第1 この記事が扱う判断
1 税額の誤りと加算税の判断を分ける
税務署から申告内容の確認を受けたとき,まず連絡の位置付け,求められている事項及び期限を確認する必要がある。
修正すべき税額があること,過少申告加算税が課されること,重加算税が課されることは,それぞれ要件が異なる。
「自主的に修正するから加算税はない」「電話だけだから調査ではない」という判断は適切ではない。
本記事は,令和8年10月10日を基準日とし,期限内申告をした納税者の修正申告と過少申告加算税を中心に,行政指導,調査通知及び更正予知を整理する。
期限後申告と無申告加算税,源泉徴収の不納付加算税,個別の税額計算は別に確認する必要がある。
2 修正申告をする前に記録を残す
税務署の連絡日,担当部署・氏名,対象税目・期間,説明内容,求められた資料及び回答期限を記録する。
法的な評価が争われる場合には,帳簿,契約書,証憑及び申告時の資料の元の状態を保全し,指摘事項と納税者の見解を分けることが重要である。
申告の誤りを直すことと,過去の記録を事実と異なる内容へ書き換えることは同じではない。
修正の内容,発見日,根拠及び計算を別に残し,税理士・弁護士と共有するのがよい。
第2 行政指導と調査は連絡方法だけでは分からない
1 担当者に位置付けを確認する
国税庁FAQ問2は,課税標準等又は税額等を認定する目的で質問検査等を行う調査と,自発的な見直しや修正申告を求める行政指導を区別している。
同FAQは,具体的な手続に入る前に,いずれに当たるかを納税者へ明示する運用を説明している。
行政指導に基づく自主的な修正について,同FAQは過少申告加算税を賦課しない旨を説明しているが,延滞税が必要となる場合はある。
当初申告が期限後申告である場合の無申告加算税とは区別する必要がある。
2 実地調査以外の調査もある
FAQ問22は,税務署へ来署して申告内容を確認するなど,実地調査以外の調査を明示している。
この場合,法令上の事前通知は求められていないが,連絡の際などに対象税目・課税期間・目的等を説明する運用である。
国税通則法74条の9の実地調査の事前通知と,同法65条6項の調査通知に関する判断を,電話,訪問又は郵便という方法だけで代用してはならない。
通知内容と実際に行われた質問・確認を具体的に検討する必要がある。
第3 修正申告の時期と過少申告加算税
1 通知前と通知後を区別する
国税通則法65条6項は,修正申告が調査により更正があるべきことを予知してされたものではなく,かつ,所定の調査通知前に行われた場合には,同条1項を適用しないと定める。
「更正予知前」であることだけを確認して,調査通知の有無を省略してはならない。
調査通知後であっても,更正予知によらない修正申告には,同条1項の通常の場合とは異なる割合が定められている。
次の表は,同条1項・2項・6項に関する基本的な区分であり,すべての加重・特例を含む最終税額表ではない。
| 修正申告の時点 | 基本的な扱い | 主な確認事項 |
|---|---|---|
| 調査通知前で,更正予知によるものではない | 65条6項による同条1項の不適用 | 通知の有無と,予知に関する事実の両方 |
| 調査通知後で,更正予知によるものではない | 同条1項の割合は5%。同条2項の加算が問題となる場合もある | 通知の内容・日時,提出日及び対象税額 |
| 調査による更正を予知して修正 | 同条1項の割合は10%。同条2項の加算が問題となる場合もある | 調査の内容と,予知して修正したかという因果関係 |
同条2項は,所定の基準を超える部分に5%を加算する仕組みである。
帳簿の不提示・不提出や記載不備に関する同条4項,正当な理由等に関する同条5項,隠蔽・仮装に関する重加算税など,別の規定が結論に影響するため,表の割合だけを一律に当てはめてはならない。
適用年分,法定申告期限及び経過措置も確認する必要がある。
2 更正予知を具体的な事実から検討する
更正予知は,「税務署から連絡があった」という一事だけで結論が出る問題ではない。
どの税目・期間について,どのような質問や資料要求,具体的な指摘があり,それを受けて何を認識して修正したのかを整理する必要がある。
通知書や電子メールだけでなく,電話・面談の日時,担当者の説明,提示された資料,納税者側の回答及び修正を決めた経過を残すのがよい。
これらの事実が争われる場合には,適用法令と当該税目・事案に関する裁判例・裁決を確認して判断する。
第4 正当な理由と重加算税は別の検討である
1 正当な理由の位置付け
同法65条5項1号は,正当な理由があると認められる事実に基づく税額を計算対象から控除する仕組みである。
調査通知・更正予知・提出時期による区分と,「正当な理由」が認められるかは別に検討する必要がある。
納税者の善意や税理士への委任だけで免除されると考えず,申告時に利用できた資料,課税庁の公表見解及び過少申告に至った事情を確認する。
判例の比較は,過少申告加算税の「正当な理由」で説明している。
2 本税・加算税・延滞税を分ける
正当な理由が認められるかという問題と,本税額が正しいかという問題は異なる。
隠蔽・仮装の有無とその主体が問題になる重加算税も,過少申告加算税とは別の要件を検討する必要がある。
延滞税の計算と期間に関する特例も,別項目として確認する。
従業員の不正が関係する場合は,従業員の窃盗・横領で被害を受けた会社の税務も参照。
個別事件では,本税,加算税の種類・基礎税額,計算期間及び納付資金を分けて検討するのがよい。
第5 修正申告,更正及び不服申立て
1 修正申告の勧奨に応じる前に確認する
FAQ問25は,修正申告の勧奨に応じるかは納税者の任意の判断であり,応じなければ調査結果に基づく更正等を行うが,応じなかったことだけで基本的に不利な取扱いをしないと説明している。
修正申告の勧奨を拒むことと,適法な質問検査への対応を拒むことは別である。
指摘項目,税額,根拠法令,証拠及び反対事情を確認し,修正申告をする場合の効果を理解して判断する必要がある。
調査結果の説明は原則として口頭であり,希望すれば説明全文の書面が必ず交付される制度ではないため,説明内容を自ら記録する実益が大きい。
2 争う対象を取り違えない
FAQ問26によれば,修正申告は納税者自身の申告であり,その申告自体を税務当局の処分に対する通常の不服申立てで争うことはできない。
税額が過大であれば,要件を満たす場合に更正の請求を検討する。
これに対し,更正等の処分や加算税の賦課決定は,それぞれ不服申立ての対象となり得る。
処分通知の受領日,更正の請求の対象・期限,不服申立ての対象・期限及び受任範囲を直ちに確認する必要がある。
本税の修正申告をしたことだけで,加算税に関する主張を諦める必要があると考えてはならない。
第6 弁護士・税理士が共有する記録
①当初申告の税目・期間・提出日と法定申告期限
②接触の日時・方法・相手と,調査又は行政指導という説明
③調査通知の内容・日時・対象税目・期間
④具体的な質問,資料要求,指摘及びそれに対する回答
⑤誤りを発見した日,発見の根拠と修正を決めた経過
⑥修正申告の提出日,計算,納付及び各処分の受領日
⑦争点,保全資料,担当者,受任範囲及び次の期限
この一覧は法定様式ではなく,時期と手続の取り違えを避けるための実務上の提案である。
質問検査権,電子データの提出及び質問応答記録書は,税務調査に関するメモ書きを,回答書の構成は,税務調査への回答書と税務意見書の作り方を参照。
第7 出典
①国税通則法65条,68条,74条の9及び74条の11等
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
②国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2,問22及び問24~問26
https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm
③東京弁護士会LIBRA令和8年10月号「税法入門 税務調査のあれこれ」。問題の所在を把握するための実務解説として参照し,現行の通知・加算税の区分は上記①②に基づいて説明した。
https://www.toben.or.jp/message/libra/libra-2026-10.html