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弁護士法人の利益相反―弁護士職務基本規程63条~67条と社員・法人の受任制限(AI作成)

第1 法人の利益相反は,個人と法人の両方を確認する

1 担当者を交代するだけでは受任できるとは限らない

弁護士法人の利益相反では,担当弁護士自身の受任制限と,法人としての受任制限を別々に確認する必要がある。
担当を替えたり,別支店で扱ったりしても,法人自身が業務を行い得ない事件であれば,それだけで制約は解消しない。
弁護士職務基本規程63条は社員等個人,64条は他の社員等との関係,65条・66条は弁護士法人の業務を規律し,67条は受任後の対応を定めている。

本記事は,令和8年10月4日に確認した日弁連公表の現行規程,弁護士法及び『解説「弁護士職務基本規程」第4版』207頁~219頁に基づく。
同解説書は日弁連の公式見解を記載したものではない。以下の具体例は条文の確認方法を示す仮定例であり,裁判例や懲戒議決の紹介ではない。
規程全体は現行条文・条文別索引・主要論点,個人に共通する基本規律は27条・28条の利益相反を参照されたい。

2 「社員等」と「社員」を区別する

61条の「社員等」は,弁護士法人又は弁護士・外国法事務弁護士共同法人の社員又は使用人である弁護士を意味する。法人法上の社員は,単に雇用される職員という意味ではない。
65条5号の半数基準の母数は,弁護士法人の「社員」の総数である。使用人である弁護士や事務職員まで一緒に数える規定ではない。
外国法事務弁護士については64条2項等の規律もあるため,職種と受任主体を特定して確認する。

確認する主体・関係主な規定確認の要点
担当する弁護士個人27条・28条,63条自分の従前の関与,現在の法人の受任状況
同じ法人の他の社員等64条他の弁護士等の受任制限と,職務の公正を保ち得る事由
弁護士法人そのもの65条・66条法人の相談・受任関係,社員の受任制限,法人の経済的利益
受任後の処理・記録67条・68条,62条事情説明,適切な措置,秘密保持及び事件情報の記録

第2 63条は社員等個人の職務を制限する

1 1号・2号は「自ら関与した」相談・事件を対象とする

63条1号は,社員等であった期間内に法人が相手方の協議を受けて賛助し,又は依頼を承諾した事件のうち,自ら関与したものを対象とする。
2号は,法人が相手方の協議を受け,その程度及び方法が信頼関係に基づくと認められる事件のうち,自ら関与したものを対象とする。
この2つについては,社員等でなくなった者も条文上含まれる。退社や転職によって,自分が実際に関与した事件の制約が消えるわけではない。

仮に,法人で相手方の相談を受けた弁護士が,退社後に同じ事件の反対側から依頼を受けた場合には,まず自らの関与と相談の内容を確認する。
本人が関与していない事件もすべて63条1号・2号だけで禁止されるとは限らないが,他の規定や取得した秘密の問題を省略してよいことにはならない。

2 3号・4号は,現在の法人の受任関係を見る

3号は,その法人が相手方から受任している事件を対象とする。法人の相手方側の受任と,社員等個人による反対側の受任とを両立させることはできない。
4号は,法人が受任している事件のうち,当該社員等が自ら関与しているものの相手方から依頼される他の事件を対象とする。
63条ただし書の同意による例外は4号について置かれており,同意するのは法人が受任している事件の依頼者である。1号~3号に同じ例外を広げてはならない。

第3 64条の公正確保と65条の法人受任制限を重ねて確認する

1 情報遮断をしたというだけでは結論を出せない

64条1項は,他の社員等が27条,28条又は63条1号・2号により職務を行い得ない事件について,社員等の職務を原則禁止し,職務の公正を保ち得る事由がある場合に例外を認める。
2項には,社員又は使用人である外国法事務弁護士との関係の規律が置かれている。
『解説』第4版210頁~211頁は,情報遮断等について共同事務所の規律との関係を説明する。ただし,別室・別支店・担当交代という名称だけで公正が確保されたと扱うべきではない。

実務上は,関与した人物,取得した秘密,記録へのアクセス,業務上の指示関係及び情報が既に共有された範囲を確認し,公正を保ち得る理由を具体的に記録することが考えられる。
これは検討方法の提案であり,これらの項目を形式的にそろえれば例外が成立するという判定基準ではない。

2 法人自身の相談・受任に基づく禁止は残る

65条1号・2号は,法人自身が相手方の協議を受けて賛助・承諾した事件や,信頼関係に基づく協議を受けた事件を規律する。
これらには65条ただし書による例外がない。64条の例外が問題となり得る場合でも,法人自身が65条1号・2号に該当すれば,担当変更だけで法人の受任を可能にすることはできない。
3号は,法人が受任している事件の相手方から依頼される他の事件であり,受任している事件の依頼者の同意による例外がある。
4号は,社員等又は使用人である外国法事務弁護士が相手方から受任している事件であり,3号と同じ同意の例外は置かれていない。

第4 65条5号の「半数未満」と弁護士法の違い

1 社員1人の制約でも法人の業務は原則禁止となる

65条5号は,社員が27条,28条又は63条1号・2号により職務を行い得ない事件について,法人の業務を原則禁止する。
例外には,その社員が社員総数の半数未満であることと,法人に業務の公正を保ち得る事由があることの両方が必要である。
社員が3人で,そのうち1人がこの号に該当するという仮定例では,1人は半数未満である。しかし,それだけでは足りず,公正を保ち得る事由と,他の禁止規定への該当も確認する。
社員が2人で1人が該当する場合は半数であり,「半数未満」ではない。

2 弁護士法30条の18第5号との要件を混同しない

弁護士法30条の18第5号は,同法25条1号~7号の事件として社員の半数以上が職務を禁止される事件を,法人の業務制限の対象とする。
これに対して65条5号は,対象となる職務禁止規定にも違いがあり,社員の制約を原則として法人に及ぼした上で,半数未満と公正確保の両条件を例外としている。
『解説』第4版214頁は,この加重要件を説明している。「弁護士法の半数基準に達しないから法人で受けてよい」と直結させてはならない。
また,法人に例外が成立しても,受任制限に該当する弁護士本人の職務禁止まで解除されるわけではない。

第5 66条は依頼者・顧問先・法人の経済的利益を規律する

1 同意する人が号ごとに異なる

66条は,65条に加えて法人の利益相反を規律する。例外の同意者は次のように異なる。

66条の対象例外の同意者
1号:他の事件の依頼者又は継続的な法律事務提供を約した者を相手方とする事件その事件の依頼者及び相手方
2号:依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件その依頼者及び他の依頼者のいずれも
3号:依頼者の利益と法人の経済的利益が相反する事件その依頼者

「新しい依頼者だけの了解」又は「社内での承認」で足りると扱わず,該当する号と同意者を特定する。
同意による例外を検討する場合も,説明に必要な情報をどこまで開示できるか,秘密保持と職務の公正を別に検討する必要がある。

2 顧問先との関係を個人の契約だけで判断しない

例えば,法人が継続的に法律事務を提供している会社を,新しい事件で相手方とする場合には,法人の66条1号を確認する。
担当する弁護士がその会社の顧問契約の担当者でないことだけでは,法人の継続的な法律事務提供の関係を無視できない。
また,依頼者と法人自身の経済的利益の対立については3号を確認し,担当弁護士個人の経済的利益を規律する28条4号との違いも押さえる。

第6 受任後に判明したときは67条,秘密保持は62条

1 67条の適用対象を特定する

67条1項は,社員等が受任後に63条3号に該当する事由を知った場合に,速やかな事情説明と,辞任その他の事案に応じた適切な措置を求める。
2項は,法人が受任後に65条4号又は5号に該当する事由を知った場合を対象とする。受任時に知らなかったというだけで,判明後の対応を省略することはできない。
一方,67条が全ての利益相反について同じ処理を定めているかのように引用するのも正確ではない。他の規定への該当や受任後の利害対立は,その規定と個別事情に即して検討する。

2 事情説明のために他の依頼者の秘密を自由に開示できない

62条は,法人や他の社員等の依頼者について執務上知り得た秘密を,正当な理由なく漏らし,又は利用することを禁止する。社員等でなくなった後も同様である。
『解説』第4版217頁~218頁は,受任後の措置と秘密保持との関係を説明する。事情説明と,別の依頼者の秘密の開示を同じものとして扱ってはならない。
実務上は,説明可能な範囲,必要な承諾,対応の主体,期限への影響及び引継ぎを整理することが考えられる。68条の事件情報の記録・管理も,受任前の照合と判明後の検証の基礎となる。

受任制限の有無を確認するための事件情報の記録と照合の方法は,法律事務所の利益相反チェックと事件情報の記録―59条・68条で整理している。

第7 確認範囲,関連記事及び出典

1 共同法人と元社員等についての留意点

本記事は弁護士法人を中心とする。現行63条・64条等には共同法人も含まれ,68条の2には共同法人についての読替準用がある。共同法人の事件を,弁護士法人の説明だけで処理してはならない。
64条は63条1号・2号と異なり,元社員等を含むという文言を置いていない。『解説』第4版210頁はこの点に関する解釈上の検討を述べているため,元社員が関与した事件の扱いを,明文で一律に禁止される又は許容されると断定しない。
元社員等が関与した事件の受任可否と,情報遮断によって職務の公正を保ち得るかは,該当する条項,従前の関与,秘密の取得・共有及び事件の関連性等に即して判断する必要がある。本記事の一般的な整理だけから,特定の移籍や遮断措置について受任が許されると結論付けることはできない。

関連記事:① 弁護士法人の設立・社員責任・退社・支店,② 法律事務所の退所・分裂と利益相反,③ 解説第3版と第4版の比較。

2 出典

① 日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程(会規第70号)」。61条~68条の2。令和8年10月4日取得・照合。
② e-Gov法令検索「弁護士法」。25条,30条の18。令和8年10月4日,公表XML本文を確認。
③ 日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著『解説「弁護士職務基本規程」第4版』(日本弁護士連合会,2026年)。207頁~219頁。個人と法人の受任制限,公正確保,半数基準,同意及び受任後の措置について参照した。解説書の説明と現行条文を区別し,掲載された全裁判例・議決例の原典を確認済みとは扱っていない。