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司法修習生の法的地位と外国人技能実習生との比較(AI作成)

第1 司法修習生を中心に比較する理由

1 この記事の主題

司法修習生と外国人技能実習生は,いずれも「修習」又は「実習」を通じて知識・技能を身に付ける者である。

しかし,司法修習生は最高裁判所が採用する法曹養成課程の修習者であり,国に労務を提供する労働者ではないのに対し,外国人技能実習生は,講習後の技能実習について実習実施者と雇用契約を締結する労働者である。

本記事では,司法修習生の採用,修習内容,修習専念義務,秘密保持義務,修習給付金,欠席,妊娠・出産,罷免及び関連裁判例を中心に説明し,外国人技能実習生については司法修習生の法的地位を理解するための比較対象として扱う。

2 結論を先に示す比較表

比較項目司法修習生外国人技能実習生
制度の目的判事補,検事又は弁護士となるための統一的な法曹養成開発途上地域等への技能等の移転を目的とする技能実習
基本的地位最高裁判所が採用する修習者であり,国家公務員又は国に労務を提供する者ではない講習後は実習実施者との雇用契約に基づく労働者
主な根拠法裁判所法66条以下,司法修習生に関する規則等外国人技能実習法,労働基準法,最低賃金法等
金銭基本給付金,住居給付金,移転給付金及び任意の修習専念資金労務提供の対価である賃金
専念・規律修習専念義務,秘密保持義務,兼業・兼職の制限雇用契約上の労務提供義務,職場規律
妊娠・出産労働基準法上の産前産後休業ではなく,欠席,履修,修習継続及び再採用の問題不利益取扱いの禁止,産前産後休業,解雇制限及び実習中断・再開
関係終了裁判所法68条の罷免,修習停止,修習単位の不合格又は考試不合格雇用契約の終了と技能実習・在留の継続を分けて検討
主な裁判例法的地位,給費制廃止,修習給付金・修習専念資金の課税労働者性,未払賃金,監理団体等の責任,妊娠・出産を背景とする事件

司法修習生の基本給付金と技能実習生の賃金は,月額だけを並べても法的意味を比較できない。

前者は修習に専念するための公法上の給付であり,後者は使用者に対する労務提供の対価だからである。

第2 司法修習の目的と課程

1 法曹養成に必須の統一修習

裁判所法66条1項によれば,司法修習生は,司法試験合格者のうち所定の要件を満たす者から最高裁判所が採用する。

司法試験に合格しただけで自動的に司法修習生となるのではなく,最高裁判所の司法修習生採用選考へ申し込む必要がある。

裁判所法67条1項は,司法修習生が少なくとも1年間修習をした後,試験に合格したときに司法修習を終えると定めている。

司法修習生考試に合格して修習を終えることにより,判事補,検事又は弁護士となる資格を取得する。

最高裁判所は,司法修習を,法律実務に関する汎用的な知識・技法と,高い職業意識・倫理観を備えた法曹を養成する課程と位置付けている。

裁判官,検察官及び弁護士の進路別に養成を分けず,同じ基本的カリキュラムを経験させる統一修習である点に特徴がある。

2 現在の修習の流れ

司法修習は,導入修習,分野別実務修習,選択型実務修習,集合修習及び司法修習生考試から構成される。

導入修習は,司法修習開始直後に司法研修所で約1か月実施され,分野別実務修習へ進むための実務基礎能力を確認する課程である。

分野別実務修習は,各実務修習地で民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の4分野について各2か月実施される。

裁判修習では係属事件の記録や法廷でのやり取りを検討し,検察修習では実際の犯罪事件の捜査・処分を学び,弁護修習では法律相談,法廷及び法律文書作成等を体験する。

選択型実務修習は,各人の進路・関心に応じて分野別実務修習を深化・補完する課程であり,集合修習は司法研修所で修習記録を用いた起案,添削,講評及び討論を行う課程である。

3 実際の事件を扱うことの意味

司法修習生は,単なる見学者としてではなく,指導担当の法曹による監督の下で実際の事件を素材として学ぶ。

もっとも,司法修習生が事件記録を検討し,取調べ,法律相談又は法廷に立ち会い,起案を提出することは,配属先に対する賃金労働ではない。

これらは,法曹として必要な判断過程,事実認定,倫理及び対人対応を体験的に身に付けるための教育活動である。

他方で,実際の事件は当事者の権利,名誉,プライバシー及び人生に直接関わるため,「修習中である」という理由で責任が軽くなるわけではない。

4 司法修習生考試と修習終了

司法修習生考試は,司法修習の最後に行われる修習終了試験である。

考試に合格して司法修習を終えなければ,判事補,検事又は弁護士となる資格を取得できない。

考試では,単に条文・判例の記憶量だけでなく,具体的な記録から重要な事実と法律問題を抽出し,証拠を評価し,法曹として妥当な結論と理由を文書化する能力が問われる。

修習単位の不合格,所定期間内に必要な履修を終えられないこと,司法修習生考試の不合格及び裁判所法68条による罷免は,それぞれ根拠・決定主体・効果が異なる。

相談実務では,「司法修習を終えられなかった」という結果だけで一括せず,どの段階で,どの決定が,どの資料に基づいてされたかを確認する必要がある。

特に,評価内容への不満と,評価手続の違法,通知内容の不備,配慮申出への対応又は再受験・再採用の要件を分けて整理することが重要である。

第3 司法修習生の法的地位と義務

1 国家公務員でも労働者でもないこと

最高裁昭和42年4月28日第二小法廷判決・昭和38年(オ)第5号・民集21巻3号759頁は,司法修習生は国家公務員ではなく,国に対して勤務又は給付をする関係にないと判断した。

同判決は旧給費制下の事件であるが,当時支給されていた給与についても,国への勤務又は給付の対価ではないとして退職手当請求を退けた。

司法修習生が最高裁判所に採用され,修習専念義務を負い,実務修習で具体的な課題に取り組むことから,直ちに国との雇用契約が成立するものではない。

したがって,司法修習生の給付,欠席,罷免等の問題を,労働基準法上の賃金,休業又は解雇だけで説明することはできない。

2 修習専念義務

裁判所法67条2項は,司法修習生に修習専念義務を課している。

最高裁判所は,修習専念義務を,修習期間中,司法修習生が全力を修習のために用いて専念すべき義務と説明している。

兼業・兼職又は在学が一律に同じ結論となるわけではないが,司法修習への支障,中立性・公正性,活動内容及び時間的負担を踏まえた許可の要否を確認する必要がある。

無許可の兼職等が問題となった場合は,名称ではなく,報酬の有無,継続性,拘束時間,修習時間との重複及び外部から見た公正への影響を具体的に整理する。

3 秘密保持義務と情報管理

司法修習生は,実際の事件について修習するため,秘密保持義務を負う。

事件記録,取調べ,法律相談,評議に関連する情報を,家族・友人との会話,SNS,クラウドサービス又は生成AIへ入力することは,情報の内容と利用方法によって重大な問題となり得る。

匿名化したつもりでも,日時,地域,事件類型,職業,家族関係その他の情報の組合せから当事者が識別される場合がある。

修習目的で記録を持ち出し又は電子データを取り扱う場合は,配属先の指示,保存場所,アクセス権限,複製の要否及び廃棄方法を確認する必要がある。

4 法曹としての職務姿勢

司法修習で身に付けるべきものは,判決書,検察官調書又は準備書面の起案技法だけではない。

頁検証済みの実務文献は,司法修習生について,守秘,法廷での態度,裁判所職員への敬意,当事者からどう見えるかという自覚及び社会への関心を重視している(『裁判官の歩き方』12頁~19頁)。

この指摘は最高裁判所の公式見解そのものではないが,最高裁判所が司法修習の目的として掲げる高い職業意識・倫理観を,日々の具体的行動へ落とし込む際の実務的な視点となる。

司法修習生が作成する起案の完成度だけでなく,期限の遵守,指導を受けた後の修正,記録の取扱い,職員・当事者への応対及び健康・生活管理も,継続的に修習する能力と関係する。

第4 修習給付金と修習専念資金

1 基本給付金・住居給付金・移転給付金

裁判所法67条の2は,基本給付金,住居給付金及び移転給付金を修習給付金として定めている。

最高裁判所の現行案内によれば,基本給付金は給付期間ごとに135,000円である。

住居給付金は,自ら居住するため住宅を借り受けて家賃を支払うなど所定の要件を満たし,届出をした場合に給付期間ごとに35,000円が支給される。

移転給付金は,修習に伴い住所又は居所を移転する必要があると認められる場合に,最高裁判所の定める路程に応じた定額が支給される。

基本給付金又は住居給付金は,通常修習期間の末日,身分を保有しない期間,修習停止期間その他の所定の場合に日割計算となる。

2 修習専念資金の貸与

裁判所法67条の3の修習専念資金は,修習給付金とは別の無利息貸与であり,自動的に支給される金銭ではない。

最高裁判所の現行案内によれば,貸与額の基本額は一貸与単位期間につき100,000円であり,一定の扶養親族がある場合は125,000円を選択できる。

第79期については,貸与金の交付が最大13回と案内されているが,申請期限,交付日,保証方法及び返還条件は期ごとの案内を確認する必要がある。

貸与を選択すると将来の返還債務が生じるため,給付金と合算した月額だけを「収入」と表示すると,生活保障の実態を誤って伝える。

3 税務上の取扱いを分けて考えること

司法修習生が国の労働者ではないことと,受け取る経済的利益が所得税法上当然に非課税となることは別問題である。

大阪地裁令和4年12月22日判決は,修習専念資金の無利息貸与による利息相当額が所得税法上の非課税学資金に該当するか等を判断した。

同判決は,修習専念資金を,修習専念義務により稼働収入を得られない司法修習生の生活維持費に充てることを念頭に置いた貸与と認定し,利息相当額の非課税学資金該当性を否定した。

その後,大阪高裁令和5年7月26日判決,最高裁令和5年12月22日決定に至ったことは,最高裁判所の司法行政文書開示に関する答申でも確認できる。

奈良地裁令和5年2月14日判決及び大阪高裁令和5年9月21日判決は,基本給付金の所得区分を扱った裁判例として税務専門誌等で確認できるが,裁判所HP未掲載である。

第5 欠席,妊娠・出産,修習停止及び罷免

1 労働基準法上の休業とは別の問題であること

司法修習生は労働者ではないため,妊娠・出産時の取扱いを労働基準法65条の産前産後休業が直接適用される問題として説明することはできない。

他方で,妊娠そのものは裁判所法68条に明記された罷免事由ではない。

実際の問題は,健康を確保しながら各修習単位に必要な履修を終えられるか,欠席期間をどのように扱うか,修習の継続・停止・再採用をどの時点で検討するかである。

2 欠席日数と修習単位

司法修習委員会第33回会議の議事録には,正当な理由による欠席であっても通算45日を超えると所定期間内の修習終了が困難となり,1つの修習単位の半分を超えて欠席すれば通常はその単位を不合格とする旨の運用説明がある。

この説明は,妊娠・出産を理由とする制裁を定めたものではなく,実務修習を含む履修不足をどのように評価するかという修習制度上の問題である。

具体的事情により運用が異なり得るため,「半分までなら必ず欠席できる」又は「45日を超えれば自動的に罷免される」と一般化してはならない。

出産予定日,医師の指示,欠席見込み,各修習単位の開始・終了日,既履修部分,振替可能性及び本人の希望を早期に司法研修所等へ伝える必要がある。

3 裁判所法68条の処分

裁判所法68条1項は,成績不良,心身の故障その他最高裁判所の定める事由により修習を継続することが困難である場合の罷免を定めている。

同条2項は,品位を辱める行状その他司法修習生としてふさわしくない非行がある場合の罷免,修習停止又は戒告を定めている。

第1項は修習継続の困難性,第2項は非行を対象とするため,理由,基礎事実及び処分の法的性質を区別しなければならない。

病気又は妊娠・出産に関連する相談では,健康状態だけでなく,必要な履修を将来終えられる見込み,配慮・日程調整の可能性及び本人が希望する選択肢を資料化することが重要である。

4 罷免後の再採用

修習を所定期間内に終えられない場合に,罷免後の再採用が検討されることはある。

しかし,再採用は自動的な復籍ではなく,その時点の司法修習生採用選考審査基準に基づく審査を経る。

したがって,「一旦罷免されれば翌期に必ず再採用される」と説明してはならない。

罷免前に,再採用の申込時期,必要書類,従前の修習実績の扱い,給付金・貸与金及び住居・転居への影響を確認する必要がある。

第6 司法修習生に関する裁判例

1 法的地位に関する最高裁判例

最高裁昭和42年4月28日第二小法廷判決・昭和38年(オ)第5号は,司法修習生が国家公務員でも国に労務を提供する者でもないという制度理解の出発点である。

もっとも,同判決は旧給費制下の退職手当請求を扱ったものであり,現在の修習給付金,修習専念資金,欠席運用又は罷免手続を直接判断したものではない。

現在の問題へ適用する場合は,同判決の法的地位に関する判示と,後に制定・改正された裁判所法,最高裁判所規則及び現在の運用資料を組み合わせる必要がある。

2 給費制廃止訴訟

新65期から新67期の司法修習生らは,給費制廃止をめぐり全国8件の訴訟を提起した。

裁判所HPで判決全文を確認できる代表例として,東京地裁平成29年9月27日判決・平成25年(ワ)第20444号名古屋地裁平成29年12月20日判決・平成25年(行ウ)第78号及び名古屋高裁令和元年5月30日判決・平成30年(行コ)第5号がある。

これらの判決は,司法修習が国に対する労務提供ではなく,国との雇用関係がないことを前提として,給費制廃止が憲法上違法であるとの主張等を退けた。

給費制を維持・復活させるべきであったという政策評価と,司法修習生に国に対する賃金請求権があるかという法的評価は分ける必要がある。

3 全国8件の第一審と上級審

公開資料で確認できた第一審の8件は,次のとおりである。

①東京地裁平成29年9月27日判決・平成25年(ワ)第20444号。

②広島地裁平成29年9月27日判決。

③大分地裁平成29年9月29日判決・平成27年(ワ)第355号。

④福岡地裁平成29年10月17日判決・平成25年(行ウ)第73号。

⑤名古屋地裁平成29年12月20日判決・平成25年(行ウ)第78号。

⑥熊本地裁平成30年4月16日判決。

⑦東京地裁平成30年6月15日判決。

⑧札幌地裁平成26年(ワ)第2193号判決。

裁判所HPで全文を確認できない判決は裁判所HP未掲載として扱い,札幌地裁判決の日付は今回確認した公開資料だけでは確定できないため,事件番号を示すにとどめる。

公開資料で確認できる主な上級審には,東京高裁平成31年2月6日判決と最高裁令和元年9月6日決定,福岡高裁令和元年5月10日判決と最高裁令和2年10月13日決定,札幌高裁令和2年12月18日判決・平成31年(ネ)第170号がある。

裁判所HP未掲載の判決・決定については,書誌と結論を超えて判旨を断定しない。

4 給付・貸与に関する税務裁判例

大阪地裁令和4年12月22日判決,大阪高裁令和5年7月26日判決及び最高裁令和5年12月22日決定は,修習専念資金の無利息貸与に伴う利息相当額の課税を扱った。

奈良地裁令和5年2月14日判決及び大阪高裁令和5年9月21日判決は,基本給付金の所得区分を扱った裁判例であるが,裁判所HP未掲載である。

給付金,貸与元本,利息相当利益及び返還免除は,それぞれ法的性質と課税時期が異なり得るため,一括して「司法修習のための非課税金員」と扱わない。

5 裁判例が直接示していない事項

今回確認した裁判所HP掲載裁判例の中心は,司法修習生の法的地位,給費制廃止及び修習専念資金の税務である。

妊娠・出産に伴う欠席,修習単位又は罷免については,裁判所HP掲載の上級審判例だけで具体的運用を確定できない。

そのため,最高裁昭和42年判決又は給費制廃止訴訟の判示を,妊娠・欠席・再採用の具体的基準へ拡張してはならない。

この領域では,裁判所法,最高裁判所規則,司法修習委員会議事録,採用選考審査基準及び本人に交付された文書を時点別に確認する必要がある。

第7 司法修習関係の相談・受任実務

1 最初に特定すべき事項

司法修習関係の相談では,最初に次の事項を確認する。

①採用期,組,番号,実務修習地,現在の修習課程及び問題となった修習単位。

②欠席日,欠席理由,診断書,出席可能性,既履修部分及び今後の修習日程。

③司法研修所,配属庁会又は指導担当者から交付された文書,通知,評価及び説明。

④問題となる措置が,罷免,修習停止,戒告,単位不合格,考試不合格,給付決定又は貸与・返還のいずれか。

⑤問題となる金銭が,基本給付金,住居給付金,移転給付金,修習専念資金又は税負担のいずれか。

⑥通知日,理由提示の有無,不服申立て又は出訴期間に関する説明の有無。

2 法令と内部運用を区別すること

裁判所法は採用,修習専念義務,給付,貸与及び罷免の基本的枠組みを定める。

最高裁判所規則,要綱,採用選考審査基準及び司法研修所の通知は,申請手続,金額,欠席,評価又は再採用の具体的運用を補う。

ウェブ上の体験談又は過去期の取扱いは端緒にはなるが,現在の採用・欠席・再採用基準を証明する資料ではない。

複数の資料の内容が異なる場合は,適用時点,対象期,制定・改定日及び決定主体を確認する。

3 罷免・修習停止等を争う場合

罷免等が問題となる場合は,対象行為が裁判所法68条1項と2項のどちらに位置付けられたかを確認する。

次に,処分の理由,基礎資料,評価過程,弁明又は資料提出の機会及び同種事例との取扱いを整理する。

成績評価又は教育的判断そのものへの司法審査の限界と,手続違反,事実誤認,考慮不尽又は裁量権の逸脱・濫用を区別して主張を組み立てる必要がある。

内部照会や再検討の結果を待つ場合でも,不服申立て又は出訴期間を徒過しないよう,通知日と期間計算を先に確認する。

4 給付・貸与・税務を争う場合

給付・貸与事件では,申請,決定,支給,返還請求,返還猶予又は期限の利益喪失のどの段階が争われているかを特定する。

住居給付金については,賃貸借契約の名義,実際の居住,家賃負担及び届出時期を資料で確認する。

修習専念資金については,申請額,保証方法,貸与回数,返還明細,返還猶予事由及び通知の到達を確認する。

税務事件では,所得区分,収入計上時期,非課税規定,必要経費,不服申立前置及び課税処分の日付を検討する。

5 司法行政文書の開示と訴訟上の証拠収集

最高裁判所又は司法研修所が保有する制度運用資料を必要とする場合は,司法行政文書の開示申出の対象と,訴訟上の文書提出・調査嘱託等の対象を区別する。

司法行政文書の開示制度は行政機関情報公開法そのものではなく,裁判所独自の取扱要綱に基づく制度である。

不開示又は一部開示となった場合は,不開示理由,文書の特定方法,保存期間及び苦情申出の可否を確認する。

黒塗り部分に立証上必要な情報が含まれると考える場合は,公開資料,司法修習委員会議事録,本人保有文書及び他の証拠方法で補えるかを検討する。

第8 外国人技能実習生との比較で見えること

1 技能実習生は講習後の労働者であること

外国人技能実習生は,講習後の技能実習について実習実施者との雇用契約に基づいて働く労働者である。

労働基準法,最低賃金法,労働安全衛生法,男女雇用機会均等法その他の労働関係法令が日本人労働者と同様に適用される。

団体監理型技能実習1号の講習は活動予定時間全体の6分の1以上が原則であり,所定の入国前講習を受けた場合は12分の1以上に短縮できるため,常に「入国後2か月間は講習」と説明するのは正確でない。

この講習期間と雇用契約に基づく技能実習期間を区別する必要がある。

2 賃金と修習給付金の違い

技能実習生の賃金は,実習実施者に対する労務提供の対価であり,最低賃金,割増賃金及び賃金全額払等の規制を受ける。

司法修習生の基本給付金は,修習期間中の生活を維持し,修習に専念できるようにする公法上の給付である。

技能実習生の平均賃金と司法修習生の基本給付金を比較しても,差額だけから違法な待遇格差の有無を判断することはできない。

住居給付金,時間外労働,社会保険料,税,住居費,貸与金返済及び活動期間を揃えなければ,可処分所得の比較としても意味が限定される。

3 妊娠・出産時の法的枠組みの違い

技能実習生は労働者であるため,妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止,産前産後休業及び解雇制限が直接適用される。

妊娠・出産で技能実習の継続が困難となった場合は,本人の意思を確認した上で実習の中断・再開を検討し,一方的な帰国へ誘導してはならない。

司法修習生については,妊娠自体を規律違反又は罷免事由と扱うのではなく,健康確保,欠席,履修,修習継続及び再採用の制度として処理する。

法的根拠が異なるため,「両者とも妊娠すれば辞めさせられる」又は「両者に同じ産前産後休業がある」という説明はいずれも誤りである。

4 比較から得られる司法修習制度上の示唆

技能実習生との比較により,司法修習生が厳しい時間的拘束や専念義務を負うことと,労働法上の労働者であることは別問題であると分かる。

同時に,労働者でないことは,健康上の配慮,手続の公正,合理的な履修調整又は説明の必要性を否定する理由にはならない。

司法修習生の問題では,労働法上の制度を類推的な政策参考とすることはあっても,最終的な法的結論は裁判所法,最高裁判所規則及び具体的な修習関係に基づいて導く必要がある。

第9 結論

1 司法修習生の制度理解

司法修習生は,最高裁判所に採用され,修習専念義務と秘密保持義務を負い,実際の事件を素材とする統一的な法曹養成を受ける者である。

司法修習生は国家公務員又は国に労務を提供する労働者ではなく,基本給付金も賃金ではない。

他方で,採用,評価,欠席,罷免,給付,貸与及び税務は,それぞれ異なる根拠・手続を持つため,「労働者でない」という一言だけで結論を出してはならない。

2 裁判例の射程

最高裁昭和42年4月28日判決は司法修習生の法的地位に関する基礎判例であり,給費制廃止訴訟は労務提供性と憲法上の給費請求をめぐる議論を具体化した。

修習専念資金及び基本給付金の税務裁判例は,教育目的の制度であることから直ちに非課税となるわけではないことを示している。

これらの裁判例は,現在の欠席,妊娠・出産又は再採用の具体的運用を直接判断したものではないため,判例の射程を超えない引用が必要である。

3 記事の時点と免責

本記事は令和8年7月28日現在の一般的な法情報を整理したものであり,個別事件に対する法律意見ではない。

具体的事件では,対象期と適用時点の裁判所法,最高裁判所規則,採用選考審査基準,修習給付金案内,貸与案内,本人に交付された通知及び不服申立期間を確認する必要がある。

裁判所HP未掲載の裁判例については,判決全文又は信頼できる判例誌を入手した後に判旨を再検討する必要がある。

第10 出典

1 法令・最高裁判所資料

e-Gov法令検索「裁判所法」

最高裁判所「司法修習」

最高裁判所「司法修習の概要」

最高裁判所「司法修習生採用選考」

最高裁判所「司法修習生の修習給付金について」

最高裁判所「司法修習生に対する修習専念資金の貸与等について」

最高裁判所「司法修習生に対する修習専念資金の貸与制の概要」

最高裁判所「第33回司法修習委員会議事録」

最高裁判所「司法修習生採用選考審査基準」

最高裁判所「修習専念資金の利息相当額に関する司法行政文書開示答申」

2 裁判例・判例誌

最高裁昭和42年4月28日第二小法廷判決・昭和38年(オ)第5号・民集21巻3号759頁

東京地裁平成29年9月27日判決・平成25年(ワ)第20444号

名古屋地裁平成29年12月20日判決・平成25年(行ウ)第78号

名古屋高裁令和元年5月30日判決・平成30年(行コ)第5号

大阪地裁令和4年12月22日判決,大阪高裁令和5年7月26日判決及び最高裁令和5年12月22日決定。

⑥奈良地裁令和5年2月14日判決及び大阪高裁令和5年9月21日判決。いずれも裁判所HP未掲載。

3 司法修習の実務文献

吉戒修一『裁判官の歩き方』(商事法務,2013年)12頁~19頁。

4 外国人技能実習制度の比較資料

e-Gov法令検索「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」

厚生労働省「外国人技能実習制度について」

外国人技能実習機構「技能実習制度運用要領」

出入国在留管理庁「技能実習生の妊娠・出産等に係る対応について」