業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較

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1 民間労働者の場合
(1)   「過労自殺の労災認定」を参照して下さい。
   労基署による過労自殺の労災認定は1億円前後の損害賠償責任の発生と直結している気がします。
(2)ア 全国健康保険協会の平成27年度現金給付受給者状況調査報告の「第一部 傷病手当金」には,「精神及び行動の障害は、平成7年は4.45%であったが、平成15年には10.14%と10%を超え,平成27年には27.51%と大幅に増加している。」と書いてあります。
イ 平成22年度以降のバックナンバーが全国健康保険協会(協会けんぽ)HPの「現金給付受給者状況調査」に掲載されています。
   現金給付受給者状況調査(平成28年度)は平成29年7月8日に掲載されました。
(3)ア 厚生労働省HPの「医療計画」に掲載されている「医療計画について」(平成24年3月30日付の厚生労働省医政局長通知)により,平成25年度から実施されている第6次医療計画において,精神疾患が既存の4疾病に追加されることとなりました。
イ 5疾病とは,がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病及び精神疾患のことです(医療法施行規則30条の28)(厚生労働省HPの「5疾病・5事業について」(平成28年10月7日付))。

2 司法修習生の場合
(1) 国家公務員災害補償の対象となる可能性があること等
ア 司法修習生には国家公務員災害補償法の適用があります(裁判所HPの「修習資金貸与FAQ~その他 貸与制に関連する事項~」)。
   そのため,司法修習が原因で心の病を発症したと最高裁判所事務総長(国家公務員災害補償法3条の実施機関です。)に認定してもらえた場合,裁判官及び裁判所職員の場合と同様に,同法に基づく補償(人事院HPの「国家公務員災害補償制度の仕組み」参照)があると思います。
イ 司法修習生に対する不合理な罷免は退職の強要に該当する可能性がありますところ,退職の強要は,労災認定の対象となる精神障害の発症原因です「過労自殺の労災認定」参照)。
(2) 公務災害の認定してくれなかった場合の不服申立方法等
ア   公務災害の認定に関する最高裁判所事務総長の措置に不服がある場合,最高裁判所に対して審査の申立てをすることができます。
   この場合,最高裁判所は,災害補償審査委員会の審理に付し,同委員会が作成した調書に基づき,審査の申立てを棄却するかどうかを判定します(人事院規則13-3(災害補償の実施に関する審査の申立て等)参照)。
イ ①平成15年3月3日に自殺した大阪高裁の裁判官の場合,公務災害が認められていませんし(外部HPの「「ある裁判官の自殺」に思う」参照),②42期の花村良一民事裁判上席教官は,平成28年9月29日に死亡しましたところ,死亡した月の出勤状況が分かる文書は存在しないことになっています平成28年11月4日付の司法行政文書不開示通知書平成28年12月2日付の最高裁判所事務総長の理由説明書及び平成28年度(最情)答申第42号(平成29年1月26日答申)参照)から,最高裁判所事務総長による認定はあまり期待できないかも知れません。
(3) 過失相殺なしの損害賠償責任と直結しているかもしれないこと
   精神障害の場合,業務災害の認定は安全配慮義務違反の認定,ひいては過失相殺なしの損害賠償責任に直結しています。
   そのため,裁判所職員の場合も同様に,公務災害の認定は裁判所の安全配慮義務違反の認定,ひいては過失相殺なしの損害賠償責任と直結しているかもしれません(明確な裁判例は確認できていません。)。
(4) 損害賠償請求訴訟に関する審理の経過及び予定は逐次,最高裁判所事務総局に報告されること
ア   仮に司法研修所の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟を提起した場合,「裁判所職員の事件処理上の違法行為を理由とする国家賠償請求事件及び告知事件の報告について」(平成16年7月1日付の最高裁判所民事局長,刑事局長,行政局長及び家庭局長通達)に基づき,審理の経過及び予定が逐次,最高裁判所事務総局に報告されます。
イ 最高裁昭和36年9月26日決定は以下の判示をしています。
   所論は、原審訴訟記録の表紙に、「報告事件」と朱書されていることは、憲法七六条三項、三二条、三一条に違反すると主張するが、かかることは下級審裁判官に対し何ら審理上の圧力を加えるものではないから、所論違憲の主張は結局すべて前提を欠くことに帰し、採用できない。(なお、右朱書がなされるに至つたのは、昭和三六年一月二三日附最高裁判所事務総長通達により、「刑事事件の事件報告に関する通達」が改正されたことに基くのであつて、司法行政事務処理上の参考資料を得るために外ならず、裁判に対し何等の圧力を加えるものでない。)
(5) 裁判所の責任者
   裁判所職員健康安全管理規程2条及び別表第一によれば,最高裁判所における健康安全管理総括者は事務総局人事局長(保健に係るもの)及び事務総局経理局長(安全保持に係るもの)であり,同規程3条及び別表第二によれば,司法研修所における健康管理者は司法研修所事務局総務課長であり,安全管理者は司法研修所事務局経理課長です。
(6) 公務災害の認定がされた場合の影響
   司法修習生の心の病に関して公務災害が認定された場合,過失相殺なしの損害賠償責任に直結し,最高裁判所事務総局人事局長等の責任問題に発展するかも知れませんが,他の司法修習生に特に不利益が発生することはないと思います。
(7) 自殺等の状況
ア 平成17年7月6日,鳥取地裁配属の59期司法修習生がマンションの13階から飛び降り自殺しました(2ちゃんねるの「【社会】27歳司法修習生,13階から飛び降り自殺・鳥取」参照)。
   そのため,司法修習生が心の病を発症する可能性は否定できません。
イ ハンドルネームが「黒猫」となっている55期の男性弁護士の場合,司法修習生の時代にうつ病を発症し,1年間,修習を休んだそうです(外部HPの「自分の昔のこと,その他いろいろ」参照)。
ウ 平成18年12月11日,大阪地検総務部の指導係検事が割腹自殺の未遂事件を起こしました(外部ブログの「大阪地検の検事が割腹自殺未遂?修習生の指導担当」参照)。
エ イソ弁が労働者に該当する場合(東弁リブラ平成17年4月号の「私って労働者?」参照),労基署の職権による成立手続及び労災保険料の認定手続を経ることで事後的に労災保険に加入できますから,労基署の過労自殺認定を通じてボス弁に1億円前後の損害賠償責任が発生するかも知れませんし,労災保険の費用徴収制度(労災保険法31条1項参照)に基づき,労災保険の給付に要した費用の100%又は40%を労基署から請求されるかも知れません(厚生労働省リーフレットの「労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度が強化されます」参照)。
   そのため,弁護士法人であれば,無限連帯責任を負う社員弁護士(弁護士法30条の15第1項参照)の破産につながるかも知れません。
オ 「弁護士の自殺者数の推移(平成18年以降)」も参照してください。

3 過労死等の公務災害補償状況
① 平成27年度過労死等の公務災害補償状況について(平成28年7月19日付)
   精神疾患等に関する事案の公務災害補償状況のうち,認定件数は一般行政職が4件,医療職が3件,公安職が1件です。
②   平成28年度過労死等の公務災害補償状況について(平成29年7月13日付)
   精神疾患等に関する事案の公務災害補償状況のうち,認定件数は一般行政職が3件,公安職が1件,医療職が1件です。
③ 平成29年度過労死等の公務災害補償状況について(平成30年7月19日付)
   精神疾患等に関する事案の公務災害補償状況のうち,認定件数は一般行政職が11件,公安職が1件です。

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