司法修習

司法修習の希望場所の記載方法

目次
1 第1希望地へのこだわりが強いことをアピールすべきこと
2 希望順位が低い実務修習地等に配属される可能性が高くなる場合
3 子の養育に関するその他の事情も実務修習地の希望理由として考慮されるかもしれないこと
4 関連記事その他

1 第1希望地へのこだわりが強いことをアピールすべきこと
(1) できる限り第1希望地に配属してもらいたい場合,第1希望地の理由を具体的に記載するほか,第2希望地以下については第1希望地の近くの実務修習地を書くことで,第1希望地へのこだわりが強いことをアピールした方がいいと思います。
   その際,平成30年8月1日付の「司法研修所からのお知らせ」8頁で例示されている以下の記載例を参考に,具体的に書けばいいと思います。
① 配偶者(内縁者・修習終了までに婚姻する予定の婚約者を含む。)・子との同居希望
   現在,民間企業に勤務している妻及び〇歳の子と同居して生活しているところ,今後も同居を継続するため,現住所地から通える地を希望する。
② 通院・病気
   〇〇病に罹患しており,現在月1回△△病院(□□県●●市)に通院して高度に専門性を有する治療を受けており,今後もその治療を継続する必要があるため,現住所地から通える地を希望する。
③ 親族の介護
   現在同居中の父親が身体障碍者(1級,介護認定・要介護5)で,母と私で入浴・食事等の介護を行っており,私がいないと介護に支障が生じるため,現住所地から通える地を希望する。
④ 経済的事情
   法科大学院在学中の奨学金の返済額が1か月●万円(総額●●●万円)となっているので,現住所地(自宅)から通える地を希望する。
(2) 内縁関係(事実婚関係と同じ意味です。)にあることを書類で証明したい場合,続柄欄に「妻(未届)」という記載がある住民票を提出すればいいと思います(ビズジャーナルHPの「事実婚,消える法律婚との差?メリットの多さに関心高まる「妻(未届)」」参照)。
(3) 外部ブログの「悲喜交々の修習地発表」によれば,親族の介護及び経済的事情は,理由として強いみたいです。


2 希望順位が低い実務修習地等に配属される可能性が高くなる場合
(1)ア 以下の場合,希望順位が低い,又は希望外の実務修習地に配属される可能性が高くなるといわれています。
① 1群の実務修習地を三つ以上記載するといったルール違反をした場合
② 第1希望地から第6希望地までの選択内容に脈絡がなかった場合
③ 第2希望地として,第1希望地とは全く関係がない,希望者数が極端に少ない実務修習地を書いた場合
イ 平成30年8月1日付の「司法研修所からのお知らせ」9頁に,「希望地の記載がない場合又は表1の実務修習希望地の選択規則に反した記載をしている場合は「一任」として,途中順位までの記載しかない場合には「以下一任」として取り扱う。」と書いてあります。
→ 「表1の実務修習希望地の選択規則に反した記載」の典型例は,1群の実務修習地(東京,立川,横浜,さいたま,千葉,宇都宮,静岡,甲府,大阪,京都,神戸,大津,名古屋,福岡,仙台,札幌)を三つ以上記載することです。
(2) 平成30年8月1日付の「司法研修所からのお知らせ」9頁の「(表3) 実務修習希望地の記載例」につき,「①全部記載の場合」の例として,「第1希望:東京,第2希望:さいたま,第3希望:広島,第4希望:和歌山,第5希望:高知,第6希望:松江」という記載がありますところ,実際にこのような記載をした場合,「第1希望地から第6希望地までの選択内容に脈絡がなかった場合」に該当する結果,第4希望以下で決まる気がします。
   また,「②一部一任の場合」の例として,「第1希望:大阪,第2希望:鳥取,第3希望:以下一任」という記載がありますところ,実際にこのような記載をした場合,「第2希望地として,第1希望地とは全く関係がない,希望者数が極端に少ない実務修習地を書いた場合」に該当する結果,第2希望の鳥取修習になる可能性が極めて高い気がします。
   そのため,「(表3) 実務修習希望地の記載例」は,できる限り第1希望地又はその周辺の実務修習地への配属を希望する司法修習予定者にとっては,不適切である気がします。
(3) 配属して欲しい実務修習地だけ具体的理由を挙げて希望し,それ以外については「以下一任」と記載した場合,「以下一任」という記載だけで,希望順位が低い,又は希望外の実務修習地に配属される可能性が高くなるわけではないといわれています。


3 子の養育に関するその他の事情も実務修習地の希望理由として考慮されるかもしれないこと
(1) 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(略称は「育児・介護休業法」です。)26条は,「事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。」と定めています。
   そのため,司法研修所の記載例には「子との同居希望」しか書いてありませんが,子の養育に関するその他の事情も実務修習地の希望理由として考慮されるかもしれません。
(2)ア 厚労省HPの「育児・介護休業法について」に,育児・介護休業法に関する指針及び施行通達が載っています。
イ 厚労省HPの「「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」を公表します~事業主が従業員の転勤の在り方を見直す際に役立ててほしい資料を作成~」「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」が載っています。

4 関連記事その他
(1) 令和元年8月23日付の答申書によれば,「72期司法修習予定者の実務修習地を決定する際に作成した文書」は「第72期司法修習生採用選考申込者の実務修習地,組,出席番号及び修習班について(平成30年10月17日決裁)」(答申書がいうところの「本件開示文書」(=「本件名簿」及び「決裁票」))だけです。
(2) 犯罪被害者と同性の者は,犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当することがあります(最高裁令和6年3月26日判決)。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習の場所を選ぶ際の基礎データ
・ 司法修習の場所とクラスの対応関係(67期以降)
・ 新65期以降の白表紙発送実績
→ 平成23年以降の司法試験合格者の合格直後の居住都道府県が分かります。
・ 第2希望の実務修習地の選び方
・ 実務修習地の決定方法等に関する国会答弁
→ 最高裁判所人事局長の国会答弁によれば,第1希望又は第2希望の実務修習地に配属される司法修習生の割合が重視されていますから,第2希望の実務修習地も慎重に記載する必要があると思われます。

「品位を辱める行状」があったことを理由とする司法修習生の罷免事例及び再採用

目次
1 23期の阪口徳雄修習生(昭和44年4月採用)の罷免事例
2 33期の男性司法修習生(昭和54年4月採用)の罷免事例
3 34期の男性司法修習生(昭和55年4月採用)の罷免事例
4 70期の男性司法修習生(平成28年11月採用)の罷免事例
5 その他の罷免事例
6 罷免された後の再採用
7 関連記事その他

1 23期の阪口徳雄修習生(昭和44年4月採用)の罷免事例
(1) 23期の司法修習終了式の中止
ア 阪口徳雄修習生は,昭和46年4月5日(月)の午前中に司法研修所講堂で行われた司法修習終了式において,23期の裁判官志望者7人に対する任官拒否に抗議するため,司法研修所長のマイクを手にとって,「裁判官への任官を拒否された修習生7人に発言させる機会を与えて欲しい」などと発言を始めたため,約1分後に司法研修所事務局長が修習終了式の終了を宣言したという事件を発生させました。
   最高裁判所は,同日午後6時から臨時の裁判官会議を開催し,「品位を辱める行状」があったということで,阪口徳雄修習生に弁明の機会を与えることなく,同人を罷免しました。
イ 23期の裁判官志望者7人に対する任官拒否については,昭和46年4月5日午後1時半頃,23期の裁判官内定者55人のうちの40人が有志で,「青法協会員ら7人の任官拒否は思想・信条,団体加入による差別の疑いが強い。このまま裁判官として職務につくことは耐えがたい不安を感じる。不採用の理由を明らかにせよ」などとする要望書(署名者は23期裁判官内定者45人)を高輪1期の矢口洪一最高裁判所人事局長に提出するため,最高裁判所に赴きました。
   しかし,最高裁判所は彼らが構内に入ることを拒否し,要望書を受け取りませんでした。
ウ 阪口徳雄修習生に対する罷免通知の時刻につき,昭和46年4月6日の毎日新聞朝刊では,午後7時40分頃に司法研修所事務局長から罷免通告が伝えられたと書いてあります。
   昭和46年5月8日の日弁連臨時総会決議では,午後8時26分に罷免処分が言い渡されたと書いてあります。
   自由と正義2018年7月号5頁には,阪口徳雄弁護士が自分で,「1971年4月5日午後8時過ぎ司法研修所の所長室で守田所長(当時)から「司法修習生の品位を汚した」ので罷免するという最高裁裁判官会議の決定書を交付された。」と書いてあります。
エ 23期は昭和46年4月5日付で司法修習を終了し,同月6日の官報にその氏名が公表され,同月8日の官報に「阪口徳雄を削除」という訂正記事が載りました。
オ 平成29年3月15日付の司法行政文書不開示通知書及び平成29年度(最情)答申第47号(平成29年12月1日答申)によれば,昭和46年4月に司法修習生を罷免した際の最高裁判所裁判官会議議事録は保存されていません。
(2) 23期の司法修習終了式の中止に関する国会答弁
   高輪1期の矢口洪一最高裁判所人事局長は,昭和46年5月20日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 わしづかみというふうに、私が、衆議院の法務委員会で申し上げましたところが、問題にされたようでございますが、そのときの状況を正確に申し上げさせていただきますと、当日研修所長から最高裁にあてまして、こういうトラブルがあったということの正式の文書による報告がございました。で、その文書による報告の内容を私自身といたしましてはかいつまんで申し上げたつもりであったわけでございますが、その文書を朗読したわけではございませんので、その間少しやや妥当を欠く面もあったかと思います。お尋ねでございますので、短いものでございますので、そのところを朗読さしていただきましてお答えにかえさせていただきたいと思います。
 「(別紙)」でございますが、「予定よりやや遅れて十時三十分ごろ事務局長が開式を宣し、司法研修所長が式辞を述べるため登壇した。ところがその発言前に、前から七、八列目の中央に座っていた阪口徳雄が立ち上り、所長に向い、「任官拒否された修習生に十分ぐらい発言の機会を与えてもらいたい云々」と言い、周囲の者もこれに和し「そうだ、そうだ」という発言、拍手などで式場は騒然となったので、所長は手をあげておだやかに阪口を制し、事務局長は進行係用マイクで「まず、式辞を聞きなさい。」と二度か三度注意した。しかし、彼等はこれを聞かず、中には阪口に対し「マイクでやれ」「前に出てやれ」と声援する者あるいは「止めろ」と叫ぶ者もあった。阪口は自席を離れ、演壇の下に進み出て、演壇用マイクを無断で抜き取り、演壇を背にして修習生に向い、マイクをもつて演説を開始し、式場はますます騒然となった。
 所長は、一言の式辞も述べないままこの事態では到底終了式を続行する可能性がないものと判断して自席に戻ったので、事務局長は進行係用のマイクを持って所長席の近くに行き、所長の指示を仰ぎ「終了式はこれで終了する。」と宣した。しかし、数名の修習生はこれを不満とし、自席を離れて事務局長を取り囲み、「どうして止めるのか」と抗議し、さらに所長、教官の退席を阻止しようとする修習生も若干名あったが、事務局職員が数名でスクラムを組み通路を確保したので、所長、教官も次第に退席し、その後は修習生だけで抗議集会を行なった。」というのが研修所の報告でございます。
 事実は、正確にはこのとおりであるというふうに御承知おきをいただきたいと思います。
(3) 日弁連の対応
ア 7人の任官拒否等に関しては,日弁連会長は,昭和46年4月3日,「13期裁判官の再任拒否問題に関する談話」を出しました。
   なお,13期裁判官は,宮本康昭熊本地家裁判事補のことです。
イ 阪口徳雄修習生の罷免事件では,日弁連が昭和46年5月8日に臨時総会を開催して抗議決議を出しました(日弁連HPの「臨時総会・司法修習生の罷免に関する決議」参照)。
   また,同決議によれば,この事件に関する矢口洪一最高裁判所人事局長の国会答弁は,阪口徳雄修習生の実際の行動とは異なるとのことです。
(4) 司法研修所の移転
ア 東京都千代田区紀尾井町にあった司法研修所は,この事件の3日後,東京都文京区湯島に移転しました。
イ 23期の修習終了式と25期の修習開始式(昭和46年4月16日)の合間を縫って司法研修所の移転作業が行われたわけです。
(5) 阪口徳雄は2年後に弁護士登録をしたこと
ア 阪口徳雄は,法律事務所で勉強するなどしていましたところ,昭和48年1月30日,松井宣日弁連事務総長らに伴われて,高輪1期の矢口洪一最高裁判所人事局長に会い,「式の当日の行動や,それに関連する言動のなかに礼を失したり穏当を欠いた点があることを率直に認め反省します」と謝罪しました(最高裁物語(下巻)129頁)。
イ 日弁連会長は,昭和48年1月31日,「司法修習生への再採用の決定と最高裁の寛大な措置について」と題するコメントで以下のとおり述べています。
   阪口徳雄君は、昨年来昭和46年4月5日の修習終了式当日の行動およびその後の各地における言動について真剣に反省された結果、このたび、最高裁判所および司法研修所に対し卒直に陳謝の意を表明され、最高裁判所においても、同君の誠意を酌まれ、本日同君の司法修習生への再採用を決定されました。
   わたくしは、阪口君の卒直な態度および最高裁判所の寛大な措置に対し、満腔の敬意と賛意を表するものであります。
   日本弁護士連合会は、今後とも最高裁判所と協力し、司法の健全な運営のために最善の努力をする所存であります。
ウ 阪口徳雄修習生は,2年後の昭和48年4月16日,司法修習を終え(昭和48年4月18日の官報参照),25期の弁護士になっていますところ,自由と正義2018年7月号6頁に以下の記載があります。
   1973年1月末に,終了式を「混乱」させたことを謝り,再採用となった。2回試験を合格しているので研修所に通わず修習終了となり,25期の卒業式と同時ではまた騒がれると思ったのか(笑),終了式の1週間後に,守田所長,教官に囲まれ「たった1人の終了式」で罷免事件は終わった。


2 33期の男性司法修習生(昭和54年4月採用)の罷免事例
(1)   ①岐阜地裁刑事部で実務修習中の昭和55年11月8日午後1時10分頃,地元の女子高生の通学路になっている路上で,下校中の女子高生5人に下腹部を露出する卑猥な行為をしたこと,並びに②昭和49年2月及び昭和54年2月に公然わいせつ行為での検挙歴があったことにかんがみ,昭和55年11月13日(木),「品位を辱める行状」があったということで罷免されました(昭和55年11月13日の毎日新聞夕刊)。
(2) 昭和55年11月12日の最高裁判所裁判官会議議事録を掲載しています。
(3) 33期の元修習生は,名字を変更した上で昭和62年4月2日に司法修習を終え,39期の弁護士になっています。
   そのため,6年後に再採用してもらえたものと思われます。

3 34期の男性司法修習生(昭和55年4月採用)の罷免事例
(1)ア ①司法修習期間中の昭和55年6月から昭和56年6月にかけて,知り合いの女性の父親に対し,過去の扶養料を取り立てるため,この父親の自宅,職場に手紙や電話で金の支払を頻繁に求めたこと,及び②金の支払を求めた際,司法研修所の用紙や東京地裁の裁判官が使う用紙などを用いて支払を催促しており,最終的には300万円を要求したことにかんがみ,昭和56年11月25日(水),「品位を辱める行状」があったということで罷免されました(昭和56年11月30日の日本経済新聞夕刊)。
イ 昭和56年11月30日の日本経済新聞夕刊には以下の記載があります(一部,氏名を伏せました。)。
   修習生が罷免されたのは,今回を含め9件。うち6件は成績不良や病気などによるもので,○○さんのように裁判所法や「司法修習生に関する規則」18条(裁量的罷免事由)1号(品位を辱める行為があった時)に基づく”強制罷免”は46年4月の阪口徳雄氏(研修所の終了式を混乱させた),55年11月の○○○○氏(破廉恥行為)に続いて3人目。しかし○○氏を除く7人はその後修習生として再採用された。
(2) 昭和56年11月25日の最高裁判所裁判官会議議事録を掲載しています。
(3) 34期の元修習生は,昭和59年4月4日に司法修習を終え,36期の弁護士になっています。
   そのため,2年後に再採用してもらえたものと思われます。

4 70期の男性司法修習生(平成28年11月採用)の罷免事例
(1)ア 平成28年12月,司法研修所の寮の談話室で飲食した際,同期の女性司法修習生2人にみだらな言動をしたほか,ズボンと下着を脱いで下半身を露出したため,平成29年1月18日,「品位を辱める行状」があったということで罷免されました(日付につき外部ブログの「70期千葉修習の罷免」参照)。
イ 平成29年1月18日の最高裁判所裁判官会議議事録,及び平成30年3月14日付の最高裁の不開示通知書(70期司法修習生を罷免するに際し,司法研修所が作成した司法修習生に関する規則19条に基づく報告書)を掲載しています。
(2) 発信者情報開示請求を認容した東京地裁平成30年3月8日判決(判例秘書に掲載)には,「平成28年12月20日午後9時頃から午後10時頃までの間,司法研修所の寮の談話室において,第70期司法修習生であるA(以下「A修習生」という。)が,同期の司法修習生と飲酒していた時に,自己の下半身を露出したという事件(以下「本件事件」という。)が発生し,これによりA修習生は罷免されたものである。」と書いてあります。


(3) ちなみに,水戸地検検事正(当時)は,平成23年2月14日の夜,水戸市内のスナックで酒に酔い,居合わせた客や同地検次席検事(当時)ら4人に対し,マイクで頭を殴ったり,髪の毛を引っ張ったりしました。
   しかし,東京地検は,平成23年10月13日,暴行の事実はあったとした上で,「酒に酔った際の偶発的な事案で,被害者も処罰を望んでいない」として,起訴猶予にとどめました。
   また,職務時間外の行動でしたから,懲戒等の人事上の処分は行われませんでした(外部ブログの「水戸地検検事正(当時。現・最高検検事)が,たたく・蹴るの暴行して。不起訴。懲戒処分無し」参照)。


5 その他の罷免事例
(1) 自転車窃盗に関して28期司法修習生が罷免されたことについて,最近の司法研修所の実態と問題点(昭和52年7月の大阪弁護士会の文書)25頁には以下の記載があります。
   昭和五〇年一〇月六日、実務修習の二八期、二九期生に対して、「司法修習生の規律保持について」と題する、大塚正夫司法研修所長の通達が出された。この通達では、四名の修習生が処分を受けた事例をあげて、今後も研修所において、修習生の規律保持について厳格に対処する考えであることを表明して、修習生に規律の厳守と修習への専念を要望している。その中で挙げられている「酔余他人の自転車を窃取」したとされる事例は二八期生であり、その本人は修習生の身分を失った。同人によれば、ある飲み屋から友人のいる他の飲み屋に行く際、道端にあった自転車を帰りに同じ道を通るのですぐに返せると考えて借りたということであり、当時の実務庁の検察教官からは,大した問題ではないので処分等の問題まで至らないといわれ、安心していたところ、研修所への報告後、急に処分問題にまで発展したとのことである。
(2) 昭和61年7月,関東地方のスーパーで菓子4000円相当を万引きして書類送検された女性修習生が罷免されました(司法の病巣117頁)が,それ以上の詳細は不明です。


6 罷免された後の再採用
(1)ア 「品位を辱める行状」があったことを理由に罷免された司法修習生が再採用を申し出た過去の先例では,①司法研修所の修習終了式を妨害したとされた23期司法修習生,及び②知り合いの女性に頼まれて家族の離婚問題に介入し,恐喝まがいの行為をしたとされた34期司法修習生については,2年度に再採用が認められたみたいです。
   これに対して公然わいせつ行為を行った33期の司法修習生については,6年後に再採用が認められたみたいです。
イ   報道されている事実を前提とすれば,公然わいせつ行為を行った70期の司法修習生の場合,再採用が認められなかった33期の司法修習生よりも情状は軽い気がします。
(2) 昭和56年11月30日の毎日新聞夕刊によれば,司法修習生が罷免されたのは,昭和56年11月25日付の罷免を含めて9人であり,うち6人は成績不良や病気などによるものであるところ,33期の司法修習生を除く7人は,後日,再採用されたそうです。
(3)  二回試験不合格という成績不良を理由に罷免された司法修習生について再採用が認められるのは早くても1年後であることにかんがみ,それよりも情状が悪い,素行不良を理由に罷免された司法修習生については,2年後に再採用を認めるという運用をしてきたのかもしれません。
(4)ア 平成29年度(最情)答申に第38号(平成29年10月2日答申)は以下の記載があります。
   本件開示文書には,司法修習生の採用選考における審査基準が記載されているところ,その記載内容を踏まえて検討すれば,司法修習生であった者が考試を再度受験するために再採用される際には,本件開示文書に基づいて審査が行われるのであり,本件開示文書以外に司法行政文書を作成し,又は取得する必要はないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において本件開示文書以外に本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
イ 本件開示文書は「司法修習生採用選考審査基準(平成28年6月1日付け)」であり,本件開示申出文書は「司法修習生考試に不合格となった者を再び採用する際の,最高裁判所及び司法研修所内部の事務手続が分かる文書(最新版)」です。
(5) 「司法修習生採用選考審査基準(平成28年6月1日付け)」には以下の記載があります。
2 司法修習生採用選考申込者に次に掲げる事由があると認めるときは,これを不採用とする。
(中略)
(2) 司法修習生であった者が,次のいずれかに該当すること。
ア 修習態度の著しい不良その他の理由により修習をすることが不相当である者
イ 成績不良(裁判所法(昭和22年法律第59号)第67条第1項の試験の不合格を除く。)その他の理由により修習をすることが困難である者
ウ 裁判所法第67条第1項の試験に連続して3回合格しなかった者(再度司法試験法による司法試験に合格した者を除く。)。ただし,病気その他やむを得ないと認められる事情により,裁判所法第67条第1項の試験の全部又は一部を受験することができなかった場合には,当該試験については,受験回数として数えないものとすることができる。


7 関係記事その他
(1) 令和2年度(最情)答申第27号(令和2年10月27日答申)には以下の記載があります。
    当委員会庶務を通じて確認した結果によれば,「司法修習生採用選考申込書」の「12 不採用事由等の有無」欄に,「(3)審査基準(2)ア(エ)関係」として,「かつて起訴(略式起訴を含む。)又は逮捕(補導)されたことの有無」を記載する箇所があることが認められ,また,「令和元年度司法修習生採用選考要項」には,上記司法修習生採用選考審査基準が掲載されており,同審査基準(2)ア(エ)は,司法修習生の不採用事由の一つとして,「品位を辱める行状により,司法修習生たるに適しない者」を掲げていることが認められる。これらの各文書の記載内容を踏まえれば,「司法修習生採用選考申込書」において逮捕歴及び補導歴を記載させる理由は明らかであるということができるから,このほかに同申込書の記載欄の一つ一つにつき,それぞれ申込者に記載をさせる理由を説明した文書が存在することは通常考え難い。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の罷免
・ 司法修習生の罷免理由等は不開示情報であること
・ 司法修習生の罷免事由別の人数
・ 司法修習生の罷免等に対する不服申立方法
・ 38期二回試験において,書き込みをした六法全書が持ち込まれたことに関する国会答弁
→ 38期二回試験では,書き込みをした六法全書を持ち込んだ司法修習生が8人いたものの,司法研修所長から厳重な書面による注意を受けたにとどまり,他の人から11日遅れで司法修習を終えることができました。
・ 司法修習生の逮捕及び実名報道
・ 司法修習生の守秘義務違反が問題となった事例
(3) 平成30年に発覚した裁判所における障害者雇用に係る事案(裁判所HPの「裁判所における障害者雇用に係る事案に関する検証について」参照)に関して,最高裁判所では懲戒処分がありませんでした(平成31年3月14日付の理由説明書参照)。

民間労働者と司法修習生との比較

目次
第1 総論
第2 採用時点
1 民間労働者の場合
2 司法修習生の場合
第3 休暇の有無
1 民間労働者の場合
2 司法修習生の場合
第4 病気等で働けない場合の取扱い
1 民間労働者(社会保険加入が前提です。以下同じ。)の場合
2 司法修習生の場合
第5 妊娠,出産及び育児に関する取扱い
1 民間労働者の場合
2 司法修習生の場合
第6 最低賃金法との関係
1 研修医の場合
2 司法修習生の場合
第7 労働時間等の管理の有無
1 民間労働者の場合
2 司法修習生の場合
第8 労働基本権の有無
1 民間労働者の場合
2 国家公務員の場合
3 地方公務員の場合
4 司法修習生の場合
第9 代償措置の有無
1 国家公務員の場合
2 地方公務員の場合
3 司法修習生の場合
第10 関連記事その他

第1 総論
1 司法修習生は民間労働者と比べて色々な面で不利な取扱いを受けていますから,最高裁判所としては,司法修習生の労働者性を否定することを当然の前提にしていると思われます。
2    「やっぱり世界は**しい!」と題するブログ「守秘義務」によれば,司法研修所が動くこと自体が司法修習生にとっては大変な脅威であって,司法修習生という立場は,まさに現代の特別権力関係だそうです。
3(1) 労働者としての実態があるかどうかは,昭和60年12月19日付の労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」に基づいて決定されます。
   在宅勤務者が労働者に該当するかどうかについては,厚生労働省HPの「在宅勤務者についての労働者性の判断について」が参考になります。
(2) 経済産業省HPの「「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(案)に対するパブリックコメントの結果及び同ガイドラインを取りまとめました」(2021年3月26日付)には,「現行法上「雇用」に該当する場合の判断基準」の説明もあります。



第2 採用時点

1 民間労働者の場合
(1) 会社には採用の自由があること
ア 会社は,経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し,自己の営 業のために労働者を雇用するに当たり,いかなる者を雇い入れるか,いかなる条件でこれを雇うかについて,法律その他による特別の制限がない限り,原則として自由にこれを決定することができます(最高裁平成15年12月22日判決。なお,先例として,最高裁大法廷昭和48年12月12日判決参照)。
   つまり,会社は採用の自由を有しますから,採用してもらえるかどうかは原則として会社次第となります。
イ 採用の自由については,法律上,以下の制限はあります。
① 雇用対策法10条(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)
→ 例外として,長期間の継続勤務による職務に必要な能力の開発及び向上を図ることを目的とし,期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合,新卒者等に限定した募集及び採用を行うことができます(雇用対策法施行規則1条の3第1項1号)。
② 男女雇用機会均等法5条(性別を理由とする差別の禁止)
→ ちなみに,厚生労働省HPの「都道府県労働局雇用均等室における法施行状況について」に掲載されている「平成27年度都道府県労働局雇用均等室での法施行状況」によれば,第5条関係の労働者からの相談は,206件(25年度),196件(26年度),136件(27年度)と推移しており,第11条関係(セクハラ)の10分の1以下の相談件数です。
    なお,平成28年度以降の同趣旨の文書は,厚生労働省HPの「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における法施行状況について」に掲載されています。
③ 障害者雇用促進法5条(事業主の責務)
④ 労働組合法7条(不当労働行為)1号
(2) 国籍による差別は当初から禁止されていたこと
    昭和22年9月1日の労働基準法施行当初から,労働者の国籍による差別は禁止されていました(労働基準法3条)。
2 司法修習生の場合
(1) 一定の欠格事由に該当しない限り差別なく採用してもらえること
ア 司法試験合格者は,一定の欠格事由に該当しない限り,性別・年齢等に関係なく司法修習生に採用してもらえます(裁判所法66条1項参照)。
イ  健康診断の結果が非常に悪かった場合,「心身の故障により修習をすることが困難である者」に該当する可能性があります。
    罰金前科等があった場合,「品位を辱める行状により,司法修習生たるに適しない者」に該当する可能性があります。
    そのため,これらの事由がある場合,司法修習生に採用してもらえない可能性があります(司法修習生の採用選考,健康診断及び名刺」参照)。
(2) 以前は日本国籍が必要であったこと
ア   昭和51年採用の30期までは,司法修習生採用選考要領の欠格事由が「日本の国籍を有しない者」となっていて,司法修習生となるためには帰化して日本国籍を取得する必要がありましたから,台湾国籍では司法修習生に採用されませんでした(神戸合同法律事務所HPの「吉井正明」参照)。
    しかし,昭和52年に在日韓国人の金敬得が帰化せずに31期司法修習生に採用されて以降,司法修習生採用選考要領の欠格事由が「日本の国籍を有しない者(最高裁判所が相当と認めた者を除く。)」となりました。
    そして,平成21年11月採用の司法修習生(新63期)から,司法修習生採用選考要領の欠格事由から「日本の国籍を有しない者」が削除されました(外部ブログの「「司法修習生は日本国籍必要」条項を削除 最高裁」参照)。
イ 日弁連は,平成6年3月28日付の最高裁判所長官宛要望において,「最高裁判所が司法修習生採用選考において、外国籍の者や逮捕歴・起訴歴を有する者に対して、本人の誓約書や保証人を求めていることは憲法等に違反するとして、司法修習生採用選考要項の「国籍条項」を削除するとともに、これらの差別的取扱・慣行を行わないよう要望した」みたいです(日弁連HPの「司法修習生採用時の国籍条項等による差別人権救済申立事件(要望)」参照)。
ウ 平成29年5月12日付の司法行政文書不開示通知書によれば,司法修習生採用に際しての国籍条項が廃止されるに至った経緯が分かる文書は,保存期間を満了しており廃棄済みです。
エ 外国人登録原票は現在,法務省入国管理局で保管されています(法務省入国管理局HP「外国人登録原票を必要とされる方へ」参照)。


第3 休暇の有無
1 民間労働者の場合
(1) 就職してから6ヶ月間継続して勤務し,全労働日の8割以上出勤した場合,10日以上の有給休暇をもらえます(労働基準法39条1項)し,年次有給休暇を取得したことについて,賃金の減額その他不利益な取扱いをされることはありません(労働基準法附則136条)。
(2) 事業遂行に必要な技術者の養成と能力向上を図るため,各職場の代表者を参加させて,一箇月に満たない比較的短期間に集中的に高度な知識,技能を修得させ,これを職場に持ち帰らせることによって,各職場全体の業務の改善,向上に資することを目的として行われた訓練の期間中に,訓練に参加している労働者から年次有給休暇が請求されたときは,使用者は,当該休暇期間における具体的な訓練の内容がこれを欠席しても予定された知識,技能の修得に不足を生じさせないものであると認められない限り,事業の正常な運営を妨げるものとして時季変更権を行使することができます(最高裁平成12年3月31日判決)。
(3) 昭和23年3月17日付の労働省労働基準局長通達には,「法人の所謂重役で業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、 その限りにおいて労働基準法第9条に規定する労働者である。」と書いてあります。
    そのため,使用人兼務役員であっても,勤務実態として労働者の要素が強い場合,有給休暇を付与してもらえます(勤怠管理システムAKASHI「役員に有給休暇はあるのか?役員の働き方を解説します」参照)。
(4)  無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は,労働基準法39条1項及び2項における年次有給休暇権の成立要件としての全労働日に係る出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれます(最高裁平成25年6月6日判決)。
(5)ア 厚生労働省HPに「有給休暇ハンドブック」(年次有給休暇の計画的付与と取得について)が載っています。
イ 外部HPに「ポイントは4つだけ。意外に勘違いが多い有給休暇制度」が載っています。
2 司法修習生の場合
    休暇という概念がありませんから,正当な理由のない欠席は規律違反として非違行為となります。


第4 病気等で働けない場合の取扱い
1 民間労働者(社会保険加入が前提です。以下同じ。)の場合(「労災保険」「休職期間中の社会保険及び税金」,及び「症状固定後の社会保険及び失業保険」参照)
(1) 休職できること
ア 病気等で働けない場合,就業規則の内容によっては6箇月から1年は休職できます。
イ 休職期間中,健康保険から1年6月を上限として傷病手当金(月給の3分の2)を支給してもらえます(協会けんぽHPの「病気やケガで会社を休んだとき」参照)。
(2) 職場に復帰する際の配慮事項
ア メンタルヘルスの問題で休職した人が職場に復帰する際の配慮事項について,厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~」を作成しています。
イ 労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては,現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても,その能力,経験,地位,当該企業の規模,業種,当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ,かつ,その提供を申し出ているならば,なお債務の本旨に従った履行の提供があります(最高裁平成10年4月9日判決)。
(3) 事後的に社会保険に加入できること
・ 社会保険への加入手続をしてもらっていなかった場合であっても,労働者としての実態があるのであれば,以下のとおり事後的に社会保険に加入できます。
① 労災保険については労基署の職権による成立手続及び労災保険料の認定手続(労災保険法31条1項1号参照)を経ること
② 雇用保険についてはハローワークの職権による被保険者資格の確認(雇用保険法8条及び9条)を経ること
③ 健康保険については年金事務所又は健康保険組合の職権による確認(健康保険法39条・51条1項)を経ること
④ 厚生年金については年金事務所の職権による確認(厚生年金保険法18条2項)を経ること
(4) 社会保険の適用範囲の拡大
・ 平成28年10月1日,従業員規模501人以上の企業の場合,所定労働時間が週20時間以上30時間未満・月額賃金8.8万円以上・勤務期間1年以上見込み・学生でないパート・アルバイトについても社会保険が適用されるようになりました(政府広報オンラインの「暮らしに役立つ情報」「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象が広がっています。」参照)。
(5) 休職中でも社会保険料の負担は続くこと
ア 健康保険料,介護保険料(40歳以上の場合),厚生年金保険料及び雇用保険料の被用者負担分を給料から天引きされています(HR NOTEの「社会保険とは?代表的な4つの保険と今さら聞けない基礎知識」参照)。
イ 休職により健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料が免除されるのは育児休業及び産前産後休暇だけであって,他の理由による休職,休業では労働者負担分の社会保険料を支払う必要があります。
(6) 退職後の傷病手当金
・ 資格喪失日の前日(退職日)までに協会けんぽ又は健康保険組合における被保険者期間が1年以上あり,資格喪失日の前日(退職日)に傷病手当金を受けているか,又は受けられる状態にある人は,退職後も傷病手当金をもらえます(協会けんぽ神奈川支部HPの「ココが知りたい!傷病手当金~制度概要から申請書記入方法など~」参照)。
    ただし,退職後も継続して傷病手当金をもらう予定である場合,退職日当日には絶対に出勤してはなりませんし(有給休暇はOKです。),会社の人に「お世話になりました」等の挨拶回りをしたり,自分の仕事道具を片付けたりするのは退職日の4日以上前にした方がいいです(傷病手当金.com「退職直前の傷病手当金」参照)。
(7) 傷病手当金の支給機関の拡大
・ 令和4年1月1日,傷病手当金の支給期間は支給開始日から「通算して1年6ヶ月」になりました(健康保険法99条4項)。
    そのため,例えば,支給期間中に途中で就労するなど,傷病手当金が支給されない期間がある場合,支給開始日から起算して1年6か月を超えても,繰り越して支給可能になります(厚生労働省HPの「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」参照)。


2 司法修習生の場合
(1)   病気等で修習に参加できない場合,①トータルで45日以内の欠席しか認められていませんし,②導入修習,実務修習の各クール,集合修習,選択型実務修習といったそれぞれの修習単位について半分までの日数の欠席しか認めれていません。
   そのため,それ以上休む必要がある場合,いったん罷免された上で,次年度の司法修習生として再採用される必要があります。
   また,休んでいる期間中,修習給付金及び修習専念資金を支給してもらえるに過ぎません。
(2) 再採用される際の配慮事項について,司法研修所が作成している手引きは特に存在しないと思います。
(3) 健康保険料,介護保険料,厚生年金保険料及び雇用保険料は問題となりませんから,修習給付金から天引きされるものはありません。


第5 妊娠,出産及び育児に関する取扱い
1 民間労働者の場合
(1) 民間労働者が妊娠・出産して育児をする場合,①健康保険から出産育児一時金42万円(協会けんぽHPの「子どもが生まれたとき」参照)を支給してもらえますし,②出産日以前42日から出産日の翌日以降56日までの間,健康保険から出産手当金(賃金日額の3分の2)を支給してもらえますし(協会けんぽHPの「出産手当金」参照),③雇用保険から育児休業給付金(180日目までは賃金日額の67%,181日目以降は賃金日額の50%)を支給してもらえます(大阪労働局HPの「育児休業給付について」参照)。
    また,①産前産後休暇(産前6週間・産後8週間)(労働基準法65条)を取ったり,②原則として1年間の育児休業を取ったりできます(育児・介護休業法9条2項参照)し,③育児休業をしたことを理由として解雇その他不利益な取扱いを受けることはありません(育児・介護休業法10条)。
(2) 産前産後休業期間(産前42日(多胎妊娠の場合は98日),産後56日のうち,妊娠又は出産を理由として労務に従事しなかった期間)について,健康保険・厚生年金保険の保険料は,被保険者が産前産後休業期間中に事業主が年金事務所に申し出ることにより被保険者・事業主の両方の負担につき免除されます。
    申出は,事業主が産前産後休業取得者申出書を日本年金機構(事務センター又は年金事務所)へ提出することにより行います。
    この免除期間は,将来,被保険者の年金額を計算する際は,保険料を納めた期間として扱われます(日本年金機構HPの「厚生年金保険料等の免除」参照)。
(3) 育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等期間について、健康保険・厚生年金保険の保険料は,被保険者が育児休業の期間中に事業主が年金事務所に申し出ることにより被保険者・事業主の両方の負担につき免除されます。
    申出は,事業主が育児休業等取得者申出書を日本年金機構(事務センター又は年金事務所)へ提出することにより行います。
    この免除期間は、将来、被保険者の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます(日本年金機構HPの「厚生年金保険料等の免除」参照)。
エ 平成29年1月1日,上司・同僚からの,妊娠・出産,育児休業,介護休業等を理由とする嫌がらせ等(いわゆるマタハラ・パワハラ等)を防止する措置を講じることが事業主に義務づけられました(リーフレット「育児・介護休業法が改正されます!-平成29年1月1日施行-」「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」参照)。
オ 平成29年10月1日以降,保育所等における保育の実施が行われないなどの理由により,子が1歳6ヶ月に達する日後の期間についても育児休業を取得する場合,その子が2歳に達する日前までの期間,育児休業給付金の支給対象となります(厚生労働省HPの「平成29年10月より育児休業給付金の支給期間が2歳まで延長されます」参照)。
   また,事業主は,労働者又はその配偶者が妊娠・出産した場合,家族を介護していることを知った場合に,当該労働者に対して,個別に育児休業・介護休業等に関する定めを周知するように努めることとなりました(育児休業等制度の個別周知)(厚生労働省HPの「平成29年改正法の概要」参照)。
カ 育児・介護休業法については,厚生労働省HPの「育児・介護休業法について」が詳しいです。
   また,平成28年8月2日付の育児・介護休業法に関する施行通達(平成29年9月29日最終改正)を見れば,厚生労働省の解釈が分かります。
キ 外部HPの「あなたの産休・育休の期間と金額を自動計算します。」を使えば,産前・産後休業に関する休業期間,社会保険料免除額,出産育児一時金及び出産手当金,並びに育児休業に関する休業期間,社会保険料免除額及び育児休業給付金を計算できます。
2   司法修習生の場合
(1)   司法修習生が妊娠・出産して育児をする場合,国民健康保険から出産育児一時金を支給してもらえるだけです。
(2) 導入修習,集合修習といったそれぞれの修習単位について半分までの欠席しか認めれていません(民間労働者の場合,産後6週間の女性の就業が禁止されていることにつき労働基準法65条2項ただし書参照)。
   そのため,いったん罷免された上で,次年度の司法修習生として再採用される必要があります。
(3) 司法修習の期間が2年だったときは,女性修習生が修習中に出産した場合であっても,修習の必要出席日数をぎりぎりでクリアできて罷免されずにすんだ事例があったみたいです(東洋経済オンラインの「激務さんの「最強育児」は,ママ弁護士に学べ」参照)。
(4) 34期の赤根智子法務総合研究所長(平成26年当時)の場合,産後のみ約1ヶ月のお休みをもらった後,司法修習に復帰したみたいです(内閣官房内閣人事局HPの赤根智子法務総合研究所長の記事参照)。
(5) 愛知県弁護士会HPの「『女性法曹に聞く法曹の魅力』~綿引万里子名古屋高等裁判所長官・赤根智子国際刑事裁判所裁判官・鬼丸かおる元最高裁判所裁判官~」には,鬼丸かおる 元最高裁判所判事の発言として,「修習中に出産しましたので、弁護士になった時点で、子どもが1人いました。」と書いてあります。
(6) 東弁リブラ2015年4月号「湯島2期…「司法の危機」時代の青春」には,25期の酒井幸 弁護士の体験談として以下の記載があります。
     私は実務修習中に結婚し,出産した。後期が始まる直前の10月18日,弁護修習の時に長男を出産。修習担当の山本晃夫弁護士(第一東京弁護士会)は,体調を気遣ってくださりながら,大きなお腹を抱える私を伴い,告訴状を出しに警察へも同行してくださった。修習生に産休はなく,2年間の総欠席日数のリミットの範囲で,産前は約1ヶ月休み,産後は11月下旬に始まる後期修習から出た。弁護修習の欠席日数は,多少おまけをしていただいたような気がする。山本弁護士は早く鬼籍に入られ,もうお礼を申し上げることができない。
     子育ても頑張りながら緊張が続いた修習最後の二回試験では,さすがに一晩入院する羽目になり,口述試験を後ろのグループに変えてもらい,薄氷を踏む思いでクリアした。柔軟な対応はありがたかった。


第6 最低賃金法との関係
1 研修医の場合
   臨床研修のプログラムに参加している研修医は労働基準法9条所定の労働者に該当しますから, 最低賃金法の適用があります(最高裁平成17年6月3日判決)。
2 司法修習生の場合
(1) 最低賃金法が適用されない司法修習生の修習資金貸与制については,司法修習生の修習資金貸与制」を参照して下さい。
(2) 71期以降の司法修習生については,修習給付金の基本手当として月額13万5000円が支給されます(「司法修習生の修習給付金及び修習専念資金」参照)。
   ところで, 平成28年10月1日発効の,埼玉県最低賃金は時給845円です(埼玉労働局HPの「埼玉県の最低賃金」参照)。
   そのため,埼玉県において最低賃金で1日8時間働いた場合の30日分の給料は,845円×40時間×30日/7日=14万4857円となります。
   よって,司法修習が労働に該当するとした場合,月額13万5000円の修習手当は,埼玉県の最低賃金を下回ることとなります。


第7 労働時間等の管理の有無
1 民間労働者の場合
(1) 労働時間の意義等
ア 労働基準法32条の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,右の労働時間に該当するか否かは,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって,労働契約,就業規則,労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではありません(三菱重工業長崎造船所事件に関する最高裁平成12年3月9日判決)。
イ 憲法27条2項は,「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」と定めています。
(2) 労働時間の管理
ア 平成12年11月30日付の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」に基づき,使用者は,労働時間を適正に管理するため,労働者の労働日ごとの士業・終業時刻を確認し,これを記録する必要がありますし,原則として,タイムカード,ICカード等の客観的な記録を基礎として始業・終業時刻を確認し,記録する必要があります。
   また,労働時間の記録に関する書類については,労働基準法109条に基づき3年間保存する必要があります。
イ 未払い賃金・残業代ネット相談室HP「未払い残業代請求に対する使用者側からの反論・争点」が載っています。
ウ 平成29年1月20日付の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では,従前の基準では明確にされていなかった労働時間について以下の説明がなされています。なお,厚生労働省HPの「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」と題するパンフレットが詳しいですし,椎名宮崎社会保険労務士法人HP「労働時間適正把握対照表」を見れば,平成12年の基準と平成29年のガイドラインの違いがよく分かります。
     労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。そのため、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければならないこと。
    ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱うこと。
(中略)
ウ   参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間


2 司法修習生の場合
(1)    登庁又は出勤の状況は出勤簿等によって把握され,何らかの理由で登庁又は出勤が遅れた場合,遅参届を提出する必要がありますものの,修習時間を適切に管理するためのものではないと思います。
(2)  司法修習は,法曹三者となるために参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講に当たると思いますが,労働時間には該当しません。


第8 労働基本権の有無
1 民間労働者の場合
(1) 憲法28条のほか,労働組合法及び労働関係調整法に基づき,労働基本権として団結権,団体交渉権及び団体行動権(典型例が争議権です。)が保障されています。
(2) 労働組合法1条2項は,「刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十五条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」と定めています。
(3) 労働組合法7条に基づき,以下の行為は不当労働行為として禁止されています(厚生労働省HPの「不当労働行為とは」参照)。
① 組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱い(1号)
② 正当な理由のない団体交渉の拒否(2号)
③ 労働組合の運営等に対する支配介入及び経費援助(3号)
④ 労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱い(4号)
(4) 不当労働行為があった場合,都道府県労働委員会に対する救済申立てができます(行為の日から1年以内に行う必要があることにつき労働組合法27条2項)し,都道府県労働委員会の発した命令に不服がある当事者は,中央労働委員会に対する再審査の申立てをしたり,地方裁判所に命令の取消しを求める行政訴訟(取消訴訟)を提起したりできます(厚生労働省HPの「不当労働行為事件の審査手続きの流れ」参照)。


(5) 大阪府労働委員会の場合,大阪府知事が任命した公益委員・労働者委員・使用者委員による三者同数(公益・労働者・使用者を代表する各側11名)の委員で構成されています(大阪府労働委員会HP参照)。
(6) 労働組合法に適合する旨の労働委員会の証明を受けた労働組合は,主たる事務所の所在地において登記をすることによって法人となります(労働組合法11条1項,労働組合法施行令2条及び3条)。
(7) 使用者が誠実に団体交渉に応ずべき義務に違反する不当労働行為をした場合には,当該団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないときであっても,労働委員会は,使用者に対して誠実に団体交渉に応ずべき旨を命ずることを内容とする救済命令を発することができます(最高裁令和4年3月18日判決)。


2 国家公務員の場合(総務省HPの「国家公務員及び地方公務員における労働基本権について」参照)
(1) 国家公務員のうち,特定独立行政法人の職員,国有林野事業を行う国の経営する企業の職員には団結権及び団体交渉権(団体協約締結権を含む。)が認められ,非現業職員には団結権及び団体交渉権(ただし,団体協約締結権は除く。)が認められます。
   しかし,自衛隊員,警察職員,海上保安庁職員及び刑事施設職員については明文で団結権及び団体交渉権が認められていません(自衛隊法64条,国家公務員法108条の2第5項)。
(2) 国家公務員の場合,民間企業の労働組合に相当するものとして,職員団体があります(国家公務員法108条の2及び108条の3・裁判所職員臨時措置法)。
   裁判所には全司法労働組合(全司法)(裁判所書記官,裁判所事務官,裁判所速記官,家庭裁判所調査官等で構成されています。)があり,法務省には全法務省労働組合(全法務)(法務省,法務局,保護局,入国管理局及び少年院・少年鑑別所の職員で構成されています。)があります(国交労連(国家公務員労働組合連合会)HP「各単組の紹介」参照)。
(3) 管理職員等と管理職員等以外の職員とは,同一の職員団体を組織することができず,両者が組織する団体は,国家公務員法上の職員団体ではないとされています(国家公務員法108条の2第3項)。
    これは,管理職員等とその他の職員とでは,労使関係における立場を異にし,利害が対立する関係にあるので,この両者が混在して同一の団体を組織することは,職員団体本来の目的である構成員の職業上の共通の利益を,民主的,自主的に追求する健全な基礎を欠くものと判断されるためです。
(4) 行政機関職員の職員団体は人事院に,裁判所職員の職員団体は最高裁判所に登録を申請することにより,法人となることができます(職員団体等に対する法人格の付与に関する法律3条1項1号及び2号)。
(5) 29期の大谷直人最高裁判所人事局長は,平成22年11月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしていますから,裁判官については解釈上,団結権及び団体交渉権が認められていません。
    これまで我が国におきまして、裁判官の労働基本権ということが問題となった事例がございませんで、法令の解釈にかかわるという事柄でもありますので、私の立場から意見を述べることは差し控えさせていただきたいと思うわけです。
    従来から、裁判官につきましては、憲法によって報酬あるいは身分といったものについて強い保障を受けるとともに、職務の執行についてもその独立性が強く保障されているわけでございます。一般の勤労者のように、使用者と対等の立場に立って経済的地位の向上あるいは労働条件の改善を図る必要がない、こういった理由から、裁判官に、労働組合を結成し、またはこれに加盟する権利は認められない、このように理解されてきたものと承知しております。


3 地方公務員の場合(総務省HPの「国家公務員及び地方公務員における労働基本権について」参照)
(1) 地方公務員のうち,企業職員には団結権及び団体交渉権(団体協約締結権を含む。)が認められ,非現業職員には団結権及び団体交渉権(ただし,法的拘束力のない書面による協定を締結する権限までに限る。)が認められます。
    しかし,警察職員及び消防職員については明文で団結権及び団体交渉権が認められていません(地方公務員法37条,52条5項)。
(2) 地方公務員の場合,民間企業の労働組合に相当するものとして,職員団体があります(地方公務員法52条及び53条)。
     大阪市の職員団体としては,大阪市労働組合連合会,大阪市労働組合総連合,大阪市職員労働組合,大阪市従業員労働組合,大阪市役所労働組合,なかまユニオン大阪市職員支部があるみたいです(大阪市HPの「職員団体及び労働組合との交渉など」参照)。
(3) 管理職員等と管理職員等以外の職員とは,同一の職員団体を組織することができず,両者が組織する団体は,地方公務員法上の職員団体ではないとされています(地方公務員法52条3項)。
(4) 地方公共団体の職員団体は地方公共団体の人事委員会又は公平委員会に登録を申請することにより,法人となることができます(職員団体等に対する法人格の付与に関する法律3条1項3号)。
(5) 京都府HPに「職員の勤務条件と職場の安全衛生~労働基準法・労働安全衛生法関係事務の手引~」が載っています。
4 司法修習生の場合
   そもそも労働者でありませんから,労働基本権はありません。


第9 代償措置の有無
1 国家公務員の場合
(1) 行政機関の国家公務員の場合,人事院があります(人事院HPの「労働基本権と人事院勧告の意義」参照)
(2) 人事院の場合,官房部局のほか,職員福祉局,人材局,給与局及び公平審査局があります(人事院HPの「人事院とは?」参照)。
(3) 裁判所職員の場合,最高裁判所行政不服審査委員会がありますものの,準司法的権限しか有していないと思います。
(4) 全農林警職法事件に関する最高裁大法廷昭和48年4月25日判決は,以下のとおり判示しています(改行を追加しました。)。
   その争議行為等が、勤労者をも含めた国民全体の共同利益の保障という見地から制約を受ける公務員に対しても、その生存権保障の趣旨から、法は、これらの制約に見合う代償措置として身分、任免、服務、給与その他に関する勤務条件についての周到詳密な規定を設け、さらに中央人事行政機関として準司法機関的性格をもつ人事院を設けている。ことに公務員は、法律によつて定められる給与準則に基づいて給与を受け、その給与準則には俸給表のほか法定の事項が規定される等、いわゆる法定された勤務条件を享有しているのであつて、人事院は、公務員の給与、勤務時間その他の勤務条件について、いわゆる情勢適応の原則により、国会および内閣に対し勧告または報告を義務づけられている。
   そして、公務員たる職員は、個別的にまたは職員団体を通じて俸給、給料その他の勤務条件に関し、人事院に対しいわゆる行政措置要求をし、あるいはまた、もし不利益な処分を受けたときは、人事院に対し審査請求をする途も開かれているのである。
   このように、公務員は、労働基本権に対する制限の代償として、制度上整備された生存権擁護のための関連措置による保障を受けているのである。
2 地方公務員の場合
(1) 都道府県及び政令指定都市の場合,地方自治法202条の2第1項・地方公務員法7条1項に基づき人事委員会が設置されています。
   和歌山市の場合,地方自治法202条の2第1項・地方公務員法7条2項に基づき人事委員会が設置されています。
   それ以外の市の場合,地方自治法202条の2第2項・地方公務員法7条3項に基づき公平委員会が設置されています。
(2) 人事委員会及び公平委員会の権限は地方公務員法8条に書いてあります。
(3) 大阪市人事委員会の場合,主な業務は,①給与,勤務時間その他の勤務条件等に関する調査研究,②職員の給与に関する報告及び勧告,③職員等に関する条例の制定又は改廃に関する意見の申出,④職員の採用試験及び昇任選考等,⑤公平審査関係事務等(勤務条件に関する措置の要求,不利益処分に関する審査請求等),⑥労働基準監督機関としての業務及び⑦職員団体の登録等となっています(大阪市HPの「人事委員会の主な業務」参照)。
3 司法修習生の場合
    そもそも労働者でありませんから,労働基本権の制約に対する代償措置はありません。


第10 関連記事その他
1 憲法11条は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」と定め,憲法12条前段は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」と定めています。
2 職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律案 御説明資料(平成23年1月の厚生労働省の内閣法制局審査資料)10頁には以下の記載があります。
    『職業訓練」は労働者(求職者を含む。以下同じ。)が職業に必要な技能及びこれに関する知織を取得することを目的として行われるものを指すのに対し、「教育訓練」は、労働者に限らず幅広い対象者に対する教育を目的として行われるものを指すという概念上の違いがある。
3 下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり,元請企業の管理する設備工具等を用い,事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し,その作業内容も元請企業の従業員とほとんど同じであったなどといった事実関係の下においては,元請企業は,信義則上,右労働者に対し安全配慮義務を負います(最高裁平成3年4月11日判決)。
4(1) 平成29年4月24日付の司法行政文書不開示通知書によれば,最高裁判所が司法修習生に対して負っている安全配慮義務の内容が分かる文書は存在しません。
(2) 二弁フロンティア2021年5月号に「病気休職・復職に関する近時の 裁判例の動向と分析(前編)」が載っていて,二弁フロンティア2021年6月号に「病気休職・復職に関する近時の 裁判例の動向と分析(後編)」が載っています。
(3) 最高裁平成26年3月24日判決は,「労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることができないとされた事例」です。


5  被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え,その損害を賠償した場合には,被用者は,使用者の事業の性格,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について,使用者に対して求償することができます(最高裁令和2年2月28日判決)。
6  使用者が誠実に団体交渉に応ずべき義務に違反する不当労働行為をした場合には,当該団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないときであっても,労働委員会は,使用者に対して誠実に団体交渉に応ずべき旨を命ずることを内容とする救済命令を発することができます(最高裁令和4年3月18日判決)。
7 MoneyForwardクラウド給与HP「日給月給制とは?月給制との違いとメリットを解説!」が載っています。
8 厚生労働省HPの「いわゆる「シフト制」について」に「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」が載っています。
9 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の採用選考の必要書類
 司法修習生の採用選考に関する公式文書
 司法修習生の採用選考に必要な書類の掲載時期
・ 司法修習生の国籍条項に関する経緯
・ 業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較
 司法修習生の司法修習に関する事務便覧
 司法修習生の旅費に関する文書
 採用内定留保者に対する面接(司法修習)
 司法修習開始前に送付される書類
 司法研修所の沿革
・ 外国人技能実習生と司法修習生との比較
・ 恩赦の効果
 前科抹消があった場合の取扱い


司法修習生による取調べ修習の合法性

目次
1 はじめに
2 司法修習生による取調べ修習の違法説の根拠
3 司法修習生による取調べ修習の合法説の根拠
4 相島六原則
5 違法説から合法説への反論
6 取調べ修習に関する国会答弁
7 司法修習生の取調べに関する裁判例
8 関連記事その他

1 はじめに
(1) 司法修習生による取調べ修習の適法性は,昭和22年の第1期司法修習から問題となっていました(「造反-司法研修所改革の誘因-」(昭和45年6月10日発行)85頁)。
(2) 日弁連HPの「司法修習終了時点から見た司法修習生の実務修習について」8頁に,相島六原則の説明があります。

2 司法修習生による取調べ修習の違法説の根拠
① 取調べの主体について定めた刑事訴訟法198条1項は,「司法修習生」を主体としてあげていない。
   そのため,司法修習生による取調べは,同法197条1項ただし書が定める強制処分法定主義に違反する。
② 憲法31条の法定手続原則は,特に刑事手続においては厳格に解釈・運用されるべきである。司法修習生による取調べは法律上の明文の根拠を欠く以上,同原則違反で違憲である。
③ 取調べは被疑者に対して自己に不利益な供述まで求めるという点で,被疑者の人格の深いところまで立ち入るものであるところ,修習目的による取調べは,被疑者の人格を修習の道具として扱うものであり,人格の尊厳を趣旨とする憲法13条に違反する。

3 司法修習生による取調べ修習の合法説の根拠
① 被疑者の同意がある以上,許される。
② 将来の法曹を養成するという公益目的のためには取調べ修習は不可欠であり,それ故これを認める必要がある。
   医師のインターン制度と同じである。
③ 相島六原則を守れば,人権侵害のおそれは少ない。


4 相島六原則
・ 相島六原則は,相島一之司法研修所長が,昭和38年度司法修習生指導担当者協議会において述べた見解のことであります(「造反-司法研修所改革の誘因-」(昭和45年6月10日発行)87頁参照)ところ,その内容は以下のとおりです。
① 指導検察官が,あらかじめ個々の事件ごとに、事案の概要,問題点,発問の要領等を説明指導すること。
② 被疑者または参考人のいわゆる呼出は,指導検察官の責任で,かつ,その名において行い修習のみを目的とした捜査上不必要な呼出をしないこと。
③ 指導検察官は,被疑者または参考人に対し司法修習生の身分を説明し,検察官の取調べにさきだって司法修習生が発問を行なうことを告げ、その自由な意志に基づく承諾を得た場合に限って行うこと。
④ 指導検察官から被疑者に対し,あらかじめ供述拒否権の告知をすること。
⑤ 司法修習生が発問するにあたっては,指導検察官が同室し,十分な指導を行うこと。
⑥ 司法修習生が発問の結果作成した書面をそのまま検察官調書として流用することなく,指導検察官があらためて取調べを行ない供述調書を作成すること。


5 違法説から合法説への反論
① 被疑者と検察官の力関係,司法修習生というものについての一般人の理解からして,自由かつ真摯な同意とはいえない。
   法定手続原則は同意によって放棄できるものではない。
② 公益目的であっても個人の人格を踏みにじることは許されない。
   医師のインターン制度と取調べという権力の行使を同視することはできない。
③ 相島六原則を守ることは不可能である(現実に守られたという例はほとんどない。)。
   拘束時間が長くなることは明白である。
   大部屋で一斉にやらざるを得ず,プライバシー侵害が著しい。


6 取調べ修習に関する国会答弁
    高輪1期の矢口洪一最高裁判所事務次長は,昭和52年3月15日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
    現在はいわゆる検事代理の制度はございません。取り調べ修習というのは行われておりますが、これは稲葉委員御承知と思いますが、相島六原則というのにのっとりまして、一人前の指導検事が取り調べをするのを、率直に申し上げれば、事実上補助するということでございまして、自分の名前において、自分の責任において取り調べをするというものではございません。ただ、先走るようでございますが、裁判所においては、戦前戦後を通じまして、合議の傍聴といったようなこと、それから判決起案といったようなことは、これは司法修習生につきましても同様にやっておるようでございます。


7 司法修習生の取調べに関する裁判例
(1) 東京高裁昭和57年4月8日判決(判例秘書に掲載)は,「被告人はじめ参考人らに直接発問しその供述を録取したのは司法修習生であつたとしても、右各供述調書は右検察官らが自ら被告人らを直接かつ実質的に取調べて作成したものといつて妨げないというべきであるから、右各供述調書の作成過程に所論の違法があるものとは認められず、また、本件公訴の手続も検察官◯◯◯◯がその固有の権限に基づき、自らの判断と責任において行つたものと認められ、所論のように公訴提起の手続が無効なものではないことに寸毫も疑いの余地はない」と判示しました。
(2) 大阪高裁昭和59年10月16日判決(判例秘書に掲載)は, 検察修習中被告人からの事情聴取等を行った京都地裁配属の37期司法修習生に対し、弁護人が弁論要旨の原稿作成等弁護活動の一部を行わせたことについて、望ましくはないが訴訟手続を違法にするものではないと判示しました。
(3) 名古屋高裁平成15年8月13日判決(判例秘書に掲載)は,指導検察官が,司法修習生による取調の際,同室して指導監督を行わず,その取調べ結果を参考にして,要点を被告人から確認した上,岐阜地裁配属の55期司法修習生が作成したフロッピー内のデータを利用してパソコンを使って作成した供述調書につき,証拠能力を認めました。
(4) 迷惑防止条例に関する無罪判決の確定後に提起された国家賠償請求事件に関する横浜地裁平成24年10月12日判決(判例秘書に掲載)は,東京地裁配属の新61期司法修習生による取調べの適法性も争われましたところ,適法なものであったと判示しました。


8 関連記事その他
(1)ア 取調べ修習に関しては,「修習生って何だろう-司法試験に受かったら」(21世紀の司法修習を見つめる会)77頁ないし80頁の記載が参考になります。
イ 平成24年度初任行政研修「事務次官講話」「明日の行政を担う皆さんへ」と題する講演(平成24年5月15日実施)において,西川克行法務事務次官は以下の発言をしています(リンク先のPDF16頁)。
    (山中注:検察官の取調べに関して)分かっていただきたいのは、ごくごく普通の会話というのがほとんどの場合です。それで取調べが成立しているということで、それ以上のものではない。時には、嘘をついていると思ったら、その嘘を追及していますし、本当のことを言えという会話もあるわけですけれども、大体の場合は、普通に話をして普通に答えを聞いていけば、ある程度のことは話してくれるし、それから、その人の普段考えていて興味のある分野について、専門知識を提供してくれるというところはあるのかなと思っています。
(2)ア 検察修習における取調べの感想をブログに書いた結果,守秘義務違反としてマスコミ報道された事例については,「司法修習生の守秘義務違反が問題となった事例」を参照してください。
イ 前田恒彦 元検事によれば,捜査当局は捜査情報をマスコミにリークすることがあるみたいです。
① なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか(1)
② なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか(2)
③ なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか(3)
(3)ア 最高検察庁HPに「録音・録画の実施状況」が載っています。
イ 弁護士求人ナビの「検察修習の振り返り」に,被疑者取調べ・面前口授のことが書いてあります。
ウ 自由と正義2024年5月号に「特集 取調べへの弁護人立会い 」が載っています。
(4)ア 被疑者ノートは,逮捕・勾留された被疑者が取調べの状況を記録する書き込み式のノートでありますところ,日弁連HPの「被疑者ノート」から誰でもダウンロードできます。
イ 弁護士相談広場HP「逮捕後、警察の捜査官が作成する2つの書類。弁解録取書と身上調査書」が載っています。
ウ 弁護士・法務人材専門の総合転職エージェントNO-LIMIT「検察修習のリアルレポート・東京修習の場合|捜査実務修習・里親修習は何をする?」が載っています。
(5)ア 最高裁平成8年10月29日決定は,令状に基づく捜索の現場で警察官が被告人に暴行を加えた違法があってもそれ以前に発見されていた覚せい剤の証拠能力は否定されないとされた事例です。
イ 強制採尿令状の発付に違法があっても尿の鑑定書等の証拠能力が肯定されることはあります(最高裁令和4年4月28日判決)。
(6)ア 元検事が執筆した取調べに関する書籍としては,例えば以下のものがあります。
・ 自動車事故の供述調書作成の実務(2016年11月15日付)
・ 取調べハンドブック(2019年2月4日付)
イ 以下の資料を掲載しています。
・ 検察官調書作成要領
・ 検察修習の現状と展望
→ 司法研修所五十年史からの抜粋です。
・ 取調べの録音・録画の実施等について(平成31年4月19日付の次長検事の依命通知)
・ 取調べの録音・録画要領について(平成31年4月19日付の最高検察庁刑事部長及び公判部長の事務連絡)
・ 取調べの録音・録画の実施等に関する報告及び記載要領について(平成31年4月19日付の最高検察庁刑事部長及び公判部長の事務連絡)
ウ 以下の記事も参照してください。
・ 警察及び検察の取調べ
・ 全国一斉検察起案
・ 検察終局処分起案の考え方
・ 第69期検察修習の日程
 各地の検察庁の執務規程
 司法修習等の日程(70期以降の分)

第2希望の実務修習地の選び方

目次
第0 総論
第1 東京高裁管内の第2希望地の選び方
第2 大阪高裁管内の第2希望地の選び方
第3 名古屋高裁管内の第2希望地の選び方
第4 広島高裁管内の第2希望地の選び方
第5 福岡高裁管内の第2希望地の選び方
第6 仙台高裁管内の第2希望地の選び方
第7 札幌高裁管内の第2希望地の選び方
第8 高松高裁管内の第2希望地の選び方
第9 関連記事その他

第0 総論
1 69期司法修習生の修習希望地の倍率を基準として,実務修習地(司法修習の場所)を以下のとおりランキングしています。
① Aランク
第1希望だけで配属人数を超えた実務修習地
② Bランク
第1希望及び第2希望の合計だけで配属人数を超えた実務修習地
③ Cランク
Aランク及びBランク以外の実務修習地
2 第2希望の分類は以下のとおりです。
① 妥当な選択(=おすすめの選択)
第1希望地への交通の便が良く,ほぼ確実に第2希望地以内に配属してもらえる選択です。
② リスクある選択
リスクがあるものの,第1希望地への交通の便がいいところに配属してもらおうとする選択です。
③ 安全な選択
第1希望地への交通の便は譲歩するものの,ほぼ確実に第2希望地以内に配属してもらえる選択です。
3 元データについては,「実務修習地の選び方」を参照してください。

第1 東京高裁管内の第2希望地の選び方
1 第1希望地が東京修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は,立川修習,横浜修習,さいたま修習若しくは千葉修習(いずれもAランク)又は甲府修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は水戸修習又は新潟修習です(いずれもCランク)。
2 第1希望地が立川修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は東京修習,横浜修習若しくはさいたま修習(いずれもAランク)又は甲府修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は水戸修習又は新潟修習です(いずれもCランク)。
3 第1希望地が横浜修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は東京修習,立川修習若しくは静岡修習(いずれもAランク)又は甲府修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は水戸修習又は新潟修習です(いずれもCランク)。
4 第1希望地がさいたま修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は東京修習,立川修習若しくは横浜修習(いずれもAランク)又は甲府修習,宇都宮修習若しくは前橋修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は水戸修習又は新潟修習です(いずれもCランク)。
5 第1希望地が千葉修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は東京修習,立川修習若しくは横浜修習(いずれもAランク)又は甲府修習,宇都宮修習若しくは前橋修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は水戸修習又は新潟修習です(いずれもCランク)。
6 第1希望地が水戸修習(Cランク)である場合
・ 周りの修習地はAランク又はBランクであるのに対し,水戸修習はCランクですから,第2希望を書いても仕方がないです。
7 第1希望地が宇都宮修習(Bランク)である場合
・ リスクある選択は東京修習又はさいたま修習(いずれもAランク)です。
・ 安全な選択は福島修習(Cランク)です。
8 第1希望地が前橋修習(Bランク)である場合
・ リスクある選択はさいたま修習(Aランク)です。
・ 安全な選択は新潟修習(Cランク)です。
9 第1希望地が静岡修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は横浜修習,名古屋修習又は東京修習(いずれもAランク)です。
・ 安全な選択は特にありません。
10 第1希望地が甲府修習(Bランク)である場合
・ リスクある選択は東京修習若しくはさいたま修習(いずれもAランク)又は長野修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は特にありません。
11 第1希望地が長野修習(Bランク)である場合
・ 妥当な選択は富山修習(Cランク)です。
12 第1希望地が新潟修習(Cランク)である場合
・ 妥当な選択は富山修習又は山形修習(いずれもCランク)です。


第2 大阪高裁管内の第2希望地の選び方
1 第1希望地が大阪修習(Bランク)である場合
・ リスクある選択は京都修習,神戸修習若しくは奈良修習(いずれもAランク)又は大津修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は和歌山修習又は岡山修習(いずれもCランク)です。
2 第1希望地が京都修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は奈良修習(Aランク),又は大阪修習,大津修習若しくは岐阜修習(いずれもBランク)です。
・ 安全な選択は福井修習(Cランク)です。
3 第1希望地が神戸修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は京都修習(Aランク)又は大阪修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は岡山修習(Cランク)です。
4 第1希望地が奈良修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は京都修習(Aランク)又は大阪修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は津修習(Cランク)です。
5 第1希望地が大津修習(Bランク)である場合
・ リスクある選択は京都修習若しくは名古屋修習(いずれもAランク),又は大阪修習若しくは岐阜修習(いずれもBランク)です。
・ 安全な選択は福井修習又は津修習(いずれもCランク)です。
6 第1希望地が和歌山修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は奈良修習(Aランク)又は大阪修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は津修習(Cランク)です。


第3 名古屋高裁管内の第2希望地の選び方
1 第1希望地が名古屋修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は静岡修習(Aランク)又は岐阜修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は津(Cランク)です。
2 第1希望地が津修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は名古屋修習若しくは奈良修習(いずれもAランク),又は大阪修習若しくは岐阜修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は和歌山修習(Cランク)です。
3 第1希望地が岐阜修習(Bランク)である場合
・ リスクある選択は名古屋修習(Aランク)又は大津修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は福井修習(Cランク)です。
4 第1希望地が福井修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は岐阜修習又は金沢修習(いずれもBランク)です。
・ 安全な選択は富山修習(Cランク)です。
5 第1希望地が金沢修習(Bランク)である場合
・ 妥当な選択は福井修習又は富山修習(いずれもCランク)です。
6 第1希望地が富山修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は長野修習又は金沢修習(いずれもBランク)です。
・ 安全な選択は福井修習(Cランク)です。

第4 広島高裁管内の第2希望地の選び方
1 第1希望地が広島修習(Bランク)である場合
・ 妥当な選択は岡山修習又は山口修習(いずれもCランク)です。
2 第1希望地が山口修習(ランク)である場合
・ リスクある選択は福岡修習(Aランク)又は広島修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は岡山修習(Cランク)です。
3 第1希望地が岡山修習(ランク)である場合
・ リスクある選択は神戸修習(Aランク)又は広島修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は高松修習(Cランク)です。
4 第1希望地が鳥取修習(ランク)である場合
・ 妥当な選択は岡山修習又は松江修習(いずれもCランク)です。
5 第1希望地が松江修習(ランク)である場合
・ 妥当な選択は岡山修習又は鳥取修習(いずれもCランク)です。

第5 福岡高裁管内の第2希望地の選び方
1 第1希望地が福岡修習(Aランク)である場合
・ リスクある選択は佐賀修習又は熊本修習(いずれもBランク)です。
・ 安全な選択は山口修習,長崎修習又は大分修習(いずれもCランク)です。
2 第1希望地が佐賀修習(Bランク)である場合
・ 妥当な選択は長崎修習(Cランク)です。
3 第1希望地が長崎修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は佐賀修習又は熊本修習(Bランク)です。
4 第1希望地が大分修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は福岡修習(Aランク)です。
5 第1希望地が熊本修習(Bランク)である場合
・ リスクある選択は福岡修習(Aランク)又は佐賀修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は鹿児島修習(Cランク)です。
6 第1希望地が鹿児島修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は熊本修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は宮崎修習(Cランク)です。
7 第1希望地が宮崎修習(Cランク)である場合
・ 妥当な選択は鹿児島修習(Cランク)です。
8 第1希望地が那覇修習(Aランク)である場合
・ 鹿児島新港から那覇港までフェリーで25時間ぐらいかかるみたいですから,他の修習地への移動は航空便となります。
    そのため,第2希望につき,Aランク又はBランクの修習地はリスクある選択となり,Cランクの修習地は安全な選択となることに留意しつつ,航空便の便利さで選択するしかないと思われます。


第6 仙台高裁管内の第2希望地の選び方
1 第1希望地が仙台修習(Bランク)である場合
・ 妥当な選択は福島修習又は盛岡修習(いずれもCランク)です。
2 第1希望地が福島修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は宇都宮修習又は仙台修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は山形修習(Cランク)です。
3 第1希望地が山形修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は仙台修習(Bランク)です。
・ 安全な選択は福島修習(Cランク)です。
4 第1希望地が盛岡修習(Cランク)である場合
・ 妥当な選択は青森修習(Cランク)です。
5 第1希望地が秋田修習(Cランク)である場合
・ 妥当な選択は盛岡修習(Cランク)です。
6 第1希望地が青森修習(Cランク)である場合
・ 妥当な選択は盛岡修習(Cランク)です。


第7 札幌高裁管内の第2希望地の選び方
1 第1希望地が札幌修習(Aランク)である場合
・ 妥当な選択は旭川修習(Cランク)です。
2 第1希望地が函館修習(Cランク)である場合
・ 妥当な選択は青森修習(Cランク)です。
3 第1希望地が旭川修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は札幌修習(Aランク)です。
・ 安全な選択は釧路修習(Cランク)です。
4 第1希望地が釧路修習(Cランク)である場合
・ リスクある選択は札幌修習(Aランク)です。
・ 安全な選択は旭川修習(Cランク)です。


第8 高松高裁管内の第2希望地の選び方
1 第1希望地が高松修習(Cランク)である場合
・ 妥当な選択は岡山修習又は徳島修習(いずれもCランク) です。
2 第1希望地が徳島修習(Cランク)である場合
・ 妥当な選択は高松修習(Cランク)です。
3 第1希望地が高知修習(Cランク)である場合
・ 妥当な選択は高松修習又は徳島修習(いずれもCランク)です。
4 第1希望地が松山修習(Cランク)である場合
・ 妥当な選択は高松修習(Cランク)です。

第9 関連記事その他
1 令和元年8月23日付の答申書によれば,「72期司法修習予定者の実務修習地を決定する際に作成した文書」は「第72期司法修習生採用選考申込者の実務修習地,組,出席番号及び修習班について(平成30年10月17日決裁)」(答申書がいうところの「本件開示文書」(=「本件名簿」及び「決裁票」))だけです。
2 一般旅券発給拒否処分の通知書に,発給拒否の理由として,「旅券法一三条一項五号に該当する。」と記載されているだけで,同号適用の基礎となった事実関係が具体的に示されていない場合,理由付記として不備であって,当該処分は違法です(最高裁昭和60年1月22日判決)が,実務修習地の決定理由が司法修習予定者に告知されることはありません。
3 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習の場所を選ぶ際の基礎データ
・ 司法修習の場所とクラスの対応関係(67期以降)
・ 新65期以降の白表紙発送実績
→ 平成23年以降の司法試験合格者の合格直後の居住都道府県が分かります。
・ 実務修習地の決定方法等に関する国会答弁
→ 最高裁判所人事局長の国会答弁によれば,第1希望又は第2希望の実務修習地に配属される司法修習生の割合が重視されていますから,第2希望の実務修習地も慎重に記載する必要があると思われます。
・ 司法修習の希望場所の記載方法
・ 司法修習等の日程(70期以降の分)
・ 司法修習生の就職関係情報等が載ってあるHP及びブログ

司法修習生の組別(クラス別)志望状況

○60期から68期までの司法修習生の組別(クラス別)志望等調査表を以下のとおり掲載しています。組別(クラス別)の志望者数については,掲載しているデータを参照してください。
「69期以降の司法修習生組別志望等調査表は存在しないこと」も参照して下さい。

1 現行第60期司法修習生組別志望等調査表
(1) 前期修習開始直前の平成18年4月1日現在,裁判官志望が95人,検察官志望が104人,弁護士志望が631人,未定総数が625人,その他が2人,合計が1457人でした。
(2) 後期修習中の平成19年6月19日現在,裁判官志望が69人,検察官志望が77人,弁護士志望が1278人,未定総数が19人,その他が10人,合計が1453人でした。

2 新第60期司法修習生組別志望等調査表
(1) 司法試験合格直後の平成18年9月21日現在,裁判官志望が106人,検察官志望が68人,弁護士志望が524人,未定総数が292人,その他が1人,合計が991人でした。
(2) 集合修習中の平成19年10月12日現在,裁判官志望が81人,検察官志望が44人,弁護士志望が839人,未定総数が10人,その他が1人,合計が988人でした。

3 現行第61期司法修習生組別志望等調査表
(1) 前期修習中の平成19年4月16日現在,裁判官志望が41人,検察官志望が55人,弁護士志望が225人,未定総数が249人,その他が1人,合計が571人でした。
(2) 後期修習中の平成20年6月17日現在,裁判官志望が27人,検察官志望が21人,弁護士志望が513人,未定総数が4人,その他が4人,合計が569人でした。

4 新第61期司法修習生組別志望等調査表
(1) 司法修習開始日である平成19年11月27日現在,裁判官志望が147人,検察官志望が154人,弁護士志望が953人,未定総数が558人,その他が0人,合計が1812人した。
(2) A班集合修習中の平成20年7月30日現在,A班については,裁判官志望が37人,検察官志望が30人,弁護士志望が527人,未定総数が26人,その他が17人,合計が637人でした。
(3) B班集合修習中の平成20年9月29日現在,B班については,裁判官志望が46人,検察官志望が51人,弁護士志望が1053人,未定総数が18人,その他が8人,合計が1176人でした。

5 現行第62期司法修習生組別志望等調査表
(1) 前期修習中の平成20年4月14日現在,裁判官志望が27人,検察官志望が22人,弁護士志望が116人,未定総数が94人,その他が3人でした。
(2) 後期修習中の平成21年6月16日現在,裁判官志望が7人,検察官志望が12人,弁護士志望が232人,未定総数が7人,その他が5人,合計が263人でした。

6 新第62期司法修習生組別志望等調査表
(1) 司法修習開始前の平成20年11月12日現在,裁判官志望が201人,検察官志望が180人,弁護士志望が1114人,その他が1人,未定が549人でした。
(2) A班集合修習中の平成21年8月11日現在,A班については,裁判官志望が52人,検察官志望が31人,弁護士志望が766人,未定総数が42人,その他が5人,合計が896人でした。
(3) B班集合修習中の平成21年10月6日現在,B班については,裁判官志望が54人,検察官志望が40人,弁護士志望が1035人,未定総数が13人,その他が8人,合計が1150人でした。

7 現行第63期司法修習生組別志望等調査表
(1) 前期修習中の平成21年5月1日現在,裁判官志望が16人,検察官志望が20人,弁護士志望が56人,未定総数が57人,その他が1人でした。
(2) 後期修習中の平成22年6月4日現在,裁判官志望が5人,検察官志望が4人,弁護士志望が135人,未定総数が1人,その他が3人,合計が148人でした。

8 新第63期司法修習生組別志望等調査表
(1) 司法修習開始前の平成21年11月13日現在,裁判官志望が212人,検察官志望が234人,弁護士志望が1112人,その他が4人,未定が462人,合計が2024人でした。
(2) A班集合修習中の平成22年8月2日現在,A班については,裁判官志望が58人,検察官志望が35人,弁護士志望が821人,未定総数が34人,その他が8人,合計が956人でした。
(3) B班集合修習中の平成22年9月28日現在,B班については,裁判官志望が47人,検察官志望が36人,弁護士志望が958人,未定総数が17人,その他が4人,合計が1062人でした。

9 現行第64期司法修習生組別志望等調査表
(1) 前期修習中の平成22年4月2日現在,裁判官志望が12人,検察官志望が7人,弁護士志望が44人,未定総数が37人,その他が2人でした。
(2) 後期修習中の平成23年6月6日現在,裁判官志望が6人,検察官志望が1人,弁護士志望が87人,未定総数が6人,その他が3人でした。

10 新第64期司法修習生組別志望等調査表
(1) 司法修習開始前の平成22年11月16日現在,裁判官志望が220人,検察官志望が202人,弁護士志望が1007人,その他が4人,未定が592人でした。
(2) A班集合修習中の平成23年8月1日現在,A班については,裁判官志望が54人,検察官志望が43人,弁護士志望が825人,未定総数が44人,その他が7人,合計が973人でした。
(3) B班集合修習中の平成23年9月27日現在,B班については,裁判官志望が49人,検察官志望が31人,弁護士志望が948人,未定総数が15人,その他が9人,合計が1052人でした。

11 現行第65期司法修習生組別志望等調査表
(1) 前期修習中の平成23年7月27日現在,裁判官志望が15人,検察官志望が6人,弁護士志望が35人,未定総数が17人,その他が0人,合計が73人でした。
(2) 後期修習中の平成24年9月27日現在,裁判官志望が4人,検察官志望が2人,弁護士志望が65人,未定総数が3人,合計が74人でした。

12 新第65期司法修習生組別志望等調査表
(1) 司法修習開始前の平成23年11月11日現在,裁判官志望が164人,検察官志望が218人,弁護士志望が1005人,その他が2人,未定が613人,合計が2002人でした。
(2) A班集合修習中の平成24年8月3日現在,A班については,裁判官志望が57人,検察官志望が39人,弁護士志望が858人,未定総数が35人,その他が6人,合計が995人でした。
(3) B班集合修習中の平成24年9月27日現在,B班については,裁判官志望が31人,検察官志望が31人,弁護士志望が912人,未定総数が17人,その他が11人,合計が1002人でした。

13 66期司法修習生組別志望等調査表
(1) 司法修習開始前の平成24年11月12日現在,裁判官志望が186人,検察官志望が237人,弁護士志望が1002人,その他が4人,未定が606人,合計が2035人でした。
(2) A班集合修習中の平成25年8月2日現在,A班については,裁判官志望が57人,検察官志望が39人,弁護士志望が883人,未定総数が38人,その他が10人,合計が1027人でした。
(3) B班集合修習中の平成25年9月27日現在,B班については,裁判官志望が43人,検察官志望が44人,弁護士志望が879人,未定総数が25人,その他が12人,合計が1003人でした。

14 67期司法修習生組別志望等調査表
(1) 司法修習開始前の平成25年11月12日現在,裁判官志望が212人,検察官志望が227人,弁護士志望が978人,その他が3人,未定が557人,合計が1977人でした。
(2) A班集合修習中の平成26年8月4日現在,A班については,裁判官志望が59人,検察官志望が43人,弁護士志望が870人,未定総数が49人,その他が15人,合計が1036人でした。
(3) B班集合修習中の平成26年9月29日現在,B班については,裁判官志望が42人,検察官志望が32人,弁護士志望が831人,未定総数が20人,その他が12人,合計が937人でした。

15 68期司法修習生組別志望等調査表
(1) 司法修習開始前の平成26年11月17日現在,裁判官志望が150人,検察官志望が203人,弁護士志望が908人,その他が0人,未定が502人,合計が1763人でした。
(2) A班集合修習中の平成27年8月17日現在,裁判官志望が52人,検察官志望が33人,弁護士志望が769人,未定総数が32人,その他が11人,合計が897人でした。
(3) B班集合修習中の平成27年10月5日現在,裁判官志望が38人,検察官志望が43人,弁護士志望が753人,未定総数が22人,その他が8人,合計が864人でした。

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司法修習のことがマンガで表現されているので,分かりやすいです。ただし,給費制が適用されていた新64期司法修習生が題材になっていますし,69期から開始した,裁判所HPにおける二回試験の不合格発表については言及されていません。

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司法修習の体験談を中心に,司法修習のことが一通り書いてあります。裁判所の開示文書に基づき司法修習について記載している本ブログとあわせて読めば有益であると思います。

司法修習生の名刺

目次
1 司法修習生の名刺の作成時期
2 司法修習生の名刺の作成方法
3 司法修習生の名刺の記載事項
4 関連記事その他

1 司法修習生の名刺の作成時期

(1) 合格発表後,実務修習地決定「前」の場合,①法科大学院時代の名刺,又は②「第○○期司法修習生(予定)」という名刺を使用すればいいと思います。
   11月27日の司法修習生採用発令後も使用できるように,「第○○期司法修習生」という名刺を使用する人もいるかも知れませんが,採用内定通知すら届いていない段階で,「第○○期司法修習生」という名刺を使用するのは早すぎると思います。
(2)ア 実務修習地決定「後」の場合,配属庁を記載した「第○○期司法修習生」という名刺を作成した方が,11月27日の司法修習生採用発令後も使用できて便利と思います。
   厳密にいえば,まだ司法修習生の身分を有していないわけですが,このような名刺を就職活動等で使用しても特に問題ないと思います。
イ 遅くとも実務修習地が決定した後は,就職活動等に際して法科大学院時代の名刺はもう使わない方がいいと思います。

2 司法修習生の名刺の作成方法
(1) 業者に頼む場合
ア 就職活動等で使う名刺は,自分で作成するよりも,プリントメイトフォトスタジオアペックス株式会社伸和のほか,大阪駅の近くにあるあっとめいし大阪店といった名刺業者に頼んで作成した方が見栄えがよくていいと思います。
イ 令和元年司法試験合格者のブログ「司法修習生の名刺 私の場合」には以下の記載があります。
   完成した数十枚の自作名刺を前に、つくづくコスパが悪いと思ってしまうのでした…
   これなら100枚1000円以下で制作してくれる名刺会社に依頼(せめてデータ入稿)して、作ってもらう方が何十倍もコスパがよろしい。
ウ 司法修習生の名刺のデザイン見本がプリントメイトHPの「司法修習生専用名刺」に掲載されていますし,司法修習生の名刺に関する疑問については,プリントメイトHPの「よくある質問と答え(司法修習生専用名刺FAQ)」が参考になります。
   また,プリントメイトでは,判事補の着任挨拶等に使用できる,「判事補専用名刺」も作成しているみたいです。
エ 「司法修習生の名刺ならお任せください!  梅田で名刺の事なら@名刺(あっとめいし)大阪店」に,73期司法修習生の名刺の見本が載っています。
(2) 自分で作成する場合
   司法修習生及び司法修習予定者の名刺のひな形となるワードデータが外部HPの「司法修習生と司法修習予定者の名刺」に掲載されています。
   そのため,名刺を自作する場合,このデータを使用すれば便利であると思います。


3 司法修習生の名刺の記載事項
① 最高裁判所司法研修所第○○期司法修習生
→ 同趣旨の文言を含めれば,全員が入れています。
② 氏名のふりなが
→ 主としてローマ字併記でほぼ全員が入れています。
③ 配属庁
→ 全員が入れています。
   記載内容として,「○○地方裁判所,○○地方検察庁及び○○弁護士会」と書いている人がまれにいますが,○○地方裁判所だけでどこが実務修習地であるか分かりますし,弁護士会を入れるのであれば,タイトルは配属庁「会」にすべきと思われます。
   ごくまれに実務修習の班まで記載している人がいますが,同じ実務修習地の修習生以外からすれば,不要な記載である気がします。
④ 携帯電話番号
→ ほぼ全員が入れていますが,ごく稀に固定電話の番号だけを書いている人がいます。
⑤ メールアドレス
→ 全員が入れています。
⑥ 住所
→ まれに入れている人がいます。
   ただし,少なくとも弁護修習中の事件関係者に渡す名刺の場合,住所は入れない方が無難と思われます。
⑦ 顔写真
→ 入れている人もいれば入れていない人もいるという感じです。
⑧ 出身法科大学院等の学歴
→ 名刺の右下又は裏面に入れている人もいれば入れていない人もいるという感じです。
   ただし,就職説明会等の就職活動で使用する名刺の場合,出身法科大学院等の学歴を入れておいた方がいいです。
⑨ 職歴
→ 名刺の裏面に入れている人がたまにいるという感じです。
   ただし,就職説明会等の就職活動で使用する名刺の場合,職歴があるのであれば,職歴を入れておいた方がいいです。
⑩ 司法試験で選択した受験科目
→  名刺の右下又は裏面に入れている人もいれば入れていない人もいるという感じです。
   ただし,就職説明会等の就職活動で使用する名刺の場合,司法試験で選択した受験科目を入れておいた方がいいです。
⑪ 趣味
→ まれに入れている人がいます。


4 関連記事その他
(1) 株式会社TKC主催の「先輩弁護士に聴く司法修習のすべて」(毎年10月に開催されています。)における懇親会(立食パーティー)は,名刺交換会に近いらしいです(外部ブログの「「先輩弁護士に聴く司法修習のすべて」(TKC)※追記あり」参照)。
(2) 二弁フロンティア2017年11月号「今さら聞けない弁護士のビジネスマナーvol.1「名刺交換」編」が載っています。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習等の日程
・ 司法修習生等に対する採用に関する日弁連の文書(73期以降の取扱い)
・ 司法修習生の就職関係情報等が載ってあるHP及びブログ

司法修習生採用選考申込み時の健康診断

目次
1 総論
2 司法修習生採用選考における健康診断を実施している医療機関の具体例
3 健康診断の体験談
4 雇入時の健康診断
5 健康診断一般
6 健康診断の裏技
7 健康診断に関する関係条文
8 関連記事

1 総論

(1) 74期以降の取扱い
・ 74期司法修習の場合,司法修習生採用選考申込みに際し,医療機関で受診する健康診断書を提出する必要はありません。
・ 75期司法修習の場合,「健康状態判定」という名称に変わりました。


(2) 73期までの取扱い
ア 裁判所HPに掲載されている,司法修習の提出書類の書式等(最高裁判所提出分)に含まれる「健康診断の実施について(医療機関用)」に,医療機関向けの説明文が書いてあります。
そのため,最寄りの医療機関で健康診断を受診して問題ないと思われます。
イ 過年度の書式については,「司法修習生の採用選考に関する公式文書」を参照してください。
(2) 「健康診断 予約 大阪」等で検索すれば,健康診断の予約を受け付けている医療機関を検索できます。
(3) 健康診断の予約方法につき,キャリアパークHPの「意外と迷いがちな健康診断の予約方法とは」が参考になります。
(4) 司法修習生採用選考申込み時の健康診断で必要な費用は全額が自己負担であって,最高裁判所が後で支払ってくれることはありません。

2 司法修習生採用選考における健康診断を実施している医療機関の具体例
・   平成30年5月現在,「司法修習 健康診断 料金」で検索すれば,以下のHPが出てきます。
(東京都)
① きつかわクリニック(JR山手線田町駅の近く)の「雇用時健診・一般健診」
→   4000円(税別)の費用で,原則翌日のお渡しみたいです。
② そねクリニック(JR山手線新宿駅の近く)の「司法修習生採用選考における健康診断を実施しています。」
→   7000円(税別)の費用で,最短で翌日午後3時以降のお渡しみたいです。
③ 徳真会QUARTZ TOWERの「健康診断」(JR山手線渋谷駅の近く)
→ 5000円(税抜)の費用で,即日のお渡しみたいです。
(神奈川県)
④ 新横浜整形外科リウマチ科の「司法修習生採用選考における健康診断」
→ 5900円(税別)の費用で,当日中に渡してもらえるみたいです。
(兵庫県)
⑤ 吉岡クリニック(JR神戸線摂津本山駅及び甲南山手駅の近く)の「健康診断(定期健診,雇入時検診,各種検査)」
→ フルコースでも8500円とのことです。
(岐阜県)
⑥ 阪野(ばんの)クリニック(名鉄岐阜駅の近く)の「岐阜で司法修習生採用選考の健康診断票を作成」
→ 5400円(税込み)の費用で,当日の交付みたいです。

3 健康診断の体験談
(1) 外部HPの「「修習」健康診断」によれば,ブログ主の経験では,診察から1時間半ぐらいで健康診断票を取得でき,料金は約5000円とのことでした。
(2) 59期の私の場合,平成16年11月に司法試験に合格した時点で京都大学法学部に在籍していましたから,司法修習生採用選考申込み時の健康診断は京都大学保健診療所で受けました。

4 雇入時の健康診断
(1) 事業者は,労働者に対して,毎年,医師による健康診断を実施しなければなりませんし(労働安全衛生法66条1項,労働安全衛生規則(安衛則)44条),労働者は,事業者が行う健康診断を受けなければなりません(労働安全衛生法66条5項)。
そして,雇入時の健康診断は,雇入れの際に実施しなければなりません(労働安全衛生規則(安衛則)43条)。
そのため,就職に際しての健康診断は一般的なものです。
(2) 医師による健康診断を受けた後,三月を経過しない者を雇い入れる場合において,その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出した場合,当該健康診断の項目に相当する項目について,事業者は,雇い入れ時の健康診断を実施する必要がありません(労働安全衛生規則43条ただし書)。
そのため,司法修習生の採用選考の場合,自ら健康診断の結果を証明する書面を提出させられることから,最高裁判所による健康診断が省略されているものと思われます。
イ 二弁フロンティア2018年5月号の「就業規則の作成・改定を依頼されたときに役立つ労働法関連知識(後編)」(末尾49頁)に以下の記載があります。
①健康診断(入社時、深夜業)
    まず、会社の方は健康診断についてあまりご理解がない。1年に1回あるんでしょう、お金は会社が出すんでしょう、という程度は理解しています。ただ、「入社時健診って知っていますか」と聞くと意外と知りません。入社時には必ず健康診断をしないといけません。
    特例として、入社前3か月以内に実施した健康診断の診断書があれば、入社時健診を省略できますので、費用をかけたくない会社は健康診断書を持ってこいというところもあります。

5 健康診断一般
(1)ア 事業者は,健康診断個人票を作成し,これを5年間保存しなければなりません(労働安全衛生規則(安衛則)51条)。
イ   事業者は,健康診断を受けた労働者に対し,当該健康診断の結果を通知しなければなりません(労働安全衛生法66条の6,労働安全衛生規則(安衛則)51条の4)。
ウ 厚生労働省HPの「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」が参考になります。
(2) 労働安全衛生法および同法施行令の施行について(昭和47年9月18日基発第602号)には以下の記載があります。
(2) 第六六条関係
イ 第一項から第四項までの規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものであること。
ロ 健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般に対して行なわれる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。
   特定の有害な業務に従事する労働者について行なわれる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行なわれるのを原則とすること。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。
(3) 平成27年11月18日の第1回 厚生科学審議会(健康診査等専門委員会)に以下の資料が載っています。
① 健診・検診の考え方(資料2-1)
② 日本の健診(検診)制度の概要(資料3)
→ 乳幼児等を対象としたものとして母子保健法があり,児童生徒等(幼稚園から大学までを含む。)を対象としたものとして学校保健安全法があります。
    被保険者・被扶養者を対象としたものとして医療保険各法(健康保険法,国民健康保険法等)及び高齢者医療確保法(特定検診については40歳以上が対象です。)があり,労働者を対象としたものとして労働安全衛生法があり,その他として健康増進法があります。
③ 健康診査に関する制度の比較(資料4)
→ 健康増進事業,医療保険による特定健康診査,医療保険による保健事業,労働衛生対策,母子保健,学校保健(就学時の健康診断,幼児・児童・生徒又は学生の健康診断及び職員の健康診断),私立学校教職員共済法,国家公務員共済組合法及び地方公務員等共済組合法があります。
(4) 職場における健康診断としては,①雇入れ時の健康診断,②定期健康診断,③特定業務従事者の健康診断,④海外派遣労働者の健康診断,⑤給食従事者の検便及び⑥有害業務従事者等の特殊健康診断があります(東京労働局労働基準部作成の「健康診断による健康管理を進めよう」参照)。
(5) 保険医は,療養の給付の対象として健康診断を行ってはなりません(保険医療機関及び保険医療養担当規則20条1号ハ)から,健康診断の費用は全額が自己負担となります。

6 健康診断の裏技
    外部HPの「司法試験合格後の手続きに関する覚書」には,「裏技として,会社等で3ヶ月以内に健康診断を受けている場合, 医師に頼んで健診結果を所定のフォーマットに転記してもらうという手があります。 これだと費用が安く,すぐできます。」と書いてあります。

7 健康診断に関する関係条文
(1) 労働安全衛生法
(健康診断)
第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
3 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。
4 都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる。
5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
(健康診断の結果の記録)
第六十六条の三 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第六十六条第一項から第四項まで及び第五項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない。
(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第六十六条の四 事業者は、第六十六条第一項から第四項まで若しくは第五項ただし書又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。
(健康診断の結果の通知)
第六十六条の六 事業者は、第六十六条第一項から第四項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。
(2) 労働安全衛生規則
(雇入時の健康診断)
第四十三条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
一 既往歴及び業務歴の調査
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。次条第一項第三号において同じ。)の検査
四 胸部エックス線検査
五 血圧の測定
六 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。)
七 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)
八 低比重リポ蛋たん 白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋たん 白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。)
九 血糖検査
十 尿中の糖及び蛋たん 白の有無の検査(次条第一項第十号において「尿検査」という。)
十一 心電図検査
(健康診断結果の記録の作成)
第五十一条 事業者は、第四十三条、第四十四条若しくは第四十五条から第四十八条までの健康診断若しくは法第六十六条第四項の規定による指示を受けて行つた健康診断(同条第五項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「第四十三条等の健康診断」という。)又は法第六十六条の二の自ら受けた健康診断の結果に基づき、健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを五年間保存しなければならない。

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 司法修習生の採用選考に必要な書類
・ 司法修習生の採用選考に関する公式文書
・ 司法修習生の採用選考に必要な書類の掲載時期
・ 司法修習生の司法修習に関する事務便覧
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修習専念資金

目次
1 総論
2 修習給付金及び修習専念資金の金額の根拠
3 修習専念資金に関する契約書
4 修習専念資金の貸与事務
5 日本学生支援機構の奨学金に関する札幌高裁令和4年5月19日判決
6 修習資金利用者に対する請求書の誤送付,及びプライバシー権に関する最高裁判例
7 奨学金の返済に充てるための給付は原則として非課税の学資金であること
8 授業料等の返還に関する最高裁判例
9 金銭消費貸借契約及び仮差押命令に関するメモ書き
10 関連記事その他

1 総論
(1) 修習専念資金の額は原則として月額10万円ですが,司法修習生が扶養親族を有し,貸与額の変更を希望する場合,月額12万5000円となります(裁判所HPの「司法修習生に対する修習専念資金の貸与制の概要」参照)。
    ただし,配偶者又は子に収入がある場合でも,扶養加算は認められるみたいです(裁判所HPの「修習専念資金貸与FAQ ~これから貸与を受ける方へ~」参照)。
(2) 司法研修所の公式見解によれば,修習給付金は必要経費のない雑所得ですから,例えば,神戸修習であった71期の司法修習生の場合,平成31年度の税金及び国民健康保険料は最大で23万9100円+24万4160円=48万3260円となります(「修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い」参照)。
    また,修習専念資金を借りなくても健康保険の被扶養者から外されます(「修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い」参照)。
    そのため,司法修習終了翌年の税金及び国民健康保険料の支払資金を確保するという趣旨からしても,無利息の修習専念資金を借りておいた方がいいと思います。


2 修習給付金及び修習専念資金の金額の根拠
・ 「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」には,修習専念資金に関して,以下の記載があります。

    修習専念資金については「司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって,修習給付金の支給を受けてもなお必要なもの」として司法修習生の希望者に貸与することを予定しており,その額については月額原則10万円程度を想定している。
    これは,司法修習生の修習実態等に鑑みたものであり,司法修習生の通常の支出のうち修習給付金では賄われない費用としては,前記の「修習実態アンケート」(日弁連)及び平成27年度の「家計調査」(総務省統計局)等によれば,以下のとおり,おおむね10万円程度が想定される。
(内訳)合計10.2万円
・社会保険料(約1.6万円)
・所得税・住民税等(約0.5万円)
・勉強会参加費を除く交際費(約1.7万円)
・奨学金返済費用(約0.6万円)
・教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。)(約1.5万円)
・理美容・嗜好品等(約1.4万円)
・自動車等関係費(約0.7万円)
・仕送り金(約0.3万円)
・家具家電・衣服購入費等(約1.9万円)
※ 社会保険料は,平成28年度の国民年金保険料月額。所得税・住民税等は,修習給付金の金額水準に基づく所得税の試算値。勉強会参加費を除く交際費及び奨学金返済費用は,「修習実態アンケート」に回答した全ての司法修習生の平均値。教養娯楽費,理美容・嗜好品等,自動車等関係費及び仕送り金は,「家計調査」における単身世帯の消費支出の平均額。家具家電・衣服購入費は,修習の開始に伴って必要となる初期購入費用(家具家電10万円,衣服費15万円)を月割で按分した金額として,日弁連が推計した金額。
    なお,現行貸与制では,司法修習生がその収集に専念することを確保するための資金として,月額23万円(基本額)が希望者に貸与されている。貸与制度は,修習給付金の創設に伴い,貸与額等を見直した上で併存することになるが,新制度の創設に伴って司法修習生の経済状況や生活実態に変更が生ずるわけではないから,現行貸与制下の貸与額そのものは引き続き相当性が認められる(注5)。現行貸与制下の貸与基本額である23万円から修習給付金の基本額である13.5万円を控除した金額とほぼ一致する10万円を修習専念資金の額とすることは,このような観点からも合理的といえる。
(注5)第69期の司法修習生1,788名のうち貸与申請者は1,205名(67.39%)であり,貸与申請者のうち基本額である月額23万円の貸与を申請した者が894名(74.19%)である(このほか,月額18万円が51名(4.23%)。なお,月額23万円を基礎に,一定要件を満たして加算が認められた月額25.5万円が235名(19.50%),月額28万円が25名(2.07%)となっている。)。司法修習生ごとに貸与を要する事情や使途は様々と思われるが,こうした実績に照らす限り,月額23万円程度が修習期間中の生活の基盤確保に一般的に必要な金額水準になっていると見ることができる。

3 修習専念資金に関する契約書
・ 以下の契約書を掲載しています。
① 修習資金貸与金事務管理システム用サーバ機等の賃貸借等に関する,最高裁判所と東京センチュリー株式会社の契約書(平成31年4月1日付)
→ 令和元年10月31日付の変更契約書が別にあります。
② 修習等資金の貸与に関するデータ入力及び通知書等作成発送等業務委託に関する,最高裁判所と東京ソフト株式会社の請負契約書(平成31年4月1日付)
→ 令和元年10月 4日付の変更契約書が別にあります。
③ 修習資金貸与金事務管理システムの運用保守等に関する,最高裁判所と株式会社プロフェース・システムズの請負契約書(平成31年4月1日付)
→ 令和元年10月31日付の変更契約書が別にあります。


4 修習専念資金の貸与事務
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)655頁には,「修習専念資金の貸与事務に必要な経費」として以下の記載があります。
<要求要旨>
(ア) 貸与申請書受付及びデータ入力・貸与決定通知等印刷・封入・封緘等業務委託経費
    修習専念資金を司法修習生に貸与するに当たり,多数の貸与審査を円滑かつ迅速に行う前提として,大量の申請書等の短期間かつ集中的な処理を行うために要する費用である。委託する具体的な業務内容は,郵便で送付された貸与申請書及び加算額に係る疎明資料等関係書類の仕分け作業,貸与申請書(額の変更申請等含む。)等に基づくデータ入力作業(司法修習生の氏名,振込先口座番号,貸与額等)である。
    また,貸与申請した司法修習生及び2人の保証人に対し貸与決定通知書等の文書を,貸与を受けている司法修習生に対し返還明細書を,修習専念資金の貸与総額が確定した後,貸与を受けていた修習生及び2人の保証人に対し貸与総額通知書を,それぞれ送付する必要がある。さらに,貸与終了後に被貸与者から提出される変更事項の届出に基づくデータ修正作業及び最初の年賦金を納付すべき被貸与者に対する年賦金通知書送付作業を行う必要がある。
    これらの大量の送付事務及び貸与終了後の修正を短期間で処理するためには,職員による作業のみでは不可能であり,文書の印刷・封入・封緘・及びデータ修正等の作業を業者に委託し,効率的な事務処理を行うことが不可欠である。
    そこで,令和4年度においても,これに必要な経費を要求する。
(イ) 修習専念資金貸与金事務管理システム
    修習専念資金貸与金事務管理システムは,司法修習に際し,修習専念資金の貸与を希望する者(以下「被貸与者」という。)に修習専念資金を貸与する制度が導入されたことにより,その被貸与者に貸与金を交付する修習専念資金の貸与業務及び貸与終了後の債権管理業務を行うこととなるため,官庁会計システム汎用媒体インターフェースに対応し,歳入及び歳出業務のタンキングデータを作成すること及びその他の貸与管理事務等の効率化を図りつつ,誤入力等による過誤を防止することを目的とするシステムである。

    本システムは,平成22年度予算において,開発経費が認められ,平成27年度にリース契約によりサーバ機器等を更新し,現在までリースにより運用するとともに,安定的な稼働を維持するために必要な運用保守を行っており,令和3年度中に,最高裁判所内の他部署で使用しているサーバ機器等のリースアップと時期を合わせてサーバ統合を行うため,サーバ機器等への移行作業及び現行サーバ機器の撤去等を予定している。
    また,令和4年度秋以降に,最高裁判所データセンタにおける通信の暗号化等によるセキュリティ強化のため,認証方法がLDAP認証からLDAPS認証に変更になることやMicrosoft Edge(Chromium 64 ビット版)機能のアップデートに対応するためシステムの改修を予定している。
    そこで,令和4年度に要する本システムの運用・保守経費,機器等のリース経費及び改修にかかる経費を要求する。

5 日本学生支援機構の奨学金に関する札幌高裁令和4年5月19日判決
(1) 札幌高裁令和4年5月19日判決は以下の判示をしており,結論として,日本学生支援機構の控訴を棄却するとともに,附帯控訴に基づき,悪意の受益者の起算点を本来の保証債務を超えた部分の支払日としました。
① 保証債務の履行は、自己の債務の履行であるとともに、他人のための事務でもあるから、事務管理が成立することがあり得るとしても、保証債務が存在しないのにこれが存在すると誤信して弁済した場合は、他人のためにしたとはいえず、非債弁済として不当利得となると解すべきであるから(なお、乙26参照)、事務管理は成立しないというべきである。
② 分別の利益を有する共同保証人が存在する場合、当該共同保証人は、何らの行為の必要もなく当然に分割された額についてのみ保証債務を負うことは、被控訴人A及び亡Cの各支払の当時、通説であってほぼ異論をみない
③ 控訴人(山中注:日本学生支援機構)は、不当利得の発生根拠となる事実関係を全て知っており、法律上の根拠も認識していたのであり、分別の利益について保証人の主張を要すると認識したことについてやむを得ないといえる特段の事情があるとはいえないから、被控訴人A及び亡Cからそれぞれ本来の保証債務を超えた部分の支払を受けた時点において、不当利得の発生について民法704条の「悪意の受益者」であるというべきである。
④ 分別の利益は、数人の共同保証人がある場合に、保証人の債権者に対する関係における問題であって、保証人と債務者又は保証人相互の内部関係についてはかかわりがないものである(最高裁昭和46年3月16日第三小法廷判決・民集25巻2号173頁参照)。 
(2) 日本学生支援機構HPの「分別の利益」(令和4年10月10日までにリンク切れとなりました。)の以下の記載は,前述した札幌高裁判決と異なる説明をしていることになります。
・ 保証人は、返還者本人が貸与を受けた奨学金(第二種奨学金の場合は、利息、延滞している場合は、延滞金を含む)を返還するという、返還者本人と同一内容の債務(保証債務)を負うことになります。
→ 札幌高裁判決によれば,保証人は2分の1についてのみ保証債務を負担します。
・ 保証人は、本機構からの請求に対し、請求額を2分の1にすることを申し出る(抗弁を主張する)ことができます。
→ 札幌高裁判決によれば,分別の利益発生について保証人の何らかの行為は不要です。
・ 保証人が本機構に返還した金額については、法的に有効であり、返還があった奨学金について、本機構の請求権がなくなっているため、本機構としては、返金の要求には応じかねます。
→ 札幌高裁判決によれば,保証人が本機構に返還した金額のうち,2分の1を超える部分に対する弁済は無効であって,保証人は,本機構に対し,返金の要求をすることができます。
(3) 以下の資料を掲載しています。
・ 札幌地裁令和3年5月13日判決(奨学金の保証人が提訴した,日本学生支援機構に対する不当利得返還請求訴訟の判決)
・ 札幌地裁令和3年5月13日判決に対する日本学生支援機構の控訴理由書(令和3年7月20日付け)
(4) 主債務者である破産者が免責決定を受けた場合に、免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、その債権についての消滅時効を援用することができません(最高裁平成11年11月9日判決)。



6 修習資金利用者に対する請求書の誤送付,及びプライバシー権に関する最高裁判例
(1) 裁判所HPの「修習資金の返還に関する納入告知書の誤送付について」に以下の記載があります。
    司法修習期間中に修習資金の貸与を受けていた方(以下「被貸与者の方」といいます。)のうち,その返還期を迎えた方(修習期65期から68期)に対して,先般納入告知書を送付しましたが,そのうち一部の方(862名)については,事務手続上の誤りにより,現在お住まいの住所等ではなく,以前届け出て頂いていた住所等に発送したことが判明しました。
(2)ア 大学が講演会の主催者として学生から参加者を募る際に収集した参加申込者の学籍番号,氏名,住所及び電話番号に係る情報は,参加申込者のプライバシーに係る情報として法的保護の対象となります(最高裁平成15年9月12日判決)。
イ 通信教育等を目的とする会社が管理している未成年者の氏名,性別,生年月日,郵便番号,住所及び電話番号並びに保護者の氏名は,プライバシーに係る法的保護の対象となります(最高裁平成29年10月23日判決)。


7 奨学金の返済に充てるための給付は原則として非課税の学資金であること
(1) 奨学金の返済に充てるための給付は、その奨学金が学資に充てられており、かつ、その給付される金品がその奨学金の返済に充てられる限りにおいては、通常の給与に代えて給付されるなど給与課税を潜脱する目的で給付されるものを除き、これを非課税の学資金と取り扱っても、課税の適正性、公平性を損なうものではないと考えられます(国税庁HPの「奨学金の返済に充てるための給付は「学資に充てるため給付される金品」に該当するか」参照)。
(2) 日本学生支援機構HPに「企業の奨学金返還支援(代理返還)への対応」が載っています。


8 授業料等の返還に関する最高裁判例
(1) 授業料等の返還に関する最高裁判例としては,平成18年12月22日付で,学納金返還請求事件に関するものが三つ(平成16(受)2117平成17(受)1437及び平成17(受)1762)あり,不当利得返還請求事件に関するものが二つ(平成17(受)1158及び平成18(受)1130)あります。
(2) 最高裁平成22年3月30日判決は,専願等を資格要件としない大学の推薦入学試験に合格した者が入学年度開始後に在学契約を解除した場合において,いわゆる授業料等不返還特約が有効と判断しました。

9 金銭消費貸借契約及び仮差押命令に関するメモ書き
(1)ア 消費貸借契約は原則として要物契約です(民法587条)が,「書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。」という諾成的消費貸借契約(民法587条の2)は,令和2年4月1日以降に認められるようになりました。
    ただし,貸主の貸付をなすべき債務の履行としての金員給付義務が借主の担保供与義務の履行の提供の有無にかかわりなく発生し,借主が右担保供与義務の履行の提供をして金員給付を請求するときは,貸主は金員給付義務につき履行遅滞の責に任ずべき諾成的消費貸借契約においては、借主の担保供与義務は先給付となるものではありませんでした(最高裁昭和48年3月16日判決(判例秘書に掲載))。
イ 契約ウォッチHPに以下の記事が載っています。
① 金銭消費貸借契約(金消契約)とは?分かりやすく解説!
② 【民法改正(2020年4月施行)に対応】金銭消費貸借契約のレビューポイントを解説!
(2) 事前求償権は、事後求償権と別個の権利ではあるものの(最高裁昭和60年2月12日判決参照),事後求償権を確保するために認められた権利であるという関係にあるから、委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権とする仮差押えをすれば、事後求償権についても権利を行使しているのと同等のものとして評価することができます(最高裁平成27年2月17日判決)。
(3) 仮差押命令は,当該命令に表示された被保全債権と異なる債権についても,これが上記被保全債権と請求の基礎を同一にするものであれば,その実現を保全する効力を有します(最高裁平成24年2月23日判決。なお,先例として,最高裁昭和26年10月18日判決参照)。


10 関連記事その他
(1) 法務省の法曹養成制度改革連絡協議会の第8回協議会(平成29年10月11日開催)資料4-6「新旧対照条文(司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則)」が載っています。
(2) 平成29年11月13日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「外国籍であり,通称の印鑑及び口座しか持っていない場合における,修習専念資金の貸与申請方法が分かる文書」は存在しません。
(3)ア  最高裁昭和50年11月6日判決は,いわゆる継続的保証契約に基づく連帯保証人に対する請求を一部認容した前訴判決が金額的な有限責任を定めた趣旨であるとされた事例です。
イ 最高裁平成6年12月6日判決は,根保証契約の保証の限度額が明示されなかった場合に右限度額が同時に設定された根抵当権の極度額と同額であり両者が併せて右同額の範囲内で債務の支払を保証又は担保するものとされた事例です。

(4)ア 参議院HPに参議院議員前川清成君提出貸金業規制法に基づく消費者金融業者に対する行政指導、行政処分等に関する質問に対する答弁書(平成18年3月17日付)が載っています。
イ 以下の記事も参照してください。
・ 修習専念資金の貸与申請状況
・ 修習資金貸与金の返還状況
・ 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
・ 司法修習生と国民年金保険料の免除制度及び納付猶予制度
・ 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金






司法修習生の身分に関する最高裁判所事務総局審議官の説明

目次
第1 司法修習生の身分に関する最高裁判所事務総局審議官の説明
第2 平成16年の裁判所法改正で修習専念義務を明文化した理由
第3 関連記事その他

第1 司法修習生の身分に関する最高裁判所事務総局審議官の説明
・ 37期の菅野雅之最高裁判所事務総局審議官は,平成23年8月4日の「第4回法曹の養成に関するフォーラム」において以下の説明をしています(リンク先の7頁及び8頁)(ナンバリング及び改行を追加しました。)(掲載資料の一覧につき,法務省HPの「法曹の養成に関するフォーラム第4回会議(平成23年8月4日開催)」参照)。

1 今,川上オブザーバーから御指摘いただいた点,具体的には日弁連提出資料の資料6の資料1としてペーパーをお出しいただいているわけですが,このペーパーの中で2ページの3,「司法修習と給費制は不可分一体のもの」との見出しを付けたパラグラフの記述におきまして,その主張の根拠として最高裁判所判決,あるいは最高裁判所事務総局編の裁判所法逐条解説等の記載が援用されているわけでございますが,これらの点については,ちょっと論旨を誤って用いられているのではないかと思われますので,この点についてのみ一言申し上げさせていただきます。
   なお,念のためここで引用されている判例につきましては,本日御参考までに全文を資料7として提出させていただいておりますし,文献につきましては日弁連さん御自身が資料として提出されていますので,正確な事実関係については,後ほどこれらの原典に当たっていただければ,私どもの申し上げたいことを十分に御理解いただけるものと思っております。

2 まず,日弁連が援用する昭和42年の最高裁判所判決は,司法修習生がその身分を離れるに際し,退職手当の支給を求めた事件について,「司法修習生は国家公務員退職手当法にいう国家公務員又はこれに準ずる者に当たらない」との判断を示し,退職手当の請求を棄却した原審の判断を是認したものです。
   この判決は,司法修習生は法曹資格を取得するための修習を行うものであって,国の事務を担当するものでないなどとして,国家公務員には当たらないとし,また,修習期間中,国庫から一定額の給与を受けるほか,諸手当や旅費が支給され,さらに,一定の身分上の規律に服し,兼業を禁止され,守秘義務を負うが,これらは司法修習生をして修習に専念させるための配慮ないしは修習が秘密事項に関することがあるための配慮に過ぎず,司法修習生の勤務形態が国の事務に従事する職員に類似し,又はこれに準ずる形式ないし実態があるからではないとした上で,これらの取扱いを根拠として司法修習生を退職手当法の適用を受け得る職員に準ずる者と解することはできないとしております。

3 このようなことから明らかなように,この判決は,給費制がとられている時代の司法修習生について,給費を受けていることが国家公務員に準じる者に当たると解する根拠にならないとの判断を示したものであって,その理由の中で給費は職務の対価ではなく,修習に専念させるための配慮に過ぎないと述べているものです。
   この事件では給費制の当否が争点となっているのではないことから,この程度の判断にとどまるのは当然のことですが,司法修習生をして,修習に専念させるための配慮として,給費制が必須のものという判断を示したものでないことは明らかでありまして,給費制が政策的に望ましいかどうかについて言及するものでないことも明らかです。
   司法修習制度と給費制が不可分一体のものという日弁連の主張の裏付けとして,この判決を援用するのはいかがなものかと思います。

4 なお,日弁連のペーパーには,修習生の給費と「公務員に準じた身分」とが不可分一体のものであることの根拠として,日弁連提出資料の2番の旧版の司法修習生便覧に,「司法修習生は公務員ではないが,給与,規律,その他の身分関係については公務員に準じた取扱いを受ける」との記載があることを指摘しております。
   しかし,このような記載は給費制のもとで司法修習生に対して給与等が公務員に準じて支給されている実情があることから,それらを含めた司法修習生の身分関係に関する規律を簡潔に説明するものとして,公務員に準じた「取扱い」を受ける旨の表現を用いたものに過ぎず,様々な法律関係において司法修習生を準公務員として取り扱うべきという内容のものではありませんし,またこの司法修習生の身分と給費が不可分一体ということを述べているものでないことは,記載自体からも明らかだと思われます。

5 次に,日弁連がどのような趣旨で裁判所法逐条解説の記載を注記されているのか,ちょっと真意をはかりかねるところはございますが,その記載というのは,貸与制が導入される前の旧裁判所法67条2項に,「司法修習生は,その修習期間中,国庫から一定額の給与を受ける」との規定の解説の一部分でありまして,司法修習生について給費制の当否を論じ,給費制をとるべきであるという結論を述べるものでは全くなく,給費制がとられている場合には,その給与は弁護士会などからではなく,当然,「国庫から」受けるべきであることを述べているのに過ぎません。
   弁護士会での実務修習もあり,疑義を避けるために,法文上,特に「国庫から」給与を受けることを明らかにしたものであることを解説したものであり,このことは日弁連御自身が提出された資料6の5の逐条解説の「22/49」と表記されております。

6 397ページの末行部分のその該当部分及びその前後を併せ読めば明らかだと思います。
 特に,該当部分の前の部分では,先ほどの判例と同様に,給費は職務の対価ではないことを明言しております。
   したがいまして,司法修習制度と給費制が一体不可分のものという日弁連の主張を裏付けるものではないように思っております。

第2 平成16年の裁判所法改正で修習専念義務を明文化した理由
1 裁判所法67条2項は,従前は給費制を定めた条文でしたが,貸与制が導入されてからは,修習専念義務を定めた条文となっています。
2 この点に関する法務省の説明は以下のとおりです(平成16年9月13日付の法務省の参考資料参照)。
   修習資金は,後記のとおり,司法修習生がその修習期間中に修習に専念することができるようにするための経済的支援を行い,修習の実効性を確保するため,すなわち,司法修習生が修習に専念する義務(以下「修習専念義務」という。)を担保するために貸与するものであるところ,このような貸与性の趣旨を法律上明確にするためには,制度の目的・前提となる修習専念義務を法律上規定し,法制的にこれを明確に位置付ける必要がある。そこで,第67条第2項中,削除すべき「国庫から一定額の支給を受ける」を「最高裁判所の定めるところにより,その修習に専念しなければならない」に改めることとしたものである。
   現行の給費制においては,「給与を受ける」と規定することにより,修習期間中の生活を経済的に保障して司法修習生が修習に専念することができるようにする趣旨であることが法律上も明確に定められているということができ,その上更に修習専念義務を法律上規定する必要はないものと考えられるが,貸与制においては,「修習資金を貸与する」と規定するだけでは貸与の趣旨が法律上明確であるとはいえず,これを明確にするためには,法律上,制度の目的・前提となる修習専念義務を規定し,法制的にこれを明確に位置付けた上で,修習資金が,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であることを規定する必要があると考えられる。
   そして,貸与制においても,司法修習の意義・重要性や修習専念義務の内容は変わるものではなく,修習専念義務についての上記の規定は,現在と同じ内容の修習専念義務(抽象的な行為規範としての修習専念義務)を,上記のような法制的な理由から法律上規定するものであり,その具体的な内容(具体的な修習への専念の在り方)については現在と同様に最高裁判所規則で定めるべきものと考えられる(現在は,第67条の第3項の包括委任を根拠として定められている現行規則が,新第2項の個別委任を根拠とすることになるものであり,現行規則の形式等に何ら変更を要するものではない。)。

第3 関連記事その他
1 裁判所HPの「司法修習生」に「司法修習生は,国家公務員ではありませんが,これに準じた身分にあるものとして取り扱われ,兼業・兼職が禁止され,修習に専念する義務(修習専念義務)や守秘義務などを負うこととされています。」と書いてあります。
2 37期の小川秀樹法務省民事局長は,平成25年10月30日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
    まず、お尋ねのありました、修習生の法的な立場について御説明いたします。
    司法修習生は、先ほどからもお話がありますように、公務員ではございませんで、裁判所法上、法曹に必要な能力を身につけるための修習を行うべき者と位置づけられております。このような司法修習生の法的地位は、平成十六年の裁判所法改正により給費制から貸与制に移行しても何ら変更されていないものと承知しております。
    なお、司法修習生は公務員ではございませんが、従前は給与の支給が公務員に準じて行われていたことから、その意味で、公務員に準じた面があったものと承知しております。
    次に、労働基準法との関係でございますが、司法修習生は、公務員に準ずる、準じないとは別に、いずれにせよ事業または事務所に使用される者ではなく、労働基準法上の労働者の性質は有しないということでございますので、労働基準法の適用はないとされてきたものと承知しております。
3 金融庁HPの「「貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等について」(平成24年3月23日付)のリンク先のPDF4頁(12番のやり取り)には以下の記載があります。
(コメントの概要)
改正政令案の(改正後の平成十九年政令第三百二十九号)附則第二十条第二項第二号イの「学生、生徒、児童又は幼児」の「学生」には、学校教育法上の学校の「学生」のみならず、航空大学校や海技大学校のような特別の法律(独立行政法人航空大学校法、独立行政法人海技大学校法等)に基づいて設立された法人において、人材養成のための教育訓練を受けている者も含まれると解して良いか。
(金融庁の考え方)
ご意見のとおりと考えます。
4 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等
・ 司法修習生の罷免
・ 71期以降の司法修習生に対する戒告及び修習の停止
 71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由
 司法修習生の逮捕及び実名報道
・ 司法修習等の日程(70期以降の分)

給費制時代の司法修習生の各種手当と修習資金貸与制との比較等

目次
1    司法修習生の給費制が実施されていた現行65期までの司法修習生の場合
2 司法修習生の修習資金貸与制が実施された新65期以降の司法修習生の場合
3 給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧
4 他の公的な研修制度の取扱い
5 平成17年度決算検査報告における指摘
6 関連記事その他

1   司法修習生の給費制が実施されていた現行65期までの司法修習生の場合
(1)   司法修習生は,①裁判所共済組合の組合員として各種の給付を受けることができましたし,②実務修習中,通勤手当,住居手当及び寒冷地手当を支給されていましたし,③集合修習中,通勤手当,住居手当及び日額旅費を支給されていました(平成25年12月17日開催の第5回法曹養成制度改革顧問会議の資料3-1「司法修習生に対する支給等一覧」参照)。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員として,引き続き短期給付及び福祉事業を受けることができました(共済組合の任意継続組合員の意義につき,文部科学省共済組合HPの「退職後の医療」参照)。
(3)ア 裁判所共済組合への加入実績に基づき,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらえます。
私のねんきん定期便によれば,59期徳島修習(1年6月の修習)(調整手当→地域手当は0%)で扶養手当をもらっていなかった私の場合,公務員厚生年金からの老齢厚生年金は年額2万7407円です。
イ 平成27年10月1日,共済年金は厚生年金に統合された結果,公務員厚生年金となりました(外部HPの「共済年金は厚生年金に統一されます」参照)。
ウ 平成28年7月27日発表の平成27年簡易生命表の概況によれば, 平成27年現在,30歳男性の平均余命は51.46年であり(平均で81.46歳まで生きるということ。),30歳女性の平均余命は57.51年です(平均で87.51歳まで生きるということ。)。
65歳から老齢厚生年金を受給できますから, 男性であれば平均で16.46年間,女性であれば平均で22.51年間,公務員厚生年金から老齢厚生年金を受給できることとなります。
エ 今後の年金の状況については,厚生労働省HPの「いっしょに検証!公的年金」にある,「財政検証結果レポート」(発表年は16年,21年及び26年)が非常に参考になります。
オ 裁判所共済組合に対する年金請求の窓口が国家公務員共済組合連合会(KKR)HP「裁判所」に載っています。
(4) 最高裁判所事務総局総務局が作成した裁判所法逐条解説(昭和44年6月30日発行)(法曹の養成に関するフォーラム第4回会議(平成23年8月4日開催)資料6に含まれています。)385頁には以下の記載があります(改行を追加しました。)。
   昭和33年法律第128号による全面改正前の国家公務員共済組合法の当時は、旧裁判所共済組合運営規則(昭和33裁判所共済組合規則1号)第18条において、「組合員は、裁判所職員(司法修習生を含む。)とする。」とされて、司法修習生は、裁判所共済組合の組合員と取り扱われていた。
   昭和33年法律法律第128号により全面改正された国家公務員共済組合法の施行(昭和33年7月1日)以後は、右のような明確な規定はおかれていない。
   しかし、従前組合員として取り扱われていたこと、前記法律においてこれを除外する経過規定がないこと等を考えると、組合員として取り扱うのが相当であろう。現在、事実上司法修習生は組合員として取り扱われている。

2 司法修習生の修習資金貸与制が実施された新65期以降の司法修習生の場合
(1)   司法修習生は,①裁判所共済組合の組合員となることはできません(国家公務員共済組合法2条1項1号・国家公務員共済組合法施行令2条2項4号「国及び行政執行法人から給与を受けない者」参照)し,②実務修習中,通勤手当は出ませんから交通費は自腹になりますし,住居手当は出ませんから実家等から実務修習地に通えない限り家賃は自腹になりますし,寒冷地手当は出ませんから寒冷地の実務修習地における暖房代等は自腹になりますし,③集合修習中,通勤手当及び日額旅費は出ませんから交通費は自腹になりますし,住居手当は出ませんから実家等又はいずみ寮から司法研修所に通えない限り家賃は自腹になります。
(2)   弁護士になってからの2年間,裁判所共済組合の任意継続組合員となることはできません。
(3) 裁判所共済組合への加入実績がありませんから,公務員厚生年金から老齢厚生年金を支給してもらうことはできません。

3 給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧
(1) 平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料14(PDF77頁,末尾73頁)に,給費制下の給与及び貸与制下の貸与金を比較した一覧表が載っています。
(2)   新64期司法修習生の場合,毎月20万4200円の給与を支給されていたほか,諸手当として以下のものがありました。
① 扶養手当
   配偶者につき1万3000円,配偶者以外の扶養親族一人につき6500円等
② 住居手当
   家賃額に応じて2万7000円を限度に支給
③ 通勤手当
   交通機関等の利用者について一ヶ月あたり5万5000円を限度に支給
自転車等の使用者について使用距離に応じて2000円~2万4500円を支給
④ 地域手当
   支給対象地域で修習を行う者について,給与月額等に,修習地の区分に応じた割合(3%~18%)を乗じて得た額を支給
⑤ 寒冷地手当
   支給対象地域で修習を行う者について,11月から3月までの間,修習地の区分等に応じて7360円~2万6380円を支給
⑥ 期末手当
   年間で,給与月額等の2.6月分を支給
⑦ 勤勉手当
   年間で,給与月額等の1.29月分を支給


法務省作成の,令和元年6月18日の参議院文教科学委員会の国会答弁資料

4 他の公的な研修制度の取扱い
   平成25年1月30日開催の第8回法曹養成制度検討会議の資料3「法曹養成課程における経済的支援について」の資料15(PDF79頁,末尾75頁)によれば,他の公的な研修制度の取扱いは以下のとおりです。
① 防衛大学校
   陸上・海上・航空の各自衛隊の幹部自衛官となる者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は4年です。
② 防衛医科大学校
   医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練を目的としており,身分は防衛省職員であり,終了後は自衛隊に勤務し,学生手当等が支給され,期間は6年です。
③ 税務大学校
   税務職員に対する必要な研修等を目的としており,身分は税務職員であり,終了後は引き続き税務職員として勤務し,給与が支給され,期間は個々の研修によります。
④ 警察大学校
   上級幹部に対して必要な知識,技能,指導能力及び管理能力を習得させるための教養等を目的としており,身分は警察官であり,終了後は引き続き警察官として勤務し,給与が支給され,期間は個々の教養課程によります。
⑤ 航空大学校
    航空機の操縦士の教育訓練を目的としており,身分は学生(非公務員)であり,終了後は民間企業等への就職等であり,給与等の支給はなく,期間は2年です。

5 平成17年度決算検査報告における指摘
   最高裁判所ほか79裁判所は,会計検査院の平成17年度決算検査報告において,自動車等を使用して通勤する職員等に対する通勤手当の認定等を適切に行い、適正な支給額となるよう改善させられました(平成17年度決算検査報告における裁判所に対する指摘事項参照)。

6 関連記事その他
(1) 平成16年12月3日の日弁連会長談話(第161回臨時国会の終了にあたって)には以下の記載があります。
本日、第161回臨時国会が会期満了により終了した。今国会において審議された司法制度改革に関連する法案のうち「裁判外紛争解決手続の利用の促進等に関する法律案(ADR法案)」及び「裁判所法の一部を改正する法律案(司法修習生への給費制廃止)」の2法案は可決成立し、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(弁護士報酬の敗訴者負担制度)」は廃案となった。今臨時国会は、司法制度改革推進本部の設置期限が平成16年11月末とされたその最終の国会であり、今次司法制度改革における立法は基本的に完了した。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の給費制に関する,平成10年の裁判所法改正
・ 司法修習生の給費制に関する,平成16年の裁判所法改正
・ 司法修習生の給費制に関する,平成22年の裁判所法改正及びその後の予算措置
 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金

平成23年11月採用の新65期からの,修習資金貸与制の導入

目次
1 総論
2 平成23年11月1日配信の記事
3 給与制から貸与制に移行した理由
4 給費制を維持すべきとの見解から述べられた意見
5 関連記事その他

1 総論
    平成23年3月11日に東日本大震災が発生しました。
    また,法務省の「法曹の養成に関するフォーラム」(平成23年5月25日初開催)は,平成23年8月31日,司法修習生に対する経済的支援の基本的な在り方は,「貸与制を基本とした上で,個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置(十分な資力を有しない者に対する負担軽減措置)を講ずる。」等とする第一次取りまとめを行いました(法務省HPの「法曹の養成に関するフォーラム」「第一次取りまとめ」及び「概要」参照)。
    そのため,平成23年11月採用の新65期以降については特段の法改正はなされませんでしたから,新65期から司法修習生の修習資金貸与制が開始しました。

2 平成23年11月1日配信の記事
・ 時事通信社2011年11月1日配信の記事には以下の記載があったみたいです(弁護士作花知志のブログ「司法修習生の給与制が廃止へ」参照)。
「給与制廃止を了承 民主党
民主党は11月1日,司法修習生に月額約20万円を支給する『給費制』を廃止し,無利子の『貸与制』に移行する政府方針を了承することを決めた。党の判断を一任されていた前原誠司政調会長が同日の政調役員会で報告した。
前原氏は記者会見で廃止理由について,『私も父を亡くしてから奨学金を活用し,中,高,大学と学ばせてもらった。借りたものは返済することが法曹界に限らず基本だと思う』と説明。経済的な困窮者には返済猶予措置を講じると強調した。
政府は貸与制移行のための法案を今国会に提出する方針だが,民主党内には給費制存続を求める意見も強く,法務部門会議で議論していた。」

3 給与制から貸与制に移行した理由
・ 平成29年4月18日の参議院法務委員会における国会答弁資料によれば,給与制から貸与制に移行した理由は以下のとおりです。
① 司法修習生の増加に実効的に対応する必要があったこと
② 司法制度改革の諸施策を進める上で限りある財政資金をより効率的に活用し,司法制度全体に関して国民の理解が得られる合理的な財政負担を図る必要があったこと
③ 公務員ではなく公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは現行法上異例の制度であること
等を考慮すれば,給費制を維持することについて国民の理解を得ることは困難であった。

4 給費制を維持すべきとの見解から述べられた意見
    「法曹の養成に関するフォーラム」「第一次取りまとめ」4頁及び5頁には,「給費制を維持すべきとの見解(貸与制導入に支障があるとの見解)」として以下の趣旨の意見が表明されたと書いてあります。
① 法科大学院在学中の学費・生活費及び司法試験合格までの生活費の負担に加え,貸与制導入による経済的負担の増大により,資力に乏しい者が法曹になれなくなるおそれがあること。
② 上記同様,貸与制導入による経済的負担の増大は,法曹志願者が大幅に減少している現状において,とりわけ社会人出身者や他学部出身者を含む法曹志願者減少を更に拡大させ,人材の多様性を確保できなくなるおそれがあること。
③ 給費制は法曹の公共的使命の自覚を促し,弁護士の公共心や強い使命感の醸成を制度的に支え,弁護士の社会への貢献・還元に資するものであること。
④ 給費は,司法修習生が司法研修所長や配属地の高裁長官らの監督に服して修習に専念すべき義務を負い,兼職禁止や守秘義務等の公務員同様の身分上の制約を受ける代償であること。また,司法修習の実態は訴状や判決文の原案作成,被疑者の取調べ,接見など労働に近く,全国各地への任地配属に伴う経済的負担(例えば,転居費用など)も大きいこと。

5 関連記事その他
(1) 日弁連が平成21年8月20日付で発表した「「司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(案)」に対する意見書」に,修習資金貸与制に関する問題点が一通り記載されています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 修習資金の返還の猶予
・ 修習資金の返還の免除
・ 修習資金貸与金の返還を一律に免除するために必要な法的措置,及びこれに関する国会答弁
・ 修習資金貸与金の返還状況

平成29年4月18日の法務省の国会答弁資料
からの抜粋です。

司法修習生の給費制に関する,平成22年の裁判所法改正及びその後の予算措置

目次
1 平成22年3月までの経緯
2 平成22年4月以降の経緯
3 平成22年の裁判所法改正の影響
4 平成22年の裁判所法改正後の予算措置
5 関連記事その他

1 平成22年3月までの経緯
(1) 茨城県弁護士会は,平成21年7月1日,「司法修習生の修習資金貸与制の実施を延期し給費制の復活を求める声明」を公表しました。
(2) 日弁連は,平成21年8月20日,「司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(案)」に対する意見書を公表しました。
(3) 大阪弁護士会は,平成21年9月28日,「司法修習生の給費制の継続を求める意見書」を公表しました。

2 平成22年4月以降の経緯
(1) 平成22年3月10日の再投票で当選し,同年4月1日に日弁連会長に就任した宇都宮健児弁護士の主導により,日弁連は,給費制の存続を訴える活動を開始し(日弁連HPの「司法修習生に対する給費の実現と充実した司法修習を」参照),同年5月28日の定期総会において,市民の司法を実現するため、司法修習生に対する給費制維持と法科大学院生に対する経済的支援を求める決議を出しました。
   また,ビギナーズネット(司法修習生の給費制復活のためのネットワーク)が平成22年6月に発足しました。
(2) 青年法律家協会は「青年法律家 号外」(2010年8月30日付)を出しました。
(3) 法科大学院協会理事長は,平成22年10月12日,「修習生の給費制維持は司法制度改革に逆行(理事長所感)」を発表して,司法修習生の給費制を維持することに反対しました。
(4) 平成22年11月18日午前5時,司法修習生の給費制を1年延長するための裁判所法改正を議員立法で行う予定であることがNHKで報道されました。
(5) 平成22年11月19日午前,自民党法務部会は,司法修習生に国が給与を支払う「給費制」を1年間継続する議員立法に関し,1年後の再延長を認めないことなどを条件に平沢勝栄部会長に対応を一任し,事実上,継続を容認しました(日経新聞HPの「自民、司法修習生「給費制」継続容認」参照)。
(6)ア 平成22年9月17日発足の菅第1次改造内閣において第85代法務大臣に就任した柳田稔衆議院議員は,平成22年11月14日に国会軽視発言をした結果,同月22日に法務大臣を辞任し,23期の仙谷由人衆議院議員が第86代法務大臣となりました。
イ 衆議院法務委員長提出予定の裁判所法の一部を改正する法律案に対する国会法第57条の3に基づく内閣の意見要旨(平成22年11月22日付)は,「標記裁判所法の一部を改正する法律案については,政府としては,やむを得ないものと認めます。」というものでした。
(7) 司法修習生の給費制の1年延長を定めた裁判所法の一部を改正する法律案(第176回国会衆法第13号)は,平成22年11月24日に衆議院に付託され,翌25日,衆議院本会議で可決され,翌26日,参議院本会議で可決成立しました(衆議院HPの「議案審議経過情報」参照)。
   そして,新64期司法修習が開始する前日である平成22年11月26日,給費制を1年間延長する旨の裁判所法改正法が成立しました。
(8) 日弁連は,平成22年11月26日,「司法修習貸与制施行延期に関する「裁判所法の一部を改正する法律」成立にあたっての会長声明」を出しました。

3 平成22年の裁判所法改正の影響
(1) 同年11月1日から平成23年10月31日までに採用された司法修習生(具体的には,新64期及び現行65期の司法修習生)は,裁判所法の一部を改正する法律(平成22年12月3日法律第64号)(同日施行)による改正後の裁判所法付則4項・67条2項に基づき,1年間の修習期間中,国庫から一定額の給与(毎月20万4200円)を受けることができることとなりました(詳細につき,司法修習生の給与に関する暫定措置規則(平成22年12月9日最高裁判所規則第11号)参照)。
(2) 司法修習生の貸与制は平成22年11月1日にいったん開始していましたから,同年12月3日,同年11月1日に遡及して,新64期司法修習生に対して給費制が適用されることとなりました。
(3) 37期の菅野雅之最高裁判所事務総局審議官は,平成23年7月13日の第3回「法曹の養成に関するフォーラム」において以下の発言をしました(リンク先の16頁)。
    早いもので,既に次期第65期の修習生が11月には修習を開始するという状況になっております。昨年は,貸与制がいったん施行された後に,私どもがよく分からない状況のもとで,議員立法によりこれを遡及的に延期するという正に異例の事態が起こり,現場には大きな影響が生じて,その対応に苦慮することになりました。今回は昨年とは異なり,正にこういうお忙しい委員の先生方をお迎えしてこのようなフォーラムで議論していただくという大変貴重な機会が設けられているわけですので,私どもとしてもそういう意味では安心しているところでございます。是非このフォーラムで早期にきちんとした結論を出していただけるようにお願いしたいと申し上げます。

4 平成22年の裁判所法改正後の予算措置
(1)ア 新64期及び現行65期に対する給費制を存続する際,最高裁判所長官は,財務大臣に対し,平成22年12月27日付で予算流用等承認要求を行い,財務大臣は,最高裁判所長官に対し,平成23年1月4日付で予算流用等承認を通知しました(財政法33条2項及び3項のほか,「平成22年度一般会計歳出予算流用等の承認要求書及び承認通知書」参照)。
   具体的には,「修習資金貸与金」という目から,「司法修習生手当」という目に,20億4676万2000円を流用しました。金額については,平成22年12月から平成23年3月までの分と思われます。
イ 裁判所法の一部を改正する法律(平成22年12月3日法律第64号の施行に要する経費は,平成22年度において約27億円,平成23年度において約73億円(なお,経過措置により給与を支給する制度が存続する平成24年度において約2億円)の見込みでした。
(2)ア 裁判所所管の一般会計歳出予算各目明細書における①最高裁判所,下級裁判所,検察審査費,裁判費,裁判所施設費及び裁判所予備経費という「項」の区分,及び②職員基本給,職員諸手当といった「目」の区分は国会の議決事項であり(財政法23条及び31条),③各目の経費の金額の流用は,財務大臣の承認を得ることを条件とする各省各庁の長の権限事項です(財政法33条2項)。
イ 裁判所HPに「裁判所の予算・決算・財務書類」が載っています。
(3)ア 吉田泉財務大臣政務官は,平成22年10月22日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
    予算の方は、法律を前提に、つまり貸与制への移行を前提に組まれております。
    裁判所の二十二年度予算を申し上げますと、新しく始まります修習資金貸与金として二十七億円、そして従来からの給費制にかかわる分として司法修習生手当六十九億円、これは職員基本給、期末・勤勉手当等が含まれております。さらには、その方々の国家公務員共済組合負担金として七億円、これが二十二年度予算でございます。
    また、来年度、二十三年度の予算の概算要求においては、貸与金として八十九億円、手当として二億円、共済組合の負担金として一千八百万円、こういう要求が裁判所から出ております。これを前提に現在予算編成の作業を行っているところでございます。
イ 34期の林道晴最高裁判所経理局長は,平成22年11月25日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
    給費制が一年間延長された場合には、まず、平成二十二年度予算におきまして、この十一月二十七日に採用される予定の修習生、司法修習新六十四期の修習生になりますが、それに係る司法修習生手当あるいは共済組合の関係の負担金等として、合計約二十七億円の予算を計上する必要があります。これにつきましては、裁判所の他の予算を流用する手続を速やかに取ることになると考えております。また、平成二十三年度の予算につきましては、本年の十一月から貸与制に移行することを前提として概算要求を行っておりますので、給費制が一年間延長された場合には、それに応じた予算要求に改めることが必要になります。

5 関連記事その他
(1)ア 平成22年の裁判所法改正に関する,①議員への説明,②趣旨説明,③想定問答,④答弁書及び⑤国会審議録といった文書は,最高裁判所には存在しません(平成28年度(最情)第28号(平成28年10月11日答申))。
イ 29期の大谷直人最高裁判所事務総長は,平成22年11月25日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
    裁判所といたしましては、日本弁護士連合会に、今御指摘のとおり、例えば弁護士となって五年を経過した以降の収入の状況等、日弁連の主張の根拠となる具体的なデータの提供を(山中注:平成22年9月に)求めていたわけでございますが、こういった点につきまして日弁連から十分な提供ないし説明があったとは必ずしも考えておりません。
    ただ、最高裁といたしましては、今後この論点についての検討がされる際には、関係機関との間で実証的なデータに基づいた意見交換をしてまいりたいと、このように考えております。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の給費制に関する,平成10年の裁判所法改正
・ 司法修習生の給費制に関する,平成16年の裁判所法改正
・ 給費制を廃止した平成16年の裁判所法改正の経緯
 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金

法務省作成の,令和元年6月18日の参議院文教科学委員会の国会答弁資料

司法修習生の給費制に関する,平成16年の裁判所法改正

目次
第1 平成16年の裁判所法改正までの経緯

1 司法制度改革審議会意見書及び司法制度改革推進計画の記載
2 財政制度等審議会の建議
第2 平成16年の裁判所法改正の内容
第3 修習専念義務を明文化した理由
第4 平成16年の裁判所法改正に関する文書が最高裁判所に存在しないこと
第5 内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)
第6   平成16年の裁判所法改正に関する日弁連新聞及び日弁連の会長談話
1 平成16年の裁判所法改正に関する日弁連新聞
2 平成16年の裁判所法改正に関する日弁連の会長談話
第7 関連記事その他

第1 平成16年の裁判所法改正までの経緯
1 司法制度改革審議会意見書及び司法制度改革推進計画の記載 
(1) 平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書における記載
   修習生に対する給与の支給(給費制)については,将来的には貸与制への切替えや廃止をすべきではないかとの指摘もあり,新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置付けを考慮しつつ,その在り方を検討すべきである。
(2) 司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)における記載
   新司法試験実施後の司法修習が,司法修習生の増加に実効的に対応するとともに,法科大学院での教育内容をも踏まえ,実務修習を中核として位置付けつつ,修習内容を適切に工夫して実施されるよう,司法修習の具体的な内容等について,最高裁における検討状況を踏まえた上で検討を行い,少なくとも主要な事項の枠組みについて結論を得る。また,併せて,司法修習生の給費制の在り方につき検討を行う。
2 財政制度等審議会の建議
(1) 平成13年11月15日の,財政制度等審議会財政制度分科会の「平成14年度予算の編成等に関する建議」における記載
   13.司法制度改革
   司法制度は,社会の複雑化,多様化,国際化,事前規制型から事後チェック型行政への移行といった変化に対応し,見直さなければならないものであり,「司法制度改革審議会意見書」(平成13年6月12日)を踏まえ,司法制度改革を推進することとされているところである。
   今後,裁判の迅速化,司法の人的基盤の拡充等に向けた具体的方策の検討を進める中で,限られた財政資金の効率的使用の観点から,新たな法曹養成制度,国民の司法参加等について合理的な制度を構築していくことが必要である。
   なお,総人件費抑制の必要性や公務員全体の給与の在り方についての検討も踏まえ,裁判所・検察庁等についても,その給与の在り方について適切な検討が加えられるべきである。
(2) 平成14年6月3日の,財政制度等審議会の「平成15年度予算編成の基本的考え方について」における記載
   14.司法制度改革
   司法制度改革については,限られた財政資金の効率的使用の観点から,合理的な制度を構築していくことが必要であり,裁判官,検察官の増員を図る際には,既存の人材の有効活用,訴訟手続改善等の制度の効率的活用を図ることが必要である。また,法科大学院での教育を踏まえた司法修習の在り方,司法修習生の給費制等,これまでの制度や既定予算の見直しを行うことが必要である。

   なお,裁判官,検察官の給与についても,公務員給与の在り方の検討も踏まえ,適切な検討が加えられるべきである。
(3) 平成14年11月20日の,財政制度等審議会の「平成15年度予算の編成等に関する建議」における記載
   10.司法制度改革
   司法機能の充実・強化に当たっては,法曹人口の増大や迅速な紛争解決を実現する司法制度改革に係る国民の負担を軽減するため,訴訟手続き等に関して制度・運用面の改善を可能な限り行うこと,弁護士報酬の透明化・合理化を図ることなどとともに,既定の予算の見直しを行うことが必要である。

   既定の予算の見直しについては,例えば,司法修習生手当に関して,各種の公的給与・給付の見直し等を踏まえ,受益と負担の観点等から,早期に給費制は廃止し,貸与制への切替を行うべきである。
(4) 平成15年6月9日の,財政制度等審議会の「平成16年度予算編成の基本的考え方について」における記載
   10.司法制度改革
   裁判の迅速化,公的刑事弁護の拡充,司法ネットの構築等の司法機能の充実・強化に当たっては,限られた財政資金の効率的使用の観点から,最高裁判所による検証,公的試験の投入にふさわしい透明性・説明責任の確保,関連機関との連携等に配意し,合理的かつ機能的な制度・仕組みを構築していくことが必要である。

   また,司法制度改革を進める中で,「15年度建議」でも述べたとおり司法修習生の給費制は早期に廃止し貸与制への切替を行うべきであり,公務員給与の在り方についての見直しも踏まえ,裁判官・検察官の給与の在り方についても見直しに取り組んでいくべきである。
(5) 平成16年5月17日付の,財政制度等審議会の「平成17年度予算編成の基本的考え方について」における記載
Ⅱ. 各論
  10.治安対策・司法制度改革
(2)司法制度改革
   新たな被疑者国選弁護や司法過疎地域対策などを含めた総合法律支援制度に関しては,その主たる担い手となる日本司法支援センターについて効果的かつ効率的な体制・運営の在り方を検討する必要がある。具体的には,常勤弁護士の活用などによる効果的な弁護士供給体制の構築,地域毎のニーズに応じたきめ細かな対応,関連法律職種,地方公共団体との密接な連携等を実現することが重要である。

   裁判員制度の導入,法曹人口の拡大等に伴い,中期的にも財政負担の増大が見込まれるところである。「11月建議」でも指摘したように,司法修習生の給費制は早期に廃止し貸与制への切替を行うべきであり,また,裁判官・検察官の給与についても,一定の明確な目安を踏まえた昇級の在り方について検討するなど,その在り方について見直しを行うべきである。

第2 平成16年の裁判所法改正の内容
1(1) 現行64期までの司法修習生については,「司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。ただし、修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については、この限りでない。」と定める裁判所法67条2項に基づき,給与の支給を受けていました(司法修習生の給費制)。
   しかし,裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)による改正後の裁判所法67条2項は,「司法修習生は、その修習期間中、最高裁判所の定めるところにより、その修習に専念しなければならない。 」となり,平成22年11月1日からの給費制の廃止,修習資金貸与制の導入が決定されました。
(2) 裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)3項は,裁判官の報酬等に関する法律(昭和23年7月1日法律第75号)14条ただし書を削りました。
2 平成16年の裁判所法改正では当初,新60期司法修習生から貸与制を導入することを前提に,平成18年11月1日から施行することが予定されていました(「裁判所法の一部を改正する法律案」(第161回国会閣法第7号)付則1項参照)。
   しかし,貸与制実施の延長を求める日弁連の活動(平成16年6月14日付の「司法修習給費制の堅持を求める緊急声明」参照)等の結果,裁判所法の一部を改正する法律案に対する修正案が可決されたため,平成22年11月1日から施行される予定ということに変更されました。


第3 修習専念義務を明文化した理由
1 裁判所法67条2項は,従前は給費制を定めた条文でしたが,貸与制が導入されてからは,修習専念義務を定めた条文となっています。
2 この点に関する法務省の説明は以下のとおりです(平成16年9月13日付の法務省の参考資料参照)。
   修習資金は,後記のとおり,司法修習生がその修習期間中に修習に専念することができるようにするための経済的支援を行い,修習の実効性を確保するため,すなわち,司法修習生が修習に専念する義務(以下「修習専念義務」という。)を担保するために貸与するものであるところ,このような貸与性の趣旨を法律上明確にするためには,制度の目的・前提となる修習専念義務を法律上規定し,法制的にこれを明確に位置付ける必要がある。そこで,第67条第2項中,削除すべき「国庫から一定額の支給を受ける」を「最高裁判所の定めるところにより,その修習に専念しなければならない」に改めることとしたものである。
   現行の給費制においては,「給与を受ける」と規定することにより,修習期間中の生活を経済的に保障して司法修習生が修習に専念することができるようにする趣旨であることが法律上も明確に定められているということができ,その上更に修習専念義務を法律上規定する必要はないものと考えられるが,貸与制においては,「修習資金を貸与する」と規定するだけでは貸与の趣旨が法律上明確であるとはいえず,これを明確にするためには,法律上,制度の目的・前提となる修習専念義務を規定し,法制的にこれを明確に位置付けた上で,修習資金が,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であることを規定する必要があると考えられる。
   そして,貸与制においても,司法修習の意義・重要性や修習専念義務の内容は変わるものではなく,修習専念義務についての上記の規定は,現在と同じ内容の修習専念義務(抽象的な行為規範としての修習専念義務)を,上記のような法制的な理由から法律上規定するものであり,その具体的な内容(具体的な修習への専念の在り方)については現在と同様に最高裁判所規則で定めるべきものと考えられる(現在は,第67条の第3項の包括委任を根拠として定められている現行規則が,新第2項の個別委任を根拠とすることになるものであり,現行規則の形式等に何ら変更を要するものではない。)。

第4 平成16年の裁判所法改正に関する文書が最高裁判所に存在しないこと
   平成16年の裁判所法改正に関する,①議員への説明,②趣旨説明,③想定問答,④答弁書及び⑤国会審議録といった文書は,最高裁判所には存在しません(平成28年度(最情)第28号(平成28年10月11日答申))。

第5 内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)
1 裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)を掲載しています。
2 裁判所法の一部を改正する法律案について(司法修習生に対する修習資金の貸与制)と題する法務省文書(平成16年9月13日付)がメインの資料です。


第6   平成16年の裁判所法改正に関する日弁連新聞及び日弁連の会長談話
1 平成16年の裁判所法改正に関する日弁連新聞

(1) 平成16年12月1日付の日弁連新聞第371号の「臨時国会 敗訴者負担反対と給費制堅持ーその帰趨を分けたものー」には以下の記載があります。
   11月30日に司法制度改革推進本部が設置期限の3年の満了により解散するなか、53日間の臨時国会が12月3日閉会した。所要の修正を求め、これが得られなければ「廃案」と不退転の決意で臨んだ弁護士報酬の敗訴者負担法案と、司法修習生への給費制堅持を強く求めていた裁判所法一部改正法案についても決着した。前者は廃案、後者は、給費制を前提に法科大学院に入学した学生の期待を裏切ることは避けるべきではないか、との観点から、廃止(貸与制への移行)時期を、政府案の2006年11月から2010年とする修正のうえ、成立した。
   日弁連は、どちらの課題についても法案提出前から、会長を本部長とし全理事を本部委員とする対策本部を設置し、広く市民やマスコミに呼びかけ、会を挙げて精力的に国会議員へも働きかけた。国会の現場でその帰趨に接した立場からは、その差は結局のところ、我々弁護士・弁護士会が自らの主張について国民を説得する言葉を持っていたか否かにより生じたものと感じられた。
   実際、敗訴者負担は、内閣提出法案であるにもかかわらず、その問題点に共感する声が日増しに高まり、新聞の論調に至っては日弁連の主張と軌を一つにするものも複数出そろうなかで廃案を勝ち取れたのに対し、給費制堅持は、「学生の期待を裏切るべきではない」との点では国民や世論の支持を得ることはできたものの、「個人が資格を得るためのお金を国が支払うべきなのか」との観点で、マスコミ論調の共感を得るには至らなかった。
   法曹三者の協議によるのではなく、国民を説得する理と言葉を持った改革だけが勝ち残るという改革の原点を、改めて思い起こさせた国会の幕切れであった。
(2) 平成16年当時の,弁護士報酬等の敗訴者負担制度に関する法務省の資料を以下のとおり掲載しています。
1月15日付1月22日付1月28日付及び2月5日付
 平成16年の裁判所法改正に関する日弁連の会長談話
・ 平成16年12月3日付の日弁連の会長談話(第161回臨時国会の終了にあたって)には,以下の記載があります。
   本日、第161回臨時国会が会期満了により終了した。今国会において審議された司法制度改革に関連する法案のうち「裁判外紛争解決手続の利用の促進等に関する法律案(ADR法案)」及び「裁判所法の一部を改正する法律案(司法修習生への給費制廃止)」の2法案は可決成立し、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(弁護士報酬の敗訴者負担制度)」は廃案となった。今臨時国会は、司法制度改革推進本部の設置期限が平成16年11月末とされたその最終の国会であり、今次司法制度改革における立法は基本的に完了した。
   日本弁護士連合会は、今次司法制度改革における諸立法により、主権者である国民が裁判官とともに裁判に参画する裁判員制度の創設、被疑者国選弁護制度の創設、利用者である市民が利用しやすい裁判所、日本司法支援センターなどの弁護士へのアクセスの制度及びこれらを支えるべき法曹制度と法曹養成の制度が整備されたことを心から歓迎するものである。

第7 関連記事その他
1 就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべきとされています(最高裁平成28年2月19日判決)。
2(1) 憲法14条は,もとより合理的理由のある差別的な取扱いまでをも禁止するものではありませんから,国有農地等の売払いに関する特別措置法(昭和46年4月26日法律第50号)の立法に合理的理由がある以上,たとえ前記のように国に対して当該買収農地の売払いを求める権利を取得した者について,同法の施行日前に売払いを受けた場合と同法の施行日以後に売払いを受ける場合との間において差別的な取扱いがされることになるとしても,これをもって違憲であるとすることができません(最高裁大法廷昭和53年7月12日判決)。
(2) 村長が特定の者に対しその者が村内で行う工場の建設・操業に全面的に協力することを言明し,村有地を工場敷地の一部として提供する旨の村議会の議決を経由したうえ積極的に工場建設を促し,右特定の者は右協力が継続するものと信じて工場敷地の確保・整備、機械設備の発注等を行い,村の側もこれを予想していたなど,判示の事実関係のもとにおいて,右工場建設に反対する村民の支持を得て当選した新村長が,右特定の者に生ずべき多額の積極的損害について補償等の措置を講ずることなく,右工場建設の途中でこれに対する協力を拒否した場合には,右協力拒否は,やむをえない客観的事情が存するのでない限り,右特定の者に対する違法な加害行為たることを免れません(最高裁昭和56年1月27日判決)。
3 以下の記事も参照して下さい。
・ 司法修習生の給費制に関する,平成10年の裁判所法改正
・ 給費制を廃止した平成16年の裁判所法改正の経緯
→ 大分地裁平成29年9月29日判決の「平成16年改正に至るまでの経緯」からの抜粋です。
・ 司法修習生の給費制に関する,平成22年の裁判所法改正及びその後の予算措置
・ 司法修習生の身分に関する最高裁判所事務総局審議官の説明
 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金

司法修習生の給費制に関する,平成10年の裁判所法改正

目次
1 平成10年の裁判所法改正に至るまでの経緯
2 平成10年の裁判所法改正の内容
3 司法修習生に対して給与が支給される根拠と裁判所法67条2項の改正の趣旨
4 内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)
5 関連記事その他
   
1 平成10年の裁判所法改正に至るまでの経緯
(1)   法曹養成制度等改革協議会は,平成7年11月13日付の意見書において,以下の提言を行いました。
① 司法の機能を充実し国民の法的ニーズに応えるため,中期的には年間1,500人程度を目標として合格者増を図り,かつ,修習期間を大幅に短縮することを骨子とする改革を行い,これに伴って,両訴を必須科目化し,口述試験の見直しを行うことを内容とする司法試験制度の改革を行うべき(多数意見)。
② 今後,法曹三者は,司法試験制度及び法曹養成制度の抜本的改革を実現させるため,直ちに協議を行い,速やかに具体的な方策を採らなければならない。
(2) 最高裁判所,法務省及び日弁連の法曹三者は,平成9年10月28日付けの「司法試験制度と法曹養成制度に関する合意」として,以下の合意を成立させました(「三者協議会における合意について」参照)。
① 司法試験合格者を,平成10年度は800人程度に,平成11年度から年間1,000人程度に増加。
② 司法修習制度について,21世紀を担うにふさわしい法曹を養成するため,修習の内容及び方法について配慮と工夫を行うとの観点に立って,平成11年度に始まる司法修習から修習期間を1年6ヶ月とし,司法研修所における修習では,社会に存在する多様な法的ニーズについての基本的な情報を提供するとともに,法曹としての識見,法曹倫理等の習得を図り,また,実務修習では,社会の実相に触れさせる機会を付与する。
③ 司法試験制度について,平成12年度の第二次試験から,論文式試験の科目につき,憲法,民法,商法及び刑法の4科目に加え,民事訴訟法及び刑事訴訟法を必須科目とし,受験者の負担軽減の観点から,法律選択科目を廃止する。また,受験者の負担軽減等の観点から,口述試験の科目を,論文式試験の科目のうち商法を除く5科目とする。
④ 論文式試験における合格者の決定方法,司法試験合格者の年間1,500人程度への増加及び法曹資格取得後の研修の充実などについて,引き続き協議を行う。

2 平成10年の裁判所法改正の内容

   裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)による改正後の裁判所法67条2項は,「司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。ただし、修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については、この限りでない。」となり,第53期司法修習生以降については,司法修習の期間が1年6月となるとともに,二回試験の合格留保者に対する給与の支給が廃止されることとなりました。
   
3 司法修習生に対して給与が支給される根拠と裁判所法67条2項の改正の趣旨
(1) この点に関する法務省の説明は以下のとおりです(平成10年2月4日付の法務省文書参照)。
① 戦後の新憲法の下においては,法曹一体の要請から,法曹養成制度が統一され,裁判官,検察官又は弁護士のいずれを志望するによせ,司法修習生として少なくとも2年間同じ司法修習を経なければならないものとされた。これは,国が責務として,民主国家の実現のため,裁判官及び検察官の志望者だけでなく弁護士志望者に対しても,それらの職責の重要性に鑑み,司法修習生を,将来の日本の司法を支えるべき人材として養成すべきものであるとの考えにたつものであり,このような国の責務としての法曹要請の一環として,司法修習生に対しては,その修習期間中,給与が支給されることとなったものである(裁判所法67条2項)。
② ところで,現在,修習生に対する給与については,所定の2年間の修習期間のみならず,その修習期間経過後も,例えば,二回試験を受験したが合格留保となった者に対しては,追試により合格して修習を終了するまでの間,これが支給されている。
③ しかし,司法修習生に対する国庫からの給与の支給の根拠が上述したところにあり,国は,司法修習生において法曹として求められる水準に到達するのに必要な一定の修習内容・期間を定めて修習をさせ,国民の負託を受けて国として行うべき法曹要請の責務を果たしているものである以上,その一定の期間内において所定の課程を履践しながら,当然に到達すべき水準に達し得なかった者,すなわち自己の責任により合格留保となった者等に対して,その後においてもなお給与の支給を続けることは必ずしも国民の負託にこたえるものとはいえない。そこで,今回の改正により,上記1の司法修習生に対する給与支給についての考え方自体はこれを当然に維持しつつ,国が法曹養成におけるその責務を果たす限度において,すなわち,最高裁判所が修習のため通常必要な期間として定める期間内においてのみ給与の支給を行うこととするものである。なお,通常必要な期間とは,具体的には,司法修習のカリキュラム開始日から終了日までの期間をいう。
(2) 22期の山崎潮 法務大臣官房司法法制調査部長は,平成10年4月10日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① まず結論から申し上げますと、現在、二回試験を受けまして、合格留保と言っておるわけでございますが、残念ながら受からなかった人でございますけれども、そのまま修習生の身分を継続いたしまして、追試の機会がございます。その追試の機会で合格すればそれで卒業するんですが、そのときまで給与の支給を受けております。
 今回は、そういう関係からいきますと、通常二回試験を受けまして、新制度では一年六月、約一年六カ月になるわけでございます。もちろん、その期間については若干年によって出入りがございますので、最高裁判所の方で定めるわけでございますが、そこの期間を過ぎたら、今度は修習生の身分は残りますけれども給与は出ない、こういうふうに変わるわけでございます。
② (山中注:司法修習生の給与が)どういう理由で出るのかということでございますけれども、やはり法曹というのは非常に公的な仕事でございますから、大事なものですから、給与を支給して修習に専念をさせるということになるのだろうと思うのです。
   
4 内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)
   裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)を掲載しています。
   
5 関連記事その他
(1) 28期から52期までの二回試験の場合,不合格により罷免された司法修習生はいなかったのに対し,69期以降の二回試験の場合,不合格発表の翌日にある最高裁判所裁判官会議の決議をもって,「令和◯◯年度(第◯◯期)司法修習生考試不合格者名簿」登載の者は全員,同日付で一律に罷免されるようになりました(「二回試験不合格時の一般的な取扱い」参照)。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の給費制に関する,平成16年の裁判所法改正
・ 給費制を廃止した平成16年の裁判所法改正の経緯
・ 司法修習生の給費制に関する,平成22年の裁判所法改正及びその後の予算措置
 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金