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犬を避けて転倒した事故の損害賠償――飼主・散歩者・自転車運転者の責任と証拠(AI作成)

犬にかまれたり接触したりしていなくても、犬の動きが原因で人が転倒した場合には、飼主等が損害賠償責任を負うことがある。反対に、犬が驚いて人が倒れたという結果だけで、近くを通った自転車の運転者に過失があるとはいえない。事故直前の犬・自転車・歩行者の位置と動き、誰が犬を管理していたかを分けて調べる必要がある。

第1 まず誰に、どの根拠で請求するか

1 犬の占有者と管理を引き受けた人

民法718条1項は、動物の占有者がその動物の加えた損害を賠償する責任を負うと定める。占有者が動物の種類・性質に応じて相当の注意をもって管理したときは免責される。同条2項は、占有者に代わって動物を管理する者にも同じ責任を定める。

「飼主」という呼び名や所有名義だけで責任者を決めず、普段の飼育、事故時の散歩の委託、リードの保持、犬の行動を制御できた者と範囲を確認する。占有者が散歩を他人に任せた場合、占有者の責任が当然に消えるわけでも、リードを一時的に持った人が当然に718条2項の管理者になるわけでもない。委託の内容と管理の実態を調べる。最高裁昭和40年9月24日判決(昭和39年(オ)1336号・判例秘書L02010338)は、占有者と保管者の責任を検討した事例であり、対象動物は馬である。犬の散歩への当てはめは個別判断となる。

2 自転車運転者、使用者、複数の責任者

自転車運転者については民法709条により、具体的な通行状況に照らした注意義務違反と転倒との因果関係を検討する。接触の有無だけで結論は出ない。業務中の散歩などで使用者がいる場合は、別に民法715条の「事業の執行について」等の要件を調べる。家族・雇用・委託という呼称だけでは足りない。

各人について718条、709条、715条などの責任が成立した後に、行為の関連性と一個の損害を検討して民法719条の共同不法行為を論じる。719条が独立の責任根拠の不足を常に補うわけではない。被害者への賠償範囲と、支払った者同士の内部負担も分ける。一般的な整理は共同不法行為の要件・過失相殺・求償関係を参照されたい。

第2 接触しない転倒についての最高裁判例

1 犬を避けた児童の転倒――昭和58年判決

最高裁昭和58年4月1日第二小法廷判決(昭和57年(オ)993号)では、7歳の児童が自転車で通行中、飼主の手を離れた小型犬が道路上で児童に近づき、児童が操縦を誤って転落し左眼を失明した。最高裁の多数意見は、犬を怖がる児童がおり、犬が飼主の手を離れればこのような事故も予測できないことではないとして、民法718条の責任を認めた原審を是認した。犬と児童が接触した事案ではない。

もっとも、犬の動作と受傷との相当因果関係を否定する反対意見がある。多数意見も、犬を見た人が転んだすべての場合に飼主が責任を負うという一般命題を示してはいない。犬の位置・動き、道路の幅、被害者との距離、回避行動、転倒までの時間を確かめる必要がある。判決本文は裁判所掲載情報を基にした上記の複製資料で確認し、判例秘書L03810042とも照合した。

2 犬が驚いた散歩者の転倒――平成元年判決

最高裁平成元年10月27日第二小法廷判決(昭和62年(オ)209号)では、自転車が犬2匹を連れた歩行者と接触せずに追い抜いた後、犬が驚いて不規則に動き、歩行者が転倒した。最高裁は、雨の中で傘と犬2匹を持って歩く不安定な姿勢や、犬の反応を一般に予測し難いことを重視し、特段の事情もないとして自転車運転者の不法行為上の注意義務違反を否定した。

これは非接触での追越しの事案であり、自転車が犬に衝突した場合や、犬の異常な動きを事前に知っていた場合の結論を直接定めていない。事故態様が違えば、速度、側方間隔、視認可能性、制動・回避の余地を改めて評価する。判決本文は上記複製資料と判例秘書L04410096で照合した。

3 犬と二輪車が接触した事例

最高裁昭和56年11月5日第一小法廷判決(昭和56年(オ)523号)は、檻から出した犬が公道へ飛び出し、原動機付自転車に接触して運転者が転倒・負傷した事案で、飼主の718条責任と過失相殺を是認した。接触事例の結論を、そのまま非接触の事例へ当てはめないことが重要である。

第3 過失相殺と被害者の事情

民法722条2項の過失相殺では、転倒前に被害者が危険を認識できたか、進路・速度・姿勢をどう選んだか等を具体的に検討する。昭和58年判決は、児童側の事情も事故原因として争われた事案であるが、最高裁が「犬を避けたら常に何割減額する」と示したものではない。平成元年判決では、自転車運転者の過失自体が否定されており、認容額を過失相殺で調整した判決ではない。

被害者の障害、疾病、犬への恐怖感などの属性から直ちに過失割合を決めない。まず事故回避行動への具体的な影響を認定し、損害の拡大を問題にする場合は、医学資料等を踏まえて素因減額の可否を別に検討する。同じ事情を過失相殺と素因減額で二重に引かない。素因減額の要件・判例・主張立証と計算方法も参照されたい。

第4 事故直後に確保する証拠と請求の進め方

1 事故態様を復元する資料

現場の道路幅、勾配、見通し、犬と人・自転車の位置、リードの長さ、ブレーキ痕、転倒地点を写真・動画と現場図で残す。防犯カメラやドライブレコーダーは保存期間を確認し、目撃者の連絡先と事故直後の説明を記録する。犬の種類・大きさ・普段の行動だけでなく、事故時に誰がリードを持ち、どのように犬を制御していたかを確認する。

2 損害と保険を分けて確認する

診療録、画像、休業・収入資料、介護や通院の記録を集め、受傷と事故との関係、治療経過、後遺障害を検討する。犬の飼主側の個人賠償責任保険、自転車側の賠償責任保険、被害者自身の傷害保険等について、それぞれ被保険者・事故の範囲と保険金の填補対象を約款で確認する。保険の有無と法的責任の有無は別問題である。

複数の相手へ請求する場合は、各相手の責任根拠、請求する損害項目、既払金、共同不法行為と内部負担の主張を整理する。事故直後の説明で「犬がぶつかった」「自転車がぶつかった」「驚いて避けた」を混同すると、判例の当てはめが変わるため、証拠で確かめる。

第5 出典と射程

法令はe-Gov法令検索の民法の709条、715条、718条、719条、722条を参照した。裁判例は最高裁昭和40年9月24日・昭和56年11月5日・昭和58年4月1日・平成元年10月27日判決を確認した。リンクしたRETIO資料は裁判所掲載情報を基にした判決本文の複製であり、裁判所の現行掲載URLではない。各判決は上記の事実関係について判断したものであり、個別事件の責任割合や保険適用をそのまま決めるものではない。