司法修習

司法修習生の採用選考の必要書類

目次
第1 はじめに
第2 提出書類の一覧
1 最高裁判所事務総局人事局任用課試験係に提出する書類(書留・速達)
2 司法研修所企画第二課調査係に提出する書類(簡易書留)
第3 追完できない書類及び追完可能な書類
第4 書類の記載方法等
第5 司法試験合格証書
第6 民間企業が採用選考する時に配慮すべきとされている事項
第7 犯罪経歴証明書及び犯罪人名簿における取扱い
第8 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと,及び最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
1 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと
2 最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
第9 就職希望者の前科前歴の秘匿に関する裁判例
第10 二回試験不合格者が再採用してもらう際の手続
第11 54期の司法修習生採用選考当時の提出書類
第12 かつて存在した司法修習生の国籍条項
第13 司法修習生採用選考の申込期間の適法性に関する東京地裁平成29年9月7日判決の判示内容
第14 関連記事その他

第1   はじめに
1 本ブログの記載は参考程度にとどめた上で,必ず裁判所HPで提出書類の書き方等を確認して下さい。
2 司法修習生の採用選考の必要書類は例年,以下のとおりでありますところ,コピーを提出してもいいものはありません。
3 提出書類の書式等は「司法修習生の採用選考に関する公式文書」に掲載しています。

第2 提出書類の一覧
1 最高裁判所事務総局人事局任用課試験係に提出する書類(書留・速達)
① 司法修習生採用選考申込書(署名・押印・写真貼付)
② 資格の登録抹消証明書(該当者だけ)(追完可能)
・ コピー不可です。
③ 資格に関する申述書(該当者だけ)
・ 資格の登録抹消証明書を提出しない場合に提出するものです。
④ 提出書類確認票
⑤ 司法試験合格証書のコピー(6年以上前の合格者に限る。)
⑥ 戸籍抄(謄)本又は住民票の写し(申込みの3ヶ月以内に発行されたもの)
・ コピー不可です。
・ 住民票の写しを提出する場合,本籍地及び戸籍筆頭者の記載がされており,個人番号(マイナンバー)が記載されていないものが必要です。
⑦ 成績証明書(追完可能)
・ コピー不可です。
・ 卒業・修了・退学年月の記載のあるもの
*1 73期司法修習生から,登記されていないことの証明書を提出する必要がなくなりました。
*2 74期司法修習生から,健康診断票の提出が不要になりました。
*3 75期司法修習生から,平成28年度以降の合格者は提出不要となりました。

2 司法研修所企画第二課調査係に提出する書類(簡易書留)
⑩ 実務修習希望地調査書
⑪ 身上報告書2部・カラー写真5枚
→ カラー写真(縦4cm,横3cm)5枚のうち,2枚は身上報告書に貼付し,残り3枚は写真用封筒に入れて送付します。


第3 追完できない書類及び追完可能な書類
1 追完できない書類
(1)   追完できない書類のうち,取得に時間がかかる書類は,⑨健康診断票でした。
   ただし,健康診断において要再検査の項目がある場合,再検査の項目については,9月末日頃までに再検査等結果報告書を提出すれば足ります。
(2) 74期以降の司法修習の場合,健康診断票の提出が不要になりました。
2 追完可能な書類
(1) 「司法修習生採用選考審査基準」(令和元年7月3日付)からすれば,⑤学校の成績証明書,⑥学校の卒業(退学)年月を証する書面,⑦退職証明書及び⑧資格の登録抹消証明書等は,司法修習生の採用選考における審査基準と直接の関係がないから,追完可能な書類となっているのかもしれません。
(2) 外部HPの「退職」に,退職証明書の追完日に関してブログ主が最高裁の担当者に問い合わせたときの体験談が書いてあります(リンク先のブログでは「法務省」と書いてありますが,「最高裁」の誤記と思います。)。


第4 書類の記載方法等
1 一晩待って作成した方がいいこと
   司法修習生採用選考申込書,実務修習希望地調査書,身上報告書及び入寮許可願については,最初は下書きを作成しながら推敲し,記入事項を完全に確定した後,一晩待って考えに変更がないかどうかを確認した上で,改めて一から書類を作成した方がいいと思います。
2 誤記等の訂正はしない方がいいこと
   二重線で誤記等の訂正をした場合,書類が汚くなります。
   そして,身上報告書は,司法研修所及び実務修習地の修習指導関係者など,多くの人の目に触れる書類です「司法修習生の身上報告書等の取扱いについて(平成28年11月9日付の司法研修所事務局長事務連絡)参照)から,少なくとも身上報告書については訂正のないものを提出した方がいいと思います。
3 写真撮影プラン
   東京都豊島区池袋にあるフォトスタジオアペックスHP「司法修習生用写真/写真名刺」に,合格時の書類提出用の,写真撮影のみのプランが載っています。


第5 司法試験合格証書
1 司法試験合格者が合格直後に司法修習生となる場合(例えば,令和元年度司法試験合格者が73期司法修習生となる場合),司法試験合格証書のコピーを提出する必要はありません。
   ただし,司法試験合格証書を受領するためには,6か月以内に作成された戸籍抄本又は本籍若しくは国籍の記載のある住民票等を用意して,合格した年の9月中に受領手続をしておく必要があります。
2 法務省HPの「平成28年司法試験の結果について」に載ってある「平成28年司法試験合格証書の交付について」を見れば司法試験合格証書の受領手続が分かります。
   毎年,同趣旨の説明文が法務省HPに載ってあります。


第6 民間企業が採用選考する時に配慮すべきとされている事項
1 厚生労働省HPの「公正な採用選考の基本」には以下の記載があります。
(3)採用選考時に配慮すべき事項
 次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握することや、cを実施することは、就職差別につながるおそれがあります。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
(2) 大阪市HPに「職業安定法(抄)、労働省指針(抄)」が載っています。
2 日弁連の,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言(平成28年10月7日付)には,「刑罰を受けることにより、一定の資格制限があり、刑を終えて(仮釈放を得て)社会に戻る人に、社会復帰の障害となるような資格制限が多く設けられていることは、今や時代錯誤である。」と書いてあります。


第7 犯罪経歴証明書及び犯罪人名簿における取扱い
1 犯罪経歴証明書における取扱い

(1)ア   犯罪経歴証明書発給要綱(平成31年3月29日警察庁刑事局長通達)によれば,以下の①ないし⑦のいずれかの場合に該当すれば,当該①ないし⑦に規定する犯罪については犯罪経歴を有しないものとみなしてもらえます。
① 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過しているとき。
② 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられられないで10年を経過しているとき。
③ 罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過しているとき。
④ 恩赦法の規定により大赦若しくは特赦を受け,又は復権を得たとき。
⑤ 道路交通法125条1項に規定する反則行為に該当する行為を行った場合であって、同条第2項各号のいずれにも該当しないとき。
⑥ 少年法60条の規定により刑の言渡しを受けなかったものとみなされたとき。
⑦ 刑の言渡しを受けた後に当該刑が廃止されたとき。
イ 警察庁HPには「犯罪経歴証明書発給要綱の運用について(通達)」が別途,掲載されています。
(2) 恩赦を受けた場合,犯罪経歴証明書発給申請書(別記様式第1号)の注記欄にあるとおり,同申請書と一緒に,特赦状,復権状等を提出する必要があります。

2 犯罪人名簿における取扱い
(1) 犯罪人名簿は,もともと大正6年4月12日の内務省訓令第1号により市区町村長が作成保管すべきものとされてきたものですが,戦後においては昭和21年11月12日内務省発地第279号による同省地方局長の都道府県知事あて通達によって選挙資格の調査等の資料として引きつづき作成保管され,昭和22年に地方自治法が施行されてのちも明文上の根拠規定のないまま従来どおり継続して作成保管されています(最高裁昭和56年4月14日判決における裁判官環昌一の反対意見参照)。
(2)ア 罰金以上の刑に処する裁判が確定した場合,地方検察庁の本庁の犯歴事務担当官は,本籍市区町村長に対し,既決犯罪通知書を送付してその裁判に関し必要な事項を通知します(犯歴事務規程3条4項)から,本籍市区町村長はこれによって犯罪歴を把握しています。
イ 前科登録と犯歴事務(五訂版)9頁には,「昭和35, 6年ころから道路交通法違反事件が急増し,従来の方式のままではその犯歴を適正かつ的確に登録管理することが不可能になったため, 同37年6月には,道路交通法違反の罪に係る裁判で罰金以下の刑に処したものについては,市区町村長に対する既決犯罪通知をしない取扱いが実施され」と書いてあります。
 そのため,道交法違反の罰金前科については,そもそも本籍市区町村の犯罪人名簿に記載されていません。
(3) 恩赦があった場合,地方検察庁の本庁の犯歴担当事務官は,本籍市区町村長に対し,恩赦事項通知書を送付して恩赦に関し必要な事項を通知します(犯歴事務規程4条及び8条)。
(4) 令和元年10月10日付の総務省の行政文書開示決定通知書によって開示された,刑の消滅等に関する照会の書式について(昭和34年8月13日付の自治庁行政局行政課長の通知)を掲載しています。
(5) 恩赦法に基づく復権の対象となった犯歴については,犯罪人名簿から削除されます。
(6) その余の詳細は「前科抹消があった場合の取扱い」を参照してください。


第8 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと,及び最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
1 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと
(1) 前科登録と犯歴事務(五訂版)26頁ないし28頁には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 検察庁における前科の調査回答は,検察,裁判の事務処理上これを必要とするものについて行われるものであることは犯歴把握の目的からみて当然のことであり,みだりに前科が他の目的に利用されることはない。
   したがって,一般人からの照会に対してはもちろん,法令に基づいて付与される特定の資格が前科のあることを欠格事由とする場合において, これを取り扱う主務官庁が欠格事由の有無の判断資料として前科を知る必要がある場合であっても,原則としてその照会には応じていない。
   行政官庁等からの法令上の欠格事由の調査のための前科照会に対する回答事務は,従前から地方公共団体が行ってきた身分証明事務に属するものと考えられているからである。
② 市区町村の犯罪人名簿の記載のみでは,恩赦に該当しているか,刑の言渡しの効力が失われているか等が明確でないときは,市区町村長から検察庁に照会が行われれば回答することになるが, この場合でも,道交犯歴については原則としてその調査は行われない。
   道交犯歴自体が法令上の欠格事由となることはごくまれにしかないからである。
③ 市区町村を含む行政官庁等からの前科の照会に対しては,特赦・大赦・復権のあった前科,刑法34条の2の規定により刑の言渡しの効力が失われた前科,執行猶予期間を経過した前科及び少年法60条1項又は2項の適用がある前科については回答されない。
(2) その余の詳細は「前科抹消があった場合の取扱い」を参照してください。
2 最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
(1) 最高裁昭和56年4月14日判決は以下のとおり判示しています(ナンバリングを追加しています。)。
① 前科及び犯罪経歴(以下「前科等」という。)は人の名誉、信用に直接にかかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するのであつて、市区町村長が、本来選挙資格の調査のために作成保管する犯罪人名簿に記載されている前科等をみだりに漏えいしてはならないことはいうまでもないところである。
② 前科等の有無が訴訟等の重要な争点となつていて、市区町村長に照会して回答を得るのでなければ他に立証方法がないような場合には、裁判所から前科等の照会を受けた市区町村長は、これに応じて前科等につき回答をすることができるのであり、同様な場合に弁護士法二三条の二に基づく照会に応じて報告することも許されないわけのものではないが、その取扱いには格別の慎重さが要求されるものといわなければならない。
(2) 最高裁昭和56年4月14日判決の判示と異なり,犯罪人名簿は,弁護士登録等のための資格調査でも利用されています(東京都HPの「○犯罪人名簿の取扱について」参照)。

第9 就職希望者の前科前歴の秘匿に関する裁判例
1 仙台地裁昭和60年9月19日判決(判例秘書に掲載)は,就職希望者の前科前歴の秘匿に関して以下のとおり判示しています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
①   使用者が雇用契約を締結するにあたつて相手方たる労働者の労働力を的確に把握したいと願うことは、雇用契約が労働力の提供に対する賃金の支払という有償双務関係を継続的に形成するものであることからすれば、当然の要求ともいえ、遺漏のない雇用契約の締結を期する使用者から学歴、職歴、犯罪歴等その労働力の評価に客額的に見て影響を与える事項につき告知を求められた労働者は原則としてこれに正確に応答すべき信義則上の義務を負担していると考えられ、
   したがつて、使用者から右のような労働力を評価する資料を獲得するための手段として履歴書の提出を求められた労働者は、当然これに真実を記載すべき信義則上の義務を負うものであつて、その履歴書中に「賞罰」に関する記載欄がある限り、同欄に自己の前科を正確に記載しなければならないものというべきである(なお、履歴書の賞罰欄にいう「罰」とは一般に確定した有罪判決(いわゆる「前科」)を意味するから、使用者から格別の言及がない限り同欄に起訴猶予事案等の犯罪歴(いわわゆる「前歴」)まで記載すべき義務はないと解される。)。

 そして、刑の消滅制度が、犯罪者の更生と犯罪者自身の更生意欲を助長するとの刑事政策的な見地から一定の要件のもとに刑の言渡しの効力を将来に向かつて失効させ、これにより犯罪者に前科のない者と同様の待遇を与えることを法律上保障しているとはいえ、同制度は、犯罪者の受刑という既往の事実そのものを消滅させるものではないし、またその法的保障も対国家に関するもので直接私人間を規律するものではないことからみても、同制度の存在が、当然には使用者に対し、前科の消滅した者については前科のない者と同一に扱わなければならないとの拘束を課すことになるものでないことはいうまでもない。
②   しかしながら、犯罪者の更生にとつて労働の機会の確保が何をおいてもの課題であるのは今更いうまでもないところであつて、既に刑の消滅した前科について使用者があれこれ詮策し、これを理由に労働の場の提供を拒絶するような取扱いを一般に是認するとすれば、それは更生を目指す労働者にとつて過酷な桎梏となり、結果において、刑の消滅制度の実効性を著しく減殺させ同制度の指向する政策目標に沿わない事態を招来させることも明らかである。
 したがつて、このような刑の消滅制度の存在を前提に、同制度の趣旨を斟酌したうえで前科の秘匿に関する労使双方の利益の調節を図るとすれば、職種あるいは雇用契約の内容等から照らすと、既に刑の消滅した前科といえどもその存在が労働力の評価に重大な影響を及ぼさざるをえないといつた特段の事情のない限りは、労働者は使用者に対し既に刑の消滅をきたしている前科まで告知すべき信義則上の義務を負担するものではないと解するのが相当であり、使用者もこのような場合において、消滅した前科の不告知自体を理由に労働者を解雇することはできないというべきである。
2 司法修習生の場合,既に刑の消滅した前科の存在が修習専念義務等の履行にどのような影響を及ぼすのかはよく分かりません。


第10 二回試験不合格者が再採用してもらう際の手続
1 かつて司法修習生であった者が,考試を再度受験するために司法修習生に再採用されることを希望する場合,司法研修所を経由して最高裁判所に採用選考の申し込みを行う必要があります(「司法修習生採用選考申込み(考試再受験希望者)について」参照)。
2(1) 平成29年度(最情)答申に第38号(平成29年10月2日答申)は以下の記載があります。
   本件開示文書には,司法修習生の採用選考における審査基準が記載されているところ,その記載内容を踏まえて検討すれば,司法修習生であった者が考試を再度受験するために再採用される際には,本件開示文書に基づいて審査が行われるのであり,本件開示文書以外に司法行政文書を作成し,又は取得する必要はないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において本件開示文書以外に本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
(2) 本件開示文書は「司法修習生採用選考審査基準(平成28年6月1日付け)」であり,本件開示申出文書は「司法修習生考試に不合格となった者を再び採用する際の,最高裁判所及び司法研修所内部の事務手続が分かる文書(最新版)」でありますところ,そこには以下の記載があります。
2 司法修習生採用選考申込者に次に掲げる事由があると認めるときは,これを不採用とする。
(中略)
(2) 司法修習生であった者が,次のいずれかに該当すること。
ア 修習態度の著しい不良その他の理由により修習をすることが不相当である者
イ 成績不良(裁判所法(昭和22年法律第59号)第67条第1項の試験の不合格を除く。)その他の理由により修習をすることが困難である者
ウ 裁判所法第67条第1項の試験に連続して3回合格しなかった者(再度司法試験法による司法試験に合格した者を除く。)。ただし,病気その他やむを得ないと認められる事情により,裁判所法第67条第1項の試験の全部又は一部を受験することができなかった場合には,当該試験については,受験回数として数えないものとすることができる。


第11 54期の司法修習生採用選考当時の提出書類
1 平成12年度採用の54期当時の司法修習生採用選考のための提出書類が,1999年度の司法試験合格者「さく」のHP「知られざる合格後」に載っています。
2   平成11年度司法試験の場合,平成11年10月29日に最終合格発表があり(日弁連HPの「平成11年度司法試験最終合格者発表に関する会長声明」参照),司法研修所への入所が平成12年4月1日頃でしたから,司法試験合格から司法研修所入所までに5ヶ月余りありました。


第12 かつて存在した司法修習生の国籍条項
1   昭和51年採用の30期までは,司法修習生採用選考要領の欠格事由が「日本の国籍を有しない者」となっていて,司法修習生となるためには帰化して日本国籍を取得する必要がありましたから,台湾国籍では司法修習生に採用されませんでした(神戸合同法律事務所HPの「吉井正明」参照)。
    しかし,昭和52年に在日韓国人の金敬得が帰化せずに31期司法修習生に採用されて以降,司法修習生採用選考要領の欠格事由が「日本の国籍を有しない者(最高裁判所が相当と認めた者を除く。)」となりました。
    そして,平成21年11月採用の司法修習生(新63期)から,司法修習生採用選考要領の欠格事由から「日本の国籍を有しない者」が削除されました(外部ブログの「「司法修習生は日本国籍必要」条項を削除 最高裁」参照)。
2 平成29年5月12日付の司法行政文書不開示通知書によれば,司法修習生採用に際しての国籍条項が廃止されるに至った経緯が分かる文書は,保存期間を満了しており廃棄済みです。
3 外国人登録原票は現在,法務省入国管理局で保管されています(法務省入国管理局HP「外国人登録原票を必要とされる方へ」参照)。

第13 司法修習生採用選考の申込期間の適法性に関する東京地裁平成29年9月7日判決の判示内容
・ 東京地裁平成29年9月7日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
(1) 裁判所法66条1項は,「司法修習生は,司法試験に合格した者の中から,最高裁判所がこれを命ずる。」と規定しているが,司法修習生採用選考の具体的な在り方については,何らの規定も設けられておらず,最高裁判所の合理的な裁量に委ねられていると解するのが相当である。そうだとすると,最高裁判所による司法修習生採用選考の在り方が国家賠償法1条1項の適用上違法とされることがあるとしても,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に限られるというべきである。
 そして,司法修習生採用選考において申込受付期間を設定している趣旨は,司法試験等に合格した者が,司法修習生採用選考に申し込むか否かを改めて検討し,申込書の作成,提出書類の準備,申込書等の提出のための手続をすることに一定の期間が必要であることを考慮したものであり,司法修習生の採用選考を行う最高裁判所としては,これらの点のほか,司法修習生の採用時期(司法修習の開始時期),採用までの審査,事務手続に要する期間をも考慮し,合理的な範囲で申込受付期間を決定することができるというべきである。
(2) そもそも,司法修習生採用選考は,一般に司法試験の受験を前提としており,司法修習生採用選考の申込者は,欠格事由の有無,原則として兼業が禁止されている司法修習中の生計について,司法試験を受験する時点からある程度見通しをもっているものと考えられる。前記第2の1,第3の1(1)のとおり,最高裁判所は,平成27年7月1日には同年度の司法修習生採用選考要領を公告し,同要領において,欠格事由,選考内容,選考の申込方法,申込受付期間,提出書類,申込書等用紙の入手方法を明らかにしており,その内容は,例年と大きく変わるものではなかったのであるから,司法修習生採用選考の申込みに当たって司法試験の合格後に新たに検討しなければならない事項はなかったということができる。欠格事由の内容を見ても,①禁錮以上の刑に処せられた者,②成年被後見人又は被保佐人(準禁治産者を含む。)及び③破産者で復権を得ない者とされ,その内容は,一義的に明らかであり,これに当たるか否かについて判断に迷うものではない。また,最高裁判所は,司法修習生採用選考の申込みに関する問合せ先が最高裁判所事務総局人事局任用課試験第一係であることも明らかにしており,司法試験の合格発表前から問合せに応ずる態勢を整えていること,申込書以外の各種書類について,発行手続を理由として提出が遅れる場合,採用発令日以降の提出も認めていることは,前記1(1)のとおりである。
(3) そうだとすると,司法修習生採用選考の申込受付期間が司法試験の合格発表日である平成27年9月8日(火曜日)から同月15日(火曜日)までの8日間であったとしても,司法修習生採用選考に申し込むか否かを改めて検討した上,申込書を作成し,提出書類の準備をしてこれらを郵送する手続をするための期間として不合理とまではいえないというべきである。そして,最高裁判所としては,同年11月末には司法修習生の採用を発令し翌月から司法修習の開始を予定していたところ,同年度に採用された司法修習生の人数は1787人に及んでおり,その採用のための審査にも相応の期間を要すると考えられることをも考慮すると,司法修習生採用選考の申込受付期間を司法試験の合格発表日から8日間とした最高裁判所の判断は,原告がるる主張する点を全て考慮しても,その裁量権の範囲内にあり,これを濫用したともいえないから,国家賠償法1条1項の適用上違法ということはできない。


第14 関連記事その他
1 72期司法修習生向けの修習給付金案内29頁には「修習給付金の支給及び修習専念資金の貸与については,司法修習生に対し個別の支払通知書書等等は発行しません。各種手続に必要がある場合には,最高裁判所ウェブサイトに掲載されている交付日一覧や振込を受けた金融機関の預貯金通帳等を利用してください。」と書いてあります。
    つまり,修習給付金等が入金される預貯金通帳については,そのコピーを税務署その他の関係先に提出する必要が出てくることがあります(例えば,修習給付金の確定申告に関して更正の請求をした場合)から,修習給付金とは関係のない入出金を税務署その他の関係先に知られたくない場合,修習給付金等の入金専用の預貯金口座を作成しておいた方がいいです。
2(1) 73期までは,
司法研修所(いずみ寮)総務課寮務係に提出する書類(簡易書留)(入寮希望者だけ)として以下のものがありました。
・ 入寮許可願
・ 84円相当の切手を貼付した返信用封筒(消費税・軽減税率情報Cafe「消費税10%増税で郵便料金も値上げ、はがき63円、手紙84円に」(2019年4月4日付)参照)
→ 令和元年9月30日までは消費税は8%でしたから,72期司法修習までは82円相当の切手を貼付していました。
(2) 74期及び75期の導入修習はオンライン形式で実施されましたから,これらの書類は不要でした。
3 日弁連HPの「司法修習生採用時の逮捕歴等による差別人権救済申立事件(要望)」には以下の記載があります。

最高裁判所長官宛要望

1994年3月28日

最高裁判所が司法修習生採用選考において、外国籍の者や逮捕歴・起訴歴を有する者に対して、本人の誓約書や保証人を求めていることは憲法等に違反するとして、司法修習生採用選考要項の「国籍条項」を削除するとともに、これらの差別的取扱・慣行を行わないよう要望した事例。

4  地方公務員である職員としての採用内定の通知がされた場合において,職員の採用は内規によって辞令を交付することにより行うこととされ,右採用内定の通知は法令上の根拠に基づくものではないなどといった事実関係があるときは,右採用内定の通知は事実上の行為にすぎず,右内定の取消しは,抗告訴訟の対象となる処分に当たりません(最高裁昭和57年5月27日判決)。
5 出入国在留管理庁HPの「平成28年4月1日から外国人入国記録・再入国出入国記録(EDカード)の様式が変わりました。」を見れば,外国人が日本に入国又は再入国する際,刑事事件における有罪判決の有無を聞かれることが分かります。
6 名古屋高裁令和4年11月15日判決(担当裁判官は38期の長谷川恭弘43期の末吉幹和及び47期の寺本明広)は,民法上の保佐(準禁治産)等の制度は,本人の財産権等を擁護することを目的とするもので,警備業法における規制とは制度の趣旨が異なり,これを借用して被保佐人(準禁治産者)であることを警備員の欠格事由と定めた警備業法の本件規定(14条,3条1号)は,その制定当初から,憲法14条1項(法の下の平等),22条1項(職業選択の自由)に反するものであったとした事例です。
7 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の採用選考に関する公式文書
・ 司法修習生採用選考の内容の変化(6期以降)
・ 司法修習生の国籍条項に関する経緯
・ 司法修習生の採用選考に必要な書類の掲載時期
・ 二回試験不合格時の一般的な取扱い
・ 司法修習生の司法修習に関する事務便覧
・ 司法修習生の旅費に関する文書
・ 採用内定留保者に対する面接(司法修習)
・ 司法修習開始前に送付される書類
・ 司法研修所の沿革
・ 恩赦の効果
・ 前科抹消があった場合の取扱い

司法修習生の採用選考に必要な書類の掲載時期

目次
1 司法修習生の採用選考に必要な書類の掲載時期
◯77期司法修習生の場合
◯76期司法修習生の場合
◯75期司法修習生の場合
◯74期司法修習生の場合
◯73期司法修習生の場合
◯72期司法修習生の場合
◯71期司法修習生の場合
2 関連記事

* 77期司法修習を最後に更新を停止しました。

◯77期司法修習生の場合
(1) 裁判所HPの「司法修習生採用選考」に,令和5年7月1日(金),司法修習生採用選考審査基準及び司法修習生採用選考要項が掲載され,同年8月1日(月),採用選考申込みに必要となる提出書類一式が掲載され,同年10月30日(月),採用選考申込みに必要となる提出書類一式が掲載されました。
(2) アドレスは「https://www.courts.go.jp/saikosai/sihokensyujo/sihosyusyu/saiyo_senkou/index.html」です(74期ないし76期とは異なります。)。

◯76期司法修習生の場合
(1) 裁判所HPの「司法修習生採用選考」(リンク切れ)に,令和4年7月1日(金),司法修習生採用選考審査基準及び司法修習生採用選考要項が掲載され,同年8月1日(月),採用選考申込みに必要となる提出書類一式が掲載されました。
(2) アドレスは「https://www.courts.go.jp/saikosai/sihokensyujo/saiyo_senkou/index.html」です(74期及び75期と同じです。)。

75期司法修習生の場合
(1) 裁判所HPの「司法修習生採用選考」(リンク切れ)に,令和3年7月1日(木),司法修習生採用選考審査基準及び司法修習生採用選考要項が掲載され,同年8月2日(月),採用選考申込みに必要となる提出書類一式が掲載されました。
(2) アドレスは「https://www.courts.go.jp/saikosai/sihokensyujo/saiyo_senkou/index.html」です(74期と同じです。)。

◯74期司法修習生の場合
(1) 裁判所HPの「司法修習生採用選考」(リンク切れ)に,令和2年12月1日(火),司法修習生採用選考審査基準及び司法修習生採用選考要項が掲載され,同月8日(火),採用選考申込みに必要となる提出書類一式が掲載されました。
(2) アドレスは「https://www.courts.go.jp/saikosai/sihokensyujo/saiyo_senkou/index.html」です。

◯73期司法修習生の場合
(1)   裁判所HPの「司法修習生採用選考」(リンク切れ)に,令和元年7月5日(金),令和元年度司法修習生採用選考要項及び健康診断票の書式等が掲載され,令和元年8月1日,司法修習生採用選考に必要な書類が一通り掲載されました。
(2)   令和元年7月5日時点と同年8月1日時点とでは,「司法修習生採用選考」のアドレスが少し変わっています(「saiyo_senkou_01」が「saiyo_senkou_012」になっています。)。

◯72期司法修習生の場合
(1)  裁判所HPの「司法修習生採用選考」(リンク切れ)に,平成30年7月2日(月),平成30年度司法修習生採用選考要項及び健康診断票の書式等が掲載され,平成30年8月1日(月),司法修習生採用選考に必要な書類が一通り掲載されました。
(2) 平成30年7月2日時点と同年8月1日時点とでは,「司法修習生採用選考」のアドレスが少し変わっています(「saiyo_senkou_30」が「saiyo_senkou_303」になっています。)。

◯71期司法修習生の場合

(1) 裁判所HPの「司法修習生採用選考」(リンク切れ)に,平成29年7月3日(月),平成29年度司法修習生採用選考要項及び健康診断票の書式等が掲載され,平成29年8月1日(火),司法修習生採用選考に必要な書類が一通り掲載されました。
(2) 平成29年7月3日時点と同年8月1日時点とでは,「司法修習生採用選考」のアドレスが少し変わっています(「saiyo_senkou_29」が「saiyo_senkou_29-2」になっています。)。

2 関連記事
・ 司法修習生の採用選考の必要書類
・ 司法修習生の採用選考に関する公式文書
→ 司法修習生採用選考審査基準,毎年どの司法修習生採用選考要項,提出書類の書式等を載せています。
 司法修習生の国籍条項に関する経緯
・ 司法修習生の司法修習に関する事務便覧
・ 司法修習生の旅費に関する文書
 採用内定留保者に対する面接(司法修習)
・ 司法修習開始前に送付される書類
・ 司法研修所の沿革
 恩赦の効果
・ 前科抹消があった場合の取扱い

採用内定留保者に対する面接(司法修習)

目次
1 司法修習生採用選考要項の記載等
2 不採用者が出た修習期等
3 司法修習生採用選考面接及び面接留保通知書
4 弁護士登録の場合の取扱い
5 犯罪経歴証明書における取扱い
6 関連記事その他

1 司法修習生採用選考要項の記載等
(1) 72期司法修習生の場合
ア 平成30年7月18日付の,平成30年度司法修習生採用選考要項の2(1)には,「ウ 面接  ア,イの結果,必要があると認めた場合に実施する。」と書いてありますし,司法修習生採用選考申込書(「72期司法修習の提出書類の記載例等」参照)には「13 不採用事由等の有無」欄があります。
イ   健康診断の結果が非常に悪かったり,重大な既往歴があったり,重大な身体上の障害があったりした場合,「心身の故障により修習をすることが困難である者」に該当する可能性があります。
   また,過去に起訴(略式起訴を含む。)又は逮捕(補導)されたことがある場合,「品位を辱める行状により,司法修習生たるに適しない者」に該当する可能性があります。
   そのため,これらの事情がある場合,最高裁判所又は司法研修所において面接の必要があるということで採用内定を留保されて,面接通知書が届くかもしれません。
ウ 逮捕歴等については,司法修習生採用選考申込書の「14 備考」欄に詳しく記載する必要があります(「平成30年度司法修習生採用選考申込書の記載要領」9頁参照)。
エ 「心身の故障により修習をすることが困難である者」又は「品位を辱める行状により,司法修習生たるに適しない者」以外の事由については形式的事由のため,書面で一義的に判断できるものばかりです。
   そのため,これら以外の事由に基づいて面接通知書が届くことはないと思います(「平成30年度司法修習生採用選考申込書の記載要領」8頁及び9頁参照)。
(2) 73期以降の司法修習生の場合
   特に変更はないと思います。


2 不採用者が出た修習期等
(1) 66期以降の場合,採用要審議者名簿又は重点審議者名簿に搭載された司法修習予定者は毎年いたものの,不採用者が出たのは66期,70期及び71期だけみたいです(「司法修習生の採用選考で不合格となった人が出た修習期等」参照)。
    そのため,面接通知書が届いたとしても,結論ありきの面接ではないのであって,罰金前科等については当時の行いについて真摯に反省していることを面接で説明し,健康不良については家族のサポート等により問題なく修習をすることができることを面接で説明すれば,無事に採用してもらえる可能性の方が高いと思います。
(2) 弁護士法人アディーレ法律事務所(同法人に対する平成29年10月11日の業務停止2月につき「弁護士の懲戒」を参照してください。)の代表社員であった石丸幸人弁護士(56期)の場合,酒気帯び運転で3回逮捕され,懲役9月執行猶予4年の有罪判決を受けて勤務先を懲戒解雇されています(Wikipediaの「石丸幸人」参照)が,普通に司法修習を経て弁護士となっています。
(3) 71期司法修習予定者の場合,平成29年11月9日付の「実務修習地等について(通知)」を送付された人がいます。
   そのため,採用内定留保者になったことが直ちに不採用を意味するわけではないみたいです。
(4) 平成30年7月20日付の答申書によれば,第71期司法修習生の採用選考申込において不合格となった人の数が明らかになった場合,不採用者が特定される可能性や不採用となった理由が特定される可能性があることから,個人識別情報として不開示情報となるとのことです。


3 司法修習生採用選考面接及び面接留保通知書
(1)   司法修習生採用選考面接及び面接留保通知書等を以下のとおり掲載しています(ファイル名は「第◯◯期司法修習生採用選考面接に関する文書」といったものです。)。
71期72期73期74期75期
76期77期78期,79期,80期,
(2) 採用面接の実施場所については,「最高裁判所庁舎」を参照してください。
(3) 国土交通省HPの「霞が関の主要施設」の中に「最高裁判所庁舎」が載っています。
(4) 河原崎法律事務所HP「前科があっても弁護士になれますか」には以下の記載があります。
   刑法27条で、執行猶予期間を経過すれば、刑の言渡しの効力はなくなり、欠格事由はなくなります。 まず、司法修習生に採用される時期に、無事、執行猶予期間が経過して、欠格事由がなくなっている必要があります。このときは、厳重に注意を受けるでしょう。罰金刑の場合でも、厳重に注意されます。



4 弁護士登録の場合の取扱い
(1) 東京弁護士会入会手続案内(70期司法修習終了予定 弁護士名簿登録希望者各位)には,「履歴書に罰(刑事処分・保護観察処分、公務員としての懲戒処分、注意処分等)のある方は、上申書(日本弁護士連合会会長宛1部、東京弁護士会会長宛1部)の提出が必要になります。罰の事実の内容及び情状等参考になる事情を記載してください。」と書いてあります。
(2) ちなみに,日弁連の,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言(平成28年10月7日付)には,「刑罰を受けることにより、一定の資格制限があり、刑を終えて(仮釈放を得て)社会に戻る人に、社会復帰の障害となるような資格制限が多く設けられていることは、今や時代錯誤である。」と書いてあります。

5 犯罪経歴証明書における取扱い
(1)ア   犯罪経歴証明書発給要綱(平成31年3月29日警察庁刑事局長通達)によれば,以下の①ないし⑦のいずれかの場合に該当すれば,当該①ないし⑦に規定する犯罪については犯罪経歴を有しないものとみなしてもらえます。
① 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過しているとき。
② 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられられないで10年を経過しているとき。
③ 罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過しているとき。
④ 恩赦法の規定により大赦若しくは特赦を受け,又は復権を得たとき。
⑤ 道路交通法125条1項に規定する反則行為に該当する行為を行った場合であって、同条第2項各号のいずれにも該当しないとき。
⑥ 少年法60条の規定により刑の言渡しを受けなかったものとみなされたとき。
⑦ 刑の言渡しを受けた後に当該刑が廃止されたとき。
イ 警察庁HPには「犯罪経歴証明書発給要綱の運用について(通達)」が別途,掲載されています。
(2) 恩赦を受けた場合,犯罪経歴証明書発給申請書(別記様式第1号)の注記欄にあるとおり,同申請書と一緒に,特赦状,復権状等を提出する必要があります。


6 関連記事その他
1(1) 電電公社近畿電通局事件に関する最高裁昭和55年5月30日判決は,採用内定により労働契約の効力発生の始期を採用通知に示された採用の日とする解約権留保付労働契約が成立したものと認められた事例です。
(2) 労務事情1452号(2022年7月15日号)の「採用にまつわる労務管理上の諸問題への対応」には以下の記載があります(労務事情1452号・7頁)。
    採用内定から入社日まである程度の拘束関係(例えば,就業規則所定の服務規律を適用する等)が予定されていれば,採用内定によって解約権留保付労働契約は成立し,効力も発生しますが,就労(労働)義務だけは(したがって賃金支払義務も)入社日に発生すると解することになるでしょう。
2 以下の記事も参照してください。
 司法修習生の採用選考の必要書類
 司法修習生の採用選考で不合格となった人が出た修習期等
 司法修習開始前に送付される資料
 恩赦の効果
・ 
交通事故等の刑事責任及び資格制限その他の不利益
・ 事件記録等保存規程
・ 交通事故事件の刑事記録の入手方法

司法修習生の採用選考で不合格となった人が出た修習期等

目次
1 司法修習生の採用選考申込みで不合格となった人に関する文書
2 司法修習生の採用選考手続に関して存在しない文書
3 地裁で罰金刑を受けて控訴中であったことに基づく不採用事例等
4 関連記事その他

1 司法修習生の採用選考申込みで不合格となった人に関する文書
(1) 以下の文書を掲載しています。
・ 平成29年6月23日付の司法行政文書不開示通知書
→ 59期から新61期まで,新62期,新63期から新65期まで,67期から69期までについて,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人の数が修習期ごとに分かる文書は存在しません。
・ 現行62期,現行63期及び66期採用時の最高裁判所裁判官会議議事録
→ これらの期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人がいたとのことです。
・ 70期採用時の最高裁判所裁判官会議議事録
→ 70期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人がいたとのことです。
 71期採用時の最高裁判所裁判官会議議事録
→ 71期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人がいたとのことです。
・ 平成31年1月23日付の司法行政不開示通知書
→ 72期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人の数が分かる文書は存在しません。
・ 令和2年1月29日付の司法行政文書不開示通知書
→ 73期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人の数が分かる文書は存在しません。
・ 令和3年6月2日付の司法行政文書不開示通知書
→ 74期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人の数が分かる文書は存在しません。
・ 令和4年3月28日付の司法行政文書不開示通知書
→ 75期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人の数が分かる文書は存在しません。
・ 令和5年5月2日付の司法行政文書不開示通知書
→ 76期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人の数が分かる文書は存在しません。
・ 令和6年11月1日付の司法行政文書不開示通知書
→ 77期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人の数が分かる文書は存在しません。
・ 78期採用時の最高裁判所裁判官会議議事録
→ 78期について,司法修習生の採用選考申込みに不合格となった人がいたとのことです。
(2) 70期司法修習生の採用に際しては,「禁錮以上の刑に処せられた者」という司法修習生の不採用事由がある人について不採用とされました(司法修習生たる地位義務付け請求事件に関する東京地裁平成29年2月28日判決(判例秘書に掲載)参照)。
(3) 以上の文書からすれば,59期以降について,司法修習生の採用選考で不合格となった人が出た修習期は現行62期,現行63期,66期,70期,71期及び78期だけであると思われます。


2 司法修習生の採用選考手続に関して存在しない文書
(1) 平成29年6月19日付の司法行政文書不開示通知書によれば,以下の文書は存在しません。
① 精密検査が必要と判定された結果,最高裁判所での健康診断を実施した人の数が分かる文書
② 採用選考申込者のうち,修習に耐えられる健康状態ではないという理由で不採用になった人の数が分かる文書
③ 採用申込みに当たって虚偽の申告をしたという理由で採用内定が取り消された人の数が分かる文書
(2) 平成30年11月13日付の理由説明書によれば,71期司法修習生採用選考手続において,最高裁判所での健康診断は実施されませんでした。

3 地裁で罰金刑を受けて控訴中であったことに基づく不採用事例等
(1) 昭和30年6月3日に発生した,滝川幸辰京大総長に対する暴行事件(「第二次滝川事件」といわれることがあります。)で起訴された人は事件発生当時,京大法学部生でしたところ,昭和35年度司法試験に合格しました。
   しかし,その人は,京都地裁昭和33年4月16日判決(判例秘書に掲載されています。)により傷害罪では無罪となったものの,不退去罪で罰金2000円に処せられたため,控訴中の被告人であったことを理由に,昭和36年4月採用の15期司法修習生にはなれませんでした。
   その後,大阪高裁昭和37年10月17日判決(判例秘書に掲載されています。)により不退去罪でも無罪となりましたから,昭和38年4月採用の17期司法修習生になりました。
(2) 32期の伊藤茂昭弁護士(平成27年度東京弁護士会会長)が発行している白い雲2018年初夏号(Vol.65)には,学生運動の激しかった当時の司法試験合格者の中には,合格した年に司法修習生になれなかった人が何人かいたという趣旨の記載があります。

4 関連記事その他
(1) 令和2年度(最情)答申第27号(令和2年10月27日答申)には以下の記載があります。
    当委員会庶務を通じて確認した結果によれば,「司法修習生採用選考申込書」の「12 不採用事由等の有無」欄に,「(3)審査基準(2)ア(エ)関係」として,「かつて起訴(略式起訴を含む。)又は逮捕(補導)されたことの有無」を記載する箇所があることが認められ,また,「令和元年度司法修習生採用選考要項」には,上記司法修習生採用選考審査基準が掲載されており,同審査基準(2)ア(エ)は,司法修習生の不採用事由の一つとして,「品位を辱める行状により,司法修習生たるに適しない者」を掲げていることが認められる。これらの各文書の記載内容を踏まえれば,「司法修習生採用選考申込書」において逮捕歴及び補導歴を記載させる理由は明らかであるということができるから,このほかに同申込書の記載欄の一つ一つにつき,それぞれ申込者に記載をさせる理由を説明した文書が存在することは通常考え難い。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の採用選考の必要書類
・ 採用内定留保者に対する面接(司法修習)
・ 司法修習生の採用に関する最高裁判所の裁判官会議議事録の本文

司法修習生の身上報告書等の取扱い

目次
第1 司法修習生の身上報告書等の取扱い
第2 関連記事その他

第1 司法修習生の身上報告書等の取扱い
・ 司法修習生の身上報告書等の取扱いについて(平成28年11月9日付の司法研修所事務局長事務連絡)の本文は以下のとおりです。

1 身上報告書の取扱いについて 
   身上報告書に記載された司法修習生の個人情報は,各配属庁会の司法修習における司法修習生の指導,監督及び司法修習に関する各種事務手続に使用する目的で提出させているものであり,その情報の管理,使用に当たっては,上記の目的及び法の趣旨を踏まえた上で,外部との関係はもとより,司法修習生に対する関係でも慎重に取り扱ってください(各配属庁会において独自に司法修習生から提出させた書面についても同様。)。
2 弁護士会における司法修習生の個人情報(身上報告書を含む。)の提供について
(1) 司法修習生本人の同意が不要な場合
ア 司法研修所に対して,司法修習生の個人情報を提供するとき。
イ 弁護士会が選任した司法修習委員会を構成する弁護士及び個別指導担当弁護士に対して,司法修習生の個人情報を提供するとき。
(2) 司法修習生本人の同意が必要な場合
    選択型実務修習において,裁判所,検察庁及び弁護士会以外の修習先に対して,司法修習生の個人情報を提供するとき。
    なお,提供する情報は,修習内容や修習先の事情等を踏まえ,氏名,性別にとどめるなど,必要最小限のものとしてください。


第2 関連記事その他
1 70期旭川修習の配置換えに際しては,配置換えされた3人の司法修習生の身上報告書が変更後の実務修習地に送付されました(①70期旭川修習の配置換えに関する旭川地裁の開示文書,及び②70期旭川修習の配置換えに関する最高裁判所の開示文書参照)。
2 以下の記事も参照してください。
① 司法修習生の採用選考の必要書類
② 司法修習生採用選考申込時の健康診断
③ 司法修習生の名刺
④ 司法修習開始前に送付される資料
⑤ 採用内定留保者に対する面接(司法修習)
⑥ 司法修習の場所を選ぶ際の基礎データ
⑦ 第2希望の実務修習地の選び方
⑧ 実務修習地の決定方法等に関する国会答弁

法科大学院在学中の司法試験合格者,及び判事補任官の最年少記録等

目次
1 法科大学院在学中の司法試験合格者
2 判事補任官の最年少記録等
3 関連記事

1 法科大学院在学中の司法試験合格者
(1) 平成28年9月26日の第76回法科大学院特別委員会の配付資料2-9「平成28年司法試験最終学歴(出願時)別合格者一覧(予備合格者)」によれば,法科大学院2年在学中に予備試験に合格した人が76人(うち,東京大法科大学院が42人,京都大法科大学院が12人,慶応義塾大法科大学院が9人,中央大法科大学院及び一橋大法科大学院が4人)となっています。
   法科大学院2年在学中に予備試験に合格した場合,法科大学院を中退していない限り,法科大学院3年在学中に司法試験を受けることとなりますから,このような人が,法科大学院在学中に司法試験に合格した人に該当すると思われます。
(2) 東京大法科大学院の入学者,在籍者,修了者及び司法試験合格者については,東京大学法科大学院HPの「法科大学院概要」にある「東京大学法学政治学研究科法曹養成専攻概要 別紙」に書いてあります。

2 判事補任官の最年少記録等
(1)  同資料2-9によれば,大学2年在学中に予備試験に合格した人が4人,大学3年在学中に予備試験に合格した人が16人,大学4年在学中に予備試験に合格した人が49人います。
(2)ア 令和6年1月現在,判事補任官の最年少記録は以下のとおりですから,早期卒業した75期の小林郁也裁判官を除き,大学4年生の11月から翌年3月の卒業までの間,学部生と司法修習生を兼職していたのかもしれません。
1位:76期の奥田紗永裁判官(平成13年3月30日生。22歳 9月)
2位:75期の小林郁也裁判官(平成12年3月15日生。22歳10月)
→ 令和6年7月6日に24歳3月で依願退官し,52期の岡田邦恵裁判官(24歳8月で死亡退官)の最年少退官記録を更新しました。
3位:69期の樋口瑠惟裁判官(平成 6年3月 3日生。22歳10月)
イ 77期の判事補任官は令和7年5月上旬頃と思われますから,76期の奥田紗永裁判官の判事補任官の最年少記録を更新するためには,平成14年7月下旬以降に生まれた人(大学入学は令和3年4月です。)が,大学3年生の令和6年3月21日から司法修習生を兼職し,大学4年生の令和7年3月上旬に二回試験を受験する必要があることになります。


3 関連記事
・ 法科大学院派遣裁判官名簿(平成16年度以降)
・ 新任判事補任命の閣議決定及び官報掲載の日付

登記されていないことの証明書

目次
1 総論
2 登記されていないことの証明申請書
3 令和元年6月施行の,成年後見制度適正化法

1 総論
(1) 登記されていないことの証明書(後見登記等に関する法律4条1項・後見登記等に関する省令17条2項3号)の発行手続は,東京法務局後見登録課,全国の法務局・地方法務局(本局)の戸籍課の窓口で行っています。
   登記されていないことの証明書を取得するためには,直接,法務局の担当窓口に行くか,東京法務局後見登録課宛に郵送で申請する必要があります。
(2) 登記されていないことの証明書を窓口で取得する場合,運転免許証,健康保険証,パスポート等の,住所,氏名及び生年月日が分かる書類を提示する必要があります。
(3)   東京法務局の場合,「〔処理期間〕申請書を受領してから発送するまで2~3日,したがいまして,申請書を郵送されてから証明書がお手元に届くまで約1週間~10日程度となっております。」(東京法務局HPの「登記されていないことの証明書の申請方法」参照)とのことです。
   そのため,1週間以内に確実に取得するためには,全国の法務局・地方法務局(本局)の戸籍課の窓口に行って取得する必要があります。
(4)ア 大阪法務局本局の場合,2階の後見登記証明書発行窓口が担当しています(案内図につき大阪法務局HPの「大阪法務局(本局)」参照)。
イ 窓口取扱時間は午前8時30分から午後5時15分までですし,土日祝日は業務を行っていません(大阪法務局HPの「窓口取扱時間等のご案内」参照)。

2 登記されていないことの証明申請書
(1) 「登記されていないことの証明申請書」には300円の収入印紙を貼付する必要があります。
(2)   「証明を受ける方」欄については,住所又は本籍のいずれかを申請書に記載すればいいです(後見登記等に関する省令17条2項4号「証明の対象となる者の氏名、出生の年月日及び住所又は本籍」参照)。
(3) 法務局HPの「登記されていないことの証明申請書」に,記載例が載っています。
(4) 「登記されていないことの証明書」は,自筆した申請書の一部をスキャナーか何かでそのまま取り込んで,その取り込んだ部分を活用して作成されます。
(5) 行政書士こばやし事務所HPの「登記されていないことの証明書の申請」に,証明書を取得した際の体験談が載っています。

3 令和元年6月施行の,成年後見制度適正化法
(1) 成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年6月14日法律第37 号)(略称は「成年後見制度適正化法」です。)が公布日に施行されたことに伴い,成年被後見人等であることが司法修習生採用の欠格事由から外れました。
   そのため,73期以降の司法修習生となる場合,「登記されていないことの証明書」を提出する必要がなくなりました。
(2) 例えば,令和元年度司法修習生採用選考要項(令和元年7月3日付)では,司法修習生の採用選考における提出書類として,「登記されていないことの証明書」は含まれていません。
(3) 「登記されていないことの証明書」は,弁護士登録をする際にも必要でしたが(改正前の弁護士法7条4号),現在は不要です

外国人技能実習生と司法修習生との比較

目次
1 外国人技能実習生の場合
2 司法修習生の場合
3 外国人技能実習生は労働者として雇用保険被保険者となること
4 アジア諸国の外国人労働者受入れ制度の概要
5 関連記事その他

1 外国人技能実習生の場合
(1) 外国人技能実習生は,入国直後の原則2か月間の講習期間が過ぎると,雇用関係の下,労働関係法令等が適用されます(外国人技能実習機構HPの「技能実習制度の仕組み(新制度の内容を含む。)参照)から,賃金があります。
(2) 男女雇用機会均等法の適用もありますから,妊娠した場合でも解雇されることはありません。
(3) 公益財団法人国際研修協力機構(略称は「JITCO」です。)HPの「研修生・技能実習生の講習手当・研修手当・賃金情報について」によれば,平成21年度の調査では,技能実習生の全業種平均給与額は14.3万円でした。

2 司法修習生の場合
(1)   司法修習生は,1年の修習期間中,労働者ではない点で労働関係法令等が適用されませんから,賃金はありません。
(2)   妊娠した場合,導入修習,集合修習といったそれぞれの修習単位について半分までの欠席しか認められていません(民間労働者の場合,産後6週間の女性の就業が禁止されていることにつき労働基準法65条2項ただし書参照)。
    そのため,いったん罷免された上で,次年度の司法修習生として再採用される必要があります。
(3) 65期ないし70期の司法修習生は無給ですし,71期以降の司法修習生の修習給付金は13万5000円です。
(4) 平成29年11月1日施行の改正裁判所法68条1項は,最高裁判所は,司法修習生に成績不良,心身の故障その他のその修習を継続することが困難である事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは,最高裁判所の定めるところにより,その司法修習生を罷免できることが明記しました。
    また,同法68条2項は,司法修習生に品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由として最高裁判所の定める事由があるときは,最高裁判所の定めるところにより,その司法修習生を罷免し,その修習の停止を命じ,又は戒告できることを明記しました。

3 外国人技能実習生は労働者として雇用保険被保険者となること
・ 雇用保険に関する業務取扱要領20352(2)「労働者の特性・状況を考慮して判断する場合」には「 外国人技能実習生」として以下の記載があります(リンク先の25頁)。
    諸外国の青壮年労働者が、我が国の産業職業上の技術・技能・知識を習得し、母国の経済発展と産業育成の担い手となるよう、日本の民間企業等に技能実習生(在留資格「技能実習 1 号イ」、「技能実習 1 号ロ」、「技能実習 2 号イ」及び「技能実習 2 号ロ」の活動に従事する者)として受け入れられ、技能等の修得をする活動を行う場合には、受入先の事業主と雇用関係にあるので、被保険者となる。
    ただし、入国当初に雇用契約に基づかない講習(座学(見学を含む)により実施され、実習実施期間の工場の生産ライン等商品を生産するための施設における機械操作教育や安全衛生教育は含まれない。)が行われる場合には、当該講習期間中は受入先の事業主と雇用関係にないので、被保険者とならない。

4 アジア諸国の外国人労働者受入れ制度の概要

(1) 首相官邸HPの「アジア諸国の外国人労働者受入れ制度の概要」にあるとおりです。
(2) リンク先3頁には以下の記載がありますから,シンガポールの外国人家事労働者は,平成29年司法試験論文式試験(公法系)第1問で出てきた「特定労務外国人」に近いです。
   シンガポールでは、外国人の家事労働者や介護労働者等に対する人権侵害や暴力などが深刻な社会問題となっており、外国人家事労働者の自殺者も多いと言われている。また、妊娠検査を義務づけ、妊娠した労働者の強制退去、シンガポール人との結婚を認めないなど、制度自体も人権上問題が多いとの批判が強い。


5 関連記事その他
(1) 技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議は,令和5年11月30日,法務大臣に対し,最終報告書概要)を提出しました。
(2)ア 厚生労働省HPの「外国人技能実習制度について」「外国人技能実習制度について」(技能実習法・主務省令等の周知資料)が載っています。
イ 技能実習生が技能実習1号から技能実習2号,技能実習2号から技能実習3号に移行するためには,技能検定に合格する必要があります(厚生労働省HPの「技能実習生等向け技能検定の概要」参照)。
ウ 技能実習3号は,平成29年11月1日施行の技能実習法に基づいて創設された制度です。
(3)ア 公益財団法人国際研修協力機構(略称は「JITCO」です。)HP「外国人技能実習制度とは」には以下の記載があります。
    外国人技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転することによって、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として1993年に創設された制度です。
    2017年11月、「外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行され、新たな技能実習制度がスタートしました。
(中略)
    受け入れる方式には、企業単独型と団体監理型の2つのタイプがあります。
    2021年末では企業単独型の受入れが1.4%、団体監理型の受入れが98.6%(技能実習での在留者数ベース)となっています。
イ JITCO HPに「送出し国・送出機関とは」が載っています。
(4)ア 認可法人としての外国人技能実習機構(略称は「OTIT」です。)は平成29年1月25日に設立登記され,同年3月1日,東京都港区に事務所を開設しましたところ,PR TIMESの「【技能実習生 受入企業様向け】「監査事前チェックシート」 Excelデータを無料配信」には以下の記載があります。
    技能実習生を受け入れている企業様では、2~3年の間に漏れなく外国人技能実習機構の監査が行われます。
    監査は、技能実習機構の職員による「予告なしの受入れ事業所訪問」にはじまり、「技能実習計画に沿って正しく実習が行われているか」「労働基準法に則って運用されているか」など細かくチェックされます。
イ 厚生労働省HPに「監理団体による監査のためのチェックリスト」が載っています。
(5) 厚生労働省HPの「外国人技能実習制度における養成講習について」には以下の記載があります。
    技能実習制度においては、監理団体において監理事業を行う事業所ごとに選任することとされている監理責任者、監理団体が監理事業を適切に運営するために設置することとされている指定外部役員又は外部監査人、実習実施者において技能実習を行わせる事業所ごとに選任することとされている技能実習責任者については、いずれも3年ごとに、主務大臣が適当と認めて告示した機関(養成講習機関)によって実施される講習(養成講習)を受講していただく必要があります。
(6)ア 21世紀マンパワー事業協同組合HPに「外国人技能実習生受け入れの流れ」が載っています。
イ 協同組合ビジネスナビHPの「外国人技能実習制度について」には,技能実習生を受け入れるための要件が書いてあります。
(7)ア 監理団体は,団体監理型実習実施者等から受領する監理費を除いて,いかなる名義でも手数料又は報酬を受けてはならないことになりません(技能実習法28条)から,例えば,外国の送出機関からキックバックなどの利益を得ることはできません。
    また,監理団体と取次送出機関との間で,技能実習生が失踪した場合等技能実習に係る契約の不履行について,違約金を定める契約を結ぶことも認められません(技能実習法施行規則52条5号)。
イ デイリー新潮HPに「「拡大する仲介産業」「高額手数料」の背景に潜むベトナム「実習生ビジネス」」が載っています。
ウ 最高裁令和6年4月16日判決は, 外国人の技能実習に係る監理団体の指導員が事業場外で従事した業務につき、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例です。
(8) JITCO HPの「在留資格「特定技能」とは」には以下の記載があります。
    特定技能制度は、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。2018年に可決・成立した改正出入国管理法により在留資格「特定技能」が創設され、2019年4月から受入れが可能となりました。
(9) 二弁フロンティア2022年12月号「入管法改正問題の現在地」が載っています。
(10) 以下の記事も参照して下さい。
・ 業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較
・ 民間労働者と司法修習生との比較

業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較

目次
第1 民間労働者の場合
1 労働基準監督署による調査,及び労災保険給付
2 精神障害の労災補償
3 協会けんぽの現金給付受給者状況調査
4 第6次医療計画において精神疾患が既存の4疾病に追加されたこと
5 その余の詳細
第2 司法修習生の場合
1 国家公務員災害補償の対象となる可能性があること等
2 公務災害の認定をしてくれなかった場合の不服申立方法等
3 過失相殺なしの損害賠償責任と直結しているかもしれないこと
4 損害賠償請求訴訟に関する審理の経過及び予定は逐次,最高裁判所事務総局に報告されること
5 裁判所の責任者
6 公務災害の認定がされた場合の影響
7 自殺等の状況
第3 精神障害者の取扱いに関するメモ書き
1 戦前の取扱い
2 戦後の取扱い
第4 関連記事その他

第1 民間労働者の場合
1 労働基準監督署による調査,及び労災保険給付
(1) 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室が作成した「精神障害の労災認定実務要領」に基づき,業務が原因で心の病を発症したかどうかについて労働基準監督署が詳細な調査を実施してくれます(厚生労働省HPの「精神障害の労災補償について」参照)。
    そして,業務が原因で心の病を発症した場合,労災保険に基づき,療養補償給付,休業補償給付,障害補償給付等を支給してもらえます(厚生労働省HPの「労災補償関係リーフレット等一覧」参照)。
(2) 現在の認定基準(心理的負荷による精神障害の認定基準について(平成23年12月26日付の厚生労働省労働基準局長の文書))によれば,最高裁平成12年3月24日判決が取り扱った事案より遥かに心理的負荷が軽いものであっても労災認定されると感じています。
    例えば,アルコール検知器による飲酒検知(旅客自動車運送事業運輸規則24条4項参照)が誤作動であったにもかかわらず,アルコール反応が出たことに関してバスの運転手が会社から詰問されて自殺した事案について,東京地裁平成27年2月25日判決は業務災害に該当すると認定しました(外部HPの「「飲酒検知の誤作動で自殺」は労災」参照)。
2 精神障害の労災補償
・  厚生労働省HPの「精神障害の労災補償について」には,平成13年度以降(発表年度ベースでは平成14年度以降)の,脳・心臓疾患及び精神障害の労災補償状況等に関する報道発表資料が掲載されています。
3 協会けんぽの現金給付受給者状況調査
(1) 全国健康保険協会の平成27年度現金給付受給者状況調査報告の「第一部 傷病手当金」には,「精神及び行動の障害は、平成7年は4.45%であったが、平成15年には10.14%と10%を超え,平成27年には27.51%と大幅に増加している。」と書いてあります。
(2) 平成22年度以降のバックナンバーが全国健康保険協会(協会けんぽ)HPの「現金給付受給者状況調査」に掲載されています。
4 第6次医療計画において精神疾患が既存の4疾病に追加されたこと
(1) 厚生労働省HPの「医療計画」に掲載されている「医療計画について」(平成24年3月30日付の厚生労働省医政局長通知)により,平成25年度から実施されている第6次医療計画において,精神疾患が既存の4疾病に追加されることとなりました。
(2) 5疾病とは,がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病及び精神疾患のことです(医療法施行規則30条の28)(厚生労働省HPの「5疾病・5事業について」(平成28年10月7日付))。
5 その他
(1) 働くもののいのちと健康を守る全国センターHP「労災・職業病について」に「1996年までは「精神障害・自殺」を労災とする基準がなく、ずっとゼロが続いていました。しかし、電通の2年目の社員の自殺事件が裁判で労災と認められ、1999年初めて自殺を労災と認める厚労省の判断指針が出されました。」と書いてあります。
(2) 自由と正義2023年12月号28頁には「労災認定における行政解釈は労災保険固有の判断基準であり、下級審裁判例は、生命保険契約における自殺免責条項の解釈に、労災保険の行政解釈の判断基準を当てはめることに否定的な立場を採る。学説においても同様な立場を採るのが多数説である。」と書いてあります。


第2 司法修習生の場合
1 国家公務員災害補償の対象となる可能性があること等
(1) 司法修習生には国家公務員災害補償法の適用があります(裁判所HPの「修習資金貸与FAQ~その他 貸与制に関連する事項~」)。
    そのため,司法修習が原因で心の病を発症したと最高裁判所事務総長(国家公務員災害補償法3条の実施機関です。)に認定してもらえた場合,裁判官及び裁判所職員の場合と同様に,同法に基づく補償(人事院HPの「国家公務員災害補償制度の仕組み」参照)があると思います。
(2) 司法修習生に対する不合理な罷免は退職の強要に該当する可能性がありますところ,退職の強要は,労災認定の対象となる精神障害の発症原因です「過労自殺の労災認定」参照)。
2 公務災害の認定をしてくれなかった場合の不服申立方法等
(1)   公務災害の認定に関する最高裁判所事務総長の措置に不服がある場合,最高裁判所に対して審査の申立てをすることができます。
   この場合,最高裁判所は,災害補償審査委員会の審理に付し,同委員会が作成した調書に基づき,審査の申立てを棄却するかどうかを判定します(人事院規則13-3(災害補償の実施に関する審査の申立て等)参照)。
(2) ①平成15年3月3日に自殺した大阪高裁の裁判官の場合,公務災害が認められていませんし(外部HPの「「ある裁判官の自殺」に思う」参照),②42期の花村良一民事裁判上席教官は,平成28年9月29日に死亡しましたところ,死亡した月の出勤状況が分かる文書は存在しないことになっています平成28年11月4日付の司法行政文書不開示通知書平成28年12月2日付の最高裁判所事務総長の理由説明書及び平成28年度(最情)答申第42号(平成29年1月26日答申)参照)から,最高裁判所事務総長による認定はあまり期待できないかも知れません。
3 過失相殺なしの損害賠償責任と直結しているかもしれないこと
   精神障害の場合,業務災害の認定は安全配慮義務違反の認定,ひいては過失相殺なしの損害賠償責任に直結しています。
   そのため,裁判所職員の場合も同様に,公務災害の認定は裁判所の安全配慮義務違反の認定,ひいては過失相殺なしの損害賠償責任と直結しているかもしれません(明確な裁判例は確認できていません。)。


4 裁判所の責任者
   裁判所職員健康安全管理規程2条及び別表第一によれば,最高裁判所における健康安全管理総括者は事務総局人事局長(保健に係るもの)及び事務総局経理局長(安全保持に係るもの)であり,同規程3条及び別表第二によれば,司法研修所における健康管理者は司法研修所事務局総務課長であり,安全管理者は司法研修所事務局経理課長です。

5 公務災害の認定がされた場合の影響
   司法修習生の心の病に関して公務災害が認定された場合,過失相殺なしの損害賠償責任に直結し,最高裁判所事務総局人事局長等の責任問題に発展するかも知れませんが,他の司法修習生に特に不利益が発生することはないと思います。
6 自殺等の状況
(1)ア 8期の司法修習生の場合,後期修習において真面目な司法修習生が二回試験の勉強を苦に自殺しました(東弁リブラ2011年5月号の「8期修習修了50周年」参照)。
イ 平成17年7月6日,鳥取地裁配属の59期司法修習生がマンションの13階から飛び降り自殺しました(2ちゃんねるの「【社会】27歳司法修習生,13階から飛び降り自殺・鳥取」参照)。
    そのため,司法修習生が心の病を発症する可能性は否定できません。
(2) ハンドルネームが「黒猫」となっている55期の男性弁護士の場合,司法修習生の時代にうつ病を発症し,1年間,修習を休んだそうです(外部HPの「自分の昔のこと,その他いろいろ」参照)。
(3) 平成18年12月11日,大阪地検総務部の指導係検事が割腹自殺の未遂事件を起こしました(外部ブログの「大阪地検の検事が割腹自殺未遂?修習生の指導担当」参照)。
(4) イソ弁が労働者に該当する場合(東弁リブラ平成17年4月号の「私って労働者?」参照),労基署の職権による成立手続及び労災保険料の認定手続を経ることで事後的に労災保険に加入できますから,労基署の過労自殺認定を通じてボス弁に1億円前後の損害賠償責任が発生するかも知れませんし,労災保険の費用徴収制度(労災保険法31条1項参照)に基づき,労災保険の給付に要した費用の100%又は40%を労基署から請求されるかも知れません(厚生労働省リーフレットの「労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度が強化されます」参照)。
   そのため,弁護士法人であれば,無限連帯責任を負う社員弁護士(弁護士法30条の15第1項参照)の破産につながるかも知れません。


第3 精神障害者の取扱いに関するメモ書き
1 戦前の取扱い

(1)ア 明治33年制定の精神障害者監護法に基づき,監護義務者(例えば,後見人,配偶者,親権を行う父又は母及び戸主)は,地方長官(現在の都道府県知事に相当するもの)の許可を得ることで,精神病者(現在の精神障害者)を私宅監置にすることができました。
イ 日本精神神経学会HP「歩み3:私宅監置と拘束具」には,「(山中注:「精神病者私宅監置ノ実況及ビ統計的観察」(大正7年)によれば,)監置室は1~2坪のものが約60%で、極めて悲惨な環境であったといいます。」と書いてあります。
ウ Wikipediaの「私宅監置」には,「私宅監置を行うと、精神病を発症した患者本人の所得が無くなるのはもちろん、監置に当たる家族も消耗するため、貧困家庭だけでなく中産階級においても大きな負担で、最終的に破産する者も少なくなかった」と書いてあります。
(2)ア 大正8年制定の精神保健法に基づき,地方長官は,地方長官が入院の必要を認めた者等を精神病院に入院させることができるようになりました。
イ 精神病院への入院の人数が私宅監置の人数を上回ったのは昭和4年でした。
2 戦後の取扱い
(1) 精神衛生法(昭和25年5月1日法律第123号)48条に基づき,昭和26年5月1日以降,私宅監置は禁止されることとなりました。
(2) 昭和40年に精神保健法が改正されるまでの間,精神障害者の保護義務者は,都道府県知事の許可を得て,精神病院に入院させるまでの間,精神病院以外の場所で保護拘束をすることができました(精神保健法43条1項)。
(3) 昭和40年改正により保護拘束が廃止された代わりに,緊急措置入院制度が創設されました。
(4) 昭和62年改正により,法律名が「精神保健法」に変わるとともに,保護義務者の同意による入院(精神保健法33条)の名称が,「同意入院」から「医療保護入院」に変わりました。
(5) 平成5年改正により「保護義務者」の名称が「保護者」に変わりました。
(6) 平成7年改正により,法律名が「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に変わりました。
(7) 平成18年には「精神病院の用語の整理等のための関係法律の一部を改正する法律」が施行され,行政上使用される用語として,精神科病院と改められました(ホームメイトリサーチの「医療施設の種類「精神科病院」」参照)。
(8) 平成25年改正により,平成26年4月1日に保護者制度が廃止されました。
(9) 以下のHPが参考になります。
・ 厚生労働省HPの「医療保護入院制度について」
・ 高知県HPの「精神保健福祉の歴史」




第4 関連記事その他

1 対人援助にかかわる援助者の行動規範として有名なバイスティックの7原則は以下のとおりです(ケアプランのイーライフHP「「バイスティックの7原則」って何?」参照)。
① 個別化の原則
② 意図的な感情表現の原則
③ 統制された情報関与の原則
④ 受容の原則
⑤ 非審判的態度の原則
⑥ 自己決定の原則
⑦ 秘密保持の原則
2(1) 安全保証義務違背の債務不履行により死亡した者の遺族は,固有の慰謝料請求権を有しません(最高裁昭和55年12月18日判決)。
(2) 労働者が,使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求するため訴えを提起することを余儀なくされ,訴訟追行を弁護士に委任した場合には,その弁護士費用は,事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り,上記安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害となります(最高裁平成24年2月24日判決)。
3(1)  下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり,元請企業の管理する設備工具等を用い,事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し,その作業内容も元請企業の従業員とほとんど同じであったなど原判示の事実関係の下においては,元請企業は,信義則上,右労働者に対し安全配慮義務を負います(最高裁平成3年4月11日判決)。
(2) 最高裁令和5年1月27日判決は,統合失調症の治療のため精神科病院に任意入院をした患者が無断離院をして自殺した場合において,上記病院の設置者に無断離院の防止策についての説明義務違反があったとはいえないとされた事例です。
4  高校生が,授業中の態度や過去の非行事実につき担任教師から三時間余にわたり応接室に留めおかれて反省を命ぜられたうえ,頭部を数回殴打されるなど違法な懲戒を受け,それを恨んで翌日自殺した場合であつても,右懲戒行為がされるに至つた経緯等とこれに対する生徒の態度等からみて,教師としての相当の注意義務を尽くしたとしても,生徒が右懲戒行為によつて自殺を決意することを予見することが困難な状況であつた判示の事情のもとにおいては,教師の懲戒行為と生徒の自殺との間に相当因果関係はありません(最高裁昭和52年10月25日判決)。
5 二弁フロンティア2021年5月号に「病気休職・復職に関する近時の 裁判例の動向と分析(前編)」が載っていて,二弁フロンティア2021年6月号に「病気休職・復職に関する近時の 裁判例の動向と分析(後編)」が載っています。
6 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所関係国賠事件
・ 過労自殺の労災認定
→ 労基署による過労自殺の労災認定は1億円前後の損害賠償責任の発生と直結している気がします。
・ 民間労働者と司法修習生との比較
・ 裁判所職員の病気休職
 裁判官の死亡退官
 弁護士の自殺者数の推移(平成18年以降)
・ 弁護士の社会保険
・ 昭和51年の30期前期修習で発生した,女性司法修習生に対する司法研修所裁判教官等の差別発言問題(教官等の弁明が正しいことを前提として厳重注意で終了した事件)

司法修習生の逮捕及び実名報道

目次
1 第58期司法修習生の事例(対象者は同期と一緒に司法修習を終了しました。)
2 第67期司法修習生の事例(対象者は同期と一緒に司法修習を終了しました。)
3 第71期司法修習生の事例(対象者は同期と一緒に司法修習を終了しました。)
4 司法修習生の逮捕に関する最高裁判所の捉え方等
5 無罪の推定に関する自由権規約の定め,及び逮捕事案に関する最高裁判所の対応
6 被疑者補償規程に基づく補償
7 捜索差押えとスマホのロック解除
8 捜査関係事項照会による個人情報の収集
9 捜査当局は捜査情報をマスコミにリークすることがあるみたいであること
10 関連記事その他


1 第58期司法修習生の事例(対象者は同期と一緒に司法修習を終了しました。)
(1) 平成16年12月13日,東京地裁における裁判修習中に女性用トイレに侵入してビデオカメラを設置したということで,平成17年1月5日,第58期司法修習生が建造物侵入罪の容疑で逮捕され,実名報道されました(紀藤正樹弁護士ブログ「なんということでしょう!司法修習生逮捕:東京地裁の女子トイレ侵入,ビデオ設置」参照)。
(2)ア 言いたい放題ブログ「司法修習生のなぞの行動」によれば,平成17年1月26日に釈放されたときの記事は以下のとおりです(氏名及び年齢は伏せました。)。

逮捕の修習生釈放 「アリバイある」と弁護人
   東京地検は26日、隠し撮り目的で東京地裁内の女性用トイレ内にビデオカメラを設置したとして建造物侵入の疑いで逮捕された○○○○・司法修習生(○○)を処分保留のまま釈放した。
   ○○修習生は今月5日、警視庁丸の内署に逮捕された。逮捕前、容疑を認める上申書を出していたが、間もなく否認に転じ「自分はビデオを置いていない」と主張。
   26日記者会見した弁護人の伊東真弁護士らは、事件当夜に○○修習生がさいたま市のスーパーで買い物をしたレシートの時刻などから「アリバイがある」と説明。「今は明かせないが、真犯人に結び付く決定的証拠がある」と話した。
   東京地検は「捜査を継続する」とした。
(共同通信) – 1月26日20時43分更新

イ 平成17年1月27日の毎日新聞朝刊によれば,当該司法修習生は,釈放後の記者会見において,「捜査官から『微罪処分も可能だ』と言われ,早くこの場を逃れたいという一心で(当初)犯行を認めてしまった。慎重に捜査していればこんなことにはならなかった。」と話しました。
(3)   当該司法修習生は嫌疑不十分ということで起訴されませんでしたが,その時期,46期の近藤裕之裁判官「法務省出向中の裁判官の不祥事の取扱い」参照)は東京地裁判事でした。


2 第67期司法修習生の事例(対象者は同期と一緒に司法修習を終了しました。)
(1) 平成26年5月13日午後6時半頃,神戸地裁配属の司法修習生が,神戸電鉄の普通電車内で,通路の向かい側に座っていた女性のスカートや足の写真を数枚,撮影したということで,兵庫県迷惑防止条例違反の疑いにより現行犯逮捕され,実名報道されました。
(2) 秋篠宮家の眞子内親王(20歳になった平成23年10月23日に宝冠大綬章を授与されています。)が,純然たる一般人であった小室圭氏(眞子内親王との婚約準備が発表されたのは平成29年5月16日です。)と一緒に電車に乗っていたときの写真が無断で撮影され,平成28年10月発売の週刊誌に掲載されました(外部HPの「【結婚速報】眞子様の婚約者小室圭の顔画像?週刊誌でスクープされた男性か?」参照)。
   また,今井絵理子参議院議員が,神戸市議会議員の男性と一緒に新幹線で寝ていた時の写真が無断で撮影され,平成29年8月発売の週刊誌に掲載されました(外部HPの「【画像】橋本健市議の妻が『Mr.サンデー』で今井絵理子議員と夫に反論「去年8月に一方的に」「結婚生活破綻していない」」参照)。
    週刊誌に写真を掲載するための無断撮影は全く問題とならないのになぜ,司法修習生の無断撮影が現行犯逮捕かつ実名報道の対象となるかは不明です。
(3)ア 最高裁平成17年11月10日判決の裁判要旨は以下のとおりです。
   人はみだりに自己の容ぼう,姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し,ある者の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。
イ 最高裁平成20年11月10日決定は以下の判示をしています。
     被告人は,正当な理由がないのに,平成18年7月21日午後7時ころ,旭川市内のショッピングセンター1階の出入口付近から女性靴売場にかけて,女性客(当時27歳)に対し,その後を少なくとも約5分間,40m余りにわたって付けねらい,背後の約1ないし3mの距離から,右手に所持したデジタルカメラ機能付きの携帯電話を自己の腰部付近まで下げて,細身のズボンを着用した同女の臀部を同カメラでねらい,約11回これを撮影した。
以上のような事実関係によれば,被告人の本件撮影行為は,被害者がこれに気付いておらず,また,被害者の着用したズボンの上からされたものであったとしても,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり,これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ,被害者に不安を覚えさせるものといえるから,上記条例10条1項,2条の2第1項4号に当たるというべきである。

(4)ア 平成28年7月1日施行の改正兵庫県迷惑防止条例の条文ではありますが,同条例3条の2は,以下のとおりです(兵庫県警察HPの「「改正 兵庫県 迷惑防止条例」が平成28年7月1日から施行されます。」参照)。
 (卑わいな行為等の禁止)
第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為 
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為  
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
イ 通路の向かい側に座っていた女性を数枚,撮影するぐらいでは,最高裁平成20年11月10日決定が判示するような「卑猥な言動」に当たらないと思いますし,「人の通常衣服で隠されている身体又は下着」を撮影することはできないと思われますから,これがなぜ兵庫県迷惑防止条例違反に該当したのかはよく分かりません。
(5) 最高裁令和4年12月5日決定は,「スカート着用の前かがみになった女性に後方の至近距離からカメラを構えるなどした行為が、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条1項3号にいう「人を著しく羞恥させ、人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」に当たるとされた事例」です。


3 第71期司法修習生の事例(対象者は同期と一緒に司法修習を終了しました。)
(1)   平成30年9月20日午前2時15分頃,福岡地裁配属(多分)の司法修習生が,酒に酔って叫びながら,駐車場で他人が所有するBMWのフロントワイパー1本を折って壊したということで,器物損壊罪の疑いにより福岡県警中央署に現行犯逮捕され,実名報道されました。
(2) RKB HP「ワイパー損壊か 司法修習生を逮捕」には「○○容疑者は、逮捕直後は「弁護士を呼んで欲しい」などと話し、その後の取り調べでは「酒を飲んでいたので覚えていない」と容疑を否認しています。」と書いてあります。
(3) 平成30年10月18日付で不起訴処分となりました。
(4)ア 平成30年12月20日付の司法行政文書不開示通知書によれば,現行犯逮捕された司法修習生が不起訴処分となったことに関して作成し,又は取得した文書は同年10月24日までに廃棄されました。
イ 平成31年1月23日付の理由説明書には以下の記載があります。
    最高裁判所では,現行犯逮捕された司法修習生が不起訴処分となったことについて,報道機関から照会があり,それに対応するため,本件対象文書(事実関係の問合せへの応答に係る文書)を作成したが,対応終了後は,事務処理上使用することが予定されておらず,保有する必要もない短期保有文書であることから,事務処理上必要な期間が経過したため廃棄した。


4 司法修習生の逮捕に関する最高裁判所の捉え方等
(1) 司法修習生の逮捕に関する最高裁判所の捉え方
・ 令和2年度(最情)答申第27号(令和2年10月27日答申)には以下の記載があります。
     当委員会庶務を通じて確認した結果によれば,「司法修習生採用選考申込書」の「12 不採用事由等の有無」欄に,「(3)審査基準(2)ア(エ)関係」として,「かつて起訴(略式起訴を含む。)又は逮捕(補導)されたことの有無」を記載する箇所があることが認められ,また,「令和元年度司法修習生採用選考要項」には,上記司法修習生採用選考審査基準が掲載されており,同審査基準(2)ア(エ)は,司法修習生の不採用事由の一つとして,「品位を辱める行状により,司法修習生たるに適しない者」を掲げていることが認められる。これらの各文書の記載内容を踏まえれば,「司法修習生採用選考申込書」において逮捕歴及び補導歴を記載させる理由は明らかであるということができるから,このほかに同申込書の記載欄の一つ一つにつき,それぞれ申込者に記載をさせる理由を説明した文書が存在することは通常考え難い。
(2) 東京高裁令和2年10月28日判決の判示事項
ア 東京高裁令和2年10月28日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
     一般に,被疑者が逮捕されたにとどまる捜査の初期の段階で,被疑者が被疑事実の一部を否認している状況においては,上記の被疑事実及びこれに関連するものとして捜査機関が公表した事実が存在すると直ちに認めることはできず,このことは,弁護士である一審被告においても,十分に理解していたものと推認される。以上に述べたところは,捜査機関の公表したところを基礎とする報道についても同様に考えられ,一件記録を参照しても,一審被告について,上記とは異なる判断をすべき事情を特に把握するなどしていたとの事実は認め難い。
イ 東京高裁令和2年10月28日判決は,伊藤和子弁護士の裁判を応援する会ブログ「裁判記録」にも載っています。


5 無罪の推定に関する自由権規約の定め,及び逮捕事案に関する最高裁判所の対応
(1) 自由権規約14条2項は「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。」と定めています。
(2) 「一般的意見32 14条・裁判所の前の平等と公正な裁判を受ける権利」(2007年採択)30項は以下のとおりです。
     第14条第2項により、刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。無罪の推定は、人権擁護の根本をなすものであり、罪を立証する責任を検察に負わせ、合理的な疑いを容れない程度に罪が立証されるまでは、有罪の推定はできないことを保障するとともに、疑わしきは被告人の利益にとの原則が適用されることを確保し、刑事上の犯罪行為の嫌疑を受けている者がこの原則に従って取り扱われることを要求している。たとえば被告人が有罪であることを公に肯定する発言を差し控えるなど、審理の結論の先取りを慎むことは、すべての公的機関の義務である。被告人は通常、審理の間に手錠をされたり檻に入れられたり、それ以外にも、危険な犯罪者であることを示唆するかたちで出廷させられたりしてはならない。報道機関は、無罪の推定を損なう報道は避けるべきである。さらに、公判前の抑留期間の長さが、有罪であることやその罪の重さを示唆するものと受け取られることは、決してあってはならない。保釈の拒否または民事手続における責任の認定は、無罪の推定に影響を及ぼさない。 
(3)ア 平成18年の「評議」,平成19年の「裁判員〜選ばれ、そして見えてきたもの〜」に続く,最高裁判所企画・制作による裁判員制度広報用映画の第3弾である「審理」は平成20年5月から裁判所HPで動画配信されるようになったものの,同年8月7日,「審理」の主演を努めた酒井法子に対して覚せい剤取締法違反により逮捕状が出たことから,最高裁判所は同日,「審理」の上映及び使用の自粛を発表しました。
イ 裁判員制度HPの「動画配信」には,映画「裁判員~選ばれ,そして見えてきたもの~」及び映画「評議」は掲載されているものの,映画「審理」は掲載されていません。
ウ 最高裁令和5年11月17日判決は,独立行政法人日本芸術文化振興会の理事長がした、劇映画の製作活動に対する助成金を交付しない旨の決定が、上記理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとされた事例です。


6 被疑者補償規程に基づく補償
(1) 被疑者補償規程の運用状況

ア 逮捕・勾留された後に「罪とならず」又は「嫌疑なし」という裁定主文により不起訴処分を受けたような場合,被疑者補償規程(法務省訓令)に基づき,被疑者補償を受けることができます。
イ 以下の資料を掲載しています。
・ 被疑者補償規程の運用について(昭和32年4月12日付の法務省刑事局長通達)
・ 被疑者補償規程に基づき立件された事例について→検察月報661号(平成24年4月)からの抜粋
ウ 平成7年から令和2年までの実績でいえば,被疑者補償における1日あたりの平均金額は1万1545円です。
エ 令和2年分の実績でいえば,①虚偽の自白をしていないこと,②他の事実について犯罪が成立していないこと,及び③「罪とならず」又は「嫌疑なし」という裁定主文により不起訴処分を受けたことという3条件を満たしていれば,あらかじめ被疑者補償を辞退していない限り,被疑者補償を受けることができています。


(2) 被疑者補償規程に関する裁判例
・ 東京地裁平成30年7月5日判決(判例秘書に掲載)は,結論として以下の判示をしています。
① 憲法40条にいう抑留又は拘禁には,無罪となった事実についての取調べが不起訴となった事実に対する逮捕勾留を利用してなされるなど,不起訴となった事実についての逮捕勾留であっても,実質的には無罪となった事実についての逮捕勾留であると認められる部分が含まれる場合には,不起訴となった事実についての逮捕勾留が含まれると解する余地はあるが,同条の文理上,逮捕勾留に係る被疑事実が不起訴となった場合に,そのことを理由として同条の補償の問題が生じないことは明らかである(最高裁昭和30年(し)第15号同31年12月24日大法廷決定・刑集10巻12号1692頁参照)から,憲法上,被疑者補償請求権が保障されているとはいえない。
② 検察官の行う被疑者補償規程に基づく裁定は,これにより直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえず,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとはいえないというべきである。
③ 被疑者補償規程2条にいう「罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるとき」とは,構成要件該当性がないとか違法性阻却事由や責任阻却事由があることが明らかに認められるため,犯罪が成立しないことが明らかである場合や,被疑者が犯罪と無関係であることが明らかである場合のほか,証拠上,被疑者の嫌疑が極めて薄弱であるときも含まれるが,一方で,犯罪の成否等が真偽不明のときはこれに当たらないと解するのが相当である。
(3) 自由権規約の定め
・ 市民的及び政治的権利に関する国際規約9条5項は「違法に逮捕され又は抑留された者は、賠償を受ける権利を有する。」と定めています。


7 捜索差押えとスマホのロック解除
(1) 東京高裁平成31年2月19日判決(判例秘書に掲載)は以下のとおりです。
     論旨は,被告人に対する逮捕状が発付されていたにもかかわらず,警察官が原判示第1の事実の関係で押収した携帯電話機についてその暗証番号を被告人から黙秘権の告知をせずに聞き出した捜査は違法であり,この暗証番号を用いて得られた証拠は違法収集証拠として排除されるべきであったのに,原審は,これら証拠に基づいて事実認定を行っており,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのである。
     原審証拠によると,警察官は,平成29年10月9日,被告人に対する詐欺被疑事件の捜索差押許可状に基づき,被告人立会いの下で被告人方居室を捜索中,被告人使用の携帯電話機(iPhone)を発見し,同許可状に基づいて同携帯電話機を差し押さえるなどし,その後,同携帯電話機のロックを解除した状態で表示画面を撮影するなどの捜査(以下「本件捜査」という。)を行ったことが認められ,被告人の当審供述によれば,被告人は,上記捜索差押えの現場で警察官に上記携帯電話機の暗証番号を問い質されて教えたが,その際,警察官から黙秘権の告知はなかったこと,被告人が逮捕されたのは上記捜索差押えの終了後であったことが認められる。
     そこで検討すると,上記のような捜索差押えの現場で警察官が質問をする際に黙秘権告知を義務付ける規定はない上,上記質問の際,被告人が実際に逮捕されるなどして外部との連絡を絶たれて供述を迫られたり,警察官が被告人に供述義務があると積極的に誤信させたりした状況はなかったのであるから,本件捜査が違法であるなどとはいえず,所論は採用できない。


(2) 「デジタル遺品の探しかた しまいかた 残しかた+隠しかた」 36頁には,「スマホのロック解除を頼めるサービスは?」として以下の記載があります。
    スマホのロック解除を請け負うサービスは、かなり少ないのが現状で、データ復旧会社でもスマホは受け付けてくれないケースがほとんどです。
    なお、通信キャリア(NTTドコモやau、ソフトバンクなど)やメーカーは端末の中身に関しては非対応が原則ですので、対応を期待することはできません。
    スマホのデータ復旧を検討してくれる企業もありますが、それでも確実に解錠できる保証はなく、成功報酬は20万~50万円かかることも。作業期間も半年~1年がザラで、簡単な道のりとは言いがたいです。
(3) 「身体に関する令状実務について(覚書)~証拠収集のための身体捜索と科学捜査のための検体採取~」には,「もちろん,技術的には,(山中注:パスワードが設定された)携帯電話のロック解除は可能である。ただし,外国製のものだと,ロック解除に極めて長い期間を必要とする機種がある。その結果,全容解明に繋がらず,その途上で捜査を断念せざるをえないケースが少なくない。」と書いてあるほか,生体認証(バイオメトリクス認証)で携帯電話のロックをしている場合,身体検査令状を取得することで,携帯電話の認証画面に被疑者の指紋又は顔貌(虹彩)を読み取る行為ができるという趣旨のことが書いてあります(判例タイムズ1476号(2020年11月号)26頁及び27頁)。
     つまり,①携帯電話をパスワードでロックしている場合,パスワードを黙秘すれば携帯電話のロックを解除されないことがあるのに対し,②携帯電話を生体認証でロックしている場合,身体検査令状を取得されれば,携帯電話の指紋感知部分に指を押し当てられたり,携帯電話の顔(虹彩)感知部分に顔を近づけさせられたりして,携帯電話のロックを強制的に解除させられることとなります。
(4) 弁護士法人金岡法律事務所の弁護士コラムの「令状裁判官の憲法感覚を台無しにする判決」には以下の記載があります。
     令状裁判官も、同じように考えたのだろう。
     上記令状請求(山中注:被疑者のスマートフォン端末の捜索差押えや、車内のDNA情報に関わる資料の捜索差押えを求める令状請求)に対し、DNA情報資料を丸々、削除した上に、更に、「本件違反の経緯、動機、被疑者の生活状況を裏付けるスマートフォン端末」の捜索差押え請求に対し、「本件違反の経緯、動機」のみを残し、「被疑者の生活状況」部分を削除した限度で、令状が発付された。
     ところが捜査機関は、「A月」の無免許運転事件に対し、「A-2月」の被疑者の通信通話履歴、行動解析、画像フォルダ検索などを徹底して行い、その結果を全て、窃盗事件の証拠として作成、請求するという蛮行に出た。
(5) 自由権規約17条1項は「何人も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。」と定めています。
(6) 個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たります(最高裁大法廷平成29年3月15日判決。なお,先例として,最高裁昭和51年3月16日決定参照)。


8 捜査関係事項照会による個人情報の収集
・ 「丸裸にされる私生活 企業の個人情報と検察・警察」(世界2019年6月号106頁ないし114頁)によれば,検察庁内部のサーバーに保管されている「捜査上有効なデータ等へのアクセス方法等一覧表」と題するリスト(作成者は,平成23年7月に最高検察庁に設置された法科学専門委員会)は,企業が展開しているポイントカードなど,顧客の個人情報を,どこにどう問い合わせれば捜査機関が入手できるかを一覧にしたものであって,共同通信が入手した時点での一覧表に並ぶ企業は少なくとも約290社,記載されたデータの種類は約360に上るそうです。
 リストに記載されている企業としては,主要な航空,鉄道,バスなどの交通各社,電気,ガスなどのライフライン企業のほか,ポイントカード発行会社,クレジットカード,消費者金融,携帯電話,コンビニ,スーパー,家電量販店,ドラッグストア,パチンコ店,遊園地,アパレル,居酒屋,劇団,映画館,ガソリンスタント,カラオケ店,インターネットカフェ,ゲーム会社などがあるそうであり,入手できると記載されている情報は各社によってばらばらですが,氏名や住所,生年月日といった会員情報以外に,利用履歴,店舗利用時の防犯カメラ映像,カード申込み時にコピーした運転免許証などの顔写真もあるそうであり,リストに載っていた企業の多くが,捜査関係事項照会(刑訴法197条)によって顧客の個人情報を提供すると明記されているそうです。


9 捜査当局は捜査情報をマスコミにリークすることがあるみたいであること
(1) 48期の前田恒彦 元検事によれば,捜査当局は捜査情報をマスコミにリークすることがあるみたいです。
 なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか(1)
② なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか(2)
③ なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか(3)
(2) ちなみに,ライブドア事件に関して,平成18年1月16日午後4時過ぎ,ライブドアに捜索に入ったとNHKテレビニュースで報道されたものの,ライブドアが入居していた六本木ヒルズに東京地検特捜部の捜査官が到着したのは同日午後6時半過ぎでした(Cnet.Japanの「ライブドアショックの舞台裏とその余震」(2006年1月26日付)参照)。


10 実名報道に関するメモ書き
(1) 最高裁令和4年6月24日判決の裁判官草野耕一の補足意見によれば,実名報道の効用は以下の三つです。
① 一般予防,特別予防及び応報感情の充足という制裁(制裁的機能)
② 犯罪者の実名を公表することによって,当該犯罪者が他者に対して更なる害悪を及ぼす可能性を減少させ得ること(社会防衛機能)
③ 実名報道がなされることにより犯罪者やその家族が受けるであろう精神的ないしは経済的苦しみを想像することに快楽を見出す心性(負の外的選好)


(2) 東弁リブラ2015年9月号の「座談会 続・司法記者は語る」には以下の記載があります(リンク先10頁)。
西川:昨今はネットでたたかれるというようなこともありますので,取材には協力するけれども,名前を出さないでほしいというのは,対応していただけるものでしょうか。
橋本:弁護人や代理人の場合,基本的には名前は出さないですね。
中島(俊):「皆さんのご意向を踏まえてこちらで判断します」と言うかもしれないですね。結果的に出さないケースももちろんありますが。
和田:伏せてほしいという要望に対してはかなり応えている方なのかなと。ただ例えば,逮捕された容疑者や起訴された被告人の名前は伏せてほしいというのはさすがにできませんが。ただ,そういう場合でも伏せてほしいと要望があれば,理由によっては「ちょっと検討します」ということにはなると思います。
(3) 最高裁平成29年3月10日判決で逆転無罪判決が出た窃盗事件に関して,弁護士ドットコムニュースの「最高裁で逆転無罪の煙石さん、「冤罪防止」へ裁判所・警察・検察・国・報道への提言」には以下の記載があります。
煙石さん「取り調べのとき、容疑者の段階だから、『まだマスコミには報道しないでください』と、警察に一生懸命お願いしたが、ダメだった。翌日、家族が面会に来て、テレビや新聞に大きく載っていると、暗い顔で告げてきた。死にたい思いだった」
久保弁護士「逮捕された情報は伝えるべきだし、匿名にしない方が望ましいと考える。逮捕は人権を侵害する行為だからだ。だからこそ、捜査機関に取材して、勾留の必要性を検証すべき。弁護人にも取材して、言い分を聞いてほしい。これがないと警察の発表機関になってしまう」
(4) ヤフーニュースの「旭川医大の『北海道新聞』記者常人逮捕に疑問の声噴出」(令和3年7月5日付)には以下の記載があります。
     警察の調べに「どこで会議をしているか探していた」と供述しているとの一部報道もある。各紙が記者を匿名で報道する中、道新は23日付朝刊で実名とし「逮捕は遺憾。記者は学長解任問題を取材中だった。逮捕の経緯などを確認し、読者の皆様に改めて説明する」などとコメントした。


11 関連記事その他
(1) 日弁連HPに「司法修習生採用時の逮捕歴等による差別人権救済申立事件」(平成6年3月28日付の要望)が載っています。
(2) Wikipediaの「渡邊魁」には「渡邊 魁(わたなべ かい、安政6年5月6日(1859年6月6日 )- 大正11年(1922年12月26日)は、明治中期の日本の裁判官。脱獄囚であったが、戸籍を偽って別人になりすまし、裁判官となったという特異な経歴で知られる。」と書いてあります。
(3)ア 以下の資料を掲載しています。
(令状関係)
・ 刑事事件に関する書類の参考書式について(平成18年5月22日付の最高裁判所刑事局長,総務局長,家庭局長送付)
・ 行政手続における各種令状の参考書式について(平成12年11月27日付の最高裁判所刑事局長,行政局長送付)
・ 国税通則法,地方税法,関税法並びに租税条約等の実施に伴う所得税法,法人税法及び地方税法の特例等に関する法律による各種令状の参考書式について(平成30年3月5日付の最高裁判所刑事局長及び行政局長の文書)
・ 令状事務処理の手引(勾留関係事件を除く一般令状等について)(日本裁判所書記官協議会福岡地区支部・福岡高裁支部刑事実務研究班)→会報書記官62号からの抜粋
(交通事故関係)
・ 「過失運転致傷等事件に係る簡約特例書式について」(平成26年5月14日付の警察庁交通局長・刑事局長通達)
→ ①被害者が処罰を望む意思を明確に示していて,かつ,警察に提出した診断書記載の治療期間が約1週間を超える場合,原則として特例書式の刑事記録が作成されますし,
    ②警察に提出した診断書記載の治療期間が約2週間を超える場合,原則として特例書式の刑事記録が作成されますし,
    ③警察に提出した診断書記載の治療期間が約3週間を超える場合,必ず特例書式又は通常事件の書式で刑事記録が作成されます。
・ 「過失運転致傷等事件に係る特例書式について」(平成26年5月14日付の警察庁交通局長・刑事局長通達)
・ 人身交通事故事件捜査報告書等の書式の制定について(平成12年12月25日付の大阪府警察本部の例規)
・ 物件事故処理要領について(平成4年2月14日付の警察庁交通局交通指導課長等の通達)
(その他関係)
・ 司法警察職員捜査書類基本書式例
・ 押収物等取扱規程(昭和35年5月31日最高裁判所規程第2号)
・ 押収物等取扱規程の運用について(平成7年4月28日付の最高裁判所事務総長通達)
→ 略称は「押収物等取扱規程運用通達」です。
・ 「被疑者補償規程の運用について」等の一部改正について(平成12年10月27日付の法務省刑事局長の依命通達)
・ 監督活動の内容に関し公表を行うに当たって留意すべき事項について(平成24年2月8日付の厚生労働省労働基準局監督課長の書簡)
イ 以下の記事も参照してください。
(司法修習生関係)
・ 司法修習生の罷免
・ 「品位を辱める行状」があったことを理由とする司法修習生の罷免事例及び再採用
・ 司法修習生の罷免理由等は不開示情報であること
・ 司法修習生の守秘義務違反が問題となった事例
(刑事事件関係)
・ 刑事裁判係属中の,起訴事件の刑事記録の入手方法(被害者側)
・ 刑事裁判係属中の,起訴事件の刑事記録の入手方法(加害者である被告人側)
 実況見分調書作成時の留意点
 交通事故被害者が警察に対応する場合の留意点
・ 刑事記録の入手方法等に関する記事の一覧
(裁判所の不祥事関係)

・ 昭和24年7月16日発生の最高裁判所誤判事件に関する最高裁大法廷昭和25年6月24日決定
・ 昭和27年4月発覚の刑事裁判官の収賄事件(弾劾裁判は実施されず,在宅事件として執行猶予付きの判決が下り,元裁判官は執行猶予期間満了直後に弁護士登録をした。)
・ 報道されずに幕引きされた高松高裁長官(昭和42年4月28日依願退官,昭和46年9月5日勲二等旭日重光章)の,暴力金融業者からの金品受領

司法修習生の欠席に関する地裁所長経験者の説明等

30期の山名学司法研修所長(前千葉地裁所長)は,平成26年6月4日の第28回司法修習委員会において以下の発言をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
1 司法研修所の所長としての立場ではなく,前任の千葉地裁の所長をやっていた経験から,裁判所の中での修習生の実情を少し紹介したい。
   学生気分が抜けきらないというのは,飲み会の席で話を聞いている時に感じることはあるが,合議をしたり,起案をしたり,法廷傍聴をしたりといった修習中にそのようなことを感じることはない。
2 就職が気になるという点は,気になっている修習生もいるとは思うが,裁判官室で色々と日常的に議論をしている際に,それが尾を引いて議論が活発にならないといったことはない。
   ただ,弁護士事務所の就職面談のための欠席承認申請というものは時折ある。この日に何故就職面談に行かなければならないのかというような疑問を持つことが裁判所の方からするとあるが,弁護士事務所の指定する日時なので,法廷傍聴の方が大事だから行くなというわけにもいかない。将来がかかっているので,ある程度大目に見て欠席を承認して事務所訪問をさせている。
   大きな目で見ると,就職状況に問題があって少し就職の方に気が行っていることが見えることはあるが,本筋として,修習で手を抜いているといった現象は,裁判所にいる時期には見かけないと理解している。

東弁リブラ2009年2月号「60年安保と三井三池争議の渦中,出会った本に肩を押されて」には以下の記載があります。
   実務修習中の1960 年が,いわゆる60 年安保の年である。修習生たちは毎日裁判所の玄関に集まって裁判所職員の人たちと一緒になってデモや集会に行った。文字通り毎日である。
   東京では裁判官たちがデモに参加している,と聞いたが,福岡の裁判官でデモに行った人はいなかったと思う。その代わり修習生たちが法廷傍聴も判決起案も全部パスしてデモに明け暮れていてもまったくお咎めなしであった。

司法修習生の罷免等に対する不服申立方法

目次
第1 公務員に対する懲戒処分が違法となる場合等

第2 司法修習生の罷免に対する不服申立方法等に関する答弁
1 5期の大西勝也最高裁判所事務総局人事局長の,昭和56年12月21日の衆議院法務委員会における答弁
2 34期の林道晴司法研修所事務局長の,平成18年1月24日の司法修習委員会(第10回)における答弁
第3 最高裁判所行政不服審査委員会
1 平成28年4月1日の,最高裁判所行政不服審査委員会の設置
2 最高裁判所に対する審査請求によって最高裁判所の判断が是正される可能性は極めて小さい気がすること
第4 司法修習生の罷免処分については,取消訴訟を提起できること等
第5 二回試験の不合格処分自体を争うことは無理と思われること
第6 最高裁判所の罷免処分を争う実益はない気がすること

第7 行政訴訟に関する事件報告
第8 関連記事その他

第1 公務員に対する懲戒処分が違法となる場合等
1(1)ア   公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており,その判断は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法となります最高裁平成24年1月16日判決。なお,先例として,最高裁昭和52年12月20日判決最高裁平成2年1月18日判決参照)。
イ 最高裁令和4年6月14日判決も同趣旨の判断をしています。
(2) 最高裁昭和32年5月10日判決は,公務員に対する懲戒処分は,特別権力関係に基づく行政監督権の作用であると判示していました。
2 公務員に対する懲戒処分を争う方法については,あなたの弁護士HP「懲戒処分に対する取消訴訟の方法|懲戒処分が取消可能な条件と理由」が参考になります。
   
第2 司法修習生の罷免に対する不服申立方法等に関する答弁
1 5期の大西勝也最高裁判所事務総局人事局長の,昭和56年12月21日の衆議院法務委員会における答弁
① 司法修習生が罷免されました場合の不服申し立て方法といたしましては、まず問題がないと思われますのは、行政事件訴訟法に言っておりますいわゆる抗告訴訟の対象になるということで、訴訟の道があるというふうに解釈できるであろうというふうに思います。
   もう一つの、いま稲葉委員御指摘になりました行政不服審査法による不服の申し立ての関係につきましては、あるいはこれも法律解釈の問題でございまして、違う意見もあるいはあるかもしれませんけれども、一応行政不服審査法のたしか四条にできない場合のことが列挙してございまして、その中には研修所の研修生というようなものも入っておるわけでございます。それはそれといたしましても、修習生はそもそも国家公務員ではないというふうに考えられておりますことからいいましても、ちょっと行政不服審査法による不服の手続に乗っけることはできないのではないかというふうに私どもは考えております。要するに、行政事件訴訟法による訴訟によって救済ができるというふうに考えております。
② 修習生の罷免の問題について、確かにそういう問題(注:最高裁判所は、自分で処分していて、罷免していて、それが上がってくれば、罷免せずという判決をするわけないでしょうという問題)がございますが、これは単に修習生だけの問題ではございませんで、裁判所職員全体につきましての、最高裁判所が任命権を持っております職員に対する懲戒処分の問題でございますとか、その他いろいろ最高裁判所自体が行政上判定をいたしますものに対して訴訟が起こってくる、それの最終審がやはり最高裁判所であるという意味では、同じようなことがほかにもあるわけでございますが、最高裁判所としては、その行政権の主体として一定の行政目的を達成するために処分をいたします場合、それと訴訟が起こってきまして両方の当事者の言い分を聞きまして判決を下す、決定を下すという場合は、つまり別の次元に立って一応考えるということをやっておるつもりでございますし、憲法もそれを予想して両方を最高裁判所に与えておるというふうになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
2 34期の林道晴司法研修所事務局長の,平成18年1月24日の司法修習委員会(第10回)における答弁
① 罷免事由の規定については,司法修習生の身分の得喪にかかわる事項であり,従前から,その適用に当たっては十分に調査をした上で,必要があれば当該司法修習生と面談するなどしてきたし,今後もこの規定の適用に当たっては,同じように事前調査,当該司法修習生からの事情及び意見の聴取等の手続をとって慎重に行っていく。
   罷免された司法修習生に罷免事由の有無等について不服があっても,不服申立手続を規定したものは存在しない。ただし,司法修習生の身分の得喪にかかわる事由であり,修習を続けることができなくなるという効果がある関係上,罷免の決定後に,例えば公務員法上の公平審理のような不服審査ないし再審査手続のようなものを設けるのか,あるいは罷免に処分性があることを前提とした行政訴訟の手続にゆだねるのかどうかが考えられる。司法修習生に対する罷免自体が最高裁の決定によっていることもあり,司法修習生の身分の特殊性ということもあるので,このような特質や性質を勘案しながら,不服申立手続につき検討を続けていきたいと考えている。現段階では,その検討の方向性を具体的に申し上げることはできないが,結論が出た段階で何らかの形で委員会に報告したい。
② 過去の先例については,記録の保存期間の関係があり全ては把握しきれなかった。ただし,過去には,例えば病気によって罷免された者については,その病気が治り修習に耐えられるということになれば,再度修習を開始することについては何ら問題がないため,再採用をした例は結構あるようだ。また,いわゆる非違行為を起こした司法修習生を罷免した後,社会的にも許される期間が経過したというようなことだと思うが,再採用して修習を終了したというケースもあるようだ。このように,従前は,罷免されても,再採用という形で対処してきた面がある。このようなことから,行政訴訟等が真剣に議論された形跡というのは,調査した限りでは確認できなかった。
   
今後,司法修習生が増えると,残念ながら罷免が問題になる者も増えることも考えられる。一方,行政事件訴訟法等も改正され,その不服申立に関する規定が整備されつつあるという状況もある。司法修習生の身分の特殊性を踏まえつつ,不服申立手続の要否,そして必要とされる場合いかなる手続が妥当かといった点を検討し,早急にその結論を出していきたいと考えているところである。
③ 指摘のとおり,司法修習生についても非違行為の内容や程度に応じて厳重注意,注意,さらに事実上の注意というような形で非違行為に対処している。
   それらの措置をする前には,司法研修所で修習中の場合には同研修所において,実務修習中の場合には配属庁会において,事実関係等を調査し,その過程で司法修習生本人の言い分もしっかり聞いている。非違行為の内容や程度に応じて,まずそのような注意処分で対処できないかどうかを考えることになる。事案として特に多いのは交通違反である。また,残念ながら,酒を飲みながら暴言を吐いたとか,人に嫌な思いをさせたというような非違行為もある。
   
たとえば,交通事故であれば,物損であるか人損であるのか,あるいは相手方と損害について話し合いがついているのかどうかといったことも勘案しながら,事案に応じて注意処分をしている。この注意処分によって対処している例が大多数だと思う。罷免規定を改正した後においても,まずは注意処分によって対処できる事案かどうかを検討することになるだろう。


 第3 最高裁判所行政不服審査委員会
1 平成28年4月1日の,最高裁判所行政不服審査委員会の設置
(1) 平成28年4月1日,最高裁判所行政不服審査委員会が設置されました(裁判所HPの
「最高裁判所行政不服審査委員会」参照)。
   そのため,司法修習生が最高裁判所の罷免処分に対して不服がある場合,最高裁判所に対する審査請求ができるかもしれません最高裁判所行政不服審査委員会規則1条参照)。
(2)ア 行政不服審査法に基づく審査請求をした場合の取扱いは,「行政不服審査法に基づく審査請求書の受付等に関する事務処理要領」(平成28年7月20日付)に書いてあります。
    ただし,平成29年3月21日付の司法行政文書不開示通知書によれば,司法修習生の兼職不許可及び罷免が,行政不服審査法の対象となるかどうかが分かる文書は存在しません。
イ 国家公務員の場合,人事院に対する審査請求ができるのは著しく不利益な処分を受けたときに限られる(国家公務員法89条1項及び90条1項)こととの均衡からすれば,兼職不許可に対して審査請求をすることはできないかもしれません。
(3) 行政処分に対して不服申立てができるのは,当該処分について不服申立てをする法律上の利益がある者,つまり,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者です(最高裁昭和53年3月14日判決参照)。
(4) 「裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分」については,行政不服審査法2条(処分についての審査請求)及び3条(不作為についての審査請求)は適用されません(行政不服審査法7条1項2号)。
2 最高裁判所に対する審査請求によって最高裁判所の判断が是正される可能性は極めて小さい気がすること
(1) 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の場合,不開示等に関する最高裁判所事務総長の判断を是正すべきとしたのは,司法大観は司法行政文書に該当すると判断した
平成28年度(最情)答申第40号(平成28年12月21日答申)を含めてほとんどありません。
   そのため,最高裁判所に対する審査請求によって最高裁判所の判断が是正される可能性は極めて小さい気がします。
(2) 最高裁判所に対する審査請求によって罷免処分を争ったものの,結果として最高裁判所の判断が是正されなかった場合,その後の再採用において不利益に斟酌されるかも知れません。
   
第4 司法修習生の罷免処分については,取消訴訟を提起できること等
1 司法修習生の罷免処分の場合
(1) 法務省大臣官房訟務企画課が作成した「逐条解説 法務大臣権限法」(平成19年3月発行の第2版)116頁ないし118頁には以下の記載があります(注釈部分は削っています。なお,取消訴訟は抗告訴訟の一種です(行政事件訴訟法3条2項))。
   そのため,司法修習生の罷免処分については取消訴訟を提起できることとなります。
○裁判所の機関の権限に属する事項の処分に係る抗告訴訟
   裁判所には,裁判所法80条により職員の任免等の司法行政事務を所掌する権限が与えられているので,例えば,裁判所のした裁判官以外の裁判所職員に対する懲戒処分を不服として裁判所の長を処分行政庁とし国を被告とする抗告訴訟が提起された場合に,当該訴訟は,5条1項に規定する行政庁の処分に係る国を被告とする訴訟に該当するから,当該訴訟について,裁判所の長は,行政庁として所部の職員を代理人に指定し,又は弁護士を訴訟代理人に選任して追行させることができる。
   これらの訴訟についても,三権分立制度の趣旨から,本条の適用を消極に解する考え方がある。しかし,裁判官以外の裁判所職員に対する懲戒処分等は,その本来的権限である司法権の行使に係るものではないから,これに被告国を代表する法務大臣が関与することが直ちに三権分立の趣旨に反するとは言い難い。むしろ裁判所職員に対する懲戒処分等については,国公法の規定が準用され(裁判所職員臨時措置法),一般の国家公務員に対する懲戒処分等と共通の問題を有することを考慮すると,基本的には本条の適用を肯定した上で,実際上,法務大臣の関与の必要性,相当正当を個別具体的に検討するのが相当であると考えられる。
   この点に関する従前の訟務実務の取扱いとしては,例えば,裁判官以外の裁判所職員の懲戒処分等に係る訴訟について,訟務部局として実質的に関与したものは見あたらず,裁判所自らが弁護士を訴訟代理人に選任して追行しているのが通例と思われる(大阪高裁昭和40年3月22日判決・判時408号27ページ,東京高裁昭和55年10月29日判決・行裁集31巻10号2140ページ等)。この取扱いは,国会の機関を当事者とする訴訟についての訟務実務の取扱いをも考慮すると,司法行政事務を処理する裁判所自体が争訟ないし法律の専門組織であって,その機関を当事者とする訴訟の追行については,裁判所の自主的判断にゆだね,法務大臣の関与は差し控えるのが適当であるとする考え方によるものと思われる。
   なお,国有財産法や会計法,債権管理法等においては,財務大臣の総轄の下に,最高裁判所長官又はその委任を受けた者が,部局長等としてその所掌事務を処理するとされており,これらの者がその処理に係る処分についての国を被告とする抗告訴訟の処分行政庁となり得ることが想定される場合には,当該事務は司法権の行使とは関係がなく,また,被告国を代表する法務大臣として訴訟の統一的処理を確保する必要性が認められるから,当然に法務大臣権限法6条の適用があると解するのが相当である。
(2)ア 国家公務員に対する懲戒処分の場合,審査請求に対する人事院の裁決を経た後でなければ,取消訴訟を提起することはできません(審査請求前置主義。国家公務員法92条の2)し,このことは裁判所職員についても同様です(裁判所職員臨時措置法1項は国家公務員法92条の2の準用を除外していません。)
    ただし,司法修習生は「裁判官以外の裁判所職員」ではありませんから,司法修習生に対する懲戒処分の場合,審査請求前置主義は適用されないと思います。
イ 罷免された70期司法修習生に対する平成29年1月18日付の最高裁判所人事局長の通知には以下の記載があります。
    この処分については,行政事件訴訟法の規定により, この通知を受けた日の翌日から起算して6か月以内に国を被告として(訴訟において国を代表する者は法務大臣となります。) ,処分の取消しの訴えを提起することができます(なお,この通知を受けた日の翌日から起算して6か月以内であっても,この処分の日の翌日から起算して1年を経過すると処分の取消しの訴えを提起することができなくなります。)。
2 司法修習生の戒告又は修習の停止の場合
・ 業務停止処分を受けた弁護士は,業務停止の期間を経過した後においても,右処分を受けたことにより日本弁護士連合会会長の被選挙権を有しない場合には,右処分にかかる裁決の取消しを求める訴えの利益を有します(最高裁昭和58年4月5日判決)。
   しかし,司法修習生の場合,戒告の場合はもちろん,修習の停止についても,停止期間を経過した後の法的不利益は想定されていない(事実上の不利益は当然にあります。)ことから,戒告又は修習の停止については訴えの利益がないということで取消訴訟を提起できない気がします。


第5 二回試験の不合格処分自体を争うことは無理と思われること
1 国家試験における合格,不合格の判定は学問又は技術上の知識,能力,意見等の優劣,当否の判断を内容とする行為であるから,その試験実施機関の最終判断に委せられるべきものであって,その判断の当否を審査し具体的に法令を適用して,その争いを解決調整できるものとはいえません(最高裁昭和41年2月8日判決参照)。
2 東京地裁平成29年1月17日判決の裁判要旨は以下のとおりです。
① 社会保険労務士試験不合格処分の取消訴訟は,国家試験の合否に係る処分の効力に関するものであって当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関するものであり,合格基準の策定過程に違法がある旨,社会保険労務士となるのに必要な知識及び能力の有無とは関係のない事柄が考慮された旨が主張されている本件においては,学問又は技術上の知識,能力,意見等の優劣,当否を本質的な争点とし,その争点に係る判断がその帰趨を左右する必要不可欠のものであるとはいえず,法律上の争訟に当たる。
② 社会保険労務士試験不合格処分の取消請求が,社会保険労務士試験において,いかなる手続によりいかなる合格基準を決定するかは,処分行政庁の広範で専門的かつ技術的な裁量に委ねられているものと解されるところ,当該社会保険労務士試験の合格基準につき特段不合理な点はうかがわれず,合格基準の策定について,処分行政庁が裁量権を濫用,逸脱したものとはいえないとして,棄却された事例
3 二回試験の合格基準の策定過程に違法があるとか,法曹三者となるのに必要な知識及び能力の有無とは関係のない事柄が考慮されたといった事情が二回試験にあると認めてもらうことは無理と思います。
   そのため,二回試験の不合格処分自体を争うことは無理と思います。

第6 最高裁判所の罷免処分を争う実益はない気がすること
・ 
仮に最高裁判所の罷免処分が取り消されたとしても,翌年の二回試験が開始するまでの間,司法修習生として兼業禁止等の義務が残るため許可がない限りアルバイト等ができない反面,修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間(裁判所法67条の2第1項)を経過している点で修習資金すら貸与してもらえません。
   そのため, 最高裁判所の罷免処分を争う実益はない気がします。

第7 行政訴訟に関する事件報告
1 平成27年3月26日付の最高裁判所事務総局行政局第一課長の書簡によれば,行政訴訟を提起したり,上訴したりした場合,その時点で,最高裁判所事務総局行政局第一課事件係に対して受理報告がされます。
   また,第一審の弁論終結時に原告に訴訟代理人が選任されている場合,第一審事件又は上訴事件が判決により全部終局した時点で,最高裁判所事務総局行政局第一課事件係に対して終局報告がされます。
2 平成26年3月25日付の最高裁判所事務総局行政局第一課長の書簡に基づき,行政事件,労働事件及び知財事件に関する事件報告が大幅に簡素化されました。
   
第8 関連記事その他
1(1) 公立大学学生の行為に対し,懲戒処分を発動するかどうか,懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶかを決定することは,この点の判断が社会観念上著しく妥当を欠くものと認められる場合を除き,原則として,懲戒権者としての学長の裁量に任されるが,懲戒処分が全く事実の基礎を欠くものであるかどうかの点は,裁判所の判断に服します(最高裁昭和29年7月30日判決)。
(2) 国公立大学における専攻科修了認定行為は,司法審査の対象となります(最高裁昭和52年3月15日判決)。
2 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の罷免
・ 裁判所関係国賠事件
・ 司法修習生の罷免事由別の人数
・ 司法修習生の罷免理由等は不開示情報であること
・ 「品位を辱める行状」があったことを理由とする司法修習生の罷免事例及び再採
・ 司法修習生の逮捕及び実名報道

71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由

目次
第1 71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由
第2 関連記事その他

第1 71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由
・ 71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由が書いてある,法務省が作成した「司法修習生に対する分限・懲戒的措置について」の本文は以下のとおりです。

1 分限的措置と懲戒的措置を法律上書き分ける理由
   現行裁判所法第68条は「最高裁判所は,司法修習生の行状がその品位を辱めるものと認めるときその他司法修習生について最高裁判所の定める事由があると認めるときは,その司法修習生を罷免することができる」と規定しており,法律上分限的措置(病気等による罷免)と懲戒的措置(修習の態度の不良等による罷免)につき書き分けていない(司法修習生に関する規則(最高裁判所規則第十五号)第17条及び第18条において書き分けている。)。
   本改正法では,修習手当の創設に伴い,懲戒的措置により罷免された場合に限り,司法修習生に対するその償還を義務付ける制度を設けることとしているほか,下記2のとおり,司法修習生に対する実効的かつ柔軟な規律確保等の方策として罷免以外の懲戒的措置(戒告,修習の停止)を設けることとしているため,法律上も分限的措置と懲戒的措置を書き分ける必要がある。
   そこで,裁判所法第昭条を二項に書き分けた上で,第1項において分限的措置としての罷免を,第2項において懲戒的措置としての罷免等を規定することとした。
2 罷免以外の懲戒的措置を設ける理由 
   現在,司法修習生につき司法修習生たるに適しない非行があった場合であっても,罷免以外の懲戒的措置は認められていない。
   したがって,現在では,司法修習生につき「罷免」することが適当とまではいい難い非行があった場合には懲戒的措置を課すことができず,司法研修所長又は配属庁会の長らが注意や指導をするに止まっているところであり,懲戒的措置として「罷免」以外の処分を設けることによって実効的かつ柔軟に司法修習生の規律確保を行うための方策が必要となっている。
   特に,修習給付金の創設に伴い,司法修習の確実な履践を担保することがより一層求められていることからも,司法修習生に対する懲戒的措置として「罷免」以外の懲戒的措置を新たに設けることで,司法修習生に課せられる規律を明確化する必要が生じている。
   そこで,司法修習生に対する懲戒的措置について,「退学」に対応する「罷免」に加え,「停学」に対応する「修習の停止」(司法修習生の身分は保有するが,一定期間修習をさせない処分)及び「戒告」(その責任を確認し,及びその将来を戒める処分)を設けることとする。
    なお,司法修習が司法制度の担い手たる法曹に必須の課程であり,修習内容も法曹に必要な能力等を養成するために高度に専門的であることなどに鑑み,司法修習生は修習期間中,修習に専念すべきものとされており,「修習の停止」を設けることにつき,かかる司法修習生の修習専念義務との関係が問題になる。

   「修習の停止」は,前記のとおり,司法修習生の身分は保有するが,ー定期間修習をさせない処分であり,その停止の期間については今後最高裁規則等で定められることになるが,その期間は短期間に止まることが予定されており,これによる当該司法修習生の司法修習の履践や法曹として活動を開始するに当たり必要な能力等の修得への影響は限定的である。かえって,これを反省・自戒の機会として,その後より一層司法修習に専念することが期待できるほか,当該司法修習生以外の周囲の司法修習生に対する教育的効果も期待できる。したがって,「修習の停止」は修習専念義務の趣旨と矛盾するものではなく,かえって修習専念義務の趣旨を貫徹することにつながる。
また,防衛大学生及び防衛医科大学生についても,自衛隊の隊員(自衛隊法(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)第2条第5項)として職務専念義務(同法第60条・具体的には教育訓練を受ける義務)を負い,かつ修業年限が限定されている(防衛大学校については4年,防衛医科大学校については6年又は4年)にもかかわらず,自衛隊法上,退学・戒告と並んで停学の懲戒処分が設けられているところであり,修習専念義務を負い,かつ,修習期間(約1年)が限定されている司法修習生について裁判所法上「修習の停止」の処分を設けることについてはこの意味でも法制上特に問題はないと考えられる。

第2 関連記事その他
1 源法律研究所HP「「分限」から見た法令用語辞典の注意点」には以下の記載があります。
    裁判官分限法(昭和二十二年法律第百二十七号)第3条第1項は、「各高等裁判所は、その管轄区域内の地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の裁判官に係る第一条第一項の裁判及び前条の懲戒に関する事件(以下分限事件という。)について裁判権を有する。」として、「回復の困難な心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合及び本人が免官を願い出た場合」(同法第1条第1項)と「懲戒」を合わせて「分限」と呼んでいることから、「身分保障の限界(例外)」の意味で「分限」を用いている。
2 以下の記事も参照してください。
・ 71期以降の司法修習生に対する戒告及び修習の停止
・ 司法修習生の罷免事由別の人数
 昭和44年7月1日付で特別採用された,東大卒業の23期司法修習生

71期以降の司法修習生に対する戒告及び修習の停止

目次
1 総論
2 修習の停止処分の効果
3 戒告及び修習の停止処分の人数は分からないこと
4 修習の停止処分に対する反対意見等
5 関連記事その他

1 総論
(1) 平成29年11月1日施行の改正裁判所法68条2項は,「最高裁判所は、司法修習生に品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは、最高裁判所の定めるところにより、その司法修習生を罷免し、その修習の停止を命じ、又は戒告することができる。」と定めています。
(2)  高等裁判所長官,地方裁判所長,検事長,検事正及び弁護士会長は,監督の委託を受けた司法修習生に罷免,修習の停止又は戒告に相当する事由があると認めるときは,司法研修所長を経て,これを最高裁判所に報告しなければなりません(司法修習生に関する規則19条2号)。

2 修習の停止処分の効果
(1) 修習停止の処分を受けた場合,当該修習停止の期間については修習給付金を支給しないことが予定されています(平成29年3月21日の衆議院法務委員会における小山太士法務省大臣官房司法法制部長の答弁参照)。
(2) 最高裁判所事務総局総務局が作成した裁判所法逐条解説(昭和44年6月30日発行)(法曹の養成に関するフォーラム第4回会議(平成23年8月4日開催)資料6に含まれています。)398頁には,「司法修習生はその地位にある限り、常に給与の全額を受けることができ、一般公務員の懲戒や休職の場合のように、給与を減額されることはない。」と書いてありました。
    そのため,修習の停止処分によって,この取扱いが修正されたこととなります。
(3) 修習停止が罷免処分と事実上同等の効果が生じてしまうことを避けるため,修習停止の期間は,各修習単位のうち修習を要する日の2分の1を超えない日数とすること,その他諸般の事情を考慮して,3週間程度を修習停止期間の上限とすることが検討されています(平成29年3月21日の衆議院法務委員会における堀田眞哉最高裁判所人事局長の答弁参照)。


3 戒告及び修習の停止処分の人数は分からないこと
(1) 平成31年1月18日付の司法行政文書不開示通知書によれば,以下の文書は存在しません。
① 71期司法修習生のうち,戒告処分を受けた人の数が分かる文書
② 71期司法修習生のうち,修習の停止処分を受けた人の数が分かる文書
③ 71期司法修習生のうち,罷免処分を受けた人の数が分かる文書(罷免事由別の人数が分かる文書を含む。)
(2) 令和2年4月15日付の司法行政文書不開示通知書(戒告処分関係修習の停止処分関係)によれば,以下の文書は存在しません。
① 71期司法修習生のうち,戒告処分を受けた人の数が分かる文書
② 71期司法修習生のうち,修習の停止処分を受けた人の数が分かる文書


4 修習の停止処分に対する反対意見等
(1) 青年法律家協会弁護士学者合同部会は,平成29年4月5日,「修習生に対する戒告処分等を新設する裁判所法改正案に反対する声明」を出しました。
(2) 昭和52年7月発行の「最近の司法研修所の実態と問題点」(大阪弁護士会)24頁には以下の記載があります。
    昭和四四年七月には、二三期のいわゆる東大特別クラス採用について二二期の和歌山修習生が、最高裁長官に反対の決議を送付したのに対し、研修所長が「厳重注意」をなした事件があり、修習生の適切な意見表明を抑えるものとして問題になった。修習生に対する処分は、裁判所法第六八条および司法修習生に対する規則第一七、一八条に罷免の定めがあるだけであり、そのため、当時懲戒規定の整備を進める動きが出た。これに対して、人権擁護と社会正義実現を使命とする法曹を養成するためには、修習生の自発性を尊重し、その自主性を信頼して、自由な雰囲気の中で修習を行うべきであり、規律の強化による秩序維持の観点からの処理を避け、教育的配慮による処理をすれば足りるとの反対意見が出て、結局懲戒規定は作られなかった。

5 関連記事その他
(1) 東弁リブラ2018年2月号の「忍者の修行」(投稿者は41期の弁護士)には以下の記載があります。
    (山中注:41期司法修習が実施されていた昭和62年)当時の事務局長の上田豊三裁判官(後の最高裁判事)は,講話で「(500人が2学年あるので)1000人の虎を野に放す心境である」と話をされておりました。聞くところによると,警察官に刑事訴訟法を講釈するなど,修習生の武勇伝や不始末が多数あったようです。
(2) 東京地裁平成18年7月26日判決(判例秘書に掲載)は,「原告と被告との婚約関係が破綻したのは,被告(山中注:57期の男性修習生)が原告との間で婚約関係にあるにもかかわらず,前期修習中に司法研修所で知り合った女性修習生と肉体関係を持って原告に対して冷たい態度をとるようになり,被告の不倫を知った原告が被告と別れることを決意した」という事案に関して,被告に対し,330万円の損害賠償を命じました。
(3) 労働問題.com「私生活で飲酒運転をした従業員に対していかなる懲戒処分(懲戒解雇)ができるか?」が載っています。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由
・ 司法修習生の罷免事由別の人数
・ 昭和44年7月1日付で特別採用された,東大卒業の23期司法修習生

司法修習生の罷免事由別の人数

目次
1 60期から69期までの司法修習生の罷免人数
2 司法修習生に関する規則18条
3 59期のほか,70期以降については,罷免人数の人数が不明であること
4 司法修習生の罷免に関する事項は不開示情報であること
5 関連記事

1 60期から69期までの司法修習生の罷免人数
(1) 平成29年6月14日付の開示文書及び平成29年7月18日付の開示文書によれば,60期から69期までの司法修習生について,修習期別・罷免事由別の人数は以下の通りです(号数は,70期まで適用されていた司法修習生に関する規則18条のものです。)。
現行60期:3号の罷免のうち,考試不合格が 70人,その他が9人
新 60期:3号の罷免のうち,考試不合格が 76人,その他が5人
現行61期:3号の罷免のうち,考試不合格が 33人,その他が5人
新 61期:3号の罷免のうち,考試不合格が113人,その他が6人
現行62期:3号の罷免のうち,考試不合格が 23人,その他が0人
新 62期:3号の罷免のうち,考試不合格が 75人,その他が3人
現行63期:2号の罷免のうち,考試不合格が  1人
         3号の罷免のうち,考試不合格が 27人,その他が2人
新 63期:3号の罷免のうち,考試不合格が 89人,その他が7人
現行64期:3号の罷免のうち,考試不合格が 24人,その他が1人
新 64期:3号の罷免のうち,考試不合格が 56人,その他が4人
現行65期:3号の罷免のうち,考試不合格が  5人,その他が0人
新 65期:3号の罷免のうち,考試不合格が 41人,その他が8人
66期  :3号の罷免のうち,考試不合格が 43人,その他が9人
67期  :3号の罷免のうち,考試不合格が 42人,その他が5人
68期  :3号の罷免のうち,考試不合格が 33人,その他が7人
69期  :2号の罷免のうち,考試不合格が 54人
         3号の罷免のうち,考試不合格が  0人,その他が5人
(2) 68期までの二回試験の場合,二回試験の不合格者は退職願を提出して司法修習生に関する規則18条3号で罷免されていました。
   しかし,69期二回試験の場合,二回試験の不合格者は退職願を提出するまでもなく,司法修習生に関する規則18条2号で罷免されるようになったみたいです。
(3) 考試不合格を理由とする罷免人数には,二回試験再受験者の不合格者数が含まれます。
   そのため,二回試験に三振した場合,二回試験不合格を理由に3回,司法修習生を罷免されることとなります。
(4)ア 2号の罷免(病気,成績不良等)の件数は,現行63期が1人,69期が54人でありますところ,そのすべてが考試不合格(二回試験不合格)です。
イ 70期旭川修習の場合,平成29年4月24日付で,旭川地裁配属の3人の司法修習生の実務修習地が変更されましたところ,彼らは実務修習地の変更直前,まともに実務修習を受けることができたのかしら?という気がしますが,少なくとも罷免はされていません(「70期旭川修習の配置換えに関する旭川地裁の開示文書」及び「70期旭川修習の配置換えに関する最高裁の開示文書」参照)。
   ただし,配属換えする原因となった事実関係に関する報告文書は,平成29年4月27日までに廃棄されましたから,事実関係を文書で知ることはできません(旭川地裁につき平成29年度(情)答申第21号(平成30年3月23日答申),最高裁につき平成29年度(最情)答申第72号(平成30年3月23日答申)参照)。

2 司法修習生に関する規則18条
(1) 70期まで適用されていた 司法修習生に関する規則18条は以下のとおりです。
   最高裁判所は,司法修習生に次に掲げる事由があると認めるときは,これを罷免することができる。
① 品位を辱める行状,修習の態度の著しい不良その他の理由により修習を継続することが不相当であるとき。
② 病気,成績不良その他の理由により修習を継続することが困難であるとき。
③ 本人から願出があったとき。
(2) 71期以降の罷免事由については,「司法修習生の罷免」を参照してください。

3 59期のほか,70期以降については,罷免人数の人数が不明であること
(1) 平成29年6月14日付の司法行政文書不開示通知書によれば,第59期司法修習生について,罷免事由別に司法修習生を罷免された人の数が分かる文書は存在しません。
(2) 平成30年2月2日付の司法行政文書不開示通知書によれば,第70期司法修習生について,罷免事由別に司法修習生を罷免された人の数が分かる文書は存在しません。
(3)ア 平成31年1月9日付の司法行政文書不開示通知書によれば,第71期司法修習生について,罷免事由別に司法修習生を罷免された人の数が分かる文書は存在しません。
イ 令和元年度(最情)答申第35号(令和元年8月23日答申)には以下の記載があります。
   最高裁判所事務総長の上記説明によれば,第71期司法修習生のうち裁判所法に基づき罷免等とされた人数や罷免事由別の人数が分かる文書について,裁判所において現状ではこのような文書を作成する必要はないため,本件開示申出文書を作成又は取得していないとのことである。本件開示申出文書については,裁判所が司法修習に関する事務を遂行するに当たって必ず作成されなければならない性質の文書であるともいえないことからすれば,このような説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
(4) 令和2年3月31日付の司法行政文書不開示通知書によれば,第72期司法修習生について,罷免事由別に司法修習生を罷免された人の数が分かる文書は存在しません。

4 司法修習生の罷免に関する事項は不開示情報であること
(1) 平成30年4月11日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
   司法修習生の罷免に関する事項は,司法修習生の人事事務に関する担当者等の一部の関係職員以外には知られることのない秘密性の高い情報であり,これらのうち,特に罷免理由を公にすると,どのような事案で罷免されるのか(されないのか)といった内容が明らかとなり,今後,同種事案において,事実確認等に係る事務に支障を生じる可能性があるため,法第5条第6号ニが不開示情報として定める情報に相当する。
(2) 平成30年5月31日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
   司法修習生の罷免事由の有無に係る調査事項並びに司法修習生の弁明書及び提出された資料の内容が明らかになり,今後の公正かつ円滑な調査及び資料収集事務に好ましくない影響を与える等,適正な司法修習生の罷免手続事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある(法第5条第6号ニ)。
(3)ア 平成31年3月26日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「全国の実務修習地から送付された,71期司法修習生に関する,罷免,修習の停止,戒告の該当事由及び非違行為の報告」は,その枚数も含めて不開示情報です。
イ 令和元年5月30日付の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
本件対象文書には,第71期司法修習生の氏名や行状等が記載されており,これらは個人識別情報に該当し,行政機関情報公開法(以下「法」という。)第5条第1号に定める不開示情報に相当する。
また,本件対象文書の性質及び内容を踏まえると,標題及び様式等を含む,本件対象文書に記載されている情報並びに実務修習を委託している各配属庁会から送付された本件対象文書の枚数は,全体として,公にすると,司法修習生の非違行為等に関する調査事項や調査量,提出された資料の内容及び分量が推知されることになり,今後の公正かつ円滑な調査及び資料収集事務に好ましくない影響を与えるなど,今後の人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当し,法第5条第6号二に定める不開示情報に相当する。
したがって,標題及び様式等を含む本件対象文書に記載されている情報並びに実務修習を委託している各配属庁会から送付された本件対象文書の枚数は,全体として法第5条第1号及び第6号二に規定する不開示情報に相当する。

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