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内閣法制局に関するメモ書き(AIリライト)

第1 内閣法制局の業務と本記事の位置づけ

本記事は,内閣法制局の審査実務,質問主意書への答弁書,法令案の誤り防止及び開示資料を調べるための資料案内である。
仕事内容と組織・職制の全体像は内閣法制局とは―仕事内容,組織と長官・参事官の役割で,法務省及び議院法制局との役割の違いは内閣法制局と法務省・議院法制局の違いで扱う。

1 意見事務と審査事務

内閣法制局の中核的な業務は,法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べる意見事務(内閣法制局設置法3条3号)と,閣議に付される法律案,政令案及び条約案を審査する審査事務(同条1号)である。
第一部が意見事務を担当し,第二部から第四部までが府省別に審査事務を担当する。
各部の所管府省,参事官の任用,幹部の俸給といった組織及び職制の詳細は,別稿内閣法制局の仕事内容,組織と長官・参事官の役割に譲り,本記事では立ち入らない。

2 「法の番人」としての機能

内閣法制局が「法の番人」と称されるのは,閣議に付される全ての法律案・政令案・条約案を事前に審査し,法律問題について内閣等に意見を述べることを通じて,法令解釈の一貫性と論理的整合性を担保する点にある。参議院議員小西洋之君提出内閣法制局長官と法の支配に関する質問に対する答弁書(平成26年11月28日付)も,内閣法制局を,行政権の行使について憲法をはじめとする法令の解釈の一貫性・論理的整合性を保つとともに,法律による行政を確保する観点から内閣等に意見を述べる機関と位置づけている。

この機能の背景として,阪田雅裕元内閣法制局長官は,一般の法律は所管する各省がその責任の下に解釈・運用するのに対し,憲法は内閣が一元的に解釈・運用せざるを得ないところ,内閣を構成する者は始終交代し,内閣自体が常に専門的知見を有するわけではないから,法的な視点から内閣を支える組織が必要であり,それが法制局であると説明する(「法の番人」内閣法制局の矜持44頁)。

3 内閣法制局と法務省の違い

内閣法制局は政府全体の法律案等の審査と法令解釈に関する意見事務を担い,法務省は民事・刑事の基本法制,検察,矯正,登記,人権擁護などの法務行政を担当する。
法務省が所管する内閣提出法律案も,閣議に付される前に内閣法制局の審査を受ける。
各機関の設置根拠,議員立法との違い及び法案提出までの流れは,内閣法制局と法務省・議院法制局の違いで比較している。

第2 質問主意書に対する答弁書の審査

質問主意書に対する答弁書は,取りまとめ省庁における決裁と内閣法制局における審査とを並行して経て,閣議決定に至る。法務省が取りまとめ省庁となる場合の流れは,「質問主意書関係事務の手引き~はじめて主意書を担当する方へ~」(令和7年10月14日改定)7頁によれば,おおむね次のとおりである。

内閣法制局審査の際に用意する資料は,答弁書案,主意書,参考資料等であり,最低3セットを要する。答弁書案は,内閣法制局第一部の参事官補,参事官,部長(重要な案件等は長官まで)の順で審査を受ける。省内決裁,法務省秘書課法令係の配字審査及び内閣官房内閣総務官室の配字審査との関係は,おおむね次の順序による。

  1. 部局内決裁(法務省)
  2. 内閣法制局参事官補審査
  3. 内閣法制局参事官審査
  4. 秘書課法令係配字審査(法務省)
  5. 内閣総務官室配字審査
  6. 秘書課付,秘書課長,官房長及び事務次官決裁(法務省)
  7. 内閣法制局第一部長審査(重要な案件は長官まで)
  8. 秘書課法令係配字審査(法務省)
  9. 内閣総務官室配字審査
  10. 政務三役決裁(法務省)

重要な案件については,内閣法制局審査前に政務三役の了解を得,又は官邸と協議することがあり,上記の流れが変則的になることもあるが,閣議請議の前日までに10までを了する。決裁は電子決裁で行い,答弁書と答弁書説明要旨の電子決裁は原則として一体で起案する。答弁の記載ぶりは,基本的には用例集及び参考資料(法制局審査に際し別途作成)の記載ぶりに合わせるものとされている。

改定日の表示のない従前の版では,法務省秘書課法令係の配字審査が入らない11段階の流れとされ,持参資料に参照条文が挙げられていたほか,従来作成していた「配布案件理由」が第192回国会から作成不要とされた旨の記載があった。

答弁書の作成過程で作られる文書とその開示の実例は質問主意書の答弁書作成過程の文書と情報公開請求―開示された用例集・参考資料と審査会答申で,答弁書が裁判で持つ意味は政府答弁書は裁判所を拘束するか―質問主意書への答弁書が判決で使われた裁判例で整理している。

第3 法案資料の誤りと再発防止

令和3年,内閣が第204回国会に提出した法律案(第203回国会で継続審査とされたものを含む。)及び条約について,条文及び参考資料(要綱,新旧対照表及び参照条文)等に相次いで誤りが判明した。これを受けて政府は,各府省庁において原因の徹底究明と再発防止策の検討を行うとともに,内閣官房副長官,内閣官房副長官補,内閣法制次長,内閣法制局総務主幹,総務省行政管理局長,法務省大臣官房司法法制部長,各府省庁の大臣官房長及び国立印刷局理事長ら計27名を構成員とする「法案誤り等再発防止プロジェクトチーム」を設け,実務担当者の視点を踏まえ,特にデジタル技術及びICTを活用する形で業務の進め方を見直す観点から,実効性のある再発防止策を検討した(衆議院議員丸山穂高君提出法改正時のミスにより既存の条項と罰則が対応しない状態等が生じていることに関する質問に対する答弁書(令和3年5月14日付))。当面の再発防止策は,内閣官房ホームページの「再発防止チーム」に「デジタル改革関連法案における資料誤り等の当面の再発防止策」(令和3年3月29日付)として掲載されている。

もっとも,誤りの防止策としてのダブルチェックには限界も指摘される。厚生労働省四国厚生局ホームページの「ダブルチェックの有効性を再考する」は,一見して判別できる種類の誤りについては指差確認で足り,かえってダブルチェックを実施すると,双方が相手を頼んで見落とす,二人目の時間を奪って他の作業や超過勤務にしわ寄せが及ぶなどの弊害が生じ得ることを指摘している。

第4 内閣法制局の執務資料及び開示資料

1 執務資料

次の表は,本ブログに掲載した開示資料の版と参照先を示すものである。
作成年が古い資料も含むため,掲載資料の記載と現在の法令・組織・運用は区別して確認する。

資料名資料の時点参照先
法令審査事務提要(改定)平成23年12月資料PDF
法令案における誤りの防止について(手引)(改訂版)令和3年12月資料PDF
憲法関係答弁例集(第9条・憲法解釈関係)平成28年9月資料PDF

内閣法制局の主な執務資料として,情報公開等を通じて確認できるものに次のものがある。

  • 法令審査事務提要(改定)
  • 法令案における誤りの防止について(手引き)(増補版)
  • 内閣法制局の法令審査支援システム操作マニュアル
  • 憲法関係答弁例集(第9条・憲法解釈関係)(平成28年9月)
  • 内閣法制局第一部の執務参考資料集8(憲法76条ないし81条関係)
  • 内閣法制局の国会用資料(平成30年分)
  • 内閣法制局の国会答弁抄(司法・法務)
  • 大嘗祭の合憲性に関する内閣法制局の国会用資料等

2 例規その他の資料

(例規)

  • 内閣法制局組織細則(昭和31年9月1日法制局訓令第1号)
  • 内閣法制局行政文書取扱規則(平成31年4月25日最終改正)

(法律案審議録)

  • 裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)に関する内閣法制局の法律案審議録
  • 裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)に関する内閣法制局の法律案審議録
  • 裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)に関する内閣法制局の法律案審議録(法務省提出分を除く。)

(答弁書の審査資料)

(その他)

3 答弁例集・答弁抄から原会議録を確かめる

答弁例集や答弁抄は,過去の政府解釈を論点ごとに探す入口として有用である。
ただし,書面に引用するときは原会議録へ戻り,質問,答弁冒頭の留保及び後の補足まで確認する必要がある。
抄録の引用部分と,編集者による見出し・要約・補注を区別し,書籍に収録された字句が原会議録と一致するかも確かめる。

例えば,昭和31年2月29日の衆議院内閣委員会第15号の発言2では,船田中国務大臣が総理大臣の答弁を代わって述べている。
したがって,会議録上の発言者と,その発言が伝える見解の主体は分けて特定する。
引用箇所は,会議名,年月日,号数及び発言番号によって示すと,前後の質疑へ戻って検証しやすい。

原会議録:昭和31年2月29日衆議院内閣委員会第15号・発言2(https://kokkai.ndl.go.jp/txt/102404889X01519560229/2)

4 公開された原資料と内部の調査資料

昭和46年3月25日の参議院予算委員会第一分科会第3号で,高辻正巳内閣法制局長官は,憲法資料調査室の主な仕事を,憲法調査会の報告書に関する資料の整理と,その後の憲法問題に関する補充調査であると説明している(発言156・158)。
また,新聞,一般刊行物及び政党機関紙等の公開資料を収集・整理している一方,その調査資料は部内の資料にとどまると説明し,照会には事実上できるだけ応じる旨を述べている(発言160・162)。

この答弁からは,収集元の資料が公開されていることと,収集・整理後の内部資料が公開されていることを区別して読む必要がある。
また,当時の照会への対応を,現在の一般的な閲覧権や開示請求の法的根拠として扱うことはできない。
現在の開示請求では,対象文書の保有状況及び適用される情報公開制度を別に確認する。

原会議録:昭和46年3月25日参議院予算委員会第一分科会第3号(https://kokkai.ndl.go.jp/txt/106515266X00319710325)

第5 臨時会の召集要求に関する国会答弁

憲法53条は,次のとおり定める。

内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

横畠裕介内閣法制局長官は,平成30年2月14日の衆議院予算委員会において,同条後段の召集要求があった場合,内閣は,臨時会で審議すべき事項等をも勘案して,召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を決定しなければならず,合理的な期間は召集に当たって整理すべき諸課題によって変わるため一概にはいえない旨を答弁した。あわせて,具体的にどのような事情によりその期間となったのかは内閣法制局の所掌ではなく,憲法の解釈について述べる立場にとどまる旨も述べている。

この点に関し,最高裁判所令和5年9月12日判決は,憲法53条後段の規定により国会の臨時会の召集の決定を要求した国会議員が,内閣による召集決定の遅滞を理由として国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることはできない旨を判示した。

なお,事実経過としては,平成29年6月22日,野党議員が安倍内閣に対し,衆参両院それぞれ総議員の4分の1以上の連名で臨時国会の召集を要求したが,実際に臨時国会が召集されたのは同年9月28日であり,しかも召集日に衆議院が解散された。

第6 改め文(逐語的改正方式)に関する国会答弁

法令改正の方式には,改正箇所を逐語的に「…を…に改める」と記述する改め文の方式と,新旧の条文を対照する新旧対照表を本体とする方式とがある。横畠裕介内閣法制局総務主幹は,平成14年12月13日の衆議院総務委員会において,改め文の方式は,改正点が明確であり,かつ簡素に表現できるという利点があり,我が国における法改正の方法として定着していると答弁した。

その上で,新旧対照表を改正法案の本体とすることについては,新旧対照表が改め文よりも相当に大部となることが避けられず,全体の正確性を期すための事務に多大の時間と労力を要すること,条項の移動などは新旧対照表では改正内容を十分に表現できないことを理由に,実際上困難があるとした。具体例として,平成11年の中央省庁等改革関係法施行法では,改め文による法案本体が全体で940頁であったのに対し,その新旧対照表は縮小印刷で4765頁に達し,改め文と同じ1頁当たりの文字数に換算すると2万1305頁,すなわち改め文の22倍を超える分量になったことを挙げている。

山本庸幸元内閣法制局長官は,回想録の中で,内閣法制局として各省で違いのあった新旧対照表の方式を統一した上で,新旧対照表を法律案そのものとすることについて官邸と全省庁の内々の了承を取り付け,国会関係者に下相談をしたものの了解を得られず,新旧対照表から改め文を自動的に作成するソフトを開発するにとどまったと述べている(山本庸幸『元内閣法制局長官・元最高裁判所判事回想録』(弘文堂,令和6年)304頁~305頁)。

法令の書き方に関しては,政令の制定文についての国会答弁もある。平成24年2月6日の参議院予算委員会で,内閣官房組織令の制定文が引用する内閣法の条項が現行の条文と対応していないことを問われた山本長官は,「要するに制定文というのは作ったときのその当時の状態を示すものでありまして、法令としての効力は題名以下の法令の本文であるということでございます。」と答弁している(国会会議録)。制定文の読み方と現在の委任根拠の確かめ方は,政令の制定文とは何か(AI作成)で扱っている。

第7 関連記事その他

  • 内閣法制局「法律ができるまで」:https://www.clb.go.jp/recent-laws/process/
  • 若手組織内弁護士研究ノートに,渡部友一郎「内閣法制局資料への敬意」及び同「新しい部会作りマニュアル」(いずれもJILA日本組織内弁護士協会会報誌第14号(2022年))が掲載されている。
  • 法務省刑事局作成の資料として,若手検察官のための法令基礎知識(検察月報678号(平成25年9月)抜粋),罰則の定めのある条例審査について,同Q&A,暴力団排除条例・環境関連条例・屋外広告物条例の審査に関する各資料(検察月報の各号からの抜粋)等を掲載している。
  • 内閣法制局の「法令案における誤りの防止について(手引)(改訂版)」(令和3年12月)については,法令案誤り防止の手引の解説でチェックポイントと事例を紹介している。

法務省刑事局は,刑事法制の企画・立案のほか,他省庁が主管する罰則付き法令案について刑事政策や検察権の行使等の観点から意見を述べる事務を担当する。
この事務と,内閣提出法律案が閣議に付される前に受ける内閣法制局の審査は,区別して理解する必要がある。

根拠となる公式説明は,法務省「刑事局の事務」(https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji02.html)及び内閣法制局「法律ができるまで」(https://www.clb.go.jp/recent-laws/process/)で確認できる。
刑事局の組織と担当業務は,法務省刑事局とは―仕事内容・組織・検察庁との違いと問い合わせ先(AI作成)を参照されたい。

以下の記事も参照されたい。