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いじめ重大事態調査で最初に確認すること―疑い段階の対応,安全確保,証拠保全及び第三者性(AI作成)

第1 この記事の対象

1 調査の開始と責任の確定を分ける

いじめ重大事態調査は,いじめの有無や重大な被害との関係を明らかにし,対象となる子どもへの対応と再発防止に役立てるための調査である。
調査を始める段階で,いじめや因果関係が裁判と同じ程度に証明されていることを要求してはならない。
一方,重大事態として報告・調査を始めたことだけで,特定の児童生徒や学校の損害賠償責任が確定するものでもない。

本記事は,令和8年10月10日を基準日とし,いじめ防止対策推進法と文部科学省の令和6年8月改訂ガイドラインに基づき,子ども・保護者,学校・設置者及び弁護士が初動で確認する事項を整理する。
個別事件の損害賠償額,刑事責任又は個々の自治体の調査委員会条例を網羅するものではない。

2 誰の依頼で対応するかを明確にする

子ども・保護者の代理人,学校・設置者の助言者,調査委員では役割が異なる。
弁護士が関与するときは,依頼者,目的,受任範囲,情報を共有する相手及び利益相反を最初に確認する必要がある。
学校への法的助言を担当していることと,独立した第三者として学校の対応を検証できることは同じではない。

第2 いじめと重大事態の判断

1 いじめの定義は要素を落とさず確認する

いじめ防止対策推進法2条は,学校に在籍する児童又は生徒に対し,当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為で,対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているものをいじめと定義している。
インターネットを通じて行われるものも含まれる。
学校の範囲,行為者と対象者の関係,行為の内容及び本人の苦痛を確認し,単に不快な出来事があったという一要素だけで定義全体を説明しない。

悪ふざけ,けんか又は仲間内のやり取りという呼び方だけで,いじめではないと決めることも適切ではない。
本人が話しにくい事情や周囲の力関係にも注意し,具体的な行為と心身の状態を確認する必要がある。

2 法28条は疑いの段階を対象としている

法28条1項は,①いじめにより生命,心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき,②いじめにより相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるときを,重大事態としている。
学校の設置者又は学校は,速やかに調査組織を設け,事実関係を明確にするための調査を行うものとされる。

ガイドライン本文12頁~15頁は,疑いを抱いた段階から対応を開始し,児童生徒や保護者から重大事態の申立てがあったときは,重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たるという取扱いを示している。
学校がいじめの事実をまだ確認できていない場合の事実確認の方法と,申立てを受けた事実自体を否定して放置することを混同してはならない。

3 欠席30日は待機期間ではない

ガイドラインは,不登校重大事態について年間30日の欠席を目安とするが,一定期間連続して欠席し,その要因としていじめが考えられる場合には,30日に達する前から設置者への報告・相談と情報共有を行う必要があるとしている。
30日を経過するまで相談,安全確保又は重大事態の検討を止める基準ではない。

転校・退学に至るほど精神的苦痛を受けた可能性がある場合など,欠席日数だけでは捉えられない生命心身財産重大事態もある。
出来事,心身の変化,欠席,転校・退学の検討を時系列で確認することが重要である。

第3 安全確保と支援を調査と並行する

1 調査結果が出るまで支援を待たせない

ガイドライン本文9頁~11頁は,調査中も対象児童生徒への支援等を行うことを求めている。
法23条も,事実確認,継続的な支援・指導,安心して教育を受けるための措置及び警察との連携を定めている。
調査委員会の設置や報告書の完成を待つ間に,安全確保や学習の保障を空白にしてはならない。

接触を避ける方法,教室・登下校時の配慮,欠席中の学習,医療・心理・福祉との連携及び連絡窓口を具体化する必要がある。
以下の記録方法は,法定様式ではなく,関係者間の引継ぎを容易にするための実務上の提案である。

①現在の危険と,すぐに実施する安全措置
②本人が望むこと,避けたいこと及び説明を受けやすい方法
③措置を決める担当者,実施担当者及び次に状況を確認する日
④措置の実施状況と,うまくいかなかった場合の代替案

2 本人の負担と意向を確認する

子ども本人と保護者の意向が常に一致するとは限らない。
調査の目的,聞き取り方法,情報が伝わる範囲及び途中で相談できる窓口を,年齢や状態に応じた方法で説明することが重要である。
同じ体験を何度も語らせることによる負担にも配慮する。

ガイドラインは,重大事態調査を望まない場合にも,意向を把握し,記録を中心とする確認や非公表など,調査の方法・進め方を工夫して説明することを求めている。
「調査を望まないから何も対応しない」とせず,調査方法,公表の有無及び必要な支援を分けて検討する必要がある。

第4 資料を保全し,事実と評価を分ける

1 残す資料と所在を確認する

ガイドライン本文6頁~7頁及び17頁~19頁を踏まえ,学校いじめ対策組織の会議記録,相談記録,支援・指導記録,出欠記録,アンケート,連絡文書等の所在を確認する。
電子メールやSNSの記録,写真,診療に関する資料等も,当該事案に必要な範囲で保存を検討する。
他人のアカウントへの無断アクセスなど,不適切な方法で資料を集めてはならない。

弁護士が保存を求める際は,資料の種類,対象期間,保有者,保存期限及び廃棄・上書きを避ける必要性を具体的に示すのがよい。
提出用に整理した一覧や抜粋と,元の記録を区別し,取得日と取得方法を残す必要がある。

2 聞き取りと報告書の記載

「いつ,どこで,誰が,誰に,何をしたか」を確認し,本人が直接経験した事実,他人から聞いた内容,推測及び学校側の評価を分ける。
確認できなかった事項や食い違う説明も記録し,最初の仮説に合う資料だけを集めないことが重要である。

重大事態調査は刑事捜査と同じ強制権限を持つ手続ではなく,任意の協力による調査には限界がある。
報告書では,認定した事実,その根拠,認定できなかった事項,学校の対応の検証及び再発防止の提案を分け,調査の限界を含めて説明する必要がある。

第5 調査組織の専門性と第三者性

1 専門家だから第三者とは限らない

ガイドライン本文20頁~24頁は,調査主体と組織構成の検討を説明している。
当該学校と関係するスクールロイヤー,スクールカウンセラー等は,専門家として参加することが適切な場合がある一方,第三者と位置付けることは適切とはいえず,別の第三者を確保する必要があるとされる。

委員を検討するときは,学校・設置者への助言歴,対象事案への関与,関係者との人間関係や特別の利害関係を確認する。
職能団体等の推薦を受けた場合も,当該事案との具体的な関係を確認することが重要である。

2 事前説明の内容を具体化する

ガイドライン本文25頁~30頁に沿って,調査目的,調査主体,組織構成,対象とする事項,予定する方法,見通し,結果の提供及び個人情報の取扱いを説明する。
子ども・保護者の要望を聴き,採用できるものと採用できないものについて理由を共有する必要がある。

法28条2項の情報提供と,調査報告書を一般に公表することは別である。
情報提供を一律に拒否することも,関係児童生徒の情報を無条件に公開することも避け,法令,調査目的及び本人への配慮を踏まえて範囲・方法を検討する。

第6 初回相談で確認する事項

①出来事と本人の心身の状態,現在の安全
②学校・設置者へ伝えた内容,日時,相手及び回答
③重大事態としての報告・調査の扱いとその理由
④資料の所在,保存期限及び保存を求めた記録
⑤現在の支援策,担当者及び次回の確認日
⑥調査組織と弁護士等の役割,利害関係
⑦本人・保護者への事前説明,情報提供及び公表の方針

これらを整理することで,直ちに行う安全措置,学校・設置者への申入れ,調査への意見提出及び別の法的手続の検討を分けやすくなる。
個別事案では,学校種別,設置者の規則・条例,資料の内容及び受任する立場を確認する必要がある。

第7 出典

①いじめ防止対策推進法2条,23条及び28条
https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC1000000071

②文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」令和6年8月改訂版,本文6頁~30頁等
https://www.mext.go.jp/content/20240830-mext_jidou01-000037829_3.pdf

③東京弁護士会LIBRA令和8年10月号「いじめ対応と重大事態調査の最前線」。問題の所在を把握するための実務解説として参照した。法律上の要件と行政の運用は上記①②で確認する。
https://www.toben.or.jp/message/libra/libra-2026-10.html