第1 未修者教育を複数の段階に分けて見る
東京大学大学院の前田健教授は,2026年7月10日の法科大学院等特別委員会に,未修者教育の現状と取組,課題についての資料を提出した。
資料には進級,修了,司法試験の結果が別々に示されている。
題名に「若干の私見」とあるとおり,課題に関する論評は提出者の見解として読む必要がある。
第2 2025年度の1年次から2年次への進級
| 指標 | 2025年度 |
|---|---|
| 進級判定対象者数 | 60人 |
| 進級者数 | 47人 |
| 原級留置者数 | 13人 |
| 進級率 | 78.3% |
資料の1年次から2年次への進級表では,47÷60が約78.3%となる。
13人は原級留置者として記載されており,退学者13人という意味ではない。
この判定対象60人を,同年度の新入学者数と同一視することもできない。
第3 標準修業年限以内の修了率とは分母が異なる
| 未修者の入学年度 | 入学者 | 標準修業年限以内修了者 | 資料記載の修了率 |
|---|---|---|---|
| 2022年度 | 57人 | 36人 | 63.2% |
| 2023年度 | 53人 | 27人 | 50.9% |
この表は入学年度別の追跡であり,ある年度の進級判定対象者を分母にした表ではない。
進級率78.3%と修了率50.9%を掛け合わせて,ある入学年度の修了確率や脱落率を求めることはできない。
標準年限を超えてから修了する可能性もあり,標準年限内の未修了を最終的な中退と同義に扱わない。
第4 修了生による個別の起案指導
提出資料は,法科大学院同窓会と協力し,修了生の実務家・司法修習生・研究者を講師として,未修1年次全員と2年次希望者に個別の起案指導を行う取組を説明している。
2025年度は講師34人を委嘱し,1年次62人(休学中を除く)と2年次27人が指導を受けたとされる。
ここでいう指導対象者の人数も,進級判定対象者数とは別の集計である。
第5 課題の指摘と効果の検証を分ける
資料は,法学特有の思考形式,文書起案の技法,学修歴のばらつき,1年次に法律基本7科目の学修が求められることによる学修時間の制約及び社会人学生の時間的制約を課題として挙げている。
課題に対応する指導の存在は確認できるが,取組が修了率を何ポイント改善したかという因果的な効果まで,この資料から確定することはできない。
入学者の背景,指導の利用状況及びその後の成果を,同じ対象集団について追うことが評価の出発点となる。
第6 関連記事
① 法科大学院等特別委員会とは-役割,構成及び令和8年の審議課題
② 法科大学院等特別委員会の議事録に表れた関係者の本音-予備試験,未修者教育,地方偏在,認証評価及び公的支援
第7 出典
① 東京大学における未修者教育の現状・取組及び未修者コースの抱える課題についての若干の私見(前田委員提出資料)(PDF1頁の名義,5頁の進級,6頁の修了,9~10頁の指導と課題)。