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退会後の個人情報は削除できるか―アプリ削除との違い,保存期間と消去請求(AI作成)

第1 アプリ削除・退会・データ消去の違い

スマートフォンからアプリを削除しても,サービスの退会手続をしたことにはならない。
退会手続を終えた後も,事業者が保有する取引記録や本人確認書類の画像がいつ消去されるかは,データごとの利用目的や保存根拠によって異なる。
本稿は,令和8年11月6日時点の民間事業者に適用される個人情報保護法を前提に,退会後に確認する項目と消去請求の方法を説明する。

アプリを削除する操作は端末側の手続である。
サービス側の会員登録を終了するには,その事業者の退会又はアカウント削除の手続を確認する。
サブスクリプションがある場合は,課金契約の解約手続と退会手続も確認する。
例えば,Google Playの公式案内は,アプリをアンインストールしても定期購入は解約されないと説明している。

退会後に確かめるのは,①データの種類,②残す目的,③保存期間と起算点,④消去の対象と時期である。
例えば,販促メール用の連絡先,利用料金の取引記録,登録時の免許証画像では,退会後に利用する必要性が異なる。
事業者のプライバシーポリシーに期間の記載が見当たらなければ,保有個人データの開示等を受け付ける窓口に項目ごとの取扱いを問い合わせる。

第2 退会後に残る情報と保存期間

個人情報保護法は,民間事業者の個人情報に共通する一律の保存期間を定めていない。
他の法令が帳簿・書類の保存を求める場合は,対象となる記録と保存期間をその法令に即して確認する。
事業者が「法令上の保存」を理由にする場合は,保存する項目,法令名・条項,期間及び起算点を具体的に聞く。 個人情報保護委員会「よくある事例集」の退会後の削除に関する事例

タイムズカーは,運転免許証等の本人確認書類の画像を会員期間中と退会後7年間保有していたと公表し,登録確認完了後に画像を即時削除する社内ルールへの変更を発表した。
第4報及び第5報は,当時保有していた画像を令和8年10月末までに削除するとし,第5報は,画像は削除するが,将来の問い合わせ対応等のために必要となった際に保存していた画像との同一性を確認するための情報は保全していると説明している。
この事例では,画像そのもの,画像との同一性を確認するための情報,取引記録を分けて尋ねることが,退会後の取扱いを知る手掛かりになる。 第4報,第5報

第3 個人情報保護法22条の努力義務と35条の請求

22条は,個人データを利用する必要がなくなったとき,個人情報取扱事業者に遅滞なく消去するよう努めることを求めている。
同じデータに複数の利用目的がある場合は,それぞれの目的について利用する必要が残っているかを確認する。
例えば懸賞品の発送に使った応募者情報は,不着対応などの合理的な期間が経過した時点が判断の目安になる。 個人情報保護委員会・通則編3-4-1,3-8-5

35条5項は,本人が識別される保有個人データについて,次のいずれかに該当する場合に,利用の停止若しくは消去(以下「利用停止等」という。)又は第三者への提供の停止を請求できると定めている。

① 事業者が利用する必要がなくなった場合
② 本人に係る保有個人データについて同法26条1項本文の報告対象となる漏えい等の事態が生じた場合
③ 当該データの取扱いにより本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合

請求に理由があることが判明したときは,事業者は,本人の権利利益の侵害を防止するために必要な限度で,遅滞なく利用停止等又は第三者への提供の停止を行わなければならない(同条6項本文)。
ただし,多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって,本人の権利利益を保護するため必要な代替措置をとるときは,この限りでない(同項ただし書)。
事業者は,利用停止等を行ったとき又は行わない旨を決定したときは,本人に遅滞なくその旨を通知しなければならない(同条7項)。
請求された措置の全部又は一部をとらない旨,又はその措置と異なる措置をとる旨を通知する場合には,事業者は,本人にその理由を説明するよう努めなければならない(36条)。 同通則編3-8-5,3-8-6

なお,令和8年法律第56号による改正後の35条には,特定生体個人情報や16歳未満の本人に関する請求の規定が加わり,通知の規定は同条11項に移る。
この改正規定の施行日は,公布の日(令和8年7月17日)から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日とされており,本稿の基準日には施行されていない。

第4 事業者への問い合わせと消去請求の文例

プライバシーポリシー等で窓口を調べ,退会日,サービス名,会員番号など,対象を特定できる情報を用意する。
事業者が指定する方法に従い,本人確認書類を求められた場合は,必要な範囲と送付先を確認する。
事業者が保有する自分の保有個人データの内容を確かめたい場合は,個人情報保護法33条の開示請求を検討する。 同通則編3-8-2,3-8-7

「○月○日に退会しました。
現在保有している私の会員情報,取引記録及び本人確認書類の画像について,項目ごとの利用目的,保存期間と起算点,法令上の保存が必要な場合はその根拠をご教示ください。
利用する必要がなくなった保有個人データについては,個人情報保護法35条5項に基づき消去を請求します。
所定の申請方法と,本人確認に必要な書類をご案内ください。」

文例のうち,保存期間,起算点及び法令上の保存根拠を尋ねる部分は照会であり,個人情報保護法は,これらの事項への回答を事業者に一律には義務付けていない。
これに対し,保有個人データの利用目的の通知を求められた事業者は,利用目的が既に本人の知り得る状態に置かれていて明らかな場合などを除き,遅滞なく通知しなければならない(32条2項)。
消去の請求については,第3のとおり,事業者は措置の結果を通知しなければならず,消去しない場合や異なる措置をとる場合は,その理由を説明するよう努めなければならない(35条7項,36条)。

退会の完了通知や事業者とのやり取りは手元に残す。
回答で一部の項目の保存が続くと分かった場合は,その項目と理由を確認し,必要に応じて消去の時期や利用停止の範囲を尋ねる。

第5 よくある質問

1 事業者から「7年保管する」と言われたらどうするか

何を7年間保管するのかを確認する。
法令が求める帳簿・書類と,サービス上の問い合わせ対応のために保有する情報とでは,保存の根拠が異なる。
他の法令で保存が義務付けられている保有個人データについて,その法令の保存期間が終わった後に消去すると約束することは,利用停止等に代わる措置の例として通則編に挙げられている。 個人情報保護委員会「よくある事例集」,通則編3-8-5

2 退会後に販促メールが届く場合はどうするか

事業者の公式窓口で配信停止の手続を確認し,停止を求めた日とその後の配信を記録する。
個人情報保護委員会は,停止を求めた後もダイレクトメールが繰り返し送られる場合を,35条5項に基づく利用停止等が認められ得る例として挙げている。 通則編3-8-5

3 すでに漏えいの通知が来ている場合はどうするか

今後の利用停止・消去の申出と,流出した情報による二次被害への対処を並行して考える。
自分が対象かどうか,流出項目,事業者の調査範囲を公式窓口で確認し,通知ややり取りを保存する。 個人情報漏えいの通知を受けたら

第6 関連記事

①タイムズカー約660万アカウントの個人情報漏えいから考える本人通知―退会者・入会未完了者・法人会員の登録運転者
②個人情報漏えいの慰謝料はいくらか―ベネッセ事件最高裁判決と裁判例の認容額
③個人情報漏えいの通知を受けたら―流出項目別の対処,二次被害の防止と証拠保存

第7 出典

①e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」22条,26条,32条,33条,35条及び36条
②個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(令和8年6月一部改正)3-4-1,3-8-2,3-8-5~3-8-7
③個人情報保護委員会「よくある事例集」のうち「サービスを退会したため、事業者に私の個人データの削除を求めたが、事業者で一定期間の保管が必要であるため削除できないと言われた。」
④個人情報保護委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」
⑤タイムズモビリティ株式会社「『タイムズカーWebシステム』への不正アクセスに関する対応について(第4報)」(令和8年10月16日)
⑥同「『タイムズカーWebシステム』への不正アクセスによる個人情報漏えいに関するご報告と今後の対応について(第5報)」(令和8年10月23日)
⑦Google Play ヘルプ「Google Play での定期購入の解約、一時停止、変更」