第1 6期以降の司法修習生採用選考の内容
① 官報に掲載される司法修習生採用選考公告によれば,6期以降の司法修習生採用選考の内容は以下のとおりです(前の期から変化した部分を赤色で表示しています。)。
② 裁判所法66条1項は,司法試験に合格した者の中から最高裁判所が司法修習生を命ずると定めるにとどまり,選考の具体的な内容までは定めていません。東京地裁平成29年9月7日判決(判例秘書掲載)は,選考の内容の定め方が最高裁判所の合理的な裁量に委ねられていると判示しており,以下でみる期ごとの変化は,この裁量に基づくものです。
◯80期司法修習の場合
① 令和8年度司法修習生採用選考については,令和8年8月23日時点で,申込方法及び申込期間等は令和8年9月中旬頃に公表される予定であり,選考の内容はまだ公表されていません。
② 最高裁判所は,同時点で「司法修習生採用選考審査基準(令和7年8月27日付)」のみを公表しています。
◯79期司法修習の場合
① 選考の内容は,審査,健康状態判定,面接及びその他となりました。
② 審査は,選考申込みの内容により,司法修習生採用選考審査基準を満たすかどうかを審査するものでした。
③ 健康状態判定は,選考申込みの内容により,修習に耐えられる健康状態かどうかを判定するものでした。
④ 面接は,審査及び健康状態判定の結果,必要があると認める場合に実施されました。
⑤ その他は,選考申込みの内容について調査を行うものでした。
⑥ 必要に応じて,書類の提出等を求める場合がありました。
これらの変化は,79期から司法修習生採用選考の申込みが電子申込み(受付フォーム及び招待制の申込フォームによる方式)に切り替わったことと対応しています。「書面審査」から「書面」の文字が消えて「審査」となり,「提出書類の記載」という紙媒体を前提にした表現が「申込みの内容」という表現に置き換わりました。対面で行う面接の説明だけは変化していません。
◯76期から78期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,書面審査,健康状態判定,面接及びその他となり,75期から変化はありませんでした。
② 書面審査は,選考申込書等の提出書類の記載により,採用選考審査基準を満たすかどうかを審査するものでした。
③ 健康状態判定は,選考申込書等の提出書類の記載により,修習に耐えられる健康状態かどうかを判定するものでした。
④ 面接は,書面審査及び健康状態判定の結果,必要があると認める場合に実施されました。
⑤ その他は,選考申込書等の提出書類の記載事項について調査を行うものでした。
⑥ 必要に応じて,追加書類の提出等を求める場合がありました。
◯75期司法修習の場合
① 選考の内容は,書面審査,健康状態判定,面接及びその他となりました。
② 書面審査は,選考申込書等の提出書類の記載により,採用選考審査基準を満たすかどうかを審査するものでした。
③ 健康状態判定は,選考申込書等の提出書類の記載により,修習に耐えられる健康状態かどうかを判定するものでした。
④ 面接は,書面審査及び健康状態判定の結果,必要があると認める場合に実施されました。
⑤ その他は,選考申込書等の提出書類の記載事項について調査を行うものでした。
⑥ 必要に応じて,追加書類の提出等を求める場合がありました。
◯74期司法修習の場合
① 選考の内容は,書面審査,健康診断,面接及びその他となりました。
② 書面審査は,選考申込書等の提出書類の記載により,採用選考審査基準を満たすかどうかを審査するものでした。
③ 健康診断は,選考申込書等の提出書類の記載により,修習に耐えられる健康状態かどうかを判定するものでした。精密検査が必要と判定された場合等は,追加書類の提出や,最高裁判所での健康診断の受検を求められました。
④ 面接は,書面審査及び健康診断の結果,必要があると認める場合に実施されました。
⑤ その他は,選考申込書等の提出書類の記載事項について調査を行うものでした。
◯70期から73期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,書面審査,健康診断,面接及びその他となりました。
② 書面審査は,選考申込書等の提出書類の記載により,採用選考審査基準を満たすかどうかを審査するものでした。
③ 健康診断は,選考申込者が提出する健康診断票(所定の様式)に基づいて,修習に耐えられる健康状態かどうかを判定するものでした。精密検査が必要と判定された場合等は,追加書類の提出や,最高裁判所での健康診断(面接と同日に実施)の受検を求められました。
④ 面接は,書面審査及び健康診断の結果,必要があると認める場合に実施されました。
⑤ その他は,選考申込書等の提出書類の記載事項について調査を行うものでした。
⑥ 70期司法修習生の採用選考では,「禁錮以上の刑に処せられた者」という不採用事由に該当するとして不採用とされた例があります(司法修習生たる地位義務付け請求事件に関する東京地裁平成29年2月28日判決〔判例秘書掲載,裁判所HP未掲載〕参照)。
◯60期から69期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,書面審査,健康診断,面接及び欠格事由調査となりました。
② 書面審査は,選考申込書等の提出書類の記載により,選考資格の有無,欠格事由の有無等について審査するものでした。
③ 健康診断は,選考申込者が提出する健康診断票(所定の様式)に基づいて,修習に耐えられる健康状態かどうかを判定するものでした。精密検査が必要と判定された場合等は,追加書類の提出や,最高裁判所での健康診断(面接と同日に実施)の受検を求められました。
④ 面接は,書面審査及び健康診断の結果,必要があると認める場合に実施されました。
⑤ 欠格事由調査には国籍に関する事由も含まれていましたが,新63期(平成21年11月採用)から,日本国籍を有しないことは不採用事由とされなくなりました(詳細は後記「司法修習生の国籍条項に関する経緯」を参照してください。)。
◯59期司法修習の場合
① 選考の内容は,書面審査,健康診断,口述試験及び欠格事由調査となりました。
② 書面審査は,選考申込書等の提出書類の記載により,選考資格の有無,欠格事由の有無等について審査するものでした。
③ 健康診断は,選考申込者が提出する健康診断票(所定の様式)に基づいて,修習に耐えられる健康状態かどうかを判定するものでした。精密検査が必要と判定された場合等は,追加書類の提出や,最高裁判所での健康診断(口述試験と同日に実施)の受検を求められました。
④ 口述試験は,書面審査及び健康診断の結果,必要があると認める場合に実施されました。
◯57期から58期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,口述試験,健康診断及び身上調査でした。
② 健康診断の実施方法は,選考申込者が保健所,国公立病院又は大学病院等の公共の医療機関で受検するというものでした。
③ 口述試験は司法研修所(埼玉県和光市)で行われました。
◯51期から56期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,口述試験,健康診断及び身上調査でした。
② 健康診断の実施方法は,選考申込者に対して別途通知されました。
③ 口述試験は司法研修所(埼玉県和光市)で行われました。
◯47期から50期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,健康診断,口述試験及び身上調査でした。
② 健康診断は最高裁判所(東京都千代田区隼町)で,口述試験は司法研修所(埼玉県和光市)で行われました。
◯28期から46期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,健康診断,口述試験及び身上調査でした。
② 健康診断は最高裁判所(東京都千代田区隼町)で,口述試験は司法研修所(東京都文京区湯島)で行われました。
◯26期から27期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,身体検査,口述試験及び身上調査でした。
② 身体検査は最高裁判所(東京都千代田区霞ヶ関)で,口述試験は司法研修所(東京都文京区湯島)で行われました。
◯19期から25期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,身体検査,口述試験及び身上調査でした。
② 身体検査は最高裁判所(東京都千代田区霞ヶ関)で,口述試験は司法研修所(東京都千代田区紀尾井町)で行われました。
◯11期から18期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,口述試験,身体検査及び身上調査でした。
② 口述試験及び身体検査は,司法研修所(東京都千代田区紀尾井町)で行われました。
◯7期から10期までの司法修習の場合
① 選考の内容は,口述試験,身体検査及び身上調査であり,司法研修所(東京都千代田区紀尾井町)で行われました。
◯6期司法修習の場合
① 選考の内容は,口述試験,身体検査及び身上調査であり,司法研修所小石川分室(東京都文京区指ケ谷町)で行われました。
第2 選考区分の名称等の変遷(まとめ)
① 健康診断関係につき,50期以前は最高裁判所での実施であり,51期ないし73期は医療機関作成の健康診断票に基づくものとなり,74期は選考申込書等の提出書類の記載に基づくものとなりました。75期以降,「健康状態判定」という名称になりました。
② 面接(59期までは「口述試験」)につき,58期以前は一律に実施されていたのに対し,59期以降は,必要があると認める場合に実施されました。
③ 身上調査(27期までは「身体検査」)につき,59期以降は欠格事由調査となり,70期以降はその他となりました。欠格事由調査から「その他」への改称は,単なる呼称変更にとどまらず,欠格事由の実質的な判断基準を採用選考審査基準の本則側に統合し,「その他」を選考申込書等の記載事項の確認という残余的な作業として整理し直した,審査基準全体の再編の一部でした。
④ 79期からは,書面審査が「審査」となり,「選考申込書等の提出書類の記載により」という表現が「選考申込みの内容により」に改められました。これは,79期から採用選考の申込み自体が電子化されたことに伴う変化です。
司法修習生採用選考申込書につき,73期までは家族の状況及び補導歴を記載させていました。
しかし,74期司法修習生採用選考申込書では,逮捕歴の記載は残るものの,家族の状況及び補導歴の記載は不要となりました。— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) December 8, 2020
第3 関連記事その他
① 司法修習生の採用選考の必要書類
② 司法修習生の採用選考に関する公式文書
③ 司法修習生の採用選考に必要な書類の掲載時期
④ 司法修習生の司法修習に関する事務便覧
⑤ 司法修習生の旅費に関する文書
⑥ 採用内定留保者に対する面接(司法修習)
⑦ 司法修習開始前に送付される書類
⑧ 司法研修所の沿革
⑨ 恩赦の効果
⑩ 前科抹消があった場合の取扱い
⑪ 司法修習生の国籍条項に関する経緯
⑫ 司法修習生の採用選考で不合格となった人が出た修習期等
第4 出典
①法令
・裁判所法(昭和22年法律第59号)66条・67条(e-Gov法令検索)
②裁判例
・東京地裁平成29年9月7日判決(68期司法修習生採用選考の申込受付期間の適法性に関する事案,判例秘書掲載,裁判所HP未掲載)
・東京地裁平成29年2月28日判決(司法修習生たる地位義務付け請求事件,70期不採用に関する事案,判例秘書掲載,裁判所HP未掲載)
③最高裁判所の公表資料
・司法修習生採用選考(最高裁判所)(令和8年8月23日確認,令和8年度の内容は令和8年9月中旬頃公表予定)
・司法修習生採用選考審査基準(令和7年8月27日付)
・令和7年度司法修習生採用選考要項(第79期)
・令和6年度司法修習生採用選考要項(第78期)
・令和5年度司法修習生採用選考要項(第77期,令和5年9月8日付。裁判所HPの原本は既に削除されており,Internet Archive保存版で確認しました。)
・令和4年度司法修習生採用選考要項(第76期,令和4年7月1日付)(裁判所HPの原本は既に削除されており,山中弁護士が保存していたものです。)
・74期以前の各期の採用選考要項及び申込書式は,前記「司法修習生の採用選考に関する公式文書」に掲載しています。