71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由


目次

第1 71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由
第2 関連記事その他

第1 71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由
・ 71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由が書いてある,法務省が作成した「司法修習生に対する分限・懲戒的措置について」の本文は以下のとおりです。

1 分限的措置と懲戒的措置を法律上書き分ける理由
   現行裁判所法第68条は「最高裁判所は,司法修習生の行状がその品位を辱めるものと認めるときその他司法修習生について最高裁判所の定める事由があると認めるときは,その司法修習生を罷免することができる」と規定しており,法律上分限的措置(病気等による罷免)と懲戒的措置(修習の態度の不良等による罷免)につき書き分けていない(司法修習生に関する規則(最高裁判所規則第十五号)第17条及び第18条において書き分けている。)。
   本改正法では,修習手当の創設に伴い,懲戒的措置により罷免された場合に限り,司法修習生に対するその償還を義務付ける制度を設けることとしているほか,下記2のとおり,司法修習生に対する実効的かつ柔軟な規律確保等の方策として罷免以外の懲戒的措置(戒告,修習の停止)を設けることとしているため,法律上も分限的措置と懲戒的措置を書き分ける必要がある。
   そこで,裁判所法第昭条を二項に書き分けた上で,第1項において分限的措置としての罷免を,第2項において懲戒的措置としての罷免等を規定することとした。
2 罷免以外の懲戒的措置を設ける理由 
   現在,司法修習生につき司法修習生たるに適しない非行があった場合であっても,罷免以外の懲戒的措置は認められていない。
   したがって,現在では,司法修習生につき「罷免」することが適当とまではいい難い非行があった場合には懲戒的措置を課すことができず,司法研修所長又は配属庁会の長らが注意や指導をするに止まっているところであり,懲戒的措置として「罷免」以外の処分を設けることによって実効的かつ柔軟に司法修習生の規律確保を行うための方策が必要となっている。
   特に,修習給付金の創設に伴い,司法修習の確実な履践を担保することがより一層求められていることからも,司法修習生に対する懲戒的措置として「罷免」以外の懲戒的措置を新たに設けることで,司法修習生に課せられる規律を明確化する必要が生じている。
   そこで,司法修習生に対する懲戒的措置について,「退学」に対応する「罷免」に加え,「停学」に対応する「修習の停止」(司法修習生の身分は保有するが,一定期間修習をさせない処分)及び「戒告」(その責任を確認し,及びその将来を戒める処分)を設けることとする。
    なお,司法修習が司法制度の担い手たる法曹に必須の課程であり,修習内容も法曹に必要な能力等を養成するために高度に専門的であることなどに鑑み,司法修習生は修習期間中,修習に専念すべきものとされており,「修習の停止」を設けることにつき,かかる司法修習生の修習専念義務との関係が問題になる。

   「修習の停止」は,前記のとおり,司法修習生の身分は保有するが,ー定期間修習をさせない処分であり,その停止の期間については今後最高裁規則等で定められることになるが,その期間は短期間に止まることが予定されており,これによる当該司法修習生の司法修習の履践や法曹として活動を開始するに当たり必要な能力等の修得への影響は限定的である。かえって,これを反省・自戒の機会として,その後より一層司法修習に専念することが期待できるほか,当該司法修習生以外の周囲の司法修習生に対する教育的効果も期待できる。したがって,「修習の停止」は修習専念義務の趣旨と矛盾するものではなく,かえって修習専念義務の趣旨を貫徹することにつながる。
また,防衛大学生及び防衛医科大学生についても,自衛隊の隊員(自衛隊法(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)第2条第5項)として職務専念義務(同法第60条・具体的には教育訓練を受ける義務)を負い,かつ修業年限が限定されている(防衛大学校については4年,防衛医科大学校については6年又は4年)にもかかわらず,自衛隊法上,退学・戒告と並んで停学の懲戒処分が設けられているところであり,修習専念義務を負い,かつ,修習期間(約1年)が限定されている司法修習生について裁判所法上「修習の停止」の処分を設けることについてはこの意味でも法制上特に問題はないと考えられる。

第2 関連記事その他
1 源法律研究所HP「「分限」から見た法令用語辞典の注意点」には以下の記載があります。
    裁判官分限法(昭和二十二年法律第百二十七号)第3条第1項は、「各高等裁判所は、その管轄区域内の地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の裁判官に係る第一条第一項の裁判及び前条の懲戒に関する事件(以下分限事件という。)について裁判権を有する。」として、「回復の困難な心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合及び本人が免官を願い出た場合」(同法第1条第1項)と「懲戒」を合わせて「分限」と呼んでいることから、「身分保障の限界(例外)」の意味で「分限」を用いている。
2 以下の記事も参照してください。
・ 71期以降の司法修習生に対する戒告及び修習の停止
・ 司法修習生の罷免事由別の人数
 昭和44年7月1日付で特別採用された,東大卒業の23期司法修習生


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