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休職中の賞与・退職金はどうなるか―勤続算入,評価,退職区分と退職所得控除(AI作成)

第1 休職中の無給だけでは,賞与と退職金は決まらない

1 この記事の対象と結論

私傷病で休職した社員について,「休職中は無給」「休職期間は勤続に算入する」という就業規則の記載だけから,賞与や退職金の額まで決めることはできない。
毎月の賃金,昇給,賞与,退職金の算定及び税務上の勤続年数は,それぞれの根拠に沿って確認する必要がある。

本記事は,令和8年10月14日現在の法令及び公表資料に基づき,民間企業の私傷病休職に伴う賞与・退職金の確認方法を整理する。
公務員の退職手当,役員退職金,産前産後休業・育児介護休業の特別な不利益取扱い規制及び業務上の傷病は,別の検討を要する。
以下の資料確認や計算表の作り方は,個別の規程を正確に適用するための実務上の提案である。

2 会社が払う額と,税務上の計算を分ける

最初に,会社が契約・規程に基づきいくら支払うべきかを確認する。
次に,支払う金銭が給与所得か退職所得か,退職所得控除に用いる勤続年数が何年かを確認する。
会社の退職金算定で休職期間を除いていても,その年数を税務計算へそのまま転記してはならない。

第2 就業規則と各制度の規程を一緒に読む

1 制度の根拠と適用される版

労働契約法7条は,合理的な労働条件を定めた就業規則の周知と,個別の合意との関係を定めている。
本則だけでなく,賃金規程,等級・評価規程,賞与規程,退職金規程,個別の雇用契約及び労働協約を確認する。
社員区分ごとの適用対象と,休職時・評価時・支給時の各版を対応させることが重要である。

労働基準法89条は,常時10人以上の労働者を使用する使用者について,就業規則の作成・届出を定める。
退職手当の定めをする場合の適用範囲・計算・支払方法等は同条3号の2,臨時の賃金等の定めは4号の記載事項である。
厚生労働省のモデル就業規則67頁・75頁も,賞与・退職金の制度を必ず設ける義務とは区別して,制度を設けた場合の条件の明確化を説明している。

2 同じ「勤続」でも用途を確認する

確認する用途見る規程・資料混同しやすい点
休職できる期間の区分休職規程,入社日,区分判定日支給額の算定年数とは限らない
昇給・等級・評価昇給条件,評価期間,等級規程在籍していることと評価対象の実績は別である
賞与算定対象期間,在籍条件,査定・出勤係数月給が無給でも賞与まで当然にゼロとはならない
会社の退職金勤続除算,ポイント,退職区分,支給率本則の勤続算入条項だけで算定を完結させない
退職所得控除実際の勤務関係,過去の退職金,税法・通達会社の除算後の年数をそのまま使わない

本則が勤続算入を定め,別の制度が休職期間の除算やポイントの停止を定めている場合は,それぞれの対象と,相互の参照関係を確認する。
単に「別規程があるから優先する」と決めず,契約内容,条項の整合性,周知及び変更の経緯を検討する。
適用される就業規則の最低基準を下回る個別合意には,労働契約法12条の問題も残る。

第3 休職中の賞与を確認する順序

1 無給条項と賞与の支給条件

賞与では,①具体的な支給条件・算式,②算定対象期間,③支給日に在籍すること等の条件,④休職者の特則,⑤会社業績と個人評価を確認する。
「休職中の給与は支給しない」という条項が賞与にも及ぶかは,用語の定義と賞与規程との関係を読む必要がある。
無給休職という名称だけから,算定期間中に勤務した部分や既に成立した賞与請求権まで失われたと判断しない。

厚生労働省のモデル就業規則50条は,算定対象期間と支給日を分け,会社業績と勤務成績等を勘案する規程例を示している(67頁)。
これは各社へ自動的に適用される法律上の算式ではない。
自社の規程に在籍条件がある場合は,基準日,退職日及び例外を正確に対応させる。

2 「別途取扱い」の内容を探す

休職者の賞与について「別途取り扱う」「特例による」とだけ定めている場合は,その記載を直ちに不支給と読み替えない。
特例の決裁資料,計算要領,本人への説明,同種の過去の取扱い及び支給実績を確認する。
特例が見つからない場合も,担当者の説明だけで結論を固定せず,規程からどこまで算定でき,どこが未確定かを分ける。

計算表には,基準額,会社業績の係数,個人評価の係数,出勤に関する係数及び実際の支給額を別欄で示すとよい。
同じ休職期間が複数の要素へどう反映されたかを追うことができる。

3 欠勤の扱いと,実際の仕事への評価

休職した事実,勤務した期間の成果及び復職後に配慮された仕事の目標は,区別して確認する。
評価期間の途中で勤務時間・担当業務を変えた場合には,変更後の目標と評価方法を誰がいつ説明したかも確認する。
休職したという一事を,協調性不足や仕事への意欲不足と置き換えないことが重要である。

出勤係数と個人評価の双方へ休職が反映されても,重なりがあるという理由だけで直ちに違法とはいえない。
反対に,規程の算式に入っているだけで,全ての評価や減額が正当化されるわけでもない。
各要素の目的,契約上の根拠,前提事実及び不利益の程度を具体的に検討する。

第4 休職期間満了時の退職金を確認する順序

1 勤続年数,基本給及びポイント

厚生労働省のモデル就業規則55条は,基本給と勤続年数による支給率を用い,会社都合の場合を除く休職期間を算定年数に入れない規程例を示している(75頁)。
同条の解説は,功績等を考慮する方法も含め,各企業の実情に応じて決めることを説明している(76頁)。
モデルの除算条項や支給率が,すべての会社の当然の基準になるわけではない。

ポイント制であれば,勤続に対応するポイントと,役職・等級等に対応するポイントについて,休職中の加算,停止,減算及び復職後の再開をそれぞれ確認する。
合計ポイントだけでなく,年度・月ごとの増減と根拠条項を台帳でたどると,勤続算入と加算停止を混同せずに済む。
役職を外れたことが,既に積み立てたポイントの減少まで意味するかも,別に確認する必要がある。

2 自然退職と自己都合の支給率

休職期間満了による自然退職と,本人が退職を申し出る自己都合退職は,同じ意味の用語ではない。
退職金規程がどの退職事由にどの支給率を結び付けているか,その定義と本則からの参照を確認する。
「解雇ではないから自己都合の率でよい」「病気だから必ず会社都合の率になる」といういずれの説明も,一律にはできない。

規程に区分がない場合は,自然退職,普通解雇,退職勧奨及び合意退職のうち,実際にどの事由で雇用が終了したかを確認する。
その上で,規程の解釈,会社の説明及び従前の取扱いを検討する。
雇用保険の離職理由の認定と,会社の退職金規程による支給区分も,同じ判断とは限らない。

3 雇用終了の効力と,金額の計算

退職金の計算書が作られたことだけで,休職期間満了による雇用終了が有効だったと確定するわけではない。
適用規程,満了日,復職の申出,医師の意見及び配置可能性等は,雇用終了の問題として別に検討する。
満了時の条件と通知の確認は,休職通知書に記載すべき事項の記事を参照されたい。

第5 退職所得控除の勤続年数は別に計算する

1 会社の除算と税務上の勤続年数

所得税法施行令69条1項1号は,原則として,支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間により勤続年数を計算する。
所得税基本通達30-6・30-7は,会社が支給額の計算期間を換算していても実際の継続期間を用い,長期欠勤・休職の期間も含めることを説明している。
ただし,他に勤務するための休職は区別され,過去に支払われた退職金等がある場合にも別の確認が必要である。

したがって,会社の退職金額の算定に使う勤続年数と,退職所得控除に使う勤続年数は,同じ数字になるとは限らない。
この区別は,会社の休職除算条項が有効であるかという労働法上の評価を省略するものでもない。

2 前提を限定した計算例

例えば,雇用関係が途切れず10年2か月続き,その中に私傷病休職8か月があるとする。
他の勤務先への休職,過去の退職金及び期間重複等がなく,退職金額の算定では有効に適用される規程によって休職8か月を除く,という前提の例である。
会社の算定対象期間は9年6か月となる一方,退職所得控除に用いる期間は10年2か月となる。

同令69条2項は,1年未満の端数を1年として勤続年数を計算するため,この税務上の勤続年数は11年となる。
所得税法30条3項1号による20年以下の控除額は40万円に勤続年数を乗じるので,この例では440万円である。
会社の算定年数を税務へ転記すると,控除額を誤るおそれがある。

これは期間と控除額の違いを示す例であり,会社の退職金額や最終税額を算定したものではない。
短期退職手当等,役員期間,過去の一時金,障害に直接基因する退職等がある場合には,それぞれの特則を確認する。

第6 賞与と退職金の税務処理・引継資料

1 退職後に払う賞与を退職金へまとめない

所得税法28条1項は,給与所得に賞与を含めている。
国税庁「No.2508 給与所得となるもの」も,賞与を給与所得として説明している。
私傷病休職者への支払であるという理由だけで,賞与を非課税にしてはならない。

所得税基本通達30-1は,退職時・退職後の支払でも,在職者へ支払う賞与等と同性質のものは退職手当等に当たらないとしている。
最終給与,賞与及び退職金を同じ日に送金する場合も,支払の根拠と性質を項目ごとに分けて処理する必要がある。
会社の支払明細に「退職精算金」とまとめられている場合も,その名称だけで所得区分を決めない。

2 弁護士と税理士・給与担当者が共有する事項

弁護士が支給条件・減額・退職区分の根拠を確認し,税理士又は給与担当者が所得区分と源泉徴収等を確認する場面では,次の資料を対応させる方法が有用である。
労働法上の請求額と税務上の所得区分が同じ判断だとは考えず,双方が使う日付・期間・金額の食い違いをなくすことが重要である。

①入社日,休職・復職の期間,退職日及び他社で勤務した期間の有無。
②適用規程と改定履歴,賞与の算定期間・在籍条件,退職金の算式・区分・ポイント台帳。
③会社の試算,本来支給すべき額,実際に支払った額及び支払日。
④過去の退職金・一時金,退職所得の受給に関する申告書及び源泉徴収票。

国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」は,受給に関する申告書の提出の有無,勤続年数及び過去の退職手当等を区別して計算する仕組みを示している。
会社の勤続管理表だけでなく,税務用の期間計算の根拠も保存することが適切である。
未払賃金や和解金が混在する場合は,合意書の名称だけで所得区分を決めず,対象となる請求と支払の性質を個別に確認する。

第7 関連記事

①社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項。
②復職した社員の給与を下げられるか―短時間勤務・業務軽減・本人同意と減額の継続。
③人事評価・能力等級の引下げと賃金減額―懲戒降格との違い,根拠規程と裁量審査。
④賞与の会社回答を労働組合が承諾した場合―具体的請求権,労働協約の方式,不誠実団交及び組合員差別。

第8 出典

1 法令・行政通達

①e-Gov法令検索「労働契約法」7条・12条:https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128。
②e-Gov法令検索「労働基準法」89条:https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049。
③e-Gov法令検索「所得税法」28条・30条:https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033。
④e-Gov法令検索「所得税法施行令」69条1項1号・2項:https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096。
⑤国税庁「所得税基本通達」30-1・30-6・30-7:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/04.htm。

2 行政機関の解説・規程例

①厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)16頁,67頁,75頁~76頁:https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf。各社の契約内容そのものではなく,規程例と解説として参照した。
②国税庁「No.2508 給与所得となるもの」概要:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2508.htm。
③国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」勤続期間に含まれる期間・除かれる期間及び申告書の有無:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm。