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第十二回特別弔慰金の請求と記名国債―遺族の順位,令和10年3月の請求期限,相続人・成年後見人の手続と差押禁止(AI作成)

第1 制度の概要

1 第十二回特別弔慰金の内容

戦没者等の遺族に対する特別弔慰金は,先の大戦で公務等のため亡くなった軍人軍属等の遺族に対し,国として改めて弔慰の意を表すために支給されるものである。
根拠は,戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法(昭和40年法律第100号。以下「法」という。)である。

令和7年法律第18号による改正により,令和7年4月1日を基準日とする第十二回特別弔慰金が支給されている。
厚生労働省の案内と法の規定によれば,その内容は次のとおりである。

項目内容根拠
基準日令和7年4月1日法2条・3条
額戦没者等1人につき27万5000円法5条1項
交付の方法5年以内に償還する無利子の記名国債法5条1項・3項
国債の発行日令和7年9月1日令和7年法律第18号附則2条2項
償還令和8年から毎年1回,償還日(4月15日)以降に5万5000円ずつ厚生労働省の案内
請求期間令和7年4月1日から令和10年3月31日まで厚生労働省の案内
時効行使できる時から3年法9条

請求先は住所地の市区町村の援護担当課であり,郵送やマイナポータルの電子申請(請求書と現況申立書のみ)でも請求できる。
請求期間を過ぎると第十二回特別弔慰金を受けることができなくなるとされているので,確認日(令和8年10月4日)から見ると,残りは約1年半である。

2 5年後にもう一度の支給が予定されている

令和7年法律第18号は,附則1条ただし書により,法2条等の基準日を令和12年4月1日に改める改正を,同日から施行するとしている。
e-Gov法令検索に収録された令和12年4月1日施行の条文では,基準日が令和12年4月1日となり,額は同じく27万5000円,5年以内に償還する記名国債とされている。
財務省に提出された厚生労働省の令和7年度税制改正要望も,特別弔慰金を「5年償還の記名国債を5年ごとに2回交付」と説明し,今回発行する国債の推計件数を約60万件としている。

令和12年の支給の請求期間等は,確認日現在は公表されていない。

第2 誰が受けられるか

1 公務扶助料や遺族年金を受ける人がいないこと

特別弔慰金は,基準日において,その戦没者等の死亡に関し,恩給法の公務扶助料,戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下「援護法」という。)の遺族年金等を受ける権利を有する遺族がいる場合には支給されない(法3条ただし書)。
厚生労働省の案内も,これらを受ける人(戦没者等の妻や父母等)がいない場合に,先順位の遺族1人に支給するとしている。

2 遺族の順位

法2条1項は,「戦没者等の遺族」を,基準日までに援護法による弔慰金を受ける権利を取得した者で,基準日に日本の国籍を有しているものとしている。
厚生労働省の案内は,戦没者等の死亡当時の遺族の順位を次のように整理している。
①令和7年4月1日までに援護法による弔慰金の受給権を取得した者
②戦没者等の子(死亡当時の胎児を含む。)
③戦没者等の父母,孫,祖父母,兄弟姉妹(死亡当時に生計関係を有していたか等の要件により順番が入れ替わる。)
④①から③以外の三親等内の親族(甥,姪等)。ただし,戦没者等の死亡時まで引き続き1年以上の生計関係を有していた者に限る。

条文の上では,弔慰金の受給権者が基準日に死亡している場合等に子を受給権者とみなし(法2条3項),子もいない場合に父母,孫,祖父母,兄弟姉妹の順で(法2条の2第1項・2項),さらにそれもいない場合に三親等内の親族のうち葬祭を行った者等の順で(同条3項),遺族とみなす仕組みになっている。
配偶者については,戦没者等の死亡後に遺族以外の者と婚姻した場合等に除かれる規定がある(法2条1項ただし書)。
先順位者が基準日に生死不明で,その後2年以上生死不明が続く場合には,次順位の者の申請により,その者を遺族とみなすことができる(法2条の3)。

3 同順位の遺族が複数いる場合

同じ戦没者等について特別弔慰金を受ける権利を有する者が複数いる場合,その1人がした請求は全員のためにその全額についてしたものとみなされ,その1人に対する裁定は全員に対してしたものとみなされる(法6条)。
厚生労働省の案内によれば,令和2年から,同順位者がいる場合の同意書の提出は廃止された。
特別弔慰金は遺族を代表する1人が受け取るものとされ,同順位者が複数いる場合は話し合って請求者を決め,遺族間の調整は記名国債を受け取った人が責任を持って行うとされている。

兄弟姉妹や甥・姪が同順位で複数いる家族では,誰が請求したかを他の親族が知らないこともある。
後で「自分も受け取る権利があった」という争いにならないよう,請求の前に親族に知らせ,受け取った後の扱いを決めておくことが望ましい。

第3 請求の手続

1 提出先と裁定

特別弔慰金を受ける権利は,請求に基づいて裁定される(法4条)。
請求書は,請求者の居住地の市区町村長,都道府県知事を順に経由して裁定機関に提出する(戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法施行規則(以下「規則」という。)3条1項)。
裁定の事務は,多くの場合,戦没者等の除籍当時の本籍地の都道府県知事が行う(戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法施行令(以下「施行令」という。)4条)。
裁定機関は,権利があると裁定したときは裁定通知書を,権利がないと裁定したときは却下通知書を交付する(規則2条)。

2 必要な書類

規則1条2項は,請求書に,請求者の令和7年4月1日における戸籍の抄本,弔慰金の受給権者の氏名と戦没者等との身分関係が分かる書類等を添えることとしている。
厚生労働省の案内によれば,過去に特別弔慰金を請求したことがあるか等の状況によって提出する書類が異なるので,事前に市区町村の援護担当課に確かめる必要がある。

請求の手続をするときは,本人確認書類が必要である。
厚生労働省の案内は,官公庁発行の顔写真付きの書類1点,顔写真のない書類,預金通帳等の書類の組合せ等を示している。

第4 相続人と成年後見人の請求

1 請求前に権利者が死亡した場合

特別弔慰金を受ける権利を有する者が,請求をしないまま死亡した場合,その相続人は,自己の名で死亡した者の特別弔慰金を請求することができる(法7条1項)。
同順位の相続人が複数いる場合には,法6条が準用され,1人の請求が全員のための請求とみなされる(法7条2項前段)。
この場合は,請求書に,請求者が死亡した遺族の相続人であることが分かる戸籍の謄本等を添える(規則1条4項)。

基準日(令和7年4月1日)に権利を取得した高齢の遺族が,請求をしないまま亡くなることは十分にあり得る。
相続の相談では,被相続人が戦没者の子や兄弟姉妹であった場合に,請求済みかどうかを確かめる意味がある。

2 国債の記名者が死亡した場合

国債の記名者が死亡し,同順位の相続人が複数いる場合,死亡前に支払うべきであった償還金の請求と支払,国債の記名変更の請求と記名変更にも,法6条が準用される(法7条2項後段)。
未償還の国債は相続財産として扱われることになるので,遺産の調査では,郵便局等で償還金を受けていた記録や国債の券面を確かめる。
厚生労働省の案内によれば,未償還の国債は国債の裏面に記載された郵便局等で償還を受けることができ,紛失した場合は再発行の手続がある。

3 成年後見人等の請求

厚生労働省の案内は,法定代理人が請求手続をする場合の本人確認書類として,成年後見人等については登記事項証明書を挙げている。
成年後見人等が団体の場合は,請求手続をする者が団体の職員であることが分かる書類も必要である。

被後見人が戦没者の遺族に当たる場合,請求は後見人の財産管理の一環として検討すべき事項である。
請求期限(令和10年3月31日)を過ぎると受けられなくなるので,就任時の財産調査や定期報告の際に,戦没者の遺族に当たるかを確かめておくとよい。
成年後見人の就任直後の事務は,成年後見人等が就任したら最初にすることで扱っている。

第5 記名国債と特別弔慰金の保護

1 譲渡・担保・差押えの制限

特別弔慰金として交付される国債は,政令で定める場合を除き,譲渡,担保権の設定その他の処分をすることができない(法5条4項)。
特別弔慰金を受ける権利も,譲渡し又は担保に供することができない(法11条)。
特別弔慰金を受ける権利と国債は,差し押さえることができない(法12条)。

施行令1条1項は,国債の譲渡又は担保権の設定ができる場合を,国に譲渡する場合,地方公共団体に対し担保権を設定する場合,財務省令で定める者に対し担保権を設定する場合に限っている。
国への譲渡には,災害その他特別の事情がある場合を除き,都道府県知事の証明書が要る(同条2項)。
都道府県知事は,記名者が生活保護の被保護者その他経済的に困窮している者であることを確認して証明書を交付する(同条3項)。
また,記名者の破産管財人や,記名者が死亡した場合の相続人,相続財産の管理人若しくは清算人の申出により,記名者の債務を弁済するために国債の処分が必要であることを確認して証明書を交付する(同条4項)。

2 非課税と印紙税

租税その他の公課は,特別弔慰金を標準として課することができない(法13条1項)。
特別弔慰金に関する書類と,国債を担保とする金銭の貸借に関する書類には,印紙税が課されない(同条2項)。

厚生労働省の税制改正要望書は,関係条文として「第十一条」(差押えの禁止)と「第十二条」(非課税)を掲げている。
これは令和7年改正前の条番号であり,現行法では,譲渡・担保の禁止が11条,差押えの禁止が12条,非課税が13条となっている。
過去の資料の条番号をそのまま引用しないよう注意が要る。

第6 不服申立てと裁判例

1 審査請求

特別弔慰金に関する処分又はその不作為についての審査請求に対し,厚生労働大臣は,援護審査会の意見を聴いて裁決する(法8条,施行令2条)。
特別弔慰金に関する処分についての審査請求は,時効の完成猶予及び更新については,裁判上の請求とみなされる(法10条)。
却下の裁定を受けたときは,請求期限や時効との関係を意識して,早めに審査請求を検討する必要がある。

2 却下処分の取消訴訟

神戸地裁昭和54年1月31日判決(昭和52年(行ウ)第34号)は,特別弔慰金の支給請求の却下処分の取消訴訟である。
同判決は,最初の却下処分の取消しを求める部分を,出訴期間を過ぎたものとして却下し,その後の改正法による請求に対する却下処分の取消請求については,軍人恩給の停止の対象となった遺族かどうかで支給の有無を分けることは社会通念上合理性があり,憲法14条1項に違反しないとして棄却した。
その控訴審とみられる大阪高裁昭和55年3月18日判決(昭和54年(行コ)第9号)も,法2条・3条は憲法14条1項に違反しないとして控訴を棄却した(予備的請求の部分は却下)。

これらは当時の法律(額や償還期間が現在と異なる。)を前提とする判断であり,第十二回特別弔慰金の支給要件をそのまま示すものではない。
裁判所HPの裁判例検索では,同順位の遺族の間で特別弔慰金や償還金の分配を争った民事事件と,遺族の順位を争った事件は見当たらなかった(裁判所HP未掲載)。

第7 弁護士が相談で確認すること

①戦没者等と相談者(又は被相続人・被後見人)との続柄と,戦没者等の死亡当時の生計関係
②恩給法の公務扶助料や援護法の遺族年金等を受けている遺族がいないか
③過去の特別弔慰金の受給歴と,未償還の国債の有無
④同順位の遺族が他にいるか,請求の前に話し合っているか
⑤請求権者が請求をしないまま死亡していないか(相続人による請求)
⑥請求期限(令和10年3月31日)までの日数
⑦生活保護の受給中,破産手続中又は相続財産の清算中であれば,国債の譲渡(国による買上げ)の手続を使う必要があるか

第8 別セッションで掘り下げるテーマと未検討点

①同順位の遺族の一部が特別弔慰金を受け取った場合に,他の同順位者が分配を求めることができるかについて,判例秘書で裁判例を確認していない。
②法12条の差押禁止と,施行令1条4項の破産管財人による処分の手続との関係(国債が破産財団に属するか)は検討していない。
③生活保護の収入認定で特別弔慰金がどう扱われるかについて,現行の保護の実施要領を確認していない。
④未償還の国債を相続した場合の相続税の扱い(法13条1項との関係)は,国税庁の解説を確認していない。
⑤令和12年4月1日を基準日とする次回の支給の請求期間と手続は,確認日現在は公表されていない。

第9 出典・関連記事

1 検討した資料

厚生労働省「「戦没者等の遺族に対する特別弔慰金」(第十二回特別弔慰金)の支給について」
厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和7年4月)について」
厚生労働省社会・援護局援護・業務課「令和7年度税制改正要望事項(新設・拡充・延長)」(財務省HP掲載)

2 法令

戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法(e-Gov法令検索)
戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法施行令(e-Gov法令検索)
戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法施行規則(e-Gov法令検索)
本記事で引用した条文は,令和8年10月4日にe-Gov法令APIで取得した現行の条文(法については令和12年4月1日施行の版を含む。)で確認した。

3 裁判例

神戸地裁昭和54年1月31日判決(昭和52年(行ウ)第34号)(裁判所HP)
大阪高裁昭和55年3月18日判決(昭和54年(行コ)第9号)(裁判所HP)

4 関連記事

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