メインコンテンツへスキップ
       

AIで依頼者への質問事項を作る方法―既知事項の再質問を避け,裁判例・税務資料と不足事実を結び付ける(AI作成)

第1 AIには質問の設計を任せ,専門判断は分ける

1 この方法が役立つ場面

相手方の準備書面を受け取ったとき,申告の前提を確認するとき,医療記録と本人の説明が食い違うときには,依頼者へ何を尋ねるかが作業の出発点になる。
AIには,記録の索引作り,未確認点の抽出及び質問案の整理を任せられるが,回答内容の真偽や法的・税務上の結論まで確定させることはできない。
本記事は,弁護士・税理士が資料を照合した上で質問を選ぶための実務上の提案であり,特定の製品の正確性や質問による立証の成功を保証するものではない。

質問数を増やすことより,記録で既に分かることを聞き直さず,判断を左右する不足事実を確認することを目的とする。
資料の記載と真実,依頼者の体験と専門家の評価,質問票と内部の調査計画を分けることが重要である。
基準日は令和8年10月20日とし,裁判所の判決本文と国税庁の公表資料を用いて,質問への変換方法を説明する。

2 既存のAI活用法との違い

AIに資料・手法・照合先を指定する一般的な依頼方法は,AIに頼む仕事を深くする4つの問いで説明している。
本記事では,そこから一歩進めて,記録と判断の根拠を,依頼者が経験・観察した事実への質問に変える。
裁判例や公的資料を列挙するだけでなく,その資料のどの判断要素を,どの質問が確かめるのかまで対応させる。

第2 質問を作る前に既知事項を除く

1 当事者,対象時期及び原資料を確定する

訴状・準備書面の当事者欄と代理人欄から,誰のための質問かを確認する。
本訴と反訴がある場合には,書面中の原告・被告という呼称だけで帰属を決めない。
税務でも,個人と法人,本人と親族,取引先,対象年分又は事業年度を分ける。

既存ノートは,資料の所在や争点を探す索引として使う。
結論を左右する引用,金額,日付,提出状況及び食い違いは,原資料の該当箇所へ戻って確認する。
受付や提出の記録,専門家が明示した取扱い等と,単にファイル名に日付や号証番号があることを混同しない。

2 記載の確認と真実の確認を分ける

相手方の書面に「仕事に支障はない」と書かれていても,確認できたのは相手方がそう述べたという事実である。
診療録,帳簿,メール又は本人のメモに記載があることも,内容が全て正確であることとは別である。
情報源,記録時期,直接見聞きした範囲,他の資料との整合を区別する。

整理する欄書く内容質問の扱い
資料で確認できること文書名,頁,記載,作成者及び対象時点同じ事項の再入力を求めない
意味・根拠が未確認のこと説明の対象範囲,観察条件又は記載の経緯未確認部分だけを尋ねる
専門家が確認すること法律・医学・税務の評価,資料から可能な計算依頼者への質問に置き換えない
取得していない資料存在の根拠と,分かっている所在内容を既知の事実として使わない

「生活に問題はなかった」との説明が記録されている場合,その説明を取り消させる聞き方は避ける。
どの生活場面を指したのか,援助を受けていたか,当時できていたことは何かという,不足する範囲を確認する。
資料の矛盾に見えるものも,時点,対象,観察条件又は記憶の違いで説明できることがある。

第3 裁判例・税務資料を具体的な質問に変える

1 裁判所自身の判断と,当事者の主張を分ける

判決では,事件名,裁判所名,裁判年月日,事件番号を確認した上で,裁判所自身の認定・判断を読む。
裁判要旨,解説,当事者の主張又は上告理由を,裁判所の判断と取り違えない。
有料データベースを用いた場合も,検索結果を見た範囲と判決本文を読んだ範囲を分け,未確認の掲載誌・頁や事件番号を補わない。

例えば,最高裁判所第二小法廷昭和49年7月19日判決は,昭和44年(オ)第594号,民集28巻5号872頁の判決である。
裁判所は,無償で担う家事労働にも財産上の利益があるとして,死亡による財産的損害の評価を検討した。
本記事では,判決本文の印字1~2頁を確認している。

同判決は死亡事故の事案であり,傷害事故における休業割合や家事代行費を直接決めたものではない。
質問へ変換する際も,同判決が具体的な質問方法を命じたと説明せず,家事の対象と内容を確認する必要性を,本記事の実務上の提案として示す。
年齢,性別又は家族の人数だけで家事量を決めず,事故前に誰のために何をしていたかを尋ねるのである。

2 法律の結論を本人に答えさせない

「家事労働能力を何%失いましたか」と尋ねても,判断に必要な事実が集まるとは限らない。
代わりに,調理,洗濯,掃除等のうち,再開した作業と時期,誰かが代わった工程,休憩や確認を要した場面を尋ねる。
できなかった場面と,援助なしでできた場面の双方を確認する。

家事休業損害の基礎収入,代替費用との重複及び期間別の評価は,兼業家事従事者の休業損害と家事代行費で説明している。
医学的診断や障害等級についても同様であり,依頼者には実際の経験を尋ね,診断の当否や検査の医学的意味を回答させない。

3 税務では支出の具体的な使い方を尋ねる

国税庁のNo.2210 必要経費の知識は,令和8年4月1日現在の法令等に基づく説明である。
店舗併用住宅の費用等について,家事と業務が混在する場合の必要経費の取扱いを,取引記録等から区分できる金額との関係で説明している。
これは国税庁の説明資料であり,裁判所の判決又は個別相談への確定的回答ではない。

ここから直ちに「経費は何%ですか」と尋ねるのではなく,対象期間,実際に使った場所・設備,使った人,営業・私用の場面,記録の有無を確認する。
帳簿や請求書から算出できる金額は専門家が計算し,依頼者には数字だけから分からない使い方や経過を尋ねる。
顧客の回答だけで税区分を確定せず,適用年分の法令・通達等と原資料を税理士が照合する。

判例・裁決・質疑応答事例の前提が本件と違うときは,違いが判断に影響するかを検討する。
見つからない資料を件数合わせで挙げたり,本文を読めなかった裁決を確認済みとして引用したりしない。

第4 依頼者が答えられる聞き方にする

1 体験,伝聞,資料及び推測を区別する

質問の冒頭で,分からないことや曖昧な記憶はそのまま答えてよいと伝える。
直接覚えていること,人から聞いたこと,資料を見て知ったこと及び推測を分けてもらう。
正確な日付が分からないときは,季節,通院,営業再開又は他の出来事との前後関係など,覚えている手掛かりを尋ねる。

家族や従業員の報告と本人の記憶が違う場合に,一方へ回答を合わせてもらわない。
別々の人が,どの時点の何を見聞きしたかを確認する。
専門家が原資料を照合すべき点を,本人の記憶で埋めてもらうことも避ける。

2 不利な事実と別の説明も確かめる

「事故後は全てできなくなりましたか」という問いより,できた作業,できなかった作業,援助があればできた作業を分ける問いが適している。
回復,症状の変動,事故前にもあった失敗,他の出来事による支障も,同じ基準で確認する。
売上や収入の変化については,体調だけでなく,客数,人手,仕入れ,価格又は家庭の事情等,本人が把握していた別の理由も尋ねる。

運転や旅行ができたという事実を,一切の支障がない証拠とも,援助があったに違いない事実とも決め付けない。
何を自分で行い,何を他の人に頼み,問題なくできたことと困ったことがそれぞれ何かを確認する。
高次脳機能障害の医学的・労務上の検討は,7級4号の主張立証方法で扱っている。

3 条件付きの追加質問をまとめる

全ての依頼者に同じ資料一覧や計算表を埋めてもらう方法は採らない。
既に未提出資料がないと確認できている場合,その有無を包括的に聞き直さない。
未取得の特定資料が判断に必要であるときだけ,その所在又は情報源を知っているかを尋ねる。

追加質問は,「援助を受けていた場合だけ」「住所の異動と生活場所にずれがあった場合だけ」など,回答に応じた条件を付ける。
質問に挙げた例が当てはまらないときは,その旨で足りるようにする。
優先する質問を示しても,他の重要な争点を黙って落とさない。

第5 完成した質問票を3部構成で示す

1 前提,関連資料,質問を分ける

質問票の大項目は,次の3部にまとめる方法がある。
第1では依頼者・主要争点,記録で確認できる前提,回答方法と確認範囲を示す。
第2では関連する裁判例・税務資料の判断要素と,本件との共通点・相違点を示す。
第3に全ての質問を集める。

第3では,争点別に「(家事の実態と事故後の回復経過)」「(店舗での仕事と援助の実態)」等の括弧書きの中見出しを置く。
中見出しに番号を付けず,質問は最後まで通し番号にする。
各質問の下に「⑴ 質問内容」「⑵ 回答と判断の関係」を置けば,依頼者も専門家も質問の目的を追いやすい。

2 質問と判断の関係の記載例

次は,実在の依頼者についての記載ではなく,質問の構造を示す架空の例である。
調理や洗濯を担当していたこと自体は資料で分かっているが,事故前後の分担と再開時期が未確認であると仮定している。

第3 質問事項

(家事の実態と事故後の回復経過)

1 事故前の分担と,退院後の再開【優先】

⑴ 質問内容
普段の一週間で,調理と洗濯のどの工程をご自身が担当し,どの工程を家族が担当していましたか。
退院後は,いつ頃からどの工程を再開し,誰が何を代わっていましたか。
時間や休憩を要したこと,援助なしでできたことも分けて教えてください。

⑵ 回答と判断の関係
家事をしていたという既知の事実を聞き直さず,事故前の家事量と,期間別の支障を具体化するための質問である。

(店舗兼住宅の使い方)

2 業務と私用の利用状況

⑴ 質問内容
対象年分に,どの部屋や設備を,誰がどのように営業と私生活に使っていましたか。
時期による使い方の変更や,利用状況が分かる記録があれば,知っている範囲で教えてください。
請求書にある金額の再計算や,経費になる割合の判断は求めません。

⑵ 回答と判断の関係
記録にある支払額と,金額だけでは分からない実際の利用を分け,税理士が必要経費の取扱いを検討する基礎事実を確認するための質問である。

この例は,家事労働の休業損害と,所得税における家事関連費を,同じ法的概念として扱うものではない。
別の判断問題でも,結論を本人に答えさせず,経験した事実へ問いを変える手順が共通することを示している。
飲食店の援助の実態は,嗅覚障害・味覚障害の記事,帳簿と稼働の対応は,個人事業主等の損害賠償の記事も参照されたい。

3 依頼者向けの完成文と内部記録を分ける

依頼者向けの質問票には,回答に必要な前提と質問の目的を示す。
専門家が行う医療照会,法律調査,帳簿照合や訴訟方針の検討は,内部記録へ分ける。
必要な資料の限界や回答の前提まで隠す趣旨ではなく,依頼者に答えられない確認事項を押し付けないための区別である。

AIに完成文を出力させる場合は,保存先のリンクや抜粋だけでなく,全質問を通し番号で示すよう指定する。
後から体裁だけを直すときは,質問の実質,順序,判断との関係及び留保を維持し,省略や新しい評価の混入がないかを確かめる。

第6 共有前に原文と問いの対応を点検する

1 専門家が確認する事項

重要な前提の引用は,文書名,印字頁,原文及び作成者を再確認する。
引用の実在が確かめられても,その内容が真実であることや,法律上の評価まで確認できたことにはならない。
既出の資料に書かれたことを機械的に除外せず,意味や経過に不足があれば,その不足だけを質問する。

点検対象確認すること
質問の必要性既存資料で答えが出ていないか,回答が判断を変えるか
回答可能性本人の経験・観察で答えられるか,専門判断や計算を求めていないか
中立性不利な事実,改善した場面,別の説明も確認しているか
原典との対応裁判所の判断,当事者の主張,公的解説を分け,本件との差を示したか
完成文全質問が第3にあり,番号が連続し,判断との関係と必要な留保が残っているか

2 秘密情報と入力範囲を確認する

AIへ渡す前に,資料の内容,利用目的,入力先,保存・学習・共有等の条件を確認する。
匿名化したつもりでも,出来事の組合せから関係者が分かることがあるため,入力する範囲を必要性に応じて選ぶ。
本記事の例を,実在の相談記録を外部AIへ入力してよいという包括的な許可として扱わない。

第7 出典と関連記事

1 一次資料と確認範囲

①最高裁判所第二小法廷昭和49年7月19日判決(昭和44年(オ)第594号,民集28巻5号872頁)。
裁判所の書誌情報と判決本文の印字1~2頁を確認した。
死亡事故の判断から,傷害事故の休業割合や具体的な質問方法まで直接導いたものではない。

②国税庁No.2210 必要経費の知識。
同ページの概要及び注意事項の家事関連費の説明を確認した。
同ページの基準日は令和8年4月1日であり,個別の年分や事実関係への適用は別に確認する。

本記事の質問例,整理表及び3部構成は,これらの資料を踏まえた実務上の提案である。
特定の裁決を本文確認済みの根拠として用いておらず,裁判例・通達等の網羅的な調査を完了したとするものでもない。

2 関連する実務記事

AIに頼む仕事を深くする4つの問い
兼業家事従事者の休業損害と家事代行費
高次脳機能障害の7級4号の主張立証方法
嗅覚障害・味覚障害の後遺障害等級
会社役員・個人事業主・開業医の交通事故の損害賠償