その他役所関係

衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案

目次
1 衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案
2 国会同意人事案件の審査手続
3 国会同意人事案の事前漏洩
4 関連記事その他

1 衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案
(令和時代)
令和6年:2月1日3月7日11月28日
令和5年:1月23日2月14日5月12日10月25日
令和4年:1月20日3月1日10月6日
令和3年:1月21日3月9日12月7日
令和2年:1月28日3月17日10月29日
令和元年:5月15日11月13日
(平成時代)
平成4年平成5年平成6年平成7年
平成8年平成9年平成10年平成11年
平成12年平成13年平成14年平成15年
平成16年平成17年平成18年平成19年
平成20年平成21年平成22年平成23年
平成24年平成25年平成26年平成27年
平成28年平成29年平成30年平成31年
*1 ①令和元年5月15日提示から令和4年10月6日提示までの分及び②平成4年4月1日から平成31年4月30日までの提示分をまとめて掲載しています。
*2 令和時代に関しては,「衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案(令和◯年◯月◯日提示)」といったファイル名で掲載しています。

2 国会同意人事案の審査手続
(1)  吉川さおり参議院議員(全国比例)コラム「国会同意人事とは」には以下の記載があります。
国会同意人事とは、衆参両院の同意が必要な人事案件で、日本銀行総裁や日本放送協会経営委員、公正取引委員会委員長など、約40機関の250人以上が対象となるものです。
流れとしては、内閣が衆参両院の議院運営委員会理事会に人事案を提示後、10日程度を経て議決するのが慣例となっています。ただ、最近は、各会派の賛否の議論が出揃うタイミングや議事日程との関係等により、内示後10日程度より後の議決が多くなっています。
(2) 参議院HPの「国会キーワード76 同意人事案件」には以下の記載があります。
    同意人事案件とは、一定の独立性、中立性が求められる機関の構成員の任命について、各機関の根拠法に基づき、内閣が両議院の事前の同意又は事後の承認を求めるものです。現在、その対象は人事官(3名)や検査官(3名)等36機関253名に上ります。
    その審査手続について、法規上の規定はありませんが、先例上「内閣から同意又は承認を求められたときは、まず議院運営委員会において内閣から説明を聴取し、同委員会の決定があった後、議院の会議において議決するのを例とする」とされているほか、衆参の議運委員長申合せに沿って審査されています。具体的には、①内閣官房副長官が各院の議運理事会に内示(衆参同時)、②各会派で賛否を検討、③議運委員会で関係副大臣等から説明聴取の後、採決、④本会議で採決、⑤両院で同意の後、内閣において任命、の順に行われます。なお、人事官、検査官、公正取引委員会委員長、原子力規制委員会委員長、日本銀行総裁・副総裁については、各院の議運委員会で所信聴取・質疑を行います。


3 国会同意人事案の事前漏洩
(1) 衆議院議員鈴木宗男君提出国会同意人事を巡る政府の対応に関する再質問に対する答弁書(平成20年6月20日付)は,下記1等の質問に対し,下記2の回答をしています。

記1

一 衆参両院の同意が必要で、今国会中の処理が求められており、当初衆参の議院運営委員長らで構成される議院運営委員会両院合同代表者会議に一括して提示される予定だった九機関二十四人分の国会同意人事のうち、日銀政策委員会審議委員と預金保険機構理事長の二件(以下、「二件」という。)が本年五月二十七日付の新聞朝刊で報道されたことを受け、野党側が強く反発し、「二件」の国会同意を得るのが一時困難になった旨報じられたことにつき、前回質問主意書で、「二件」の人事案件が事前に報道機関に報じられたのはなぜか、政府において「二件」の人事案件を報道機関に漏らしたのは誰かと問うたところ、「前回答弁書」では「御指摘の二件の人事案件について、政府案を議院運営委員会両院合同代表者会議に提示する前にその内容が報道された経緯等については承知していない」との答弁がなされているが、「二件」を漏らしたのは町村信孝内閣官房長官ではないのか。

記2

先の答弁書(平成二十年六月六日内閣衆質一六九第四四三号)の一、二、四及び五についてで述べたとおり、御指摘の二件の人事案件について、政府案を議院運営委員会両院合同代表者会議に提示する前にその内容が報道された経緯等については承知していないが、今後かかる事態が生じないよう、政府としては十分情報管理に注意してまいる所存であり、お尋ねに対して適切に答弁しているものと認識している。
(2) ヤフージャパンニュースの「雨宮副総裁の名前が報道された次期日銀総裁人事案の「背景」」(2023年2月8日付)には以下の記載があります。
日経新聞が雨宮副総裁の名を掲載
飯田)6日に日経新聞が「黒田総裁の後任として雨宮副総裁に就任を打診した」と書いて、ハレーションが起きました。
高橋)昔は国会に関係なくリークすることもありました。民主党時代だったでしょうか。そのときから国会同意人事については絶対にリークさせないように動いていた。
飯田)衆参がねじれていたころに、総裁人事がリークされて新聞に載ったら、「リークされた人事は承服できない」と言って……。
高橋)そう言っていたのが懐かしいくらい、とても古いタイプの人事ですね。そのあとの安倍政権では漏れていません。
(3) 黒田東彦日銀総裁(令和5年4月8日任期満了)の後任となる日銀総裁の人事案は令和5年2月14日に衆参両院の議院運営委員会に提示される予定でしたが,同月10日に報道されました(NHK NEWS WEBの「首相が日銀総裁起用意向の植田氏“現状は金融緩和継続が重要”」(2023年2月10日付)参照)。


4 関連記事その他
(1) 最高裁判所裁判官及び高等裁判所長官の人事は,国会同意人事案の対象にはなっていません。
(2) 参議院本会議は,平成20年3月12日,武藤敏郎(元大蔵事務次官及び財務事務次官。日銀副総裁)を日銀総裁とし,伊藤隆敏(東京大学大学院経済学研究科教授)を日銀副総裁とする人事案を否決し,同月19日,田波耕治(元大蔵事務次官)を日銀総裁とする人事案を否決し,同年4月9日,渡辺博史(元財務官)を日銀副総裁とする人事案を否決しました。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 高等裁判所長官を退官した後の政府機関ポストの実例
・ 各府省幹部職員の任免に関する閣議承認の閣議書
・ 最高裁判所長官任命の閣議書
・ 最高裁判所判事任命の閣議書
・ 高等裁判所長官任命の閣議書
・ 検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書
・ 内閣法制局長官任命の閣議書

故安倍晋三国葬儀

目次
第1 安倍元首相の葬儀を国葬儀の形式で行う理由等
第2 閣議決定を根拠として国葬儀を行える理由
第3 安倍元首相の叙位叙勲
第4 故安倍晋三国葬儀の準備状況
第5 故安倍晋三国葬儀の費用
第6 故安倍晋三国葬儀の実施概要及び流れ
第7 故安倍晋三国葬儀の一般献花
第8 故安倍晋三国葬儀当日における弔意表明
第9 故安倍晋三国葬儀に伴う飛行制限区域の設定
第10 故安倍晋三国葬儀に伴う交通規制その他の影響
第11 関連記事その他

* 令和4年10月8日,「国葬儀」から本記事を分離しました。



第1 安倍元首相の葬儀を国葬儀の形式で行う理由等
1 岸田首相は,令和4年7月14日の内閣総理大臣記者会見の冒頭発言において,安倍元首相の葬儀を国葬儀の形式で行う理由として以下のとおり発言しています。
 安倍元総理におかれては、憲政史上最長の8年8か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって、厳しい内外情勢に直面する我が国のために内閣総理大臣の重責を担ったこと、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績を様々な分野で残されたことなど、その御功績は誠にすばらしいものであります。
 外国首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、また、民主主義の根幹たる選挙が行われている中、突然の蛮行により逝去されたものであり、国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられています。
 こうした点を勘案し、この秋に国葬儀の形式で安倍元総理の葬儀を行うことといたします。国葬儀を執り行うことで、安倍元総理を追悼するとともに、我が国は、暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示してまいります。あわせて、活力にあふれた日本を受け継ぎ、未来を切り拓いていくという気持ちを世界に示していきたいと考えています。


2(1) 参議院議員辻元清美君提出安倍晋三元総理の国葬儀等についての基準に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 元内閣総理大臣の葬儀の在り方については、これまでも、その時々の内閣において、様々な事情を総合的に勘案し、その都度ふさわしい形を判断してきたところであり、現時点においても、これまでと同様の取扱いを踏襲することは可能であると考えていることから、お尋ねの「基準」については検討しておらず、存在しない。
(2) 衆議院議員中谷一馬君提出安倍晋三元内閣総理大臣の国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 元内閣総理大臣の葬儀の在り方については、これまでも、その時々の内閣において、様々な事情を総合的に勘案し、その都度ふさわしい形を判断してきたところであり、御指摘の「功績」等の特定の観点から、個別の元内閣総理大臣と比較して、「国葬に値する」、「功績を超える」等と評価して判断すべき性質のものではないと考えている。
3 令和4年8月31日の岸田内閣総理大臣記者会見には以下の記載があります。
 次に、9月27日に予定しております安倍元総理の国葬儀について申し上げます。
 選挙遊説中の安倍元総理に対する凶行を受けて、私は国葬儀を実施するとの決断をいたしました。民主主義の根幹たる国政選挙を6回にわたり勝ち抜き、国民の信任を得て、憲政史上最長の8年8か月にわたり重責を務められたこと。第2に、東日本大震災からの復興や、日本経済の再生、日米関係を基軸とした戦略的な外交を主導し、平和秩序に貢献するなど、様々な分野で歴史に残る業績を残されたこと。第3に、諸外国における議会の追悼決議や服喪の決定、公共施設のライトアップを始め、各国で様々な形で国全体を巻き込んでの敬意と弔意が示されていること。第4に、民主主義の根幹である選挙活動中の非業の死であり、こうした暴力には屈しないという国としての毅然(きぜん)たる姿勢を示すこと。国葬儀を執り行うとの判断に至った理由をこのように説明してきました。
 諸外国からは、各国王族、大統領など、国家元首・首脳レベルを含め、多数の参列希望が寄せられております。こうした各国からの敬意と弔意に対し、日本国として礼節を持ってお応えすることが必要だとの思いを強くしております。
 もとより、今回の国葬儀の開催は、国民に弔意を強制するものではありませんが、様々な御意見とともに、説明が不十分との御批判を頂いております。国葬儀の実施を判断した総理大臣として、そういった御意見、御批判を真摯に受け止め、正面からお答えする責任があります。政権の初心に帰って、丁寧な説明に全力を尽くしてまいります。
 そのため、国会の場で、閉会中審査の形で、私自身が出席をし、テレビ入りで国葬儀に関する私の決断について質疑にお答えするという機会を頂きたいと考えております。一日でも早くこうした場をつくるべく、与党幹事長、国対委員長に必要な調整を行っていただくよう、先ほどお願いいたしました。野党の皆様にも御協力を賜れれば幸いです。
4(1) 東京新聞HPの「国葬、当初は「国民葬」軸に検討…首相が慎重論退ける」(2022年7月15日付)には「政府内には国葬を行うことに法的根拠の面などから慎重論もあったが、首相の強い思いで(山中注:国葬(国葬儀)が)実現することになった。」と書いてあります。
(2) 衆議院議員江田憲司君提出安倍元首相の「国葬儀」に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には「お尋ね(山中注:岸田首相は、国葬儀決定にあたり、「国葬という高い評価をすることで派遣される要人のレベルも高くなり、『弔問外交』にもつながる。合同葬だったらそうはいかない」と周囲に説明したと報道(朝日新聞七月二十三日付)されているが、事実か。)については、個別の報道の内容に関するものであり、政府としてお答えすることは差し控えたい。」と書いてあります。


第2 閣議決定を根拠として国葬儀を行える理由
1 岸田首相は,令和4年7月14日の内閣総理大臣記者会見の質疑応答において,閣議決定を根拠として国葬儀を行える理由として以下のとおり発言しています(改行を追加しています。)。
 国葬儀、いわゆる国葬についてですが、これは、費用負担については国の儀式として実施するものであり、その全額が国費による支弁となるものであると考えています。
 そして、国会の審議等が必要なのかという質問につきましては、国の儀式を内閣が行うことについては、平成13年1月6日施行の内閣府設置法において、内閣府の所掌事務として、国の儀式に関する事務に関すること、これが明記されています。
 よって、国の儀式として行う国葬儀については、閣議決定を根拠として、行政が国を代表して行い得るものであると考えます。
 これにつきましては、内閣法制局ともしっかり調整をした上で判断しているところです。
 こうした形で、閣議決定を根拠として国葬儀を行うことができると政府としては判断をしております。
2(1) 「国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて」(令和4年7月14日付の内閣官房及び内閣府の文書)には以下の記載があります。
(1) 過去、国葬儀の形式で実施された昭和42年10月の吉田元総理の葬儀については、閣議決定を根拠として行われた。
(2) この点については、
① 国の儀式を内閣が行うことについては、行政権の作用に含まれること
② 国家の賓客として、国の費用で接待(皇居での歓迎行事や宮中晩餐等を実施)される国賓の招致決定についても、行政権に属する者として、閣議決定により行われていること
③ また、現行の内閣府設置法においては、「国の儀式に関する事務に関すること」が明記されており(4条3項33号)、国葬儀を含む「国の儀式」の執行は、行政権に属することが法律上明確となっていること
④ 国費をもって国の事務として行う葬儀を、将来にわたって一定の条件に該当する人について、必ず行うこととするものではないこと
から、閣議決定を根拠に国の儀式である国葬儀を実施することは可能であると考えられる。
(2) 衆議院議員江田憲司君提出安倍元首相の「国葬儀」に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 内閣法制局においては、内閣官房及び内閣府から、閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことは、国の儀式を内閣が行うことは行政権の作用に含まれること、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四条第三項第三十三号において内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されており、国葬儀を含む国の儀式を行うことが行政権の作用に含まれることが法律上明確となっていること等から、可能であるとする見解について、意見を求められたことから、これに対し、所要の検討を行った上、意見はない旨の回答をしたところである。
3(1) 「国賓及び公賓並びに公式実務訪問賓客の接遇について」(昭和59年3月16日付の閣議決定)には「外国の元首又はこれに準ずる者を招へいする場合には、これを国賓として接遇することができるものとし国賓として接遇することについては、外務大臣が宮内庁長官と連絡の上、その請議により閣議において決定する。 」と書いてあります。
(2) 国葬儀の対象者や実施方法を定めた法律又は政令は存在しないのであって,内閣府設置法4条3項33号は,「国の儀式」に関する事務は内閣府の所掌事務であると定めているに過ぎません。
4(1) 真実を整えるブログ「国葬儀の「法的根拠」と唯一の立法機関・法律の留保・内閣府設置法:安倍晋三元内閣総理大臣の国葬は違法なのか」が載っています。
(2) 論座HP「安倍元首相「国葬儀」が抱える重大リスクに、岸田首相は堪え得るか さらなる社会の「分断」「二極化」と莫大な葬儀コスト」が載っています。
(3) 内閣法制局の令和4年答弁案関係資料(その他)のうち、「参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書」(内閣府から内閣法制局に提出された参考資料を除く。)を掲載しています。


第3 安倍元首相の叙位叙勲
1 安倍元首相は,令和4年7月11日付の閣議決定により,従一位に叙され,かつ,大勲位菊花章頸飾及び菊花大綬章を授与されました(首相官邸HPの「元内閣総理大臣安倍晋三氏を従一位に叙すること並びに大勲位菊花章頸飾及び菊花大綬章の授与について」,及び「令和4年7月11日付の閣議書(令和4年7月8日付で,衆議院議員安倍晋三に対し,従一位に叙するとともに,大勲位菊花大綬章並びに頚飾を授ける。)」参照)。
2 日本国憲法施行後の首相経験者として従一位に叙せられ,かつ,大勲位菊花章頸飾を授けられたのは,吉田茂,佐藤栄作,中曽根康弘及び安倍晋三の4人です。


第4 故安倍晋三国葬儀の準備状況
1(1) 令和4年9月14日,同年秋に国葬儀を実施することを岸田文雄首相が内閣総理大臣記者会見で表明し,同月22日付の閣議決定により,同年9月27日に日本武道館で実施することが閣議決定で決まりました。
(2) 故安倍晋三の葬儀の執行について(令和4年7月22日付の閣議決定)は以下のとおりです。
1 葬儀は、国において行い、故安倍晋三国葬儀と称する。
2 葬儀に関する事務をつかさどらせるため、葬儀委員長、同副委員長及び同委員を置く。葬儀委員長は内閣総理大臣とし、同副委員長及び同委員は内閣総理大臣が委嘱する。
3 葬儀は、令和4年9月27日(火)、日本武道館において行う。
4 葬儀のため必要な経費は、国費で支弁する。
2(1) 令和4年7月22日,森昌文(もりまさふみ)内閣総理大臣補佐官の指揮の下,国葬儀に関する事務を実施する故安倍晋三国葬儀事務局を内閣府に立ち上がりました(首相官邸HPの「令和4年7月22日午前の内閣官房長官記者会見」参照)。
(2) 令和4年7月22日,海外からの国葬儀への出席者に対する接遇等を遺漏なく行うための「故安倍晋三国葬儀準備事務局」(事務局長:石月英雄 外務省アジア大洋州局参事官)が30人規模で外務省内に設置されました(外務省HPの「「故安倍晋三国葬儀準備事務局」の設置について」及び「林外務大臣会見記録(令和4年7月22日(金曜日)10時52分 於:本省会見室)」参照)。
3 衆議院議員緒方林太郎君提出国葬に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には「お尋ねの「宗教的な行為」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、故安倍晋三国葬儀は、無宗教形式で行うこととしている。」と書いてあります。
4 「故安倍晋三国葬儀 葬儀実行幹事会」は以下の日程で開催されています(内閣府HPの「故安倍晋三国葬儀について」参照)。
第1回:令和4年7月28日
第2回:令和4年8月31日
第3回:令和4年9月21日


第5 故安倍晋三国葬儀の費用
1 令和4年8月26日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬義に必要な経費について
 次に、本日の閣議において、故安倍晋三国葬儀に必要な経費について、令和4年度一般会計予備費の使用を決定をしました。国葬儀については、その実施内容を検討しているところであります。今般の国葬儀においては、安倍元総理を追悼したいという気持ちをお持ちの方々のために、日本武道館とは別の場所に献花台を設け、一般献花を実施すること、海外から元首・首脳級の方を含む多数の要人の参列が見込まれることから、参列に当たって必要となる同時通訳等に万全を期す必要があること、会場となる日本武道館には複数の出入口があり、それぞれに警備員や金属探知機を配置するなど、昨今の状況を踏まえて、万全の警備体制を敷く必要があること、さらに参列者として最大で6,000人程度の規模が見込まれることから、その人数に応じたバスの手配やしおりの準備等が必要となること、こうしたことから、予備費の使用額は、令和2年に行われた中曽根元総理の内閣・自由民主党合同葬から約5,700万円増の約2億4,900万円となります。
2  令和4年9月6日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬儀について
 本日、故安倍晋三国葬儀に関し、お手元に配付のとおり、国葬儀の流れを葬儀委員長決定しました。また、国葬儀に際し、自衛隊による儀礼の実施について、葬儀委員長から防衛大臣に対する協力を依頼することとしました。さらに、国葬儀後、迎賓館において、葬儀委員長である岸田総理ほかが、海外から来られた要人から個別に弔意を受け、挨拶する機会を設ける予定であります。そして、国葬儀に要する経費の見込みについて申し上げます。これまで予備費で賄うこととした式典関係の経費2.49億円以外に、警備費や海外要人の接遇に要する経費などが必要となる見込みであること、しかしながら、警護・接遇を要する要人の数等が不確定であるため、経費についても確たることを申し上げるのは困難であること、を申し上げてまいりました。また、これまでも国が関与した葬儀に関して、既定経費で支出する警備・接遇に要する経費を切り出してお示しをしたことはありません。一方で、先日、総理からもお話があったように、丁寧な説明を尽くすという観点に加え、これまでの各国からの連絡状況を踏まえ、海外から190以上の代表団が参列し、その中で特別の接遇を要する首脳級等の代表団の数が50程度と見込まれることから、これを仮定するとともに、そうした要人が多数集まる行事に対する警備体制を一定の規模で仮定すること等により、あえて現時点での経費の見込みをお示しをしたいと思います。以下申し上げる警備・接遇等の経費については、過去の合同葬と同様に、既に成立をしている今年度予算の中で対応するものであります。まず、警備に関するものでございますが、具体的には、まず警備に要する経費としては8億円程度と見込まれます。その内訳は、道府県警察からの派遣のための旅費などの部隊活動や超過勤務手当に関わる経費が5億円程度、車両等の装備資機材や待機所の借上げの装備費が3億円程度であります。次に、海外要人の接遇に要する経費については6億円程度と見込まれます。その内訳は、海外要人の本邦滞在中の車両の手配や空港での受入体制の構築等の庁費が5億円程度。接遇要員として一時帰国させる在外公館職員の出張のための旅費が1億円程度であります。このほか、自衛隊の儀じょう隊等の車両借上費等が0.1億円程度と見込まれております。これも既定予算で対応することとしております。私(官房長官)からは以上です。
3 令和4年10月14日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬儀に要した経費の速報値について
 次に、故安倍晋三国葬儀に関し、要した経費についての速報値を取りまとめましたので、申し上げます。なお、この速報値については、国葬儀の経費の全体像を示すため、取り急ぎまとめたものであり、正規の決算手続を経たものではなく、今後の精査により計数の異動があり得るものであります。
 まず、式典等に要した経費の速報値については、2.4億円となります。その内訳は、企画・演出及び警備費等の経費1.9億円、日本武道館の借上経費等0.5億円であります。警備に要した経費につきましては、4.8億円となります。その内訳は、都道府県警察からの派遣のための旅費等の部隊活動や超過勤務手当に係る経費2.6億円、車両等の装備資機材や待機所の借上げ等の装備費2.2億円であります。さらに、接遇に要した経費の速報値については、5.1億円となります。その内訳は、海外要人の本邦滞在中の車両の手配や、空港での受入体制の構築等の庁費4.5億円、接遇要員となる在外の外務省職員を往復させるための旅費0.6億円であります。このほか、自衛隊の儀じょう隊等の車両借上費等に要した経費の速報値については、0.1億円となります。これらの経費を合計すると12億円台半ばとなります。
 次に、国葬儀における案内状発送数、参列者数について申し上げます。案内状は、国内の6,175人の方に御送付をし、外国からの参列者734人を含め、合計4,170人の方に御参列いただきました。改めて、多くの方に御参列いただきましたことに感謝申し上げたいと思います。
 次に、警備について申し上げます。警視庁では、最大時約20,000人、うち特別派遣部隊約2,500人で警備を実施しました。
 次に、今回の国葬儀の検証について申し上げます。故安倍晋三国葬儀について、政府がどのような根拠や考え方で執り行ったのか、また、国民の間でどのような議論があったか等を記録して残すこととします。このため、憲法、行政法、外交等、幅広い分野の有識者約20名から30名に対し、個別にヒアリングを実施し、「意見」を収集して、「論点」を整理し、できる限り早期に公表します。その上で、総理が国会でお答えしたとおり、国葬儀の実施について国民各層の幅広い御理解を得る観点から、国会との関係など、どのような手順を経るべきなのか、一定のルールを設けることを目指します。私(官房長官)からは以上です。



第6 故安倍晋三国葬儀の実施概要及び流れ
1 令和4年9月27日午後2時に開始する予定の「故安倍晋三国葬儀」実施概要(令和4年8月31日の故安倍晋三国葬儀葬儀実行幹事会決定)は以下のとおりです。
1.日時・場所
・ 令和4年9月27日(火)午後2時開式
・ 日本武道館
2.参列者 ・現・元三権の長、現・元国会議員、海外の要人、立法・行政・司法関係者、地方公共団体代表、各界代表 等
・ 最大で約6000人程度
・ 案内状については9月初から順次発送する。
3.一般献花
・ 9月27日午前10時から午後4時までの間、日本武道館外に設ける献花台において、一般献花を実施する。
・ 献花用の花は各自で用意いただく。
4.葬儀当日の会場周辺の立ち入り制限
・ 国葬儀当日は、日本武道館周辺について参列者以外の立ち入りを制限する。
2 令和4年9月27日午後2時に開始する予定の故安倍晋三国葬儀の流れは以下のとおりです。
一 御遺骨式場到着
一 開式の辞 葬儀副委員長(内閣官房長官)
一 国歌演奏
一 黙とう
一 生前のお姿の映写
一 追悼の辞 葬儀委員長(内閣総理大臣) 岸田 文雄
      衆議院議長 細田 博之
      参議院議長 尾辻 秀久
      最高裁判所長官 戸倉 三郎
      友人代表 菅 義偉
一 勅使・皇后宮使御拝礼
一 上皇使・上皇后宮使御拝礼
一 御供花 皇族各殿下
一 献花
      葬儀委員長
      喪主
      御遺族
      衆議院議長
      参議院議長
      最高裁判所長官
      友人代表
      海外の要人 等
一 御遺骨お見送り
引き続き参列者による献花
3 参議院議員浜田聡君提出国葬儀における選曲に関する質問に対する答弁書(令和4年10月14日付)には以下の記載があります。
① 故安倍晋三国葬儀において演奏した楽曲については、広く国民に親しまれている楽曲や、演奏を行う自衛隊の音楽隊が過去に式典等において演奏した実績のある楽曲等を参考に、御指摘の「アメイジンググレイス」を含む二十七曲を選定したものである。
② 故安倍晋三国葬儀は、無宗教形式で行うこととしたものであるため、その実施に当たり、政府として、お尋ねの「安倍元総理の宗派」は把握していない。
③ 故安倍晋三国葬儀において演奏した楽曲については、御指摘の「アメイジンググレイス」を含め幅広く二十七曲を選定したものであり、また、「アメイジンググレイス」が広く国民に親しまれている楽曲であること等から、宗教との関わり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものではなく、「政教分離原則(日本国憲法第二十条第一項後段、同条第三項、第八十九条)に違反する」との御指摘は当たらないと考えている。


第7 故安倍晋三国葬儀の一般献花
1 令和4年9月21日(水)午後の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬儀葬儀実行幹事会の開催について
本日、故安倍晋三国葬儀に関し、葬儀実行幹事会を開催し、お手元に配付のとおり、一般献花の実施要領を幹事会決定しました。一般献花は、国葬儀当日の午前10時から午後4時まで、千代田区九段坂公園において実施します。内堀通り墓苑(ぼえん)入口交差点側の、千鳥ヶ淵(ちどりがふち)緑道が献花会場への入口となります。このため、九段下駅ではなく、半蔵門駅が最寄り駅ですので、御注意をお願いいたします。献花用の花は各自で御用意いただき、献花台には花のみを献じてください。立入制限の時間、来場方法、注意事項など、一般献花の実施については、内閣府ホームページでもお知らせいたします。皆様に静謐(せいひつ)な環境下で、献花を行っていただくため、国民の皆様の御協力をお願いをいたします。私(官房長官)からは以上です。
2 「故安倍晋三国葬儀 一般献花」実施要領 (令和4年9月21日故安倍晋三国葬儀葬儀実行委員会幹事会決定)は以下のとおりです。
1.日時・場所
・令和4年9月27日(火)午前10時から午後4時まで
・千代田区九段坂公園(千代田区九段南2-2-18)
2.実施内容 ・九段坂公園に献花台を2台(1台で同時に10人が献花可能)設置する。
・献花台には花のみを献ずることができることとし、献花用の花は各自で用意いただく。
・献花前に手荷物検査を実施する(手荷物検査場は千鳥ヶ淵緑道ボート乗り場付近)。
3.会場周辺の立入制限と来場方法
・当日は、九段坂公園及び千鳥ヶ淵緑道周辺について、献花者以外の立入りを制限する。
・献花者は、墓苑入口交差点から千鳥ヶ淵緑道に入り、手荷物検査を受けた後、献花台に向かうこととする。
4.荒天の場合の措置
・台風、雷雨等の場合には、一般献花を中止することがある。
5.一般献花に係る周知
・立入制限の時間、来場方法、注意事項など、一般献花の実施について、ホームページ等で周知する。
3 「故安倍晋三国葬儀 一般献花」に関する「お知らせ」は以下のとおりです。
一般献花される際には以下の留意事項についてご協力をお願いします。
【日時】令和4年9月27日(火)10:00から16:00まで
【場所】千代田区九段坂公園(千代田区九段南2-2-18)
※内堀通り墓苑入口交差点側の千鳥ヶ淵緑道が献花場所(九段坂公園)への入口となります。係員の誘導に従いお進みください。

【地図】末頁をご参照ください。
【留意事項】
1.9月27日(火)は、九段坂公園及び千鳥ヶ淵緑道(特別区道千第231号線。車道及び歩道)は内閣府国葬儀事務局が占有することとしております。そのため、国葬儀関係者及び一般献花者以外終日入場できません。また、一般献花者であっても献花開始時間前の入場はできませんのでご協力をお願いします。
2.献花会場周辺は交通規制が行われていることから、公共交通機関でのご来場をお願い します。(東京メトロ半蔵門線「半蔵門駅」5番出口よりお越しください。九段下駅から は交通規制でかなり迂回していただくことになります。)
3.献花用の花はご自身でご用意いただきますようお願いします。 献花される際にお持ちいただけるものは、お花のみとさせていただきます。 (飲み物やぬいぐるみなど、花以外のものは献花台に置くことができません。)
4.記帳所は設けておりません。
5.警備上の観点から、献花前に手荷物検査(必要に応じて金属探知機を用いたボディチェック等)を実施しますのでご協力をお願いします。
6.熱中症の予防対策をお願いします。
7.新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、混雑時の会話はお控えください。
8.次の該当者は献花をご遠慮ください。
・咳や発熱など風邪の症状、息苦しさや強いだるさなどがある方。
・マスクの着用をされていない方。(人との距離(2mを目安)が確保できている 場合は、マスクを着用いただく必要はありません。)
・厚生労働省が定める入国後の自宅等待機期間が終了していない方。 (厚生労働省HP) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00209.html
9.皆様に静謐な環境下で献花を行っていただくため、九段坂公園及び千鳥ヶ淵緑道(特別区道千第231号線。車道及び歩道)において次の留意事項についてご協力をお願いします。
①九段坂公園及び千鳥ヶ淵緑道は弔意を表し、献花される方のために内閣府国葬儀事務局が占有するスペースです。献花目的以外の方はお並びできません。また、第三者がこのスペースの占用又は使用にわたる行為をすることはできません。
②献花台にはお花のみ置くことができます。
③次のような行為はお控えください。
・ビラ類を貼紙したり、配布したり、散布したりすること
・横幕、のぼり、看板、プラカード、メガホン、ドローン、ラジコン等を持ち込むこと
・献花の進行を著しく遅延させること
・献花場所及び緑道での写真・動画撮影、大声をあげること等他の方の迷惑になるよ うなこと
④新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、混雑時の会話をお控えください。
⑤係員の整理誘導に従ってください。混雑緩和のため、献花後は進行方向にお進みください。
⑥係員の指示に従わない場合は、献花をお断りし、お帰りいただくことがあります。


第8 故安倍晋三国葬儀当日における弔意表明
1 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
① 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明の在り方については、現在検討しているところであり、現時点でお尋ねについて明確にお答えすることは困難であるが、例えば、お尋ねの「半日休むようにというようなこと」及び「歌舞音曲を慎んだらどうですかということ」について求めることは現時点では考えていない。
② 故安倍晋三国葬儀は、北の丸公園内に所在する日本武道館において行うこととしているところ、故安倍晋三国葬儀の具体的内容は現在検討中であり、現時点でお尋ねについてお答えすることは困難である。
2 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明について(令和4年8月31日付の故安倍晋三国葬儀葬儀委員長決定)は以下のとおりです。
故安倍晋三国葬儀の当日には、哀悼の意を表するため、各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙とうすることとする。
3 参議院議員小西洋之君提出安倍元総理の国葬儀と国民、国会、裁判所との関係等に関する質問に対する答弁書(令和4年10月14日付)には以下の記載があります。
① 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明の在り方については、令和四年九月八日の衆議院議院運営委員会及び参議院議院運営委員会において、松野内閣官房長官が「国民一人一人に弔意の表明を強制的に求めるものであるとの誤解を招くことがないよう、吉田元総理の国葬儀の際に実施した、弔意表明を行う閣議了解や、地方自治体や教育委員会等の関係機関に対する弔意表明の協力方の要望は行わないこととしました」と述べたとおりであり、これは個別の「官公庁、自治体、学校等において黙とうなどの弔意表明が求められた場合」に関する「政府の見解や方針」を述べたものではなく、また、御指摘の「弔意表明を行う必要はなく求めるべきでないことについての通知」も行っていない。
② 各府省において「葬儀委員長の決定」の内容を周知することは、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十八条第一項等に規定する職務上の命令には該当しないと考えており、職員が弔意表明を行わない場合でも、これに対して同法第八十二条等に規定する懲戒処分を課すことはできないと考えている。また、御指摘の「自治体、教育委員会、学校において弔意表明が求められ、職員や教職員や児童生徒がこれを拒んだ場合」については、個別具体的な状況が明らかではないため、お尋ねの「不利益(懲戒や処分)や指導等を課すことは法的に可能であるのか」について一概にお答えすることは困難であるが、一般に、合理的な理由なく不利益処分を課すことはできないと考えている。
 また、「葬儀委員長の決定」は、各府省の職員に対して黙とうの機会を設けるという趣旨であり、職員一人一人に対して黙とうすることを求めているものではなく、実際に各府省の職員が黙とうを行ったかどうかについては把握していない。

 


第9 故安倍晋三国葬儀に伴う飛行制限区域の設定
1 国土交通省は,令和4年8月25日,国葬儀に伴い9月26日から9月28日までの間,日本武道館を中心とする半径25海里(約46km)の円内において,航空法80条に基づき飛行制限区域を設定しましたところ,飛行制限を適用しない航空機は以下のとおりです(国土交通省HPの「国葬儀に伴う飛行制限区域の設定」参照)。
① 警備等を任務とする航空機(警察等)
② 管制機関から飛行を認められた航空機(定期便(東京国際空港他)等)
③ 航空法第80条但し書きによる許可を受けた航空機(報道機等)
④ 航空法第81条の2に基づく捜索又は救助のための航行を行う航空機(消防・防災ヘリ等)
2(1) 航空法の関係条文は以下のとおりです。
80条(飛行の禁止区域)
航空機は、国土交通省令で定める航空機の飛行に関し危険を生ずるおそれがある区域の上空を飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
81条の2(捜索又は救助のための特例)
前三条の規定は、国土交通省令で定める航空機が航空機の事故、海難その他の事故に際し捜索又は救助のために行なう航行については、適用しない。
(2) 航空法施行規則の関係条文は以下のとおりです。
173条(飛行の禁止区域)
法第八十条の規定により航空機の飛行を禁止する区域は、飛行禁止区域(その上空における航空機の飛行を全面的に禁止する区域)及び飛行制限区域(その上空における航空機の飛行を一定の条件の下に禁止する区域)の別に告示で定める。ただし、緊急に航空機の飛行を禁止する区域を定める必要があるため、告示により当該区域を定めるいとまがないときは、国土交通大臣は、その必要な限度において、告示をしないで、飛行禁止区域又は飛行制限区域を定めることができる。


第10 故安倍晋三国葬儀に伴う交通規制その他の影響
1 故安倍晋三国葬儀に伴う交通規制
・ 警視庁HPの「国葬儀等に伴う交通規制のお知らせ(9月26日から9月28日)」によれば,以下のとおりです。
令和4年9月27日(火曜)
日本武道館における国葬儀及びその後の迎賓館における行事に伴い、昼前から夜にかけて、都内の首都高速道路において、車両通行止めの交通規制が実施されます。
このほか、一般道路においても、必要な交通規制が実施されます。
令和4年9月26日(月曜)から令和4年9月28日(水曜)
外国要人の来日・離日の際の移動などに伴い、首都高速道路や一般道路において、一時的な交通規制が実施される見込みです。


2 故安倍晋三国葬儀に伴うバス運行への影響
(1) 東急バスHPの「国葬儀等に伴う交通規制の影響によるバスの運行について 2022年9月26日~2022年9月28日▼大幅な遅延が発生する場合があります▼」には以下の記載があります。
日頃より東急バス・東急トランセをご利用いただきまして誠にありがとうございます。
2022年9月26日(月)~28日(水)の期間、日本武道館における国葬儀及びその後の迎賓館における行事・要人の来日に伴いまして、車両通行止めを中心とした大規模な交通規制が実施される予定です。
この交通規制は首都高速道路を中心に実施される事から、一般路線バス、空港連絡バス及び高速バスの運行に大幅な遅延が発生する場合がございます。
また、交通規制となる時間や路線の詳細は、警備の都合上、事前に周知されません。
ご利用予定のお客さまにおかれましては、お時間には十分に余裕を持ってご利用くださいますようお願い申し上げます。
尚、バス運行の遅延等による損害については、運行会社ではその責を一切負いかねますので予めご了承ください。
(2) 東京都交通局HPの「「国葬儀」に伴う交通規制時の運行について」にはバス路線の運行形態の変更のことが書いてあります。
3 故安倍晋三国葬儀に伴う郵便物等への影響
(1) 日本郵便HPの「国葬儀等に伴う郵便物・ゆうパックなどのお届け遅延に関するお知らせ」には令和4年9月26日(月)から9月28日(水)までを対象期間として,「国葬儀等に伴い首都高速道路や都心部の一般道路等において実施される交通規制、警備強化等の影響により、郵便物・ゆうパックなど(以下「郵便物等」といいます。)の一部のお届けに遅れが生じることが見込まれます。」と書いてあります。
(2) ヤマト運輸HPの「国葬に伴う交通規制によるお荷物のお届けについて」には以下の記載があります。
9月27日(火)に日本武道館(東京都千代田区)で執り行われる「国葬」に伴い、9月26日(月)~9月28日(水)までの間、都内の首都高速道路や都心部の一般道路において、交通規制が実施されます。
その影響により、東京都の一部地域において、お荷物のお届けに遅れが生じる可能性があります。
■対象期間
2022年9月26日(月)~9月28日(水)の3日間
■対象地域
東京都千代田区、港区、新宿区、渋谷区
※交通規制の影響により、上記地域以外でも一部遅れが生じる可能性があります。


4 故安倍晋三国葬儀に伴うその他の影響
・ ホテルニューオータニHPの「「故安倍晋三元首相国葬儀」に伴うお知らせ」には以下の記載があります。
9月27日(火)に日本武道館にて行われる故安倍晋三元首相国葬儀に伴い、国内外からたくさんの方々が国葬儀に参列されるため、日本武道館周辺および東京都内は交通規制による混雑が予想されます。
また、国葬儀前後期間は、ホテル周辺、および館内でも、非常に厳しい警備態勢がしかれることが予想されますので、お時間に余裕を持ってお越しください。お客さまには大変ご不便をおかけいたしますが、ご理解ご協力のほどお願い申し上げます。



第11 関連記事その他
1 安倍元首相の家族葬は,令和4年7月12日午後,東京都港区芝公園にある増上寺で行われました(産経新聞HPの「安倍元首相の功績しのぶ 増上寺で葬儀、世界から弔意1700件」参照)。
2 外務省HPの「故安倍晋三国葬儀への各国・地域・国際機関等からの参列」(令和4年9月22日付)には「参列の内訳は、海外から代表が参列する国・地域・国際機関等が117、海外からは参列しないが駐日大使・駐日国際機関代表等が代表として参列する国・地域・国際機関等が101です。」と書いてあります。
3(1) Wikipediaに「安倍晋三銃撃事件」及び「安倍晋三の国葬」が載っています。
(2) NHK政治マガジンに「55年ぶり「国葬」実施する意味は?
割れる世論 法的根拠の課題」(2022年9月22日付)が載っています。
4 東京地裁令和4年9月9日判決(裁判長は47期の岡田幸人)は,「元内閣総理大臣の国葬儀の実施及びこれに伴う国費の支出は,抗告訴訟の対象となる「処分」に当たらない」と判示しました。
5(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 故安倍晋三国葬儀(令和4年9月27日実施)に関して最高裁判所が作成し,又は取得した文書
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 国葬儀
・ 平成の代替わりに伴う大嘗祭等に関する裁判例
・ 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等
・ 叙位の対象となった裁判官(平成31年1月以降の分)
・ 裁判官の死亡退官
・ 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
 勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)


貨物軽自動車運送事業(軽貨物運送業)

目次
第1 総論
第2 バイクを利用した軽貨物運送業(バイク便)
1 軽二輪及び小型二輪
2 原付一種及び原付二種
3 特定信書便におけるバイク便の利用
4 その他
第3 バイクの排気量ごとの取扱いの違い
1 高速道路,車検及び大型二輪免許
2 道路交通法及び道路運送車両法でいうところのバイク
3 標識交付証明書,軽自動車届出済証及び車検証
4 自賠責保険
5 バイクの免許
第4 軽トラックを利用した軽貨物運送業(軽トラック便)
第5 車検証に関するメモ書き
第6 ナンバープレートに関するメモ書き
1 登録自動車のナンバープレート
2 軽自動車のナンバープレート
3 トラック緑ナンバー
4 1ナンバー,3ナンバー,4ナンバー及び5ナンバー
第7 バイクの名義変更
第8 自動車の廃車が確認できる書類
第9 貨物自動車の逸失利益に関する最高裁判例
第10 バイク事故特有の過失割合が書いてある書籍

第11 関連記事その他

第1 総論
1 「貨物自動車運送事業」としては,①一般貨物自動車運送事業(許可制),②特定貨物自動車運送事業(許可制)及び③貨物軽自動車運送事業(届出制)をいう。
2 貨物軽自動車運送事業とは,他人の需要に応じ,有償で,自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る。)を使用して貨物を運送する事業をいい(貨物自動車運送事業法2条4号),運輸支局への届出が必要になります(貨物自動車運送事業法36条)。
3 略称は軽貨物運送業でありますところ,開業タイプとしては,個人開業型及びフランチャイズ型があります(J-Net21の「軽貨物運送」参照)。

第2 バイクを利用した軽貨物運送業(バイク便)
1 軽二輪及び小型二輪の場合
・ 排気量125ccを超えるバイク(道路運送車両法でいうところの軽二輪及び小型二輪)を利用する場合,必ず貨物軽自動車運送事業の届出をして緑ナンバーを取得する必要があるのであって,届出をしない限りバイク便をすることはできません。
    そのため,真っ白ナンバー・緑字(126ccないし250cc)又は緑枠の白ナンバー・緑字(251cc以上)でバイク便をすることはできません。
2 原付一種及び原付二種
・ 道路運送車両法2条2項の「自動車」ではない排気量125cc以下のバイク(道路運送車両法2条3項の「原動機付自転車」(原付一種及び原付二種)となります。)を利用する場合,届出は不要です(貨物自動車運送事業法2条5項参照)
    そのため,真っ白ナンバー・紺地(50cc以下),黄ナンバー・紺字(51ccないし90cc)又はピンクナンバー・紺字(91ccないし125cc)でバイク便をすることができます。
3 特定信書便におけるバイク便の利用
・ 民間事業者による信書の送達に関する法律(略称は「信書便法」です。)2条7項に基づく特定信書便サービス(1号が大型,2号が高速,3号が高価です。)としては,①公文書集配,②企業グループ内便,③地域内急送便,④電報類似サービス,⑤広域急送便及び⑥高セキュリティ便があります(総務省HPの「信書便事業の現状について」(平成28年10月27日付)参照)ところ,例えば,③地域内急送便についてはバイク便が利用されています。
4 その他
・ トラサポHPに「緑ナンバーバイク便の始め方と8色のプレートを行政書士が解説」が載っています。


第3 バイクの排気量ごとの取扱いの違い
1 高速道路,車検及び大型二輪免許
(1) 普通二輪免許が必要となる排気量125ccを超えるバイク(道路運送車両法でいうところの軽二輪及び小型二輪)であれば,高速道路を走行できます(JAFの「[Q]エンジン形式や排気量による違い」参照)。
(2) 排気量250ccを超えるバイク(道路運送車両法でいうところの小型二輪)の場合,2年ごとに車検を受ける必要があります。
(3) 排気量400ccを超えるバイク(道路交通法でいうところの大型二輪ですが,道路運送車両法でいうところの小型二輪です。)の場合,大型二輪免許が必要となります。
2 道路交通法及び道路運送車両法でいうところのバイク
(1) 道路交通法でいうところのバイクは,原付(50cc以下),普通二輪(51ccないし400cc)及び大型二輪(401cc以上)です。
(2) 道路運送車両法でいうところのバイクは,原付一種(50cc以下),原付二種(51ccないし125cc),軽二輪(二輪の軽自動車。126ccないし250cc)及び小型二輪(二輪の小型自動車。251cc以上)です(東京都自動車整備振興会HPの「お知らせ詳細」参照)。
3 標識交付証明書,軽自動車届出済証及び車検証
(1) 標識交付証明書
・ 排気量125cc以下のバイクの場合,道路運送車両法の「自動車」ではありませんから,税務上の書類としての,標識交付証明書が交付されますところ,そこには標識番号(ナンバープレートの番号)及び車台番号が記載されています。
    ただし,自治体によっては,「軽自動車税申告書兼標識交付申請書」に受付印を捺印した書類で代用していることがあります。
(2) 軽自動車届出済証
ア 排気量126ccないし250ccのバイク(軽二輪)の場合,軽自動車届出済証(道路運送車両法施行規則63条の2及び63条の4参照)が管轄の運輸支局から交付されますところ,そこには車両番号(ナンバープレートの番号)及び車台番号が記載されています。
イ 令和元年7月1日,軽自動車届出済の取扱主体が軽自動車検査協会から運輸支局に変更になるとともに,軽自動車届出済証のサイズがB5サイズからA4サイズになりました(バイク買取おすすめブログ「バイクの軽自動車届出済証とは?携帯義務ってあるの?」(2022年12月2日付)参照)。
(3) 車検証
・ 排気量251cc以上のバイク(小型二輪)の場合,自動車検査証(いわゆる「車検証」です。)が運輸監理部又は運輸支局から交付されますところ,そこには車両番号(ナンバープレートの番号)及び車台番号が記載されています。
(4) 自動車登録番号及び車両番号
・ 登録自動車のナンバープレートの番号は自動車登録番号であり,軽自動車及び二輪車のナンバープレートの番号は車両番号です。
4 自賠責保険
・ ヤフーニュースの「ご存知ですか?バイクの自賠責保険が期限切れの場合どうなる?罰則や、再加入費用まとめ」には,「車検が必要な小型二輪車(250cc超)の場合は、車検時に自賠責保険の加入・更新を行いますが、車検制度の適用がない原付(125cc以下)や軽二輪(125cc超250cc以下)の場合は、保有者自身が、バイク販売店や損害保険会社、もしくはコンビニ等で更新手続きをする必要があります。」と書いてあります。
5 バイクの免許
(1) バイクの免許は以下のとおり7種類あり,大きく4つに分類できます。
① 原動機付自転車免許(50cc以下)
・ 他の免許と異なり,一般道での法定速度は時速30kmです。
・ 他の免許と異なり,二人乗りができません。
② 小型二輪免許・AT小型限定二輪免許(125cc以下)
・ 高速道路での走行ができません。
③ 普通二輪免許・AT限定普通二輪免許(400cc以下)
・ 「中型免許」といわれることがあります。
④ 大型二輪免許・AT限定大型二輪免許(排気量の制限なし)
・ 他の免許と異なり18歳から取得できます。
(2) ヤマハHPの「あのバイクに乗るには、どの免許が必要?バイク免許の種類と取得方法について」が参考になります。


第4 軽トラックを利用した軽貨物運送業(軽トラック便)
1 軽トラック(排気量は660cc以下です。)を利用する場合,必ず貨物軽自動車運送事業の届出をして黒ナンバーを取得する必要があります。
2 軽貨物運送業は軽トラック1台で開始することができます。
3 赤帽は,軽貨物運送業を行う個人事業主の集まりである全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会のことです。
4 プロが教える!引越し段取り術HPの「第三章 引越しを自分でする」には,「これ(山中注:軽トラック便)は、近距離の場合にかなり有効です」と書いてあります。
5 黄ナンバーは白ナンバーの軽自動車バージョンであり,黒ナンバーは緑ナンバーの軽自動車バージョンです。


第5 車検証に関するメモ書き
1(1) 登録自動車の場合,自動車登録番号(白ナンバー又は緑ナンバーの番号)を自動車登録ファイルに登録する新規登録(道路運送車両法9条)が終わった後に車検証を交付されます(道路運送車両法60条2項)。
(2) 令和5年1月4日より自動車検査証を電子化し,必要最小限の記載事項を除き自動車検査証情報はICタグに記録しますところ,ICタグの情報は汎用のICカードリーダが接続されたPCや読み取り機能付きスマートフォンで参照可能です(国土交通省電子車検証特設サイト「電子車検証について」参照)。
2 検査対象軽自動車の場合,自動車登録制度(道路運送車両法4条)の適用がないため,車検証交付時に車両番号(黄ナンバー又は黒ナンバー)が指定されます(道路運送車両法60条1項)。



第6 ナンバープレートに関するメモ書き

1 登録自動車のナンバープレート
(1)ア 登録自動車のナンバープレート(自動車登録番号)について定める自動車登録規則13条1項は以下のとおりです。
自動車登録番号は、次に掲げる文字をその順序により組み合わせて定めるものとする。
一 自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部又は運輸支局(使用の本拠の位置が自動車検査登録事務所の管轄区域に属する場合にあつては、当該自動車検査登録事務所。次項において同じ。)を表示する文字(別表第一)
二 自動車の種別及び用途による分類番号を表示する二字以下のアラビア数字又は最初の字がアラビア数字であつて、その他の字がアラビア数字若しくはローマ字若しくはこれらの組合せである三字(別表第二)
三 自動車運送事業の用に供するかどうかの別等を表示する平仮名又はローマ字(別表第三)
四 四けた以下のアラビア数字
イ 1号が使用の本拠地であり,2号が分類番号であり,3号が事業用判別文字であり,4号は一連指定番号です。
(2) CARDAYSの「ナンバープレートの種類と色の違いとは?数字の意味も徹底解説!」が参考になります。

2 軽自動車のナンバープレート
(1) 軽自動車のナンバープレート(車両番号標)について定める道路運送車両法施行規則36条の17第1項及び第2項は以下のとおりです。
① 検査対象軽自動車の車両番号は、次に掲げる文字をその順序により組み合わせて定めるものとする。
一 検査対象軽自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部又は運輸支局(使用の本拠の位置が自動車検査登録事務所の管轄区域に属する場合にあつては、当該自動車検査登録事務所。以下この条、次条及び第六十三条の四において同じ。)を表示する文字
二 検査対象軽自動車の用途による分類番号を表示する二字のアラビア数字又は最初の字がアラビア数字であつて、その他の字がアラビア数字若しくはローマ字若しくはこれらの組合せである三字(別表第二の四)
三 自家用又は事業用の別等を表示する平仮名又はローマ字(別表第二の五)
四 四けた以下のアラビア数字
② 前項第一号の運輸監理部又は運輸支局を表示する文字については、自動車登録規則(昭和四十五年運輸省令第七号。以下「規則」という。)の別表第一に定めるところによる。
(2) 軽自動車検査協会HPに「軽自動車のナンバー」が載っていますところ,事業用の軽自動車の場合,事業用判別文字は「り」又は「れ」です。
(3) 山梨県軽自動車協会HPの「ナンバープレートの秘密?」には,ナンバープレートの大きさとか,皇室用又は外交団用等特殊ナンバーとかに関する説明が載っています。
3 トラック緑ナンバー
(1) 小型トラック(排気量は661ccないし2000cc)又はトラック(排気量は2001cc以上)を利用する貨物自動車運送事業の許可を受けるためには営業所ごとに車両を5台以上揃える必要があるのであって,ほとんどの地域において,一般廃棄物運送限定を除き,1台のトラックで緑ナンバーを付ける方法はありません(トラサポHPの「【本当の正解】緑ナンバーの取得には、5台のトラックがないと絶対に無理でしょうか?」参照)。
(2) トラサポHPに「トラック緑ナンバー名義貸しってダメなの?専門行政書士が解説します。」が載っています。
(3) 緑ナンバーの事業用判別文字は「あいうえかきくけこを」です(自動車登録規則13条3号及び別表第三)。
4 1ナンバー,3ナンバー,4ナンバー及び5ナンバー
(1) 1ナンバー
・ 大型トラックに代表される普通貨物自動車につき,ナンバープレートの地名の横の1桁目の数字は「1」ですから,1ナンバーといわれます(おとなの自動車保険HPの「1ナンバーとは?分類の条件や3ナンバーとの維持費(税金・車検・保険等)の違い」参照)。
(2) 3ナンバーと5ナンバー
・ 以下の基準をすべて満たした小型乗用自動車は5ナンバーとなり,以下の基準を1つでも超えた自動車は3ナンバーになります(チューリッヒHPの「3ナンバーと5ナンバー車の違いとは。税金・サイズ・車種(ミニバン・セダン・SUV)の違いは?」参照)。
排気量:2000cc以下,全長:4700mm以下
全幅:1700mm以下,全高:2000mm以下
(3) 4ナンバー
・ 小型貨物自動車(排気量660cc超)及び軽トラック(排気量660cc以下)につき,ナンバープレートの地名の横の1桁目の数字は「4」ですから,4ナンバーといわれます(チューリッヒHPの「車の4ナンバーとは。車検や税金(自動車税・重量税)・保険などの維持費。軽自動車はある?」参照)。

第7 バイクの名義変更
1 バイクの窓口HPの「原付バイクの名義変更の手続きと必要書類」には「名義変更の一連の手続きは住民登録をしている市役所や町役場などで行います。自動車とは管轄が異なるため注意しましょう。」と書いてあります。
2 バイサポHPの「250ccまでの軽二輪バイクの名義変更を自分でするのに必要な書類と手続き」には「排気量125cc超~250ccバイクは新しい所有者の自宅住所を管轄している運輸支局(陸運局)または、自動車検査登録事務所で、名義変更できます。」とか,「以前は市役所で名義変更ができましたが、2019年7月1日から250ccバイクの名義変更は400ccバイクの名義変更と同様に運輸支局(陸運局)に変更なりました。」と書いてあります。

第8 自動車の廃車が確認できる書類
1 自動車の廃車が確認できる書類として,例えば,①登録自動車については登録事項等証明書及び自動車重量税還付申請書付表1があり,②小型二輪及び検査対象軽自動車については検査記録事項等証明書及び自動車検査証返納証明書があり,③軽二輪については軽自動車届出済証返納証明書及び軽自動車届出済証返納済確認書があり,④原付については軽自動車税(種別割)廃車申告受付書があります(損保ジャパンHPの「自動車の廃車が確認できる書類」参照)。
2(1) 軽自動車届出済証返納証明書交付請求書は,軽二輪を廃車にする際の書類であり,複写式6枚つづりになっています(バイク買取.comの「軽自動車届出済証返納証明書交付請求書の書き方」参照)。
(2) 軽自動車返納済証返納済確認書はオレンジ色の紙です(e-バイク廃車.comの「軽自動車届出済証返納届の書き方や詳細をチェック!」参照)。

第9 貨物自動車の逸失利益に関する最高裁判例
・ 貸物自動車が,電車運転手の過失に基く衝突によって破損し,それがため休車した場合において,右自動車の所有者が,休車によりその期間中,これを使用して得べかりし1日金2000円の割合による利益を喪失した旨の主張に対し,特段の事由を示すことなく,右損害は,すべて特別の事情によつて生じた損害であつて,通常生ずべき損害でないとした判断は,経験則違反,審理不尽,理由不備のそしりを免れません(最高裁昭和33年7月17日判決)。

第10 バイク事故特有の過失割合が書いてある書籍
1 自動二輪車交通事故訴訟の実務(2023年2月24日付)には「自動二輪車と四輪車との交通事故における過失割合の評価」として以下の記載があります。
① 四輪車同士の事故についてのみ類型が設けられている場合の検討
→ (a)判タ38号で基本過失割合に差が設けられていない場合,及び(b)判タ38号で基本過失割合に差が設けられている場合について説明されています。
② 判タ38号に類型の設けられていない典型事故の過失評価
→ (a)路外左折四輪車と後方直進自動車との事故,(b)右折四輪車と後続直進自動二輪車との事故及び(c)狭路における対向車間の事故について説明されています。
③ 自動二輪車事故について考慮すべき特有の事情
→ (a)自動二輪車の転倒(自動二輪車の転倒の評価,転倒しやすい路面状況の場合の評価,接触・転倒に至らない回避行動),(b)自動二輪車のすり抜け走行についての評価(一般道でのすり抜けの場合,高速道路でのすり抜け事故),(c)ヘルメットの不着用・あごひもの不着用によるヘルメットの脱落,(d)昼間時のヘッドライト消灯及び(e)二人乗り規制の違反について説明されています。
④ 原動機付自転車の二段階右折についての違反
2 自動二輪車交通事故訴訟の実務(2023年2月24日付)76頁には「自動二輪車のすり抜け走行は、道路交通法上、直ちに何らかの法条に違反するものではない。」と書いてあります。

第11 関連記事その他
1 12桁の運転免許証番号のうち,1~2桁目は最初に免許を取得した各都道府県公安委員会の番号であり(京都府は61,大阪府は62,兵庫県は63です。),3~4桁目は最初に免許を取得した「取得年」の西暦の下2桁であり,5~11桁目は各都道府県公安委員会が運転免許証を管理するための番号であり,12桁目は紛失・盗難・破損などによって運転免許証を再発行した回数(再発行したことがない場合は「0」です。)です(車査定マニアHP「運転免許証の見方や数字の意味の総まとめ」参照)。
2 自転車の交通違反に関しては,令和4年10月下旬以降につき,①信号無視,②一時不停止,③右側通行及び④徐行せずに歩道を通行という4項目のうち悪質な違反については,これまで「警告」にとどめていたケースでも交通切符を交付して検挙されることとなります(NHK HPの「自転車の交通違反 取り締まり強化へ「警告」から「赤切符」も」参照)。
3(1) アマゾン委託ドライバー「アマゾンフレックス(Amazon Flex)」とは,大手通販会社アマゾンの荷物を配達する業務の委託を請け負う働き方のことをいいます(ケイエスケイロジスティクスHP「アマゾンの委託ドライバーの契約内容や単価、口コミを紹介」参照)。
(2) 従来からピザ店や寿司店が独自に注文を受け付け,自店スタッフが直接配達する出前サービス(自社注文宅配型)は存在していたものの,近年の新しい宅配事業(デリバリーサービス)のシステムとしては,マーケットプライス型及びデリバリープラットフォーム型があります(ここからアプリHPの「飲食店・顧客・配達員をつなぐ宅配システム(フードデリバリー)」参照)。
(3) テンニミッツTV「宅配便ドライバーに聞く「嫌われる客」の特徴」が載っています。
4(1) 国土交通省は高速道路のETC専用化を推進している旨を発表しており,遅くとも令和12年までには一般レーンを廃止する予定となっています(お金ステーションHP「ETCカードおすすめランキング【最新比較】年会費無料で高速道路やガソリン代がお得になる」,及び国土交通省HPの「ETC専用化等による料金所のキャッシュレス化・タッチレス化について ~都市部は5年、地方部は10年程度での概成に向けたロードマップの策定~」(令和2年12月17日付)参照)。
(2) 近畿運輸局HPに「運行管理者の仕事(タクシー編)」が載っています。
5 東京地裁令和4年11月30日判決(判例タイムズ1505号181頁以下)は,デイサービス施設の利用者が当該施設の停車中の送迎車から降車しようとして地面に転落して頭部を打ち付けた事故が,当該送迎車に係る自動車保険契約の自動車保険約款にいう「車の所有,使用または管理に起因して生じた」事故とされた事例です。
6(1) スマートドライブHP「行動監視だけではない!社用車をGPSで管理することの価値」が載っています。
(2) 困ったら読め!ブログ「宅配便の受け取りを拒否するやり方!!」が載っています。
7 貨物自動車運送事業法63条の2(荷主の責務)は「荷主は、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令を遵守して事業を遂行することができるよう、必要な配慮をしなければならない。」と定めています。
8 以下の記事も参照してください。
・ 私道に関するメモ書き
・ 労災保険の特別加入
・ 労災保険の給付内容
・ 労災保険に関する書類の開示請求方法

国葬儀

目次
第1 総論
第2 安倍元首相の国葬儀及び叙位叙勲
1 故安倍晋三国葬儀当日における弔意表明
2 安倍元首相の叙位叙勲
3 故安倍晋三国葬儀の費用
4 その他
* 詳細につき,「故安倍晋三国葬儀」を参照してください。
第3 吉田元首相の国葬儀及び叙位叙勲
1 故吉田茂国葬儀当日における弔意表明
2 吉田元首相の叙位叙勲
3 故吉田茂国葬儀の費用
4 その他
第4 佐藤栄作元首相の国民葬,及びセキュリティポリスの設置
1 総論
2 故佐藤栄作国民葬儀当日における弔意表明
3 三木首相殴打事件
4 セキュリティポリスの設置
第5 戦前の国葬
1 国葬儀と国葬の違い
2 国葬令
3 昭和元年以降の国葬令に基づく国葬の実施例
4 戦前の国葬に関する国会答弁等
5 昭和22年12月31日に国葬令が失効したこと
第6 大喪の礼
1 総論
2 大喪の礼と政教分離
3 大喪の礼における弔意表明
第7 皇太后の葬儀
1 貞明皇后の葬儀
2 香淳皇后の葬儀
第8 内閣・自由民主党合同葬
1 過去の実施例
2 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀
第9 戦後,内閣が関与して行われた元内閣総理大臣の葬儀に要した費用
第10 関連記事その他

第1 総論
1 国葬儀とは,国の儀式として全額国費負担で行われる葬儀をいい,その点では戦前の国葬と同じであるものの,一般の国民が喪に服する必要はない点で戦前の国葬と大きく異なります。
2(1) 昭和42年10月20日に病死した吉田茂元首相の場合,同月31日に日本武道館で国葬儀が実施されました。
(2) 令和4年7月8日に暗殺された安倍晋三元首相の場合,同年9月27日に日本武道館で国葬儀が実施される予定です。


第2 安倍元首相の国葬儀及び叙位叙勲
1 故安倍晋三国葬儀当日における弔意表明
(1) 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
① 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明の在り方については、現在検討しているところであり、現時点でお尋ねについて明確にお答えすることは困難であるが、例えば、お尋ねの「半日休むようにというようなこと」及び「歌舞音曲を慎んだらどうですかということ」について求めることは現時点では考えていない。
② 故安倍晋三国葬儀は、北の丸公園内に所在する日本武道館において行うこととしているところ、故安倍晋三国葬儀の具体的内容は現在検討中であり、現時点でお尋ねについてお答えすることは困難である。
(2) 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明について(令和4年8月31日付の故安倍晋三国葬儀葬儀委員長決定)は以下のとおりです。
故安倍晋三国葬儀の当日には、哀悼の意を表するため、各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙とうすることとする。

2 安倍元首相の叙位叙勲
(1) 安倍元首相は,令和4年7月11日付の閣議決定により,従一位に叙され,かつ,大勲位菊花章頸飾及び菊花大綬章を授与されました(首相官邸HPの「元内閣総理大臣安倍晋三氏を従一位に叙すること並びに大勲位菊花章頸飾及び菊花大綬章の授与について」,及び「令和4年7月11日付の閣議書(令和4年7月8日付で,衆議院議員安倍晋三に対し,従一位に叙するとともに,大勲位菊花大綬章並びに頚飾を授ける。)」参照)。
(2) 日本国憲法施行後の首相経験者として従一位に叙せられ,かつ,大勲位菊花章頸飾を授けられたのは,吉田茂,佐藤栄作,中曽根康弘及び安倍晋三の4人です。


3 故安倍晋三国葬儀の費用
(1) 令和4年8月26日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬義に必要な経費について
 次に、本日の閣議において、故安倍晋三国葬儀に必要な経費について、令和4年度一般会計予備費の使用を決定をしました。国葬儀については、その実施内容を検討しているところであります。今般の国葬儀においては、安倍元総理を追悼したいという気持ちをお持ちの方々のために、日本武道館とは別の場所に献花台を設け、一般献花を実施すること、海外から元首・首脳級の方を含む多数の要人の参列が見込まれることから、参列に当たって必要となる同時通訳等に万全を期す必要があること、会場となる日本武道館には複数の出入口があり、それぞれに警備員や金属探知機を配置するなど、昨今の状況を踏まえて、万全の警備体制を敷く必要があること、さらに参列者として最大で6,000人程度の規模が見込まれることから、その人数に応じたバスの手配やしおりの準備等が必要となること、こうしたことから、予備費の使用額は、令和2年に行われた中曽根元総理の内閣・自由民主党合同葬から約5,700万円増の約2億4,900万円となります。
(2)  令和4年9月6日午前の内閣官房長官記者会見には以下の記載があります。
故安倍晋三国葬儀について
 本日、故安倍晋三国葬儀に関し、お手元に配付のとおり、国葬儀の流れを葬儀委員長決定しました。また、国葬儀に際し、自衛隊による儀礼の実施について、葬儀委員長から防衛大臣に対する協力を依頼することとしました。さらに、国葬儀後、迎賓館において、葬儀委員長である岸田総理ほかが、海外から来られた要人から個別に弔意を受け、挨拶する機会を設ける予定であります。そして、国葬儀に要する経費の見込みについて申し上げます。これまで予備費で賄うこととした式典関係の経費2.49億円以外に、警備費や海外要人の接遇に要する経費などが必要となる見込みであること、しかしながら、警護・接遇を要する要人の数等が不確定であるため、経費についても確たることを申し上げるのは困難であること、を申し上げてまいりました。また、これまでも国が関与した葬儀に関して、既定経費で支出する警備・接遇に要する経費を切り出してお示しをしたことはありません。一方で、先日、総理からもお話があったように、丁寧な説明を尽くすという観点に加え、これまでの各国からの連絡状況を踏まえ、海外から190以上の代表団が参列し、その中で特別の接遇を要する首脳級等の代表団の数が50程度と見込まれることから、これを仮定するとともに、そうした要人が多数集まる行事に対する警備体制を一定の規模で仮定すること等により、あえて現時点での経費の見込みをお示しをしたいと思います。以下申し上げる警備・接遇等の経費については、過去の合同葬と同様に、既に成立をしている今年度予算の中で対応するものであります。まず、警備に関するものでございますが、具体的には、まず警備に要する経費としては8億円程度と見込まれます。その内訳は、道府県警察からの派遣のための旅費などの部隊活動や超過勤務手当に関わる経費が5億円程度、車両等の装備資機材や待機所の借上げの装備費が3億円程度であります。次に、海外要人の接遇に要する経費については6億円程度と見込まれます。その内訳は、海外要人の本邦滞在中の車両の手配や空港での受入体制の構築等の庁費が5億円程度。接遇要員として一時帰国させる在外公館職員の出張のための旅費が1億円程度であります。このほか、自衛隊の儀じょう隊等の車両借上費等が0.1億円程度と見込まれております。これも既定予算で対応することとしております。私(官房長官)からは以上です。


4 その他
(1) 安倍元首相の家族葬は,令和4年7月12日午後,東京都港区芝公園にある増上寺で行われました(産経新聞HPの「安倍元首相の功績しのぶ 増上寺で葬儀、世界から弔意1700件」参照)。
(2) 外務省HPの「故安倍晋三国葬儀への各国・地域・国際機関等からの参列」(令和4年9月22日付)には「参列の内訳は、海外から代表が参列する国・地域・国際機関等が117、海外からは参列しないが駐日大使・駐日国際機関代表等が代表として参列する国・地域・国際機関等が101です。」と書いてあります。
(3) Wikipediaに「安倍晋三銃撃事件」及び「安倍晋三の国葬」が載っています。

第3 吉田元首相の国葬儀
1 故吉田茂国葬儀当日における弔意表明
(1) 昭和42年10月28日(土)の官報には,「故吉田茂国葬儀当日における弔意表明について」として以下の記事が載っています。 
 故吉田茂国葬儀当日(10月31日)哀悼の意を表するため,次のとおり措置するものとする。
1. 各省庁においては,
(1) 弔旗を掲揚すること。
(2) 葬儀中の一定時刻に黙とうすること。
(3) 各省庁の長は当日午後は公務に支障のない範囲内において職員が勤務しないことを認めることができること。
(4) 公の行事,儀式その他歌舞音曲を伴う行事はさしひかえること。
2.以上の各項については,各公署,学校,会社その他一般においても同様の方法により哀悼の意を表するよう協力方を要望すること。
(2) 故安倍晋三国葬儀の場合,「各省庁の長は、公務に支障のない範囲内において職員が勤務しないことを認めること」等は考えられていません(衆議院議員中谷一馬君提出「故安倍晋三国葬儀」における職員が勤務しないこと等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)参照)。

2 故吉田茂国葬儀の費用
・ 相沢英之大蔵省主計局次長は,昭和43年5月9日の衆議院決算委員会において,故吉田茂国葬儀の費用として以下の答弁をしています。
 総額千八百九万六千円のうち、国葬儀準備等に必要な経費が四百五十九万八千円。その内訳を申しますと、これは送迎用のバス等の借り上げ費が百九十四万円、案内状等の印刷及び送料等通信費が百三十八万五千円、準備会議費、救護班謝礼その他が百二十七万三千円。次に武道館の借り上げに必要な経費が三百九十四万二千円。それから第三番目に、国葬儀場飾りつけ等に必要な経費として九百五十五万六千円でございますが、そのうちおもなものは、生花の飾り二百七十万円、献花百五十万円等でございます。


3 吉田元首相の叙位叙勲
(1) 吉田元首相は,駐イタリア大使をしていた昭和6年1月21日に勲二等瑞宝章を授けられ,同年10月31日に勲二等旭日重光章を授けられ,生存者叙勲の再開に伴い,昭和39年4月29日に大勲位菊花大綬章を授けられました。
(2) 吉田元首相は,昭和42年10月20日付で従一位に叙せられ,かつ,大勲位菊花章頸飾を追贈されました。


4 その他
(1) 吉田元首相の家族葬は,昭和42年10月23日に東京カテドラルでカトリック葬として行われました。
(2) 清水汪内閣官房内閣審議室長兼内閣総理大臣官房審議室長は,昭和54年4月13日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています(改行を追加しています。)。
 国葬でございますが、旧国葬令失効後はこれにかわる法律はございません。
 しかしながら、やはり国の立場におきましてそれに相当すべき場合に葬儀を営むという考え方はとれるのではないかという認識を持ったわけでございまして、具体的な例といたしましては、故吉田茂氏の葬儀の場合に、昭和四十二年十月二十三日の閣議決定によりまして国葬を行っております。
(3)ア ダイヤモンド・オンラインの「吉田茂氏の国葬は「大不評」だったのに…安倍氏国葬をゴリ押しする政府の過ち」には「テレビの大騒ぎも今と同じだ。国葬当日は「宰相吉田茂」(NHK)、「人間吉田茂」(フジテレビ)など朝から晩まで全チャンネルで追悼番組を放送。神奈川県大磯の自宅から武道館へと遺骨が運ばれるまでは、民放全局共同で中継をした。」と書いてあります。
イ データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)「故吉田茂国葬儀における佐藤内閣総理大臣の追悼の辞」(昭和42年10月31日付)が載っています。
(4) 令和4年7月現在,日比谷花壇のお別れナビ「会社概要」には,「日比谷花壇のお葬式」として以下の記載があります。
1967年日本で初めての生花祭壇と呼ばれる吉田茂首相の国葬を手掛けるところからはじまり、2004年には葬儀全般を執り行う「日比谷花壇のお葬式」がスタート。
相談実績は累計20,000件以上、年間約800件の葬儀を施行しています。
(5) 日経新聞HPに「吉田茂氏と賀川豊彦氏、ノーベル平和賞の最終候補だった ノーベル研究所の開示資料で明らかに」が載っています。
(6)ア 衆議院議員山岸一生君提出国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 昭和四十二年十二月一日の衆議院議院運営委員会における安宅常彦委員の質問において、故吉田茂国葬儀に関し、「この間吉田さんの葬式がございましたが、そのときに院のほうで全然知らない間に、佐藤総理から衆議院、参議院の副議長が吉田さんの葬式の実行副委員長というのに任命されておった。それではけしからぬではないかということで、これは表面に出ないままに私どもはそれは断わるべきだ、そういうことで断わったいきさつがあるわけです。」との発言があったことは承知していたが、お尋ねの「当初は衆参両院の副議長を葬儀副委員長に委嘱する案であったが、のちに断念したとされる。このように両院の参画を模索した経緯」については承知していない。
イ 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には「お尋ねの「宮内庁法規定儀式(山中注:宮内庁法2条8号に規定する儀式のこと。)及び憲法規定儀式(憲法7条10号に規定する儀式のこと。)を除いた国の儀式」の例は、昭和四十二年十月三十一日に行われた故吉田茂国葬儀のみである。」と書いてあります。


第4 佐藤栄作元首相の国民葬,及びセキュリティポリスの設置
1 総論
(1) 昭和50年5月19日の夕方,築地の料亭「新喜楽」において脳出血で倒れて昏睡状態となり,5日後に病院に搬送され,同年6月3日に死亡した佐藤栄作元首相の場合,同月16日に日本武道館で国民葬が行われました。
(2) 国民葬の前例は大正11年1月17日に日比谷公園で実施された大隈重信(大正11年1月10日死亡)の国民葬だけでしたところ,Wikipediaの「大隈重信」には「前宮内大臣の波多野敬直を委員長とした葬儀委員会が、一定の儀式が定められており、一般人の参列ができない国葬ではなく、面識のないものでも参加できる「国民葬」の演出とその成功をねらった準備活動を進めた。」と書いてあります。
(3) よりそうお葬式HPに「国葬とは?国民葬との違いや流れについて」が載っています。

2 故佐藤栄作国民葬儀当日における弔意表明
(1) 昭和50年6月14日(土)の官報には,「故佐藤榮作国民葬儀当日における弔意表明について」として以下の記事が載っています。
 故佐藤榮作国民葬儀当日(6月16日)哀悼の意を表するため、次のとおり措置するものとする。
1.各省庁においては、
(1) 弔旗を掲揚すること。
(2) 葬儀中の一定時刻に黙とうすること。
2.各公署等においても前項と同様の方法により哀悼の意を表するよう協力方を要望すること。
(2) 故吉田茂国葬儀当日における弔意表明の場合と異なり,以下の事項はありませんでした。
・ 各省庁の長は当日午後は公務に支障のない範囲内において職員が勤務しないことを認めることができること。
・ 公の行事,儀式その他歌舞音曲を伴う行事はさしひかえること。

3 三木首相殴打事件
・ 昭和50年6月16日の故佐藤榮作国民葬で発生した三木首相殴打事件について,浅沼清太郎警察庁長官は,昭和50年6月18日の衆議院地方行政委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 故佐藤榮作元内閣総理大臣の国民葬儀という厳粛な行事に際して、一国の総理が暴漢に襲われるという事件を防止できなかったということは、総理はもとより、一般国民に対してもまことに申しわけない、かように考えている次第でございます。
 どうしてそういうような事件が起きたかということにつきましては現在検討中ではございますけれども、まず事案の概要とその経過を説明いたしまして、いままで把握しているところを御説明申し上げたいと思います。
② まず、事案の概要でございますけれども、十六日の一時五十三分ごろに、三木総理が佐藤元総理の御遺骨到着を出迎えるために、日本武道館内から正面玄関の歩道近くに歩み寄ったところ、被疑者の筆保(山中注:筆保泰禎(ふでやすひろよし)のこと。)が報道陣の後方から「核防条約批准反対」(山中注;「核防条約」というのは「核拡散防止条約」のことです。)と叫びながら飛び込んできたわけであります。
 総理の背後から正面に回りまして、右手で総理の顔面を二回殴打しまして、総理はその場に倒れたという状況でございます。
 筆保は、三木総理は屈辱的不平等の核防条約批准を強行せんとする国家、民族の敵だ、即時自殺することを勧告するというような自殺勧告書と、それに刃渡り十四・五センチの登山ナイフをセロテープで取りつけたものを所持しておりまして、警戒陣は暴行直後、現場で公務執行妨害と銃砲刀剣類所持等取締法違反で現行犯逮捕した次第でございます。

③ 取り調べました結果、自供によりますと、筆保は当日六時ごろに文京区大塚の愛国党本部を出まして、荻窪――池袋の間を地下鉄で往復しながら時間待ちをしておった。
 そして、東京駅の大丸デパート便所に入りまして、黒ダブル上下、黒ネクタイに着がえ、喪服姿になりまして、タクシーで午後一時ごろ武道館に到着したわけであります。到着しまして正面玄関わきの報道陣の中に紛れ込んでおりまして、同玄関前に赴く総理をそのときに発見して、核防条約反対と叫んで飛び出してきた。
 そして勧告状を渡そうとした際に、とっさに暴行を加えたというような供述をしているわけであります。
④ 犯行の動機、目的につきましては、先ほど申し上げましたように、核防条約が批准されたならば日本の将来は絶望的だというように考えて、総理に批准反対を訴え、聞き届けられなければ自殺を勧告するつもりであったというように述べておるわけであります。
 また、同人は単独で計画を実行したと述べておりますけれども、警視庁といたしましては、党本部と筆保の居室二カ所につきまして捜索を実施するなど、引き続き事件の究明を進めているという状況であります。
⑤ 特に、どうしてそういうことになったかという、問題になります警護と右翼の視察体制でありますけれども、国民葬に伴う警護、警備のために、当日警視庁は武道館の直近に第一方面警備本部を設置しまして、約千四百名の警察官を配置して警戒に当たっていたわけであります。
 事件当時、総理の身辺及び正面玄関前の御遺骨到着場所周辺には、身辺、行き先地警護員五人を含めまして、制私服二十三人が配置について警護、警備に従事しておったという状況になっております。
⑥ また、右翼の視察につきましては、右翼が当面最も強い関心を持っております核防条約が今国会で批准される可能性が強まったために、大日本愛国党を含む右翼虞犯者の視察を警視庁としては強化していたわけであります。
 筆保は、朝の八時、愛国党事務所並びに同党が実施した核防条約批准反対の街宣活動視察の過程で所在不明であることがわかったわけでありまして、そこで直ちに警視庁の公安三課は、右翼担当課でございますけれども、担当者を増強いたすなど所要の措置をとったわけでありますけれども、先ほど説明いたしましたように、他の弔問者と同様のかっこうで報道陣の中に紛れ込んでおったということや、玄関前には相当数の一般弔問者もいたというようなことで、右翼視察員も、警護、警戒に当たっておった者も事前に、同人を発見することができなかったというのが、このまことに申しわけない事件になったわけでございます。
⑦ 以上のような状況でございます。
(2)ア Wikipediaの大日本愛国党には,「浅沼稲次郎暗殺事件を起こした山口二矢、嶋中事件で知られる小森一孝はいずれも大日本愛国党に所属していたが、それぞれ事件直前に脱党している。」とか,「三木には警視庁の警察官が護衛として配置されていたが、やや離れた場所にいた上に三木の進行方向ばかりに気を取られ、犯行への対応が遅れた。」と書いてあります。
イ 浅沼清太郎警察庁長官は,昭和53年3月26日発生の成田空港管制塔占拠事件の責任を取って,同年6月1日に辞職しました。

4 セキュリティポリスの設置
(1) 三木首相殴打事件をきっかけとして,昭和50年9月13日,警視庁警備部警護課に,要人警護任務に専従するセキュリティポリス(略称はSPです。)が設置されました。
(2) 渡辺善門 警察庁警備局公安第二課長は,昭和53年4月7日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 現在、要人警護につきましては先生のおっしゃいましたとおりで、内閣総理大臣、衆参両院の議長、最高裁判所長官、政党幹部等につきまして行っておるわけでございますけれども、この警護員の教養につきまして、警察庁といたしましては、年一回でございますけれども、中核たる警護専従員を中心に専科教養を実施しております。そのほかに都道府県警察単位に随時教養を実施する、とりわけ身辺警護の衝に当たる警護専従員につきましては、できるだけ回数を多く警護教養をやるように指導をしておるところでございます。



第5 戦前の国葬
1 国葬儀と国葬の違い
(1)ア 戦前の国葬の場合,国葬令に基づいて実施され,国民全体が喪に服することになっていました。
イ 戦後の国葬儀の場合,閣議決定に基づいて実施され,一般国民は哀悼の意を表するように協力を要望されるに過ぎません。

2 国葬令
・ 昭和22年12月31日限りで失効した国葬令(大正15年10月21日勅令第324号)は以下のとおりであって(国葬令2条ただし書の「殤」(しょう)は「若死に」という意味です。),国葬令に基づく国葬の場合,国葬令4条後段に基づき,国民全体が喪に服することになっていました。
第一條 大喪儀ハ國葬トス
第二條 皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃及攝政タル親王内親王王女王ノ喪儀ハ國葬トス但シ皇太子皇太孫七歳未満ノ殤ナルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三條 國家ニ偉功アル者薨去又ハ死亡シタルトキハ特旨ニ依リ國葬ヲ賜フコトアルヘシ
前項ノ特旨ハ勅書ヲ以テシ内閣總理大臣之ヲ公告ス
第四條 皇族ニ非サル者國葬ノ場合ニ於テハ喪儀ヲ行フ当日廢朝シ國民喪ヲ服ス
第五條 皇族ニ非サル者國葬ノ場合ニ於テハ喪儀ノ式ハ内閣總理大臣勅裁ヲ経テ之ヲ定ム

3 昭和元年以降の国葬令に基づく国葬の実施例
(1) 昭和元年以降の国葬令に基づく国葬の実施例は以下のとおりです。
① 大正15年12月25日崩御の大正天皇(昭和2年2月7日の大喪儀)
② 昭和 9年 5月30日死亡の東郷平八郎元帥海軍大将(昭和9年6月5日実施)
③ 昭和15年11月24日死亡の西園寺公望元首相(昭和15年12月5日実施)
④ 昭和18年 4月18日戦死の山本五十六元帥海軍大将(昭和18年6月5日実施)
⑤ 昭和20年 5月20日死亡の閑院宮載仁親王(かんいんのみやことひとしんのう)・元帥陸軍大将(昭和20年6月18日実施)
(2) 西園寺公望及び山本五十六の国葬については,以下のとおりユーチューブに鮮明な動画が載っています。

4 戦前の国葬に関する国会答弁等
(1) 田中龍夫総理府総務長官は,昭和43年5月9日の衆議院決算委員会において以下の答弁をしています。
 ただいま御指摘のように、今後これ(山中注:国葬)に対する何らかの根拠法的なものはつくらないかという御趣旨でありますが、これ(山中注:国葬儀)は行政措置といたしまして、従来ありましたような国民全体が喪に服するといったようなものはむしろつくるべきではないので、国民全体が納得するような姿において、ほんとうに国家に対して偉勲を立てた方々に対する国民全体の盛り上がるその気持ちをくみまして、そのときに行政措置として国葬儀を行なうということが私は適当ではないかと存じます。
(2) 床次徳二(とこなみとくじ)総理府総務長官は,昭和44年7月1日の参議院内閣委員会において以下の答弁をしています。
ただいま御引用になりました吉田元総理の葬儀につきましても、国葬儀として取り扱うということになって、儀という字が入っておる。国葬そのものではないところに、その当時いろいろ検討いたしました結果、ああいう取り扱いになったと承っておるのでありまして、御意見もありますが、しかしこの点は十分検討いたしたいと思います。
(3) 国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて(令和4年7月14日付の内閣官房及び内閣府の文書)には以下の記載があります。
1 国葬令に基づく葬儀(戦前)
(1) 一般に国葬とは、国が国家の儀式として、国費で行う葬儀のことをいうこととされている(小学館日本大百科全書(村上重良) ) 。
大正15年に制定された国葬令(大正15年勅令第324号)においては、天皇、太皇太后、皇太后、皇后の大喪の儀、皇太子、同妃、皇太孫、同妃、摂政たる親王、内親王、王、女王の葬儀のほか、国家に偉功ある者(皇族含む。)が莞去又は死去した場合における特旨による国葬が定められていた(特旨は勅害をもってし、内閣総理大臣が公告) 。
※ 岩倉具視、島津久光、伊藤博文、大山巌、山県有朋、松方正義、東郷平八郎、西園寺公望、山本五十六など、皇族8名・一般人12名について、特旨により国葬を実施。
(2) 国葬令第4条において、葬儀を行う当日は、「国民喪ヲ服ス」こととされており、これに基づき、官庁・学校は休みとなり、歌舞音曲は停止又は遠慮、全国民は喪に服し、国葬を厳粛に送ることとされていた。
(3) 国葬令は、法律を以て規定すべき事項を規定するものであったことから、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(昭和22年法律第72号)第1条の規定によりご昭和22年末に失効した。
(4) 参議院議員田島麻衣子君提出故安倍晋三元総理の国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 過去、国葬として実施されたものについては、様々なものがあると承知しており、お尋ねの「国葬の定義」について一概にお答えすることは困難であるが、例えば、国葬令(大正十五年勅令第三百二十四号)の規定により国葬として行われた葬儀がある。同令で規定されていた大喪儀とは、皇室喪儀令(大正十五年皇室令第十一号)に規定され、国葬令の規定により国葬として行われた葬儀である。国葬儀とは、国の儀式として行う葬儀である。

5 昭和22年12月31日に国葬令が失効したこと
(1) 瓜生順良宮内庁次長は,昭和38年3月29日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています(改行を追加しています。)。
 皇室典範の大喪の礼、これはどういうふうなやり方でなされるかということはきまっていないわけです。
 国葬令の大喪の礼と同じかといいますと、国葬令は現在は有効ではないと思うのであります。

 従って、その国葬令にありますやり方も参照して、もしそういう必要ができた場合には、十分新しく考えて、適当な方法で行なわれるということかと思います。
(2) 高辻正巳内閣法制次長は,昭和38年3月29日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① ただいま御指摘の勅令三百二十四号、いわゆる国葬令でございますが、御承知の通りに、国葬令自身を廃止した法令というものはございません。
 ございませんが、実はもうすでに御承知だと思いますが、昭和二十二年法律第七十二号という法律がございまして、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定で、法律を以って規定すべき事項を規定するものは、昭和二十二年十二月三十一日まで、法律と同一の効力を有するものとする。」という立法がございます。
 その立法によりまして、法律事項を規定しておるものは現在効力はない。二十二年の十二月末日まではありましたけれども、その後はないということに相なっております。
② そこで、この国葬令が事実的に廃止されておりませんので、どうかという問題はございますが、この国葬令をながめて見ますと、「勅裁ヲ經テ之ヲ定ム」とか「特旨ニ依リ国葬ヲ賜フコトアルヘシ」とかいうような規定があります関係からいたしまして、ただいま瓜生次長が御指摘になりましたように、現在は効力がないというのが相当であろうと思います。

第6 大喪の礼
1 総論
(1)ア 「大喪の礼」は天皇又は上皇の国葬であり(皇室典範25条・天皇の退位等に関する皇室典範特例法3条3項),皇室の私的な儀式としての「大喪儀」とあわせて,「御大葬」といいます。
イ 明治憲法下では,皇室喪儀令1条ないし11条に基づく大喪儀(天皇,皇后,皇太后及び太皇太后が死亡した場合に行われる葬儀でした。)が国葬とされていました(国葬令1条)。
(2)ア 国の儀式として昭和天皇の大喪の礼を平成元年2月24日に新宿御苑で行うことについては,同年1月8日の官報特別号外で告示されました。
イ 昭和天皇の大喪の礼の場合,昭和天皇の大喪の礼の行われる日を休日とする法律(平成元年2月17日法律第4号)に基づき,大喪の礼が実施された平成元年2月24日は休日となりました。
2 大喪の礼と政教分離
(1) 小渕恵三内閣官房長官は,平成元年2月14日の参議院内閣委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 大喪の礼は、国の儀式として憲法の趣旨に沿い皇室の伝統等を尊重して行われ、葬場殿の儀は、皇室の行事として原則として皇室の伝統的方式に従い旧制を参酌して行われるので、両儀は法的に明確に区分されるわけでございます。
 しかし、いずれにいたしましても、両儀が一連の流れの中で厳粛のうちにスムーズに執行されることが望ましいと考えておりますので、政府といたしましては、この両儀が一連のものとして流れる姿の中で行いたい、このように考えておるところでございます。
② 国民の間にいろんな御意見のあることも政府としては承知をしなければならない立場でございますので、種々検討いたしました結果、大喪の礼の御式は国の儀式として行われ、葬場殿の儀は皇室の行事として行われるもので、両儀は法的に明確に区別されるのみならず、実際上も大喪の礼御式においては開式を告げること、祭官は退席すること、鳥居は撤去すること、大真榊は撤去すること等とされており、両儀ははっきり区別をされた形で行われるということで大喪の礼委員会で決定いたした次第でございます。
(2) 1期の味村治内閣法制局長官は,平成元年2月14日の参議院内閣委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 国事行為として行われます大喪の礼は、ただいま官房長官が申されましたとおり、皇室行事であります葬場殿の儀とははっきり区別をされているわけでございます。
② 国事行為たる大喪の礼は、祭官は退席し、鳥居を撤去し、大真榊は撤去されておりまして宗教色はないわけでございまして、国事行為たる大喪の礼が宗教儀式に該当ししたがって憲法二十条第三項によって国またはその機関が行うことを禁止されている宗教的活動に該当するという疑いは全くございません。まずそのことを申し上げておきます。

③ その前に葬場殿の儀が行われるわけでございまして、これは皇室の行事として行われるわけでございます。これにつきましてはいろいろ宗教的な色彩があるということは否定ができないわけでございます。
 しかしながら、そこに総理が総理たる資格で御出席になりましても、それは先ほど飯田委員との論議の中で申し上げたのと似たようなことになるわけでございますが、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であられます亡き昭和天皇に対する哀悼の意を表し、また、御遺族と申し上げるのは失礼かと思うんですが、御遺族であられます現天皇に対してお悔やみの意をあらわす、こういう意味でそういういろんな儀礼を尽くすというような意味で出席されるわけでございまして、特定の宗教を助長するとか援助するとかそういうようなことで出席されるわけでないということは、これは明らかなわけでございますから、したがって、内閣総理大臣が総理大臣としての資格で皇室行事たる葬場殿の儀に御出席になってもそれは憲法二十条三項の禁止する宗教的活動には該当しない、このように理解をしているわけでございます。
(3) 法の番人として生きる 大森政輔 元内閣法制局長官回顧録157頁には以下の記載があります。
 片や葬場殿の儀(山中注:「そうじょうでんのぎ」)のほうには鳥居が立って、真榊(山中注:「まさかき」)が立っている。これは宗教施設そのものではないかということで、当時の法制局長官が大喪の礼の手続に入ってからは、葬場殿の前にある鳥居と真榊を撤去するよう主張しました。それでずいぶん官邸のほうと対立しまして、感情的なしこりが残ったようです。当時は味村長官ですが、味村さんもさすがに頑張って、「鳥居を立てて、真榊を立てると、その中は神域になる。だから宗教施設そのものだ。だからそれを含めた大喪の礼をやると宗教儀式そのものだ」と言ったのです。それは一理あるので、渋々官房副長官も撤去することに応じて、政教分離については問題がないような形で行われました。
3 大喪の礼における弔意表明
(1) 結城章夫文部科学省大臣官房長は,平成15年7月16日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています。
 昭和天皇の大喪の礼当日の弔意奉表につきましては、平成元年二月十五日付の文部事務次官通知が出されております。これは、それに先立ちます二月十四日の閣議決定におきまして、学校などに対して、国と同様の方法により哀悼の意を表するよう協力方を要望することとされたことを踏まえまして、文部省管下の機関あるいは各都道府県の教育委員会等に通知を発出したものでございます。
(2) 大阪教育法研究会HPに「天皇陛下崩御に際しての弔意奉表について」(昭和64年1月7日付の文部事務次官通知)が載っています。

第7 皇太后の葬儀
1 貞明皇后の葬儀
(1) 昭和26年5月17日に崩御した貞明皇后(昭和天皇の母親であり,崩御当時は皇太后)の場合,GHQ占領下であったことから,国葬の有無を明確にしないまま,同年6月22日に大喪儀(国葬令1条参照)が行われました。
(2) 林修三法制局長官は,昭和37年2月26日の衆議院予算委員会第一分科会において以下の答弁をしています。
 現状のことで申しますれば、結局、国葬令というものは形式的には失効している。先ほどちょっとお答え申しました通りに、実は貞明皇后の御喪儀については、国葬令の考え方を踏襲して、同時にいわゆる行政府限りにおいて行ない得る範囲のこと、つまり予算措置等の裏づけがあればその範囲において、国葬令の内容と大体同じ考え方で貞明皇后の御喪儀については取り扱ったわけでございます。
2 香淳皇后の葬儀
・ 平成12年6月16日に崩御した香淳皇后(昭和天皇の皇后であり,崩御当時は皇太后)の場合,同年7月25日に斂葬の儀(れんそうのぎ)(大喪儀に相当するもの)が行われました。

第8 内閣・自由民主党合同葬
1 過去の実施例
(1) 内閣・自由民主党合同葬の実施例は以下のとおりです(対象者は元首相だけです。)。
・ 昭和55年 6月12日死亡の大平正芳(昭和55年7月9日実施)
・ 昭和62年 8月 7日死亡の岸信介(昭和62年9月17日実施)
・ 昭和63年11月14日死亡の三木武夫(昭和63年12月5日実施)
・ 平成 7年 7月 5日死亡の福田赳夫(平成7年9月6日実施)
・ 平成12年 5月14日死亡の小渕恵三(平成12年6月8日実施)
・ 平成16年 7月19日死亡の鈴木善幸(平成16年8月26日実施)
・ 平成18年 7月 1日死亡の橋本龍太郎(平成18年8月8日実施)
・ 平成19年 6月28日死亡の宮澤喜一(平成19年8月28日実施)
・ 令和 元年11月29日死亡の中曽根康弘(令和2年10月17日実施)
(2) 以下の元首相については内閣・自由民主党合同葬は実施されませんでした。
・ 平成 5年12月16日死亡の田中角栄
・ 平成10年 5月19日死亡の宇野宗佑
・ 平成12年 6月19日死亡の竹下登
・ 平成29年 8月28日死亡の羽田孜
・ 令和 4年 1月 9日死亡の海部俊樹
(3) 衆議院議員山岸一生君提出国葬儀に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には「御指摘の「『故岸信介』内閣・自由民主党合同葬儀記録」において、御指摘のような記載(山中注:「昭和六十三年三月三十日内閣総理大臣官房発行「『故岸信介』内閣・自由民主党合同葬儀記録」によると、政府は、これに先立つ佐藤元首相の国民葬について、長期政権、沖縄返還などの実績、ノーベル平和賞受賞の三点を挙げて、岸・佐藤両氏の葬儀形式の違いを説明している」という記載)があることは承知していたが、元内閣総理大臣の葬儀の在り方については、これまでも、その時々の内閣において、様々な事情を総合的に勘案し、その都度ふさわしい形を判断してきた」と書いてあります。
2 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀
(1) 最高位の勲章である大勲位菊花章頸飾を受賞した首相経験者(いずれも没後叙勲です。)は吉田茂,佐藤栄作,中曽根康弘及び安倍晋三でありますところ,佐藤栄作については昭和50年6月16日に国民葬が実施され,中曽根康弘については令和2年10月17日に内閣・自由民主党合同葬が実施されました。
(2) 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀は当初,令和2年3月15日にグランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで実施される予定でした(「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の執行について(令和2年1月10日付の内閣総理大臣通知)参照)が,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により同年10月17日に延期されました(「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の執行の延期について(令和2年3月4日付の内閣総理大臣通知)参照)。
(3)ア グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで令和2年10月17日に実施された「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀への裁判所からの出席者は,最高裁判所長官,認証官(15人以内)及び事務総長,並びに元最高裁判所長官だけとなりました(「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀参列者推薦範囲の変更について(令和2年9月10日付の内閣府大臣官房人事課長の文書)参照)。
イ 裁判所の認証官は最高裁判所判事14人及び高裁長官8人の合計22人です。
(4)ア 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の当日における弔意表明について (令和2年10月2日付の閣議了解)の本文は以下のとおりです。
 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の当日 (10月17日)には、哀悼の意を表するため、次のとおり措置するものとする。
1 各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻(午後2時10分)に黙とうすること。
2 各府省は、前項と同様の方法により、哀悼の意を表するよう、各公署に対し協力方を要望すること。
イ 弔意表明のレベルとしては,故佐藤榮作国民葬儀当日におけるものと同じでした。
(5) FNNプライムオンラインの「次世代へ受け継がれる中曽根家と皇室の縁…宮内庁記者が見た中曽根康弘元首相の合同葬」(2020年10月21日付)には「今回、合同葬に参列された皇族は、秋篠宮ご夫妻、秋篠宮家の長女・眞子さま、次女・佳子さま、常陸宮さま、寬仁親王妃信子さま、高円宮妃久子さま、高円宮家の長女・承子さまの8方です。慣例により、天皇皇后両陛下や上皇ご夫妻は出席せず、お使いを差し向けられています。」と書いてあります。
(6)ア 首相官邸HPに「「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀」が載っています。
イ 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀(令和2年10月17日実施)に関して最高裁判所が作成し,又は取得した文書を掲載しています。
(7) 国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて(令和4年7月14日付の内閣官房及び内閣府の文書)には以下の記載があります。
2 戦後における内閣総理大臣経験者の葬儀
(1) 戦後の内閣総理大臣経験者の葬儀に関する内閣(国)の関与については、当該者の功績、大方の国民の心情や御遺族のお気持ち等々を総合的に勘案して、個々のケース毎に相応しい方法がとられている。
(2) 具体的には、内閣(国)が関与した葬儀の形式としては、
①国の儀式として行う国葬儀
②内閣の行う儀式として行う内閣葬
がある。
(3)その執行者について、過去の実施実績を見ると、国葬儀は国が単独の執行者となっているのに対し、内閣葬については、内閣に加えて、自由民主党、衆議院等と合同で行われている。費用負担については、自由民主党と合同で行われる場合(内閣葬)には、自由民主党と概ね折半している。
※ なお、御遺族が公費での葬儀を固く辞退され、葬儀の実施に内閣(国)が関与しなかったこともある(海部元総理)。
(8) 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
① 故中曽根康弘内閣・自由民主党合同葬儀は、内閣府設置法第四条第三項第三十三号に規定する内閣の行う儀式として行われた葬儀である。
② お尋ねの「前回合同葬儀において、秋篠宮皇嗣同妃両殿下は公的行為を行った」の意味するところが必ずしも明らかではないが、秋篠宮皇嗣同妃両殿下は、故中曽根康弘内閣・自由民主党合同葬儀に参列されたところであり、当該御参列は、故中曽根康弘内閣・自由民主党合同葬儀委員長である内閣総理大臣安倍晋三(当時)から参列の願い出を受け、公的な立場で行われたものであり、公的行為に該当するものと考えている。


第9 戦後,内閣が関与して行われた元内閣総理大臣の葬儀に要した費用
・ 参議院議員辻元清美君提出安倍晋三元総理の国葬儀等についての基準に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
 戦後、内閣が関与して行われた元内閣総理大臣の葬儀に要した費用について、①予算額に占める国費の割合及び②執行額をお示しすると、それぞれ次のとおりである。
 吉田茂元内閣総理大臣 ①十割 ②約千八百四万円
 佐藤榮作元内閣総理大臣 ①約五割 ②約千九百九十六万円
 大平正芳元内閣総理大臣 ①約五割 ②約三千六百四十三万円
 岸信介元内閣総理大臣 ①約五割 ②約四千五百十万円
 三木武夫元内閣総理大臣 ①十割 ②約一億千八百七十一万円
 福田赳夫元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千三百三十四万円
 小渕恵三元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千五百五十五万円
 鈴木善幸元内閣総理大臣 ①約五割 ②約五千四百四十九万円
 橋本龍太郎元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千七百三万円
 宮澤喜一元内閣総理大臣 ①約五割 ②約七千五百八十五万円
 中曽根康弘元内閣総理大臣 ①約五割 ②約八千二百九十五万円

第10 関連記事その他
1 日本武道館(にっぽんぶどうかん)は,昭和39年の東京オリンピックの柔道競技会場として建設され,同年10月3日に開館しました。
2 Trend Laboに「【国葬された日本人一覧】費用(国費・税金)はいくら?休みになる?」が載っています。
3 首相官邸HPに「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う国の儀式等」が載っています。
4 令和4年10月3日に国会に提出された国葬儀法案(第210回国会衆法第2号)2条(国葬儀の実施)は以下のとおりです。
① 多年にわたり国政において重要な地位を占め、国家としての存立に関わる国難を乗り越えて我が国の主権と独立を守り、その発展の基礎を築く等の特別の功労のあった者が死亡したときに限り、内閣は、その者について、国葬儀を行うことができる。
② 内閣は、国葬儀を行おうとするときは、あらかじめ、その国葬儀に係る者が前項に規定する特別の功労のあった者に該当すると判断した理由及びその国葬儀に要する費用の見込みその他その行おうとする国葬儀の概要を明らかにして、国会の承認を得なければならない。
5 以下の記事も参照してください。
・ 故安倍晋三国葬儀
・ 平成の代替わりに伴う大嘗祭等に関する裁判例
・ 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等
・ 叙位の対象となった裁判官(平成31年1月以降の分)
・ 裁判官の死亡退官
・ 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
 勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)

内閣法制局に関するメモ書き

目次
1 内閣法制局の主な業務
2 質問主意書に対する答弁書に関する内閣法制局の審査
3 資料誤り等の再発防止
4 内閣法制局の執務資料
5 内閣法制局のその他の資料
6 臨時会の召集要求に関する国会答弁
7 改め文の必要性に関する国会答弁
8 関連記事その他

1 内閣法制局の主な業務
(1) 内閣法制局の主な業務は以下の二つであり,第一部は意見事務を担当し,第二部ないし第四部は審査事務を担当しています。
① 意見事務:法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べるという事務(内閣法制局設置法3条3号)
② 審査事務:閣議に付される法律案、政令案及び条約案を審査するという事務(内閣法制局設置法3条1号)
(2) 裁判官の出向先となっている第二部の担当省庁は,内閣(内閣官房内閣人事局及び内閣府を除く。),内閣府(公正取引委員会及び金融庁を除く。),法務省,文部科学省,国土交通省及び防衛省です(内閣法制局設置法施行令2条)。
(3) 参議院議員小西洋之君提出内閣法制局長官と法の支配に関する質問に対する答弁書(平成26年11月28日付)には以下の記載があります。
    内閣法制局は、内閣法制局設置法(昭和二十七年法律第二百五十二号)に基づき、「閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること」、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること」等を所掌事務として内閣に置かれた機関であり、行政府による行政権の行使について、憲法を始めとする法令の解釈の一貫性や論理的整合性を保つとともに、法律による行政を確保する観点から、内閣等に対し意見を述べるなどしてきたものである。
(4) 「「法の番人」内閣法制局の矜持」(著者は阪田雅裕 元内閣法制局長官)44頁には以下の記載があります。
    一般の法律については所管する各省がその責任のもとに解釈・運用・適用する。けれども憲法は内閣が自ら一元的に解釈し、運用せざるをえない。内閣は言うまでもなく総理を代表とする合議体です。内閣という組織は同一のものとしてあるとしても、それを構成する人は始終変わるわけです。ですから当然、憲法解釈のようなことについて、内閣自体が常に専門的な知見をもっているわけではない。だから法的な視点で内閣を支える組織というものが必要であり、それが法制局であるということです。

2 質問主意書に対する答弁書に関する内閣法制局の審査
・ 法務省が取りまとめ省庁である場合の記載として,質問主意書関係事務の手引き~はじめて主意書を担当する方へ~7頁には以下の記載があります(「本府内総」は,内閣官房内閣総務官室のことと思います。)。
    内閣法制局審査の際に用意する資料は,答弁書案,主意書,参考資料,参照条文である(最低3セット)。
    なお,従来作成していた「配布案件理由」(「配布案件」として閣議に付す場合(詳細は後述(3)を参照)に作成していたもの。)については,内閣総務官室の指示により,第192回国会から作成不要となった(今後の運用変更により,再度作成必要となる可能性あり。)。
    答弁書は内閣法制局第一部の参事官補→参事官→部長(重要な案件等は長官まで)の順序で審査を受けることとなっているところ,省内決裁,本府内総配字審査との関係(流れ)はおおむね次のとおりである。
① 部局内決裁【法務省】
② 内閣法制局参事官補審査
③ 内閣法制局参事官審査
④ 本府内総配字審査
⑤ 秘書課付決裁【法務省】
⑥ 秘書課長決裁【法務省】
⑦ 官房長決裁【法務省】
⑧ 事務次官決裁【法務省】
⑨ 内閣法制局第一部長審査(重要な案件は長官まで)
⑩ 本府内総配字審査

⑪ 政務三役決裁【法務省】(副大臣,政務官については,⑨と同時並行の場合もある。)
    重要な案件については,内閣法制局審査前に政務三役の了解を得たり,官邸と協議する場合もあり,上記の流れが変則的になることもある。
    原則,閣議請議前日までに⑪まで了となるようにする。

3 資料誤り等の再発防止
(1) 内閣官房HPの「再発防止チーム」に,デジタル改革関連法案における資料誤り等の当面の再発防止策 (令和3年3月29日付)が載っています。
(2) 衆議院議員丸山穂高君提出法改正時のミスにより既存の条項と罰則が対応しない状態等が生じていることに関する質問に対する答弁書(令和3年5月14日付)には以下の記載があります。
    内閣が第二百四回国会に提出した法律案(第二百三回国会において継続審査とされたものを含む。)及び条約について、条文及び参考資料(要綱、新旧対照表及び参照条文)等に相次いで誤りが判明したことから、まずは各府省庁において、今回の誤りが起きた原因の徹底究明と再発防止策の検討を実施している。その上で、内閣官房副長官、内閣官房副長官補、内閣官房内閣審議官二名、内閣法制次長、内閣法制局総務主幹、総務省行政管理局長、法務省大臣官房司法法制部長、各府省庁等大臣官房長及び国立印刷局理事長の計二十七名をメンバーとする「法案誤り等再発防止プロジェクトチーム」においては、再発防止に向けて、各府省庁共通の課題を抽出し、府省庁横断的に解決することを目的として、実際に法令の立案作業や文書審査業務を行う実務担当者などの現場の視点を踏まえるとともに、特にデジタル技術及びICTを積極的に活用する形で業務の進め方を見直していくとの観点に立って、実効性のある再発防止策を議論している。
(3) 厚生労働省四国地方厚生局HPに載ってある「ダブルチェックの有効性を再考する」によれば,「よく見たら分かるのに・・・」的間違いについては,指差確認だけで十分であって,ダブルチェックを実施した場合,単純に気づくエラーなのに2人とも手抜きしてどちらも見落とすとか,2人目の時間を奪う結果,別の作業を手抜きしたり,超過勤務につながったり,疲れて余計に間違えたりすることがあるとのことです。

4 内閣法制局の執務資料
・ 法令審査事務提要(改定)
・ 法令案における誤りの防止について(手引き)(増補版)
・ 内閣法制局の法令審査支援システム操作マニュアル
・ 憲法関係答弁例集(第9条・憲法解釈関係)(平成28年9月)
・ 
内閣法制局第一部の執務参考資料集8(憲法76条ないし81条関係)
・ 内閣法制局の国会用資料(平成30年分)
・ 内閣法制局の国会答弁抄(司法・法務)
・ 大嘗祭の合憲性に関する内閣法制局の国会用資料等

5 内閣法制局のその他の資料
(例規)
・ 内閣法制局組織細則(昭和31年9月1日法制局訓令第1号)
・ 内閣法制局行政文書取扱規則(平成31年4月25日最終改正)
(法律案審議録)
・ 裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)に関する,内閣法制局の法律案審議録
・ 裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)に関する,内閣法制局の法律案審議録
・ 裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省提出分は除く。)
(答弁書の審査資料)
・ 衆議院議員鈴木貴子君提出日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問主意書に対する答弁書(平成28年3月22日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の日本オリンピック委員会評議員会での女性に関する発言に関する質問に対する答弁書(令和3年2月16日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員浜田聡君提出衆議院本会議前夜午後十一時に質問通告が出ていなかった旨のSNS上の書き込みの審議に関する質問に対する答弁書(令和3年2月19日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員安達澄君提出西村康稔大臣の組織マネジメント等に関する質問に対する答弁書(令和3年3月5日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員浜田聡君提出皇室経済法第六条に規定されている一時金不支給に関する質問に対する答弁書(令和3年11月19日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員浜田聡君提出国会議員の依頼によって官僚が作成するあいさつ文や講演資料に関する質問に対する答弁書(令和3年12月17日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員浜田聡君提出天皇及び皇族が御結婚される際に例外的な対応を行う場合の処理等に関する質問に対する答弁書(令和3年12月21日付)に関する,内閣法制局の審査資料
・ 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)に関する,内閣法制局の審査資料
(その他)
・ 平成24年法令整備会議の資料
・ 関係主要用語集
→ 取り上げられている用語は以下のとおりです。
A級戦犯思いやり予算閣議決定・閣議了解・閣議報告間接侵略艦・船・艇軍事大国公開の原則(原子力)攻撃的兵器と防御的兵器公式参拝・私的参拝・正式参拝国会決議の効力国是三権分立日米防衛協力のための指針日米防衛協力のための指針(平成9年改定)首都侵略戦争政府統一見解・政府見解専守防衛遷都・分都・展都防衛計画の大綱(昭和52年度以降に係るもの)防衛計画の大綱(平成8年度以降に係るもの)大東亜戦争中立東京裁判当然の法理内政干渉白書・青書非核三原則秘密(国家公務員法100条)平和の目的予算と法律有事領海侵犯領空侵犯教育勅語


6 臨時会の召集要求に関する国会答弁
(1)ア 横畠裕介内閣法制局長官は,平成30年2月14日の衆議院予算委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① (山中注:臨時国会の召集要求があった場合,)臨時会で審議すべき事項等をも勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に臨時会の召集を行うことを決定しなければならないということでございまして、合理的な期間と申しますのは、召集に当たって整理すべき諸課題によって変わるものであるため、一概に申し上げることはできないと考えております。
② 憲法の規定の理解、解釈については先ほどお答えしたとおりでございまして、私どもの所掌といたしまして、憲法の解釈について申し上げるということはございますけれども、具体にどのような事情によってそのような期間になったのかということについてお答えする立場にはございません。
イ  憲法53条後段の規定により国会の臨時会の召集を決定することの要求をした国会議員は,内閣による上記の決定の遅滞を理由として,国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることはできません(最高裁令和5年9月12日判決)。
(2) 平成29年6月22日,野党議員は,安倍内閣に対し,衆参両院それぞれ総議員の4分の1以上の連名で臨時国会の召集を要求したものの,実際に臨時国会が召集されたのは同年9月28日でしたし,召集日に衆議院が解散されました。
(3) 憲法53条は以下のとおりです。
    内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。


7 改め文の必要性に関する国会答弁
・ 横畠裕介内閣法制局総務主幹は,平成14年12月13日の衆議院総務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 内閣法制局におきましては、法令の正確性はもとより、これが国民にとってわかりやすいものとなるよう平素から意を用いているところでございます。
    また、法令案の作成事務の簡素合理化につきましても努力をしているところでございます。
    御指摘のいわゆる改め文と言われる逐語的改正方式は、改正点が明確であり、かつ簡素に表現できるというメリットがあることから、それなりの改善、工夫の努力を経て、我が国における法改正の方法として定着しているものと考えております。
② 一方、新旧対照表は、現在、改正内容の理解を助けるための参考資料として作成しているものでございますが、逐語的改正方式をやめて、これを改正法案の本体とすることにつきましては、まず、一般的に新旧対照表は改め文よりも相当に大部となるということが避けられず、その全体について正確性を期すための事務にこれまで以上に多大の時間と労力を要すると考えられるということが一つございます。
    また、条項の移動など、新旧対照表ではその改正の内容が十分に表現できないということもあると考えられます。このようなことから、実際上困難があるものと考えております。
③ ちなみに一例を申し上げますと、平成十一年でございますが、中央省庁等改革関係法施行法という法律がございました。
    改め文による法案本体は全体で九百四十ページという大部のものでございましたけれども、その新旧対照表は、縮小印刷をさせていただきまして、四千七百六十五ページに達しております。
    これを改め文と同じ一ページ当たりの文字数で換算いたしますと、二万一千三百五ページということになりまして、実に改め文の二十二倍を超える膨大な量となってしまう、こういう現実がございます。


8 関連記事その他
1 内閣法制局HPに「法律ができるまで」が載っています。
2 若手組織内弁護士研究ノート「①渡部友一郎「内閣法制局資料への敬意」JILA : 日本組織内弁護士協会会報誌第14号(2022)②同「新しい部会作りマニュアル」JILA : 日本組織内弁護士協会会報誌第14号(2022)」が載っています。
3(1) 法務省刑事局作成の以下の資料を掲載しています。
・ 若手検察官のための法令基礎知識→検察月報678号(平成25年9月)からの抜粋
・ 罰則の定めのある条例審査について(執筆者は東京高検検事)
・ 罰則の定めのある条例審査のQ&A(法務省刑事局刑事法制課の調査解説)
・ 罰則の定めのある条例の審査について→検察月報640号(平成22年7月)からの抜粋
・ いわゆる暴力団排除条例の審査について→検察月報645号(平成22年12月)からの抜粋
・ 環境関連条例の審査について→検察月報651号(平成23年6月)からの抜粋
・ 屋外広告物条例の審査について→検察月報654号(平成23年9月)からの抜粋
4(1) 内閣法制局の以下の資料を掲載しています。
・ 法令案における誤りの防止について(手引)(改訂版)
→ 令和3年12月の内閣法制局の文書です。
(2) 以下の記事も参照して下さい。
・ 内閣法制局長官任命の閣議書
・ 内閣法制局参事官経験のある裁判官
・ 外務省国際法局長経験のある最高裁判所判事
・ 行政機関等への出向裁判官
・ 平成16年4月1日創設の,弁護士資格認定制度
 弁護士資格認定制度に基づく認定者数の推移

最高裁判所の概算要求書(説明資料)

目次
第1 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
第2 概算要求から政府予算案の成立まで
第3 検索システムに関する令和4年度概算要求及び請負契約書
1 検索システムに関する概算要求書説明資料の記載
2 検索システムの単価及び請負契約書
第4 関連記事その他

第1 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
1 裁判所HPの「裁判所の予算・決算・財務書類」に,①毎年度の一般会計歳出予算各目明細書及び②一般会計歳出概算要求書が掲載されています。
    そして,③最高裁判所の概算要求書(説明資料)は,②の説明資料です。
2 最高裁判所の概算要求書(説明資料)のバックナンバーは以下のとおりです。
(令和時代)
令和2年度1/22/2令和3年度令和4年度
令和5年度
令和6年度令和7年度令和8年度
(平成時代)
平成29年度1/32/33/3
3 令和4年度予算の場合,人件費が2698億円(84%),施設費が146億円(4%),物件費が384億円(12%)であり,合計で3228億円です。


第2 概算要求から政府予算案の成立まで
1 毎年7月下旬に決定される,概算要求にあたっての基本的な対処方針について(閣議了解)が財務省HPの「予算」に掲載されます。
2(1) 概算要求とは,各省各庁が毎年8月末日までに財務省に対して行う次年度の予算要求をいい(財政法17条),毎年9月上旬に「各省各庁の概算要求」が財務省HPの「予算」に掲載されます。
(2) 財政法17条1項は「衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長は、毎会計年度、その所掌に係る歳入、歳出、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類を作製し、これを内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付しなければならない。」と定めています。
3 毎年12月下旬に政府予算案が閣議決定されて(財政法18条1項),翌年1月に政府予算案が国会に提出され(財政法27条),翌年3月下旬に政府予算案が国会で成立します。


第3 検索システムに関する令和4年度概算要求及び請負契約書
1 検索システムに関する概算要求書説明資料の記載
・ 【裁判所所管】令和4年度概算要求書説明資料160頁及び161頁には以下の記載があります。
(3) 法令・判例等検索システム
<要求要旨>
    法令・判例等検索システムは,法令,判例及び文献情報を検索閲覧するシステムである。
    本システムは,裁判官や書記官各自の端末パソコンからアクセスすることにより,裁判執務に必要な法規,判例及び法律判例文献の著者名,雑誌名等を容易かつ瞬時に入手することができるものであり,適正迅速かつ効率的な裁判事務処理に極めて有効なものであり,令和4年度も引き続きその利用に必要なライセンス料を要求する。
    なお,本件は,複数年度にわたる契約を締結する必要があるため,併せて5箇年の国庫債務負担行為によることを要求しており,令和4年度はその3年目である。
(4) 法律雑誌等検索システム
<要求要旨>
    法律雑誌等検索システムは,判例や法律雑誌に掲載された論文,評釈及び解説等の膨大な情報を収録しているデータベースシステムである。本システムは,法律雑誌の収録件数が豊富であり,主要法律雑誌に掲載された判例評釈及び解説のすべてを,原本性を保持したPDFデータとして収録し,判例と関連づけて検索閲覧することが可能である。
    これは, 法令・判例等検索システムにはない機能であり,その都度膨大な数の雑誌から,事件処理に必要な記事を探し出す作業の必要がなくなり,効率的な裁判事務処理,特に,日々第一線で訴訟等の案件を処理している裁判官の事務処理の負担軽減に多大な貢献をもたらすものである。
    法律雑誌等検索システムと法令・判例等検索システムは,それぞれのシステムの特長から,相互に補完して利用することにより,より一層裁判事務の効率化に寄与するものであり,令和4年度も引き続きその利用に必要なライセンス料を要求する。
    なお,本件は,複数年度にわたる契約を締結する必要があるため,併せて5箇年の国庫債務負担行為によることを要求しており,令和4年度はその3年目である。 
(5) Web版図書情報システム
<要求要旨>
    Web版図書情報システムは,下級裁判所の資料室及び裁判官室等で管理している図書資料(約230万冊)の情報を,インターネット回線を利用して,運営会社の提供する蔵書検索サービスにデータをアップロードし,職員が同サービスにインターネット回線を利用してアクセスすることにより,図書資料の有無や配架場所を検索できるものである。
    Web版図書情報システムは,書籍名や著者名等のキーワードを入力することにより,関連する蔵書の有無や配架場所を瞬時に検索することが可能であり,適正迅速かつ効率的な事務処理に有効であることから,令和4年度も引き続きその利用に必要なライセンス等を要求する。
    なお,本件は,複数年度にわたる契約を締結する必要があるため,併せて5箇年の国庫債務負担行為によることを要求しており,令和4年度はその3年目である。
2 検索システムの単価及び請負契約書
(1) 法令・判例等検索システム
ア 【裁判所所管】令和4年度概算要求書説明資料167頁によれば,法令・判例等検索システムの令和4年度の単価は4018万4125円であり,知財高裁用法令・判例等検索システムの令和4年度の単価は7万5875円であり,合計額は4026万円です。
イ 法令・判例等検索システムの利用に関する請負契約書(令和2年4月1日付。受注者は第一法規株式会社によれば,5年間の利用料金は2億130万円であり,1年度当たりの料金は4026万円であり,クライアント端末数は2万6000台までであり(仮に2万6000台を利用した場合,1台当たりの年間利用料は1548円となります。),サーバへの同時アクセス数は500台までです。
(2) 法律雑誌等検索システムの単価及び請負契約書
ア 【裁判所所管】令和4年度概算要求書説明資料167頁によれば,法律雑誌等検索システムの令和4年度の単価は2934万4899円であり,知財高裁用法律雑誌等検索システムの令和4年度の単価は8万101円であり,合計額は2942万5000円です。
イ 法律雑誌等検索システムの利用に関する請負契約書(令和2年4月1日付。受注者は株式会社エル・アイ・シーによれば,5年間の利用料金は1億4712万5000円であり,1年度当たりの料金は2942万5000円であり,クライアント端末数は1万8000台までであり(仮に1万8000台を利用した場合,1台当たりの年間利用料は1635円となります。),サーバへの同時アクセス数は500台までです。
(3) WEB版図書情報システムの単価及び請負契約書
ア 【裁判所所管】令和4年度概算要求書説明資料167頁によれば,WEB版図書情報システムの令和4年度の単価は105万6000円です。
イ WEB版図書情報システムの利用に関する請負契約書(令和2年4月1日付。受注者は株式会社OPACによれば,5年間の利用料金は706万2000円です。

第4 関連記事その他
1(1) 昭和22年度以降の予算書及び決算書が,財務省HPの「予算書・決算書データベース」に載っています。
(2) 平成11年度以降の予算に関する,概算要求,政府案及び補正予算が 財務省HPの「予算」に載っています。
(3) 特例公債法案及び対応する予算の議決日等が,「戦後初となった大規模な予算の執行抑制」(立法と調査2012年12月号)に載っています。
2 関東弁護士会連合会は,平成28年3月16日,「司法予算の大幅増額を求める理事長声明」を出しています。
3(1) 日弁連委員会ニュース2022年1月号15頁の「もっと知ってください、裁判所予算」には裁判所予算に関する概括的な説明が載っていて,日弁連委員会ニュース2022年12月号16頁の「もっと知ってください、裁判所予算(その2)」には,最高裁判所の概算要求に関する説明が載っています。
(2) 「もっと知ってください、裁判所予算」の執筆者は56期の志摩恭臣弁護士(徳島)です。
4(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 令和4年度歳出概算要求の作成手順が書いてある文書(財務省の開示文書)
・ 令和4年度機構・定員及び級別定数設定・改定の要求について(令和3年7月7日付の内閣官房内閣参事官(内閣人事局),人事院給与局給与第二課長及び財務省主計局給与共済課長の文書)
・ 最高裁判所の令和3年度概算要求書729頁「職員諸手当」の積算根拠が書いてある文書
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所の国会答弁資料
・ 最高裁及び法務省から国会への情報提供文書
・ 裁判所をめぐる諸情勢について
・ 裁判所職員の予算定員の推移
・ 級別定数の改定に関する文書
・ 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
・ 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
 毎年6月開催の長官所長会同
 高等裁判所事務局長事務打合せ
 司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長
・ 下級裁判所事務局の係の事務分掌
 東京高裁及び大阪高裁事務局,並びに東京地裁,大阪地裁及び大阪家裁事務局に設置されている係
・ 裁判所書記官,家裁調査官及び下級裁判所事務局に関する規則,規程及び通達

素因減額

目次
第1 身体的素因による減額
1 被害者の疾患の斟酌
2 頸椎後縦靱帯骨化症
3 平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴
第2 心因的素因による減額
1 被害者の心因的要因の斟酌
2 減額の理由とされる被害者の性格等
第3 被害者側の過失
1 総論
2  被害者側の過失として斟酌した事例
2  被害者側の過失として斟酌しなかった事例
第4 既存障害がある場合の新たな後遺障害認定について
第5 関連記事その他

第1 身体的素因による減額
1 被害者の疾患の斟酌
    被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した場合において,当該疾患の態様,程度等に照らし,加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは,裁判所は,損害賠償の額を定めるに当たり,民法722条2項の規定を類推適用して,被害者の疾患を斟酌することができます(最高裁平成4年6月25日判決参照)。
    そして,このことは,加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか,疾患が難病であるかどうか,疾患に罹患することにつき被害者の責めに帰すべき事由があるかどうか,加害行為により被害者が被った衝撃の強弱,損害拡大の素因を有しながら社会生活を営んでいる者の多寡等の事情によって左右されるものではありません(最高裁平成8年10月29日判決)。

2 頸椎後縦靱帯骨化症
(1)ア 頸椎後縦靱帯骨化症に罹患していたことが,被害者の治療の長期化や後遺障害の程度に大きく寄与していることが明白である事例において,民法722条2項の類推適用により,後遺障害9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)となった被害者の疾患の寄与度は3割であるとした裁判例があります(最高裁平成8年10月29日判決の差戻控訴審である大阪高裁平成9年4月30日判決)。
イ 3に記載している最高裁平成8年10月29日判決とは別の判決です。
(2) 後縦靱帯骨化症とは,椎体骨の後縁を上下に連結し,背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨になった結果,脊髄の入っている脊柱管が狭くなり,脊髄や脊髄から分枝する神経根が押されて,感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気です。
    骨になってしまう脊椎の部位によってそれぞれ頚椎後縦靱帯骨化症,胸椎後縦靱帯骨化症,腰椎後縦靱帯骨化症と呼ばれます(難病情報センターHP「後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)」参照)。
(3) MindsガイドラインライブラリHP「頸椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン2011」が載っています。

3 平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴
(1) 被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても,それが疾患に当たらない場合には,特段の事情の存しない限り,被害者の当該身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり勘酌することはできません(最高裁平成8年10月29日判決)。
    なぜなら,人の体格ないし体質は,すべての人が均一同質なものということはできないものであり,極端な肥満など通常人の平均値から著しくかけ離れた身体的特徴を有する者が,転倒などにより重大な傷害を被りかねないことから日常生活において通常人に比べてより慎重な行動をとることが求められるような場合は格別,その程度に至らない身体的特徴は,個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されているものというべきだからです。
(2) 疾患に当たらない多少の頚椎不安定症については,このような身体的特徴を有する車が一般的に負傷しやすいものとして慎重な行動を要請されているといった事情は認められないことにかんがみ,素因減額の対象とはなりません(最高裁平成8年10月29日判決)。

第2 心因的素因による減額
1 被害者の心因的要因の斟酌
(1) 身体に対する加害行為を原因とする被害者の損害賠償請求において,裁判所は,加害者の賠償すべき額を決定するに当たり,損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし,民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して,損害の発生又は拡大に寄与した被害者の性格等の心因的要因を一定の限度でしんしゃくすることができます(最高裁昭和63年4月21日参照)。
(2) 最高裁昭和63年4月21日判決の趣旨は,労働者の業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求においても,基本的に同様に解すべきものとされています。
    ただし,労働者の性格が,同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない場合,裁判所は,業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求において使用者の賠償すべき額を決定するに当たり,その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を,心因的要因としてしんしゃくすることはできません(最高裁平成12年3月24日判決)。

2 減額の理由とされる被害者の性格等
交通関係訴訟の実務(著者は東京地裁27民(交通部)の裁判官等)348頁には,「2 減額の理由とされる被害者の性格等について」として以下の記載があります(改行を追加しました。)。
   被害者の性格や気質を理由に減額を認める裁判例は少なくない。

   しかし、「性格」、「気質」といっても、すべての人が均一同質ではなく、その個人差も幅広いものである上、「性格」とされる内容も、たとえば「お人好し、世話好き、人情に厚い、自己中心的、凝り性、責任感が強い、仕事熱心、頑固、真面目」などと様々であり、これらは通常人において想定されるものであるから、「性格」が寄与したことを理由とする減額については、慎重な判断を要するものと思われる。
   この点、東京地判平成27年2月26日自保ジャーナル1950号70頁は、脳外科勤務医である原告が、交通事故により、うつ病等の後遺障害が生じた事案において、原告の性格.器質等がうつ病の発症及び増悪に影瀞したことは否定できないとしつつ、「脳神経外科医である原告にとって、右手指の自覚症状は原告の職業生活を左右しかねないものであったことに加え、……事故後の治療の内容、症状の推移、症状固定までの期間、後遺症の程度に鑑みると、本件事故との相当因果関係を認めた損害額について、原告の性格・器質等の寄与を理由に減額をせず、被告に損害額全部を賠償させるのが公平を失するということはできない。」と判示して、素因減額を否定しており、参考になるものと思われる。

第3 被害者側の過失
1 総論

    被害者本人が幼児である場合における民法722条2項にいう被害者の過失には,被害者側の過失をも包含するが,右にいわゆる被害者側の過失とは,被害者本人である幼児と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失をいいます(最高裁昭和42年6月27日判決)。

2  被害者側の過失として斟酌した事例
(1) 夫の運転する自動車に同乗する妻が右自動車と第三者の運転する自動車との衝突により損害を被った場合において,右衝突につき夫にも過失があるときは,特段の事情のない限り,右第三者の負担すべき損害賠償額を定めるにつき,夫の過失を民法722条2項にいう被害者の過失として掛酌することができます(最高裁昭和51年3月25日判決)。
(2)  内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し,それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において,その損害賠償額を定めるに当たっては,内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができます(最高裁平成19年4月24日判決)。
(3) 最高裁平成20年7月4日判決は,Aが運転しBが同乗する自動二輪車とパトカーとが衝突しBが死亡した交通事故につき,Bの相続人がパトカーの運行供用者に対し損害賠償を請求する場合において,過失相殺をするに当たり,Aの過失をBの過失として考慮することができるとされた事例です。

3 被害者側の過失として斟酌しなかった事例
    被害自動車の運転者とこれに同乗中の被害者が恋愛関係にあったものの,婚姻していたわけでも,同居していたわけでもない場合には,過失相殺において右運転者の過失が被害者側の過失と認められるために必要な身分上,生活関係上の一体性があるとはいえません(最高裁平成9年9月9日判決)。


第4 既存障害がある場合の新たな後遺障害認定について
1 月刊大阪弁護士会2023年5月号25頁及び26頁には「既存障害がある場合の新たな後遺障害認定について」として以下の記載があります。
    まず、既存障害と新たな事故による後遺障害(以下「本件障害」という。)が自賠責施行令2条2項にいう同一部位であるかどうかが問題となる。自賠責の認定では同一部位であれば加重障害でない限り非該当となるためである。14級9号の神経症状については、一方が中枢神経系、他方が末梢神経系に由来する場合や、腰部や頸部など異なる末梢神経系に由来する場合は同一部位に当たらない。
    既存障害と本件障害が同一の末梢神経系に由来する場合は、既存障害が事故時に消失しているかどうかを検討する。症状消失を推認する事情としては、前回の症状固定日から相当年数が経過している場合、事故前の相当期間通院しなくなっている場合、既存障害による労働時間、収入額などの制約が事故前には回復していた場合などが考えられる。消失しているとまでは言えない場合でも、既存障害の影響が減退している場合はあり、事故時において既存障害の労働能力への影響があるかについて、既存障害と本件障害の内容、程度、前回事故後の通院状況や症状の推移、生活状況、前回事故や症状固定日からの期間などから判断している。
    近時の裁判例では9年前の事故で既存障害が14級9号となり事故前の5年間(カルテの保存期間の範囲内)は通院がなかった事案で再度14級9号が認定された例がある。和解例であるが、13年前に頸部に14級9号の既存障害が認定され、最後の通院が9寝ん前で事故前の3か月間の出勤状況に問題がなく後の事故による外力の方が大きかったと言える事案で再度の14級9号の認定がされた例、7年半前の事故により14級9号の既存障害があり直近5,6年の通院がなかった事案で労働能力喪失率5%、期間3年間、慰謝料95万円とした例、7年前に腰部のしびれについて14級9号の認定がされ本件障害について臀部外側の痛み両足等のしびれについて14級9号の認定をした例がある。他方で、約1年半前の事故で既存障害の症状固定から1年程度しか経過していない場合で再度の認定が否定された事案がある。
2 交通事故に関する赤い本講演録2006には「加重障害と損害額の算定」が載っています。

第5 関連記事その他
1(1) 交通事故・損害賠償請求ネット相談室HP(LSC総合法律事務所)「交通事故における素因減額(素因減責)とは?」が載っています。
(2) 交通事故被害者を2度泣かせないHP「骨粗鬆症による素因減額」が載っています。
(3) 交通関係訴訟の実務(著者は東京地裁27民(交通部)の裁判官等)に329頁ないし350頁に「素因(身体的素因・心因的素因)減額の諸問題」が載っていて,351頁ないし366頁に「損益相殺の諸問題」(控除の対象となるもの・ならないもの,時的範囲と人的範囲,過失相殺等による減額と控除の順序,どの損害から控除されるか,遅延損害金と元本への充当)が載っています。
2 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が平成28年4月1日から施行されています(内閣府HPの「障害を理由とする差別の解消の推進」参照)。
3 以下の記事も参照して下さい。
・ 損益相殺
・ 東京地裁民事第27部(交通部)
・ 東京地裁裁判官会議の概況説明資料
・ 弁護士費用特約

損益相殺

目次
1 労災保険法に基づく保険給付は,慰謝料等には充当されないこと
2 休業給付及び療養給付と損益相殺
3 遺族補償年金と損益相殺
3の2 損害賠償金を先に取得した場合に実施される,労災保険給付の控除
4 損益相殺と過失相殺の両方が絡んだ場合の請求額の計算
5 労災保険の特別支給金は損益相殺の対象とならないこと
6 労災保険の受給権者と損害賠償請求権者が異なる場合,損益相殺の対象とならないこと
7 労災保険給付における,企業内労災補償,示談金,和解金,見舞金等の取扱い
8 生計維持関係の認定基準
9 自賠責保険金,搭乗者傷害保険金,人身傷害補償保険及び政府保障事業による填補と損益相殺
10 遺族年金及び生命保険金と損益相殺
11 租税及び養育費と損益相殺
12 関連記事その他

1 労災保険法に基づく保険給付は,慰謝料等には充当されないこと
(1) 慰謝料に対応する労災保険給付は存在しないところ,労災保険給付が現に認定された逸失利益の額を上回るとしても,当該超過分を財産的損害のうちの積極損害(例えば,治療費)や精神的損害(慰謝料)をてん補するものとして,保険給付額をこれらとの関係で控除することは許されません最高裁昭和62年7月10日判決。なお,先例として,最高裁昭和58年4月19日判決)。
    なぜなら,民事上の損害賠償の対象となる損害のうち,労災保険法による休業補償給付及び傷病補償年金並びに厚生年金保険法による障害厚生年金が対象とする損害と同性質である点で,その間で同一の事由の関係にあることを肯定することができるのは、財産的損害のうちの消極損害(いわゆる逸失利益)のみだからです。
(2) 労災保険及び人身傷害補償保険に関する損益相殺について判示した裁判例として,京都地裁平成31年1月30日判決があります。

2 休業給付及び療養給付と損益相殺
(1)ア 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労災保険法に基づく各種保険給付を受けたときは,これらの社会保険給付は,それぞれの制度の趣旨目的に従い,特定の損害について必要額をてん補するために支給されるものであるから,同給付については,てん補の対象となる特定の損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する損害の元本との間で,損益相殺的な調整が行われます(最高裁平成22年10月15日判決。なお,先例として最高裁平成22年9月13日判決参照)。
イ 具体的には,労災保険の休業給付及び障害一時金は,休業損害及び後遺障害による逸失利益の元本との間で損益相殺的な調整が行われます(最高裁平成22年10月15日判決)。
(2)ア 休業給付は,休業損害の元本との間で損益相殺的な調整が行われるべきであり,その制度の予定するところに従って,てん補の対象となる損害が現実化する都度,これに対応して支給されたものといえる場合(=制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情がない場合),そのてん補の対象となる損害は,交通事故が発生した日にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整がなされます(最高裁平成22年10月15日判決)。
イ 療養給付については治療費等の療養に要する費用の元本との間で,交通事故が発生した日にてん補されたものと法的に評価して,同様の損益相殺的な調整がなされます(最高裁平成22年9月13日判決)。
ウ 障害一時金については後遺障害による逸失利益の元本との間で,交通事故が発生した日にてん補されたものと法的に評価して,同様の損益相殺的な調整がなされます(最高裁平成22年10月15日判決)。
(3) 最高裁平成22年9月13日判決に関する最高裁判所判例解説民事編平成22年(下巻)584頁には以下の記載があります。
(注6) 前掲最二小判昭和62年7月10日の判例解説(田中壯太「最高裁判所判例解説民事篇昭和62年度」427頁)は,労災保険給付につき,①療養補償給付と損害賠償の費目中の「治療費」(積極損害の一部)が,②葬祭料と損害賠償の費目中の「葬祭費用」(積極損害の一部)が,③休業補償給付,障害補償給付,遺族補償給付及び傷病補償年金と損害賠償の費目中の消極損害(逸失利益)が,それぞれ「同一の事由」の関係にあり,厚生年金保険法に基づく年金給付についても,労災保険給付についての考え方が基本的に妥当すると述べる。国民年金法や各共済組合法に基づく年金給付についても,労災保険給付や厚生年金保険法に基づく年金給付との給付目的や支給要件の類似性等に照らせば,以上と同様の考え方が基本的に妥当すると考えてよいであろう。
(4) 御池ライブラリーの「4 損益相殺」には「療養給付については、治療費以外にも、入院雑費や通院交通費への充当(損益相殺)を認める裁判例が多い。」と書いてあります。


3 遺族補償年金と損益相殺
(1)ア  労働者災害補償保険法又は厚生年金保険法に基づき政府が将来にわたり継続して保険金を給付することが確定していても,いまだ現実の給付がない以上,将来の給付額を受給権者の使用者に対する損害賠償債権額から控除することを要しません(最高裁昭和52年10月25日判決。なお,先例として,最高裁昭和52年5月27日判決参照)。
イ 最高裁昭和52年5月27日判決及び最高裁昭和52年10月25日判決からすれば,労災保険から将来にわたり給付されることが予定される年金については損害賠償額から差し引かれないこととなり,事業主の損害賠償が行われた後は,保険給付の支給停止の明文の根拠を欠くため結果的に二重填補・二重負担の事態を招き,事業主の有する労災保険における保険利益が失われることとなりました。
    そこで,このような不合理な自体を解消するため,昭和55年の労災保険法改正により,事業主の行う民事損害賠償と労災保険給付との調整を定める労災保険法64条が追加されました。
(2)ア 被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,損害賠償額を算定するに当たり,上記の遺族補償年金につき,その塡補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行われるのであって(最高裁大法廷平成27年3月4日判決),この点については,休業補償給付及び療養補償給付の損益相殺と同じ取扱いです。
イ いまだ支給を受けることが確定していない遺族補償年金(「事実審の口頭弁論終結後に支給される遺族補償年金」とほぼ同じです。)の額についてまで損害額から控除する必要はありません(地方公務員等共済組合法に基づく遺族年金に関する最高裁大法廷平成5年3月24日判決参照)。

3の2 損害賠償金を先に取得した場合に実施される,労災保険給付の控除
・ 大阪労働局HPの「民事損害賠償と労災保険との調整方法について」には以下の記載があります。
    「控除」とは、第三者の損害賠償(自動車事故の場合は自賠責保険等)が労災保険の給付より先に行われていた場合であって、当該第三者から同一の事由(注2)につき損害賠償を受けたときは、政府は、その価格の限度で労災保険の給付をしないことをいいます。
    同一の事由により、第三者から損害賠償を受け、さらに労災保険の給付が行われますと、損害が二重にてん補されることとなり、被災者等は計算上利益を生ずることとなってしまいますので、損害賠償のうち、労災保険の給付と同一の事由に相当する額を控除して給付を行い、損害の二重てん補という不合理を避けることとしているわけです。なお、控除を行う期間は、原則として災害発生後7年間となります。

4 損益相殺と過失相殺の両方が絡んだ場合の請求額の計算
(1) 労災保険法に基づく保険給付の原因となった交通事故が第三者の行為により惹起され,第三者が当該行為によって生じた損害につき賠償責任を負う場合において,当該交通事故により被害を受けた労働者に過失があるため損害賠償額を定めるにつきこれを一定の割合で斟酌すべきときは,保険給付の原因となった事由と同一の事由による損害の賠償額を算定するには,当該損害の額から過失割合による減額をし,その残額から当該保険給付の価額を控除する方法によることとなります(最高裁平成元年4月11日判決。なお,先例として,最高裁昭和55年12月18日判決)。
    つまり,労災保険の損益相殺と過失相殺の両方が絡んだ場合の請求額の計算式は,請求可能額=損害額×(1-被請求者の過失割合)-労災保険に基づく保険給付の価額になるということです。
(2)ア 労災保険と同じように過失相殺後に控除されるものとしては,自賠責保険及び加害者加入の任意保険があるのに対し,過失相殺前に控除されるもの(過失がある被害者に有利な方式です。)としては,健康保険の療養給付,老齢基礎年金及び老齢厚生年金並びに所得補償保険があります(交通事故サポートセンターHPの「過失相殺と損益相殺はどちらを先に行うべきか」参照。なお,健康保険の療養給付につき最高裁平成10年9月10日判決,所得補償保険につき最高裁平成元年1月19日判決)。
イ 自賠法72条1項後段に基づく政府保障事業の場合,国民健康保険給付は過失相殺後に控除されます(最高裁平成17年6月2日判決)。
(3)ア バスの乗客の事故に関する名古屋地裁平成15年3月24日判決(判例秘書に掲載)は「健康保険法による健康保険給付は,被害者の過失を重視することなく,社会保障の一環として支払われるべきものであることに鑑みれば,過失相殺の負担は保険者等に帰せしめるのが妥当であるから,健康保険法による傷病手当金及び高額療養費の各給付は,過失相殺前にこれを損害から控除すべきである。」と判示しています。
イ 協会けんぽの高額療養費は,保険医療機関等から提出される診療報酬明細書の確認が必要である点で診療月から3ヵ月以上かかることから,協会けんぽでは高額療養費が支給されるまでの間,高額療養費支給見込み額の8割相当額を無利子で貸し付けを行う高額医療費貸付制度があります(協会けんぽHPの「高額療養費について」参照)。


5 労災保険の特別支給金は損益相殺の対象とならないこと
    労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年12月28日労働省令第30号。公布日施行であり,昭和49年11月1日から適用)に基づく休業特別支給金,障害特別支給金等の特別支給金の支給は,労働者災害補償保険法に基づく本来の保険給付ではなく,労働福祉事業の一環として,被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり(労働者災害補償保険法23条1項2号,同規則1条),使用者又は第三者の損害賠償義務の履行と特別支給金の支給との関係について,保険給付の場合のような調整規定(同法64条,12条の4)もありません。
    このような保険給付と特別支給金との差異を考慮すると,特別支給金が被災労働者の損害を填補する性質を有するということはできず,被災労働者が労働者災害補償保険から受領した特別支給金をその損害額から控除することはできません(最高裁平成9年1月28日判決。なお,先例として,最高裁平成8年2月23日判決参照)。

6 労災保険の受給権者と損害賠償請求権者が異なる場合,損益相殺の対象とならないこと
(1) 不法行為の被害者の相続人が受給権を取得した遺族厚生年金を損害賠償の額から控除するに当たっては,現にその支給を受ける受給権者についてのみこれを行うべきものとされています(最高裁平成16年12月20日判決。なお,先例として,最高裁昭和50年10月24日判決参照)ところ,このことは遺族補償年金(業務災害)又は遺族年金(通勤災害)についても同じであると思います。
    そのため,例えば,通勤災害となる交通事故で死亡した子供の祖父母(55歳以上)が遺族年金を受領したとしても,当該遺族年金は,死亡した子供の両親(55歳未満)が有する損害賠償金から差し引かれることはないと思います。
(2) 通勤災害となる交通事故で死亡した子供の両親が損害賠償金を受領したとしても,当該損害賠償金は,死亡した子供の祖父母が有する遺族年金から差し引かれることはありません(民事損害賠償が行われた際の労災保険給付の支給調整に関する基準(労働者災害補償保険法第六七条第二項関係)について(昭和56年6月12日付の労働事務次官通達)「2 支給調整を行う労災給付」参照)。

 労災保険給付における,企業内労災補償,示談金,和解金,見舞金等の取扱い
・ 民事損害賠償が行われた際の労災保険給付の支給調整に関する基準(労働者災害補償保険法第六七条第二項関係)について(昭和56年6月12日付の労働事務次官通達)には「企業内労災補償、示談金、和解金、見舞金等の取扱い」として以下の記載があります。
イ 企業内労災補償
    企業内労災補償は、一般的にいつて労災保険給付が支給されることを前提としながらこれに上積みして給付する趣旨のものであるので、企業内労災補償については、その制度を定めた労働協約、就業規則その他の規程の文面上労災保険給付相当分を含むことが明らかである場合を除き、労災保険給付の支給調整を行わない。
ロ 示談金及び和解金
    労災保険給付が将来にわたり支給されることを前提としてこれに上積みして支払われる示談金及び和解金については、労災保険給付の支給調整を行わない。
ハ 見舞金等
    単なる見舞金等民事損害賠償の性質をもたないものについては、労災保険給付の支給調整を行わない。


8 生計維持関係の認定基準
(1) 労災保険の遺族補償年金の場合
ア 遺族補償年金の受給資格者について定める労災保険法16条の2第1項本文の「労働者の死亡の当時その収入によつて生計を維持していた」に該当するためには,専ら又は主として労働者の収入によって生計を維持されていることを要せず,労働者の収入によって生計の一部を維持されていれば足りますから,いわゆる共稼ぎもこれに含まれます労働者災害補償保険法の一部を改正する法律第三条の規定の施行について(昭和41年1月31日付・基発第73号))。
イ 労災保険給付事務取扱手引(平成25年10月改訂版)76頁及び77頁に,生計維持関係の詳しい判断基準が載っています。
(2) 遺族厚生年金の場合
・ 遺族厚生年金の受給資格者について定める厚生年金保険法59条1項の「被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(中略)その者によつて生計を維持したもの」につき,例えば,被保険者と同居していて,前年の所得が年額655.5万円未満であれば該当します(生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて〔厚生年金保険法〕(平成23年3月23日付の日本年金機構理事長あて厚生労働省年金局長通知))。
    つまり,労災保険の遺族補償年金よりも遺族の収入要件は緩やかなものになっています。

9 自賠責保険金,搭乗者傷害保険金,人身傷害補償保険及び政府保障事業による填補と損益相殺
(1) 自賠責保険金と損益相殺
ア 不法行為による損害賠償債務は,不法行為の日に発生し,かつ,何らの催告を要することなく遅滞に陥ります(最高裁大法廷平成27年3月4日判決。なお,先例として,最高裁昭和37年9月4日判決参照)。
イ 自賠責保険金が支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは,遅延損害金の支払債務にまず充当されます(最高裁平成16年12月20日判決)。
ウ 自賠責保険の場合,保険会社が損害賠償額の支払に当たって算定した損害の内訳は支払額を算出するために示した便宜上の計算根拠にすぎません(最高裁平成10年9月10日判決)。
(2) 搭乗者傷害保険金と損益相殺
ア 搭乗者傷害保険は,保険契約者及びその家族,知人等が被保険自動車に搭乗する機会が多いことにかんがみ,右の搭乗者又はその相続人に定額の保険金を給付することによって,これらの者を保護しようとするものですから,搭乗者傷害保険の死亡保険金は被保険者が被った損害をてん補する性質を有しません。
    そのため,自分の自動車保険から搭乗者傷害保険金を受領した場合,損害賠償金は削られません(最高裁平成7年1月30日判決)。
イ 加害者又は加害者側が搭乗者傷害保険の保険料を支払っていた場合(被害者が加害者の同乗者であった場合に当てはまる可能性があります),搭乗者傷害保険金は慰謝料減額事由として斟酌されることが多いです(たかつき法律事務所HPの「搭乗者傷害保険金は賠償金から差し引かれるのでしょうか?」参照)。
(3) 人身傷害補償保険と損益相殺
ア 保険会社は保険金請求権者の権利を害さない範囲内に限り保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害補償条項の被保険者である被害者に過失がある場合において,上記条項に基づき被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が民法上認められるべき過失相殺前の損害額を上回るときに限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得します(最高裁平成24年5月29日判決。なお,先例として,最高裁平成24年2月20日判決)。
イ  人身傷害保険について保険会社が被害者に対して自賠責保険分を含めて一括払することを合意した場合において,保険会社が自賠責保険から支払を受けた損害賠償額相当額を被害者の損害賠償請求権の額から控除することはできません(最高裁令和4年3月24日判決参照)。
(4) 政府保障事業による填補と損益相殺
・  被害者が自賠法73条1項所定の他法令給付(同項に掲げる法令に基づく同法72条1項による損害のてん補に相当する給付)に当たる年金の受給権を有する場合において,政府が同法72条1項によりてん補すべき損害額は,支給を受けることが確定した年金の額を控除するのではなく,当該受給権に基づき被害者が支給を受けることになる将来の給付分も含めた年金の額を控除して,これを算定すべきです(最高裁平成21年12月17日判決)。


10 遺族年金及び生命保険金と損益相殺
(1) 遺族年金と損益相殺
ア 国民年金法及び厚生年金保険法に基づく障害年金の受給権者が不法行為により死亡した場合において,その相続人のうちに,障害年金の受給権者の死亡を原因として遺族年金の受給権を取得した者があるときは,遺族年金の支給を受けるべき者につき,支給を受けることが確定した遺族年金の額の限度で,その者が加害者に対して賠償を求め得る損害額からこれを控除すべきものとされています(最高裁平成11年10月22日判決。なお,先例として,最高裁大法廷平成5年3月24日判決参照)。
イ 不法行為により死亡した被害者の相続人が,その死亡を原因として遺族厚生年金の受給権を取得したときは,被害者が支給を受けるべき障害基礎年金等に係る逸失利益だけでなく,給与収入等を含めた逸失利益全般との関係で,支給を受けることが確定した遺族厚生年金を控除すべきものとされています(最高裁平成16年12月20日判決)。
(2) 生命保険金と損益相殺
ア  生命保険金は、不法行為による死亡に基づく損害賠償額から控除すべきではありません(最高裁昭和39年9月25日判決)。
イ 生命保険契約に付加された特約に基づいて被保険者である受傷者に支払われる傷害給付金又は入院給付金は、既に払い込んだ保険料の対価としての性質を有し、たまたまその負傷について第三者が受傷者に対し不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償義務を負う場合においても、右損害賠償額の算定に際し、いわゆる損益相殺として控除されるべき利益には当たりません(最高裁昭和55年5月1日判決。なお,先例として,最高裁昭和50年1月31日判決参照)。

11 租税及び養育費と損益相殺
(1) 租税と損益相殺
・ 不法行為の被害者が負傷のため営業上得べかりし利益を喪失したことによって被った損害額を算定するにあたっては,営業収益に対して課せられるべき所得税その他の租税額を控除すべきではありません(最高裁昭和45年7月24日判決)。
(2) 養育費と損益相殺
・ 交通事故により死亡した幼児の財産上の損害賠償額の算定については,幼児の損害賠償債権を相続した者が一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなった場合においても,将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきではありません(最高裁昭和53年10月20日判決。なお,先例として,最高裁昭和39年6月24日判決参照)。

12 
関連記事その他
(1)ア 労災保険法64条1項に基づく支払猶予の抗弁を請求異議訴訟で主張することはできないと解されています(大阪地裁平成6年11月11日判決(判例秘書掲載))。
イ 大阪地裁平成27年3月20日判決(判例秘書掲載)は,労働者災害補償保険法64条1項による支払猶予の抗弁を認め,同項に基づき損害賠償の履行猶予額を算定した事例です。
(2) 交通関係訴訟の実務(著者は東京地裁27民(交通部)の裁判官等)に329頁ないし350頁に「素因(身体的素因・心因的素因)減額の諸問題」が載っていて,351頁ないし366頁に「損益相殺の諸問題」(控除の対象となるもの・ならないもの,時的範囲と人的範囲,過失相殺等による減額と控除の順序,どの損害から控除されるか,遅延損害金と元本への充当)が載っています。
(3)ア 厚労省HPに以下の文書が載っています。
・ 「労災認定された傷病等に対して労災保険以外から給付等を受けていた場合における保険者等との調整について」(平成29年2月1日付けの厚生労働省労働基準局補償課長の通知) 
イ 協会けんぽHPの「事故にあったとき(第三者行為による傷病届等について)」に交通事故の場合の届書用紙及び記入例が載っています。
ウ 東京労務管理総合研究所HP「労災保険と遺族厚生年金の併給調整 (2009年5月号より抜粋)」が載っています。
(4)ア 労働者が,使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求するため訴えを提起することを余儀なくされ,訴訟追行を弁護士に委任した場合には,その弁護士費用は,事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り,上記安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害となります(最高裁平成24年2月24日判決)。
イ noteに「損害賠償条項等における契約書の文言を根拠とする「弁護士費用実額」の請求可能性についての一考察」自由と正義2021年12月号に掲載されていた論文)が載っています。
(5) 最高裁平成20年6月10日判決は,いわゆるヤミ金融業者が元利金等の名目で違法に金員を取得する手段として著しく高利の貸付けの形をとって借主に金員を交付し,借主が貸付金に相当する利益を得た場合に,借主からの不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として借主の損害額から控除することは,民法708条の趣旨に反するものとして許されないとされた事例です。
(6)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 労災保険給付等に係る支給決定証明願及び支払証明願の取扱について(平成29年3月31日付の厚生労働省労働基準局補償課長及び労災保険業務課長の書簡)
・ 労災保険給付事務取扱手引(令和3年9月1日改正版)
・ 第三者行為災害事務取扱手引(平成30年4月改正版)
・ 労災保険給付の請求人等に対する懇切・丁寧な対応の徹底について(平成22年3月25日付の厚生労働省労働基準局労災補償部補償課長の書簡)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 労災保険の給付内容
・ 労災保険に関する書類の開示請求方法
・ 労災保険の特別加入制度
・ 労災保険に関する審査請求及び再審査請求
・ 労災隠し
・ 素因減額
・ 弁護士の社会保険
・ 民間労働者と司法修習生との比較
・ 業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較
・ 平成30年度全国労災補償課長会議資料
・ 厚生労働省労働基準局の,労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について

労災隠し

目次
1 総論
2 労災隠しの原因
3 労災保険の利用と会社との関係
4 交通事故が労働災害に該当する場合において,労災保険を利用するメリット等
5 労災隠しに伴う被災労働者のデメリット
6 関連記事その他

1 総論
(1) 労災隠しとは,「故意に労働者死傷病報告を提出しないこと」又は「虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出すること」をいいます。
    このような労災隠しは適正な労災保険給付に悪影響を与えるばかりでなく,労働災害の被災者に犠牲を強いて自己の利益を優先する行為であって,労働安全衛生規則97条に違反して労働者死傷病報告を提出しない点で労働安全衛生法100条に違反しますし,同法120条5号に基づき50万円以下の罰金に処せられることがあります(厚生労働省HPの「「労災かくし」の送検事例」参照)。
(2) 被災労働者に100%の過失がある場合であっても,重過失がない限り,労災保険を利用することができます労災保険法12条の2の2参照)。

2 労災隠しの原因
(1)   20人以上の事業所において,業務災害が全くない場合,労災保険料率が基準額から最大で40%割引となるのに対し,業務災害がたくさんある場合,労災保険料率が基準額から最大で40%割増となります(外部HPの「労災保険のメリット制に関する基礎知識」参照)。
    ただし,通勤災害の場合,事業主に責任がないことから,労災保険料率の割増にはつながりません。
(2) 本来は災害防止努力を促すためのメリット制については,労働災害が発生すると保険料負担が増えるという認識を事業主が持つこととなり,その結果,労働災害を隠すという行動につながっています。
    特に公共事業を受注する事業主について労働災害が発生した場合、国,都道府県,市町村などの発注者から指名停止処分を受けることがあるため,労災隠しをすることがあります。
    また,元請業者は下請業者や孫請業者の起こした災害も元請業者の災害となる(労働基準法87条参照)ことから,下請業者等に虚偽の報告を行わせたり,逆に下請業者が今後,元請業者からの仕事が来なくなることを恐れて労災事故を隠すことがあります。

3 労災保険の利用と会社との関係
(1)ア 労災保険を利用する場合,①負傷又は発病の年月日,②災害の原因及び発生状況等について事業主の証明を受ける必要があります(労災保険法施行規則12条1項3号及び4号・同条2項等)。
イ   会社が事業主の証明をしてくれない場合であっても,労災保険を利用できることがあります日本法令HP「会社が「事業主証明」を拒否した場合の労災保険給付請求書の取扱い」参照)から,この場合,労基署に相談して下さい。
(2) 事業主である会社は,被災労働者が労災保険を利用するのに助力する必要がある(労災保険法施行規則23条)反面,労基署長に対し,業務災害又は通勤災害に該当するかどうかについて意見を申し出ることができます(労災保険法施行規則23条の2)。
(3) 交通事故が業務災害に該当する場合,事業主は,所轄の労基署に対し,労災申請とは別に,労働者死傷病報告書(労働安全衛生規則97条)を提出する必要があります(外部HPの「労働者死傷病報告書」参照)。

4 交通事故が労働災害に該当する場合において,労災保険を利用するメリット等
(1) 交通事故が労働災害に該当する場合において,労災保険を利用するメリットは以下のとおりです。
① 過失相殺後の賠償金を確保できること
    自由診療の場合,公的医療保険の2倍ぐらいの費用がかかることが多いのに対し,労災保険の場合,1点12円で計算しますから,公的医療保険の1.2倍の費用で済みます。
    そのため,被害者にも過失がある場合,治療費を安くすることで,過失相殺後の賠償金を確保できます。
② 休業特別支給金を別枠でもらえること
    休業損害の約20%に相当する休業特別支給金は,休業損害とは別枠で支給してもらえます。
③ 障害特別支給金及び障害特別年金又は障害特別一時金を別枠でもらえること
    (a)障害特別支給金(例えば,後遺障害等級8級の場合は65万円,後遺障害等級14級の場合は8万円),及び(b)障害特別年金(後遺障害等級7級以上の場合)又は障害特別一時金(後遺障害等級8級以下の場合)は,後遺障害逸失利益とは別枠で支給してもらえます。
(2) 例えば,労災保険を利用した場合の治療費が120万円,通院慰謝料が100万円,過失割合が3割の場合,220万円の損害額のうち,相手方に対して請求できる損害額は154万円となりますところ,120万円は治療費に充当されますから,追加で請求できるのは34万円となります。
    これに対して,任意保険会社の一括払を利用し続けた場合,自由診療として1点20円で計算される結果,公的医療保険を利用した場合の治療費の2倍ぐらいとなることがあります(ただし,自賠責保険診療費算定基準が適用されている場合,1.44倍ぐらいです。)。
    そのため,例えば,治療費が公的医療保険を利用した場合の2倍である200万円(労災保険を利用した場合は120万円となります。),通院慰謝料が100万円,過失相殺が3割の場合,300万円の損害額のうち,相手方に対して請求出来る損害額は210万円となりますところ,200万円は治療費に充当されますから,追加で請求できるのは10万円だけとなります。

5 労災隠しに伴う被災労働者のデメリット
(1) そもそも労働災害に該当する場合,健康保険を使用できないところ(厚生労働省HPの「「労災かくし」は犯罪です。」参照),被災労働者が労災隠しに協力して健康保険を使用した場合,労災隠しの共犯者になることのほか,以下のデメリットがあります。
①  健康保険の傷病手当金として約67%の賃金補償を最長で1年6月間,受けられるに過ぎません。
→ 労災保険を利用した場合,休業補償給付及び休業特別支給金として約80%の賃金補償を症状固定日まで受けることができます。
② 1年6月を経過した後に後遺障害が残った場合,健康保険から特段の補償はなく,重度の後遺障害が残った場合に限り,障害厚生年金又は障害基礎年金を受けられるに過ぎません。
→ 労災保険を利用した場合,軽度の後遺障害が残った場合であっても障害補償給付等を受けられますし,重度の後遺障害が残った場合,障害厚生年金又は障害基礎年金と併せて,障害補償給付等を受けられます。
(2) 労働災害に該当する交通事故の被害者が労災隠しに協力した場合,以下のデメリットもあります。
① 損害賠償金とは別枠でもらえる,休業損害の約20%に当たる休業特別支給金を支給してもらえません。
② 後遺障害逸失利益に相当する部分について,迅速に支給してもらえる障害(補償)給付を支給してもらえません。
③ 損害賠償金とは別枠でもらえる,障害特別支給金及び障害特別一時金を支給してもらえません。

6 関連記事その他
(1) 吉崎麻美社労士事務所(神奈川・東京)HP「2017年健康保険から労災保険への切り替え方」が載っています。
(2)ア 厚生労働省HPに以下の文書が載っています。
・ 足場からの墜落防止のための措置を強化します改正労働安全衛生規則を27年7月1日から施行
・ 「墜落防止用の保護具に関する規制のあり方に関する検討会」の報告書を公表します~国際基準に適合するフルハーネス型の墜落防止用保護具を原則とすることなど~(平成29年6月13日付)
・ 安全帯が「墜落制止用器具」に変わります!~安全・安心な作業のため、適切な器具への買い換えをお願いします~
→ 労働安全衛生法施行令13条2項28号に「墜落制止用器具」という単語が出てきます。
イ 全国仮設安全事業協同組合「安全な足場環境の確保」が載っています。
(3) 労災保険の場合,傷病がいったん症状固定と認められた後に再び発症し,以下のいずれの要件も満たす場合には「再発」として再び療養(補償)等給付を受けることができます(厚生労働省HPの「労災医療を担当する医師の方へ 労災保険における傷病が「治ったとき」とは・・・」参照)。
① その症状の悪化が,当初の業務又は通勤による傷病と相当因果関係があると認められること
② 症状固定の時の状態からみて,明らかに症状が悪化していること
③ 療養を行えば,その症状の改善が期待できると医学的に認められること
(4) オクノクリニックHP「モヤモヤ血管」には以下の記載があります。
     特に五十肩や腰痛、ひざの痛みや肩こりをはじめとした、治りにくい関節の痛みには、そのような異常な血管(いびつな構造でモヤモヤとして見えるため、モヤモヤ血管と呼んでいます)が存在することが様々な研究で確かめられています。
(5)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 労災保険審査請求事務取扱手引(令和2年12月)
イ 以下の記事も参照して下さい。
 労災保険の給付内容
 労災保険に関する書類の開示請求方法
 労災保険の特別加入制度
・ 労災保険に関する審査請求及び再審査請求
・ 弁護士の社会保険
 民間労働者と司法修習生との比較
 業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較
 平成30年度全国労災補償課長会議資料
・ 厚生労働省労働基準局の,労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について

労災保険に関する審査請求及び再審査請求

目次
第1 総論
第2 労災保険審査官に対する審査請求
第3 労働保険審査会に対する再審査請求
第4 文書その他の物件の閲覧等
第5 労災保険審査参与及び雇用保険審査参与
第6 労働保険審査会参与
第7 関連記事その他

第1 総論
1 労災保険に対する不服申立方法としては,労災保険審査官に対する審査請求,及び労働保険審査会に対する再審査請求があります。
2   労働災害に該当する交通事故との関係でいえば,労働基準監督署による症状固定の判断が速すぎるという理由で休業補償給付不支給決定に対する審査請求をしたり,労働基準監督署による後遺障害等級の認定がおかしいという理由で障害補償給付不支給決定に対する審査請求をしたりすることができます。
3 審査請求又は再審査請求に納得できない場合,地方裁判所に対する取消訴訟を提起することができますところ,労災保険審査官の決定を経た後でない限り取消訴訟を提起することはできません(労災保険法40条)。

第2 労災保険審査官に対する審査請求
1 労災保険の後遺障害等級認定に関して,認定を知った日から3ヶ月以内に(労働保険審査官及び労働保険審査会法8条1項),都道府県労働局労災保険審査官(例えば,大阪労働局労働基準部労災補償課にいる大阪労働局大阪労災保険審査官)に対する審査請求をすることができます。

2(1) 労災保険審査官及び雇用保険審査官をあわせて労働保険審査官といいます(労働保険審査官及び労働保険審査会法1条)ところ,労働保険審査官は各都道府県労働局に設置されています(労働保険審査官及び労働保険審査会法2条の2)。
(2)   労災保険審査官に対する郵便物の宛先は労働局労働基準部労災補償課になっていることがありますものの,厳密に言えば,労災保険審査官は労災補償課に所属しているわけではありません。

3(1) 審査請求の代理人は,審査請求人のために,当該審査請求に関する一切の行為をすることができます(労働保険審査官及び労働保険審査会法9条の2第2項)。
    そのため,例えば,労災保険審査官との面談に同席することができます。
(2) 審査請求をすると,原処分庁(労働基準監督署長のことです。)の意見書が送付されますところ,そこには,以下の事項が記載されています。
① 審査請求人等
→ 審査請求人氏名,所属事業場等が記載されます。
② 意見
→ 「本件審査請求を棄却されたい。」などと記載されています。
③ 理由
→ 「事実」として,災害事実の概要,処分に至るまでの経緯(①負傷又は発症後の療養経過,②本審査請求に関連する保険給付に関する処分経過,③療養期間等,④その他)が記載され,「処分の理由」として,該当する判断基準等及び判断が記載されています。

4(1) 労災保険に対する審査請求をした場合は通常,労働局に赴いて労災保険審査官と面談した上で,審査請求人の口頭での言い分を供述調書にまとめてもらいます。
    その際,署名押印をしますから,認め印を持参する必要があります。
(2)   労災保険審査官と面談する前に,審査請求書及び原処分庁の意見書を読み直した方がいいです。
(3)ア 大阪労働局労働基準部労災補償課は,大阪市交通局の谷町四丁目駅の近くにある大阪合同庁舎第2号館(西隣にある大阪合同庁舎第4号館とは異なります。)9階にあります(大阪労働局HPの「大阪労働局へのアクセス」参照)。
    また,館内に入館する場合,受付で入館証を記載する必要があります。
イ 奈良労働局労働基準部労災補償課は,近鉄新大宮駅(奈良駅の一つ前の駅であり,快速急行も停まります。)から北方向に徒歩8分の場所にある奈良第3地方合同庁舎2階にあります(奈良労働局HPの「奈良労働局のご案内」参照)。

5 労災保険に対する審査請求をした場合,以下の文面を含む同意書を提出するように指示されますし,過去の医療機関受診歴等を詳細に調査されることがあります。
    今般,私が労働者災害補償保険審査官に審査請求を行った件に関し,労働者災害補償保険審査官が本件請求に係る調査・決定に際し,医療機関に対しレントゲンフィルム・診療録・意見書等の提出を求められること,関係機関等に対し資料等の提出を求められること,及び,関係機関等(医療機関を含む。)に対し照会を行われることに異議なく,本書をもって同意します。

6 平成27年度から平成30年度までの労災保険審査関係統計表を以下のとおり掲載しています。
① 平成27年度労災保険審査関係統計表
・ 平成27年度の場合,後遺障害等級の認定に争いがあるものに関する407件の決定のうち,棄却が323件,取消が78件,却下が6件でした。
・ 業務上外の認定のうち,反応性うつ病等の精神障害に係るものに関する340件のうち,棄却が329件,取消しが4件,却下が7件でした。
    そのため,労基署において精神障害が業務外であると判断した場合,審査請求で取り消してもらえる確率は1.2%ぐらいということになります。
② 平成28年度労災保険審査関係統計表
③ 平成29年度労災保険審査関係統計表
④ 平成30年度労災保険審査関係統計表

7(1)   労災保険の後遺障害等級認定に関する取消訴訟は,審査請求に対する労災保険審査官の決定を経た後でなければ,提起することができません(労災保険法40条)。
(2)   労災保険審査官に対する審査請求をした日から3箇月を経過しても審査請求についての決定がない場合,労災保険審査官が審査請求を棄却したものとみなした(労災保険法38条2項)上で,取消訴訟を提起することができます。

第3 労働保険審査会に対する再審査請求
1(1) 労災保険審査官の決定に対して不服がある場合,労災保険審査官の決定書の謄本が送付された日から2ヶ月以内に(労災保険審査官及び労災保険審査会法38条1項),労働保険審査会に対する再審査請求をすることができます。
平成28年4月1日以降,労災保険の後遺障害等級認定に関する取消訴訟は,労働保険審査会に対する再審査請求を経ずして,提起することができるようになりました(労災保険法40条参照)。
(2) 再審査請求の代理人は,審査請求人のために,当該審査請求に関する一切の行為をすることができます(労働保険審査官及び労働保険審査会法50条・9条の2第2項)。

2 労働保険審査会は,労災保険及び雇用保険の給付処分に関して,第二審として行政不服審査を行う国の機関です(厚生労働省HPの「労働保険審査会」参照)。

3 労働保険審査会の審理期日の体験談が,外部ブログの「労働保険審査会の救済機関としての改善の方向-テレビ会議システムは是か非か-」に載っています。

4 厚生労働省HPの「労働保険審査会」に載ってある労働保険再審査取扱状況の「(第3表)事件種類別裁決件数」によれば,労災保険において後遺障害を理由とする再審査請求の裁決状況は以下のとおりであって,労働保険審査会に対する再審査請求において後遺障害等級認定が変わることはまずありませんから,取消訴訟を提起した方がいいと思います。
令和 元年度:取消が1件,棄却が47件,却下が3件
平成30年度:取消が0件,棄却が55件,却下が2件
平成29年度:取消が3件,棄却が59件,却下が3件
平成28年度:取消が1件,棄却が98件,却下が4件
平成27年度:取消が0件,棄却が83件,却下が3件
平成26年度:取消が0件,棄却が83件,却下が6件
平成25年度:取消が0件,棄却が76件,却下が3件
平成24年度:取消が0件,棄却が98件,却下が1件
平成23年度:取消が5件,棄却が106件,却下が3件
平成22年度:取消が6件,棄却が120件,却下が3件
平成21年度:取消が3件,棄却が97件,却下が1件
平成20年度:取消が6件,棄却が133件,却下が4件
平成19年度:取消が6件,棄却が126件,却下が6件
平成18年度:取消が2件,棄却が143件,却下が2件

第4 文書その他の物件の閲覧等
1 審査請求人は,決定があるまでの間,労災保険審査官に対し,文書の閲覧,文書の写しの交付等を請求できます(労働保険審査官及び労働保険審査会法16条の3第1項)。
2 閲覧の場合,日時及び場所の指定があります(労働保険審査官及び労働保険審査会法16条の3第3項)。
    謄写の場合,白黒コピーにつき1枚10円,カラーコピーにつき1枚20年の手数料が必要となります(労働保険審査官及び労働保険審査会法16条の3第4項・同法施行令14条の5第1項)。
3 文書その他の物件の閲覧等の対象は,以下に掲げるものであり,申立てがなされた時点で審査官が保有するものに限られます。
① 労働保険審査官及び労働保険審査会法14条の3第1項に基づき,審査請求人,利害関係者又は参与から提出された証拠文書その他の物件
② 労働保険審査官及び労働保険審査会法14条の3第2項にもとづき,原処分庁から提出された仮処分の理由となる事実を証する文書その他の物件
③ 労働保険審査官及び労働保険審査会法15条1項に基づく審理のための処分により提出された文書その他の物件
4 文書その他の物件の閲覧等申立書の書式は以下のとおりです。

表題:文書その他の物件の閲覧等申立書
本文:
   下記1の審査請求に関し,労災保険審査官及び労災保険審査会法16条の3第1項の規定に基づき,下記2の文書その他の物件の閲覧等を求めます。

1 事件の表示
   平成29年○月○日付で,審査請求人○○が行った○○補償給付不支給処分取消審査請求事件
2 閲覧等を求める文書その他の物件
   上記1の事件の審理に関して,審査官が収集した資料一式

5(1) 労災保険審査官は,第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき,その他正当な理由があるときでなければ,閲覧等を拒むことはできません(労働保険審査官及び労働保険審査会法16条の3第1項)。
    「正当な理由」とは,例えば閲覧等に係る文書の一部又は全部が個人情報保護法14条各号に掲げる不開示情報に該当する場合等です。この場合,同法に基づく開示請求における取扱いを参考に判断されます。
    また,労災保険審査官は,その必要がないものと認めるときを除き,文書その他の物件の閲覧等について提出人の意見を聴かなければなりません。ただし,労災保険審査官は,当該意見に拘束されませんから,提出人が文書の閲覧等を容認しないことのみを理由として直ちに閲覧等を拒むことはできず,当該文書の閲覧等を認めることによって提出人が被る不利益の内容や程度を検討し,文書の閲覧等を拒む「正当な理由」が認められるか否かを判断します。
(2)ア 個人情報保護法14条各号の不開示情報に該当するものについては,文書の提出人が閲覧等に同意した場合,閲覧できますものの,文書の提出人が閲覧等に同意しない場合,閲覧できません。
    同条各号の不開示情報に該当しないものについては,文書の提出人が閲覧等に同意した場合,閲覧できますものの,文書の提出人が閲覧等に同意しない場合,個別に検討することとなります。
イ 個人情報保護法に基づく開示請求と比べた場合,文書の提出人が閲覧等に同意したものが追加で閲覧できることとなります。
(3) 個人情報保護法14条各号の不開示情報に該当する可能性がある情報については,個人情報開示請求をした方が不服申立てができるというメリットがあります(神奈川労災職業病センターHP「審査請求の手続きが大きく変わりました」参照)。
6(1) 再審査請求人は,決定があるまでの間,労働保険審査会に対し,文書の閲覧,文書の写しの交付等を請求できます(労働保険審査官及び労働保険審査会法50条・16条の3第1項)。
(2) 取扱いの詳細は,労災保険審査官に対する閲覧等の請求と同じであると思われます。

第5 労災保険審査参与及び雇用保険審査参与
1 厚生労働大臣は,都道府県労働局につき,労働者災害補償保険制度に関し,関係労働者を代表する者及び関係事業主を代表する者各二人を,雇用保険制度に関し,関係労働者を代表する者及び関係事業主を代表する者各二人を,それぞれ関係団体の推薦により指名します(労働保険審査官及び労働保険審査会法5条)。
2 労災保険制度の関係労働者又は関係事業主を代表する者が労災保険審査参与であり,雇用保険制度の関係労働者又は関係事業主を代表する者が雇用保険審査参与です(労働保険審査官及び労働保険審査会法施行規則1条1項)。
3(1) 労災保険審査官は労働保険審査参与が述べた意見を尊重し,雇用保険審査官は雇用保険審査参与が述べた意見を尊重しなければなりません(労働保険審査官及び労働保険審査会法13条2項,労働保険審査官及び労働保険審査会法施行令8条1項)。
(2) 労災保険審査官及び雇用保険審査官の決定書には必ず,参与が述べた意見の要旨が書いてあります。

第6 労働保険審査会参与
1 厚生労働大臣は,労働者災害補償保険制度に関し関係労働者及び関係事業主を代表する者各6人を,雇用保険制度に関し関係労働者及び関係事業主を代表する者各2人を,それぞれ,関係団体の推薦により指名します(労働保険審査官及び労働保険審査会法36条)ところ,これが労働保険審査会参与です(労働保険審査官及び労働保険審査会法施行規則1条2項)。
2 労働保険審査会は,労働保険審査会参与が提出した意見書を尊重しなければなりません(労働保険審査官及び労働保険審査会法45条2項,労働保険審査官及び労働保険審査会施行令29条4項)。

第7 関連記事その他
1 東京高裁昭和56年9月24日判決(判例秘書に掲載)は,「診療録は、その他の補助記録とともに、医師にとつて患者の症状の把握と適切な診療上の基礎資料として必要欠くべからざるものであり、また、医師の診療行為の適正を確保するために、法的に診療の都度医師本人による作成が義務づけられているものと解すべきである。従つて、診療録の記載内容は、それが後日改変されたと認められる特段の事情がない限り、医師にとつての診療上の必要性と右のような法的義務との両面によつて、その真実性が担保されている」と判示しています。
2(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 監督業務運営要領の改善について(令和3年5月24日付の厚生労働省労働基準局長の文書)
・ 労災保険審査請求事務取扱手引(令和2年12月)
(2) 以下の記事も参照してください。
 労災保険の給付内容
・ 労災保険に関する書類の開示請求方法
・ 労災保険の特別加入制度
 弁護士の社会保険
・ 民間労働者と司法修習生との比較
 業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較
・ 平成30年度全国労災補償課長会議資料
 厚生労働省労働基準局の,労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について

労災保険に関する書類の開示請求方法

目次
1 保有個人情報開示請求の必要書類及び宛先
2 代理人弁護士による開示請求
3 「開示を請求する保有個人情報」の記載方法
4 療養補償給付に関するすべての書類の開示請求が可能になる時期
5 労災保険「支給決定」証明願及び労災保険「給付等支払」証明願
6 災害調査復命書,災害時監督復命書及び安全衛生指導復命書
7 臨検監督(定期監督,災害時監督,申告監督及び再監督)
8 裁判所の文書提出命令等の取扱いに関する厚生労働省の資料
9 関連記事その他

1 保有個人情報開示請求の必要書類及び宛先
(1)ア 労災保険に関する書類について保有個人情報開示請求をしたい場合,1件につき300円の収入印紙を貼付した保有個人情報開示請求書のほか,①本人確認書類(例えば,運転免許証,健康保険被保険者証)のコピー及び②住民票(マイナンバー(個人番号)の記載がないもの)を,労働局総務部総務課に郵送すればいいです(神奈川労働局HPの「行政機関が保有する個人の情報を本人に対して開示する制度について【総務課】」参照)。
イ 労働基準監督署及び公共職業安定所(ハローワーク)が保管している文書についても,保有個人情報開示請求の郵送先は都道府県労働局となります。
ウ 開示請求書の宛先自体は,「○○労働局長」となります。
    例えば,大阪労働局総務部総務課情報公開・個人情報窓口に開示請求書を郵送する場合の宛先は,「大阪労働局長」となります。
(2) 本人確認書類を見れば分かりますから,開示請求文書を特定する際,開示請求者の生年月日を記載する必要はありません。
(3)ア 全国の都道府県労働局の住所については,厚生労働省HPの「都道府県労働局(労働基準監督署,公共職業安定所一覧)」に掲載されています。
イ   大阪労働局の住所等は以下のとおりです(大阪労働局HPの「情報公開・個人情報保護窓口」参照)。

【大阪労働局情報公開・個人情報保護窓口】
 〒540-8527
大阪市中央区大手前4-1-67 大阪合同庁舎第2号館 8F
大阪労働局総務部総務課
TEL : 06-6949-6482
(受付時間)
月~金曜日  8時30分~17時15分

2 代理人弁護士による開示請求
(1) 令和4年4月1日以降の取扱い
・ 令和4年4月1日以降については,個人情報保護法76条2項に基づき,本人の委任による代理人となる代理人弁護士も個人情報開示請求をすることができます。
(2)ア 令和4年3月31日までは,保有個人情報開示請求につき任意代理人による請求が認められていませんでした。
イ   私の経験では,保有個人情報開示請求書の末尾欄外に「* 大阪弁護士会所属の弁護士山中理司(電話:06-6364-8525)が代筆しました。」と記載しておけば,労働局からの問い合わせの電話は,請求者本人ではなく,代理人弁護士にしてもらうことができました。

3 「開示を請求する保有個人情報」の記載方法
(1) 保有個人情報開示請求書における「開示を請求する保有個人情報」は以下のとおり記載すればいいです。
    ただし,以下の例は,業務災害の被災者が労災保険指定医療機関で治療を受けて,治療費,休業補償及び後遺障害に関する支給を労災保険から受けた場合の記載です。
(A) ○○が平成○○年○月○日に大阪府○○市で被災した業務災害(管轄労基署は○○労基署)に関する以下の書類
① 療養補償給付たる療養の給付請求書及び添付書類,並びに決議書(決定に関する調査書及び添付書類を含む。)
② 休業補償給付支給請求書及び添付書類,並びに決議書(決定に関する調査書及び添付書類を含む。)
③ 障害補償給付支給請求書及び添付書類,並びに決議書(決定に関する調査書及び添付書類を含む。)
④ 加害者が被保険者となっている任意保険会社との間で授受した文書
(B) ○○が平成○○年○月○日に大阪府○○市で被災した業務災害(管轄労基署は○○労基署)に関して,○○が受診した医療機関全部のレセプト
(2)ア レセプト(診療報酬明細書)については,治療を受けた労災保険指定医療機関が大阪府外の場合,その病院を管轄する都道府県労働局長に対して開示請求をする必要があります。
    また,労災保険指定医療機関以外の病院で治療を行い,労基署から療養(補償)給付たる療養の「費用」を支給されていた場合(労災保険法13条3項・労災保険法施行規則11条の2),労働局にレセプトは存在しません。
イ 労災保険指定医療機関については,厚生労働省HPの「労災保険指定医療機関検索」で確認することができます。
(3)ア (A)の書類は労働基準監督署が保管しているのに対し,(B)の書類は労働局労働基準部労災補償課が保管しています。
    そのため,(A)の書類について300円の収入印紙,(B)の書類について300円の収入印紙がそれぞれ必要となります。
イ 福岡労働局HPの「保有個人情報開示請求制度について」には,「労災給付における診療費請求内訳書(いわゆるレセプト)の開示請求を行う場合は、診療費の支払期間1年度(4月1日から翌年3月31日まで)ごとに1件とみなしますので、支払期間が2年度に渡る場合は(例えば平成29年3月分から平成29年4月分までの場合)、平成28年度分と平成29年度分の2件分の開示請求、収入印紙(300円×2年度分)が必要となります。 」と書いてあります。
(4) 労働基準監督署が作成した障害認定調査復命書について開示請求をした場合,意見書を作成した医師の氏名等は不開示となります(平成30年度(行個)答申第99号(平成30年9月18日答申)参照)。
(5) 大分労働局HPの「開示請求する保有個人情報の特定に係る記載例」には以下の書類について個人情報開示請求をする場合の記載例が載っています。
① 労災保険給付関係
・ 労災認定時の書類
・ 労災不支給決定に係る調査書
・ レセプト
・ 遺族補償年金(一時金)給付の決定に係る調査書
・ 障害補償給付支給決定に係る調査書(後遺障害認定)症状固定(治癒)後
② 労働災害関係
・ 災害調査復命書
・ 労働者死傷病報告
③ 公共職業安定所での職業相談関係
・ 求職票
④ 労働局や労働基準監督署での相談関係
・ あっせん関係
・ 未払賃金等で監督署に相談した関係

4 療養補償給付に関するすべての書類の開示請求が可能になる時期
(1) 労災保険指定医療機関は,都道府県労働局に対し,毎月10日までに,前月分の労災保険の診療費請求書・明細書(レセプト)及び療養の給付請求書を提出しています(厚生労働省HPの「業務フロー・コスト分析における業務改善検討について(厚生労働省・労災診療費審査業務)」(平成29年2月20日付)2頁「労災診療費の仕組み」参照)。
    また,労働局は,労災保険指定医療機関に対し,診療費請求書等を受領した月の翌月15日頃に労災診療費を支払っています。
    そのため,労働局は,症状固定日までの治療に関する療養の給付請求書及び添付書類並びにレセプトについては翌月10日までに取得し,決議書を翌々月15日までに作成していると思います。
(2) 例えば,平成30年9月に症状固定となった場合,翌々月となる同年11月15日以降であれば,療養補償給付に関するすべての書類の開示請求が可能になると思います。

5 労災保険「支給決定」証明願及び労災保険「給付等支払」証明願
(1)ア 労災保険支給決定証明願及び労災保険給付等支払証明願は,労災保険の支給決定通知及び支払振込通知が一体となったはがき(厚生労働省HPの「労災保険給付の受給者の皆様へ」に載ってある「労災保険給付等の支払通知の方法が変わります」参照)を紛失した場合に利用です。
イ 運用の詳細については,労災保険給付等に係る支給決定証明願及び支払証明願の取扱について(令和3年3月25日付の厚生労働省労働基準局補償課長及び労災保険業務課長の書簡)に記載されていますところ,支払決定証明は支払「決定」通知書の代わりとなる書類であり,支払証明は支払「振込」通知書の代わりとなる書類です。
ウ 労災保険受給者本人が証明願を提出する場合,運転免許証その他本人確認書類のコピーも提出する必要があります。
(2)ア 令和3年4月1日以降に「支給決定」証明願を提出する場合,都道府県労働局又は労働基準監督署が提出先となりますから,労災保険を支給してくれた労基署に電話で問い合わせた方が確実です。
イ 平成23年5月,休業補償給付,障害補償一時金等の支払事務は厚労省本省に一本化されました(「本省払い化の対象となる労災保険給付及びその時期の一部変更について」(平成23年4月20日付の厚労省労働基準局労災補償部労災保険業務課長の通知)参照)から,「給付等支払」証明願を提出する場合,厚生労働省労働基準局労災保険業務課(〒177-0044 東京都練馬区上石神井4-8-4)が提出先となります。
ウ 厚労省HPの「労災保険給付の受給者の皆様へ」には以下の記載があります。
この証明書(山中注:支払証明書)で証明する事項は、労災保険給付等の受給者の氏名及び住所、給付の種類、給付期間又は支払日、支払金額及び給付を特定する補足的事項です。
支給決定通知書の内容(支給決定年月日、給付基礎日額、障害等級等)の証明はできません。
支給決定通知書の記載内容に係る証明は、別途「支給決定証明願」を実際に処分決定を行った処分庁に提出する必要があります。ご不明な場合は、支給決定を行った管轄の都道府県労働局又は労働基準監督署にお問い合わせください。
(3)ア 例えば,被災労働者が救急搬送後に死亡した後,遺族の代理人弁護士が「療養の給付」に関する労災保険給付等支払証明願を厚生労働省労働基準局労災保険業務課に提出する場合,以下の書類を添付すればいいです。
① 被災労働者の除籍謄本のコピー
② 請求人である遺族の戸籍謄本のコピー
③ 請求人である遺族の住民票のコピー
④ (a)労災保険給付等支払証明願の交付申請をする件,(b)交付された労災保険給付等支払証明書を受領し,これにより私の個人情報を受領する件,及び(c)上記の委任事項に準ずる一切の件を委任事項とする委任状
イ 「③証明を希望する給付の種類」としては,「療養の給付(診療費給付)」と記載すればいいです。
ウ 「証明が必要な事項」としては,支払年月日,支払額,受診機関及び給付期間と記載すればいいです。
(4)ア 労災保険支給決定証明願及び労災保険給付等支払証明願については,必要事項(様式4の①ないし⑥の項目)を書いておけば,適宜の書式で証明願を作成することができます。
イ ⑥の項目については別途,委任状を作成しておけば,①ないし⑤の項目を記載した適宜の書式で代理人弁護士が証明願を作成できるようになります。
(5)ア 厚生労働省労働基準局にあった労災補償部は平成26年7月11日に廃止されました。
イ 令和3年3月31日までは,現物給付である「療養の給付」(「診療費給付」と同じ意味です。)等については,金銭の支払の事実がない点で労災保険給付等支払証明願の対象になりませんでしたところ,長野労働局HPの「労災保険給付の内容」には以下の記載があります。
    労働者が業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害による傷病により療養を必要とする場合に行われ、現物給付としての「療養の給付」と現金給付としての「療養の費用の支給」の2種類がありますが、「療養の給付」が原則です。「療養の給付」は、労災病院や労災指定病院等にかかれば、原則として傷病が治ゆするまで無料で療養を受けられる制度です。これに対し「療養の費用の支給」は、労災病院や労災指定病院以外で療養を受けた場合等においてその費用を支給する制度です。
令和4年4月現在の,厚生労働省HPの「労災保険支給決定証明願」の一部です。
令和4年4月現在の,厚生労働省HPの「労災保険給付等支払証明願」の一部です。

6 災害調査復命書,災害時監督復命書及び安全衛生指導復命書
(1) 総論
・ 北海道労働局HPの「■開示請求する保有個人情報の特定に係る文例について 」(リンク切れ)に以下の記載があります。
◎請求人が負傷した労働災害について、労働基準監督署が災害の状況や原因の調査を行った結果を取りまとめた関係書類の内容を確認したい場合
    労働災害を契機として、労働基準監督署の職員が事業場に対する調査を行い、その結果を取りまとめた行政文書としては、一般的に災害調査復命書と災害時監督復命書があります。
    二つの文書の違いは、前者が死亡災害又は重篤な労働災害が発生した場合に、同種の労働災害の再発を防止するために作成されるもの、後者は労働者死傷病報告等に基づき、事業主に何らかの労働安全衛生法令等違反があると想定される場合に、法令違反を是正させるために作成されるものということになります。
    また、労働災害発生の有無に関わりなく、或いは労働災害が発生したとしても、災害の程度が災害調査を行うほど重篤とは言えない場合、事業場に対して安全衛生に関する調査・指導を行ったときに、その結果を取りまとめた行政文書として「安全衛生指導復命書」があります。
(2) 災害調査復命書
ア 労災死亡事故の場合,災害調査が実施されますし,後遺障害等級7級以上の後遺障害が残ると見込まれる労働災害が発生したような場合,災害調査又は災害時監督が実施されます(監督業務運営要領の改善について(令和3年5月24日付の厚生労働省労働基準局長の通達)(リンク先のPDF21頁及び22頁)参照)。
イ 災害調査等の復命については,原則として災害調査復命書によることとなっています。


(3) 災害時監督復命書
・ 災害時監督を実施した場合,災害調査復命書の記載を省略し,監督復命書に災害原因を付記します(監督業務運営要領の改善について(令和3年5月24日付の厚生労働省労働基準局長の通達)(リンク先のPDF22頁)参照)。


(4) 安全衛生指導復命書
ア 平成29年度(行個)答申第96号(平成29年9月19日答申)には「安全衛生指導復命書とは,事業場に対して安全衛生に関する指導・調査を行った担当官がその所属する労働基準監督署長に指導・調査結果を復命するため,事業場ごとに作成される文書である。」と書いてあります。
イ 安全衛生業務運営要領について(平成15年3月12日付の厚生労働省労働基準局長の通達)の一部を改正した,安全衛生業務運営要領の改正について(平成17年3月25日付の厚生労働省労働基準局長の通達)に「安全衛生指導復命書」の様式が載っています。


7 臨検監督(定期監督,申告監督,災害時監督及び再監督)
(1) 臨検監督(労働基準法101条1項)には以下の4種類街あります(未払い残業代請求の法律相談(2022年9月20日付)109頁及び110頁参照)。
① 定期監督
・ 当該年度の監督計画に基づき,調査対象となった企業に対して,法令の全般にわたって行われる調査のことをいいます。
・ 原則として抜き打ちで調査が行われますが,書面や電話等で日程調整をしてから行われる場合もあります。
② 申告監督
・ 労働者からの法令違反等の申告があった場合(労基104条1項)に, その申告内容について行われる調査のことをいいます。
・ 申告者名については,本人の了承なく使用者側に伝わることはありませんし, 申告監督であることがわからないように定期監督を装って調査に来る場合もあります。
③ 災害時監督
・ 一定規模程度以上の労働災害が発生した際に, 原因究明や再発防止の指導を行うために実施される調査のことをいいます。
④ 再監督
・ ①~③の監督の結果発見された(是正勧告した)違反が是正されたかどうかを確認するために行われる調査のことをいいます。
(2) 労働基準監督官の主な庁外活動業務としては,①定期監督,災害時監督,災害調査,申告監督及び再監督に係る業務,並びに②司法警察事務に係る業務があります(監督業務運営要領の改善について(令和3年5月24日付の厚生労働省労働基準局長の通達)(リンク先のPDF6頁)参照)。

8 裁判所の文書提出命令等の取扱いに関する厚生労働省の資料
1 以下の資料を掲載しています。
① 「裁判所等からの文書提出命令等に対する具体的な対応について」の改正について(令和4年9月8日付の厚生労働省労働基準局総務課長の通達)
② 裁判所からの文書送付嘱託等に対する監督復命書の取扱いについて(平成19年2月15日付の厚生労働省労働基準局監督課の文書)
→ 監督復命書に関する取扱いが書いてあります。
③ 裁判所からの文書送付嘱託等への対応に係る標準事務処理要領(平成27年5月・厚生労働省労働基準局安全衛生部の文書)
→ (a)災害調査復命書,(b)労働者死傷病報告,並びに(c)安全衛生指導書及び安全衛生指導復命書に関する取扱いが書いてあります。
④ 「厚生労働省労働基準局の,文書送付嘱託に対する対応(要旨)」
→ 平成30年度全国労災補償課長会議資料のうち,資料Ⅵ-5 平成30年3月26日付け事務連絡「文書提出命令等に係る業務参考資料の送付について」に含まれるものです。
⑤ 開示請求等の対応に当たっては本省協議の取扱いについて(令和4年9月8日付の厚生労働省労働基準局総務課長補佐(総務・広報担当)の事務連絡)
2 外部HPに掲載されている,平成23年6月15日付の厚生労働省労働基準局労災補償部補償課労災保険審理室長の事務連絡「文書提出命令に係る業務参考資料の送付等について」には,以下の資料が載っています。
① 文書提出命令一覧
② 文書提出命令に係る手続
③ 文書提出命令に係る決定一覧
④ 最高裁平成17年10月14日決定
⑤ 最高裁平成17年10月14日決定に関する最高裁判所調査官解説
⑥ パンフレット「行政機関のための法律意見照会制度」


9 関連記事その他
(1) 行政機関個人情報保護法は,個人情報の取扱いに関連する個人の権利利益を保護することを目的とするものであることから,法における「個人情報」の範囲を「生存する個人に関する情報」に限っており,開示請求対象として予定するのは,「生存する個人に関する自己を本人とする保有個人情報」のみであるが,死者に関する個人情報であっても同時に遺族等の個人情報となる場合には,当該遺族が,自己を本人とする個人情報として開示請求を行うことができると解されています(独立行政法人個人情報保護法に関する平成30年度(独個)答申第26号(平成30年9月12日付)参照)。
(2)  労働保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項所定の事業の事業主は,当該事業についてされた業務災害に関する保険給付の支給決定の取消訴訟の原告適格を有しません(最高裁令和6年7月4日判決)。
(3)ア 以下の資料を掲載しています。
(開示請求関係)
・ 開示請求に係る標準事務処理要領(平成27年4月の厚生労働省労働基準局安全衛生部の文書)
(事務分掌関係)
・ 東京労働局組織細則
・ 中央労働基準監督署の平成30年度事務分掌
・ 大阪労働局組織細則(平成25年当時のもの)
・ 大阪中労働基準監督署の事務分掌(平成25年当時のもの)
(その他関係)
・ 監督指導実務実習・演習(定期監督)(記載例)
→ 令和2年度新任労働基準監督官(後期)研修の資料です。
イ 以下の記事も参照して下さい。
・ 厚生労働省労働基準局の,文書提出命令等に対する具体的な対応
・ 労災保険の給付内容
・ 損益相殺
・ 労災保険の特別加入制度
 弁護士の社会保険
・ 民間労働者と司法修習生との比較
 業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較
・ 平成30年度全国労災補償課長会議資料
 厚生労働省労働基準局の,労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について

労災保険の特別加入制度

目次
1 総論
2 労災保険に特別加入できる人
3 労働保険事務組合
4 一人親方として特別加入できる事業
5 特定作業従事者として特別加入できる作業者
6 一人親方団体
7 関連記事その他

1 総論
(1) 労災保険は本来,労働者を保護するためのものです。
    しかし,労働者ではないものの,労働者に準じて保護するのが適当であると認められる一定の人は,労災保険に特別に任意加入できますところ,これを労災保険の特別加入制度といいます(労災保険法33条ないし37条)。
(2) 労災保険の特別加入であっても,特別支給金が存在します(労災保険サイト「特別加入制度」参照)。

2 労災保険に特別加入できる人
(1) 労災保険に特別加入できるのは以下の4種類の人です。
① 中小事業主(労災保険法33条1号・労災保険法施行規則46条の16)
② 一人親方(労災保険法33条3号・労災保険法施行規則46条の17)
③ 特定作業従事者(労災保険法33条5号・労災保険法施行規則46条の18)
④ 海外派遣者(労災保険法33条6号及び7号)
(2) 中小事業の事業主は第一種特別加入となり,一人親方及び特定作業従事者は第二種特別加入であり,海外派遣者は第三種特別加入となります(外部HPの「第1種・第2種特別加入の違いと定義」参照)。
(3)ア 自転車配達員及びITフリーランスは令和3年9月から,あん摩マッサージ指圧師,はり師及びきゅう師は令和4年4月から,歯科技工士は令和4年7月から労災保険に特別加入できるようになりました。
イ 令和5年11月7日現在,企業に属さないフリーランス(個人事業主)として働く人たちの生活を保障するため,厚生労働省は任意で労災保険に加入できる制度を,配達員などの一部業種から,原則として全業種に広げる方向で議論を進めています(WEB労政時報「フリー全業種、労災対象へ 保険加入270万人に拡大」参照)。

3 労働保険事務組合
(1) 中小事業主が労災保険に特別加入する場合,労災保険事務組合に加入する必要があります(労災保険法33条1項1号)。
(2) 労働保険事務組合は,事業主の委託を受けて,事業主が行うべき労働保険の事務を処理することについて,厚生労働大臣の認可を受けた中小事業主等の団体をいいます(労働保険の保険料の徴収等に関する法律33条参照)。
(3) 大阪府にある労働保険事務組合については,大阪労働局HPの「大阪労働局管轄 事務組合名簿」に載っています。
    例えば,大阪弁護士会所属の弁護士の場合,大阪弁護士協同組合(天満労基署の管轄です。)の労働保険事務組合事業を利用することができます(大阪弁護士協同組合HPの「保険事業」参照)。
(4) 厚生労働省HPの「労災保険事務組合制度」には,労働保険事務組合に委託できる業務として以下の記載があります((1)ないし(5)を①ないし⑤に変えています。)。
① 概算保険料、確定保険料などの申告及び納付に関する事務
② 保険関係成立届、任意加入の申請、雇用保険の事業所設置届の提出等に関する事務
③ 労災保険の特別加入の申請等に関する事務
④ 雇用保険の被保険者に関する届出等の事務
⑤ その他労働保険についての申請、届出、報告に関する事務
 なお、印紙保険料に関する事務並びに労災保険及び雇用保険の保険給付に関する請求等の事務は、労働保険事務組合が行うことのできる事務から除かれています

4 一人親方として特別加入できる事業
(1) 一人親方として特別加入できる事業は以下のとおりであり(労災保険法施行規則46条の17),平成27年4月1日施行の「第二種特別加入保険料率表」によれば,括弧内の数字は保険料率です。
① 個人タクシー業者,個人貨物運送業者(1.3%)
・ 例えば,個人タクシー,バイク便配送員です。
② 建設業の一人親方等(1.9%)
・ 例えば,大工,電気工事屋です。
③ 漁船による自営漁業者(4.6%)
・ 例えば,漁師です。
④ 林業の一人親方等(5.2%)
・ 例えば,植林をする人です。
⑤ 医薬品の配置販売業者(0.7%)
・ 例えば,置き薬を販売する人です。
⑥ 再生資源取扱事業(1.4%)
・ 例えば,廃品回収業者です。
⑦ 船員が行う事業(4.9%)
・ 例えば,船員です。
(2)ア 一人親方の場合,給付基礎日額については,申請に基づいて都道府県労働局長が決定します。
    そして,年間保険料は,保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)にそれぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものとなります。
イ 厚生労働省HPの「5 給付基礎日額・保険料」が分かりやすいです。
(3) 個人タクシー業者,個人貨物運送業者及び漁船による自営漁業者の場合,通勤災害の保護の対象となっていません(厚生労働省HPの「6 補償の対象となる範囲」参照)。
(4) 平成25年4月1日,総排気量125cc以下のバイク(原動機付自転車)を使用して貨物運送事業を行う自営業者も労災保険に特別加入できるようになりました(外部HPの「労災保険 特別加入者の範囲拡大(バイク便)」参照)。
(5) バイク便の配送員等が労働者に該当するかどうかについては,「バイシクルメッセンジャー及びバイクライダーの労働者性について」(平成19年9月27日付の厚生労働省労働基準局長の文書)が参考になります。


5 特定作業従事者として特別加入できる作業者
・ 特定作業従事者として特別加入できる作業者は以下のとおりです(労災保険法施行規則46条の18)。
① 特定農作業従事者
② 指定農業機械作業従事者
③ 国又は地方公共団体が実施する訓練従事者
④ 家内労働者及びその補助者
⑤ 労働組合等の常勤役員
⑥ 介護作業従事者

6 一人親方団体
(1) 第二種特別加入者が労災保険に特別加入する場合,一人親方団体に加入する必要があり,一人親方団体が特別加入者から見て事業主に当たることとなります。
(2) 大阪府にある一人親方団体については,大阪労働局HPの「大阪労働局管轄 一人親方団体名簿」に載っています。

7 関連記事その他
(1) 労働保険の特別加入制度に関する詳細については,厚生労働省の以下のパンフレットが分かりやすいです。
① 特別加入制度のしおり(中小事業主等用)
② 特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)
③ 特別加入制度のしおり(特定作業従事者用)
④ 特別加入制度のしおり(海外派遣者用)
(2)  被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え,その損害を賠償した場合には,被用者は,使用者の事業の性格,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について,使用者に対して求償することができます(最高裁令和2年2月28日判決)。
(3) アイアンドアイHP「運送と配送の違いは?「輸送・運送・配送」の言葉の意味と使い分け」が載っています。
(4)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 労災保険特別加入関係事務取扱手引(平成27年3月25日最終改正)
イ 以下の記事も参照して下さい。
・ 労災保険の給付内容
・ 労災保険に関する書類の開示請求方法
・ 弁護士の社会保険
・ 民間労働者と司法修習生との比較
・ 業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較
・ 平成30年度全国労災補償課長会議資料
・ 厚生労働省労働基準局の,労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について

内閣法制局参事官経験のある裁判官

目次
1 内閣法制局参事官経験のある裁判官
2 内閣法制局参事官経験のない,裁判官出身の内閣法制局長官
3 内閣法制局参事官の位置づけ
4 5点セット
5 関連記事その他

1 内閣法制局参事官経験のある裁判官

(1) 内閣法制局第一部参事官経験のある裁判官
・ プロパーの検事及び期外を除き,新しい順に以下のとおりです(最後の職が最高裁裁判官である人は赤文字表記とし,最後の職が高裁長官である人は紫文字表記としています。)。
53期の畑佳秀裁判官(R3.8.1 ~ )
48期の馬渡直史裁判官(H28.8.1 ~ R3.7.31)
45期の菊池章裁判官(H23.8.1 ~ H28.7.31)
40期の舘内比佐志裁判官(H18.8.7 ~ H23.7.31)
37期の八木一洋裁判官(H12.8.10 ~ H18.8.6)
33期の青柳勤裁判官(H7.7.3 ~ H12.8.9)
26期の永井敏雄裁判官(H2.8.1 ~ H7.7.2)
19期の堀籠幸男裁判官(S59.8.13 ~ H2.7.9)
15期の鈴木康之裁判官(S54.7.1 ~ S59.8.13)
10期の上谷清裁判官
(S49.4.15 ~ S54.6.30)
(2) 内閣法制局第二部参事官経験のある裁判官
・ プロパーの検事及び期外を除き,新しい順に以下のとおりです(最後の職が最高裁裁判官である人は赤文字表記とし,最後の職が高裁長官である人は紫文字表記としています。)。
52期の家原尚秀裁判官(R5.8.1 ~ )
50期の衣斐瑞穂裁判官(H30.8.1 ~ R5.7.31)
47期の岡田幸人裁判官(H25.8.1 ~ H30.7.31)
42期の森英明裁判官(H20.8.1 ~ H25.7.31)
37期の尾島明裁判官(H15.8.1 ~ H20.7.31)
38期の岩井伸晃裁判官(H13.6.4 ~ H18.7.23)
33期の野山宏裁判官(H11.10.1 ~ H15.7.31)
28期の高橋利文裁判官(H6.9.1 ~ H11.9.30)
21期の雛形要松裁判官(S58.6.15 ~ H1.7.17)
13期の町田顕裁判官(S52.1.27 ~ S58.6.14)
8期の梅田晴亮裁判官(S42.9.6 ~ S52.2.28)
(3) 内閣法制局の第一部は意見事務を担当し,第二部ないし第四部は審査事務を担当しています。


2 内閣法制局参事官経験のない,裁判官出身の内閣法制局長官
(1) 1期の味村治裁判官は,昭和48年10月1日に法務大臣官房司法法制調査部長から内閣法制局第二部長となり,その後,第一部長及び次長を経て,昭和61年7月22日に内閣法制局長官となりました。
(2) 14期の大森政輔裁判官は,昭和58年11月1日に法務省民事局参事官から内閣法制局総務主幹となり,その後,第二部長,第一部長及び次長を経て,平成8年1月11日に内閣法制局長官となりました。
(3) ①内閣法制局総務主幹は各省の官房長に相当するポストであり,②内閣法制局第一部ないし第四部の部長は各省の局長に相当するポストであり,③内閣法制次長は各省の事務次官に相当するポストであり,④内閣法制局長官は各省の大臣に相当するポストです。

3 内閣法制局参事官の位置づけ
(1) 国立公文書館HPの「内閣法制局移管文書について」には以下の記載があります。
   それぞれの部には、部長以下 11~15 名ほどの参事官・事務官が配置されている。法案審査を担当する参事官は、伝統的に他省庁から出向した、法律及び実務についての知識も経験も豊かな概ね在職 10~15 年の本省課長クラスの職員で占められている。参事官に他省庁からの出向者をあてるという制度は戦前から続くもので、彼らは「将来の幹部候補を目する、行政経験および法制面でも「優秀」な人物」と見られている。したがって、内閣法制局への出向者に選ばれることは「名誉」であり、選ばれた各人は、参事官として「中正高次の立場に立って所信を貫く責任感と誇り」をもつという。
(2)ア 「「法の番人」内閣法制局の矜持」(著者は阪田雅裕 元内閣法制局長官)には以下の記載があります。
(25頁の記載)
    もともと法制局は、明治18年(1885年)に内閣制度ができるのと同時にスタートしているのですが、その当時からずっと独自の採用はやっていません。一番大きな理由は組織が小さいことではないかと思います。小さな組織で優秀な職員を定期的に採ることは難しいし、大量に採用すると必ず処遇の問題が出てくる。他の組織と違ってラインでの仕事ではなくて、参事官は専門性をもったスタッフとして働いているわけですから。70人あまりのうち、部長も含めれば30人以上が課長、参事官以上というような組織です。そういう組織で新しい人を採用して局内で育てるというのが物理的に不可能ということが、一番の理由だと思います。
(26頁の記載)
    第一部から第四部まで、それぞれ参事官が5人ないし6人配置されていますから、全部で20人あまりです。部長や総務主幹も参事官を兼ねていますから、参事官が全部で26、27人といった数になる。こんな頭でっかちの組織というのは、ラインで仕事をするところでは考えられませんね。
(36頁の記載)
    むろん全員ではないですが、(山中注:参事官の在任期間は)原則として5年以上にどうしてもなってしまいますね。はじめの1年くらいは本人も大変ですし、それをチェックする部長も負担は大きいと思います。
(40頁の記載)
    役所にはエリートコースというのがあって、なんとなくここにはエリートが行くのだと思われているポストがある。役所によっては、内閣法制局参事官の経験者がその後、局長や長官、事務次官になるケースが少なくない。裁判所もそうですが、そういう省庁では、先々その役所の幹部になりそうな人材を法制局に出すのが慣例になったりするわけです。反対に、私のいた大蔵省などは、私自身を含め必ずしもそうではなかった。そういうのはよくないと思っていたのです。来た人自身の士気にもかかわるし、法制局の権威にもかかわりますから。
イ 内閣法制局長官については,「官吏ハ己ノ職務ニ関スルト又ハ他ノ官吏ヨリ聞知シタルトヲ問ハス官ノ機密ヲ漏洩スルコトヲ禁ス其職ヲ退ク後ニ於テモ亦同様トス」と定める官吏服務紀律(明治20年勅令第39号)4条1項の適用があると解されています(参議院議員藤末健三君提出特別職公務員の守秘義務に関する質問に対する答弁書(平成21年7月10日付))。
(3)ア 内閣法制局は,国家公務員採用一般職試験からの新人採用はしています(内閣法制局HPの「採用情報」参照)ものの,このルートで採用された新人が参事官になることはないのであって,参事官付として意見事務又は審査事務に関与するに過ぎません。
イ 内閣法制局HPの「職員からのメッセージ」を見れば,一般職試験から採用された人の業務内容が伺えます。

4 5点セット
(1) 5点セットは国会議員等への説明のために作ることが慣例となっている文書であって,その中身は以下のとおりです(NHK特集の「官僚の劣化?相次ぐ法案ミス」参照)。
① 要綱
・ 法案の趣旨を要約したもの
② 法律案
・ 改正や追加された部分を文章化したもの
③ 理由
・ 法案の目的などを記したもの
④ 新旧対照表
・ 新旧の条文を並べ,改正や追加された部分を比較する表
⑤ 参照条文
・ 法案に関係する他の法律の条文一覧
(2) 法務省民事局総務課の標準文書保存期間基準等の場合,5点セットは「閣議を求めるための決裁文書及び閣議に提出された文書」という位置付けになっているのであって,国会議員への説明資料という位置付けにはなっていません。



5 関連記事その他

(1) 明治大学西川伸一ゼミナールHP「内閣法制局を見学してきました」に,審査風景及び参事官の執務部屋の写真が載っています。
(2)ア 司法試験に合格した後に5年間,内閣法制局参事官をすれば,法務大臣が指定する研修の課程を終了した旨の法務大臣の認定通知(弁護士法5条の3)を受けるだけで,弁護士登録ができます(弁護士法5条1号)。
    例えば,平成23年9月2日から平成24年1月13日まで法務大臣をしていた平岡秀夫衆議院議員(当時)の場合,東大法学部在学中の昭和50年10月に司法試験に合格した後に大蔵省に入省し,平成5年7月2日から平成10年7月2日までの5年間,内閣法制局参事官を経験した後に弁護士登録をしました。
イ 弁護士資格に特例を認めた法の趣旨は,単にその者に特殊な法律専門知識があることだけに着眼したものではなく,少くとも弁護士法四条所定の司法修習生の修習を終えた者と同じ程度の一般的な法律的素養にも欠けるところがないことを予定しているものです(最高裁昭和43年11月15日判決)。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 内閣法制局長官任命の閣議書
・ 内閣法制局に関するメモ書き
・ 行政機関等への出向裁判官
・ 平成16年4月1日創設の,弁護士資格認定制度
・ 弁護士資格認定制度に基づく認定者数の推移

内閣法制局長官任命の閣議書

目次
1 内閣法制局長官任命の閣議書
2 関連記事その他

1 内閣法制局長官任命の閣議書
    平成元年以降の内閣法制局長官任命の閣議書を以下のとおり掲載しています(2回目以降の任命分は除いています。)。

・ 岩尾信行内閣法制局長官任命の閣議書(令和6年8月27日付)

・ 近藤正春内閣法制局長官任命の閣議書(令和元年9月11日付)

・ 横畠裕介内閣法制局長官任命の閣議書(平成26年5月16日付)

・ 小松一郎内閣法制局長官任命の閣議書(平成25年8月8日付)

・ 山本庸幸内閣法制局長官任命の閣議書(平成23年12月22日付)

・ 梶田信一郎内閣法制局長官任命の閣議書(平成22年1月15日付)

・ 宮崎礼壹内閣法制局長官任命の閣議書(平成18年9月26日付)

・ 阪田雅裕内閣法制局長官任命の閣議書(平成16年8月31日付)

・ 秋山収内閣法制局長官,並びに佐藤英彦,村田成二及び青山俊樹安全保障会議幹事任命の閣議書(平成14年8月7日付)

・ 津野修内閣法制局長官,及び川島裕安全保障会議幹事任命の閣議書(平成11年8月24日付)

・ 渡辺嘉蔵及び古川貞二郎内閣官房副長官,並びに大森政輔内閣法制局長官任命の閣議書(平成8年1月11日付)

・ 大出峻郎内閣法制局長官任命の閣議書(平成4年12月12日付)

・ 志賀節及び石原信雄内閣官房副長官,並びに工藤敦夫内閣法制局長官任命の閣議書(平成元年8月10日付)

2 関連記事その他
(1) 「参議院議員小西洋之君提出小松一郎内閣法制局長官の資質に関する質問に対する答弁書」(平成25年12月17日付)には以下の記載があります。
    内閣法制局長官の任命は、内閣法制局長官に求められる能力や適性等を公正かつ厳格に判断し、適材適所の観点から行っているものである。
    内閣法制局長官は、内閣法制局の事務を統括するものとされているところ、その具体的な方法については、案件の内容等によって異なることから、一概に申し上げることは困難であるが、重要な案件については、内閣法制局長官の決裁を経て決定している。
(2) 内閣法制局長官は,内閣官房副長官3人(政務担当2人及び事務担当1人)と一緒に,閣議に陪席します。
(3) 平成18年9月26日に内閣法制局長官に就任した宮崎礼壱は,昭和51年当時,東京地検特捜部検事としてロッキード事件全日空ルートの捜査を担当しました(「ロッキード秘録 吉永祐介と47人の特捜検事たち」末尾の「ロッキード検事 役職・担当一覧」参照)。
(4) 以下の記事も参照してください。
 閣議
 最高裁判所長官任命の閣議書
 最高裁判所判事任命の閣議書
 高等裁判所長官任命の閣議書
 検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書
・ 衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案
・ 各府省幹部職員の任免に関する閣議承認の閣議書
・ 内閣法制局に関するメモ書き
・ 内閣法制局参事官経験のある裁判官

日本学術会議法第17条による推薦と 内閣総理大臣による会員の任命との関係について(平成30年11月13日付の内閣府日本学術会議事務局の文書)

目次
第1 日本学術会議法第17条による推薦と 内閣総理大臣による会員の任命との関係について(平成30年11月13日付の内閣府日本学術会議事務局の文書)
第2 関連記事その他

第1 日本学術会議法第17条による推薦と 内閣総理大臣による会員の任命との関係について(平成30年11月13日付の内閣府日本学術会議事務局の文書)

・ 文書の中身は以下のとおりです。

1.日本学術会議の沿革等について
(1)日本学術会議の設立経緯、設立趣旨等について
   敗戦後の我が国が貧困な資源、荒廃した産業施設等の悪条件を克服し、文化国家として再建すると共に、世界平和に貢献し得るためには、是非とも科学の力によらなければならないとの問題意識の下、従来、個々の研究においては優れた成果が必ずしも少ないとは言い得ないにも関わらず、その有機的、統一的な発達が十分ではなく、全科学者が一致協力して現下の危機を救い、科学の進歩に寄与し得るような体制を欠いていたことを省みて、全国科学者の緊密な連絡協力によって、科学の振興発達を図り、行政産業及び国民生活に科学を反映浸透させるための新組織を国の審議機関として確立することを我が国の科学振興の基本的な前提と位置付け、昭和23年7月に「日本学術会議法(昭和23年法律第121号。以下「日学法」という。)」が制定され、昭和24年1月に日本学術会議が設立された。
   近年、地球環境問題をはじめ、一つの専門分野の知識のみでは解決できない複雑な問題について、様々な知識を統合し、解決に向けた選択肢を示すことが求められている。こうした中で、日本学術会議は、我が国の科学者の内外に対する代表機関として、全ての学術分野の科学者を擁し、また、職務の独立性が担保されているといった特徴を有しており、幅広い学術分野の科学的知見を動員しつつ課題に関する審議を行って意見を集約し、政府や社会に対してその成果を提示できるところにその意義があるところである。政府や社会から尊重されつつその役割を十分に発揮できるような位置付け及び権限を付与し、安定的な運営を行うために必要な財政基盤を確保する観点から、日本学術会議は、科学に関する重要事項の審議及び研究の連絡に関する事務を所掌し、政府からの諮問に対する答申、政府への勧告等を行う国の行政機関として設置されているところである。
(※)例えば、国際リニアコライダー(ILC)については、高エネルギー物理学分野の国際的なコミュニティにおいて建設の期待が高まっているところであるが、ILCの建設及び運営には巨額の経費を要するため、我が国でこれを実施する場合には学術研究全体に大きな影響を与えることも想定されることから、学術に関する各分野の専門家で構成されている日本学術会議に対して文部科学省から審議を依頼されたところであり、現在、日本学術会議において、ILC計画における研究の学術的意義や、ILC計画の学術研究全体における位置付け等について審議しているところである。
   日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とされ、当初は「機関」として総理府に置かれたものであり(総理府設置法第16条)、一旦、総務省に置かれたこともあったが、現在は「特別の機関」として内閣府にで 置かれているところである(内閣府設置法第40条第3項)。
(2)日本学術会議会員の選出方法の変遷について
   日学法制定当初は、日本学術会議は、一定の資格を有する全国の科学者により選挙された特別職の国家公務員である日本学術会議会員(以下「会員」という。)によってこれを組織することとされていた。
   その後、昭和44年頃から日本学術会議改革が議論されはじめ、昭和57年10月22日に日本学術会議は改革要綱を採択し、総務長官に提出した。また、同年8月19日には自由民主党から日本学術会議の改革に関する中間提言が出され、同年ll月22日には総務長官の私的懇談会も報告を総務長官に提出した。総務長官はこれらを総合的に勘案して、同月24日に総務長官試案を示し、この試案を基に総理府と日本学術会議で協議を進めた結果、昭和58年に日学法改正法案が第98回国会に提出され、同年11月に同法案は成立した。
   このような状況の中で、会員の選挙制については、立候補者数の減少による競争率の低下や無競争当選等、いわゆる学者離れなどの問題点が指摘され、より良い会員の選出方法が検討された結果、会員の選出方法は、科学者が自主的に会員を選出することを基本とし、学会を基礎として選出された者を日本学術会議が会員候補者として内閣総理大臣に推薦し、その推薦に基づき内閣総理大臣が任命する方法へと改正された。
   さらに、平成16年の日学法改正においては、会員構成の硬直化を防ぎ、個別の学会の利害にとらわれない政策提言を行うことができるよう、推薦される会員候補者の選考方法が2.(2)において後述するとおりに改められた。

2.現行の会員選出方法について
(1)会員の選出に係る規定について
   日本学術会議は、210人の特別職の国家公務員たる会員をもって組織されており、日学法第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が会員を任命することとされている(日学法第7条第1項及び第2項)。会員の任期は6年であり、3年ごとにその半数を任命している(同条第3項)。日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとされている(同条第17条)。日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令(平成17年内閣府令第93号)では、会員候補者の内閣総理大臣への推薦は、任命を要する期日の30日前までに、当該候補者の氏名及び当該候補者が補欠の会員候補者である場合にはその任期を記載した書類を提出することにより行うものとしている。また、日学法上、会員としての欠格条項は特段規定されていないが、会員に会員として不適当な行為があるときは、内閣総理大臣は、日本学術会議の申出に基づき、当該会員を退職させることができることとされている(日学法第26条)。その不適当な行為とは、いわゆる名誉を汚辱するような行為であり、例えば、犯罪行為等が想定されているところである。
(※) 不適切な事案を背景として日本学術会議法施行令(平成17年政令第299号)第2条に基づき辞職を承認された連携会員(会員と連携し、日本学術会議の職務の一部を行わせるため、日学法第15条第1項に基づき置かれる一般職の国家公務員)の例として、
①大学教授が文部科学省からの研究資金を不正使用したことが大学の調査で判明し、大学から解雇された事例
②大学教授が論文でデータの改ざんやねつ造を行ったことが大学の調査で判明し、大学から懲戒解雇相当の処分とされた事例
等がある。
   上記の事例については、連携会員として不適当な行為があるとして会長が当該連携会員を退職させることができる事由にも該当する可能性があると考えられる。
(2)会員候補者の選考手続について
   日本学術会議における会員候補者の選考では、会員及び連携会員(会員と連携し、日本学術会議の職務の一部を行わせるため、日学法第15条第1項に基づき置かれる一般職の国家公務員)は、幹事会が定めるところにより、会員候補者を選考委員会に推薦することができることとされており、選考委員会は、推薦その他の情報に基づき、会員候補者の名簿を作成し、幹事会に提出することとされている。幹事会は、この名簿に基づき、総会の承認を得て、会員候補者を内閣総理大臣に推薦することを会長に求めるものとされている(会則第8条第1項、第2項及び第3項)。会員が任期の途中において定年、死亡、辞職又は退職により退任することで会員に欠員が生じた場合には、その後任者となる者(以下「補欠の会員」という。)の候補者の選考が行われ、また、補欠の会員の任期は、前任者の残任期間とされている(日学法第7条第4項)。なお、総会は、原則として毎年4月及び10月に会長が招集することとされている。

3.日学法第7条第2項に基づく内閣総理大臣の任命権の在り方について
   内閣総理大臣による会員の任命は、推薦された者についてなされねばならず、推薦されていない者を任命することはできない。その上で、日学法第17条による推薦のとおりに内閣総理大臣が会員を任命すべき義務があるかどうかについて検討する。

(1)まず、
①日本学術会議が内閣総理大臣の所轄の下の国の行政機関であることから、憲法第65条及び第72条の規定の趣旨に照らし、内閣総理大臣は、会員の任命権者として、日本学術会議に人事を通じて一定の監督権を行使することができるものであると考えられること
②憲法第15条第1項の規定に明らかにされているところの公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理からすれば、任命権者たる内閣総理大臣が、会員の任命について国民及び国会に対して責任を負えるものでなければならないことからすれば、内閣総理大臣に、日学法第17条による推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられる。
(※)内閣総理大臣による会員の任命は、推薦を前提とするものであることから「形式的任命」と言われることもあるが、国の行政機関に属する国家公務員の任命であることから、司法権の独立が憲法上保障されているところでの内閣による下級裁判所の裁判官の任命や、憲法第23条に規定された学問の自由を保障するために大学の自治が認められているところでの文部大臣による大学の学長の任命とは同視することはできないと考えられる。
・最高裁判所の指名した者の名簿によって行われる内閣による下級裁判所の裁判官の任命(憲法第80条及び裁判所法第40条)
・大学管理機関の申出に基づく任命権者による大学の学長等の任命(教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第10条)

(2)他方、会員の任命について、日本学術会議の推薦に基づかなくてはならないとされているのは、
①会員候補者が優れた研究又は業績がある科学者であり、会員としてふさわしいかどうかを適切に判断しうるのは、日本学術会議であること
②日本学術会議は、法律上、科学者の代表機関として位置付けられており、独立して職務を行うこととされていること
③昭和58年の日学法改正による推薦・任命制の導入の趣旨は前述したとおりであり、これまでの沿革からすれば、科学者が自主的に会員を選出するという基本的な考え方に変更はなく、内閣総理大臣による会員の任命は、会員候補者に特別職の国家公務員たる会員としての地位を与えることを意図していたこと
   によることからすれば、内閣総理大臣は、任命に当たって日本学術会議からの推薦を十分に尊重する必要があると考えられる。

(3)なお、(1)及び(2)の観点を踏まえた上で、内閣総理大臣が適切にその任命権を行使するため、任命すべき会員の数を上回る候補者の推薦を求め、その中から任命するということも否定されない(日本学術会議に保障された職務の独立を侵害するものではない。)
と考えられる。


* 「内閣法制局の応接録(平成30年9月5日から同月11月15日まで)」に含まれている文書です。

第2 関連記事その他
1 日弁連HPに以下の文書が載っています。
・ 日本学術会議会員候補者6名の速やかな任命を求める会長声明(令和2年10月22日付)
・ 日本学術会議会員任命拒否の違法状態の是正を求める意見書(令和3年11月16日付)
2(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 日本学術会議法の一部を改正する法律案(説明資料)
→ 平成16年1月26日付の総務省の文書です。
・ 裁判官任命についての内閣の拒否権に関する想定問答
→ 内閣法制局第一部の執務参考資料集8(憲法76条ないし81条関係)からの抜粋です。
(2) 以下の記事も参照して下さい。
・ 下級裁判所裁判官指名諮問委員会で再任不適当とされた裁判官の数の推移
・ 下級裁判所裁判官指名諮問委員会委員名簿
・ 平成20年度以降,任期終了により退官した裁判官の一覧
・ 裁判官の再任の予定年月日,及び一斉採用年月日
・ 裁判官の退官情報
・ 裁判官の職務に対する苦情申告方法