第1 結論―各社の違いは「暗号資産のまま移すか、円に換えるか」に表れる
暗号資産交換業者の口座名義人が死亡した場合、相続人が被相続人のID及びパスワードを使って売却又は送付するのではなく、各事業者の相続窓口へ連絡し、所定書類を提出するのが基本である。
ただし、手続の経済的な結果は各社で異なる。令和8年9月22日時点の公式案内を比較すると、主に次の三つに分かれる。
①暗号資産をそのまま代表相続人の口座へ移管する方式
②事業者が暗号資産を売却し、日本円を代表相続人へ払い戻す方式
③相続窓口は公開されているものの、資産の交付方法は個別案内とされている方式
価格変動が大きい暗号資産では、現物移管か円換価か、換価の時点を誰が決めるかによって相続人の受取額が変わり得る。そのため、戸籍及び印鑑証明書の準備だけでなく、凍結時点、未約定注文、信用取引、ステーキング又は貸暗号資産、取引履歴及び死亡日残高の扱いを最初に確認する必要がある。
第2 本記事の対象と確認方法
本記事は、金融庁の登録業者情報を参照した上で、一般利用者向けの死亡・相続手続を公式ウェブサイトで確認できた主要サービスを比較したものである。全登録業者について、非公開の社内手続又は個別回答まで調査したものではない。
表中の「確認済み」は各社の公式FAQ、公式サポート又は所定書式に記載された事項である。「個別確認」は、公開ページで結論が示されていない事項である。検索で案内を発見できなかったことは、その事業者に相続手続が存在しないことの証明にはならない。
また、BITPOINTサービスとSBI VCトレードのVCTRADEサービスは、同じグループの案内ページでも手続が異なる旨が明記されているため、本記事ではBITPOINTの案内をVCTRADEへ流用していない。
第3 主要サービスの比較表
| サービス | 資産の交付方法 | 代表相続人の新規口座 | 連絡・凍結 | 期間・書類返却 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| bitFlyer | 日本円と暗号資産をそれぞれそのまま代表相続人のbitFlyer口座へ移管し、暗号資産を円へ転換しない。 | 必要。口座開設及び本人確認を完了する。 | 問い合わせ時点では停止されず、事業者の確認完了後に凍結手続へ移る。 | 標準期間の公表なし。提出書類は原則返却不可。ただし遺言書等は返送用封筒を同封して返却を求められる。 | 凍結を急ぐ場合も、単なる送信完了ではなく、死亡確認及び凍結完了を確認する。 |
| Coincheck | 暗号資産がある場合は原則として代表相続人のCoincheck口座へ移管。日本円のみなら銀行払戻しも可能。一定の場合は円払戻し。 | 原則必要。75歳以上又は18歳未満の代表相続人は口座を開設できず、銀行口座へ日本円で払戻し。 | 法定相続人が問い合わせフォームから連絡。公開案内では凍結時点の記載を確認できない。 | 標準期間及び原本返却の一般記載は確認できない。 | 売却停止又は売却不能の暗号資産は、暗号資産のままの払戻しに限られる場合がある。 |
| bitbank | 公開ページ本文では、口座の資産有無によって対応が異なるとの案内にとどまり、現物移管か円換価かは個別確認。 | 公開ページ本文では確認できない。 | 代表相続人が「相続等に関するご質問」から連絡。 | 手続は1~2か月程度。書類は郵送し、返却不可。 | 交付方法、評価時点及び口座開設要否を回答メールで確認してから原本を発送する。 |
| BITPOINT | 暗号資産を換金する方法又はBITPOINT口座へ移管する方法。日本円のみなら銀行払戻し。 | 現物移管を希望する場合は必要。80歳以上又は18歳未満は口座を開設できず、銀行口座へ日本円で払戻し。 | 代表相続人が問い合わせ。公開案内では凍結時点の記載を確認できない。 | 標準期間の公表なし。提出原本は確認後に返却すると案内。 | 日本円での払出しを希望しても希望に沿えない場合がある。VCTRADEにはこの案内を流用しない。 |
| Binance Japan | 一人の代表相続人のBinance口座へ資産を移管する。 | 必要。 | サポートへ連絡。残高照会も口座確認後に所定書類の案内を受ける。 | 必要書類受領後、通常2~3週間程度。原本提出が原則で、返却方法は個別確認。 | 複数相続人へ分割移管できず、他の相続人から代表者への委任状が必要。 |
| OKJ | 所定の相続届では、残玉の決済及び暗号資産の売却により全資産を日本円へ換価し、代表相続人の国内銀行口座へ出金する。 | 不要。 | 問い合わせフォームから連絡。公開案内では凍結時点の記載を確認できない。 | 標準期間の公表なし。提出書類は返却不可。 | 換価は事業者の任意のタイミングとする所定書式であり、相続人が相場を指定できるとは限らない。 |
| メルカリ/メルコイン | 暗号資産を売却して日本円に交換し、メルペイ残高へ移動する。暗号資産のままの返金はない。 | 遺族本人のメルカリアカウントからの問い合わせを求める。 | 第1順位の相続人となる遺族本人が問い合わせ。被相続人のアカウントからログアウトした状態等で連絡する。 | 標準期間の公表なし。初動では発行3か月以内の戸籍等の原本画像を添付。 | 売上金、メルペイ残高、有償ポイント及びメルカリNFTも別途確認する。 |
※表は公開公式資料に記載された一般的な取扱いである。口座状態、保有銘柄、信用取引、貸付・ステーキング、相続人の属性及び遺言の内容によって追加書類又は別の処理となることがある。
第4 各社の死亡時手続
1 bitFlyer
代表相続人が問い合わせフォームの「相続手続きについて」から連絡する。公式FAQは、問い合わせを送信した時点ではアカウントが停止されず、bitFlyerによる確認完了後に取引及び入出金を止める凍結手続へ移ると明記している。
必要書類の例は、発行後3か月以内の法定相続情報一覧図、相続人全員の発行後6か月以内の印鑑証明書及び所定の相続届兼委任状である。弁護士又は司法書士が代理する場合には委任状等が、未成年相続人と親権者の利益が相反する場合には特別代理人選任審判書等が追加される。
代表相続人はbitFlyer口座を開設して本人確認を終える必要があり、日本円及び暗号資産はそれぞれそのまま移管される。暗号資産は日本円へ転換されない。移管後、被相続人の口座は閉鎖される。
2 Coincheck
法定相続人が問い合わせフォームで「登録情報を確認・変更したい」から「相続手続き」を選んで連絡する。事業者による確認後、資産があれば相続届が代表相続人又は代理人へ郵送される。
暗号資産がある場合は、原則として代表相続人のCoincheck口座への移管となる。日本円のみの場合は銀行口座への払戻しも可能である。代表相続人が75歳以上又は18歳未満で口座を開設できない場合は、銀行口座へ日本円で払い戻す。これ以外の相続人も日本円払戻しを希望できるが、希望が常に認められるとは限らない。購入・売却を停止している銘柄又はCoincheckで売却できない銘柄は、暗号資産での払戻しに限られる場合がある。
必要書類は、遺言、遺言執行者、遺産分割協議又は審判の有無で分かれる。遺産分割協議も遺言もない場合には、相続届、出生から死亡までの戸籍又は法定相続情報一覧図、相続人の現在戸籍、相続人全員の死亡後に発行された印鑑証明書及び代表相続人の本人確認資料等が案内されている。
3 bitbank
代表相続人が問い合わせフォームで「相続等に関するご質問」を選択する。必要書類は問い合わせ後にメールで案内され、郵送で提出する。公開FAQは、手続に1~2か月程度を要すること、提出書類を返却しないこと及び直接持参を受け付けないことを明記している。
他方、公開ページ本文は、被相続人の口座に資産があるか否かによって対応が異なるとの説明にとどまる。暗号資産を現物移管するか、日本円へ換価するか、代表相続人のbitbank口座が必要かは、受任時に個別確認する必要がある。
4 BITPOINT
代表相続人が問い合わせフォームから連絡し、事業者が必要書類及び所定書式を案内する。必要書類の例は、法定相続情報一覧図、相続人全員の発行後6か月以内の印鑑証明書及び相続手続き依頼書である。遺言書又は遺産分割協議書は原本の提出を求める一方、確認後に提出書類を返却すると案内している。
暗号資産がある場合、換金又は代表相続人のBITPOINT口座への移管で処理する。現物移管には口座開設及び本人確認が必要である。代表相続人が80歳以上又は18歳未満の場合は口座を開設できず、銀行口座へ日本円で払い戻す。これ以外でも日本円払戻しを希望できるが、希望に沿えない場合がある。
なお、公式ページはBITPOINTとVCTRADEの相続手続が異なると注意書きを置いている。SBI VCトレードの案件では、VCTRADEの窓口へ別途確認する。
5 Binance Japan
相続人はサポートへ連絡し、被相続人の口座状態に応じて書類の案内を受ける。遺言がある場合、遺産分割協議書がある場合及びいずれもない場合に分け、遺言書、検認関係書類、戸籍、遺産分割協議書及び印鑑証明書等の原本提出を原則としている。
資産は一人の代表相続人のBinance口座へ移管され、複数の相続人の口座へ分割して移すことはできない。他の相続人から代表相続人への委任状が必要である。相続人がBinance口座を持っていない場合は開設を求められる。必要書類がすべて届いた後の標準処理期間は通常2~3週間程度と案内されている。
6 OKJ
相続人は問い合わせフォームから連絡し、相続届、法定相続情報一覧図又は戸籍一式及び相続人全員の発行後6か月以内の印鑑証明書等を郵送する。弁護士又は司法書士が代理する場合には、委任状、代理人の印鑑証明書及び資格を確認できる資料等が必要である。提出書類は返却されない。
公式サポートは、書類確認後に代表相続人へ残高証明書を送り、代表相続人の銀行口座への出金及び口座解約を行うと案内している。さらに所定の相続届は、残っている信用取引等の残玉及び暗号資産を事業者の任意のタイミングで決済・売却し、すべて日本円へ換価することへの同意を求めている。
したがって、OKJでは現物の暗号資産を相続人口座へ移す方式ではなく、事業者の処理時点の価格で円換価されることを前提に、価格変動、手数料及び税務資料を確認する必要がある。
7 メルカリ/メルコイン
メルコインの公式案内は、被相続人が暗号資産を保有している場合、所定手続後に暗号資産を売却して日本円へ交換し、メルペイ残高へ移すとしている。暗号資産のまま返金することはない。
売上金、メルペイ残高及び有償ポイントに係る返金又は払戻請求権並びにメルカリNFTで購入したNFTも相続対象として案内されている。第1順位の相続人となる遺族本人が、自分のメルカリアカウントから問い合わせる。初動では、被相続人の登録情報及び続柄等を伝え、死亡及び続柄を確認できる発行後3か月以内の戸籍謄本又は法定相続情報一覧図の原本画像を添付する。
被相続人のアカウントを家族が操作して売却するのではなく、被相続人のアカウントからログアウトした状態又は遺族自身のアカウントへログインした状態で、公式窓口へ連絡する。
第5 必要書類を集める際の注意点
必要書類は各社共通ではない。法定相続情報一覧図の発行後期間は、bitFlyer及びメルカリでは3か月以内が明記される一方、印鑑証明書は6か月以内とする事業者が多い。Coincheckでは、類型によって死亡後に発行された印鑑証明書であることも確認する。
遺言書、遺産分割協議書又は審判書を原本で送る場合、返却の取扱いを発送前に確認する。BITPOINTは確認後の返却を案内し、bitbank及びOKJは返却不可とする。bitFlyerは原則返却不可であるが、遺言書等について返送用封筒を同封して返却を求める取扱いを示している。
戸籍等を一度に複数社へ提出する案件では、法定相続情報一覧図を必要部数取得し、各社の有効期間、原本要否及び返却可否を台帳にしてから発送する方がよい。書留等の追跡可能な方法を用い、送付物の写し及び追跡番号を保管する。
第6 弁護士が受任直後に確認する事項
死亡連絡の前に、少なくとも次の事項を一覧化する。
①事業者名、登録メールアドレス、口座番号等の特定情報
②死亡日時及び死亡日時点の各銘柄・数量・日本円残高
③未約定注文、信用取引又はレバレッジ取引の有無
④ステーキング、貸暗号資産、積立、定期購入及び報酬発生の有無
⑤入出庫又は銀行出金の処理中取引の有無
⑥上場廃止、売買停止又は事業者内で売却できない銘柄の有無
⑦取引履歴、年間取引報告書及び死亡日残高証明書の取得方法
⑧相続開始後に事業者が売却する場合の名義、約定日、価格及び手数料
⑨連絡時点、死亡確認時点又は書類受理時点のどこで口座が凍結されるか
⑩被相続人のアカウント閉鎖前に税務資料を取得できるか
価格急変又は不正利用の懸念がある場合、「問い合わせを送った」ことと「取引・入出金が停止された」ことを分けて記録する。bitFlyerは両者が同時ではないことを明記しているが、他社についても同様か否かを確認する。
第7 代表相続人と遺産分割を混同しない
各社が指定を求める「代表相続人」は、事業者との連絡、書類提出及び資産受領を一本化するための手続上の窓口である。代表相続人の口座へ資産が移ったことだけで、その人が遺産分割上の全部の取得者になるとは限らない。
暗号資産を一人へまとめて移管する場合、遺産分割協議書又は相続人間の確認書に、銘柄と数量、評価基準時、移管後の分配方法、送付手数料、換価の権限、価格変動の帰属及び税負担を定めておくことが望ましい。事業者所定の委任状と、共同相続人間の最終的な分配合意を区別する。
第8 死亡後に交換業者が円換価した場合の所得税
死亡後の円換価では、①売却が死亡前か死亡後か、②売却時に暗号資産が未分割か、既に特定の相続人へ帰属していたか、③所得税計算上の取得価額はいくらかを順に分ける。代表相続人の銀行口座へ全額が振り込まれたという事実だけで、代表相続人一人の所得と決めることはできない。
1 死亡前の売却と死亡後の売却を分ける
国税庁は、準確定申告の対象を、その年の1月1日から死亡の日までに確定した被相続人の所得としている。また、暗号資産取引による収入の時期は、原則として売却等をした暗号資産の引渡日であり、選択により契約日とすることもできると説明している。
したがって、被相続人が生前に売却し、死亡日までに所得が確定していた部分は、被相続人の準確定申告で処理する。他方、死亡後に交換業者が相続手続として売却した部分は、通常は死亡日後に生じた所得であり、被相続人の準確定申告へ当然に入れるものではない。注文日、約定日、引渡日、円残高への反映日及び銀行入金日を分けて確認する。
2 死亡後の換価は誰の所得になるか
暗号資産の売却益は、原則として雑所得(その他雑所得)である。国税庁の暗号資産FAQは、交換業者が口座名義人の死亡後に相続手続として強制換価した場合の納税主体を直接示していない。
ただし、国税庁は、未分割の相続不動産から生ずる所得について、特定の相続人が収益を管理していても、共同相続人が法定相続分に応じて申告すると説明している。また、千葉地方裁判所平成23年2月18日判決は、未分割遺産である土地の換価について、売却時の所有者に譲渡所得が帰属し、後の遺産分割によって売却時の共有状態が覆るものではないとした。
これらは暗号資産の強制換価を直接扱う資料ではないが、死亡後かつ遺産分割前に交換業者が暗号資産を売却した場合にも、売却時の権利帰属を基準に共同相続人へ所得を配分するという整理を検討する重要な手掛かりになる。指定相続分がある場合、遺言執行者がいる場合、換価前に分割合意が成立している場合又は相続放棄がある場合は結論が変わり得る。
3 取得価額は被相続人の購入額ではなく死亡時評価額
国税庁FAQ1-5は、相続、包括遺贈又は相続人に対する特定遺贈等によって取得した暗号資産の所得税上の取得価額を、「被相続人の死亡の時に、その被相続人が暗号資産について選択していた方法により評価した金額」と明示している。
したがって、相続人が死亡後の換価損益を計算するときは、被相続人の当初の購入額をそのまま引き継ぐのではなく、原則として死亡時に総平均法又は移動平均法で評価した金額を基礎にする。被相続人がどの評価方法を届け出ていたか、過年度の暗号資産計算書及び確定申告書で確認する。評価方法が不明な場合は、個人の法定評価方法が総平均法であることを踏まえつつ、所轄税務署又は税理士へ確認する。
4 相続税評価額と所得税の取得価額は同じとは限らない
相続税について、国税庁FAQ4-2は、活発な市場が存在する暗号資産を、原則として相続人等の納税義務者が取引する交換業者の死亡日の取引価格で評価するとしている。これに対し、所得税の取得価額は、FAQ1-5が被相続人の選択していた評価方法による死亡時評価額としている。
両者はいずれも死亡時を基準にするが、参照する交換業者、価格の種類及び平均単価の計算方法が一致するとは限らない。「相続税申告書に記載した評価額=所得税の取得価額」と自動的に置かず、二つの計算根拠を別々に保存する。
5 換価損益の計算と損失の扱い
基本的な計算は、換価代金から、死亡時評価額を基礎とする譲渡原価及び売却手数料等の直接費用を控除する。国税庁FAQは、暗号資産の売却による所得について、総収入金額から譲渡原価及び売却手数料等の必要経費を控除すると説明している。
死亡日の後に価格が上昇して売却されれば、その上昇分が相続人側の所得になり得る。反対に価格が下落した場合は損失となり得るが、その他雑所得の損失は給与所得等と通算できない。暗号資産取引が事業所得又は業務に係る雑所得に当たる場合は取扱いが異なり得るため、被相続人及び各相続人の取引規模、帳簿保存及び事業との関連も確認する。
6 換価前後の遺産分割で帰属が変わり得る
換価前に、暗号資産を特定の相続人が単独取得する遺産分割又は有効な遺言による帰属が確定していれば、その取得者を売却時の所得帰属者とみる方向になる。他方、未分割のまま交換業者が換価し、後に円預金を一人の相続人へ取得させても、後の合意だけで換価時の所得帰属が当然に遡って変わるとは限らない。
また、「代表相続人」は交換業者の手続窓口又は受領窓口にすぎない場合がある。代表相続人が円を受け取ったこと、年間取引報告書が被相続人名義又は代表相続人名義で作成されたこと及び最終的な遺産分割で誰が換価代金を取得したかは、それぞれ別の事実として整理する。
7 交換業者と税理士へ確認する資料
交換業者には、売却の法的な名義、注文日、約定日、引渡日、銘柄別数量、約定単価、手数料、円残高への反映日、出金日、年間取引報告書の名義及び死亡日残高証明書の発行可否を照会する。
税務検討用には、被相続人の過年度申告書、暗号資産計算書、評価方法の届出、死亡日時点の銘柄別数量及び評価資料、遺言、遺産分割協議書、相続放棄の有無、交換業者への委任状、換価報告、手数料明細及び入金明細を一つの時系列にする。ステーキング又は貸付報酬が死亡前後に発生している場合は、報酬の発生日及び帰属も別に確認する。
以上は令和8年9月22日時点の国税庁公表資料及び裁判例からの一般的整理である。交換業者による死亡後の強制換価を直接扱う国税庁の公表事例は確認できないため、高額案件、相続人間で取得割合に争いがある案件又は非居住者が含まれる案件では、事実関係を示して税理士又は所轄税務署へ事前に確認する。
第9 公開案内が見つからない事業者への照会事項
今回確認した公開公式資料からは、GMOコイン、SBI VCトレード、楽天ウォレット及びZaifについて、死亡時の資産交付方法まで確定できなかった。これは手続が存在しないとの結論ではない。
照会時には、①死亡連絡窓口、②口座凍結時点、③残高照会だけを先行できるか、④必要書類、⑤原本要否及び返却、⑥現物移管か円換価か、⑦換価時点及び価格決定方法、⑧相続人名義の口座開設要否、⑨年齢又は居住地による制限、⑩未決済取引・ステーキング・貸付・上場廃止銘柄の処理、⑪標準期間、⑫残高証明書・取引履歴・年間取引報告書の交付を質問する。
電話回答だけで資産処理を決めず、問い合わせ番号、回答日、担当部署及び回答メールを保存する。相場変動が問題となる案件では、換価権限及び換価時点を文書で確認する。
第10 調査上の限界と更新確認
本記事は令和8年9月22日時点で閲覧できた公開公式資料を基礎とする。個別口座の状態、非公開の社内手続及び問い合わせ後に交付される書式を網羅していない。
また、暗号資産サービスは統合又は終了することがある。LINE BITMAXは令和8年6月1日にサービスを終了し、終了時残高の返還手続へ移行しているため、現在の通常サービスとして比較表へ含めていない。受任時には金融庁の登録一覧、各社の公式FAQ及び利用規約を再確認する。
第11 関連記事
①デジタル遺品・オンラインアカウントは相続人がどこまで処理できるか(AI作成)
②被相続人の財産を調べる方法―相続人が被相続人の死亡後に行う財産・債務調査(AI作成)
③被相続人のスマホに関して,死亡直後に遺族がすべきこと(AI作成)
第12 出典・参考資料
①金融庁「暗号資産・電子決済手段関係」及び「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」
②bitFlyer「相続手続きの流れについて教えてください。」
③Coincheck「相続手続きについて教えてください」
④bitbank「相続手続きについて」
⑤BITPOINT「相続手続きの流れについて教えてください」
⑥Binance Japan「Inheritance of assets in decedent’s Binance account」
⑦OKJ「相続手続きについて」及び同ページ掲載の相続届
⑧メルカリ/メルコイン「相続時の手続き」及び「アカウント名義人死亡時の返金または払戻し」
⑨国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-5、4-1及び4-2
⑩国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
⑪国税庁「No.1376 不動産所得の収入計上時期」
⑫国税庁・税務訴訟資料「千葉地方裁判所平成23年2月18日判決」
⑬LINE BITMAX「LINE BITMAXサービス終了に関するお手続き」