第1 本記事の資料と確かめ方
1 国会関係用語集とはどのような資料か
本記事は,国土交通省大臣官房総務課連絡調整係が作成した「国会関係用語集」(以下「用語集」という。)を手掛かりに,国会の手続で使われる用語の意味を,憲法,国会法,衆議院規則及び参議院規則の条文で確かめるものである。
用語集は,表紙・目次と本文32頁から成り,「委員会」から「連絡室」までの約100の見出し語を五十音順に並べている(見出しの一部は,他の見出しを参照させるだけのものである)。
各頁の右上には「機密性2情報」「<省内限り>」と表示され,表紙には,できる限り法令等に基づいて作成しているが,一部担当職員の経験に基づいた認識による記載もあるので取扱いに注意してほしい旨が書かれている。
作成日の記載はないが,平成26年9月21日の公明党の党大会に触れているので(用語集12頁~13頁),それ以後に作成され,又は改められたものと考えられる。
本文には黒塗りの箇所がある。
このように,用語集は国土交通省の職員が国会対応の実務を覚えるための省内資料であり,政府全体の公式見解ではない。
本記事では,用語集の説明のうち法令に根拠のある部分は条文で確かめ,慣例・運用の部分は「用語集によれば」として紹介する。
なお,最高裁判所は,令和元年10月8日付けの司法行政文書不開示通知書で,「最高裁判所が作成した,国会関係用語の解説文書(最新版)」は存在しないとしている。
2 確かめ方と基準日
本記事の基準日は令和8年10月10日である。
憲法と国会法はe-Gov法令検索の現行のもの,衆議院規則と参議院規則は各議院のウェブサイトに掲載されたもの,判例は裁判所ウェブサイトの判決全文によった。
国会での答弁の扱いは国立国会図書館の国会会議録検索システム,質問通告の実態は内閣人事局の調査結果で確かめた。
用語集の説明のうち,「吊るし」,定例日,参議院予算委員会の片道方式等は,法令ではなく国会の慣例又は運用に基づくものである。
これらが現在も用語集のとおり行われているかは,公表資料では確かめられないものが多いので,その旨を各所に記す。
第2 会期と国会の種類
1 常会,臨時会及び特別会
国会は常に活動しているのではなく,召集日から閉会日までの会期の間だけ活動する(用語集4頁)。
国会の種類は,常会,臨時会及び特別会の3つである。
常会は,毎年1回召集される(憲法52条)。
毎年1月中に召集するのが常例であり(国会法2条),会期は150日間である(国会法10条本文)。
会期中に議員の任期が満限に達する場合には,その満限の日をもって会期は終了する(同条ただし書)。
常会の召集詔書は,少なくとも10日前に公布しなければならない(国会法1条2項)。
臨時会は,内閣が召集を決定することができ,いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば,内閣はその召集を決定しなければならない(憲法53条)。
この要求は,総議員の4分の1以上の議員が連名で,議長を経由して内閣に要求書を提出して行う(国会法3条)。
また,衆議院議員の任期満了による総選挙又は参議院議員の通常選挙が行われたときは,原則として,その任期が始まる日から30日以内に臨時会を召集しなければならない(国会法2条の3)。
特別会は,衆議院が解散され,総選挙が行われた後に召集される国会である(憲法54条1項,国会法1条3項)。
総選挙の日から30日以内に召集しなければならず(憲法54条1項),常会と併せて召集することもできる(国会法2条の2)。
臨時会と特別会の召集詔書には,10日前に公布する要件は適用されない(国会法1条3項)。
2 会期の決め方と延長
臨時会と特別会の会期は,両議院一致の議決で定める(国会法11条)。
会期の延長も両議院一致の議決で行い,常会は1回,臨時会と特別会は2回を超えて延長することができない(国会法12条)。
会期の決定と延長について両議院の議決が一致しないとき,又は参議院が議決しないときは,衆議院の議決したところによる(国会法13条)。
用語集の説明(4頁,19頁~20頁,24頁,31頁)は,これらの条文と一致している。
3 臨時会の召集要求と最高裁令和5年9月12日判決
用語集は,議員の要求による臨時会について,内閣は臨時会を召集する法的義務を負うが,議員が召集の期日を指定しても内閣はそれに拘束されず,召集期日を決めるのはあくまで内閣であると説明している(用語集32頁)。
この点について,最高裁令和5年9月12日判決(令和4年(行ツ)第144号・同年(行ヒ)第146号,民集77巻6号1515頁)は,憲法53条後段について,いずれかの議院の総議員の4分の1以上による要求がされた場合には,内閣が臨時会の召集を決定する義務を負うこととしたものであると述べた。
他方で,同条後段は個々の国会議員の権利又は利益を保障したものとは解されないとして,要求をした国会議員は,召集決定の遅滞を理由として国家賠償を請求することはできないと判断した。
多数意見は,召集までの期間がどの程度であれば遅滞となるかには触れていない。
宇賀克也裁判官の反対意見は,内閣は合理的期間内に召集を決定する法的義務を負い,その合理的期間は20日以内と解すべきであるとした上で,要求に当たって合理的期間より短い召集時期を指定されても,内閣はそれに拘束されないと述べている。
議員が召集の期日を指定しても内閣は拘束されないという用語集の説明は,この反対意見の述べるところと方向が同じであるが,内閣がいつまでに召集しなければならないかについて,多数意見は判断していない。
4 開会式
国会の開会式は会期の始めに行い(国会法8条),衆議院議長が主宰する(国会法9条)。
用語集によれば,開会式は参議院本会議場で行われ,常会と特別会では内閣総理大臣の演説が行われる日(おおむね3日目),臨時会では召集日又はその翌日に開かれることが多い(用語集3頁~4頁)。
5 会期不継続と閉会中審査
会期中に議決に至らなかった案件は,後会に継続しない(国会法68条本文)。
例外として,各議院の議決で特に付託された案件は,閉会中も委員会で審査することができ(国会法47条2項),閉会中審査した議案は後会に継続する(国会法68条ただし書)。
用語集によれば,この手続を衆議院では主に「閉会中審査」,参議院では主に「継続審査」(国政調査案件は「継続調査」)と呼び,手続を踏まなかった法案は審査未了で廃案となる(用語集27頁~28頁)。
また,衆議院では,委員会に付託されていない法案でも,議院運営委員会で協議の上,本会議の議決で閉会中審査とすることがあり,これを俗に「院議閉中」というとされている(用語集28頁)。
第3 委員会
1 常任委員会と特別委員会
各議院の委員会は,常任委員会と特別委員会の2種である(国会法40条)。
常任委員会は,衆議院と参議院にそれぞれ17置かれ,その部門に属する議案,請願等を審査する(国会法41条)。
特別委員会は,各議院が特に必要があると認めた案件又は常任委員会の所管に属しない特定の案件を審査するために設けられ,委員長は委員の互選で選ばれる(国会法45条)。
議員は少なくとも1つの常任委員となる(国会法42条2項本文)。
ただし,議長,副議長,内閣総理大臣その他の国務大臣,内閣官房副長官,内閣総理大臣補佐官,副大臣,大臣政務官及び大臣補佐官は,割り当てられた常任委員を辞することができる(同項ただし書)。
用語集の同じ箇所の列挙(用語集20頁)には大臣補佐官が入っていないので,現行条文で補って読む必要がある。
2 定足数
本会議は総議員の3分の1以上の出席がなければ議事を開き議決することができず(憲法56条1項),委員会は委員の半数以上の出席がなければ議事を開き議決することができない(国会法49条)。
用語集の説明(22頁)は,これらの条文と一致している。
3 理事,理事会及び理事懇
委員会には理事を置き,委員が互選する(衆議院規則38条1項,参議院規則31条)。
用語集によれば,実際には委員長が理事会に諮り,各会派からの届出に基づいて指名している(用語集29頁)。
用語集は,委員長と理事が委員会の運営を協議する場として理事会と理事懇談会(理事懇)があり,衆参の公報に開催通知を掲載せずに非公式に開かれるのが理事懇であると説明している。
法案が付託されると,まず理事懇で審議日程を協議・内定し,委員会当日の理事会で確認の上,正式に決定するのが一般的であるとされる(用語集29頁)。
4 公聴会と参考人
委員会は,一般的関心及び目的を有する重要な案件について公聴会を開くことができ,総予算及び重要な歳入法案については公聴会を開かなければならない(国会法51条)。
衆議院規則は,公聴会を開くには議長の承認を得なければならず,承認があったときは委員長が日時と案件を公示すると定める(衆議院規則78条,79条)。
これに対し,参考人の出頭は,委員会が審査又は調査のため必要があるときに求めることができる(衆議院規則85条の2,参議院規則186条)。
用語集は,公聴会には議長の承認と公示が必要であるのに対し,参考人質疑は委員会の決定だけで行えると説明している(用語集14頁~15頁)。
5 予算の分科会と委嘱審査
衆議院の予算委員会と決算行政監視委員会は,審査の必要により数個の分科会に分かれることができる(衆議院規則97条)。
参議院の予算委員会と決算委員会も同様である(参議院規則75条)。
参議院の予算委員会は,他の委員会に対し,審査中の総予算について,その委員会の所管に係る部分の審査を,期限を付して委嘱することができる(参議院規則74条の4)。
これが用語集のいう「委嘱審査」であり,対象が本予算に限られ,補正予算や暫定予算は対象とならないという用語集の説明(用語集2頁~3頁)は,「総予算」という条文の文言と合う。
第4 法案の提出から成立まで
1 閣法,議法(衆法・参法)及び委員長提案
内閣が閣議決定を経て国会に提出した法案を「閣法」,国会議員が提出した法案を「議法」(議員立法)といい,議法のうち衆議院議員の提出したものを「衆法」,参議院議員の提出したものを「参法」という(用語集5頁,8頁,15頁,18頁)。
議員が議案を発議するには,衆議院では議員20人以上,参議院では議員10人以上の賛成を要し,予算を伴う法律案は,衆議院では50人以上,参議院では20人以上の賛成を要する(国会法56条1項)。
予算を伴う法律案には,施行に必要な経費を明らかにした文書を添えなければならない(衆議院規則28条1項,参議院規則24条1項)。
また,議員の発議に係る予算を伴う法律案等については,委員会等は内閣に対して意見を述べる機会を与えなければならない(国会法57条の3)。
委員会は,その所管に属する事項に関し法律案を提出することができ,この場合は委員長が提出者となる(国会法50条の2)。
用語集は,これを「委員長提案」と呼び,委員会としての発議であるから,委員会での可決がそのまま国会への提出になると説明している(用語集1頁~2頁)。
2 趣旨説明と「吊るし」
委員会は,議案が付託されたときは,まずその趣旨の説明を聴いた後に審査に入る(衆議院規則44条,参議院規則39条)。
用語集によれば,国土交通省では,委員会での趣旨説明を本会議でのそれと区別して「提案理由説明」と呼び,俗に「お経」ともいう(用語集18頁,22頁)。
議院運営委員会が特にその必要を認めた場合は,議院の会議(本会議)で議案の趣旨の説明を聴取することができる(国会法56条の2)。
用語集によれば,ある会派が本会議での趣旨説明を要求すると,その法案は委員会に付託されないのが昭和30年代からの慣例であり,これを「吊るし」という(用語集19頁)。
付託されるには,①本会議で趣旨説明と質疑が行われるか,②要求した会派が要求を取り下げるか,③議院運営委員会が本会議での趣旨説明を行わずに付託することを決めるかのいずれかが必要であるとされる。
国会法56条2項本文は,議案が提出されたときは議長が適当の委員会に付託すると定めているので,「吊るし」は条文の効果ではなく,国会運営上の慣例である。
本会議で総理大臣の出席の下に趣旨説明と質疑が行われる法案を「重要広範議案」といい,用語集によれば,平成11年の第146回国会から,総理大臣が出席する法案は重要広範議案に限られるようになった(用語集18頁)。
3 修正
委員会で議案を修正しようとする委員は,あらかじめ修正案を委員長に提出しなければならない(衆議院規則47条1項,参議院規則46条1項)。
本会議で修正の動議を議題とするには,衆議院では議員20人以上,参議院では議員10人以上の賛成を要し,予算の増額を伴うもの等は,衆議院では50人以上,参議院では20人以上の賛成を要する(国会法57条)。
予算の修正の動議も,衆議院では50人以上,参議院では20人以上の賛成を要する(国会法57条の2)。
内閣が議題となった議案を修正し,又は撤回するには,その院の承諾を要し,一の議院で議決した後は修正も撤回もできない(国会法59条)。
4 送付,回付及び両院協議会
先に議案を受けた議院(先議院)で可決し,又は修正したときは,後議院に送付し,後議院が修正したときは,先議院に回付する(国会法83条)。
回付案は委員会に付託せず(衆議院規則253条1項,参議院規則178条),本会議で同意するかどうかを議決する。
両議院の意見が一致しないときの両院協議会と衆議院の優越は,案件によって違う。
用語集の説明(29頁~31頁)は,次の表のとおり,条文と一致している。
| 案件 | 両院協議会 | 衆議院の議決が国会の議決となる場合等 |
|---|---|---|
| 法律案 | 衆議院が求めることができる。参議院は,衆議院の回付案に同意しなかったときに限り求めることができるが,衆議院は拒める(国会法84条,88条) | 衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再可決したとき(憲法59条2項)。参議院が国会休会中の期間を除いて60日以内に議決しないときは,衆議院は否決したものとみなすことができる(同条4項) |
| 予算・衆議院先議の条約 | 衆議院が求めなければならない(国会法85条1項) | 協議会でも一致しないとき,又は参議院が国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しないとき(憲法60条2項,61条) |
| 参議院先議の条約 | 参議院が求めなければならない(国会法85条2項) | 協議会でも一致しないとき(憲法61条,60条2項) |
| 内閣総理大臣の指名 | 参議院が求めなければならない(国会法86条2項) | 協議会でも一致しないとき,又は衆議院の指名の議決後,国会休会中の期間を除いて10日以内に参議院が指名の議決をしないとき(憲法67条2項) |
| その他の国会の議決を要する案件 | 先議院が求めることができる(国会法87条2項) | 憲法上の特則はない |
5 附帯決議と日切れ法案
附帯決議は,法案の成立後にその施行に当たる政府に対し,委員会としての要望事項等を箇条書きにしたもので,法的な拘束力はない(用語集26頁)。
用語集によれば,附帯決議の採決後,所管大臣が,その趣旨を尊重して法律の実施に努める旨を発言するのが慣例である。
法律又はその規定に有効期限があり,期限が切れる前に延長の改正をしなければならない法案を「日切れ法案」という(用語集25頁)。
多くは年度末が期限なので,3月中に成立させる必要がある。
用語集は,消費者保護の観点等から早期に成立させる必要がある法案を「日切れ扱い法案」と呼んでいる。
第5 本会議の採決と不信任決議
1 記名投票と押しボタン式投票
議長が必要と認めたとき,又は出席議員の5分の1以上の要求があったときは,記名投票で表決を採る(衆議院規則152条,参議院規則138条)。
問題を可とする議員は白票を,否とする議員は青票を投じる(衆議院規則153条,参議院規則139条)。
参議院では,議長が必要と認めたときは,押しボタン式投票によって表決を採ることができる(参議院規則140条の2)。
内閣総理大臣の指名は,衆議院では記名投票(衆議院規則18条1項),参議院では単記記名投票(参議院規則20条1項)で行う。
2 内閣不信任決議と問責決議
内閣は,衆議院で不信任の決議案を可決し,又は信任の決議案を否決したときは,10日以内に衆議院が解散されない限り,総辞職をしなければならない(憲法69条)。
衆議院議員が内閣の信任又は不信任に関する決議案を発議するには,理由を付し,50人以上の賛成者と連署して議長に提出しなければならない(衆議院規則28条の3)。
参議院では,不信任決議ではなく問責決議が行われる。
用語集によれば,問責決議には総辞職や解散等の法的な拘束力はないが,事実上の効果は大きい(用語集25頁~26頁)。
第6 政府側の出席者
1 政府特別補佐人
内閣は,国会において内閣総理大臣その他の国務大臣を補佐するため,両議院の議長の承認を得て,人事院総裁,内閣法制局長官,公正取引委員会委員長,原子力規制委員会委員長及び公害等調整委員会委員長を政府特別補佐人として議院の会議又は委員会に出席させることができる(国会法69条2項)。
用語集は,政府特別補佐人を人事院総裁,内閣法制局長官,公正取引委員会委員長及び公害等調整委員会委員長の4名としており(用語集21頁),原子力規制委員会委員長が入っていない。
国会会議録では,原子力規制委員会委員長の答弁は,平成24年11月の衆議院環境委員会等から平成25年2月19日の参議院予算委員会までは「政府参考人」として記録され,同月21日の参議院予算委員会の途中から「政府特別補佐人」として記録されるようになった。
用語集は平成26年9月以後に作成又は改訂されたと考えられるから,この部分は作成時点でも古い記載であったことになる。
政府特別補佐人を調べるときは,用語集ではなく国会法69条2項の現行条文によるべきである。
2 政府参考人
委員会での政府に対する質疑は,国務大臣,内閣官房副長官,副大臣又は大臣政務官に対して行う(参議院規則42条の2。衆議院規則45条の2も同旨)。
ただし,委員会は,行政に関する細目的又は技術的事項について審査又は調査を行う場合において,必要があると認めるときは,政府参考人の出頭(出席)を求め,その説明を聴く(衆議院規則45条の3,参議院規則42条の3)。
政府委員制度は,国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律(平成11年法律第116号)により廃止された。
用語集によれば,政府参考人と政府特別補佐人は,平成11年の第146回国会から導入された(用語集20頁~21頁)。
国会会議録でも,平成11年12月14日の参議院総務委員会で,人事院総裁が「政府特別補佐人」として答弁している。
用語集によれば,政府参考人は通常は局長から審議官クラスであり,委員会で答弁するには,質疑者の了解を得た上で委員会の議決が必要である(用語集20頁)。
独立行政法人や特殊法人の代表者等を通常の委員会質疑に招致する場合は,参考人の手続によるとされている(用語集15頁)。
第7 官庁側の国会対応の用語
1 質疑通告,質問要旨及び問取り
用語集によれば,質疑通告とは,国会で質問する内容を議員が政府側に事前に伝えると同時に,国会への出席要求をかけることである(用語集16頁)。
質疑を行う予定の議員は,委員部に質問内容,質問要旨及び出席要求省庁を伝え,委員部が各府省の国会連絡室に伝え,国土交通省では国会連絡室から官房総務課連絡調整係を経て各局の国会担当にメールで伝えられる。
レクがなく質問要旨だけで対応するものを「要旨対応」,質問の概要ではなく読み上げ文そのものが示されるものを「全文」と呼んでいる(用語集16頁)。
質問取り(通称「問(もん)取り」)は,質疑通告に基づき,指定された日時・場所に各府省の職員が行き,議員から質問内容の詳細を聞き出すことである(用語集16頁~17頁)。
用語集は,その場で議員の問題意識,問の順番及び答弁者のレベルを確認しておく必要があるとしている。
通告の期限について,用語集は,1999年の与野党申合せにより「2日前の正午まで」に質疑通告することとなったが,現在は形骸化していると書いている(用語集16頁)。
参議院議員の質問主意書(第211回国会質問第4号,令和5年2月3日提出)は,平成11年9月10日の「政府委員制度の廃止及び副大臣等の設置に伴う国会審議の在り方に関する申合せ事項」に「質疑者は,原則として,前々日の正午までに質問の趣旨等について通告する」とあると指摘し,政府は,答弁書(令和5年2月14日内閣参質二一一第四号)で,その申合せ事項の内容は承知していると答えた。
申合せ事項の原文そのものと,現在の取扱いは,公表資料では確認していない。
2 内閣人事局の調査に見る通告時刻と問取りの方法
内閣人事局は,各府省等の国会対応業務の調査結果を公表している。
最新の「令和8年国会対応業務に関する調査結果」(令和8年9月14日)は,令和8年特別国会の会期中の2月27日から4月7日まで(衆参の予算委員会が開かれていた期間)の,予算委員会と各府省等の所管委員会等での質疑(本会議等を除く。)を集計したものである。
主な数値は次のとおりである。
| 項目 | 令和8年(特別国会) | 令和7年(通常国会) |
|---|---|---|
| 質問通告の件数 | 1,585件 | 2,358件 |
| 委員会開催日の前々日までの通告 | 770件(48.6%) | 1,181件(50.1%) |
| 前日18時までの通告 | 714件(45.0%) | 1,081件(45.8%) |
| 前日18時より後の通告 | 101件(6.4%) | 96件(4.1%) |
| 質問取りの方法(対面レク) | 1,038件(65.2%) | 1,422件(60.3%) |
| 質問取りの方法(オンラインレク) | 85件(5.3%) | 122件(5.2%) |
| 質問取りの方法(その他。電話レク等) | 468件(29.4%) | 814件(34.5%) |
| 質問通告時刻の平均 | 11時40分 | 11時30分 |
| 最終の答弁作成着手可能時刻の平均 | 18時28分 | 18時32分 |
| 全ての答弁作成が完了した時刻の平均 | 25時27分 | 25時48分 |
令和7年の数値は,内閣人事局の「令和7年国会対応業務に関する調査結果」(令和7年7月1日)による。
質問通告時刻の平均は,委員会開催日の前営業日9時30分より前の通告をすべて9時30分に置き換えて算出されている。
令和8年の調査結果は,質問取りは複数の方法で行われることもあるため,方法別の件数の合計は通告件数と一致しないとしている。
「25時27分」は,委員会開催日の午前1時27分のことである。
3 国会連絡室,カンバン及びバッター表
国会連絡室は,国会内にある各省庁の控室であり,用語集によれば,平成11年までは「政府委員室」と呼ばれていた(用語集14頁)。
用語集は,国会議員本人や議員秘書からの各種要求を国会連絡室が聞き取って所定の様式に書き起こしたものを「カンバン」と呼び,国土交通省独自の用語であるとしている(用語集6頁)。
その種類として,議員会館等に来て説明してほしいという「レク要求」,電話での説明を求める「TELレク要求」,資料を求める「資料要求」,地方自治体や支援者を連れた要請活動への対応を求める「要請」等が挙げられている。
「バッター表」は,委員会の時間,場所,質疑のテーマ,質疑順,質疑予定者,持ち時間,要求(通告)省庁,通告レクの状況及び答弁者等をまとめた表で,国土交通省に通告があった場合に国会連絡室が作成しているとされる(用語集24頁~25頁)。
4 参議院予算委員会の片道方式
用語集によれば,委員会の質疑時間には,通常,質問する時間と答弁時間の両方が含まれる(往復方式)が,参議院予算委員会は,質疑時間に答弁時間を含まない片道方式を採っている(用語集5頁)。
予算委員部が作るタイムスケジュールでは,片道方式の所要時間を通常は質疑時間の3倍で計算し,NHKでテレビ放送される質疑では2.5倍で計算しているとされる。
第8 弁護士実務での使い方
用語集の用語と条文を押さえておくと,次の場面で役に立つ。
①立法趣旨を調べるときは,提案理由説明(趣旨説明),委員会の質疑,修正及び附帯決議の順に会議録をたどる。
委員長提案の法律案は委員長が提出者となるので(国会法50条の2第2項),提出者としての委員長の趣旨説明を探す。
②会議録を引用するときは,答弁者が国務大臣,政府特別補佐人,政府参考人又は参考人のいずれであるかを区別する。
政府参考人の説明は,行政に関する細目的又は技術的事項についてのものとして位置付けられている(衆議院規則45条の3,参議院規則42条の3)。
③附帯決議は法的な拘束力を持たないが,法律の運用で留意すべき点を示すものとして読む。
④法案が成立しなかった理由を調べるときは,会期不継続の原則(国会法68条)と閉会中審査の手続の有無を確かめる。
⑤国会対応の過程で作られる質問要旨,問取りの記録,答弁案,バッター表等は,情報公開請求で対象文書を特定する手掛かりになる。
請求の実例は,関連記事に挙げた質問主意書の答弁書作成過程の文書と最高裁判所の国会答弁資料の記事で整理している。
第9 関連記事
①質問主意書とは―提出手続,答弁期限及び答弁書の作成過程
②質問主意書の答弁書作成過程の文書と情報公開請求―開示された用例集・参考資料と審査会答申
③国会答弁義務と答弁拒否―国政調査権・守秘義務との関係
④内閣法制局の長官,次長,部長,総務主幹及び参事官
⑤参議院議員のしおり(令和7年版)の解説
⑥国会回次別の制定法律一覧と法律の調べ方
⑦最高裁判所の国会答弁資料
第10 出典
1 検討した資料
①国土交通省大臣官房総務課連絡調整係「国会関係用語集」(機密性2情報・省内限り。作成日の記載なし。表紙・目次と本文32頁)
②最高裁判所事務総長の令和元年10月8日付け司法行政文書不開示通知書(最高裁秘書第4760号)
2 法令
①日本国憲法(e-Gov法令検索)52条,53条,54条,56条,59条,60条,61条,67条,69条
②国会法(e-Gov法令検索)1条,2条,2条の2,2条の3,3条,8条~13条,40条~42条,45条,47条,49条,50条の2,51条,56条,56条の2,57条,57条の2,57条の3,59条,68条,69条,83条~88条
③衆議院規則(衆議院)18条,28条,28条の3,38条,44条,45条の2,45条の3,47条,78条,79条,85条の2,97条,152条,153条,253条
④参議院規則(参議院)20条,24条,31条,39条,42条の2,42条の3,46条,74条の4,75条,138条,139条,140条の2,178条,186条
⑤国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律(平成11年法律第116号)(e-Gov法令検索)
3 判例
①最高裁判所第三小法廷令和5年9月12日判決(令和4年(行ツ)第144号・同年(行ヒ)第146号,民集77巻6号1515頁)
4 公的資料
①内閣人事局「令和8年国会対応業務に関する調査結果」(令和8年9月14日)
②内閣人事局「令和7年国会対応業務に関する調査結果」(令和7年7月1日)
③参議院議員鈴木宗男君提出本会議・委員会への質問通告,国会答弁の実態調査に関する質問主意書(第211回国会質問第4号)
④同質問に対する答弁書(令和5年2月14日内閣参質二一一第四号)
⑤国立国会図書館「国会会議録検索システム」:第181回国会衆議院環境委員会第2号(平成24年11月9日),第183回国会参議院予算委員会第3号(平成25年2月19日)・第5号(同月21日),第146回国会参議院総務委員会第3号(平成11年12月14日)