2 司法修習生による取調べ修習の違法説の根拠
① 取調べの主体について定めた刑事訴訟法198条1項は,「司法修習生」を主体としてあげていない。 そのため,司法修習生による取調べは,同法197条1項ただし書が定める強制処分法定主義に違反する。
② 憲法31条の法定手続原則は,特に刑事手続においては厳格に解釈・運用されるべきである。司法修習生による取調べは法律上の明文の根拠を欠く以上,同原則違反で違憲である。
③ 取調べは被疑者に対して自己に不利益な供述まで求めるという点で,被疑者の人格の深いところまで立ち入るものであるところ,修習目的による取調べは,被疑者の人格を修習の道具として扱うものであり,人格の尊厳を趣旨とする憲法13条に違反する。
3 司法修習生による取調べ修習の合法説の根拠
① 被疑者の同意がある以上,許される。
② 将来の法曹を養成するという公益目的のためには取調べ修習は不可欠であり,それ故これを認める必要がある。 医師のインターン制度と同じである。
③ 相島六原則を守れば,人権侵害のおそれは少ない。
5 違法説から合法説への反論
① 被疑者と検察官の力関係,司法修習生というものについての一般人の理解からして,自由かつ真摯な同意とはいえない。 法定手続原則は同意によって放棄できるものではない。
② 公益目的であっても個人の人格を踏みにじることは許されない。 医師のインターン制度と取調べという権力の行使を同視することはできない。
③ 相島六原則を守ることは不可能である(現実に守られたという例はほとんどない。)。 拘束時間が長くなることは明白である。 大部屋で一斉にやらざるを得ず,プライバシー侵害が著しい。
第0 総論
1 69期司法修習生の修習希望地の倍率を基準として,実務修習地(司法修習の場所)を以下のとおりランキングしています。
① Aランク
第1希望だけで配属人数を超えた実務修習地
② Bランク
第1希望及び第2希望の合計だけで配属人数を超えた実務修習地
③ Cランク
Aランク及びBランク以外の実務修習地
2 第2希望の分類は以下のとおりです。
① 妥当な選択(=おすすめの選択)
第1希望地への交通の便が良く,ほぼ確実に第2希望地以内に配属してもらえる選択です。
② リスクある選択
リスクがあるものの,第1希望地への交通の便がいいところに配属してもらおうとする選択です。
③ 安全な選択
第1希望地への交通の便は譲歩するものの,ほぼ確実に第2希望地以内に配属してもらえる選択です。
3 元データについては,「実務修習地の選び方」を参照してください。
3 給与制から貸与制に移行した理由
・ 平成29年4月18日の参議院法務委員会における国会答弁資料によれば,給与制から貸与制に移行した理由は以下のとおりです。
① 司法修習生の増加に実効的に対応する必要があったこと
② 司法制度改革の諸施策を進める上で限りある財政資金をより効率的に活用し,司法制度全体に関して国民の理解が得られる合理的な財政負担を図る必要があったこと
③ 公務員ではなく公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは現行法上異例の制度であること
等を考慮すれば,給費制を維持することについて国民の理解を得ることは困難であった。
4 給費制を維持すべきとの見解から述べられた意見 「法曹の養成に関するフォーラム」の「第一次取りまとめ」4頁及び5頁には,「給費制を維持すべきとの見解(貸与制導入に支障があるとの見解)」として以下の趣旨の意見が表明されたと書いてあります。 ① 法科大学院在学中の学費・生活費及び司法試験合格までの生活費の負担に加え,貸与制導入による経済的負担の増大により,資力に乏しい者が法曹になれなくなるおそれがあること。 ② 上記同様,貸与制導入による経済的負担の増大は,法曹志願者が大幅に減少している現状において,とりわけ社会人出身者や他学部出身者を含む法曹志願者減少を更に拡大させ,人材の多様性を確保できなくなるおそれがあること。 ③ 給費制は法曹の公共的使命の自覚を促し,弁護士の公共心や強い使命感の醸成を制度的に支え,弁護士の社会への貢献・還元に資するものであること。 ④ 給費は,司法修習生が司法研修所長や配属地の高裁長官らの監督に服して修習に専念すべき義務を負い,兼職禁止や守秘義務等の公務員同様の身分上の制約を受ける代償であること。また,司法修習の実態は訴状や判決文の原案作成,被疑者の取調べ,接見など労働に近く,全国各地への任地配属に伴う経済的負担(例えば,転居費用など)も大きいこと。
目次 1 平成10年の裁判所法改正に至るまでの経緯
2 平成10年の裁判所法改正の内容
3 司法修習生に対して給与が支給される根拠と裁判所法67条2項の改正の趣旨
4 内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)
5 関連記事その他
1 平成10年の裁判所法改正に至るまでの経緯 (1) 法曹養成制度等改革協議会は,平成7年11月13日付の意見書において,以下の提言を行いました。
① 司法の機能を充実し国民の法的ニーズに応えるため,中期的には年間1,500人程度を目標として合格者増を図り,かつ,修習期間を大幅に短縮することを骨子とする改革を行い,これに伴って,両訴を必須科目化し,口述試験の見直しを行うことを内容とする司法試験制度の改革を行うべき(多数意見)。
② 今後,法曹三者は,司法試験制度及び法曹養成制度の抜本的改革を実現させるため,直ちに協議を行い,速やかに具体的な方策を採らなければならない。
(2) 最高裁判所,法務省及び日弁連の法曹三者は,平成9年10月28日付けの「司法試験制度と法曹養成制度に関する合意」として,以下の合意を成立させました(「三者協議会における合意について」参照)。 ① 司法試験合格者を,平成10年度は800人程度に,平成11年度から年間1,000人程度に増加。 ② 司法修習制度について,21世紀を担うにふさわしい法曹を養成するため,修習の内容及び方法について配慮と工夫を行うとの観点に立って,平成11年度に始まる司法修習から修習期間を1年6ヶ月とし,司法研修所における修習では,社会に存在する多様な法的ニーズについての基本的な情報を提供するとともに,法曹としての識見,法曹倫理等の習得を図り,また,実務修習では,社会の実相に触れさせる機会を付与する。 ③ 司法試験制度について,平成12年度の第二次試験から,論文式試験の科目につき,憲法,民法,商法及び刑法の4科目に加え,民事訴訟法及び刑事訴訟法を必須科目とし,受験者の負担軽減の観点から,法律選択科目を廃止する。また,受験者の負担軽減等の観点から,口述試験の科目を,論文式試験の科目のうち商法を除く5科目とする。 ④ 論文式試験における合格者の決定方法,司法試験合格者の年間1,500人程度への増加及び法曹資格取得後の研修の充実などについて,引き続き協議を行う。
2 平成10年の裁判所法改正の内容 裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)による改正後の裁判所法67条2項は,「司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。ただし、修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については、この限りでない。」となり,第53期司法修習生以降については,司法修習の期間が1年6月となるとともに,二回試験の合格留保者に対する給与の支給が廃止されることとなりました。 3 司法修習生に対して給与が支給される根拠と裁判所法67条2項の改正の趣旨
(1) この点に関する法務省の説明は以下のとおりです(平成10年2月4日付の法務省文書参照)。 ① 戦後の新憲法の下においては,法曹一体の要請から,法曹養成制度が統一され,裁判官,検察官又は弁護士のいずれを志望するによせ,司法修習生として少なくとも2年間同じ司法修習を経なければならないものとされた。これは,国が責務として,民主国家の実現のため,裁判官及び検察官の志望者だけでなく弁護士志望者に対しても,それらの職責の重要性に鑑み,司法修習生を,将来の日本の司法を支えるべき人材として養成すべきものであるとの考えにたつものであり,このような国の責務としての法曹要請の一環として,司法修習生に対しては,その修習期間中,給与が支給されることとなったものである(裁判所法67条2項)。 ② ところで,現在,修習生に対する給与については,所定の2年間の修習期間のみならず,その修習期間経過後も,例えば,二回試験を受験したが合格留保となった者に対しては,追試により合格して修習を終了するまでの間,これが支給されている。 ③ しかし,司法修習生に対する国庫からの給与の支給の根拠が上述したところにあり,国は,司法修習生において法曹として求められる水準に到達するのに必要な一定の修習内容・期間を定めて修習をさせ,国民の負託を受けて国として行うべき法曹要請の責務を果たしているものである以上,その一定の期間内において所定の課程を履践しながら,当然に到達すべき水準に達し得なかった者,すなわち自己の責任により合格留保となった者等に対して,その後においてもなお給与の支給を続けることは必ずしも国民の負託にこたえるものとはいえない。そこで,今回の改正により,上記1の司法修習生に対する給与支給についての考え方自体はこれを当然に維持しつつ,国が法曹養成におけるその責務を果たす限度において,すなわち,最高裁判所が修習のため通常必要な期間として定める期間内においてのみ給与の支給を行うこととするものである。なお,通常必要な期間とは,具体的には,司法修習のカリキュラム開始日から終了日までの期間をいう。 (2) 22期の山崎潮 法務大臣官房司法法制調査部長は,平成10年4月10日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。 ① まず結論から申し上げますと、現在、二回試験を受けまして、合格留保と言っておるわけでございますが、残念ながら受からなかった人でございますけれども、そのまま修習生の身分を継続いたしまして、追試の機会がございます。その追試の機会で合格すればそれで卒業するんですが、そのときまで給与の支給を受けております。 今回は、そういう関係からいきますと、通常二回試験を受けまして、新制度では一年六月、約一年六カ月になるわけでございます。もちろん、その期間については若干年によって出入りがございますので、最高裁判所の方で定めるわけでございますが、そこの期間を過ぎたら、今度は修習生の身分は残りますけれども給与は出ない、こういうふうに変わるわけでございます。 ② (山中注:司法修習生の給与が)どういう理由で出るのかということでございますけれども、やはり法曹というのは非常に公的な仕事でございますから、大事なものですから、給与を支給して修習に専念をさせるということになるのだろうと思うのです。