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刑事裁判における訴因変更と不意打ち防止―「何らかの方法」の認定,共謀日時の変更及び防御機会(AI作成)

刑事裁判で、起訴状又は検察官の釈明と異なる事実を裁判所が認定しようとするときは、「訴因変更が形式上必要か」だけでなく、「認定候補が争点として示され、被告人側に実質的な防御機会が与えられたか」を別に検討する必要がある。
本記事は、実行方法を「何らかの方法」と抽象化する場合、実行行為者を変える場合及び共謀日時を変える場合を素材に、訴因変更と不意打ち防止の実務を整理する。

第1 結論―三つの問題を分ける

検討は、次の三段階に分けると混乱しにくい。

  • ① 刑事訴訟法256条3項に照らし、訴因が審判対象を画定し、防御対象を告知できる程度に特定されているか。
  • ② 判決で認定しようとする事実が訴因と実質的に異なり、同法312条による訴因変更を要するか。
  • ③ 訴因変更を要しない場合であっても、新しい認定候補が被告人に不意打ちを与えないよう、争点顕在化と十分な防御機会が確保されたか。

第②段階で「変更不要」と判断されても、第③段階の問題は残り得る。防御権の保障を訴因変更の要否だけで処理しないことが重要である。

第2 訴因の特定と訴因変更

刑事訴訟法256条3項は、公訴事実を訴因を明示して記載し、できる限り日時、場所及び方法をもって罪となるべき事実を特定することを求める。これは審判対象の画定と被告人への防御対象の告知という二つの機能を持つ。

同法312条1項は、公訴事実の同一性を害しない限度で、検察官が訴因又は罰条を追加、撤回又は変更できると定める。同条4項は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるとき、裁判所が決定で必要な期間公判手続を停止しなければならないと定める。

したがって、変更手続を踏めば直ちに防御権の問題が解消するわけではない。変更の時期、既に行われた証拠調べ、反対尋問の前提、追加証拠の必要性及び弁論準備期間を具体的に検討する必要がある。

第3 実行行為の方法が変わる場合

1 最高裁平成13年4月11日決定

最高裁平成13年4月11日決定は、共同正犯事件で実行行為者が誰であるかは一般に被告人の防御にとって重要な事項であり、検察官が訴因で実行行為者を明示した以上、判決でそれと実質的に異なる認定をするには原則として訴因変更を要するとした。他方、被告人の防御の具体的状況等の審理経過に照らし、不意打ちにならず、認定事実が訴因より被告人に不利益でない場合には例外を認めた。

2 最高裁平成24年2月29日決定

最高裁平成24年2月29日決定は、ガスコンロの点火スイッチを作動させて点火したとの訴因に対し、判決が引火方法を特定せず「何らかの方法により」と認定した事案を扱った。実行方法は一般に防御上重要であり、訴因と実質的に異なる認定には原則として訴因変更を要するとしつつ、審理経過、不意打ちの有無及び被告人にとってより不利益かを検討した。

「何らかの方法」という抽象化は、常に被告人に有利な縮小認定になるとは限らない。具体的方法だけを反証してきた被告人に、審理されていない多数の代替方法への反証を事後的に求めることになれば、防御対象をかえって広げ得る。

第4 共謀の日時が変わる場合

最高裁昭和58年12月13日判決は、ハイジャック事件の共謀共同正犯について、審理で中心となった日時とは別の日時の謀議を認定した原審の手続を問題とした。事案の性質と審理経過の下で、その存否を争点として顕在化させて十分な審理を遂げる措置を取らない認定は、被告人に不意打ちを与え、防御権を不当に侵害するものとされた。

共謀日時が一日変わるだけでも、防御は大きく変わり得る。行動履歴、位置情報、交通履歴、通話記録、面会者、共犯者供述への反対尋問及びアリバイ証人が入れ替わるからである。

この問題は、検察官の釈明が訴因の内容になったか、訴因変更が必要かという形式論だけでは終わらない。裁判所が別日時の認定可能性を示した時点で、その日時、根拠証拠及び想定する共謀態様を明らかにし、追加の主張立証機会を与えたかが独立した問題となる。

第5 不意打ちを防ぐための弁護活動

裁判所又は検察官の発言から別の実行方法、日時又は関与態様が想定されていると分かった場合、弁護人は口頭の応答だけで終わらせず、次の事項を明確にする。

  • ① 認定候補となっている事実の日時、場所、方法、実行者及び共謀者
  • ② その事実を支える証拠と、従前の訴因との違い
  • ③ 訴因変更を求めるか、変更不要でも争点を明示するよう求めるか
  • ④ 追加の反対尋問、証拠請求、鑑定、アリバイ立証又は弁論準備に必要な期間
  • ⑤ 必要に応じ、弁論再開及び公判手続停止を求めること

「不意打ちである」という結論だけでなく、従前の防御がどの事実を前提に組み立てられ、新しい認定候補によりどの証拠収集又は反対尋問が不足するのかを具体化することが重要である。

第6 公判調書に残すべき事項

後の控訴理由を検討できるよう、少なくとも、裁判所が示した代替的事実、検察官の釈明、弁護人の異議、求釈明、準備期間の申出、追加証拠の請求及び弁論再開の請求を期日メモと公判調書で確認する。

関連する実務については、刑事公判調書の確認と異議申立て―整理時期・記載漏れ・控訴記録送付(AI作成)も参照されたい。

第7 裁判例の射程と確認状況

平成13年決定と平成24年決定は、訴因と異なる事実認定に関する原則と例外を示すが、どの相違でも機械的に同じ結論になるわけではない。昭和58年判決も、共謀日時の変更一般を一律に違法としたものではなく、事案の性質と具体的な審理経過を前提とする。

本記事は、刑事訴訟法の現行条文及び裁判所ウェブサイト掲載の裁判例全文又は公式判例情報を根拠とした。判例秘書の収録本文は本記事作成時点で確認していないため、「判例秘書確認済み」とはしていない。

出典