最高裁判所庁舎


目次

1 総論
2 最高裁判所庁舎を構成する各建物の配置等
3 最高裁判所庁舎を構成する各建物に入居している部署等
4 最高裁判所庁舎の沿革
5 司法行政文書開示請求以外の方法で最高裁判所庁舎内の様子を知る方法
6 終戦直後の最高裁判所庁舎
7 関連記事その他

1 総論
(1) 裁判所HPの「裁判所施設の耐震診断結果等の公表について」掲載の「裁判所施設の耐震性に係るリスト」を見れば,最高裁判所庁舎を構成する建物の名称は,大法廷棟,小法廷棟,図書館棟,裁判官棟,裁判部棟,事務北棟及び事務西棟であることが分かります。
(2) 裁判所HPの「最高裁判所の所在地」を見れば,最高裁判所には,正門・東門,及び南門・西門があることが分かります。
(3) 裁判所HPの「司法の窓第50号(最高裁判所50周年記念号)」「写真で見る最高裁判所の50年」が載っています。

2 最高裁判所庁舎を構成する各建物の配置等
(1) 最高裁判所の庁舎平面図と,最高裁判所庁舎の敷地において,小型無人機等の飛行禁止区域が分かる図面を照合すれば,大法廷棟,小法廷棟,図書館棟,裁判官棟,裁判部棟,事務北棟及び事務西棟の大ざっぱな位置関係は以下のとおりであると思います。ただし,裁判官棟(皇居に面しています。)及び事務西棟は南北に長い建物です。
          (国 立 劇 場)
  (西玄関)                   (東門)
      事務北棟 (北玄関) 裁判部棟  裁判       
      事務    図書館棟       官棟     (皇居)
(西門)  西棟   大 法 廷 棟 (正面玄関) (正門)
           小 法 廷 棟        (三宅坂小公園)
     (南門)                   (三宅坂交差点)
          (国 立 国 会 図 書 館)
(2)ア 鹿島建設株式会社HPの「第30回 ふたつの最高裁判所庁舎」には以下の記載があります。
① この建物は地下2階地上5階、延べ53,923m²。7つの棟(*14)で構成され、スペースウォールと呼ばれる二重壁によって結合するこれまでに例を見ない構造である。
② * 14 大法廷棟、小法廷棟、図書館棟、裁判官棟、裁判棟、司法行政北棟、司法行政西棟。これら7棟の建物の間にそれぞれ性格の違った庭が配されている。  
イ 司法行政北棟及び事務北棟,並びに司法行政西棟及び事務西棟は同じ意味です。
(3) 
「司法の窓」第75号(平成22年5月発行)裁判所めぐり「最高裁判所見学」には,最高裁判所庁舎について,「約3万7000平方メートルの敷地に建てられた地上5階,地下2階建の庁舎」と書いてあります。
(4) 最高裁判所正面玄関の写真,及び最高裁判所中庭の写真を掲載しています。
(5) 裁判所HPの「小型無人機等の飛行禁止区域について」には,「最高裁判所庁舎周辺地域図」等が載っています。

最高裁判所庁舎の敷地において,小型無人機等の飛行禁止区域が分かる図面

3 最高裁判所庁舎を構成する各建物に入居している部署等
(1)ア 大法廷棟2階に大法廷及び大ホールがあり,3階ないし5階は大法廷上部吹抜及び大ホール上部吹抜があります。
イ 大ホールの裁判官席は15席であり,裁判所書記官席は2席であり,裁判所事務官席は2席であり,2つの当事者席は各10席であり,傍聴席は166席であり,傍聴席の両側にある記者席は42席です。
ウ 大ホールには,①「正義」と題するブロンズ像(ギリシャ神話の法の女神テーミスがモデル),及び②「椿咲く丘」と題するブロンズ像(愛と平和をイメージしたもの)があります。
(2) 小法廷棟2階に公衆待合室,弁護士待合室及び検察官待合室があり,4階に三つの小法廷があり,5階には三つの小法廷上部吹抜があります。
(3) 
図書館棟4階には大閲覧室等があり,5階には大閲覧室上部吹抜があります。
(4)ア
 裁判部棟1階には大法廷書記官室,第一訟廷事務室及び第二訟廷事務室が入居しています。
イ 裁判部棟2階には第一小法廷書記官室,第二小法廷書記官室及び第三小法廷書記官室が入居しています。
ウ 裁判部棟3階には刑事第一調査官室,刑事第二調査官室及び刑事第三調査官室が入居しています。
エ 裁判部棟4階には行政調査官室,民事第一調査官室,民事第二調査官室及び民事第三調査官室が入居しています。
オ 最高裁判所の裁判部とは,大法廷首席書記官等に関する規則(昭和29年最高裁判所規則第9号)に定める大法廷首席書記官が指導監督する職員が属する組織をいいます(司法行政文書の管理について(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長の通達)第1.2(3)参照)。
(5) 事務北棟2階には最高裁判所刑事局が入居していると思います。
(6) 事務西棟3階には最高裁判所総務局が入居していると思います。また,事務西棟地下2階に最高裁判所内郵便局があります。

4 最高裁判所庁舎の沿革

(1)ア 国土交通省HPの「最高裁判所庁舎」には,「沿革」として以下の記載があります。
 最高裁判所は、昭和22年に創設され、当初は、旧大審院庁舎を使用していましたが、狭隘・老朽化に伴い庁舎の新営が計画される事となりました。
 敷地は、戦後返還を受けた駐留軍のパレスハイツ跡地の一部で、庁舎は大小法廷のほか裁判官棟及び司法行政棟の3棟から構成されています。
 昭和44年に設計競技(コンペティション)により選ばれた「岡田新一ほか16名」により設計され、昭和46年に設計が完了し、昭和49年に庁舎が完成しました。
 外壁から建物内部へと続く石張りは、三権の一翼を担う司法の頂点である最高裁判所の品位と重厚さがよく表現されています。
イ 文中の「大小法廷」は大法廷棟及び小法廷棟のことであり,「裁判官棟」は裁判官棟及び裁判部棟のことであり,「司法行政棟」は図書館棟,事務北棟及び事務西棟のことであるのかもしれません。
(2) 「チャンスはピンチだ。」ブログ「美の巨人たち 岡田新一「最高裁判所」」(2018年9月15日付)に,最高裁判所庁舎の写真が大量に載っています。
(3) 最高裁判所庁舎の竣工は昭和49年3月であり,落成式は同年5月23日であり,執務開始は同月27日です。
 また,最高裁判所庁舎の総工費は約126億円です。
(4) 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)には以下の記載があります。
(76頁の記載)
 昭和四九年に完成した新庁舎は、建築家の岡田新一氏が外国の教会、大学からイメージを得て設計したという斬新なデザインだった。法廷・裁判官棟と事務棟を分離し、裁判官室は半蔵門と桜田門の間のお濠にそった道路に面してギリギリ最前列に配置された。広壮なホールが中心に置かれた。法廷も大法廷、小法廷とも正面にタピストリーを配し、裁判官が出入りする扉も電動式になるなど、面目を一新した。「過去の様式にとらわれず、現代の建築様式により、最高裁としての品位と重厚さを兼ね備えるべきだ」という趣旨の下、公開競技で選ばれたものである。
(77頁の記載)
 裁判所庁舎は、それ自体「正義」を具現するものとして中に入る者がおのずと襟を正し、同時に信頼感と親近感を覚えるものでなければならない。
(5) 「裁判官も人である 良心と組織の間で」151頁には以下の記載があります。
 当時、最高裁経理局の営繕課長として、大蔵省との予算折衝にあたっていた元東京高裁裁判長の石川義夫は、『思い出すまま』のなかで述べている。
 「川島(正次郎)副総裁以下自民党の親分連中」のところへ、「総長を始め、総務局長、人事局長、経理局長皆さんが足を棒にしてこの数ヶ月陳情して回った」おかげで、裁判所予算は「自民党で丸政(自民党が最重要と認めた事項につけるマーク)がついた」。それによって、大蔵省主計局が財政硬直化にともなう経費削減方針を公式表明していたにもかかわらず、最高裁の営繕費等はほぼ満額に近いかたちで認められることになった。
 当然ながら政府への借り意識が生まれ、最高裁の経理局長が「あれだけ治安対策の連中を使ってこの予算を通したら、後が大変だろうなあ。本当に人事局はやれるんだろうね」とつぶやくと、矢崎憲正人事局長は笑いながら返した。「そりゃ、やるとも」。

5 司法行政文書開示請求以外の方法で最高裁判所庁舎内の様子を知る方法

(1) 令和元年5月現在,日本の古本屋HPの「古書を探す」において,「最高裁判所庁舎 鹿島出版会」といったキーワードで検索すれば,「空間と象徴 最高裁判所庁舎における建築構想の展開」(昭和49年の書籍)を入手できます。
 当該書籍118頁では,最高裁判所の構内図が載っていますし,当該書籍119頁では,最高裁判所の庁舎平面図(ただし,地下1階から地上5階までの分)が載っています。
 そのため,例えば,最高裁判所長官室及びその秘書官室・応接室,最高裁判所判事室及びその秘書官室,並びに評議室及び裁判官会議室が裁判官棟のどこにあるかが分かります。

(2)ア 令和元年5月現在,横浜地裁の向かい側にある横浜情報文化センター8階の放送ライブラリー視聴ホールにおいて,「NHK特集 最高裁判所」(昭和62年5月3日放送)(番組IDは004003)を視聴できます。
イ 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)には以下の記載があります。
 昭和六二年初頭からNHKに協力して「最高裁判所」をビデオに納めることになった。日ごろ国民の目に触れにくい長官室、裁判官室、大法廷、小法廷の各審議室、大会議室、調査官室、判決原本保存室、裁判官公邸などを紹介した。小法廷前控室で法服を着る裁判官もブラウン管に登場して最高裁の重要性を訴えた。放映は同年五月のことであったが、開かれた裁判所の一つの試みである。

6 終戦直後の最高裁判所庁舎
 

最高裁判所十年の回顧には,「最高裁判所庁舎」という表題で以下の記載があります(法曹時報9巻9号52頁)。
 最高裁判所の庁舎の問題については、司法省は、かねてから、旧枢密院の庁舎を予定していたので、最高裁判所は発足と同時にこの庁舎に入った。ところが、この庁舎は、狭い上に、その出入にいちいち門鑑を必要とし、一方、事務局は、法曹会館の一部を使用しているため、その連絡に不便であり、さらに、直接国民と接する裁判所の庁舎としては不適当であるということから、別の庁舎を求める必要にせまられた。当時、将来の最高裁判所庁舎として、旧大審院庁舎を修築中であったが、その完成は一年後と予測されていた。そこで早々の庁舎をどうするかという問題について裁判官会議を開いた結果、当時司法省が使用していた、現在の東京高等裁判所、同地方裁判所合同庁舎の三、四階を明渡してもらう以外に途はないということになり、その旨三淵長官から鈴木司法大臣に申入を行った。その結果、司法省は省議を開き、当時司法省の使用していた建物を、最高裁判所、東京高等裁判所の庁舎として明渡し、司法省は、旧枢密院、法曹会、刑務協会等に分散して執務することに決定した。この決定は、省議によったというものの、鈴木司法大臣が、「司法権を尊重するということは、言葉の上だけではだめである。行政部の方はそつせんして行動の上に示さなければならないと考えたので、一番よい建物を最高裁判所に提供することが内閣の責務である』と力説されたところによるところが大きかった。かくして、九月八日最高裁判所は、旧枢密院庁舎から、現在の東京高等裁判所の庁舎に移転して執務を行うことになった。その後、旧大審院庁舎について修復成った現最高裁判所庁舎に二十四年十一月十一日に移転し、現在にいたっている。
 最高裁判所庁舎は、約三億円の経費によつて修復を行つたもので、戦後荒廃した諸官庁庁舎のととのわなかった当時としては注目されたものであつたが、現在では、各国の裁判所にくらべて、非常にみおとりするものとされている。とくに米国の連邦最高裁判所庁舎やフランス、イタリーの最高裁判所庁舎の重厚、豪華なのにくらべると、あまり貧弱だともいわれている。欧米にかぎらず、現在建築中のインドの最高裁判所庁舎の規模などから比較しても、わが国の最高裁判所庁舎も適当な時機に正義の殿堂にふさわしい庁舎が考えられなければなるまい。

7 関連する記事及び資料
(1) 司法の窓第89号(2024年)「最高裁判所庁舎竣工50年の歩み」が載っています。
(2)ア 「裁判官とは何者か?-その実像と虚像との間から見えるもの-」(講演者は24期の千葉勝美 元最高裁判所判事)には以下の記載があります(リンク先のPDF20頁)。
 裁判官執務室は、御影石の壁と絨毯の床からなり、明るいが、ここには、記録を積み上げるバー、調査官等と議論する低い机、いす、外部の来客用の応接セット、作り付けの書棚等があり、実用的な用途から広く作られている。2階から4階にある各執務室の東側は、大きな全面ガラスがはめ込まれ、皇居を望む臨むものとなっているが、冬になって、めったには見られないが、お堀の雪化粧の風情は最高! なお、ガラスは、はめ殺し構造となっているが、これは、裁判官が飛び降りたりしないためではなく、外部からの不法侵入ができないようにするためという説明になっているが、本当の意図は、分からない。
イ 「福田博オーラル・ヒストリー 「一票の格差」違憲判断の真意」189頁及び190頁には以下の記載があります。
福田 最高裁だって、非常に高い単価で建てられた裁判官棟に対して、事務総局は普通の官庁と同じで安普請です。外壁もすべて御影石のように見えますが、御影石というのは切る時に粉がいっぱい出る。それをすり潰して、糊でつけているだけのところもあります(笑)。
-それは間違いないですか。
福田 間違いない。最高裁の西側の門のところに見に行って見てごらんなさい。明らかに分かります。
(3)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 最高裁判所庁舎新営審議会答申(昭和41年8月31日付)
・ 最高裁判所庁舎の敷地において,小型無人機等の飛行禁止区域が分かる図面
・ 庁舎の沿革及び現況説明書(最高裁判所)
・ 最高裁判所庁舎の中長期保全計画(平成31年4月26日作成)
・ 最高裁判所庁舎の修繕履歴(平成29年4月から平成31年3月まで)
・ 平成に入り大法廷が使用された訴訟(平成29年12月6日現在)
イ 以下の記事も参照してください。
 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)
・ 最高裁判所の庁舎平面図の開示範囲
・ 最高裁判所の庁舎見学に関する,最高裁判所作成のマニュアル
・ 最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと等
・ 裁判所の庁舎等の管理に関する規程及びその運用


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