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令和8年成年後見制度改正の施行準備―権限・必要性台帳,年次見直し及び旧後見・旧保佐から新補助への移行(AI作成)

令和8年法律第45号による成年後見制度の改正では,法定後見が「補助」に一元化され,家庭裁判所が必要な同意権・取消権,特定補助又は代理権を個別に定める仕組みに変わる。補助人には本人の意向を把握・尊重する義務と年1回の報告義務が置かれ,不要になった権限を外し,必要に応じて補助人を交代させる制度も整備される。

もっとも,令和8年9月27日現在,成年後見関係改正の具体的施行日は確定していない。この記事は,公布済みの法律と関係法律整備法から確認できる事項を基礎に,相談・申立て・受任中事件について今から作成できる「権限・必要性台帳」と,施行後の見直し手順を整理するものである。改正内容の全体像は,令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備で説明している。

第1 施行前から準備すべき理由

1 包括的な制度区分から個別の権限設計へ移る

改正前は,本人の判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助を選ぶ制度である。改正後は補助に一元化され,具体的な法律行為について,どの保護がなぜ必要かを示す必要がある。

したがって,「認知症だから後見」「財産が多いから保佐」という説明では足りない。預金払戻し,不動産売却,遺産分割,施設契約又は訴訟行為等の課題ごとに,本人だけでは何が難しく,どの権限があれば不利益を防げるかを記録する必要がある。

2 開始後も権限の必要性を見直す

改正法は,判断能力の回復だけでなく,個別の権限又は特定補助の必要性がなくなった場合にも,審判の全部又は一部を取り消すことができる。補助人は年1回,家庭裁判所が命じた事項を報告し,家庭裁判所は必要に応じて職権で取消しを行うことができる。

このため,申立時だけでなく,受任中も「現在必要な権限」「不要になった権限」「新たに必要となった権限」を説明できる記録が重要となる。

第2 権限・必要性台帳の作り方

1 課題を行為単位で記録する

本人の生活上又は財産上の課題を,次の項目に分けて記録する。

①対象となる法律行為又は生活上の課題
②現時点で本人ができることと,支援があればできること
③支援がない場合に生じる具体的な不利益
④本人への説明方法,表明された意向及び反対理由
⑤家族,福祉サービス,日常生活自立支援事業,財産管理契約等の代替手段
⑥必要と考える権限と,それより制限の少ない手段では足りない理由
⑦裏付け資料と情報源
⑧見直し時期と,終了・追加・交代を検討する条件

「将来何か起きるかもしれない」という抽象的な不安と,期限のある契約,滞納,財産被害又は現に進行する手続等の具体的な必要性を区別する。

2 事実・評価・未確認事項を分ける

台帳には,観察できた事実,申立人・親族・支援者の説明,弁護士の法的評価及び未確認事項を混在させない。例えば,「本人は契約を理解できない」とだけ書くのではなく,説明した情報,質問への回答,選択肢の比較,援助後の理解,過去の同種取引及び医学資料を分けて残す。

判断能力,同意能力及び意思表示能力は,場面と時点によって異なり得る。診断名だけから必要な権限を決めず,対象行為との関係を示す必要がある。

第3 必要な保護を三つに分ける

1 特定の行為に対する同意権・取消権

通常の補助では,重要な財産上の行為のうち家庭裁判所が定めた行為について,補助人に同意権が付与され,本人が補助人の同意なく行った行為を取り消すことができる。

本人以外の者が申し立てる場合は,本人が意思表示できないときを除き,本人の同意が必要である。対象行為を広く書くのではなく,現に保護が必要な行為と期間を具体化する。

2 特定補助

特定補助は,本人が事理を弁識する能力を欠く常況にあり,かつ必要がある場合に限られる。重要な財産上の行為についての取消権,意思表示受領権及び財産保存行為権を伴うが,当然に包括的な代理権が付く制度ではない。

そのため,通常の補助では足りない理由と,特定補助による制限が必要な範囲を個別に示す必要がある。

3 代理権

補助人に本人を代理して法律行為を行う権限が必要な場合は,対象行為を特定して代理権付与を求める。本人が自ら行う行為への同意・取消しと,補助人が本人に代わって行う代理を混同しない。

同じ課題について複数の権限を求めるときは,それぞれが必要な理由,重複の有無及び本人の関与方法を記録する。

第4 本人の意向を手続と記録に組み込む

1 意向尊重は一度の意見聴取ではない

改正後の補助人は,本人に情報を提供し,陳述を聴く等の適切な方法により本人の意向を把握し,その意向を尊重して職務を行う。本人の心身の状態及び生活状況にも配慮しなければならない。

したがって,申立時に賛否を一度尋ねるだけではなく,理解しやすい情報の量・順序・表現,意思を表明しやすい場所・時間・支援者,過去から一貫する価値観及び選好を記録することが有用である。

2 本人の意向と安全確保が衝突する場合

本人の意向を尊重することは,表明された希望に常に従うことと同義ではない。財産被害,生命・身体への危険,利益相反又は第三者への影響がある場合は,危険の具体性,代替案,制限の程度及び本人への再説明を記録する。

本人の言葉,支援者の解釈及び補助人の判断を分けて残すことで,事後的な検証が可能になる。

第5 旧後見・旧保佐・旧補助の経過措置

1 旧後見・旧保佐は自動的に新補助へ移らない

施行日前に開始した成年後見及び保佐は,原則として従前の例による。施行日に当然に新しい補助へ切り替わるわけではない。

本人に必要な保護が変化している場合は,旧審判を続けるか,新補助の開始・権限付与を申し立てるか,旧審判の取消しとどの順序で組み合わせるかを個別に検討する。施行前の段階で一律の移行案内をしてはならない。

2 旧補助は新補助とみなされる

施行前の補助は,原則として改正後の補助とみなされ,既に付与された権限も経過措置に従って扱われる。もっとも,既存の権限が現在も必要かは別問題であり,施行後の報告と見直しに備えて権限ごとの必要性を整理する必要がある。

3 旧事件にも適用される新しい職務規律がある

経過措置により,既存の後見・保佐にも,本人の利益のため特に必要な場合の新しい解任規定と,本人の意向を把握・尊重する職務規律が適用される。

もっとも,具体的な申立書,報告書,審理方法及び切替手順は,今後の政令,最高裁判所規則,裁判所書式及び運用を確認する必要がある。

第6 年次見直しと終了支援

1 毎年の報告を権限監査の機会にする

年1回の報告に備え,権限ごとに次の事項を確認する。

①この1年に権限を使った回数と対象行為
②本人が自ら行えた行為と,必要であった支援
③代替支援の開始・終了・安定性
④本人の意向・生活状況・財産状況の変化
⑤権限の縮小・追加,補助人の交代又は制度終了の要否
⑥次回までに確認すべき資料と担当者

利用実績がないことだけで直ちに不要とはいえず,将来使う可能性だけで維持できるとも限らない。危険の具体性,近接性,代替支援及び本人への制約を合わせて説明する。

2 終了後の支援を先に設計する

すべての保護の必要性がなくなれば,補助開始の審判も取り消される。制度終了後に,家賃・施設費・公共料金の支払,預金管理,医療・福祉サービスとの連絡又は詐欺被害防止が途切れないよう,取消し前から支援者,契約,連絡先及び引継資料を整える。

法定後見制度を終える判断と,本人への生活支援を終える判断は同じではない。

第7 任意後見との併存を検討する

改正後は,任意後見と法定補助が併存し得る。任意後見契約の代理権目録と,法定補助の同意権・取消権,特定補助及び代理権を行為ごとに照合し,権限の重複,空白及び利益相反を確認する。

また,改正法は,明らかに任意後見監督人による監督が不要である場合に監督人を選任しない余地を設ける。しかし,どのような場合がこれに当たるかについて,一般的な裁判所運用はまだ確定していない。専門職が受任することだけで当然に監督人が不要になると案内してはならない。

第8 施行前の実務チェックリスト

①受任中の後見・保佐・補助事件について,現在の権限一覧を作成したか。
②対象行為,必要性,代替支援及び本人への制約を権限ごとに記録したか。
③本人への情報提供,理解確認,意向及び選好を記録したか。
④親族・施設・金融機関・福祉機関の役割と権限の境界を整理したか。
⑤旧後見・旧保佐が自動的に新補助へ移行しないことを依頼者に説明したか。
⑥施行後の取消し,権限追加,補助人交代及び制度終了の候補を洗い出したか。
⑦任意後見契約がある場合,法定補助との権限重複を確認したか。
⑧具体的施行日,政令,最高裁判所規則及び最新書式を再確認する担当と時期を決めたか。

第9 出典と未確定事項

1 確認した一次資料

①法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」。令和8年法律第45号の成立日,公布日,施行の枠及び改正概要を確認した。
②参議院掲載「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)」。改正文と附則を確認した。
③衆議院「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審議経過」。令和8年法律第46号の成立・公布を確認した。
④厚生労働省「成年後見制度利用促進」及び第二期成年後見制度利用促進基本計画。本人の自己決定,意思決定支援及び制度外支援の政策的背景を確認した。

2 実務参考資料とその限界

第二東京弁護士会『NIBEN Frontier』2026年7月号の座談会「成年後見制度の大改正」は,権限の必要性,代替支援,旧制度からの移行及び任意後見との併存に関する実務上の論点を示している。

ただし,同座談会は令和8年3月17日に開催され,改正法成立前の法案を前提とする。座談会における施行時期や裁判所運用の予測は,公布済み法律又は確定した裁判所運用として扱わない。

3 令和8年9月27日現在の未確定事項

成年後見関係改正の具体的施行日,最高裁判所規則,申立書・診断書・本人情報シート・定期報告等の書式,同意能力・必要性・特定補助に関する審理運用,任意後見監督人を選任しない場合の判断基準,金融機関・登記実務及び旧事件から新補助への具体的切替手順は,引き続き確認が必要である。

本記事は公布済み法令を中心とする施行準備の記事であり,裁判例を根拠とする命題を掲載していないため,判例秘書の検索は実施していない。未検索は関連裁判例が存在しないことを意味しない。個別事件で旧法下の解任,代理権濫用,本人意思又は任意後見との関係が争点となる場合は,検索日,検索式,ヒット件数及び判決全文の確認範囲を残して別途調査する必要がある。