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難民事件の初動―難民・補完的保護の主張立証と再申請時の送還リスク(AI作成)

難民事件の初動では,迫害の体験だけでなく,現在の在留・退去強制手続,過去の申請回数,送還の予定を同時に確認する必要がある。特に3回目以降の申請では,申請した事実だけで送還が止まるとは限らない。本稿は,出入国在留管理庁の公表資料に基づき,弁護士が最初の面談から資料提出までに整理する事項を示す(2026年10月1日確認)。個別事件では,法令・窓口案内の更新と本人の手続状況を改めて確認されたい。

第1 初回面談で先に確かめること

まず,旅券・在留カード・仮放免許可書・監理措置決定通知書・退去強制令書や各通知書を確認し,現在の在留資格,収容・監理措置の有無,送還予定,難民認定等の申請歴と各処分日を時系列にする。申請の可否,申請中の在留,送還停止効は別の問題であり,一つの書類から他を推測しない。

次に,国籍・常居所,出国日,危害の日時・場所・加害者・態様,警察等への相談と結果,国内の他地域での危険,家族への危害,出国後の政治活動や情勢変化を,通訳を介して本人の言葉で記録する。あいまいな日付は推測で埋めず,記憶の幅と確認できる資料を分ける。本人や国外の協力者の安全に配慮し,連絡・原本収集の方法も決める。

第2 難民認定と補完的保護の分岐

難民認定では,国籍国等の外にいること,迫害を受ける十分に理由のある恐怖,条約上の五つの理由との因果関係,国籍国の保護を受けられない又は恐怖のため望まないことを分けて検討する。政治的意見は政党加入を要せず,加害者が本人に意見を帰属させている場合も問題となる。私人による危害では,危害そのものと国家による保護の有無・理由を分けて調べる。

補完的保護対象者は,難民以外で,迫害のおそれがある理由が条約上の五つの理由であることを除き,難民の要件を満たす者である。したがって「戦争・治安悪化があれば自動的に認定」とは書けない。本人の危険,国籍国の保護等を個別に示す。入管庁の手続案内によれば,難民認定申請では難民該当性と補完的保護対象者該当性の双方が判断され,補完的保護対象者認定申請では後者のみが判断される。主張する保護類型と申請書の選択を照合する。

第3 供述と証拠を要件ごとに整理する

陳述書は,「何が起きたか」「誰が行ったか」「なぜ本人が標的になったか」「帰国すると何が起きるか」「保護や国内避難がなぜ実効的でないか」の順で作る。写真,診療記録,逮捕・召喚書類,活動記録,通信履歴,家族・目撃者の供述,出入国記録を各命題に対応付ける。資料が入手できないときは,入手不能の事情も具体的に記録する。

供述の変遷があるときは,従前の申請書,面接記録,処分理由と照合し,通訳,記憶,追加資料,出国後の新事情など,差異が生じた理由を検証する。説明のために事実を作り替えない。性的被害や家族への危害など,初回から詳述しにくい事情には聴取方法と安全の配慮が要る。

第4 出身国情報の使い方

入管庁は「国別の主な申立てに係る出身国情報」を公表している。ただし,同庁自身が,資料は網羅的でなく特定の見解を表すものでもないと説明している。国名だけで結論を出さず,本人の地域,属性,活動,時期,加害主体に対応する箇所を示す。他の信頼できる原資料も確認し,発行日・更新日,原文と仮訳の関係を控える。資料提出時と審理時に情勢が変わり得るため,重要な情報は更新を確認する。

第5 3回目以降の申請と送還停止効

令和5年改正入管法の送還停止効の例外は,2024年6月10日に施行された。入管庁の説明では,3回目以降の難民認定・補完的保護対象者認定申請者等は,審査中でも送還が可能となる一方,「認定を行うべき相当の理由がある資料」を提出した場合は送還が停止される。申請案内は,在留資格未取得外国人の3回目以降の申請で,申請時にその資料を提出しない場合,送還は停止されないと明記する。

そこで,申請回数を決定書・受付記録で確認し,前回までに提出した資料,新たな資料,新たに生じた事情を区別する。再申請書を出すだけで安全と説明せず,送還予定と提出資料の受理状況を直ちに確認する。3年以上の実刑に処された者やテロリスト等についても別の例外があるため,該当性を個別に調べる。送還先での危険が残るときは,送還に関する法的争点と緊急の救済手段を事件の段階に応じて検討する。

第6 申請・不認定後の対応

入管庁の手続案内では,申請期間を制限する規定はなく,申請には申請書,主張を裏付ける資料又は陳述書などが必要とされる。申請期間の制限がないことと,仮滞在・在留資格・送還停止効の有無は別である。申請先,必要書類,受付時間は提出直前に確認する。

不認定等の通知を受けたら,処分書,理由,審査請求の教示,送達日を保存する。争う段階では,認定要件ごとに判断された事実と未検討の資料を対照し,審査請求や訴訟,送還をめぐる緊急対応を並行して検討する。期限や手続の適否は,実際に受けた処分・教示と現行法令に即して確認する。

第7 初動チェックリスト

  1. 現在の在留・収容・監理措置・送還予定を文書で確認したか。
  2. 難民認定等の申請回数と前回処分を確認したか。
  3. 迫害行為,条約上の理由,国家保護,国内避難を別々に整理したか。
  4. 難民と補完的保護の両方の可能性を検討したか。
  5. 供述の差異と資料の入手不能理由を記録したか。
  6. 出身国情報の原資料・日付・地域・本人との対応を確認したか。
  7. 3回目以降なら相当の理由がある資料と送還停止の状態を確認したか。

難民条約上の要件そのものは,難民条約上の難民とは|迫害・政治的意見・国家による保護の欠如(AI作成)も参照されたい。

第8 出典

① 出入国在留管理庁「難民該当性判断の手引」(令和5年12月一部改訂,特に2~15頁)。
② 同庁「難民認定手続・補完的保護対象者認定手続」。
③ 同庁「令和5年改正入管法について」。
④ 同庁「国別の主な申立てに係る出身国情報」。各資料・ページは2026年10月1日に確認した。