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固定資産評価審査委員会への審査申出―書面審理・口頭意見陳述・照会と最高裁平成2年1月18日判決(AI作成)

固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合は,固定資産評価審査委員会に対する審査申出が原則的な救済手段となる。もっとも,現在の地方税法は書面審理を原則とし,申出人による口頭意見陳述,市町村長に対する書面照会及び委員会が必要と認める公開の口頭審理を別の手続として定めている。

最高裁平成2年1月18日判決は,旧地方税法下の口頭審理に関する判決である。そのため,判決の手続結論をそのまま現在の審査申出に当てはめることはできない。他方,評価の手順,方法及び根拠を,申出人が不服の対象を特定できる程度に明らかにすべきであるという考え方は,現在の申出書,口頭意見陳述及び書面照会を設計する上でも重要である。

第1 審査申出の対象と期間

固定資産評価審査委員会に申し出ることができるのは,原則として固定資産課税台帳に登録された「価格」に関する不服である。納税義務者,課税標準,税額,住宅用地の認定等,価格以外の事項に関する不服は,市町村長に対する審査請求等,別の手続となる。

申出人は,当該固定資産の納税者である。申出期間は,一般に,固定資産課税台帳に価格等を登録した旨の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後3か月までとされるが,価格の修正等があった場合は起算点が異なる。年度,処分の種類,通知日及び公示日を最初に確認すべきである。

登録価格を争う者は,原則として,委員会の決定を経ずに直ちに取消訴訟を提起することができない。期間管理を誤ると実体的な主張以前に救済を失い得るため,相談受任時に納税通知書,課税明細書,縦覧・閲覧資料及び到達日を保存する必要がある。

第2 現行法上の四つの手続を区別する

現行地方税法433条2項は,委員会が審査申出書,市町村長の弁明書及び反論書等を基礎として書面審理を行うことを原則とする。その上で,申出人の求めがあれば,委員会は申出人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。

この口頭意見陳述は,申出人が書面に記載した理由を補充して説明する機会である。大阪市の案内では,この場に市側関係者は出席しないとされている。市側担当者への質問の場と誤解せず,あらかじめ評価内容の説明を担当税務事務所等から受け,なお残る争点を申出書と意見陳述に落とし込むべきである。

同条5項は,申出人が委員会を通じて市町村長に書面で照会できる制度を定める。ただし,照会は具体的かつ個別的であり,重複せず,意見を求めるものではなく,回答に不相当な時間又は費用を要しないこと等が必要である。他の納税者の固定資産に関する事項も対象外となり得る。

同条6項の公開の口頭審理は,委員会が審査のため必要があると認める場合に,申出人と市町村長を出席させて行う手続である。申出人の求めにより与えられる口頭意見陳述とは同じではない。

第3 最高裁平成2年1月18日判決

最高裁第一小法廷平成2年1月18日判決・昭和61年(行ツ)第138号は,旧地方税法下の固定資産評価審査委員会の口頭審理を扱った。

判決は,この審査手続が,簡易迅速に納税者の権利救済を図る行政上の不服審査手続であり,民事訴訟と同程度に厳格な手続が要求されるものではないとした。その上で,委員会は,申出人が不服の対象を特定して反論できるよう,評価の手順,方法及び根拠を合理的に必要な程度で明らかにすれば足りるとした。

また,当時の事案では,宅地の評価を争うために,同一状況類似地域にあるすべての土地の評価額を明らかにする必要はないとされた。委員会が期日外に調査した結果についても,調査記録及び資料を閲覧でき,申出人に反論・反証の機会があるなら,その結果を改めて口頭審理で提示することまでは必要でないと判断された。

第4 平成2年判決を現行法で使う際の注意

平成2年判決が適用した旧地方税法では,申出人が口頭審理を求めた場合の規定が現在と異なる。現在は書面審理が原則であり,申出人の求めによる口頭意見陳述と,委員会が必要と認める公開の口頭審理とが区別されている。

したがって,同判決を根拠に「申出人が求めれば現在も当然に公開の口頭審理が開かれる」と説明するのは適切でない。同判決は,現在の手続的権利を直接決める先例というより,評価内容の開示がどの程度あれば実効的に争点を特定し,反論できるかを検討する際の歴史的かつ実務的な手掛かりとして用いるべきである。

第5 申出前に評価のどこを確認するか

土地であれば,地目,地積,利用状況,接道,画地形状,奥行,間口,高低差,無道路地・不整形地等の補正,状況類似地域,標準宅地及び路線価との関係を確認する。家屋であれば,構造,用途,床面積,再建築費評点数,経年減点補正率及び増改築の反映を確認する。

単に「近所より高い」「売買価格より高い」と述べるだけでは,どの評価要素が誤っているかが明確にならない。現況写真,公図,地積測量図,建物図面,登記事項証明書,災害・地盤・接道に関する資料等を,評価要素ごとに対応させる必要がある。

他の土地の価格を比較資料とするときは,対象土地との類似性と相違点を具体化する。平成2年判決も,無限定に周辺全筆の評価情報を開示すべきとはしていない。

第6 書面照会の作り方

書面照会は,「なぜこの価格なのか」と包括的に問うのではなく,回答可能な事実又は計算過程へ分解する。例えば,次のような事項である。

① 本件土地が属する状況類似地域とその区分理由
② 標準宅地の所在地,選定理由及び令和○年度の適正な時価の算定過程
③ 本件画地に適用した奥行価格補正率,不整形地補正率その他の補正率
④ 現況地目又は利用状況の認定日とその根拠資料
⑤ 申出人提出の測量図,写真又は鑑定意見を評価に採用しなかった理由の前提事実

法的評価や最終的な当否を尋ねるのではなく,争点判断の前提となる資料,数値及び事実認定を尋ねる。既に弁明書等に回答がある事項は重ねて照会せず,回答後にどの主張を補充するかまで考えて質問を選ぶべきである。

第7 申出書と証拠の組立て

申出書では,対象固定資産,登録価格,求める決定,誤りと考える評価要素及び正しいと主張する価格又は算定方法を分けて記載する。争点ごとに,行政側の評価,申出人の主張,根拠資料及び追加確認事項を一枚の表に整理すると,反論書や口頭意見陳述へ接続しやすい。

弁明書が届いた後は,評価手順の一般論ではなく,本件固定資産にどの数値と補正が適用されたかを確認する。必要に応じて書面照会を用い,閲覧できる記録・資料を確認した上で反論する。

口頭意見陳述では,新しい主張を大量に追加するより,委員が判断すべき争点と証拠の対応を短く示す。重要な事実及び資料は口頭だけにせず,期限内に書面化して記録へ残すべきである。

第8 決定後の訴訟

委員会の決定に不服がある場合は,決定の取消訴訟を検討する。出訴期間,原告適格,被告,取消しを求める範囲及び訴訟で主張する評価上の誤りを,決定書受領時に再確認する。

審査申出段階で,どの資料を求め,どの回答があり,どの反論を提出したかは,取消訴訟の争点形成にも影響する。手続の違法だけでなく,登録価格が固定資産評価基準及び客観的な交換価値との関係でどのように誤るかを具体化する必要がある。

取消訴訟と国家賠償請求の関係については,取消訴訟と国家賠償請求の関係―併合提起・違法性・取消判決の拘束力(AI作成)も参照されたい。

第9 出典及び確認状況

① 最高裁第一小法廷平成2年1月18日判決・昭和61年(行ツ)第138号:裁判所公式判決全文を確認した。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-52733.pdf

② 地方税法433条:令和8年10月1日施行時点のe-Gov法令検索を確認した。
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226/20261001_507AC0000000070

③ 大阪市「固定資産評価審査委員会に対する審査の申出」及び申出書作成上の留意事項:現行手続及び大阪市の運用を確認した。
https://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000112824.html
https://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/cmsfiles/contents/0000005/5693/ryuijiko.pdf

④ 大阪市「固定資産評価審査委員会における書面での照会制度」:照会の対象及び除外事項を確認した。
https://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000005728.html

⑤ 「最高裁民事破棄判決等の実情―平成二年度―」:年度内判決の位置付けを確認するために用いた二次資料である。

判例秘書では,令和8年10月1日時点で上記判決本文を照合していない。裁判所公表全文及び現行法令は確認済みであるが,個別事件では対象年度の法令,自治体の手続案内,評価基準及び申出期間を改めて確認する必要がある。