目次第1 資料の位置付けと読み方1 転記の範囲と原資料2 導入修習の目的と7つの区分3 初年度の評価と現在の修習準備第2 民事裁判1 即日起案・解説2 民事事実認定の手法と解説3 裁判官の役割・職務・心構え,裁判修習のガイダンス(刑事裁判と共通)第3 民事弁護1 講義2 問題研究(即日起案等)3 演習第4 民事共通1 民事第一審手続の概説(講義)2 民事総合1・2第5 刑事裁判1 講義(事前課題解説等)2 即日起案・事実認定関係の事前課題の解説第6 検察1 導入講義2 即日起案3 捜査演習4 即日起案講評+検察官の心構え等第7 刑事弁護1 講義12 即日起案・解説3 講義2第8 刑事共通1 刑事基本問題研究2 刑事共通演習基礎(公判前整理手続)第9 関連記事と出典
第1 資料の位置付けと読み方
1 転記の範囲と原資料
本記事は,裁判所の情報公開により取得した司法研修所の「68期導入修習カリキュラムの概要」の科目別本文を転記したものである。原記事では,平成27年7月の司法修習生指導担当者協議会で配付された資料として紹介していた。原資料の表紙には「資料11」,「平成27・3・4」,「司法研修所」と記載されており,資料の作成日と配付時期は区別して読む必要がある。
原資料の「はしがき」は本文転記から省略されている。本記事では,その目的を次節に補い,読める目次・見出しを付けて整理した。ナンバリングと見出しの形式を整え,原資料と照合した誤字を補正している。科目別本文に記載された事案,起案事項及び当時の法令を前提とする説明は,当時の実施例として掲載している。
原資料「68期導入修習カリキュラムの概要」(表紙及び本文1~16頁)
2 導入修習の目的と7つの区分
原資料の「はしがき」(本文1頁)は,不足している実務基礎知識・能力に気付かせることと,分野別実務修習をより効果的・効率的かつ円滑に行えるようにすることを目的としている。以下の転記は,民事裁判,民事弁護,民事共通,刑事裁判,検察,刑事弁護及び刑事共通という7区分からなる。5科目に民事・刑事の共通カリキュラムを加えた構成である。
個々のカリキュラムでは,事前課題,講義・討論,即日起案・演習,解説・講評を組み合わせている。例えば,民事弁護の問題研究では,事前の事案検討・訴状起案を踏まえ,追加記録による第一準備書面の起案,その講評へと進んでいる。すべての区分で同じ順序を採るという趣旨ではない。
3 初年度の評価と現在の修習準備
司法研修所の公式評価は,初年度の二つの目的について一定の成果を認めつつ,個別カリキュラムの負担や時間配分,事前学修,科目間の連携等を課題に挙げている。その後の第69・70期への見直しは,「導入修習の初年度評価とカリキュラムの改訂」で整理している。
以下は第68期の歴史資料であり,現在の期の教材・起案事項・提出方法・日程を示すものではない。現在の準備では,自分の期に配布された通知と課題を優先し,最高裁判所「司法修習の概要」と,そこから案内される教官室のページも確認されたい。
第2 民事裁判
1 即日起案・解説
(1) 目的
実体法の基本的知識,訴訟物や要件事実についての基本的理解を確認するとともに,その継続的な学修の必要性を認識させる目的で実施した。
(2) 事案の概要
事案は,鶏卵等の販売を業とする会社である原告が,取引先である訴外会社に不良卵を納入して損害が発生したため,これを踏まえ,訴外会社が,原告からの従前からの借入金や買掛金を相当減額して,原告に支払う旨の和解契約が締結されたが,訴外会社が,和解金の支払をせず,同社所有地に,訴外会社代表者の娘婿である被告の訴外会社に対する準消費貸借に基づく貸金債権を被担保債権とする抵当権を設定したことから,被告に対し,主位的に,①債権者代位権を行使して,所有権に基づき同抵当権設定登記の抹消登記手続を請求するとともに,予備的に,②詐害行為取消権に基づいて,同抵当権設定契約の取消し及び同抵当権設定登記の抹消登記手続を請求した(第1回弁論準備手続期日において予備的請求にかかる訴えを取下げ)というものである。修習生には,このような内容の38頁の記録を与えて,(3)の設問について3時間で即日起案をさせた。
(3) 起案事項等
設問は,①訴訟物(個数・複数の場合は併合態様),②請求原因,抗弁,再抗弁などを整理し小ブロックを摘示,③請求原因として摘示した主張の記載理由の説明, ④予備的請求にかかる訴えを取り下げた理由(原告代表者から訴外会社代表者に宛てられた手紙に,早期に抵当権設定を認識していたことを自認する記載があり,これが書証として提出されているため,時効(2年)の抗弁が確実に認められる。)の4問である。
編集注:上の「時効(2年)」は,当時の原資料の記載である。現行民法426条は,債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年,行為の時から10年を経過すると,詐害行為取消請求に係る訴えを提起できないと定める。現在の制度と区別するため,原資料の表現は残している(民法426条)。
また,起案終了後に,記録上の期日の次回期日までに当事者が提出した準備書面及び書証を内容とする追加の記録を配布した。
(4) 講評
起案の講評に加えて,契約書,登記簿謄本,領収書,決算報告書,総勘定元帳などの基本的な書証の見方を解説した上,中心的争点の判断に当たり着目すべき証拠や事実についても解説を行って,事実認定教育の導入とした。
2 民事事実認定の手法と解説
「対話で考える民事事実認定ー教材記録一」を使用し,また,これを題材として制作したDVD教材を視聴しながら,事実認定の手法を学ぶカリキュラムである。
事案は,割賦販売業者である原告が,被告が自動車販売会社から購入した自動車の代金について,被告と立替払契約を締結し,販売会社に対して立替金を支払ったと主張して,被告に対し,立替金の未払残金と遅延損害金の支払を求めたのに対し,被告は,立替払契約の締結を否認し,契約書は長男が被告の実印を盗用して偽造したと主張して争っているというものである。
修習生には,修習開始前に,上記記録教材を配布し,事前課題として,事実認定のサマリー起案の提出を求めた。
その上で,講義では,訴訟物,要件事実,争いのある主要事実,積極・消極方向の間接事実について討議・講評をして,事実認定の基本的な手法や,その際の留意事項を説明した。講義は,上記DVD教材の視聴を挟みながら実施した。DVD教材には,当該事件の担当裁判官とその下で民裁実務修習を行っている修習生が登場し,修習生が裁判官の指導を受けながら当該事件についてサマリー起案を行い,判決言渡しに至る様子が描かれている。DVDを視聴した修習生は,本件記録教材の世界がDVDの中で再現されているのを見つつ,自分が取り組んだ事前課題と同じ課題に取り組む出演の修習生に入り込むことで,事実認定の手法を修得することができる作りとなっている。
3 裁判官の役割・職務・心構え,裁判修習のガイダンス(刑事裁判と共通)
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