第1 この記事で扱う公用車と資料の時点
1 平成26年取得の長官車
令和元年6月21日付けの最高裁判所の情報提供資料では,最高裁判所長官の公用車として,トヨタ・レクサスLS600hL,取得年月日2014年3月24日,取得価格1543万5900円が示されている。
本記事は,この車の売買契約書と調達関係文書を読み,購入額と下取り額の関係,装備の内訳,入札の方法を整理するものである。
これらは平成25年度の調達と令和元年の開示に関する資料であり,現在の長官車の車種や価格を示すものではない。
他の最高裁判所裁判官等の車種・取得価格は,既存の総合記事にまとめている。
最高裁判所裁判官等の公用車:
https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/06/25/public-car/
2 原資料の読み分け
取得年月日と取得価格は情報提供資料の別紙,交換差金と付属品は売買契約書の別紙,入札の日程と評価方法は入札説明書で確認する。
契約日,取得年月日,車検証の登録年月日は,同じ意味の年月日として扱わない。
長官車の情報提供資料・車検証(PDF実頁1〜4頁):
https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2019/06/最高裁判所長官の公用車の調達価格,調達時期及び車種が分かる文書,並びに車検証.pdf
平成25年12月24日付け売買契約書(PDF実頁2〜8頁):
https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2019/09/最高裁判所長官の公用車に関する売買契約書(平成25年12月24日付).pdf
入札説明書等の調達関係文書(PDF全35頁):
https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2019/10/最高裁判所長官の公用車の調達関係文書(入札説明書,性能等証明書,開札経過調書等).pdf
第2 取得価格と交換差金は異なる
1 契約書別紙の金額
売買契約書の別紙(PDF実頁8頁)には,新車の価額と,交換に出すセンチュリーの価額を分けて記載したうえで,両者の差額が示されている。
取得価格1543万5900円と交換差金1500万30円を取り違えると,車の価額と契約上の差額を混同することになる。
| 区分 | 金額 | 資料上の意味 |
|---|---|---|
| 新車本体 | 1371万4286円 | レクサスLS600hL本体の税抜額 |
| 付属品計 | 98万6572円 | 別紙に列挙された装備等 |
| 消費税計 | 73万5042円 | 新車本体・付属品に係る記載額 |
| 新車の合計 | 1543万5900円 | 情報提供資料の取得価格と一致 |
| 下取り車の合計 | 43万5870円 | センチュリーの価額・消費税込み |
| 交換差金 | 1500万30円 | 新車合計から下取り合計を控除した額 |
2 下取り車と支出の範囲
交換に出す車は,契約書別紙に「トヨタ センチュリー」,年式「10」,型式「E-GZG50」と記載されている。
その価額は税抜41万5115円,消費税2万755円,合計43万5870円である。
交換差金は契約書上の金額であり,支払済みであることや,その後の維持管理費を含む総支出までをこの契約書だけで証明するものではない。
入札説明書の第7の(1)(PDF実頁4頁)も,入札金額に含める諸経費から,自賠責保険料と新車のリサイクル料金を除いている。
第3 付属品98万6572円の内訳
1 別紙に記載された7項目
付属品は次の7項目であり,金額の合計は98万6572円となる。
スタッドレスタイヤとフィルムは一つの項目として記載されているため,それぞれの価格に分けることはできない。
| 付属品 | 別紙記載額 |
|---|---|
| フロアマット | 11万円 |
| ハーフシートカバー(2セット) | 12万円 |
| 読書灯 | 5万2000円 |
| サイドバイザー | 5万円 |
| スタッドレスタイヤ(アルミホイール付き4本セット)・フィルム | 42万8572円 |
| SPミラー | 3万6000円 |
| フラッグポール一式 | 19万円 |
2 契約書から分からない装備
契約書の型式表記だけから,後席が独立した2座であるなどの座席構成を断定することはできない。
開示された平成31年3月4日付け車検証の乗車定員欄は5人である。
また,付属品の名称だけから,警備上の特殊仕様や具体的な運用方法を推定することも避けるべきである。
本記事の装備一覧は,開示された別紙の記載事項に限っている。
第4 入札の日程と総合評価
1 公告から納入期限まで
入札説明書は,乗用自動車の交換購入について5区分の案件を扱っている。
長官車に対応する区分は,排気量4900cc以上5000cc未満のハイブリッド乗用自動車であり,他の排気量区分やワゴン車の条件と混同しないことが必要である。
| 手続 | 日時・期限 |
|---|---|
| 入札公告掲載 | 平成25年10月11日 |
| 供給物審査願の提出期限(冒頭の日程表) | 平成25年11月11日午後5時 |
| 入札書の締切り | 平成25年12月2日午後5時 |
| 長官車区分の開札 | 平成25年12月3日午後1時30分 |
| 売買契約書の日付 | 平成25年12月24日 |
| 納入期限 | 平成26年3月31日 |
| 情報提供資料に記載された取得年月日 | 平成26年3月24日 |
入札説明書冒頭の日程表と,本文第12の(5)の曜日表記には整合しない箇所がある。
本表は冒頭の日程表により期限を示したものであり,資料の表記をすべて整合しているものとして転記していない。
2 最安値だけで落札者を決める方式ではない
入札説明書第11(PDF実頁6頁)は,価格と環境性能を総合的に評価して落札者を決める方式であると定めている。
予定価格の制限内であること,仕様書の要求要件を満たすこと,無効入札に当たらないことを前提に,所定の計算方法による総合評価点が最も高い者を落札者とする構造である。
したがって,車種の小売価格だけを並べても,本件入札における落札者の選定過程を説明したことにはならない。
環境性能の評価項目,要求仕様,交換に出す車の評価を,それぞれの資料に即して確認する必要がある。
第5 この調達例から確認できる範囲
1 確定できる事実と評価を分ける
本件資料によって確認できるのは,当時の取得価格,契約書上の交換差金,列挙された付属品,入札説明書の条件等である。
この車を選んだ政策的理由,予算上の妥当性,その後の更新状況や総維持費までが,同じ資料から当然に分かるわけではない。
2 関連する制度の記事
最高裁判所事務総局経理局の事務分掌:
https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/03/09/keirikyoku/
平成29年7月1日施行の裁判所会計事務規程及び関連通達:
https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/04/18/saibansho-kaikei/
これらは,事務を担当する組織や会計規程を調べるための関連記事である。
平成25年度の個別調達に,後年の規程をそのまま適用したと断定する趣旨ではない。