第1 結論
Windows 11が固まった原因を後から調べるときは,フリーズ直前の時刻と最後の操作を確定し,パフォーマンスモニターの記録,イベントビューアー,Windows Error Reporting等を同じ時刻で突き合わせる必要がある。
一つのAIセッションしか動いていなくても,そのセッションが大きなPDFの読込み,OCR,広いフォルダー検索,ビルド又はテストを実行していれば,CPU,メモリ又はディスクの負荷原因になり得る。
他方で,クラウド同期,バックアップ,ウイルス対策,検索インデックス又はドライバーの処理が重なれば,画面上で操作していたアプリが原因でないこともある。
したがって,「直前に使っていたアプリ」と「同時刻に資源を多く使っていたプロセス」を分けて確認することが重要である。
第2 最初に「固まった」の意味を分ける
1 特定のアプリだけが応答しない場合
ウィンドウの切替え,タスクマネージャー及び他のアプリが動くなら,Windows全体ではなく特定のアプリ又はその子プロセスの停止を疑う。
アプリの「応答なし」,Application Hang,Windows Error Reporting及び同時刻のプロセス別CPU・メモリ・I/Oを確認する。
2 表示又は遠隔画面だけが止まった場合
音声,Caps Lockランプ又は別端末からの接続が生きているのに画面だけが更新されない場合は,GPU,ディスプレイドライバー,Desktop Window Manager又は遠隔操作経路の問題を分けて考える。
画面停止とWindows全体のハードハングを同じものとして扱わない。
3 Windows全体が応答しない場合
キーボード,マウス,画面及びネットワークがそろって応答せず,電源ボタンによる強制終了を要した場合は,ハードハング,電源,熱,ドライバー又はハードウェアを含めて確認する。
この場合は原因を示す情報自体をディスクへ書けないことがあり,ログが少ないことを正常の証明にしてはならない。
4 単に処理の完了を待っていた場合
AI画面の「考え中」又は経過時間は,モデルの応答待ちだけを示すとは限らない。
ローカルのシェルコマンド,ファイル検索,PDF変換又は外部ツールが継続中なら,画面上は一つのセッションでも複数プロセスが動くことがある。
第3 再起動前後に残す最小限の記録
1 時刻と停止範囲
少なくとも,①固まり始めた時刻,②最後に正常に操作できた時刻,③強制終了又は再起動の時刻,④マウス・キーボード・画面・音声・ネットワークのどれが止まったかを記録する。
時計が見えなければ,別の端末で時刻を撮影し,後で時刻帯を復元できるようにする。
2 最後のコマンドと処理の状態
AIエージェント又はターミナルを使っていた場合は,最後に実行を開始したコマンド,対象の種類,対象範囲及び完了表示の有無を記録する。
コマンド本文に依頼者名,事件名,ファイル名又は保存先が含まれるときは,公開用のメモへそのまま写さず,機密性を保った調査記録に保存する。
ファイル検索では,ファイル名だけか内容まで検索したか,対象がローカルSSDかクラウド同期領域か,大きなPDF又は画像を含むかを区別する。
一つのセッションであっても,対象範囲が広ければ「セッション数が少ないから軽い」とはいえない。
3 外部操作の成否
メール送信,電子提出,クラウド保存,公開又は支払等を伴う作業では,PCの原因調査とは別に,外部側で処理が完了したかを確認する。
成否不明の操作を直ちに再実行すると,二重送信又は二重処理の原因になる。
第4 パフォーマンスモニターを「飛行記録装置」として使う
1 事前に記録を始める理由
タスクマネージャーは現在の状態を見るには便利であるが,再起動後にフリーズ直前の推移を復元する用途には限界がある。
Windowsのパフォーマンスモニターでは,データコレクターセットを使ってCPU,メモリ,ディスク,ネットワーク及びプロセスのカウンターを継続記録できる。
記録間隔を短くし過ぎたり,すべてのカウンターを無制限に保存したりすると,調査用ログ自体が容量とI/Oを消費する。
保存上限,循環ログ,保存先及び再起動後の自動開始の有無を決め,通常時の記録と比較できるようにする。
2 優先して見るカウンター
| 観点 | 主なカウンターの例 | 読み方 |
|---|---|---|
| CPU | Processor Informationの% Processor Time,Process V2の% Processor Time | 全体が高いのか,特定プロセスが高いのかを分ける |
| メモリ | Available MBytes,% Committed Bytes In Use,Paging File | 物理メモリの余裕,コミット上限及びページングの推移を見る |
| ディスク | Disk Bytes/sec,Avg. Disk sec/Transfer,Current Disk Queue Length | 転送量だけでなく,待ち時間とキューを同時に見る |
| プロセス別I/O | Process V2のIO Read Bytes/sec,IO Write Bytes/sec | AIアプリ,検索,同期,バックアップ等のどのプロセスが読み書きしたかを見る |
| ネットワーク | Network InterfaceのBytes Total/sec | クラウド同期又は遠隔操作の通信と時刻を照合する |
単一の数値だけで原因を断定せず,通常時との差,変化の順序及び同じ時刻の他のカウンターを見る。
Windows 11では,同名プロセスの識別上の問題を減らすため,利用できる環境ではProcess V2を優先する考え方がある。
3 最後のサンプルの後に空白がある場合
フリーズ直前に記録が途切れている場合は,ログ収集プロセスも書込みできなくなった可能性がある。
最後に記録されたプロセスが必ず原因とは限らず,「最後に記録できた状態」と「その後に生じた停止」を分けて評価する。
第5 イベントビューアー及びWindows Error Reportingを読む
1 Event 41及び6008
Kernel-Power Event 41は,Windowsが正常なシャットダウンを完了しないまま再起動したことを示す手掛かりである。
EventLog 6008は,前回のシャットダウンが予期されていなかったことを示す。
Microsoftは,Event 41だけでは何が起きたかを明示する十分な情報がない場合があると説明している。
したがって,Event 41又は6008だけで,電源,メモリ,GPU又は特定のAIアプリを原因と確定してはならない。
2 Application,System及び信頼性履歴
Applicationログでは,Application Hang,障害アプリ名及びWindows Error Reportingを確認する。
Systemログでは,BugCheck,Display,WHEA,Disk,storport,Ntfsその他の同時刻の警告・エラーを確認する。
信頼性履歴は,アプリ停止,Windows障害及び更新の時系列を一覧しやすいが,そこに表示されない事象が存在しないとは限らない。
各記録の発生時刻,対象プロセス及び報告IDを元のログと照合する。
3 より詳しい記録が必要な場合
再現性があり,通常の性能カウンターでは原因を絞れない場合は,Windows Performance RecorderでETW記録を取得し,Windows Performance AnalyzerでCPU,ディスクI/O,ハードフォールト,DPC及びスレッド待ちを調べる方法がある。
記録量と解析難度が上がるため,まず軽量な継続ログで発生時刻と資源の種類を絞ってから使うのが実務的である。
第6 最後のコマンドと性能ログを突き合わせる
| 同じ時刻の状況 | 有力になる原因候補 | 追加確認 |
|---|---|---|
| 一つのAIセッションだけで,その子プロセスの読込み又は書込みが急増 | 大きなPDF,OCR,全文検索,ビルド又はテスト | 最後のコマンド,対象範囲,子プロセス,完了表示 |
| 複数のAI,ブラウザー又は開発プロセスがCPU・コミットを同時使用 | 並列処理又は残存プロセス | 開始時刻,親子関係,終了後も残ったプロセス |
| クラウド同期又はバックアップのプロセスがディスク・ネットワークを継続使用 | 同期,バックアップ又は再走査 | 同期状態,対象フォルダー,変更件数,空き容量 |
| ウイルス対策又は検索インデックスが大量に読み込む | スキャン又は索引作成 | スケジュール,同時刻の対象,通常時との比較 |
| CPU・メモリ・ディスクに余裕がある一方,Display又はLiveKernelEventがある | GPU又は表示系 | ドライバー履歴,直接操作と遠隔操作の比較 |
| 性能ログが途切れ,Event 41又は6008だけが残る | ハードハング,電源断その他 | BugCheck,ダンプ,温度,電源,メモリ診断 |
これは原因候補を並べるための表であり,相関だけで因果関係を確定するものではない。
同じ処理を通常時にも実行し,負荷が再現するかを安全な範囲で比較する。
第7 再現試験は一度に一つだけ変える
複数の設定,ドライバー,BIOS,セキュリティソフト及び保存先を同時に変更すると,改善しても原因を特定できない。
まず通常時の基準ログを取り,①AIセッション数,②対象フォルダー,③大きなPDFの有無,④クラウド同期の一時停止,⑤直接操作と遠隔操作の別等を一項目ずつ比較する。
二台のPCでBIOSの世代が同程度でも,一台だけが頻繁に固まるなら,古いBIOSという共通点だけでは差を説明できない。
メモリ容量,SSD,常駐処理,クラウド同期,GPU・ドライバー,電源・温度及び実際の作業内容の差を先に確認する。
ウイルス対策の広い除外又は停止は,原因調査のための恒久対策にしない。
Microsoftは,Defenderの除外が保護の隙間を作るため,特定の問題を解決する場合に限定し,慎重に使うよう案内している。
第8 クラウド同期が関係するときの注意
クラウド上のファイルを広く検索すると,未取得のファイルのダウンロード,キャッシュ,索引作成及び同期が連続して起きることがある。
ローカルの検索プロセスだけでなく,クラウド同期プロセスのディスク・ネットワーク使用量も同じ時刻で確認する。
同期の不具合が疑われても,直ちにアカウントの切断,キャッシュ削除又は再インストールを行うと,未同期ファイル又は診断材料を失うおそれがある。
Googleは,アカウントを切断するとLost and Foundに移されたファイルが削除される場合があると案内しているため,エラー一覧,未同期ファイル及び必要なローカルコピーを先に確認する。
第9 ログに含まれる秘密情報を守る
性能ログ,イベントログ,コマンド履歴及びスクリーンショットには,ユーザー名,保存先,事件名,依頼者名,文書名,URL,端末名又はアカウント識別子が含まれることがある。
外部へ相談するときは,原本を保全したうえで作業用コピーを作り,原因分析に不要な識別情報を削除又は置換する。
公開記事,SNS又は一般向け質問には,個別事件の文書名,実パス,発生日時及び実測ログを載せない。
匿名化後も,複数の情報の組合せによって特定されないかを確認する。
第10 確認用チェックリスト
① 固まり始めた時刻,最後に正常だった時刻及び再起動時刻を記録したか。
② アプリだけ,表示だけ,遠隔接続だけ又はWindows全体の停止かを分けたか。
③ 最後のコマンド,対象範囲及び完了表示の有無を確認したか。
④ CPU,メモリ,ディスク,プロセス別I/O及びネットワークを同じ時刻で比較したか。
⑤ Event 41・6008を原因そのものと誤認せず,Application・Systemログと突き合わせたか。
⑥ クラウド同期,バックアップ,ウイルス対策及び検索インデックスを確認したか。
⑦ 一度に一項目だけ変えて通常時と比較したか。
⑧ 外部操作の成否を確認し,成否不明の操作を重ねていないか。
⑨ ログの原本と作業用コピーを分け,秘密情報を保護したか。
第11 関連記事
PCフリーズの原因をメモリ,CPU,SSD,GPU及び並列処理に分ける考え方は,「Claude Code・Codexでパソコンがフリーズする原因-メモリ8GB・16GB・32GB・64GBの違い(AI作成)」を参照されたい。
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期限管理,送信成否及び別PCからの安全な再開は,「弁護士・税理士のAI業務用PCがフリーズしたときの初動-期限管理,送信成否,ログ保全及び安全な再開(AI作成)」を参照されたい。
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同期とバックアップの違いは,「サーバー・NAS・クラウドストレージ・DNSの違い―法律事務所のIT基礎(AI作成)」を参照されたい。
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第12 出典・参考資料
① Microsoft Learn「Scenario guide: Troubleshoot performance problems in Windows」
https://learn.microsoft.com/en-us/troubleshoot/windows-server/performance/troubleshoot-performance-problems-in-windows
② Microsoft Learn「Performance Counters Tools」
https://learn.microsoft.com/en-us/windows/win32/perfctrs/performance-counters-tools
③ Microsoft Learn「Collecting Performance Data」
https://learn.microsoft.com/en-us/windows/win32/perfctrs/collecting-performance-data
④ Microsoft Learn「Advanced troubleshooting for Event ID 41」
https://learn.microsoft.com/en-us/troubleshoot/windows-client/performance/event-id-41-restart
⑤ Microsoft Learn「Windows Performance Recorder」
https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/wpt/windows-performance-recorder
⑥ Microsoft Learn「Exclusions in Microsoft Defender Antivirus」
https://learn.microsoft.com/en-us/defender-endpoint/microsoft-defender-antivirus-exclusions-overview
⑦ Google Drive ヘルプ「Fix problems in Drive for desktop」
https://support.google.com/drive/answer/2565956
⑧ Anthropic「Claude Code CLI reference」
https://docs.anthropic.com/en/docs/claude-code/cli-usage
⑨ OpenAI Help Center「Using Codex with your ChatGPT plan」
https://help.openai.com/en/articles/11369540-using-codex-with-your-chatgpt-plan