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司法修習生の罷免―事由,手続,再採用及び給付・貸与への影響(AI作成)

第1 罷免は懲戒に限られない

司法修習生の罷免は,司法修習生としての身分を失わせる処分であり,非行を理由とする場合に限られない。
裁判所法68条は,修習継続が困難である場合の罷免と,司法修習生に適しない非行を理由とする罷免等を別々に定めている。
罷免する権限を有するのは最高裁判所であり,同法12条1項によれば,最高裁判所の司法行政事務は裁判官会議の議による。

本記事は,令和8年8月30日を基準日として,平成29年11月1日以降に採用された司法修習生に適用される罷免制度を扱う。
同日前に採用された司法修習生の罷免等には,平成29年法律第23号附則4項により従前の例による経過措置があるため,過去の事例に登場する条番号を現在の制度と混同しないことが重要である。

以下では,修習継続の困難等による罷免を分限に関するもの,非行による罷免を懲戒に関するものとして区別する。
戒告・修習停止の内容及び制度の沿革は,司法修習生に対する戒告及び修習の停止及び戒告・修習停止を追加した理由を参照されたい。

第2 罷免の事由

1 修習継続が困難な場合等

司法修習生に関する規則17条1項は,裁判所法68条1項の罷免事由を次の5つに分けている。
①成績不良又は心身の故障により,修習を継続することが困難であること。
②拘禁刑以上の刑に処せられたこと。
③破産手続開始の決定を受けたこと。
④本人から願出があったこと。
⑤②~④以外で,①に準ずる事由があること。

規則の本文は,司法研修所の司法修習ハンドブック(令和7年1月)40頁~41頁(PDF45頁~46頁)に収録されている。
同ハンドブックの刑名は改正前の表記であるが,令和7年最高裁判所規則第3号13条によって「拘禁刑」に改められており,本記事では同年6月1日施行後の表記を用いる。

本人の願出も罷免事由に含まれるため,「罷免された」という事実だけから非行があったとはいえない。
また,裁判所法68条1項は罷免することができると定めており,事由の発生と同時に当然に身分を失うという構造ではない。

2 非行を理由とする場合

規則17条2項は,品位を辱める行状,修習の態度の著しい不良及びこれらに準ずる事由を定めている。
裁判所法68条2項による処分には罷免だけでなく,修習停止及び戒告もあるため,問題となる行為があれば必ず罷免されるという意味ではない。

過去の個別事例は品位を辱める行状を理由とする罷免事例及び再採用,集計資料は司法修習生の罷免事由別の人数に掲載している。
これらを参照する際も,処分時点の制度及び集計の対象期を確認し,過去の集計値を現在までの累計と読み替えないことが重要である。

第3 報告と弁明の手続

規則19条1項は,司法研修所長が罷免等の事由があると認めるときに,最高裁判所へ報告することを定めている。
同条2項の監督者による報告は,司法研修所長を経て最高裁判所へ行うものであり,報告先は最高裁判所長官個人ではない。

司法研修所長の令和2年8月26日付け通知「司法修習生に関する規則第19条第2項の報告について」は,規則17条1項1号・5号又は2項の事由に関する報告に先立ち,本人に次の事項を告げ,弁明の機会を与える取扱いを定めている。
①当該事由に該当する疑いのある事実関係。
②規則19条2項による報告の対象とする旨。
③弁明書の提出先及び提出期限。

ただし,本人が所在不明である場合や,心身の故障等により弁明できない場合には例外がある。
報告時には本人の弁明書その他の資料を併せて送り,例外により弁明の機会を与えなかった場合には,弁明できない事情を記載した文書を送るとされている。

同通知は,司法研修所長が規則19条1項により報告する場合にも,同様の弁明の機会を与えるとしている。
以上はハンドブック49頁(PDF54頁)に収録された通知に基づく説明であり,公開の法廷で行う裁判手続と同じものではない。

第4 二回試験不合格と再採用

司法修習生考試,いわゆる二回試験の不合格による罷免は,非行による懲戒罷免とは区別される。
司法研修所長の令和7年3月31日付け通知は,第77期の不合格者について,同月26日付けで裁判所法68条1項及び規則17条1項1号により罷免されたと記載している。

最高裁判所の司法修習生採用選考審査基準(令和7年8月27日)は,司法修習生であった者の不採用事由として,成績不良により修習困難であることなどを挙げる一方,この成績不良から二回試験の不合格を除いている。
したがって,二回試験に不合格となって罷免されたことだけで,再採用が一律に否定されるわけではないが,再採用にも選考があり,他の不採用事由や所定の手続が問題となる。

同基準には,二回試験に連続して3回合格しなかった者を不採用とする定めがある。
ただし,再度司法試験に合格した者は除かれ,病気その他やむを得ない事情により考試の全部又は一部を受験できなかった場合には,当該考試を受験回数として数えないことができるとされている。

この審査基準は,基準日現在の令和8年度司法修習生採用選考の案内からも参照できる。
不合格後の手続全体は,二回試験に不合格となった場合の取扱いを参照されたい。

第5 病気・妊娠・出産と長期欠席

病気や妊娠・出産があれば,それだけで当然に罷免されるわけではない。
令和7年1月のハンドブック19頁~20頁(PDF25頁~26頁)は,療養のため修習しないことがやむを得ない場合や,出産予定・出産の場合の欠席承認を説明しており,欠席の承認と修習継続の困難を理由とする罷免とは別の問題である。

同ハンドブック18頁~19頁(PDF24頁~25頁)は,病気その他の正当な理由により修習しなかった所定の日数について,45日以内を修習した期間とみなす取扱いを説明している。
これは欠席を自由に選べる日数ではなく,正当な理由と欠席承認を前提とする修習期間算入の取扱いである。

他方,同ハンドブック19頁(PDF25頁)によれば,正当な理由がある場合でも,各実務修習又は集合修習の修習単位において,修習を要する日の2分の1を超えて欠席すると,その修習単位の成績は原則として不可となる。
修習期間に算入できるかという問題と,個々の修習単位の成績評価は区別して確認する必要がある。

ここで示した欠席運用の出典は令和7年1月版であり,個別の申請では,配属庁会・司法研修所から示される当該期の取扱いも確認することになる。
欠席承認,休暇及び懲戒としての修習停止の違いは,司法修習生の欠席・休暇・修習停止を参照されたい。

第6 給付金・貸与金への影響

1 給付金の日割り

司法修習生の修習給付金の給付に関する規則2条2項1号及び4条3項1号は,身分を保有しない期間を含む給付期間の基本給付金・住居給付金について,日割り計算を定めている。
罷免の場合に身分を保有しない期間とされるのは,罷免された日の翌日から当該給付期間の末日までであり,罷免日の属する暦月の全額が当然に不支給となるわけではない。

給付期間の途中で再採用された場合には,その給付期間の初日から再採用日の前日までが,身分を保有しない期間となる。
給付金の日割りと,以下の貸与金の貸与終了・返還は,別の規定に基づく取扱いである。

2 貸与終了と一括返還

司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則6条2号によれば,罷免された日の属する貸与単位期間の次の貸与単位期間以降は,修習専念資金を貸与しない。
罷免日が貸与単位期間の初日である場合は,その貸与単位期間から貸与しない取扱いとなる。

同規則8条2項1号は,罷免された場合,最高裁判所の定める例外に該当するときを除き,直ちに返還未済額の全部を返還しなければならないと定めている。
ただし,二回試験不合格や傷病・妊娠・出産等の場合には,次の例外がある。

3 再採用希望者の返還の例外

修習専念資金貸与要綱21条3項は,二回試験不合格,又は傷病・妊娠・出産等を理由として,規則17条1項1号又は4号による罷免をされた場合を,上記の一括返還の例外としている。
ただし,罷免の時点で司法修習生への再採用を希望しない場合は,この例外に含まれない。

例外は無期限ではなく,同条4項は,再採用を希望しなくなった場合や,将来修習を終えないことが確実であると明らかに認められる場合には,例外に該当しなくなると定めている。
二回試験不合格の場合には,最初に不合格となった考試の次の次の考試に係る通常修習期間の末日までに修習を終えなかったときも,例外が終了する。

傷病・妊娠・出産等の場合の期限は,罷免前の修習に係る通常修習期間の開始日から5年を経過する日の属する月の初日以降に,最初に開始する通常修習期間の末日である。
罷免日から単純に5年間という意味ではなく,この期限までに修習を終えなければ例外は終了するため,再採用の問題と併せて確認する必要がある。

これらは罷免を理由とする直ちの一括返還についての例外であり,貸与金の返還そのものを免除する制度ではない。
返還期限の猶予や返還免除は,裁判所法67条の3第3項・第4項等の別の要件による。

第7 不開示資料と不服申立て

1 第三者への開示と本人の弁明

最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の平成30年度(最情)答申第32号は,特定の裁判官会議議事録に記載された司法修習生の氏名・修習期・罷免理由等を不開示とした判断を妥当とした。
同委員会の同年度答申第41号は,70期司法修習生の罷免に関して作成された特定の報告書について,全部不開示の判断を妥当としている。

これらは特定文書の第三者への開示をめぐる答申であり,裁判所の判決ではない。
本人に対する事実関係の告知や弁明の機会とは場面が異なるため,不開示の判断から,本人にも理由を知らせず弁明を認めなくてよいと導くことはできない。

不開示理由及び対象文書の説明は,司法修習生の罷免理由等の不開示―答申と開示制度(AI作成)を参照されたい。
開示の可否は,当該答申が対象とした文書と情報の範囲に即して読むことが重要である。

2 処分を争う場合の期限

罷免処分の取消訴訟を検討する場合,行政事件訴訟法14条の出訴期間に注意を要する。
原則として,処分があったことを知った日から6か月,処分の日から1年という両方の制限があり,いずれも正当な理由がある場合の例外が定められている。

同法25条1項により,取消訴訟を提起しただけでは処分の効力等は停止しない。
執行停止を求める場合には,別途の申立てと,重大な損害を避けるための緊急の必要等の要件の検討を要し,申立てをすれば当然に認められるものではない。

本人の弁明書,提出資料,処分の通知内容及び通知を受けた日は,理由や手続を検討する際の確認対象となる。
訴訟の構成や不服申立ての制度全体は,司法修習生の罷免・修習停止等に対する不服申立方法を参照されたい。

第8 出典

1 法律・最高裁判所規則

e-Gov法令検索「裁判所法」12条,67条~68条及び平成29年法律第23号附則1項~4項(令和8年8月30日確認)。
e-Gov法令検索「行政事件訴訟法」14条及び25条(令和8年8月30日確認)。
③最高裁判所「司法修習生に関する規則」6条,17条及び19条(司法研修所「司法修習ハンドブック(令和7年1月)」39頁~41頁,PDF44頁~46頁所収)。
④最高裁判所「刑事訴訟規則等の一部を改正する規則」(令和7年2月12日最高裁判所規則第3号)13条及び附則1条(裁判所時報第1857号(令和7年3月1日)別添2の21頁~22頁,PDF21頁所収)。
⑤最高裁判所「司法修習生の修習給付金の給付に関する規則」2条2項1号及び4条3項1号(PDF1頁~2頁)。
⑥最高裁判所「司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則」6条2号及び8条2項1号(PDF2頁~4頁)。

2 運用・選考資料

①司法研修所「司法修習ハンドブック(令和7年1月)」18頁~20頁,39頁~41頁及び49頁(PDF24頁~26頁,44頁~46頁及び54頁)。
②司法研修所長「司法修習生に関する規則第19条第2項の報告について」(令和2年8月26日司研企二第486号,同ハンドブック49頁,PDF54頁所収)。
③司法研修所長「第77期司法修習生考試の不合格者及び不合格者の罷免について」(令和7年3月31日司研企二第189号)通知本文(PDF1頁)。
④最高裁判所「司法修習生採用選考審査基準」(令和7年8月27日)記1・2(1頁~2頁,PDF1頁~2頁)。
⑤最高裁判所「修習専念資金貸与要綱」21条3項・4項(9頁~10頁,PDF9頁~10頁)。

3 情報公開に関する答申

①最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会「平成30年度(最情)答申第32号」(平成30年9月21日)第1及び第6(1頁~3頁,PDF1頁~3頁)。
②同委員会「平成30年度(最情)答申第41号」(平成30年11月16日)第1及び第6(1頁~3頁,PDF1頁~3頁)。