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自然公園法上の不許可・条件付許可と損失補償―取消訴訟と補償請求を分ける(AI作成)

第1 結論―取消しと補償を分ける

国立公園・国定公園内の建築、土石採取その他の行為が不許可となった場合、最初に「不許可を覆して事業を行いたい」のか、「不許可を前提に損失の補償を求めたい」のかを分ける。前者は不許可処分の違法性と取消し・義務付け等が中心となり、後者は自然公園法64条の補償要件と損失額が中心となる。

不許可であれば常に補償されるわけでも、適法な規制であれば常に補償されないわけでもない。区域指定、地種区分、予定行為、従前利用、代替利用、他法令の規制及び土地価値への影響を証拠で組み立てる必要がある。

第2 自然公園法64条の入口

自然公園法64条1項は、国立公園については国、国定公園については都道府県が、次の場合に通常生ずべき損失を補償すると定める。

  • 同法20条3項、21条3項又は22条3項の許可を得ることができないため損失を受けた場合
  • 同法32条により許可へ条件を付されたため損失を受けた場合
  • 同法33条2項の処分を受けたため損失を受けた場合

したがって、普通地域の届出、区域指定そのもの、他法令だけによる不許可などを、直ちに64条の不許可補償と同一視しない。どの処分・条件により、誰の、どの財産上の利益が制約されたかを固定する。

第3 補償が当然に認められるわけではない

裁判所公開裁判例では、旧自然公園法35条(現64条に対応する旧規定)について、自然公園法上の利用制限をすべて所有権の内在的制約として無補償にするのは相当でないとしつつ、申請行為が公園指定の趣旨に著しく反する場合や、土地の価値低下が立証されない場合に補償を否定した例がある。

別の裁判例は、第一種特別地域の風致・景観、建築による影響、従前又は客観的に予想される用途の可能性等を総合し、当該制限が財産権の内在的制約の範囲内であれば補償を要しないとした。重要なのは、「特別地域だから補償」「自然保護目的だから無補償」というラベルではなく、規制の強度と所有者に集中する負担を具体化することである。

補償方向に働き得る事情否定方向に働き得る事情
従前の適法な営業・利用ができなくなる従前利用がなく、計画が客観的にも予想されにくい
代替利用が乏しく、地価が客観的に低落する代替利用が残り、地価低落の証拠がない
指定後の個別不許可が特定所有者へ重い負担を集中させる地域指定の趣旨に著しく反する大規模行為である
不許可以外の法令障害がない他法令によっても実現不能又は著しく困難である

第4 通常生ずべき損失の算定

64条の「通常生ずべき損失」は、希望した事業の売上又は利益をそのまま補償する概念ではない。裁判例・学説上、相当因果関係のある損失、現実の出費、土地利用制限による地価低落、得べかりし利益の扱いなど複数の考え方が問題となる。

少なくとも、①不許可がなければ実現できた計画か、②許認可・資金・需要・工事可能性があったか、③他法令上の障害がないか、④代替利用後の価値はいくらか、⑤不許可前後の地価差をどの評価時点・手法で測るかを示す。事業計画上の期待利益と、土地又は既存営業に現実に生じた価値減少を分ける。

鑑定評価を依頼する場合も、法的な補償範囲を鑑定人へ丸投げせず、評価対象、基準時、最有効使用、法令制限、比較事例、代替利用、収益還元の前提を指定する。

第5 請求先・決定・増額請求訴訟

64条2項により、国立公園に係る補償は環境大臣へ、国定公園に係る補償は都道府県知事へ請求する。環境大臣又は都道府県知事は補償額を決定して請求者へ通知する。

決定額に不服がある場合、65条は、通知を受けた日から6か月以内に訴えにより補償額の増額を請求できると定める。通知日、送達資料、請求書、決定書及び期間計算を独立の期限表で管理する。

増額請求訴訟では、処分の取消しを求めるのか、補償額の増額を求めるのかを請求の趣旨から明確にする。補償請求の前置、被告、管轄、立証責任、遅延損害金の起算等は個別事件で確認する。

第6 取消訴訟等との役割分担

依頼者の終点中心となる検討
許可を得て事業を実施したい不許可の取消し、申請型義務付け、執行停止の可否
条件を変更・除去したい条件の根拠・比例性・裁量、条件付許可の争い方
不許可を前提に金銭補償を得たい64条の入口、補償要否、通常損失、65条の増額請求
区域指定自体を争いたい処分性、原告適格、出訴期間、指定後の具体的処分との関係

令和2年度司法試験環境法の公式資料は、「建築が認められない場合」という設問の前提を維持し、取消訴訟等へそれるのではなく損失補償へ進むことを重視した。実務でも、依頼者が事業継続と金銭補償のどちらを優先するかを早期に確認する。

第7 証拠収集チェックリスト

  1. 国立・国定公園の別、区域、地種区分、公園計画及び指定経過
  2. 申請行為の位置、規模、外観、工法、付帯工事及び環境影響
  3. 許可申請書、補正、協議記録、不許可理由、条件、決定通知日
  4. 土地取得時期・目的、従前利用、既存建物、営業実績及び投資
  5. 代替設計・代替地・代替利用と、その実現可能性
  6. 文化財、森林、砂防、都市計画、建築等の他法令規制
  7. 不許可前後の鑑定評価、取引事例、収益資料及び工事費
  8. 近隣許可事例との地種区分・景観・規模・時期の相違

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第9 出典と調査範囲

自然公園法
環境省「自然公園法の行為許可等の取扱要領」
裁判所公開裁判例(寒霞渓の土石採取不許可と損失補償)
裁判所公開裁判例(第一種特別地域の建築不許可と損失補償)
令和2年司法試験論文式試験出題の趣旨
令和2年司法試験選択科目の採点実感

2026年9月24日現在の法令・環境省資料及び裁判所公開PDFを確認した。裁判例は旧自然公園法35条に関するものであり、現行64条との条文沿革と個別事案の相違を確認して利用する必要がある。判例秘書の新規横断検索はしておらず、裁判例の網羅性を示すものではない。