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破産手続開始後に保証人・物上保証人から一部弁済を受けた場合の届出債権額と配当―破産法104条(AI作成)

破産手続開始後に保証人,連帯債務者又は物上保証人から一部弁済を受けても,債権全額が消滅しない限り,債権者は原則として破産手続開始時の債権全額を基準に権利を行使する。これは,破産者自身の財産に設定された抵当権等について不足額だけで配当に参加する破産法108条とは異なる。本記事は,破産法104条と最高裁平成14年・平成29年の判断を基に,届出債権額,配当及び求償権者の関係を整理する。

第1 結論―開始時の全額を基準にする

同一の給付について複数の者が各自全部の履行義務を負う場合,債権者は,破産手続開始時に有する債権全額について各破産手続に参加できる(破産法104条1項)。

破産手続開始後に,他の全部義務者が一部を弁済しても,債権全額が消滅しない限り,債権者は開始時の債権全額について権利を行使できる(同条2項)。同条5項により,物上保証人が開始後に弁済した場合にも同様の規律が及ぶ。

したがって,開始時に1000万円の債権があり,開始後に保証人が400万円を弁済して実体法上の残額が600万円となっても,債権全部が消滅していない限り,破産手続上の権利行使・配当計算の基礎は原則として1000万円である。

第2 破産法104条が適用される場面

1 複数の全部義務者がいる場合

典型例は,主債務者と連帯債務者,保証人その他,同じ給付について各自全部の履行義務を負う者がいる場合である。破産法104条は,複数の責任財産を用意して債権回収を確実にした当事者の合意・制度的機能を,破産手続開始後も一定範囲で維持する。

最初に確認するのは,誰が破産者か,誰が債権者か,他にどの全部義務者がいるか,弁済が開始前か開始後か,弁済後も債権が残るかである。

2 保証人・物上保証人による弁済

保証人が一部を弁済した場合,保証人には破産者に対する求償権や債権者の権利への代位が問題となる。物上保証人は自分の財産を担保として提供した者であり,担保権の実行又は任意弁済によって一部を負担した場合にも,破産法104条3項・4項の求償・代位関係が5項により準用される。

債権者の届出と,弁済した保証人・物上保証人の求償権又は代位権は,同じ債権について二重に並列参加できるとは限らない。債権者が開始時の債権について手続参加しているか,債権が全部消滅したか,求償権者がどの時点でどの権利を取得したかを条項ごとに確認する。

3 別除権者の不足額責任主義とは別である

破産者自身の財産に抵当権等を持つ別除権者は,担保権を破産手続外で行使できる一方,配当には担保で弁済を受けられない不足額についてのみ参加する(破産法65条・108条)。

これに対し,破産法104条は,保証人,連帯債務者又は物上保証人という別の責任主体から開始後に一部弁済を受けた場面を扱う。破産者自身の担保財産から回収する104条ではない。両者を混同すると,届出額又は配当参加額を誤る。

別除権者の届出と不足額の証明は,抵当権を持つ債権者の破産債権届出―不足額責任主義,届出書の書き方,中間配当・最後配当で必要な証明で扱っている。

第3 一部弁済後の届出債権額と配当計算

届出と配当では,少なくとも次の金額を分ける。

  • 破産手続開始時の債権額
  • 債権調査によって確定した破産債権額
  • 保証人・物上保証人等から開始後に受けた弁済額
  • 実体法上の残債権額
  • 開始時又は確定債権額を基礎に計算される配当額
  • 債権者が全部の満足を受けたか

例えば,開始時・確定債権額が1000万円,開始後の物上保証人による一部弁済が400万円,実体法上の残債権額が600万円であっても,破産法104条により配当計算の基礎は1000万円となる。

このため,配当率によっては計算上の配当額が600万円を超えることがある。後記の最高裁平成29年決定は,この超過部分も当該債権について配当するとした。破産手続上の配当計算と,配当後の実体法上の清算を分けて考える必要がある。

第4 平成14年判決と平成29年決定

1 最高裁平成14年9月24日判決

最高裁平成14年9月24日判決(平成12年(受)第1584号)は,旧破産法の事件で,破産宣告後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた破産債権者が,全部の満足を得るまでは届出債権全額について権利を行使できるとした。

この判決の規律は現行破産法104条に引き継がれているが,平成14年判決は旧破産法を前提とする。現在の事件では,現行条文,債権届出・調査・配当の各段階及び後記平成29年決定を確認する。

2 最高裁平成29年9月12日決定

最高裁平成29年9月12日第三小法廷決定(平成29年(許)第3号)は,現行破産法104条の下で,開始後に物上保証人から一部弁済を受けた債権者について,開始時の債権額として確定した額を基礎に計算された配当額が実体法上の残債権額を超える場合を扱った。

決定は,破産法104条1項・2項が,配当計算の基礎となる債権額と実体法上の債権額との乖離を認め,債権者が実体法上の残額を超える配当を受ける事態を許容しているとした。そして,超過部分も当該債権について配当すべきであり,一部弁済した物上保証人の求償権に直接配当することはできないとした。

ただし,決定は,超過配当を受けた債権者が,一部弁済した求償権者に対し,不当利得として超過部分相当額の返還義務を負うかは別問題であると明示した。「債権者は二重に取得できないから配当表の段階で残額に減額する」と短絡してはならない。

第5 求償権者・代位者の手続参加

破産法104条3項は,破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者の手続参加を定める一方,債権者が開始時の債権について手続参加したときは,求償権者の参加を制限する。同条4項は,求償権者が弁済等により債権の全額を消滅させたときに,求償権の範囲内で債権者の権利を行使できる場合を定める。

平成29年決定は,債権者が配当を受けて初めて債権の全額が消滅する場合,その配当段階では求償権者が債権者の権利を破産債権者として行使できないとした。また,一部弁済した求償権者が,超過部分への配当参加を目的として予備的に求償権を届け出ることもできないとした。

求償権者から相談を受けた場合は,単に「代位したから届出できる」と判断せず,債権者の参加状況,全部満足の有無,届出期間,債権調査,配当除斥期間及び実体法上の清算方法を確認する。

第6 債権者・保証人・管財人の確認事項

債権者側では,①開始決定日,②開始時の元本・利息・遅延損害金,③届出額,④債権調査の結果,⑤開始後の弁済者・日付・金額,⑥残債権額,⑦配当計算上の基礎額及び⑧全部満足の時点を一覧化する。

保証人・物上保証人側では,①保証・担保の範囲,②弁済又は担保実行額,③求償権・代位権の内容,④債権者の届出・参加状況,⑤全部満足の有無,⑥配当後の不当利得その他の清算方法を確認する。

破産管財人側では,届出債権・確定債権額と,開始後弁済による実体法上の残額を区別し,破産法104条と平成29年決定に従って配当表を作成する。確定した破産債権者表の記載には確定判決と同一の効力があるため,債権調査段階で述べるべき事項を配当異議の段階に持ち込めるとは限らない。

第7 よくある誤り

  • 開始後の一部弁済を受けた後の残額だけを届出債権額・配当計算の基礎とする。
  • 保証人又は物上保証人による弁済と,破産者自身の担保財産についての不足額責任主義を混同する。
  • 債権者の手続参加と求償権者の手続参加を並列に認め,二重参加させる。
  • 「二重取り防止」を理由に,平成29年決定が認めた超過配当を配当表の段階で減額する。
  • 配当手続上の計算と,配当後に生じ得る不当利得その他の実体法上の清算を混同する。
  • 旧破産法を前提とする平成14年判決だけで現行手続を処理し,破産法104条・平成29年決定を確認しない。

第8 一次資料と確認状態

本記事は,令和8年9月30日現在,e-Gov法令検索・破産法104条・108条,最高裁平成14年9月24日判決及び最高裁平成29年9月12日決定を確認して作成した。

平成14年判決は裁判所ウェブサイト掲載資料,平成29年決定は裁判所ウェブサイト掲載判決PDFを確認した。判例秘書によるLIC番号,関連評釈及び同種下級審裁判例の網羅検索はしていない。個別事件では,債権届出書,破産債権者表,弁済証書,保証・担保契約,配当表及び配当異議の時期を追加確認する必要がある。