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交通事故の入院付添費―完全看護・医師の指示・近親者の実際の付添いと立証方法(AI作成)

家族が毎日病院へ行ったとしても,その全期間が当然に入院付添費として賠償されるわけではない。実務上は,①付添いの必要性,②現実の付添い,③相当な日額・期間を分けて立証することが重要である。

第1 入院付添費が認められる三つの要件

第一に,被害者の傷害,年齢,意識状態,行動障害,医療上の必要性等から,病院の看護に加えて近親者等の付添いが必要であったことを示す。第二に,家族が現実に何を,いつ,どの程度行ったかを示す。第三に,その内容に照らして相当な人数,期間及び金額を算定する。

面会,医師からの説明聴取,洗濯物の受渡し又は精神的な見舞いは大切であるが,それだけで直ちに損害賠償上の「付添看護」になるわけではない。反対に,無償の近親者付添いでも,必要な労務が提供されたのであれば,金銭評価できる損害となり得る。

最高裁昭和46年6月29日第三小法廷判決(昭和42年(オ)第1245号・民集25巻4号650頁)は,近親者の無償の付添看護について,被害者が付添看護料相当額の損害を受けたとして請求できることを認めた。

第2 完全看護と医師の指示の位置付け

現在の病院では,医療・看護上必要な行為は病院側が担うことが原則である。この体制は,家族付添費を当然に否定するものではない一方,家族の滞在をすべて不可欠な看護とみなす根拠にもならない。

医師の明示的な指示は付添いの必要性を裏付ける重要な証拠である。ただし,指示がなければ必ず否定されるわけではなく,傷害の部位・程度,被害者の年齢,意識障害,せん妄,高次脳機能障害,意思疎通の困難,転倒・自傷のおそれ等から必要性が認められることがある。

逆に,診断書に「家族付添を要する」とだけ記載されていても,期間,時間帯,具体的な役割及び病院の看護との分担が不明であれば,争いは残る。主治医だけでなく,看護記録,入院診療計画書,病棟の依頼・許可記録等を整合させる。

第3 付添いの必要性が問題となる主な場面

場面確認事項
意識障害・重篤な脳損傷見守り,意思伝達,体位変換,痰吸引の連絡,異常の早期発見等を家族が実際に担ったか。
乳幼児・児童年齢による不安,治療協力の困難,食事・排泄・睡眠の介助が病院看護だけで足りたか。
高齢者・認知機能障害せん妄,離棟,転倒,点滴自己抜去等のおそれと,家族の見守りの必要性。
四肢骨折・固定食事,排泄,移動等の日常生活動作がどの程度制限され,病棟側の介助で足りたか。
精神的不安定単なる心情的な見舞いを超え,治療遂行又は安全確保に必要な精神的支援であったか。
危篤・死亡直前看護上の必要性と家族としての面会・看取りを区別し,短期間でも具体的役割を示す。

『赤い本講演録編2016』は,完全看護の病院で医師の指示等の特別な必要性の立証がないとして否定した例(仙台高裁平成24年12月27日判決)や,面会時間に訪れていたにすぎない例(大阪高裁平成21年9月11日判決),医師の説明を受け診療計画書に署名したことだけでは付添いといえないとした例(東京地裁平成25年4月26日判決)を紹介している。

第4 実際に付き添ったことの立証

必要性があっても,実際の付添日数・内容を立証できなければ全期間は認められにくい。次の資料をできるだけ事故直後から残す。

  • 看護記録・経過表:家族の来院,病院からの依頼,患者の状態,家族が行った介助の記載
  • 医師・看護師への照会:必要な期間,時間帯,具体的行為,複数人又は宿泊の必要性
  • 家族の付添日誌:到着・退出時刻,介助内容,病棟職員とのやり取り,夜間対応
  • 交通系IC履歴,駐車券,高速料金,宿泊領収証:来院日及び実費
  • 勤務先の休暇簿,給与明細,休業証明:付添いに伴う欠勤・早退と減収
  • 病院の付添許可証,面会簿,メール・連絡記録:病院が求めた又は許可した経緯

家族の陳述書は重要であるが,後から一括して作ると記憶の正確性を争われやすい。看護記録等の客観資料と日付ごとに照合する。

第5 付添費の金額と近親者の休業損害

近親者付添費は,必要な労務を金銭評価する損害である。『赤い本講演録編2016』は,当時の赤い本の標準額を日額6500円と紹介するが,これは2016年当時の資料であり,個別請求では事故時及び請求時の最新版,付添内容,時間,人数並びに職業付添人費用を確認する。

重篤な脳損傷,長時間又は泊まり込みの付添い,特殊な介助では標準額を超えた例がある一方,複数の家族が交替したからといって人数分が当然に加算されるわけではない。必要な労務量を基礎に考える。

付添いのために家族の現実の減収が生じた場合も,近親者付添費との二重計上に注意する。誰でも代替できる付添いであれば,職業付添人又は標準的な近親者付添費相当額が上限と評価されることがある。特定の家族でなければ治療・意思疎通・安全確保が困難であった事情がある場合は,非代替性を具体的に立証する。

第6 交通費・宿泊費と二重計上

通常の近距離交通費や雑費は,付添費の日額に含むと評価されることがある。他方,遠隔地からの来院,転院先付近での宿泊等が必要かつ相当であれば,別途認められる余地がある。

最高裁昭和49年4月25日第一小法廷判決は,重傷者の看護等のため遠隔地の近親者が赴くことが社会通念上相当で,被害者が旅費を償還すべきものと認められる場合,通常利用される交通機関の普通運賃の限度で通常損害となり得るとした。

請求書では,付添費,付添者交通費,宿泊費,入院雑費,見舞交通費及び家族固有の休業損害を分け,どの領収証がどの項目に対応するかを明示する。同一の交通費を日額と実費の双方に含めない。

第7 請求・反論のための時系列表

日付・期間患者の状態病院側の看護家族の行為裏付け
入院直後意識,呼吸,手術,ICU等常時監視の内容意思伝達,説明対応等救急記録,診療録
一般病棟ADL,せん妄,認知,疼痛食事・排泄・移動介助見守り,介助,訓練補助看護記録,付添日誌
外泊・転院前退院準備,介護指導家族指導の内容介護技術の習得,環境調整退院支援記録

期間を一括して主張せず,症状や病棟が変わった時点で区切る。必要性が薄れた後まで同じ日額を請求すると,必要性の高い期間の信用性まで損なうことがある。

第8 出典と確認範囲

①最高裁昭和46年6月29日第三小法廷判決・昭和42年(オ)第1245号・民集25巻4号650頁,②最高裁昭和49年4月25日第一小法廷判決,③公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準2016年版(下巻)講演録編』「入院付添費について」。

本記事は提供された2016年講演録の裁判例整理を基礎とする。標準日額は版により更新され得るため,2016年の額を2026年現在の確定的な基準として示していない。個別事件では最新の赤い本・青本・大阪地裁基準及び引用判決全文を確認する必要がある。