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外務省条約局長・国際法局長を経験した最高裁判所判事(AIリライト)

第1 条約局長・国際法局長を経験した9人

1 一覧

外務省の旧条約局長又は国際法局長を経験した後に最高裁判所判事となった者は,次の9人である。

氏名条約局長・国際法局長の着任日と交代日最高裁判所判事の在任期間裁判所が掲げる主な前職等
長嶺安政平成22年8月20日~平成24年9月11日(国際法局長)令和3年2月8日~令和6年4月15日外交官(駐英国大使等)
林景一平成14年9月20日~平成16年8月1日(条約局長),同日~平成17年8月2日(国際法局長)平成29年4月10日~令和3年2月7日外交官(駐英国大使等)
竹内行夫平成9年8月1日~平成10年7月28日(条約局長)平成20年10月21日~平成25年7月19日外務事務次官
福田博平成元年1月27日~平成2年8月31日(条約局長)平成7年9月4日~平成17年8月1日外交官(駐マレイシア国大使等)
中島敏次郎昭和51年1月22日~昭和52年9月16日(条約局長)平成2年1月24日~平成7年9月1日外交官(駐中国大使等)
高島益郎昭和47年1月18日~昭和48年8月7日(条約局長)昭和59年12月17日~昭和63年5月2日外交官(駐ソヴィエト連邦大使等)
藤崎萬里昭和39年3月19日~昭和42年12月26日(条約局長)昭和52年4月5日~昭和59年12月15日外交官(駐タイ大使等)
下田武三昭和27年5月30日~昭和32年1月23日(条約局長)昭和46年1月12日~昭和52年4月2日外交官(駐米大使等)
栗山茂昭和2年8月13日~同年11月25日(条約局長心得),昭和8年5月26日~昭和12年5月4日(条約局長)昭和22年8月4日~昭和31年10月5日外交官(駐ベルギー大使等)

最高裁判所判事の就任日,退官日及び主な前職等は,裁判所の「最高裁判所判事一覧表」によった。

2 在任日の読み方

条約局長・国際法局長の欄は,小森雄太「外務省国際法局研究序説―政軍関係への影響に注目して―」の「歴代条約局長及び国際法局長一覧」に記載された着任日と離任日を採ったものである。

同一覧では,同じ日が前任者の離任日と後任者の着任日として掲げられている例があるため,本記事の「~」は両端の日を含む在職日数を示すものではなく,人事上の交代日を示す表記である。

また,戦前を含む全員について個々の人事発令原文を網羅的に掲げたものではないため,精密な在職日数を計算するときは官報その他の各発令原文を確認する必要がある。

第2 経歴上の重要点

1 栗山茂は正式な条約局長でもあったこと

栗山茂は,昭和2年に条約局長心得を務めただけではなく,昭和8年5月26日から昭和12年5月4日まで正式な条約局長を務めた。

国立公文書館所蔵資料の目録にも「外務省条約局長栗山茂高等試験常任委員被仰付ノ件」があり,アジア歴史資料センターの名寄せにも「栗山条約局長」等の表記がある。

これらの公文書目録は正式な条約局長であったことを補強するが,在任期間の始期と終期は前記の歴代局長一覧によった。

2 平成16年の組織改編をまたいだ林景一

外務省は,平成16年8月1日の組織改編により条約局を国際法局に改めた

林景一は,改編前の条約局長から改編後の国際法局長へ引き続き在任したため,本記事では両方の局長歴を分けて表示した。

この名称変更を挟むため,「国際法局長経験者」という表現だけでは,それ以前の条約局長経験者を正確に表せない。

3 長嶺安政の退官と石兼公博の任命

長嶺安政は令和6年4月15日に最高裁判所判事を退官した。

その2日後の令和6年4月17日,石兼公博が最高裁判所判事に任命された。

裁判所が公表する石兼公博の略歴及び外務省が令和5年12月26日付けで公表した略歴によれば,石兼公博は国際協力局長,アジア大洋州局長,総合外交政策局長,駐カナダ大使及び国連大使等を歴任しているが,条約局長又は国際法局長の経歴はない。

したがって,外交官としての経験を有する者が最高裁判所判事に任命される流れと,条約局長・国際法局長経験者が任命される流れとは区別する必要があり,石兼公博は前記9人には含まれない。

第3 「国際法局長経験者枠」は法定の枠ではないこと

1 任命権と出身分野別の慣行

日本国憲法79条1項により,最高裁判所長官以外の最高裁判所判事は内閣が任命する。

平成16年3月25日の衆議院憲法調査会小委員会で,最高裁判所事務総長は,任命が内閣の専権に属することを前提に,裁判官,弁護士及び学識者という三つの出身分野が意識され,学識者には大学教授,検察官出身者,行政官及び外交官出身者等が含まれると説明した。

同事務総長は,任命の際,最高裁判所長官が内閣総理大臣と直接面会し,各小法廷の構成等を説明した上で,後任候補者の出身分野及び適格性等について意見を述べることが慣例であるとも説明した。

この説明は公表された任命実務を理解する重要な手掛かりであるが,条約局長又は国際法局長の経験者に一つの席を割り当てる法令上の制度を示すものではない。

したがって,「外交官出身」も「国際法局長経験者枠」も人事の経過を説明する便宜的な表現であり,特定の官職経験者の任命を保障する固定枠ではない。

最高裁判所判事の任命に関する制度と公表説明については,「最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明」も参照されたい。

2 条約・国際法実務の経験と最高裁判所

国際法局は,条約その他の国際約束の締結,解釈及び実施,国際法に係る外交政策,国際裁判並びに渉外法律事項を扱う組織である。

このような実務経験が最高裁判所にどのように生かされるかは,個々の判事の職務及び判断に即してみる必要があり,局長経験だけから具体的な裁判判断を推測することはできない。

もっとも,長嶺安政「グローバリゼーションと司法」及び林景一「仏ストラスブールの欧州人権裁判所」は,両判事自身が国際的な法秩序と司法について述べた裁判所の公表資料であり,外交実務経験者が司法を捉える視点を知る資料となる。

また,石兼公博は,裁判所の略歴欄で,40年以上にわたる行政官・外交官としての経験を踏まえて個別具体の案件に取り組む旨を述べている。

第4 現在の国際法局

1 所掌事務

外務省組織令12条は,国際法局の所掌事務として,国際法に係る外交政策,条約その他の国際約束の締結,国際約束及び確立された国際法規の解釈・実施,渉外法律事項,国際司法裁判所その他の国際機関に関する事務等を定めている。

国際法局は,外務省の地域別の外交を担当する局とは異なり,国際法及び国際約束に関する法的な検討を横断的に担う部局である。

2 内部組織と局長

外務省組織令78条以下によれば,国際法局には国際法課,条約課,経済条約課及び経済紛争処理課並びに社会条約官が置かれている。

外務省組織規則43条によれば,国際法課には海洋法室及び国際裁判対策室が置かれている。

外務省幹部名簿は令和8年8月7日現在の国際法局長を中村和彦と掲げており,外務省の国際法局案内には各課室の業務概要が掲載されている。

第5 出典

1 法令

① e-Gov法令検索「日本国憲法」

② e-Gov法令検索「外務省組織令」

③ e-Gov法令検索「外務省組織規則」

2 公的資料

① 裁判所「最高裁判所判事一覧表」

② 裁判所「石兼公博」

③ 外務省「令和5年12月26日付人事異動・石兼公博略歴」

④ 第159回国会衆議院憲法調査会最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会第3号(平成16年3月25日)

⑤ 外務省「外務省改革:これまでの取組みと現状」

⑥ 外務省「外務省機構改革最終報告」

⑦ 外務省「国際法局」

⑧ 外務省「幹部名簿」

⑨ 国立公文書館所蔵資料「外務省条約局長栗山茂高等試験常任委員被仰付ノ件」

⑩ アジア歴史資料センター「栗山茂」

⑪ 裁判所「司法の窓」第88号

⑫ 裁判所「司法の窓」第85号

3 文献

① 小森雄太「外務省国際法局研究序説―政軍関係への影響に注目して―」『政経研究』53巻2号(平成28年)103頁~134頁(歴代条約局長及び国際法局長一覧は113頁)