司法修習生の罷免

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目次
1 70期司法修習生までの罷免事由
2 71期司法修習生以降の罷免事由
3 司法修習生に罷免事由等がある場合の取扱い
4 司法修習生の罷免に関する事項は不開示情報であること
5 司法修習生の罷免と修習専念資金
6 国家公務員の懲戒処分等の取扱い
7 女性の司法修習生の妊娠は依願罷免及び再採用につながること
8 関連記事その他

1 70期司法修習生までの罷免事由
(1) 司法修習生は,以下のいずれかに該当した場合,罷免されます(司法修習生に関する規則17条)。
1号 禁錮以上の刑に処せられた場合
→ 執行猶予付の有罪判決を受けた場合も含まれます。
2号 成年被後見人又は被保佐人となった場合
3号 破産手続開始決定を受けた場合
(2)ア 司法修習生は,以下のいずれかに該当した場合,罷免されることがあります(司法修習生に関する規則18条)。
1号 品位を辱める行状、修習の態度の著しい不良その他の理由により修習を継続することが不相当であるとき。
→ 「品位を辱める行状」を理由に罷免されたのは23期,33期,34期及び70期の4人です。
2号 病気、成績不良その他の理由により修習を継続することが困難であるとき。
→ 例えば,二回試験に不合格となった場合,退職願を提出しなければ,「成績不良により修習を継続することが困難であるとき。」を理由として罷免されます。
3号 本人から願い出があったとき
→ 例えば,二回試験に不合格となった場合,退職願を提出すれば,「本人から願い出があったとき。」を理由として罷免されます。
イ 司法修習生に関する規則18条は,平成18年4月1日施行の平成18年2月23日最高裁判所規則第3号により,5号まであった条文が3号までとなりました。
新旧の条文が平成18年1月24日の司法修習委員会(第10回)資料一覧の資料35として掲載されています。
ウ 平成18年の改正前の罷免事由は以下のとおりでした。
1号 品位を辱める行状があったとき
2号 修習の態度が著しく不真面目なとき
3号 成績不良で修習の見込みがないとき
4号 病気のため修習に堪えないとき
5号 本人から願出があったとき
(3) 昭和46年4月6日の毎日新聞朝刊1頁によれば,修習の態度の著しい不良を理由に昭和44年にあった罷免事例が,最初の司法修習生の罷免事例であるとのことです。
   また,昭和55年11月13日の毎日新聞夕刊によれば,同日時点で司法修習生が罷免された前例は4人であり,うち2人は本人からの申出であり,1人は修習の態度の著しい不良が罷免理由であり,1人は阪口徳雄修習生です。

2 71期司法修習生以降の罷免事由
(1) 分限的措置としての罷免(裁判所法68条1項)

ア 最高裁判所は、司法修習生に成績不良、心身の故障その他のその修習を継続することが困難である事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは、最高裁判所の定めるところにより、その司法修習生を罷免することができます(裁判所法68条1項)。
イ 裁判所法68条1項に基づき,司法修習生に関する規則17条1項は以下のとおり定めています。
   法第六十八条第一項の最高裁判所の定める事由は、次に掲げる事由とする。
一 成績不良又は心身の故障により、修習を継続することが困難であるとき。
二 禁錮以上の刑に処せられたとき。
三 後見開始又は保佐開始の審判を受けたとき。
四 破産手続開始の決定を受けたとき。
五 本人から願出があつたとき。
六 第二号から前号までに掲げるもののほか、第一号に掲げる事由に準ずる事由
ウ 二回試験に落ちた場合,司法修習生に関する規則17条1項1号の「成績不良」に該当することを理由に罷免されると思います。
(2) 懲戒的措置としての罷免(裁判所法68条2項)

ア 最高裁判所は、司法修習生に品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは、最高裁判所の定めるところにより、その司法修習生を罷免し、その修習の停止を命じ、又は戒告することができます(裁判所法68条2項)。
イ 裁判所法68条2項に基づき,司法修習生に関する規則17条2項は「法第六十八条第二項の最高裁判所の定める事由は、品位を辱める行状、修習の態度の著しい不良その他これらに準ずる事由とする。」と定めています。

3 司法修習生に罷免事由等がある場合の取扱い
(1)ア 司法研修所長は,司法修習生に罷免事由がある場合,最高裁判所長官に報告しなければなりません(司法修習生に関する規則19条1項)。
イ 高等裁判所長官,地方裁判所長,検事長,検事正及び弁護士会会長は,監督の委託を受けた司法修習生に罷免事由がある場合,司法研修所長を経て,最高裁判所長官に報告しなければなりません(司法修習生に関する規則19条2項)。
(2) 平成18年11月9日開催の司法修習委員会(第11回)資料38には,「司法修習生の罷免が,当該司法修習生の権利義務の消滅につながるものであることから,罷免事由の最高裁判所への報告(司法修習生に関する規則19条)に当たって,司法研修所長又は地方裁判所長等は,事実関係を慎重に調査するとともに,対象となる司法修習生の弁明を聴くなどの措置を講ずることとする。」と書いてあります。
(3) 平成29年12月8日臨時総会決議による改正後の日弁連会則85条は,「弁護士会において修習中の司法修習生に罷免、修習の停止又は戒告の事由があると認めるときは、弁護士会は、直ちに、本会に通知しなければならない。」と定めています。
(4) 平成30年3月14日付の司法行政文書不開示通知書によれば,70期司法修習生を罷免するに際し,司法研修所が作成した司法修習生に関する規則19条に基づく報告書は,全体として不開示情報に相当します。
(5) 司法修習生に関する規則第19条第2項の報告について(平成29年11月1日付の司法研修所長通知)を掲載していますところ,その内容は以下のとおりです。
1 監督の委託を受けた司法修習生について,規則第19条第2項の規定により最高裁判所に対する報告をする場合には,あらかじめ当該司法修習生に対して次の事項を告げた上,弁明の機会を与えるものとする。ただし,当該司法修習生が所在不明又は心身の故障等により弁明することができないときは,この限りでない。
(1) 規則第18条第1号又は第2号に定める事由に該当する疑いのある事実関係
(2) 規則第19条第2項の規定による報告の対象とする旨
(3) 弁明書の提出先及び提出期限
2 規則第19条第2項の規定による報告をする際には,当該司法修習生が提出した弁明書その他の資料(1ただし書により弁明の機会を与えなかったときにあっては,弁明することができない事情を記載した文書)を併せて送付するものとする。 
※ なお,集合修習中等において,司法修習生に規則第18条第1号又は第2号に当たる事由があると認め,司法研修所長が規則第19条第1項の規定により最高裁判所に報告する場合にも,上記と同様の弁明の機会が与えられる。
(6) 平成30年5月24日付の司法行政文書不開示通知書によれば,裁判所法を除き,司法修習生について戒告,修習の停止又は罷免の懲戒処分をする場合の決定権者が分かる文書は存在しません。
(7) 司法修習ナビゲーションHP「質問:いずみ寮について教えてください。」によれば,作成者である53期の弁護士の場合,火気厳禁のいずみ寮の部屋において火災報知器を大きめの紙皿で覆ってしまった上で,部屋の中にガスコンロを持ち込んで10人くらいで焼き肉パーティーやしゃぶしゃぶパーティーをしていたそうです。
(8)ア 平成29年8月28日発生の,司法研修所いずみ寮談話室における70期司法修習生の偽名記載事案に関する最高裁判所の開示文書を掲載しています。男性の司法修習生5人,女性の司法修習生2人が午後11時35分頃まで談話室で騒いでいました。
イ 平成30年4月11日付の司法行政文書不開示通知書によれば,司法研修所の警備員が,司法修習生のルール違反を見つけた場合,氏名,番号及び組を記載させることになっていることが分かる文書は存在しません。


4 司法修習生の罷免に関する事項は不開示情報であること
(1) 平成30年4月11日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
   司法修習生の罷免に関する事項は,司法修習生の人事事務に関する担当者等の一部の関係職員以外には知られることのない秘密性の高い情報であり,これらのうち,特に罷免理由を公にすると,どのような事案で罷免されるのか(されないのか)といった内容が明らかとなり,今後,同種事案において,事実確認等に係る事務に支障を生じる可能性があるため,法第5条第6号ニが不開示情報として定める情報に相当する。
(2) 平成30年5月31日付の最高裁判所事務総長の理由説明書によれば,司法修習生の罷免事由の有無に係る調査事項並びに司法修習生の弁明書及び提出された資料の内容が明らかになった場合,今後の公正かつ円滑な調査及び資料収集事務に好ましくない影響を与える等,適正な司法修習生の罷免手続事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるそうです。

5 司法修習生の罷免と修習専念資金
(1) 司法修習生を罷免された場合,原則として,修習専念資金の貸与金について期限の利益を失います(司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則8条2項1号・6条2号)。
(2) 二回試験に不合格となったことを理由として罷免された場合,当該罷免の時点で司法修習生への再採用を希望していれば,例外的に期限の利益を失いません(司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則8条2項1号括弧書き・修習資金貸与要綱21条3項1号)。

6 国家公務員の懲戒処分等の取扱い
(1) 国家公務員の場合,懲戒処分が公表されます(「懲戒処分の公表指針について」(平成15年11月10日総参-786)(人事院事務総長発))。
① 職務遂行上の行為又はこれに関連する行為に係る懲戒処分
② 職務に関連しない行為に係る懲戒処分のうち、免職又は停職である懲戒処分
(2) 寺西判事補事件に関する最高裁大法廷平成10年12月1日決定の裁判官尾崎行信の反対意見には以下の記載があります。
   裁判所は、司法審査権能を適正に行使したことを内外に示すため、本来の司法裁判の原則に照らし、最も公正な手続を採り、司法過程を最大限透明にし、当事者及び世人の危ぐを払拭すべきである。裁判官の職にある者がした裁判であるということだけでは、公正・中立を保障するものではなく、また、その無びゅう性を担保するものでもない。公正・中立は、公開・対審の手続を経ることによって保障の実が上げられるというべきである。公開法廷において、直接主義、口頭主義の原則の下に審理を尽くすことこそが、単に被処分者の基本的人権を保障するだけでなく、裁判所の公正・中立を社会に公示し、その信頼性を確保することとなるのである。
(3) 最高裁平成23年6月7日判決の裁判要旨は以下のとおりです。
   建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づいてされた一級建築士免許取消処分の通知書において,処分の理由として,名宛人が,複数の建築物の設計者として,建築基準法令に定める構造基準に適合しない設計を行い,それにより耐震性等の不足する構造上危険な建築物を現出させ,又は構造計算書に偽装が見られる不適切な設計を行ったという処分の原因となる事実と,同項2号及び3号という処分の根拠法条とが示されているのみで,同項所定の複数の懲戒処分の中から処分内容を選択するための基準として多様な事例に対応すべくかなり複雑な内容を定めて公にされていた当時の建設省住宅局長通知による処分基準の適用関係が全く示されていないなど判示の事情の下では,名宛人において,いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることができず,上記取消処分は,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き,違法である。
(4) 外部HPの「罪刑法定主義と公事方御定書7(知らしむべからず)」には以下の記載があります。
   江戸時代には、「国民に知らせるべきだ」という考えは全くなくて、
   「凡(およそ)法ヲ立ル二ハ、法ノ奥ヲ民二知ラセズ,此法ヲ犯サバイカナル刑二処セラレント危ブミ懼レサスルヲ善トス」
   と言う思想に基づき、民をして「依ラシムべシ、知ラシムべカラズ」が当時の為政者の共通認識であったのです。
   むしろ、何も教えないでただ、恐ろしい刑罰のみを公開して「危ぶみ懼レサスル」だけでした。
   「何をしたらどうなる」までは、国民には教えない方が良いとされていたのです。
   そういうわけで、慶安のお触れ書きに始まって、次々と出るお触れや、各種諸法度では、贅沢をしてはいけない、何々をしてはいけないとか、禁止を言うばかりで、違反したらどういう処罰が有るのかが書いていないのです。

7 女性の司法修習生の妊娠は依願罷免及び再採用につながること
(1) 導入修習,集合修習といったそれぞれの修習単位について半分までの欠席しか認めれていません(民間労働者の場合,産後6週間の女性の就業が禁止されていることにつき労働基準法65条2項ただし書参照)。
   そのため,女性の司法修習生が妊娠した場合,いったん罷免された上で,次年度の司法修習生として再採用される必要がありますから,司法修習の終了が1年遅れることとなります。
(2) 令和2年10月現在,八重洲グローカル法律事務所「弁護士紹介」に載ってある武井由紀子弁護士の経歴として以下の記載があります。
2008年3月 一橋大学法科大学院法務研究科卒業
同年9月   新司法試験合格
同年11月   最高裁判所司法研修所入所(新62期)
2009年3月  同司法修習生依願罷免(出産につき)
2010年12月 最高裁判所司法研修所終了(新63期)、弁護士登録(横浜弁護士会)
2015年12月 第一東京弁護士会に登録替


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