独占と不公正な取引方法の両規制を検討する。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
528頁・経済法 第2問:私的独占該当性が問題15頁・経済法 第2 採点方針:私的独占
3採用類型の行為要件と効果要件を区別して規範を立てる。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:排除行為についての基本的な理解15頁・経済法 第2 採点方針:行為要件及び効果要件
4αの需要代替性から商品範囲を論じる。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
4間接(一般的市場画定要求を具体化):29頁・経済法 第2問:需要の代替性と供給の代替性間接(明示評価の具体化):18頁・経済法 第3 2 第2問:市場画定の基本的な考え方
5他の供給者の製造転換・自家製造を供給代替性として評価する。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
4間接(一般的市場画定要求を具体化):29頁・経済法 第2問:供給の代替性間接(明示評価の具体化):18頁・経済法 第3 2 第2問:市場画定の基本的な考え方
6短い利用可能時間と同じ12地域の拠点から二地域の各市場を画定する。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
529頁・経済法 第2問:一定の取引分野を画定18頁・経済法 第3 2 第2問:同じ12の地域に分割
7配送範囲の制約を検討せず全国市場と結論しない。
【負例】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
2記載なし(関連範囲を実読)18頁・経済法 第3 2 第2問:市場の地理的範囲を日本全国などと安易に
8従来唯一・供給の定評・購入者の依存からX社の有力性を示す。
【高評価】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
3記載なし(関連範囲を実読)19頁・経済法 第3 2 第2問:X社が有力な事業者であること

2 行為(a)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
9拘束条件付取引の「拘束する条件」の意義を示す。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
3記載なし(関連範囲を実読)18頁・経済法 第3 2 第2問:拘束する条件を
10供給停止の通知がZのY社製品取扱いを事実上制限したと当てはめる。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:市場閉鎖効果分析間接(明示評価の具体化):18頁・経済法 第3 2 第2問:一定の当てはめ
11拘束条件付取引又は適切な取引拒絶等の類型を理由を付けて選ぶ。
【許容分岐】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:拘束条件付取引若しくは間接の取引拒絶18頁・経済法 第3 2 第2問:拘束条件付取引
12Z経由の供給断念と高費用の直接供給への移行を競争上の不利益と評価する。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
529頁・経済法 第2問:市場閉鎖効果19頁・経済法 第3 2 第2問:より費用のかかる自社供給を余儀なくされたこと
13X社の有力性と流通経路喪失を市場閉鎖・自由競争減殺へつなぐ。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:公正競争阻害性19頁・経済法 第3 2 第2問:自由競争が減殺された状況
14全国一律価格による公平配分の主張を理由を付けて否定する。
【高評価】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
3記載なし(関連範囲を実読)19頁・経済法 第3 2 第2問:正当化事由に当たらない理由

3 行為(b)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
15排他条件の意義を契約条項以外の実効的制限も含めて示す。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
3記載なし(関連範囲を実読)18頁・経済法 第3 2 第2問:条件として
16医療機関が間接取引先である点を「相手方」の解釈に結び付ける。
【高評価】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
3記載なし(関連範囲を実読)18頁・経済法 第3 2 第2問:各医療機関は、X社の間接の取引先
17供給停止の威嚇と安定供給への懸念を事実上の購入制限へつなぐ。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:市場閉鎖効果間接(購入断念の因果を問題文から具体化):19頁・経済法 第3 2 第2問:行為(b)
18排他条件付・拘束条件付・単独拒絶のいずれかを整合的に当てはめる。
【許容分岐】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:どちらで構成しても良い18頁・経済法 第3 2 第2問:排他条件付取引を検討対象とした答案と同様に評価
19多くの医療機関の購入断念を取引機会喪失の事実として使う。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
529頁・経済法 第2問:排除効果を有するか否か19頁・経済法 第3 2 第2問:購入することを断念するものも多かったこと
20有力なX社による顧客封鎖が市場閉鎖・自由競争減殺を生むと論じる。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:公正競争阻害性19頁・経済法 第3 2 第2問:自由競争が減殺された状況
21共同性を認定せず共同拒絶の一般指定1項を適用しない。
【負例】
適用:取引拒絶の構成を採用する場合
2記載なし(関連範囲を実読)18頁・経済法 第3 2 第2問:競争者と共同して

4 行為(c)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
22行為(c)を一般指定14項の取引妨害として特定する。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:取引妨害が成立するか否か18頁・経済法 第3 2 第2問:取引妨害(一般指定第14項)
23X社がγを販売しなくてもαで競争するY社が競争関係のある事業者であると理由付ける。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
529頁・経済法 第2問:取引妨害についての基本的な条文理解19頁・経済法 第3 2 第2問:X社がγの販売を行っていない
24説明による新型γの導入断念をγ取引の契約成立妨害へ当てはめる。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
329頁・経済法 第2問:γの取引の妨害間接(明示評価の具体化):19頁・経済法 第3 2 第2問:行為要件を丁寧に当てはめている
25新型γとY社製αの販売低下を自由競争減殺のおそれと評価する。
【高評価】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
3記載なし(関連範囲を実読)19頁・経済法 第3 2 第2問:競争者排除型の自由競争減殺効果
26未検査・根拠欠如を競争手段の不公正さとして独立に評価する。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
5記載なし(関連範囲を実読)19頁・経済法 第3 2 第2問:競争手段の不公正さ
27γ取引の侵害をα市場の私的独占の検討に吸収せず別個に論じる。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
329頁・経済法 第2問:私的独占では補足できない法益侵害記載なし(関連範囲を実読)

5 排除型私的独占

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
28人為性と参入・事業活動困難化を含む排除の規範を示す。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
529頁・経済法 第2問:排除行為についての基本的な理解19頁・経済法 第3 2 第2問:「排除」の意義
29(a)の流通経路妨害をαの排除効果として分析する。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:(a)~(c)の各行為が排除効果19頁・経済法 第3 2 第2問:不公正な取引方法の該当性についての検討部分を引用
30(b)の顧客封鎖をαの排除効果として分析する。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:(a)~(c)の各行為が排除効果19頁・経済法 第3 2 第2問:不公正な取引方法の該当性についての検討部分を引用
31γ導入の妨害からαの需要拡大・販売促進阻害への因果経路を示す。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
529頁・経済法 第2問:γに対する妨害がαにおける排除19頁・経済法 第3 2 第2問:排除効果を総合的に評価
32三行為の排除効果を総合的に評価する。
【高評価】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
529頁・経済法 第2問:競争の実質的制限をもたらす程度16頁・経済法 第2 採点方針:総合的に評価できている
33市場支配力の形成・維持・強化として実質的制限の規範を示す。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
529頁・経済法 第2問:競争の実質的制限19頁・経済法 第3 2 第2問:「競争を実質的制限」の意義
34Y社の牽制力低下と参入障壁をX社の支配力維持に結び付ける。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:競争の実質的制限間接(明示評価の具体化):20頁・経済法 第3 2 第2問:相応に論述
35公共の利益要件を競争制限・正当化と関係付けて検討する。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
329頁・経済法 第2問:公共の利益要件の評価記載なし(関連範囲を実読)

6 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
36(a)(b)に偏らず(c)と私的独占の検討を完結させる。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
529頁・経済法 第2問:私的独占でも説明したように19頁・経済法 第3 2 第2問:バランスを欠いた答案
37条文・規範を挙げるだけでなく問題文の具体的事実を当てはめる。
【必須】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
429頁・経済法 第2問:排除的行為の基本的分析能力15頁・経済法 第2 採点方針:具体的な事実関係を丹念に検討
38分析の因果関係を論理的で説得的な文章にする。
【高評価】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
3記載なし(関連範囲を実読)20頁・経済法 第3 2 第2問:論理的、説得的に論述する能力
39細かな指針知識の列挙を中心的な法解釈・当てはめの代わりにしない。
【負例】
適用:全答案(許容分岐は選択肢のいずれか一つで充足)
2記載なし(関連範囲を実読)15頁・経済法 第2 採点方針:細かい知識を求めることはしていない
40両規制の検討順は自由であり,反対の構成順を不適切と排除しない。
【許容分岐】
適用:別の構成順を評価する場合
328頁・経済法 第2問:どちらの構成であっても記載なし(関連範囲を実読)

7 重みの分布

重み1は0項目,2は3項目,3は12項目,4は14項目,5は11項目である。総項目数N=40,重みの単純合計W=153である。重みの合計は公式得点や難易度を表さない。

重み5の番号は2・6・12・19・23・26・28・31・32・33・36である。番号32は総合評価による高評価の項目であり,類型を全て別々に加算して公式点数を推定するものではない。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

試験日は令和6年7月10日であり,当時の法状態を基準とする。法務省が示した法令の出題基準日は同年1月1日である。ここで使う主要な規定・告示と平成22年の判決は試験前の資料である。私的独占を先に論じる構成を採るが,不公正な取引方法から論じてもよい。以下の答案は空白・改行を除いて2,076字である。

2 答案

1 排除型私的独占

(1)αを製造販売するX社は「事業者」(独占禁止法2条1項)であり,行為(a)~(c)による私的独占(2条5項,3条前段)が問題となる。

(2)一定の取引分野は,需要代替性を中心に,供給代替性と取引実態も考慮して画定する。

 β検査にはαが必須であり,他の検査では発見できない疾病を高い精度で発見できるから,他の検査や医薬品への需要の切替えは困難である。αは安定製造が難しく,認可や特殊な装置・能力を要するため,他の医薬品業者の容易な製造転換も期待し難い。高度医療機関の自家製造は特殊な設備と能力を持つ者に限られ,通常の医療機関の購入に代わり難い。商品市場はαの製造販売である。

 αは製造後の使用可能時間が短く,拠点からの配送範囲に限界があり,両社とも同じ12地域ごとに製造拠点を設けている。地域外からの供給による代替が困難であり,全国一律価格だけを理由に全国市場とはできない。本件では南関東地域と近畿地域のそれぞれにおけるαの製造販売市場を画定する。

(3)「排除」とは,自己の市場支配力の形成・維持・強化という観点から,正常な競争手段の範囲を逸脱する人為性を有し,競争者の参入・事業活動を著しく困難にするなどの効果を持つ行為をいう。市場からの完全な退出は不要である。

 X社は従来唯一の製造販売業者で,供給に定評がある。医療機関は必要量の安定供給を重視し,Y社への全面的切替えに不安を抱く。この地位を利用する三行為を検討する。

 (a)は,Zへの供給停止の威嚇により,Y社の低価格品取扱いをためらわせ,Y社に両地域で費用の高い直接供給を強いた。Y社の効率的な販売経路を奪うものである。公平配分のため全国一律価格が必要との説明に対しては,地域ごとに需要と配送条件が異なり,低価格化による検査拡大にも意味がある。X社自身が一律供給を続けることは可能で,Y社の地域別価格の排除が公平配分に必要とはいえない。

 (b)は,Y社から購入するとX社の供給を失うという威嚇で,安定供給を懸念する多くの医療機関にY社からの購入を断念させた。取引先選択の自由を競争者の顧客獲得を妨げるために用い,Y社の販売先を閉鎖するものである。

 (c)は,検査も明確な根拠もなく新型γでX社製αを使えないと説明し,その導入を断念させた。これにより,新型γによる検査増加とY社の信頼獲得,Y社製αの販売促進が妨げられた。妨害の直接対象が別商品のγであっても,αの需要拡大を阻止する経路でα市場の排除となる。

 以上は,価格・品質による競争ではなく,供給への依存と無根拠の情報を利用してY社を不利にする人為的行為であり,個別にも相互に補強し合っても排除効果が認められる。

(4)競争の実質的制限とは,市場支配力の形成・維持・強化により,価格等の条件をある程度自由に左右できる状態をもたらすことをいう。

 安定製造の困難,認可及び地域ごとの拠点整備から参入障壁は高い。従来唯一のX社に対するY社の低価格販売と新型γを通じた競争圧力は,三行為により流通費の増加,顧客の購入断念及び需要拡大の阻害という形で弱められ,売上も伸びなかった。直接販売や自家製造が残っても前記制約から十分な牽制とならず,X社の支配力が維持される。各行為の効果を総合すれば,両市場の競争は実質的に制限される。

 廉価な供給と検査拡大を妨げ,正当化する事情もないため公共の利益に反し,3条前段に違反する。

2 不公正な取引方法

(1)(a)はZのY社製αの取扱条件を制限する拘束条件付取引(一般指定12項),(b)はY社と取引しないことを条件とする排他条件付取引(同11項)が問題となる。

 「条件」は契約条項に限らず,不利益の威嚇等により実効的に取引先の活動を制限するものを含む。Zが取扱いをちゅうちょし,多くの医療機関が購入を断念したことから拘束がある。医療機関はZを通じた間接の取引先であるが,X社が供給の継続・停止を決めて直接その購入行動を制限する以上,11項の相手方に含めて評価すべきである。

 市場画定は前記のとおりであり,有力なX社による流通経路・顧客の封鎖はY社の費用を増加させ取引機会を奪い,自由競争を減殺する。前記正当化もないから,2条9項6号及び19条に違反する。取引拒絶の構成も考えられるが,競争者との共同性がない以上,一般指定1項ではなく2項を検討すべきである。

(2)(c)は新型γの取引に対する妨害(一般指定14項)を別個に検討する。X社はγを販売しないが,同項の「競争関係」は妨害対象商品における競争だけに限定されず,Y社はαの製造販売でX社と国内の競争関係にある。

 無根拠の非互換性の説明が,Y社と導入を検討する医療機関との新型γの契約成立を妨げ,販売実績を大きく低下させた。検査等もせず明確な根拠もないため安全性の合理的な説明とはいえず,競争手段の不公正さがある。新型γとY社製αの販売を阻害する自由競争減殺のおそれもあるから,同項及び19条に違反する。γ取引自体の侵害は,α市場の私的独占の検討だけでは尽くされない。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案1(1)・(2)は番号1~8,1(3)は9~20及び28~32,1(4)は33~35,2(1)は9~21,2(2)は22~27に対応する。番号36~40は全文の論述姿勢及び許容構成を確認する項目である。重み5のうち2は両規制への到達,6は配送制約からの各地域画定,12・19は具体的な排除結果を回収した。23・26はγの競争関係と手段の不公正さを,28・31~33は排除規範・市場間の因果・総合効果・支配力維持を,36は全行為の検討完結を答案で示した。

(2) 市場画定と二つの封鎖

全国価格が同じでも,必要な時間内に地域外から配送できなければ,需要者は他地域の供給へ切り替えにくい。需要代替性と供給代替性を区別し,短寿命,製造技術,認可,12の拠点という与件を使う必要がある。(a)は流通費上昇,(b)は顧客獲得阻害であり,Y社の売上が期待を下回ったという結果だけでは分析にならない。

(3) γの妨害とαの排除を分ける

(c)では,γの契約成立を妨げるという直接侵害と,γの普及によるα需要の拡大を止めるというα市場の排除効果を分ける。一般指定14項の競争関係にある事業者は,妨害された商品そのものの競争者だけに限られない。X社がγを販売しない点を落としたり,α市場での排除だけを論じてγ取引の侵害まで検討したことにしたりしない。

また,競争者の販売低下をもたらす自由競争減殺だけでなく,検査も根拠もない情報を使う競争手段の不公正さにも着目する。本答案は技術的な非互換性の虚偽を実験で確定したとせず,与件にある根拠欠如を評価した。

(4) 許容される構成と答案の限界

(a)は拘束条件付取引,(b)は排他条件付取引を採った。公式資料は適切な取引拒絶等による構成も許容する。類型名の差だけで答案を誤りとせず,選んだ類型の行為要件と公正競争阻害性が閉じているかで判断する。共同拒絶を論じるなら共同性の認定が必要である。

本問は具体的な市場シェアや継続期間を与えていない。現在のシェアを100%と補わず,従来唯一の地位と供給依存,参入障壁及び具体的結果から評価する。私的独占の効果が十分に認定できない立場でも,不公正な取引方法の公正競争阻害性を別途検討する。民事損害額・課徴金額・確約案は本答案の中心に置いていない。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の別の模範解答

①令和6年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答
②令和6年度司法試験民事系第1問の模範解答と評価項目

2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①農協による系統出荷・系統利用の強制と独占禁止法―融資・共同利用施設の条件付け,22条の適用除外及び公取委の事例(AI作成)(条件付けの実効性と市場閉鎖効果を検討する実務記事)
②令和7年度司法試験公法系第1問の模範解答と評価項目(評価表・答案と解説の形式に関する参考記事)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①令和6年司法試験論文式試験問題・選択科目(経済法第2問,16~17頁)
②令和6年司法試験論文式試験出題の趣旨(経済法第2問,28頁末尾~29頁)
③令和6年司法試験の採点実感・選択科目(経済法の関連総論・採点方針,15~16頁,第2問18~20頁)
④令和6年司法試験の実施日程等について

2 法令

①私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(2条1項・5項・9項6号,3条,19条)
②不公正な取引方法・一般指定(平成21年改正,2・11・12・14項)
③排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針(令和2年12月25日改正版)

3 裁判例

①最高裁平成22年12月17日第二小法廷判決(平成21年(行ヒ)第348号,NTT東日本事件)(公取委審決等データベースの判決本文,理由4・5)
②日本メジフィジックス株式会社の確約計画の認定について(令和2年3月12日)(関連する行政公表事例。違反を認定した判断ではない)

4 確認状態

問題文,公式の関連範囲,告示・法令の該当規定及び上記判決の理由を確認した。評価表と当てはめは記事独自の分析である。確約事例の実際の供給拒絶等と,本問の供給停止の通知は区別した。本文中の装置の技術的互換性,具体的シェア・行為期間は,問題文を超えて事実認定していない。参照先の法令ページが更新されても,本記事は試験当時の主要規定を用いる。