司法修習

司法修習生の給費制に関する,平成16年の裁判所法改正

目次
第1 平成16年の裁判所法改正までの経緯

1 司法制度改革審議会意見書及び司法制度改革推進計画の記載
2 財政制度等審議会の建議
第2 平成16年の裁判所法改正の内容
第3 修習専念義務を明文化した理由
第4 平成16年の裁判所法改正に関する文書が最高裁判所に存在しないこと
第5 内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)
第6   平成16年の裁判所法改正に関する日弁連新聞及び日弁連の会長談話
1 平成16年の裁判所法改正に関する日弁連新聞
2 平成16年の裁判所法改正に関する日弁連の会長談話
第7 関連記事その他

第1 平成16年の裁判所法改正までの経緯
1 司法制度改革審議会意見書及び司法制度改革推進計画の記載 
(1) 平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書における記載
   修習生に対する給与の支給(給費制)については,将来的には貸与制への切替えや廃止をすべきではないかとの指摘もあり,新たな法曹養成制度全体の中での司法修習の位置付けを考慮しつつ,その在り方を検討すべきである。
(2) 司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)における記載
   新司法試験実施後の司法修習が,司法修習生の増加に実効的に対応するとともに,法科大学院での教育内容をも踏まえ,実務修習を中核として位置付けつつ,修習内容を適切に工夫して実施されるよう,司法修習の具体的な内容等について,最高裁における検討状況を踏まえた上で検討を行い,少なくとも主要な事項の枠組みについて結論を得る。また,併せて,司法修習生の給費制の在り方につき検討を行う。
2 財政制度等審議会の建議
(1) 平成13年11月15日の,財政制度等審議会財政制度分科会の「平成14年度予算の編成等に関する建議」における記載
   13.司法制度改革
   司法制度は,社会の複雑化,多様化,国際化,事前規制型から事後チェック型行政への移行といった変化に対応し,見直さなければならないものであり,「司法制度改革審議会意見書」(平成13年6月12日)を踏まえ,司法制度改革を推進することとされているところである。
   今後,裁判の迅速化,司法の人的基盤の拡充等に向けた具体的方策の検討を進める中で,限られた財政資金の効率的使用の観点から,新たな法曹養成制度,国民の司法参加等について合理的な制度を構築していくことが必要である。
   なお,総人件費抑制の必要性や公務員全体の給与の在り方についての検討も踏まえ,裁判所・検察庁等についても,その給与の在り方について適切な検討が加えられるべきである。
(2) 平成14年6月3日の,財政制度等審議会の「平成15年度予算編成の基本的考え方について」における記載
   14.司法制度改革
   司法制度改革については,限られた財政資金の効率的使用の観点から,合理的な制度を構築していくことが必要であり,裁判官,検察官の増員を図る際には,既存の人材の有効活用,訴訟手続改善等の制度の効率的活用を図ることが必要である。また,法科大学院での教育を踏まえた司法修習の在り方,司法修習生の給費制等,これまでの制度や既定予算の見直しを行うことが必要である。

   なお,裁判官,検察官の給与についても,公務員給与の在り方の検討も踏まえ,適切な検討が加えられるべきである。
(3) 平成14年11月20日の,財政制度等審議会の「平成15年度予算の編成等に関する建議」における記載
   10.司法制度改革
   司法機能の充実・強化に当たっては,法曹人口の増大や迅速な紛争解決を実現する司法制度改革に係る国民の負担を軽減するため,訴訟手続き等に関して制度・運用面の改善を可能な限り行うこと,弁護士報酬の透明化・合理化を図ることなどとともに,既定の予算の見直しを行うことが必要である。

   既定の予算の見直しについては,例えば,司法修習生手当に関して,各種の公的給与・給付の見直し等を踏まえ,受益と負担の観点等から,早期に給費制は廃止し,貸与制への切替を行うべきである。
(4) 平成15年6月9日の,財政制度等審議会の「平成16年度予算編成の基本的考え方について」における記載
   10.司法制度改革
   裁判の迅速化,公的刑事弁護の拡充,司法ネットの構築等の司法機能の充実・強化に当たっては,限られた財政資金の効率的使用の観点から,最高裁判所による検証,公的試験の投入にふさわしい透明性・説明責任の確保,関連機関との連携等に配意し,合理的かつ機能的な制度・仕組みを構築していくことが必要である。

   また,司法制度改革を進める中で,「15年度建議」でも述べたとおり司法修習生の給費制は早期に廃止し貸与制への切替を行うべきであり,公務員給与の在り方についての見直しも踏まえ,裁判官・検察官の給与の在り方についても見直しに取り組んでいくべきである。
(5) 平成16年5月17日付の,財政制度等審議会の「平成17年度予算編成の基本的考え方について」における記載
Ⅱ. 各論
  10.治安対策・司法制度改革
(2)司法制度改革
   新たな被疑者国選弁護や司法過疎地域対策などを含めた総合法律支援制度に関しては,その主たる担い手となる日本司法支援センターについて効果的かつ効率的な体制・運営の在り方を検討する必要がある。具体的には,常勤弁護士の活用などによる効果的な弁護士供給体制の構築,地域毎のニーズに応じたきめ細かな対応,関連法律職種,地方公共団体との密接な連携等を実現することが重要である。

   裁判員制度の導入,法曹人口の拡大等に伴い,中期的にも財政負担の増大が見込まれるところである。「11月建議」でも指摘したように,司法修習生の給費制は早期に廃止し貸与制への切替を行うべきであり,また,裁判官・検察官の給与についても,一定の明確な目安を踏まえた昇級の在り方について検討するなど,その在り方について見直しを行うべきである。

第2 平成16年の裁判所法改正の内容
1(1) 現行64期までの司法修習生については,「司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。ただし、修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については、この限りでない。」と定める裁判所法67条2項に基づき,給与の支給を受けていました(司法修習生の給費制)。
   しかし,裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)による改正後の裁判所法67条2項は,「司法修習生は、その修習期間中、最高裁判所の定めるところにより、その修習に専念しなければならない。 」となり,平成22年11月1日からの給費制の廃止,修習資金貸与制の導入が決定されました。
(2) 裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)3項は,裁判官の報酬等に関する法律(昭和23年7月1日法律第75号)14条ただし書を削りました。
2 平成16年の裁判所法改正では当初,新60期司法修習生から貸与制を導入することを前提に,平成18年11月1日から施行することが予定されていました(「裁判所法の一部を改正する法律案」(第161回国会閣法第7号)付則1項参照)。
   しかし,貸与制実施の延長を求める日弁連の活動(平成16年6月14日付の「司法修習給費制の堅持を求める緊急声明」参照)等の結果,裁判所法の一部を改正する法律案に対する修正案が可決されたため,平成22年11月1日から施行される予定ということに変更されました。


第3 修習専念義務を明文化した理由
1 裁判所法67条2項は,従前は給費制を定めた条文でしたが,貸与制が導入されてからは,修習専念義務を定めた条文となっています。
2 この点に関する法務省の説明は以下のとおりです(平成16年9月13日付の法務省の参考資料参照)。
   修習資金は,後記のとおり,司法修習生がその修習期間中に修習に専念することができるようにするための経済的支援を行い,修習の実効性を確保するため,すなわち,司法修習生が修習に専念する義務(以下「修習専念義務」という。)を担保するために貸与するものであるところ,このような貸与性の趣旨を法律上明確にするためには,制度の目的・前提となる修習専念義務を法律上規定し,法制的にこれを明確に位置付ける必要がある。そこで,第67条第2項中,削除すべき「国庫から一定額の支給を受ける」を「最高裁判所の定めるところにより,その修習に専念しなければならない」に改めることとしたものである。
   現行の給費制においては,「給与を受ける」と規定することにより,修習期間中の生活を経済的に保障して司法修習生が修習に専念することができるようにする趣旨であることが法律上も明確に定められているということができ,その上更に修習専念義務を法律上規定する必要はないものと考えられるが,貸与制においては,「修習資金を貸与する」と規定するだけでは貸与の趣旨が法律上明確であるとはいえず,これを明確にするためには,法律上,制度の目的・前提となる修習専念義務を規定し,法制的にこれを明確に位置付けた上で,修習資金が,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であることを規定する必要があると考えられる。
   そして,貸与制においても,司法修習の意義・重要性や修習専念義務の内容は変わるものではなく,修習専念義務についての上記の規定は,現在と同じ内容の修習専念義務(抽象的な行為規範としての修習専念義務)を,上記のような法制的な理由から法律上規定するものであり,その具体的な内容(具体的な修習への専念の在り方)については現在と同様に最高裁判所規則で定めるべきものと考えられる(現在は,第67条の第3項の包括委任を根拠として定められている現行規則が,新第2項の個別委任を根拠とすることになるものであり,現行規則の形式等に何ら変更を要するものではない。)。

第4 平成16年の裁判所法改正に関する文書が最高裁判所に存在しないこと
   平成16年の裁判所法改正に関する,①議員への説明,②趣旨説明,③想定問答,④答弁書及び⑤国会審議録といった文書は,最高裁判所には存在しません(平成28年度(最情)第28号(平成28年10月11日答申))。

第5 内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)
1 裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)を掲載しています。
2 裁判所法の一部を改正する法律案について(司法修習生に対する修習資金の貸与制)と題する法務省文書(平成16年9月13日付)がメインの資料です。


第6   平成16年の裁判所法改正に関する日弁連新聞及び日弁連の会長談話
1 平成16年の裁判所法改正に関する日弁連新聞

(1) 平成16年12月1日付の日弁連新聞第371号の「臨時国会 敗訴者負担反対と給費制堅持ーその帰趨を分けたものー」には以下の記載があります。
   11月30日に司法制度改革推進本部が設置期限の3年の満了により解散するなか、53日間の臨時国会が12月3日閉会した。所要の修正を求め、これが得られなければ「廃案」と不退転の決意で臨んだ弁護士報酬の敗訴者負担法案と、司法修習生への給費制堅持を強く求めていた裁判所法一部改正法案についても決着した。前者は廃案、後者は、給費制を前提に法科大学院に入学した学生の期待を裏切ることは避けるべきではないか、との観点から、廃止(貸与制への移行)時期を、政府案の2006年11月から2010年とする修正のうえ、成立した。
   日弁連は、どちらの課題についても法案提出前から、会長を本部長とし全理事を本部委員とする対策本部を設置し、広く市民やマスコミに呼びかけ、会を挙げて精力的に国会議員へも働きかけた。国会の現場でその帰趨に接した立場からは、その差は結局のところ、我々弁護士・弁護士会が自らの主張について国民を説得する言葉を持っていたか否かにより生じたものと感じられた。
   実際、敗訴者負担は、内閣提出法案であるにもかかわらず、その問題点に共感する声が日増しに高まり、新聞の論調に至っては日弁連の主張と軌を一つにするものも複数出そろうなかで廃案を勝ち取れたのに対し、給費制堅持は、「学生の期待を裏切るべきではない」との点では国民や世論の支持を得ることはできたものの、「個人が資格を得るためのお金を国が支払うべきなのか」との観点で、マスコミ論調の共感を得るには至らなかった。
   法曹三者の協議によるのではなく、国民を説得する理と言葉を持った改革だけが勝ち残るという改革の原点を、改めて思い起こさせた国会の幕切れであった。
(2) 平成16年当時の,弁護士報酬等の敗訴者負担制度に関する法務省の資料を以下のとおり掲載しています。
1月15日付1月22日付1月28日付及び2月5日付
 平成16年の裁判所法改正に関する日弁連の会長談話
・ 平成16年12月3日付の日弁連の会長談話(第161回臨時国会の終了にあたって)には,以下の記載があります。
   本日、第161回臨時国会が会期満了により終了した。今国会において審議された司法制度改革に関連する法案のうち「裁判外紛争解決手続の利用の促進等に関する法律案(ADR法案)」及び「裁判所法の一部を改正する法律案(司法修習生への給費制廃止)」の2法案は可決成立し、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(弁護士報酬の敗訴者負担制度)」は廃案となった。今臨時国会は、司法制度改革推進本部の設置期限が平成16年11月末とされたその最終の国会であり、今次司法制度改革における立法は基本的に完了した。
   日本弁護士連合会は、今次司法制度改革における諸立法により、主権者である国民が裁判官とともに裁判に参画する裁判員制度の創設、被疑者国選弁護制度の創設、利用者である市民が利用しやすい裁判所、日本司法支援センターなどの弁護士へのアクセスの制度及びこれらを支えるべき法曹制度と法曹養成の制度が整備されたことを心から歓迎するものである。

第7 関連記事その他
1 就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべきとされています(最高裁平成28年2月19日判決)。
2(1) 憲法14条は,もとより合理的理由のある差別的な取扱いまでをも禁止するものではありませんから,国有農地等の売払いに関する特別措置法(昭和46年4月26日法律第50号)の立法に合理的理由がある以上,たとえ前記のように国に対して当該買収農地の売払いを求める権利を取得した者について,同法の施行日前に売払いを受けた場合と同法の施行日以後に売払いを受ける場合との間において差別的な取扱いがされることになるとしても,これをもって違憲であるとすることができません(最高裁大法廷昭和53年7月12日判決)。
(2) 村長が特定の者に対しその者が村内で行う工場の建設・操業に全面的に協力することを言明し,村有地を工場敷地の一部として提供する旨の村議会の議決を経由したうえ積極的に工場建設を促し,右特定の者は右協力が継続するものと信じて工場敷地の確保・整備、機械設備の発注等を行い,村の側もこれを予想していたなど,判示の事実関係のもとにおいて,右工場建設に反対する村民の支持を得て当選した新村長が,右特定の者に生ずべき多額の積極的損害について補償等の措置を講ずることなく,右工場建設の途中でこれに対する協力を拒否した場合には,右協力拒否は,やむをえない客観的事情が存するのでない限り,右特定の者に対する違法な加害行為たることを免れません(最高裁昭和56年1月27日判決)。
3 以下の記事も参照して下さい。
・ 司法修習生の給費制に関する,平成10年の裁判所法改正
・ 給費制を廃止した平成16年の裁判所法改正の経緯
→ 大分地裁平成29年9月29日判決の「平成16年改正に至るまでの経緯」からの抜粋です。
・ 司法修習生の給費制に関する,平成22年の裁判所法改正及びその後の予算措置
・ 司法修習生の身分に関する最高裁判所事務総局審議官の説明
 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金

司法修習生の給費制に関する,平成10年の裁判所法改正

目次
1 平成10年の裁判所法改正に至るまでの経緯
2 平成10年の裁判所法改正の内容
3 司法修習生に対して給与が支給される根拠と裁判所法67条2項の改正の趣旨
4 内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)
5 関連記事その他
   
1 平成10年の裁判所法改正に至るまでの経緯
(1)   法曹養成制度等改革協議会は,平成7年11月13日付の意見書において,以下の提言を行いました。
① 司法の機能を充実し国民の法的ニーズに応えるため,中期的には年間1,500人程度を目標として合格者増を図り,かつ,修習期間を大幅に短縮することを骨子とする改革を行い,これに伴って,両訴を必須科目化し,口述試験の見直しを行うことを内容とする司法試験制度の改革を行うべき(多数意見)。
② 今後,法曹三者は,司法試験制度及び法曹養成制度の抜本的改革を実現させるため,直ちに協議を行い,速やかに具体的な方策を採らなければならない。
(2) 最高裁判所,法務省及び日弁連の法曹三者は,平成9年10月28日付けの「司法試験制度と法曹養成制度に関する合意」として,以下の合意を成立させました(「三者協議会における合意について」参照)。
① 司法試験合格者を,平成10年度は800人程度に,平成11年度から年間1,000人程度に増加。
② 司法修習制度について,21世紀を担うにふさわしい法曹を養成するため,修習の内容及び方法について配慮と工夫を行うとの観点に立って,平成11年度に始まる司法修習から修習期間を1年6ヶ月とし,司法研修所における修習では,社会に存在する多様な法的ニーズについての基本的な情報を提供するとともに,法曹としての識見,法曹倫理等の習得を図り,また,実務修習では,社会の実相に触れさせる機会を付与する。
③ 司法試験制度について,平成12年度の第二次試験から,論文式試験の科目につき,憲法,民法,商法及び刑法の4科目に加え,民事訴訟法及び刑事訴訟法を必須科目とし,受験者の負担軽減の観点から,法律選択科目を廃止する。また,受験者の負担軽減等の観点から,口述試験の科目を,論文式試験の科目のうち商法を除く5科目とする。
④ 論文式試験における合格者の決定方法,司法試験合格者の年間1,500人程度への増加及び法曹資格取得後の研修の充実などについて,引き続き協議を行う。

2 平成10年の裁判所法改正の内容

   裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)による改正後の裁判所法67条2項は,「司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。ただし、修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については、この限りでない。」となり,第53期司法修習生以降については,司法修習の期間が1年6月となるとともに,二回試験の合格留保者に対する給与の支給が廃止されることとなりました。
   
3 司法修習生に対して給与が支給される根拠と裁判所法67条2項の改正の趣旨
(1) この点に関する法務省の説明は以下のとおりです(平成10年2月4日付の法務省文書参照)。
① 戦後の新憲法の下においては,法曹一体の要請から,法曹養成制度が統一され,裁判官,検察官又は弁護士のいずれを志望するによせ,司法修習生として少なくとも2年間同じ司法修習を経なければならないものとされた。これは,国が責務として,民主国家の実現のため,裁判官及び検察官の志望者だけでなく弁護士志望者に対しても,それらの職責の重要性に鑑み,司法修習生を,将来の日本の司法を支えるべき人材として養成すべきものであるとの考えにたつものであり,このような国の責務としての法曹要請の一環として,司法修習生に対しては,その修習期間中,給与が支給されることとなったものである(裁判所法67条2項)。
② ところで,現在,修習生に対する給与については,所定の2年間の修習期間のみならず,その修習期間経過後も,例えば,二回試験を受験したが合格留保となった者に対しては,追試により合格して修習を終了するまでの間,これが支給されている。
③ しかし,司法修習生に対する国庫からの給与の支給の根拠が上述したところにあり,国は,司法修習生において法曹として求められる水準に到達するのに必要な一定の修習内容・期間を定めて修習をさせ,国民の負託を受けて国として行うべき法曹要請の責務を果たしているものである以上,その一定の期間内において所定の課程を履践しながら,当然に到達すべき水準に達し得なかった者,すなわち自己の責任により合格留保となった者等に対して,その後においてもなお給与の支給を続けることは必ずしも国民の負託にこたえるものとはいえない。そこで,今回の改正により,上記1の司法修習生に対する給与支給についての考え方自体はこれを当然に維持しつつ,国が法曹養成におけるその責務を果たす限度において,すなわち,最高裁判所が修習のため通常必要な期間として定める期間内においてのみ給与の支給を行うこととするものである。なお,通常必要な期間とは,具体的には,司法修習のカリキュラム開始日から終了日までの期間をいう。
(2) 22期の山崎潮 法務大臣官房司法法制調査部長は,平成10年4月10日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① まず結論から申し上げますと、現在、二回試験を受けまして、合格留保と言っておるわけでございますが、残念ながら受からなかった人でございますけれども、そのまま修習生の身分を継続いたしまして、追試の機会がございます。その追試の機会で合格すればそれで卒業するんですが、そのときまで給与の支給を受けております。
 今回は、そういう関係からいきますと、通常二回試験を受けまして、新制度では一年六月、約一年六カ月になるわけでございます。もちろん、その期間については若干年によって出入りがございますので、最高裁判所の方で定めるわけでございますが、そこの期間を過ぎたら、今度は修習生の身分は残りますけれども給与は出ない、こういうふうに変わるわけでございます。
② (山中注:司法修習生の給与が)どういう理由で出るのかということでございますけれども、やはり法曹というのは非常に公的な仕事でございますから、大事なものですから、給与を支給して修習に専念をさせるということになるのだろうと思うのです。
   
4 内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)
   裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)に関する,内閣法制局の法律案審議録(法務省開示分)を掲載しています。
   
5 関連記事その他
(1) 28期から52期までの二回試験の場合,不合格により罷免された司法修習生はいなかったのに対し,69期以降の二回試験の場合,不合格発表の翌日にある最高裁判所裁判官会議の決議をもって,「令和◯◯年度(第◯◯期)司法修習生考試不合格者名簿」登載の者は全員,同日付で一律に罷免されるようになりました(「二回試験不合格時の一般的な取扱い」参照)。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の給費制に関する,平成16年の裁判所法改正
・ 給費制を廃止した平成16年の裁判所法改正の経緯
・ 司法修習生の給費制に関する,平成22年の裁判所法改正及びその後の予算措置
 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金

昭和22年の司法修習生の給費制導入

目次
1 制定当時の裁判所法
2 裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律の制定及び廃止
3 昭和22年の給費制導入に関する国会答弁
4 関連記事その他
   
1 制定当時の裁判所法
   制定当時の裁判所法(昭和22年4月16日法律第59号)(昭和22年5月3日施行)(リンク先の「閲覧」タブをクリックすれば,御署名原本を閲覧できます。)は,司法修習生の給費制について以下のとおり定めていました。
第67条(修習・試験)
① 司法修習生は、少なくとも二年間修習をした後試験に合格したときは、司法修習生の修習を終える。
② 司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。
③ 第一項の修習及び試験に関する事項は、最高裁判所がこれを定める。

2 裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律の制定及び廃止
(1) 裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律(昭和22年4月17日法律第65号)(昭和22年5月3日施行)(リンク先の「閲覧」タブをクリックすれば,御署名原本を閲覧できます。)は,司法修習生の給費制について,昭和22年12月31日までの応急的措置として,以下のとおり定めていました。
   そのため,司法官試補(「司法官採用に関する戦前の制度」参照)が昭和22年5月3日に高輪1期又は高輪2期の司法修習生に切り替わった時点で(裁判所法施行令18条参照),司法修習生の給費制が導入されたこととなります。
第8条
①   司法修習生の受ける給与の額は、当分の間、最高裁判所の定めるところによる。
② 前項の給与については、第五条及び第六条の規定を準用する。
③ 司法修習生には、第一項の給与の外、当分の間、一般の官吏の例による給与を支給することができる。
第9条
    裁判官の報酬及び司法修習生の給与等に関する細則は,最高裁判所がこれを定める。
(2)   裁判官の報酬等に関する法律(昭和23年7月1日法律第75号)(俸給その他の給与(旅費は除く。)の額に関する規定は昭和23年1月1日に遡及して適用されたことにつき同法付則1項)により,裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律は廃止されました。
    しかし,同法第14条は,「裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第六十五号)は、これを廃止する。但し、司法修習生の受ける給与については、なお従前の例による。」と定めていましたから,司法修習生の給費の金額については暫定措置のままとなりました。
   
3 昭和22年の給費制導入に関する国会答弁
(1) 木村篤太郎司法大臣は,昭和22年3月28日の貴族院本会議において以下の答弁をしています。
    第六十七條第二項は司法修習生には國家から一定額の給與をすることと致して居りますので、此の規定に基きまして此の法案(山中注:裁判官の報酬等の應急的措置に関する法律案)を提出した次第であります、國内の治安を確保し、國民の權義を保全する重大な使命を擔うて居りまする裁判官に對しまして、其の地位を保つに足るだけの報酬を支給しなければならぬと云ふことは、是は申す迄もないことであります、併しながら經濟状勢は尚不安定な状態にありまするし、又目下政府に於きましても、官吏全體の給與改善に付きまして鋭意研究中でありまするので、暫定的の措置と致しまして、最高裁判所長官の報酬の額は、内閣總理大臣の俸給の額と同額とし、最高裁判所判事の報酬は、國務大臣の俸給の額と同額とすると定めました外に、其の他の裁判官及び司法修習生の報酬又は給與に付きましては、それぞれ一定の枠を定めまして、其の枠の範圍内で最高裁判所が之を定めることと致したのであります、
(2) 22期の山崎潮内閣官房内閣審議官は,平成16年12月1日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
    まず、戦前の制度でございますけれども、この制度については余り記録がはっきり残っていないので断言はできませんけれども、いろんな資料から分かる範囲でお答えを申し上げます。
    まず、そのすべての司法官試補、これに給与が支給されていたのかどうかという点も、支給されていなかったというふうに発言されている方も、そういう方もいたという発言もございまして、ここも余り定かではございません。それからまた、支給されていた理由についてもなかなかこれはっきりしたものはございません。
    ただ、その司法官試補は、官選弁護人、今の国選弁護人と同じでございますけれども、それとして刑事弁護を行うなど、現在の司法修習生とは権限がどうも異なっていたという点が一つございます。それから、当時は、裁判官やあるいは検察官、こういうふうになる者に対しては国から給与を支給するということは当然だと考えられていたと、そういうような発言をされている方もおられるわけでございまして、そういうことでこのような制度が設けられていたというふうに理解をしております。
    それから、戦後ですが、これが理念が変わったという点につきまして、これも国会の議事録、余りはっきり言っているものがないわけでございますけれども、基本的には、その給費制は法曹の職務の重要性にかんがみまして、司法修習生が生活の基盤を確保して修習に専念することができるようにして、その修習の実効性を確保するための一つの方策として採用されたというふうに理解をしております。
    ただいま御指摘の、非常に公的な仕事をこれからやっていくじゃないかという点についてはそのとおりでございまして、したがいまして、国庫で修習を行うと、この理念は非常に大切であるということでずっとこれは守っていきたいということでございますし、今後もそういう点は続けていきたい。ただ、給与を支給するか貸与にするかというのはまた別の配慮で行っていくと、こういうことでございます。

4 関連記事
・ 司法修習生の給費制に関する,平成10年の裁判所法改正
・ 司法修習生の給費制に関する,平成16年の裁判所法改正
 給費制を廃止した平成16年の裁判所法改正の経緯
→ 大分地裁平成29年9月29日判決の「平成16年改正に至るまでの経緯」からの抜粋です。
・ 司法修習生の給費制に関する,平成22年の裁判所法改正及びその後の予算措置
・ 司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等
 司法修習生の給費制,貸与制及び修習給付金

選択型実務修習の運用ガイドラインQ&A

○以下の記載は,平成18年9月1日当時の選択型実務修習の運用ガイドラインQ&Aを丸写ししたものです。
○Q&Aには,「選択型実務修習 参考書式集」が添付されています。
○Q&A19については,自己開拓プログラムにおいて弁護士事務所を修習先とすることの可否について(平成19年6月22日付の司法研修所長通知)によって修正されています。

Q1 「選択型実務修習の運用ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)」とはどのような性質のものか。
A ガイドラインは,指導要綱(甲)第2章第2の2に基づいて,選択型実務修習の実施に関する細則を定めたものです。
   したがって,ガイドラインの枠組みの範囲内で選択型実務修習を実施していただくことになります。この枠組みの範囲内で各庁における運用の指針や実施細目を作成することはもとより差し支えありません。

第1 修習地
Q2  「配属修習地以外での修習の期間は3週問を限度とする」のはなぜか。
A 選択型実務修習は,配属修習地における分野別実務修習の成果の深化と補完を図ることを第一次的な目的としており,また実務修習は,実務修習を委託した地で行うものとしている本来的な趣旨からすると基本的には配属修習地で修習すべきものと考えられるからです。
   したがって,選択型実務修習2箇月間のうち,配属修習地における修習が,少なくとも半分を超えるべきであると考えられ,配属修習地外における修習は3週間を限度とすることとしました。
Q3 「配属修習地では履修が不可能な修習内容」とはどのようなものか。
A 制度的に,履修が不可能な場合をいいます。
   例えば,裁判修習では,法律上,専属管轄とされ,東京・大阪の各地裁にしか係属していない特許権,実用新案権等のいわゆる知的財産権に関する訴訟の事件処理について修習しようとする場合がこれに当たり,全国プログラムとして提供され,,配属修習地を離れて修習することができます。これに対し,医療,労働の分野など,各配属修習地で修習できるものについては,配属修習地では履修が不可能な場合には当たらないので,それらの集中部や専門部制をとっている庁における修習をするために,配属修習地を離れることはできません。
   検察修習についても,裁判修習と同様であり,上記のような集中部,専門部制をとっていない庁で修習している場合に,そうした部制をとっている他庁でのその種の事件処理の修習をするために配属修習地を離れることはできません。
   したがって,裁判修習及び検察修習については,全国プログラムとして提供される修習内容を修習するときに限り,配属修習地外で修習することができます。
   弁護修習については,法制上履修が不可能な修習内容という概念は想定しえないこと,また,そうした制限を設けることも相当ではないので,全国プログラムとして提供されているもの及び自己開拓プログラムについて,配属修習地以外で修習できます。
   なお,単に修習を希望する分野の事件が当該配属修習地において希少なことにより修習が事実上困難な場合や,単に事件数が多いということで大規模庁での修習を希望する場合などは,配属修習地以外で修習できる場合に該当しません。
Q4 外国での修習を当面認めないのはなぜか。
A 弁護士会会長による監督の限界という問題があるほか,選択型実務修習の趣旨・目的に適うような外国における修習の在り方については,現時点においては,なお調査,検討すぺき点が多いと考えられるからです。

第2 修習先
Q5 ホームグラウンドは,原則として,分野別実務修習で配属された弁護士事務所とするのはなぜか。
A 分野別実務修習の期間における裁判修習と弁護修習のバランスの調整及び今後の弁護士業務の多様化に対応する観点から,選択型実務修習を制度的に弁護士実務に比重を置いたものとする必要があるところですが,その際には弁護修習の際に配属された弁護士事務所を本拠地(ホームグラウンド)とするのが最も適当と考えられるからです。
Q6 「ホームグラウンドにおける弁護修習は,選択型実務修習の期間中,最低1週間は継続して行わなければならない。」とあるが,継続は絶対的な条件か。
A 少なくとも1週間は継続することで充実した弁護修習を行い,選択型実務修習を弁護士実務に比重を置くものとする制度趣旨を全うしようとするものです。
   しかし,各司法修習生の個別修習プログラム等の選択の方法によっては,1週間継続してホームグラウンドで弁護修習を行うことが困難な場合が生じることも考えられるので,個別具体的な事情に鑑みて,1週間継続することを絶対的な条件とするわけではありません。
Q7 「選択型実務修習の2箇月間を通じてホームグラウンドでの弁護修習を行うこと」 につき「相当な理由」がある場合とはどのような場合か。
A 例えば,配属先の弁護士事務所(ホームグラウンド)に大きな倒産事件が係属した場合,民事の大規模事件で集中証拠調ぺが予定されている場合,刑事事件で公判前整理手続や裁判員制度下の集中的な審理等が予定されている場合等,司法修習生が選択型実務修習の2箇月間を通して,ホームグラウンドで修習することが,分野別実務修習の成果の深化と補完を図るという選択型実務修習の目的から相当な理由 があるといえるような場合です。
Q8 「分野別実務修習で配属された弁護士事務所以外の弁護士事務所をホームグラウンドとしなければならない事情」とはどのような場合か。
A 分野別実務修習で配属された弁護士事務所の指導担当弁護士の死亡や病気,他の弁護士会への登録替え等の事情により,指導担当弁護士の指導が期待できなくなるような場合をいいます。
Q9 弁護士事務所の狭隘や,一度に複数の司法修習生を受け入れるこどが困難であることを理由として,ホームグラウンドを他の弁護士事務所に変更することは認められるか。
A 基本的には認められません。
   弁護士事務所の司法修習生用の机と椅子を入れるスペースがなく一組しか入らないような場合には,打合せ用の机等を使うなど,備品面では柔軟な対応をする必要があります。 また,個別修習プログラムの選択の仕方などで工夫する余地もあるでしょう。
   なお,事務所の建て替え等により,極端に狭隘の状況にあるなど,個別の事情によっては,弁護士会会長等の判断によって他の弁護士事務所に変更することもやむを得ないと思われます。
Q10 ホームグラウンドとなる弁護士事務所が,司法修習生の就職予定先であった場合の取扱いをどうすべきか。
A 就職予定先で弁護修習をすることは,選択型実務修習の期間を試用期間として活用しているのではないかとか,就職予定先弁護士事務所が司法修習生を修習の範囲を超えて事実上弁護士業務に従事させているのではないかなどといった批判があり得るところです。しかし,弁護士会の実情によっては代替事務所の確保が困難であったり,仮に代替事務所が確保できたとしても,その弁護士と司法修習生の間で新たに信頼関係を形成しなければならないとするのは他の司法修習生と比ぺても酷であるなどの面もあります。
   このようなことから,就職予定先弁護士事務所をホームグラウンドとすることを禁止することまではしていませんが,ホームグラウンドの弁護士事務所が就職予定先である場合には,配属された司法修習生に個別修習プログラムを積極的に選択するよう指導する等により,前記の弊害を防止する配慮をしていただく必要があります。
   なお,ガイドライン第3の5のとおり,個別修習プログラムとしての弁護修習先として,就職予定先の弁護士事務所を選択することはできません。これは,前述の弊害が生ずるおそれがより大きくなることを考慮してのものです。
Q11 修習プログラムについて,ガイドライン別紙に掲げるものをすべて用意しなければならないか。
A ガイドラインは選択型実務修習の実施に関する枠組みを定めたもの(Ql参照) ですから,別紙に掲げられているプログラムをすべて用意しなければならないということではありません。
   別紙のプログラムは,おおむねどの配属庁会でも実施が可能なプログラムを例示していますが,特に弁護士会が提供するプログラムは,各弁護士会によって実情は様々であり,ガイドラインに記載したものの一部を用意したり,あるいは別紙に掲げられていないプログラムを設けることも差し支えありません。
Q12 現行型司法修習において,社会修習として実施されている見学ないし体験を個別修習プログラムとする場合,その修習内容を「法曹の業務と関連を有するものとなるよう配慮する。」としたのはなぜか。
A 新司法修習では,法科大学院教育との連携を前提として,法曹としての基本的なスキルとマインドの養成に焦点を絞った教育を行うものとされておりますので,設間のような個別修習プログラムを設定するときは,それが「スキルとマインド」の養成を目的としたもので,換言すれば「法曹の業務と関連を有するもの」でなければならないとしたものです。
Q13 現行型司法修習において社会修習として実施されているもので,法曹の業務と関連を有するものとは具体的にどのようなプログラムが考えられるか。
A 現行型司法修習において社会修習として実施されている見学等のうち,刑務所等の刑事施設や少年院等の更生保護施設,あるいはADRの見学等は,法曹の業務との関連性があるものと考えられます。
   また,社会の実相に触れるものとして実施してきた福祉施設等における社会修習については,法曹の業務と関連する事項をテーマとする個別修習プログラムとして提供し,その一環として施設見学等を実施するのであれば可能です。例えば,弁護士として関与すべき専門分野として「高齢者・障害者に関する法律問題」を個別修習プログラムとして提供し,講義や問題研究を組み込んだ上で,そのカリキュラムの一環として,福祉施設の見学等をすることが考えられます。
   これに対し,法曹の業務と関連性が薄いもの(例えば,ホテルの従業員,デパートの店員のー日体験等)は個別修習プログラムになり得ないことになります。
Q14 全国プログラムについて,ガイドラインに掲げるもの以外は考えていないのか。
A 当面は,全国プログラムの性質上,一度に多人数を受け入れることの可否等を勘案し,着実に実施できるものと考えられるところから始め,ガイドラインに掲げた全国プログラムについてのみ,実施することとなります。
   将来的には,今後検討の上,全国プログラムとして実施することが相当なものがあれば,順次採用・提供をしていくことになると思われます。
Q15 高裁,高検,連合会単位等一定地域の司法修習生を対象とする修習プログラムは提供できないのか。
A 選択型実務修習は新しい試みであり,地域の実情に応じた実現可能なものから始め,徐々に豊かな内容に育てていく必要があります。このため,将来的には,設間のような修習プログラムをー定の要件等を設けて行う可能性はあると考えています・が,まずは,配属修習地における個別修習プログラムを着実に実施することが肝要であるため,高裁,高検,連合会単位等ー定地域の司法修習生を対象とする修習プログラムは当面行わないこととしています。
Q16 自己開拓プログラムを「法曹の活動に密接な関係を有する分野」に限るのはなぜか。
A 自己開拓プログラムは,あくまで選択型実務修習のー環として個別修習プログラムや全国プログラムでは提供されない分野での修習についてその選択の幅を広げるために認めるものですから,それは法曹としての基本的なスキルとマインドの養成を図るのに有意義な分野における修習である必要があるからです。
   したがって,「法曹の活動に密接な関係を有する分野」とは,法曹の活動そのものではないが,法律的業務や法律と関連した問題を扱う業務(具体例はQ17参照) に関する分野がこれに該当します。
Q17 自己開拓プログラムの修習先として,「民間企業の法務部,地方自治体の法務関係部門等」とあるが,ほかにどのような部門が考えられるカ、
A 例えば,司法書士事務所,弁理士事務所,税理士事務所,不動産鑑定士事務所及び土地家屋調査士事務所などのいわゆる隣接職種,民間ADR機関,報道機関の社会部などが考えられます。
Q18 就職予定先である弁護士事務所の顧間先である企業の法務部を自己開拓プログラムの修習先とすることは可能か。
A 特に禁ずるものではありませんが,専ら就職予定先の弁護士が関与する事件の修習をするなどの事実上の弁護士業務を行ったり,実質的に試用期間的な内容の修習を行ったりしないような配慮をする必要があります。
Q19 自己開拓プログラムの修習先として,弁護士事務所は認められるカ、
A 分野別実務修習における司法修習生の弁護士事務所への配属は,弁護士会及び司法修習生指導連絡委員会(Q20参照)の管理下にあることが制度上予定されています。また,選択型実務修習中は,分野別実務修習で配属された弁護士事務所をホー ムグラウンドとするとしています。しかし,設間のような事例は,弁護士と司法修習生との合意により,修習先としての弁護士事務所が定まることになり,これは制度の予定していないところです。
   将来的に,選択型実務修習の運用の実情,特に個別修習プログラム,全国プログラムとして提供される弁護士事務所の状況等によっては,弁護士事務所を自己開拓プログラムの修習先として認める余地もあり得なくはないところですが,少なくとも当面は,選択型実務修習が開始当初であり,今後の運用状況を見極める必要もあることから,自己開拓プログラムの修習先としての弁護士事務所は,認められません。
Q20 司法修習生指導連絡委員会(以下「指導連絡委員会」という。)とは何カ、
A 配属庁会においては,司法修習生の指導に関して相互に連絡をとり,また司法研修所と緊密な連携を保つため,配属修習地ごとに指導連絡委員会を設ける,とされています。
   指導連絡委員会は,修習の効果を上げるため,分野別実務修習の内容,順序,選択型実務修習の実施,修習に関する費用の使用方法等について連絡協議をすることになっており,(以上につき,「司法修習生指導要綱(甲)」第6参照)主に配属庁会の長と修習指導担当者により構成されます。
   選択型実務修習は,弁護士会に委託するものの,その策定手統は,各配属庁会に跨ることから,プログラムの提示,審査等いずれの手続も,指導連絡委員会が行うことになります。
Q21 自己開拓プログラムの修習先として妥当かどうかの判断について,司法研修所の協議窓口はどこか。
A 司法研修所事務局企画課企画第二係ですが,原則として各指導連絡委員会の判断に委ねられておりますので,妥当性の判断についての事前の協議は,判断が困難な場合にのみ行うこととしてください。
   なお,具体的な判断事例や承認した修習先については,司法研修所に報告していただき,各指導連絡委員会ヘフィードバックしていきたいと考えていますので,その場合の相談窓口も司法研修所事務局企画課企画第二係となります。

第3 指導監督体制
Q22 なぜ選択型実務修習は弁護士会に委託して行い,司法修習生に対する監督は弁護士会会長に委託するのか。
A 選択型実務修習は,制度的に弁護修習に比重を置いたものとするとしていることから,ホームグラウンドを弁護士事務所としたものです(Q5参照)。
   したがって,その実施は,弁護士会に委託して行い,司法修習生に対する指導監督も弁護士会会長に委託することが適当と考えられるからです。
Q23 裁判所や検察庁でのプログラムを修習している場合や,自己開拓プログラムの修習先で民間企業や自治体で修習している場合も,弁護士会会長が監督するのか。
A 裁判所や検察庁でのプログラム(全国プログラムを含む。)で修習している場合や,自己開拓プログラムの修習先で修習している場合であっても,監督権者は,配属修習地の弁護士会会長となります。          例えば,この監督権が働く場面としては,司法修習生に関する規則で規定する報告に関するもののほか,「司法修習生の規律等について」に定められた司法修習生からの身上変更届及び緊急連絡先の届出の受理事務がありますが,これらはまさに前記監督権に基づくものとして,弁護士会が直接司法修習生との間でやりとりをすることになります。
   これに対し,当該プログ‘ラム修習中における司法修習生の行状等に問題がある場合や,外国旅行申請及び欠席承認申請等,弁護士会会長が申請に対してその許否をすべき性質の事務については,個別修習プログラムの提供先の指導担当者等ないし事務局が,弁護士会(長)の補助者的な地位で協カをしたり,受理の窓口となってもらうことが相当です(欠席承認申請につき,Q24参照)。
   なお,自己開拓プログラムの修習先及び全国プログラムの修習先の場合は,個別修習プログラムのような監督の補助を修習先に求めるのは相当ではありませんから,弁護士会会長が直接監督権を行使することになります(なお,全国プログラムを提供する裁判所・弁護士会等(以下「全国プログラム提供者」という。)が必要に応じて,弁護士会会長の補助者として,協カすることを妨げるものではありません。)。
Q24 選択型実務修習中の欠席管理は,どのように行うのか。
A.① 個別修習プログラムの場合
   裁判所や検察庁での個別修習プログラムの修習中に欠席を要する事由が生じた場合には,司法修習生には,個別修習プログラムの提供先の事務局に欠席承認申請書を提出させ,当該プログラムの指導担当責任者にその事実を連絡した上,速やかに弁護士会に送付します。
   個別修習プログラムの場合,配属庁会が近接していることや,個別修習プログラムの提供者は司法修習生の欠席処理事務に慣れていること及び司法修習生の利便性を考慮すると,前述の処理が相当であると考えられます。
② 全国プログラム及び自己開拓プログラムの場合
司法修習生に全国プログラム郷t者又は自己開拓プログラムの修習先へ欠席する旨を連絡させ,かつ,欠席承認申請は配属修習地の弁護士会に提出させることになります。なお,提出方法はファクシミリ送信による方法でも可能とします。
   全国プログラム及び自己開拓プログラムについては,その提供先が必ずしも裁判所,検察庁又は弁護士会ではないため,前述の個別修習プログラムの場合のような申請の窓口の役割を担わせることは先方へ負担をかけ,また,混乱が生じる可能性があること及び配属修習地の弁護士会と修習先が場所的に離れていること等を考慮すると前述の処理が相当であると考えられます。

第4 修習プランの策定手続
Q25 個別修習プログラムの日程については,各プログラムの提供者が自己の都合だけで作成してよいか。
A ―定の時期にプログラムが集中してしまうことのないよう,指導連絡委員会を通じて,各々の提供するプログラムの日程調整を行ってください。
Q26 司法修習生全員に対する必修の個別修習プログラムを策定することは可能か。
A 選択型実務修習は司法修習生が主体的に選択することを主眼としたものですから,必修の個別修習プログラムの策定はできません。
   もっとも,司法修習生がプログラムを選択するに当たり,ー定のパターンのプログラムの組み合わせを提案したり,選択に迷っている司法修習生に対し,特定の個別修習プログラムの存在を示唆したりするなど,司法修習生の主体的な選択を害することのない範囲で指導・助言することはもとより差し支えありません。
Q27 個別修習プログラムは,日単位で策定することも可能か。
A 1つのプログラムの日数の合計が1週間となる組み合わせのプログラムの策定は可能であるとは考えられますが,例えば,5週間のうち毎週月曜日とするようなプログラムを設定してしまうと,他の個別修習プログラムとの競合が極めて起きやすくなり,選択の幅を狭める結果になることから望ましくはありません。
Q28 随時日程が入る事件を個別修習プログラムとして提供できるか。
A 弁護修習における特殊事件(保全,民事執行,倒産,行政,労働,家事,少年等の事件)及び弁護士として関与すべき専門分野(消費者問題,サラ金・クレジット問題,民事介入暴カ,.交通事故,子どもの人権,高齢者・障害者問題,犯罪被害者支援などのほとんどの弁護士会で対応可能な分野)や弁護士会活動,弁護士倫理等に関する修習については,登録制にしておき,適する時期,事件が判明したとき, 弁護士会が司法修習生に担当弁護士を割り当てるという方法が考えられます。 その場合には,他の個別修習プログラムとの競合等の問題も生じることから,ホー ムグラウンドでの修習の時期に割り当てる等の工夫が必要です。
Q29 全国プログラムの提示手続はどうなるの力、
A 司法研修所が全国プログラム提供者と配属庁会の仲介をします。概要は,「選択型実務修習イメージ」(別紙I)のとおりです。
   なお,応募に際し申込書と共に司法修習生から各配属庁会の指導連絡委員会に提出された関係資料は,同委員会から全国プログラム提供者に直接送付します。
   提示は,第1クールの分野別実務修習を実施している配属庁会から個別修習プログラムと併せて司法修習生に配布する方法で行います。
Q30 全国プログラムが全体を通じてーつのプログラムしか応募できないのはなぜか。
A 全国プログラムは,全国プログラム提供者の都合で特定の期間における参加人員を限ったものにならざるを得ません。したがって,多くの司法修習生に参加の機会を与えるため,一つのプログラムしか応募できないものとしています。
Q31 全国プログラムについての司法修習生からの間い合わせについてはどこが対応するのか。
A 司法研修所事務局企画課企画第ニ係が窓口として対応します。
Q32 個別修習プログラムは,全国プログラムと同時に提示しなければならないか。
A 同時に提示することにより,司法修習生が,各プログラムの選択について,全体の期間を通じてのスケジュールを立てやすくなると考えていますので提供は同時にしてください。
Q33 個別修習プログラムの提示手続はどうなるのか。
A 提示手続は「選択型実務修習イメージ」(別紙1)のとおりです。
   なお,具体的な実施要領等の参考書式を示しますので,参考にしてください(参考書線1-i以下参照。)。
Q34 自己開拓プログラムの修習先から承諾を得るまでの手続はどうなるか。
A 自己開拓プログラムを希望する司法修習生は,修習先に,選択型実務修習及び自己開拓プログラムの趣旨を伝えた上,承諾書(参考書式集2-2参照)を得ます。 承諾書は,自己開拓プログラムの修習先での修習申出書に添付して,各配属庁会の指導連絡委員会に提出します。
   承諾書の内容は,自己開拓プログラムの修習先の代表者による,司法修習生が選択型実務修習を修習先で実施することについての承諾であり,記名・押印を求めることが相当です。

第5 応募
Q35 申込書の提出(応募の窓ロ)については,裁判所,検察庁,弁護士会それぞれに行うのか。
A 申込書の宛先は指導連絡委員会となりますが,具体的な申込書の提出については, 提出時点で各司法修習生が修習している各配属庁会の担当部署が窓口となります。 なお,申込書は各配属庁会がそれぞれとりまとめて相互に送付することになりますので,あらかじめ必要部数を提出させることでもよいと思われます。
Q36 全国プログラムの応募が,個別修習プログラムの応募に先立って実施されるのはなぜか。
A 選択型実務修習のプログラムは,分野別実務修習における成果の深化と補完を図ったり,分野別実務修習では体験できない専門的領域を修習するものが基本ですが,全国プログラムは,基本的に後者の目的を達成するために提供されるものです。 個別修習プログラムの多くは前者を目的としている性質上,分野別実務修習をおおむね経験した後でないと主体的な選択が困難であるのに対し,全国プログラムの選択については,そのような時期的な考慮をする必要性が低いことから個別修習プログラムに先立って,応募することとしています。また,全国プログラムは,受入可能人員に比べて応募数が多くなることも予想され,受け入れられなかった司法修習生が,その期間の個別修習プログラムを応募することにより,なるぺく多く選択ができるようにする必要があるとの理由もあります。
Q37 個別修習プログラムの募集に当たっては,必要があるときは複数のプログラムについて順位をつけて募集させることができるとしたのはなぜか。
A 希望をなるべく複数募ることにより,応募が集中して希望するプログラムへの受入れが認められず,ホームグラウンドでの弁護士事務所の修習しかできない司法修習生が生ずるのを,可能な限り防止し,司法修習生が主体的に修習内容を選択,設計できるようにするという選択型実務修習の在り方に資するためです。また,定員に満たないプログラムについて,追加募集することは事務処理にかけられる期間の点で不便が大きいことから(Q41を参照),それを避けるため,あらかじめ,司法修習生に,複数のプログラムに希望順位をつけて応募させる取り扱いができるものとしたものです。
Q38 個別修習プログラムは第4クールに応募することを原則とするのはなぜカ、
A 個別修習プログラムは,分野別実務修習における成果の深化と補完を図ったり, 分野別実務修習の課程では体験できない領域を修習することを目的としており,分野別実務修習を一通り経験した後でないとー般に選択が困難な面があると考えられるからです。
Q39 「応募の開始を前倒し(例えば,第3クールの前半終了時等)」することができるものとしたのはなぜか。
A 配属される司法修習生の人数や,プログラムの数などに鑑みて,第4クールに入ってから応募を受け付けていては事務処理が間に合わないと予想される場合など,その実施に支障を来すことが明らかな場合には,応募の開始を前倒しする工夫も必要と考えられるからです。
Q40 修習対象者の決定に当たり,修習希望者が定員を超えた場合の決定方法として 「抽選その他の公平な方法により」とあるが,具体的にはどのようなものカ、
A 抽選のほか,分野別実務修習の課程では体験できない領域における実務修習をする個別修習プログラムについては,当該分野についての基礎知臓等を有しているか否かを条件とすること(例えば,大学や法科大学院で一定の単位を修得していること,司法試験の選択科目を選択したことなど)が考えられます。
   また,分野別実務修習の深化を目的とする個別修習プログラムについては,分野別実務修習の成果や達成度などを考慮することも考えられます。その他,分野別実務修習では適当な事件の係属がなかったために経験できなかった修習がある場合 (例えば,他の班では保全事件の体験ができたが,別の班では体験できなかった場合など)に,優先的に修習させることもあるかと思います。
Q41 個別修習プログラムの追加募集を行う際の留意事項はあるか。
A プログラムの確定・実施までの期間が短いため,追加募集を行う場合もできる限り電話で通知をするなどの簡易な方法で迅速に実施するようにしてください。
   なお,複数のプログラムにつき順位をつけて応募させる運用を活用(Q37を参照。)することにより,追加募集を行わないことでも構いません。
Q42 修習計画書には何を記載させるか。
A 修習の目的のほか,選択型実務修習の全期間について,ホームグラウンドでの修習を含む修習プログラム,修習期間及び修習先を記載します。
Q43 修習計画書の「不相当な点」を判断するポイントは何か。
A 選択型実務修習の制度趣旨及びガイドラインを逸脱したものでない限り,司法修習生が作成した修習計画の内容を尊重することになります。
   判断するポイントとして,具体的には,配属修習地外の場所での修習期間が3週間を超えていないか,ホームグラウンドにおける弁護修習が最低1週間継続して計画されているか,2箇月間すべてをホームグラウンドで修習することに合理的な理由があるか等を確認することになります。
Q44 「不相当な点」があるとして是正を必要とする場合に,司法修習生が是正しない場合にはどうなるのか。
A 不相当な点の内容が全体に占める割合等にもよりますが,選択型実務修習の趣旨に適った修習をしなかったこととなります。

第6 修習成績の評価
Q45 司法修習生が修習の成果等を記載したレポートを提出してから弁護士会会長が修習の成果を評価するまでどのような手続になるのか。
A 「選択型実務修習結果報告の流れ」(別紙2)のとおりです。
Q46 修習の成果等を記載したレポートはどのようなものか。
A 修習のレポートは修習プログラムごとに作成することになりますが,各修習内容の成果及び感想を簡潔に記載し,修習先のプログラム指導担当責任者が記名・検印する程度のものを考えています(参考書式集3一1参照)。
47 個別修習先からの修習実績についてのコメントはどのようなものか。
A Q46のレポートとは別に,司法修習生が持参する選択型実務修習結果意見書(参考書式集1-7参照。)にコメントを記載してもらい,指導担当弁護士を介して弁護士会に直接送付してもらいます。
Q48 指導担当弁護士は,修習の成果について,弁護士会にどのような報告をすればよいか。
A 指導担当弁護士は,司法修習生から提出されたレポート,修習先のプログラム指導担当責任者からのコメントが記載された選択型実務修習結果意見書及びホームグラウンドでの修習全般を通じて意見を付し,弁護士会会長宛に送付します。
Q49 弁護士会会長は,司法研修所に対し,どのような報告をすればよいか。
A 弁護士会会長は,レボート,修習先及び指導担当者のコメントに基づいて,修習の成果を判断することになります‘司法研修所へは,司法研修所におけるクラスごとにその合否のほか欠席日数を報告します。また,特記すべき事項があればその旨付記します(別紙3参照)。
   なお,選択型実務修習結果の報告の通知に関する文書については,司法研修所長より,各弁護士会会長にします。
Q50 修習の成果の評価に関し,正当な理由のある欠席によりその間のプログラムを履修しなかった場合には,どのように評価するのか。
A 分野別実務修習,司法研修所における集合修習を含んだ全修習期間のうち病気その他の正当な理由によって修習しなかった45日以内の期間はこれを修習した期間とみなす(司法修習生に関する規則6条)ことになりますから,原則として計画が履修されたものとして,評価して差し支えありません。
   ただし,選択型実務修習期間中,修習を要する日の2分の1を超える欠席をした場合には,原則としてその評価は不可と取り扱う(司法修習生の規律等について第5の10)ことになります。

第7 その他
Q51 配属修習地外の修習地における修習(全国プログラム)をする場合,旅費,宿泊費等は支給されるか。
   自己開拓プログラムの修習先についてはどうか。
※未定
第8 自己開拓プログラムにおいて弁護士事務所を修習先とすることの可否について(通知)
   「自己開拓プログラムにおいて弁護士事務所を修習先とすることの可否について」(平成19年6月22日付の司法研修所長通知)には,以下の記載があります。
Q19 自己開拓プログラムの修習先として,弁護士事務所は認められるか。
A 分野別実務修習における司法修習生の弁護士事務所への配属は,制度上,弁護士会及び司法修習生指導連絡委員会(Q20参照)の責任の下に決定・運営されることになっており,また,選択型実務修習中は,分野別実務修習で配属された弁護士事務所をホームグラウンドとするとされており,設問のようなことを認めることは,当該弁護士事務所と司法修習生との合意により,修習先としての弁護士事務所が定まることを認めることになることから,上記のような制度上の仕組みやホームグラウンド事務所の趣旨に抵触し,原則として認められません。
   しかし,個別修習プログラム及び全国プログラムでは提供されていない領域や分野について,ホームグラウンドの弁護士事務所では十分な修習を行うことが困難であり,司法修習生が自ら開拓してきた弁護士事務所でその領域や分野についての修習をすることが可能でその意義があると明らかに認められる場合には,司法修習生指導連絡委員会による厳格な審査を経るなどした上で,これを例外的に許容する余地もあるものと思われます。日本司法支援センター(法テラス)の事務所及び公設事務所であれば,このようなものとして異論がないものと思われ,自己開拓プログラムの修習先として認めることは差し支えないと考えられます。
   ただし,この場合であっても,司法修習生が就職を予定している弁護士事務所を修習先とすることはできません。
(注)実施時期については,平成19年度11月期採用(新第61期)司法修習生からとします。

選択型実務修習の運用ガイドライン

○以下の記載は,平成18年9月1日当時の選択型実務修習の運用ガイドラインを丸写ししたものです。

第1 定義
   司法修習生指導要綱(甲)に定めるもののほか,このガイドラインの用語については,次のとおりとする。
1 裁判所,検察庁,弁護士会等が,選択型実務修習の期間中,司法修習生に対し提供するプログラムを総称して,修習プログラムという。修習プログラムは,次の各プログラムからなる。
(1) 個別修習プログラム
   修習プログラムのうち,司法修習生が配属された修習地の裁判所,検察庁及び弁護士会が提供するものであって,当該配属修習地の司法修習生のみが修習できるものをいう。
(2) 全国プログラム
   修習プログラムのうち,司法修習生が,配属修習地にかかわらず修習できるものをいう。
(3) 自己開拓プログラム
   司法修習生が,自ら修習先を開拓して設定し,修習するものをいう。
2 ホームグラウンド
   選択型実務修習の期間中,司法修習生が,修習プログラムを修習しないときに,弁護修習を行う弁護士事務所を,「ホームグラウンド」という。

第2 修習地
   選択型実務修習は,原則として,分野別実務修習における配属修習地で行うものとする。ただし,一定の期間及び修習内容に限り,配属修習地外で修習することができる。
   なお,外国での修習は,当面これを認めない。
○ 配属修習地以外での修習の期間は3週間を限度とする。
○ 当面は,配属修習地では履修が不可能な修習内容に限り,配属修習地外で修習することができるものとする(第3の3,4参照)。

第3 修習先
1 (ホームグラウンド)
   ホームグラウンドは,原則として,分野別実務修習で配属された弁護士事務所とする。
(1) ホームグラウンドにおける弁護修習は,選択型実務修習の期間中,最低1週間は,継続して行わなければならない。
(2) 相当な理由があれば,選択型実務修習の2箇月間を通じてホームグラウンドでの弁護修習を行うことができる。
(3) 分野別実務修習で配属された弁護士事務所以外の弁護士事務所をホームグラウンドとしなければならない事情がある場合には,ホームグラウンドを当該弁護士事務所に変更することができる。
2 (個別修習プログラム)
   分野別実務修習の配属庁会は,その地の実情もふまえながら,個別修習プログラムを提供する。
   その内容は,分野別実務修習における成果を深化させ,あるいはその補完を図るものや,分野別実務修習では体験できないか,十分な修習を行うことが困難な専門的領域を修習するものを基本とする。例えば,別紙のようなものが考えられる。
○ 現行司法修習において社会修習として実施されている見学ないし体験を個別修習プログラムとする場合には,修習内容が法曹の業務と関連を有するものとなるよう配慮する。
3 (全国プログラム)
   知的財産権訴訟の専門部での裁判修習,法務省における法務行政に関する修習(検察修習),又はいわゆる渉外・知財事務所での弁護修習等その修習の性質上特定の地域の配属庁会にしか提供できないようなプログラムについては,全国の司法修習生に当該プログラムを提供する。
4 (自己開拓プログラム)
   司法修習生は,民間企業の法務部,地方自治体の法務関係部門等法曹の活動に密接な関係を有する分野の修習先を自ら開拓することができる。
○ 司法修習生指導連絡委員会(以下「指導連絡委員会」という。)は,司法修習生が自ら開拓した修習先での実務修習について,後記第5の3のとおり,選択型実務修習の趣旨に適ったものかどうか,その適否について審査する。判断が困難なものについては,司法研修所と協議する。
○ 指導連絡委員会により実務修習先として承認されると,司法修習生は当該修習先において,自己開拓プログラムとして修習することができる。
5 司法修習生が就職を予定している弁護士事務所を,修習プログラムとしての弁護修習先とすることはできないものとする。

第4 指導監督体制
   選択型実務修習は,各配属修習地の弁護士会に委託して行い,司法修習生に対する監督は,当該弁護士会長に委託する。

第5 修習プランの策定手続
(個別修習プラグラム等の提示)
1 指導連絡委員会は,提供される修習プログラムの内容が確定し次第,司法修習生に対し,各配属庁会を通じて全国プログラム及び個別修習プログラムを提示する。
○ 選択型実務修習が2班に分かれて実施される場合(選択型実務修習から始まる班と集合修習から始まる班に分かれる。)であっても,司法修習生の修習計画の立案と指導連絡委員会による修習計画の審査手続は,両班とも同時に行う。
(応募)
2(1) 全国プログラム
・ 司法修習生は,まず,全国プログラムにつき,応募期日までに各配属庁会の指導連絡委員会に応募する(全国プログラムの修習を希望しない司法修習生は,個別修習プログラムにのみ応募すれば足りる。)。
・ 司法修習生は,全選択型実務修習期間(2箇月)を通じて1つのプログラムにのみ応募することができる。
・ 全国プログラムへの応募があった場合には,当該配属庁会の指導連絡委員会は,司法研修所に対し,その旨連絡し,司法研修所は,各全国プログラムの提供者に対し,全国の応募状況を連絡する(なお,条件審査のために必要な関係資料の送付については,応募を受けた指導連絡委員会から,各提供者に直接送付する。)。
・ 各全国プログラムの提供者は,できる限り早期に修習対象者を決定する。この際,各全国プログラムの提供者は,特定の全国プログラムにつき,応募者の前提知識・経験等(例えば,法科大学院や分野別実務修習で一定の基礎知識を習得していることを条件とするなど)を受入れの適否や優先順位を決定する際の条件とすることができる。
・ 各全国プログラムの提供者は,受入決定の結果を,司法研修所を通じて,各配属庁会の指導連絡委員会に通知する。
・ 全国プログラムを修習する修習対象者の決定は,おおむね第2クール終了時に終えるようにする。
(2) 個別修習プログラム
・ 司法修習生は,次に,各配属庁会の指導連絡委員会が提示した個別修習プログラムにつき,遅くとも分野別実務修習の第4クールが開始して一定期間経過後(例えば,1週間経過後)までに各配属庁会の指導連絡委員会に応募する。
・ 指導連絡委員会は,募集に当たって,司法修習生に,個別修習プログラムを適切に実施するため,必要があるときは,複数のプログラムについて順位をつけて応募させることができる。
・ 指導連絡委員会は,当該配属庁会に配置される司法修習生数等に照らし,上記日程での事務処理が困難と予想されるときは,応募の開始を前倒し(例えば,第3クールの前半終了時等)することができる。
(司法修習生が修習先を自ら開拓する場合)
3 司法修習生が自ら開拓した修習先での実務修習を希望する場合には,応募時に,当該修習先の概要を記載した書面及び修習先の発する司法修習生を受け入れる旨の書面等を書く配属庁会の指導連絡委員会に提出する。
   指導連絡委員会は,提出された書面その他の資料に基づいて,選択型実務修習の目的に沿うものかどうか,その適否について審査し,その結果を司法修習生に速やかに通知する。
○ 指導連絡委員会は,司法研修所に対して,審査後直ちにその結果を報告する。
(個別修習プログラムの修習対象者の決定)
4 各配属庁会は,提供する特定の個別修習プログラムについて,応募者が定員を超えた場合には,速やかに抽選その他の公平な方法により修習対象者を決定し,すべての個別修習プログラムにつき,受入れの可否について一定期間以内(例えば,個別修習プログラムの募集から2週間以内)に司法修習生に通知する。
○ 各配属庁会は,特定の個別修習プログログラムにつき,応募者の前提知識・経験等(例えば,法科大学院や分野別実務修習で一定の基礎知識を修得していることを条件とするなど)を受入れの可否や優先順位を決定する際の条件とすることができる。
(個別修習プログラムの追加募集)
5 各配属庁会は,定員に達していない個別修習プログラムがある場合には,追加募集をするなどして,修習対象者を追加することができる。
(確定)
6 司法修習生は,2から5までの手続きを踏まえ,選択型実務修習期間全体の修習計画を,分野別実務修習の全クールが終了するおおむね2週間前までに,各配属庁会の指導連絡委員会に提出する。
   各配属庁会の指導連絡委員会は,修習計画について本ガイドラインに照らし不相当な点があれば,司法修習生に対し,これに適合するよう修習計画を是正させる。
   修習計画の内容が確定すると,司法修習生はこの計画に従って修習する。

第6 修習成果の評価
1 司法修習生は,選択型実務修習終了時点において,修習の成果等を記載したレポートをホームグラウンドの修習指導担当弁護士を通じて弁護士会に提出する。
2 弁護士会長は,上記レポートのほか,修習指導担当弁護士及び各プログラムの修習先からの修習実績についてのコメントなどに基づいて,修習の成果を評価する。
○ 弁護士事務所以外の各プログラムの修習先の修習実績のコメントについては,司法修習生がプログラム提供先に所定の様式の報告書を持参し,プログラムの終了後に,当該提供先が報告書にコメントを記載し,弁護士会に送付する。
○ 修習の成果の評価については,修習内容に照らし,合否のみを判定することとし,立案した計画が履行されていれば合格とし,特に良好な成果を修めた者や,立案した計画の履行が不十分な者など,特記すべき事項があれば,報告書にその旨付記する。

第7 その他
    選択型実務修習が2班に分かれて実施される場合,修習地が東京及び大阪並びにそれら周辺の司法修習生については,集合修習から始まる班に,それ以外の修習地の修習生については,選択型実務修習から始まる班に分かれることを基本とする。

(別紙)
   各配属庁会が提供する標準的な修習プログラムの具体例
1 裁判所が提供するプログラム
(1) 通常事件修習   1箇月間程度
   分野別実務修習の深化を目的として,通常事件を扱う地方裁判所の民事部又は刑事部における修習
(2) 特殊事件修習   2週間程度
   特殊事件(保全,民事執行,倒産等の事件)を扱う地方裁判所の部において行う民事裁判修習
(3) 家庭裁判所修習   2週間程度
   家庭裁判所において行う家事・少年事件の修習
2 検察庁が提供するプログラム
(1) 捜査・公判補完修習(A)   1箇月間
   身柄事件の取調べ,事件処理,公判請求事件の立証計画や,公判提出書類の起案,証人尋問準備や,控訴審議の検討など,分野別事務修習の補完と深化を目的とする修習
(2) 捜査・公判補完修習(B)   2週間
   同上
(3) 刑事関連施設等見学修習   1週間
   分野別実務修習で実施しない刑事関連施設見学や矯正・保護の実情に関する知識を深化させることを目的とする修習
(4) その他
   (3)の見学修習の希望者が多いときには,2回に分けて実施することも必要で,その場合の予備の1週間に当てることができるほか,各地方検察庁の実情や所属する検察官の個人的な能力(簿記・会計,外国法,条例審査)を踏まえながら各地方検察庁で自由に設定できる(設定しなくてもよい。)プログラム
3 弁護士会が提供するプログラム
(1) 分野別実務修習の配属先弁護士事務所(ホームグラウンドとなる弁護士事務所)以外の弁護士事務所での修習   1週間から2週間
(2) 特殊事件(保全,民事執行,倒産,行政,労働,家事,少年等の事件)についての弁護修習   1週間から2週間
(3) 弁護士として関与すべき専門分野(消費者問題,サラ金・クレジット問題,民事介入暴力,交通事故,子どもの人権,高齢者・障害者問題,犯罪被害者支援など,ほとんどの弁護士会で対応可能な分野)や弁護士会活動,弁護士倫理等に関する修習   1週間以内
   講義・ゼミナールの実施,当該分野における法律相談の立会(弁護士会や担当弁護士事務所等),当該分野での事件処理(担当弁護士事務所等)等を集中的に研修させる。
(4) 法律相談センター,公設事務所(対応する地方裁判所の支部等がある場合には,そこでの修習も含む),あっせん仲裁センター,住宅紛争審査会等の公益的活動の修習   1週間以内
(5) 日本司法支援センター,新聞社,放送局(報道・社会部),銀行協会,商工会議所,民間企業(法務部門),国民生活センター,消費者センター,自治体の法律関係部門等における修習   1週間以内
※ (2)及び(3)については,登録制にしておき,適する時期,事件が判明したとき,弁護士会が修習生に担当弁護士を割りあてるという方法が考えられる。この場合,ほかの個別修習プログラムとの競合があれば,その調整を図るものとする。
4 各配属庁会が共同で提供するプログラム -模擬裁判-   1週間から2週間
   民事事件又は刑事事件の模擬裁判は,実演及び講評を3日間程度で行い,他の期間を模擬裁判の準備期間に充てる。

69期実務修習地における実務修習の順序

○69期の場合,「平成27年度(第69期)司法修習生の修習開始等について」(平成27年10月16日付の司法研修所事務局長事務連絡)によれば,実務修習地における実務修習の順序は,以下のとおりでした。
   なお,括弧内の人数は配属された69期の人数です。
「司法修習の日程」も参照して下さい。


1 東京高裁管内の修習地の場合
(1) 東京修習(292人)及び立川修習(24人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁

2班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
3班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
4班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

(2) 横浜修習(84人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部
3班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
4班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部

(3) さいたま修習(66人)の場合
1班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
3班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部
4班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁

(4) 千葉修習(64人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
3班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
4班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

(5) 水戸修習(28人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

(6) 宇都宮修習(22人)の場合
1班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部

2班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部
3班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁
4班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会

(7) 前橋修習(23人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
3班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部
4班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部

(8) 静岡修習(23人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
3班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
4班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

(9) 甲府修習(11人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:(1班と同じ。)
3班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会

(10) 長野修習(15人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

(11) 新潟修習(21人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→弁護士会→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:弁護士会→裁判所刑事部→裁判所民事部→検察庁

2 大阪高裁管内の修習地の場合
(1) 大阪修習(197人)の場合
1班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
3班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部
4班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

(2) 京都修習(68人)の場合
1班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
3班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部

(3) 神戸修習(67人)の場合
1班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
3班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
4班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

(4) 奈良修習(22人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部
3班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
4班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部

(5) 大津修習(22人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

(6) 和歌山修習(22人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部
3班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
4班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部

3 名古屋高裁管内の実務修習地の場合
(1) 名古屋修習(80人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁

2班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
3班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
4班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

(2) 津修習(19人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
3班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
4班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

(3) 岐阜修習(21人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁

2班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
3班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
4班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

(4) 福井修習(8人)の場合
1班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部

2班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会

(5) 金沢修習(17人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

(6) 富山修習(8人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

4 広島高裁管内の実務修習地の場合
(1) 広島修習(56人)の場合
1班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

2班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
3班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
4班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁

(2) 山口修習(18人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

(3) 岡山修習(39人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
3班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
4班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

(4) 鳥取修習(8人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

(5) 松江修習(8人)の場合
1班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

2班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

5 福岡高裁管内の実務修習地の場合
(1) 福岡修習(74人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁

2班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部
3班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
4班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部

(2) 佐賀修習(8人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

(3) 長崎修習(16人)の場合
1班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
3班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部
4班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

(4) 大分修習(19人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁

2班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
3班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部
4班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部

(5) 熊本修習(25人)の場合
1班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部

2班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部
3班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会
4班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁

(6) 鹿児島修習(19人)の場合
1班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁

2班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
3班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会
4班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

(7) 宮崎修習(15人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁

2班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
3班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
4班:弁護士会→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部

(8) 那覇修習(22人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部
3班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
4班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部

6 仙台高裁管内の実務修習地の場合
(1) 仙台修習(43人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁

2班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部
3班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部

(2) 福島修習(12人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会
(3) 山形修習(11人)の場合
1班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会

2班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会
3班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部
4班:(3班と同じ。)

(4) 盛岡修習(14人)の場合
1班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部

2班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部
3班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁
4班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁

(5) 秋田修習(10人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
3班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

(6) 青森修習(7人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

7 札幌高裁管内の実務修習地の場合
(1) 札幌修習(50人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部→検察庁

2班:弁護士会→裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部
3班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部

(2) 函館修習(7人)の場合
1班:裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部→弁護士会
2班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会

(3) 旭川修習(8人)の場合
1班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部

2班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会

(4) 釧路修習(7人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

8 高松高裁管内の実務修習地の場合
(1) 高松修習(21人)の場合
1班:裁判所民事部→検察庁→裁判所刑事部→弁護士会

2班:裁判所刑事部→弁護士会→裁判所民事部→検察庁
3班:検察庁→裁判所民事部→弁護士会→裁判所刑事部
4班:弁護士会→裁判所刑事部→検察庁→裁判所民事部

(2) 徳島修習(12人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

(3) 高知修習(15人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→弁護士会→検察庁→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:検察庁→裁判所刑事部→裁判所民事部→弁護士会

(4) 松山修習(20人)の場合
1班:裁判所民事部→弁護士会→検察庁→裁判所刑事部

2班:裁判所刑事部→検察庁→弁護士会→裁判所民事部
3班:検察庁→裁判所民事部→裁判所刑事部→弁護士会
4班:弁護士会→裁判所刑事部→裁判所民事部→検察庁

司法修習及び実務修習の期間の推移

1 司法修習の期間の推移
(1) 総論

   司法修習の期間は以下のとおり推移しています(司法修習生に関する規則5条1項)。
① 52期までは約2年間
② 53期ないし59期は約1年6月間
③ 現行60期ないし現行65期は約1年4月間
④ 新60期ないし新65期は約1年間
⑤ 66期以降は約1年間
(2) 司法修習の期間が約1年6月間に短縮された経緯等
ア 司法修習の期間が約1年6月間に短縮された経緯については,「司法修習生の給費制及び修習手当」を参照してください。 

イ   戦前の司法官試補及び弁護士試補の実務修習が1年6月間であったことについては,「司法官採用に関する戦前の制度」を参照してください。 
(3) 司法修習の期間が1年に短縮されたこと等
ア 司法修習の期間が1年に短縮されたこと
司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律(平成14年12月6日法律第138号)3条による改正後の裁判所法67条1項に基づき,平成18年4月1日以降,司法修習の期間は1年間となりました。

イ 59期,及び現行60期ないし現行65期に関する経過措置
(ア)   同法附則13条1項は,「第三条の規定の施行前に採用され、その施行後も引き続き修習をする司法修習生の修習期間については、なお従前の例による。」と定めていました。

   また,司法修習生に関する規則の一部を改正する規則(平成18年2月23日最高裁判所規則第3号)附則3項は,この規則の施行前に採用され、その施行後も引き続き修習をする司法修習生の修習については、この規則による改正後の司法修習生に関する規則(以下「新規則」という。)第十八条の規定を除き、なお従前の例による。」と定めていました。
  そのため,平成17年4月採用の第59期司法修習生の修習期間は1年6月間のままでした。
(イ)   同法附則13条2項は,「新法附則第二項又は前条の規定により新司法試験に合格した者とみなされた者であって、第三条の規定の施行後に採用された司法修習生については、最高裁判所の定めるところにより、同条の規定による改正後の裁判所法第六十七条第一項の修習において裁判官、検察官又は弁護士としての実務に必要な能力を十全に修得させるため、必要な修習期間の伸長その他の措置を講ずることができる。」と定めていました。
   また,司法修習生に関する規則の一部を改正する規則(平成18年2月23日最高裁判所規則第3号)附則4項は,「司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律附則第十一条第二項に規定する司法修習生の修習期間は、当分の間、少なくとも一年四月間とする。」と定めていました。
   そのため,平成18年4月以降に採用された現行60期ないし現行65期の司法修習生の修習期間は1年4月間でした。 
 
2 実務修習地における実務修習の期間の推移
   実務修習地における実務修習の期間は以下のとおり推移しています。

① 52期までは約1年4月間
② 53期ないし59期は約1年間
③ 現行60期ないし現行65期は約1年間
④ 新60期ないし新65期は選択型実務修習を含めて約10月間
⑤ 66期ないし67期は選択型実務修習を含めて約10月間
⑥ 約3週間の導入修習が開始された68期以降は選択型実務修習を含めて約9月間

3 旧司法試験時代のスケジュール
   「旧司法試験について」と題するHPに,58期当時の,司法試験第1次試験願書交付から司法修習終了後までのスケジュールが載っています。

修習資金貸与制に関する最高裁判所の当初の案

〇修習資金貸与制に関する最高裁判所の当初の案(修習資金貸与制の施行に伴う整備の概要(案)(資料41))と,実際に施行された制度とでは,①父又は母のいずれか1人を必ず連帯保証人とする必要はなくなったこと,及び②据置期間が3年から5年になったことの2点が異なります。

林道晴司法研修所事務局長は,平成21年3月5日の司法修習委員会において以下の説明をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
1(1) まず,資料41の前注に,今回このような議論をお願いする背景事情が書いてある。
   平成16年の裁判所法の一部改正によって,司法修習生に対し国から給与を支給する制度に代えて,平成22年,来年の11月1日から,司法修習生が修習に専念することを確保するための資金,これは裁判所法で「修習資金」と呼んでいるが,その修習資金を貸与する制度が導入される。
   この修習資金は,修習生からの貸与申請によって,修習期間中,無利息で貸与するというものであり,具体的な貸与金額や返還期限等については最高裁が定めることになっている。
(2)   災害,けが,病気等の事情により返還が困難となったときには,返還期限を猶予する制度が設けられており,被貸与者が死亡又は精神・身体の障害によって返還できなくなったときには,返還の一部又は全部を免除するという制度も用意されている。

(3)   それ以外の細目的事項についても最高裁が定めることになっており,私どもとしては,改正された裁判所法の委任を受けて,来年の実施に向けて,裁判所法の改正に対応する形での最高裁規則を制定する必要がある。
2 最高裁判所規則自体も当委員会にお諮りしたいと思っているが,その規則を作成する前提となる重要事項について,本日,審議をお願いするところである。
   平成16年12月3日に一部改正された裁判所法の立法過程においては,一定の方向性が示されており,後ほど関係する項目のところで説明したいと思うが,かなり具体的な事項が立法段階で議論されている。その後,特段事情変更は認められないことから,貸与制の制度を作るに当たって,この方向性を尊重するのが相当であると考えている。
3 また,国が修学資金として貸与する制度には,類似のものとして,矯正医官修学資金貸与制度(法務省),自衛隊貸費学生制度(防衛省),公衆衛生修学資金貸与制度(厚生労働省)がある。
 さらに,密接に関連するものとして,独立行政法人日本学生支援機構の奨学金があり,法科大学院生が奨学金として受け取っているものの大多数は,この学生支援機構の奨学金である。
4(1) 修習資金は国の債権になるので,回収という点については会計法上のスキームが適用され,納入告知書を被貸与者に渡して,被貸与者が納入告知書に現金を添えて,日本銀行の本店又は支店に納付する必要がある。
 したがって,民間の融資のような銀行口座等からの引き落としの方法では回収できないという制約がある。
(2)   具体的には,国が,返済金額・返済期限を,納入告知書に納入金額・納入期限として記入し,被貸与者にその納入告知書を送付して返還を請求する。
 納入告知書を受け取った元修習生は,その納入告知書に納入金額分の現金を添えて日銀の本店又は支店に提出し,納入(返済)の手続をとる。通常は,日銀の歳入代理店である市中銀行に赴くことが想定される。
 日銀ないしその代理店が現金を受け入れると,これを国に通知して,これによって回収が完了する。
5(1) 資料41に戻って,まず,一番重要な貸与金額の点について,平成16年の裁判所法改正当時の国会審議では,給費制における支給基準を参考に,1の(1)の23万円程度を基本額にして,(2)の18万円程度,(4)の28万円程度と,三段階の貸与額を設けることが想定されていた。これは当時の政府参考人の答弁の中で明確になっている。
(2)   (1)の23万円と(2)の18万円については,特段の要件を課すことなく,貸与を希望した者にそのまま貸与することがイメージされ,一方,(4)の28万円については,扶養親族がおり,住居を賃借しているといった要件を審査した上で貸与することがイメージされていた。
(3)   資料41は,そのような議論を踏まえ,23万円を基本金額とし,少ない金額は18万円,一番多い金額は28万円という三類型は維持した上で,23万円と28万円の中間的な類型として,(3)の25万5000円というオプションを追加している。
 これは,扶養家族がいるか,あるいは住居を賃借しているか,どちらかの要件を満たしている場合を対象としており,(4)の28万円は,扶養親族がいて,かつ住居を賃借している場合を対象にしている。
 現在の給費制の下で,扶養親族を有している修習生は約1割程度にとどまっているが,住居を賃借している修習生は約7割程度いることから,この中間的なオプションを用意したところである。
(4)   なお,司法修習生本人の資力要件については,特段の要件を設けない方向で考えている。
(5)   また,扶養加算の点について,現在の給費制の下での司法修習生の年齢構成を見ると,扶養家族として配偶者だけ,あるいは配偶者と子といった核家族の最小構成が最も多くなっているので,貸与制においてもニーズは同様と考え,まず,配偶者と子を扶養親族として掲げることにした。
(6)   配偶者と子以外の扶養親族については,(3)のアの(イ)にあるように,給与法に規定する人的範囲と同じものにする方向で考えている。
(7)   修習期間中に加算要件が生じることも想定されるので,これに対応できるように,1ページの最後の2行にあるように,修習開始後の修習資金の増額又は減額ができるようにするというスキームにしたいと考えている。
6(1) 次に,2ページの2,修習資金の返還期限等については,修習期間終了後,すなわち原則として貸与の終了後に,例えば3年間程度の据置期間を置いた上で,その後10年間の年賦均等返還の方法で返還することを基本にした上で,繰上返還も認める案になっている。
(2)   平成16年の裁判所法改正当時の国会審議では,3年から5年の据置期間を経過した後,10年間の年賦とするということが,政府参考人から示されていたところである。
 これは,法科大学院在学中に奨学金の貸与を受けていた者が,さらに修習生となって修習資金の貸与を受けることが十分考えられる,返済の負担が過重となってしまう可能性があることから,その負担を考慮したものと承知しており,資料41はそれを尊重した形になっている。
(3)   また,年賦が提案されている背景として,国会審議における議論からは必ずしも明確ではないが,国庫金の納入スキームからすると,返還のたびに納入告知書が発行され,それを日銀の代理店に持参して現金で納付することになり,これは返還をする人にとってかなりの負担になることが推察されるので,その負担感を緩和するためであろうと考えられる。
(4)   2ページの2のアスタリスクのところでは,返還が遅れた場合には,他の制度と同様に延滞利息がかかり,期限の利益を失うことがあるということを注意的に記載している。
7(1) 次に,3の保証人の関係であるが,類似の修学資金の貸与制度と学生支援機構の奨学金では,いずれも二人の人的保証,つまり保証人が貸与の要件となっている。
 したがって,修習資金についても,国の資金を扱う形になる以上,やはり二人の保証人を立てることを要件にせざるを得ないと考えており,3の(1)のような形になっている。保証人の要件については,父又は母があるときは,その保証人二人のうち一人は父又は母にしなければならないという仕切りになるかと思う。
(2)   資料には明示していないが,保証人の要件は民法の規定によるので,弁済の資力を有することが要件になる。
(3)   ただ,自然人の保証人を絶えず二人用意しなければならないということになると,被貸与者としては保証人が用意できない,用意しにくいということも考えられるので,日本学生支援機構の奨学金のように,機関保証というものを用意して,これを人的保証とは別に選択ができる形を提案している。
(4)   機関保証が導入された場合には,父母等に負担をかけずに貸与を受けられるメリットがある。実際に機関保証を受けてもらうのは民間の会社を考えているところであるが,用意できるかどうかは事務局の宿題ということで,正直申し上げて交渉はかなり難航しているが,何とか用意して,少しでも借りやすくすることを考えたいと思う。
8(1) 最後に,資料には記載していないが,修習生に対しては,この貸与制への移行に伴って国から給与が支給されなくなるので,国から給与が支給されていることを基本にする共済組合への加入ができなくなる。
 したがって,国民健康保険,国民年金に加入することになると考えられる。
(2)   ただし,公務災害や,第三者に修習生が損害を与えた場合の国家賠償については,従前どおりになると考えられる。

〇大橋正春弁護士(後の最高裁判所判事)は,平成21年9月3日の第15回司法修習委員会において以下の発言をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
1(1) 据置期間については,ぜひ5年にしていただきたい。また,自然人の保証人につき,父母を保証人としなくてはならないとする要件は削除していただきたい。
(2)   まず,据置期間であるが,修習生の中には法科大学院修了時に奨学金等の債務を負っている者がかなりの数含まれており,現在の経済状況の中で,新人弁護士をめぐる状況はかなり悪くなっている。
 この2つを考え,据置期間は5年にしていただきたい。
(3)   以前の委員会で今申し上げた点を具体的なデータを示して説明してほしいという指摘もあったが,なかなかそういうデータはなく,また弁護士をめぐる状況の悪化はごく最近のことである。
 もっとも,例えば,法科大学院生が日本学生支援機構から借りることができる奨学金の上限額は,無利子・有利子を含めて月額約30万円であり,単純に計算すると3年間で1000万円を超える額の債務を負担することになる。
 最高限度額まで奨学金を借りる者はそう多くはないと思うが,奨学金を借りている者は多いので,かなりの修習生は債務を負っていると考えてよいのではないか。
(4)   新人弁護士の初任給については,日弁連でアンケート調査をしている。
 これによると,例えば,平成18年度に修習終了した旧59期の新人弁護士で,年収が500万円以下と答えた人の割合は7.6パーセントだったが,昨年修習終了した新61期の新人弁護士では,この割合が20.8パーセントと増加している。
 また,年収が400万円以下と答えた人の割合も0.3パーセントから3パーセントに増加している状況である。
(5)   これは,一面では新人弁護士が事務所を探すことが難しくなっている状況の反映でもあり,アンケートによれば,昨年の同時期に事務所が決まっていない人の割合は約17パーセントであったが,今年は24パーセントを超えており,修習生の就職状況が悪化しているのが分かる。
 このような就職状況が,新人弁護士の初任給を引き下げる方向に働いているのではないか。この傾向は,2,3年のうちに改善する望みは薄いと考えられ,少なくともしばらくの間は続くと思われる。
(6)   以上のようなことを考えると,すべての修習生が難しい状況にあるわけではないが,中にはそういう修習生も含まれており,据置期間は3年ではなく5年にしていただきたい。
(7)   修習資金は,国の資金であり,回収の面から言えば,据置期間を3年から5年にすることで回収が困難になる可能性が高くなるのではないかという懸念もある。
 しかし,多くの者は弁護士になるので,所在が不明になることは少ないといえる。そういった意味で,通常の奨学金等に比べれば回収リスクは低いのではないか。
2(1) 2点目は,前回,鎌田委員からも御指摘があったが,父母を保証人とすることを修習資金を貸与する要件とする必要があるのかという問題である。
(2) 修習生は,法科大学院を出ているので,ほかの奨学金等の貸与制度の被貸与者より年齢が少し高いと考えられるし,何らかの事情で父母に保証人になってもらえないということを理由に修習資金を貸与してもらえないということは,不合理ではないか。
(3) 父母を保証人にすることを修習資金を貸与する要件としていることについては,ぜひ削除していただきたい。

司法修習生に対する分野別実務修習参加のための移転料支給事務Q&A

司法修習生に対する分野別実務修習参加のための移転料支給事務Q&Aは以下のとおりです。
○11①及び13において,「住居移転に当たり住民票を移動させることは法律上の義務である」と書いてありますが,分野別実務修習に参加するために住所又は居所を移転した司法修習生が移転料の支給を受けるためには,新住所地の住民票を必ず提出しなければならないとする法令上の根拠が分かる文書は存在しません(平成26年4月30日付の司法行政文書不開示通知書参照)。
「司法修習生の修習資金貸与制」も参照して下さい。

 
1 導入修習実施に伴い,分野別実務修習参加のための移転料について,昨年度の取扱いと何か変更はありますか。
   特に変更はありません。従前の住所又は居所から実務修習配属庁(裁判所)までの路程に応じた定額を支給することとなります。

2 着後手当や扶養親族移転料は,支給されないのですか。
   支給されません。

3 移転前の住所等から実務修習配属庁までの路程と新住所地までの路程を比較して少額となる方の移転料を支給することになるのですか。
   移転料の支給に当たっては,従前の住所又は居所から実務修習配属庁までの路程に応じた定額を支給することになりますが,従前の住所又は居所から新住所地までの路程に応じた定額が,実務修習配属庁までの定額よりも少額となる場合には,従前の住所又は居所から新住所地までの路程に応じた定額を支給することになります。

4 導入修習参加のため,住所又は居所を移転した司法修習生には,移転料は支給されないのですか。
 移転料は,分野別実務修習に参加するため,住所又は居所を移転した司法修習生に支給するもので,たとえば,大阪市に在住している司法修習生が,入寮するため,司研いずみ寮等に移動した場合には,移転料は支給されません。

5 移転料を支給するために提出させる書類はどのようなものですか。
   原則として,司法修習生から新住所地の住民票の写しを提出させることが必要です。

6 司法修習生から住民票を移動しないため,住民票の写しの提出ができないと言われた場合,どのようにするのですか。
   現時点で住民票の写しを提出できないこと及び申告した新たな住所地に間違いなく居住していることを記載した実務修習地の地方裁判所所長あての上申書並びに新住所地の疎明資料(アパートの賃貸借契約書の写し,新住所地の公共料金の請求書等。 以下「疎明資料」という。)を提出させてください。
   上申書及び疎明資料が提出された場合,取りあえず移転料の支給をしていただいて差し支えありません。
   ただし,この場合,司法修習生に対して,住民票を新住所地に移動させ,新住所地の住民票の写しを提出するように指示してください。

7 住民票の写しを提出してこない司法修習生に対して,どの程度の頻度で提出を促せばよいのですか。
   上申書及び住民票の写しに代わる疎明資料の提出があった際に,住民票を移動させ, 新住所地の住民票の写しの提出を促すほか,少なくとも,集合修習に参加する前に一度,9のとおり住民票の写しの提出を促してください。

8 追加提出された新住所地の住民票の転入の日付が,分野別実務修習開始の日付と離れていても移転料の支給手続に問題はありませんか。
   住民票上の転入の日付が遅くなっているのは届出が遅れたことによるものであり, 実際の転居の日が実務修習地の内示の後で,かつ,分野別実務修習開始日に近接していることが疎明資料により明らかであれば,新住所地の住民票の転入の日付が分野別実務修習開始の日付と離れていても問題はありません。

9 上申書及び疎明資料により移転料を支給した後も,司法修習生が,新住所地の住民票の写しを提出しない場合は,どうすればよいのですか。
   集合修習に参加する前に,改めて,当該司法修習生に対して次の点を伝達してください。
① 速やかに,新住所地の住民票の写しを提出すること。
② 新住所地の住民票の写しが提出されない場合には,司法研修所にその旨を報告すること。
③ 今後,新住所地の住民票の写しの提出に関して,司法研修所から連絡が入ることもありうること。
   また,以上の伝達の事実については,適宜メモを作成するなどして記録化してください。

10 司法修習生から,新住所地の住民票の写しを提出しない場合,移転料を返還する必要があるかと聞かれた場合,どのように回答すればよいですか。
   「新住所地の住民票を提出しないことにより移転料の返還を求められることはないが,認定のための証明カをもつ公的資料とされていることから,住民票の写しは提出してほしい。」旨回答してください。

11 住民票を移動しないと主張している場合には,どのようにすればよいのですか。
① 住民票を移動しない理由が「市役所等に行く時間がない」,「疎明資料によっても移転料が支給されるのであれば住民票を移動させる必要はない」等の場合
   住居移転に当たり住民票を移動させることは法律上の義務であることを説明し,住民票を移転するまでの間,差し当たって上申書及び疎明資料を提出するように促してください。
   司法修習生から上申書及び疎明資料が提出されれば,移転料を支給して差し支えありません。
   ただし,司法修習生が,上申書等を提出する際に,改めて,速やかに,新住所地に住民票を移動し,新住所の住民票の写しを提出するように促してください。
② 住民票を移動しない理由が「家庭の事情や住宅ローンの申請の関係により住民票を移動できない」等の場合
   住民票を移動できない事情がやむを得ないものであれば,その事情を記載した上申書及び疎明資料を提出するよう促してください。
   司法修習生から上申書及び疎明資料が提出されれば,移転料を支給して差し支えありません。
   この場合,9②の司法研修所への報告も必要ありません。
③ 住民票を移動しない理由が「もともと実家所在地に住民登録があり,法科大学院在学中は学校所在地に居住していたが,住民票は移動していなかった。実務修習開始に当たり,実家に戻ったが,形式的に新住所と住民票上の住所は一致している」等の場合
   住民票上の転入日が実際の転入日と一致しないことについての上申書及び旧住所の疎明資料並びに実家所在地の住民票の写しを提出するよう促してください(招集旅費の支給のため既に実家所在地の住民票の写しを提出している場合は再度提出させる必要はありません。)。
   司法修習生から上申書及び旧住所の疎明資料並びに実家所在地の住民票の写しが提出されれば,移転料を支給して差し支えありません。
   この場合, 9②の司法研修所への報告も必要ありません。

12 集合修習参加前に,新住所地の住民票の写しの提出を促しても当該住民票の写しを提出しない場合,移転料の戻入手続を執る必要はありますか。
   特に,戻入手続を執る必要はありません。

13 住民票を移動させる意思がないため,移転料を放棄したいと述ぺた司法修習生に対しては,どのように対応すべきですか。
   放棄の理由が住民票を移動させる意思がないことによるのであれば,司法修習生に対して,住居移転に当たり住民票を移動させることは法律上の義務であることを説明した上で,取りあえず上申書及び疎明資料の提出により,移転料の支給は可能である旨連絡し,移転料を放棄するか再度,意思を確認し,記録化してください。
   再確認の結果,移転料の支給を受ける意思がある場合は,上申書及び疎明資料を提出させた上で移転料を支給し,おって住民票を移動した上で新住所地の住民票を追完するよう促してください。
   再確認の結果,移転料を放棄するのであれば,後日のトラブルを防ぐため,本人から,放棄書を提出させてください。

修習資金貸与制における司法修習生の移転料と住民票

1 分野別実務修習に参加するために住所又は居所を移転した司法修習生が旅費及び移転料の支給を受ける場合,新住所地の住民票を提出するように求められます(平成27年10月16日付の「司法修習における旅費について」参照)。
  ただし,分野別実務修習に参加するために住所又は居所を移転した司法修習生が移転料の支給を受けるためには,新住所地の住民票を必ず提出しなければならないとする法令上の根拠が分かる文書は存在しません(平成26年4月30日付の司法行政文書不開示通知書参照)。

2 「住民基本台帳法に関する質疑応答集について」(昭和43年3月26日付の自治省行政局振興課長の通知)には以下の記載があります。
  そのため,住民基本台帳法に関する総務省の解釈からしても,司法修習の場合,転出届(住民基本台帳法24条)及び転入届(住民基本台帳法22条)(大阪市HP「住所についての届出(転入届,転出届など)」参照)を市区町村役場に提出することで住民票を移動させる法的義務はないと思われます。
問2 職業訓練法に定める職業訓練所に入所し,家族と離れて寄宿舎に居住しながら職業訓練をうけている訓練生の住所はどこにあると認められるか。
答 特段の事情のない限り,訓練期間が1年未満の者については入所前の居住地,訓練期間が1年以上の者については寄宿舎にあると認められる。
問3 会社の研修所で合宿しながら1年以上の研修をうけている場合,その者の住所はどこにあると認められるか。

答 家族と密接な生活関係がある等特段の事情のない限り,研修所にあると認められる。

3(1) ちなみに,平成28年7月当時,安部首相は東京都内に住んでいるものの,住民票上の住所は山口県下関市にありますし,同市での不在者投票が認められていました(The Vote.jp「なぜ,安倍首相はゆるされて学生はゆるされない。不平等な不在者投票」参照)。
(2) 国会議員,都道府県知事及び市区町村長の場合,選挙区内に住んでいなくても被選挙権があるのに対し,都道府県議会議員及び市区町村議会議員の場合,選挙区に住んでいないと被選挙権がありません(公職選挙法10条1項・9条。なお,総務省HPの「選挙権と被選挙権」参照)。

4 「司法修習生の修習資金貸与制」も参照して下さい。

谷間世代(無給修習世代)に対する救済策は予定していない旨の国会答弁

目次
1 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長の,平成29年3月22日の衆議院法務委員会における答弁
2 40期の小山太士法務省大臣官房司法法制部長の,平成29年3月31日の衆議院法務委員会における答弁
3 42期の笠井之彦最高裁判所経理局長の,平成29年12月5日の衆議院法務委員会における答弁
4 44期の山下貴司法務大臣の,平成30年11月16日の衆議院法務委員会における答弁
5 41期の小出邦夫法務省大臣官房司法法制部長の,令和元年5月8日の衆議院文部科学委員会における答弁
6 名古屋高裁令和元年5月30日判決の判示内容
7 42期の金子修法務省大臣官房司法法制部長の,令和2年4月2日の参議院法務委員会における答弁(質問者は67期の安江伸夫参議院議員(公明党))
8 田所嘉徳法務副大臣の,令和3年4月14日の衆議院内閣委員会における答弁
9 齋藤健法務大臣の,令和4年11月17日の参議院法務委員会における答弁
10 関連記事その他

1 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長の,平成29年3月22日の衆議院法務委員会における答弁
① まず、修習給付金の金額の点の御質問がございました。
    この具体的な金額につきましては最終的に最高裁判所規則において定めることになりますが、基本給付金として全ての修習生に対して一律十三万五千円、そのほか、住宅を借り受け、家賃を支払っている場合には住居給付金、あるいは移転に必要な移転給付金といったものを支給するということを予定しているところでございます。
    これらの修習給付金の額は、制度設計の過程の中で、法曹人材の確保、充実強化の推進等を図るという制度の導入理由のほか、修習中に要する生活費や学資金等の司法修習生の生活実態その他の諸般の事情を総合考慮するなどして決定されたというふうに承知しているところでございます。
    最高裁といたしましては、この新たな給付金制度の円滑な実施及び継続的かつ安定的な運用に努めてまいりたいというふうに考えておりますが、今後、制度のいろいろな問題点等は運用の中で出てくるかもしれません。そのようなところはまた法務省等とも御相談申し上げて、運用については万全を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
② それから、制度間の不公平の問題も御指摘ありました。
    修習給付金制度の創設に伴いまして、現行貸与制下の修習生、新六十五期から七十期までということですが、これらに対しても何らかの経済的措置や救済措置を講ずべきという意見があることは承知しているところでございます。
    しかしながら、給付金の制度の導入に伴い、現行貸与制下の修習生に対して救済措置を設けるか否かにつきましては、立法政策というところにもかかわるところでございますので、最高裁として、今の段階で意見を述べることは差し控えたいというふうに考えているところでございます。

2 40期の小山太士法務省大臣官房司法法制部長の,平成29年3月31日の衆議院法務委員会における答弁
① 委員から御指摘がございました、修習給付金制度の創設に伴いまして、現行の貸与制下の司法修習生、これは新六十五期から第七十期まででございますけれども、これに対しましても何らかの救済措置を講ずべきとの御意見があることは我々としても承知しております。
    ただ、修習給付金制度の趣旨でございますが、これは、先ほど御答弁申し上げましたとおり、法曹志望者が大幅に減少している中で、昨年六月の骨太の方針で言及されました、法曹人材確保の充実強化の推進等を図る点にあるわけでございまして、この趣旨に鑑みますと、修習給付金につきましては、今後新たに司法修習生として採用される者を対象とすれば足りるのではないかと考えられたところでございます。
    それからまた、加えて、仮に既に貸与で修習を終えられたような方に何らかの措置を実施するといたしましても、現行貸与制下において貸与を受けていらっしゃらない方もいらっしゃいまして、この取り扱いをどうするかといった制度設計上の困難な問題がございます。また、そもそも、既に修習を終えている人に対して事後的な救済措置を実施することにつき、国民的な理解が得られないのではないかという懸念もあるところでございます。
    ということで、本制度につきましては、救済措置を設けることは予定していないわけでございます。
② 本法案が可決、成立いたしますと、本年十一月に修習が開始される第七十一期の司法修習生から修習給付金を支給することになります。まずは新たな制度を導入していただきまして、その後はこの制度について継続的、安定的に運用していくことが重要であろうと考えております。御理解を賜りたいと考えております。

3 42期の笠井之彦最高裁判所経理局長の,平成29年12月5日の衆議院法務委員会における答弁
① 新六十五期につきましては、採用者数二千一人に対して貸与人数は千六百八十八人、この数字を前提といたしますと、貸与割合は約八四%、平均貸与額は約三百十五万円でございます。
    以下同様に、六十六期は、採用者数二千三十五人に対して貸与人数は千六百四十五人、貸与割合は八一%、平均貸与額は三百十三万円でございます。
    六十七期は、採用者数千九百六十九人に対して貸与人数は千四百四十九人、貸与割合は七四%、平均貸与額は三百十五万円でございます。
    六十八期は、採用者数千七百六十一人に対して貸与人数は千百八十一人、貸与割合は六七%、平均貸与額は三百十九万円でございます。
    六十九期は、採用者数千七百八十七人に対して貸与人数は千二百五人、貸与割合は六七%、平均貸与額は三百二十三万円でございます。
    七十期は、採用者数千五百三十人に対して貸与人数は九百九十三人、貸与割合は六五%でございます。なお、七十期につきましては、修習期間中でございまして、貸与が終了しておりませんので、平均貸与額は算出しておりません。
② 新六十五期から七十期までの司法修習生のうち、貸与金を借り受けた修習生は約八千人でございまして、借り受けた修習生に対して月額十三万五千円を免除する場合の総額は約百四十三億円余りとなります。

4 44期の山下貴司法務大臣の,平成30年11月16日の衆議院法務委員会における答弁
① 弁護士のいわゆる谷間世代問題ということでございますけれども、いわゆる谷間世代の司法修習生に対して救済措置が必要だということでございますが、これはそもそも、要するに、経済的支援制度を導入する際に、相当、超党派で委員の皆様がお集まりになってやられたということはあります。
    ただ、それより先に進んで、既に修習を終えている者に対して国の財政負担を伴う事後的な救済措置を実施することについて国民的理解が得られるのかということになると、若干困難ではないかというふうな指摘もございます。そしてまた、既に貸与制のもとにおいて貸与を受けていない者の取扱いをどうするか。要するに、貸与を受けていない、じゃ、その人には払うのか払わないのかとか、そういった制度設計上の困難な問題もあるということでございます。
    そうしたことは先ほど司法法制部長も答弁したと思いますが、ただ、若い世代の法律家が存分に活躍できる、そういう若い法曹にとって魅力ある社会を我々はつくりたいというふうに考えております。
    そういった中で、今、さまざまな制度変更、例えば相続法制の変更であるとかあるいは民法の債権法の変更であるとか、こういったことも含めて、新しい分野に若い法曹にチャレンジしていただいて、しっかりと頑張っていただきたいというふうに思っております。
② といったことで、谷間世代の問題につきましては、なかなか難しいということを御理解賜ればというふうに思っております。

5 41期の小出邦夫法務省大臣官房司法法制部長の,令和元年5月8日の衆議院文部科学委員会における答弁
① 従前の貸与制のもとで司法修習を終えた者に対する救済措置ということでございますが、これは、既に修習を終えている者に対して国の財政負担を伴う事後的な救済措置を実施することにつきまして国民的理解を得ることは困難ではないかということと、仮に何らかの救済措置を実施するとしても、従前の貸与制のもとにおいて貸与を受けていない者、あるいは繰上げ弁済をした者等、そういった者の取扱いをどうするかといった制度設計上の困難な問題もあるところでございまして、貸与制のもとで司法修習を終えた者に対する救済策を講ずることは困難であると考えているところでございます。
② ただ、従前の貸与制のもとでの司法修習生が経済的な事情によって法曹としての活動に支障を来すことがないようにするための措置といたしまして、一定の返還猶予事由がある場合には、貸与金の返還期限の猶予が制度上認められております。
    このような場合には、最高裁判所に対して個別に貸与金の返還期限の猶予を申請することが可能となっておりまして、個別の申請に対しては最高裁判所が適切に判断されるものと承知しております。


6 名古屋高裁令和元年5月30日判決の判示内容
・ 名古屋高裁令和元年5月30日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています(改行及びナンバリングを追加しています。)。
① 給費制及び給費を受ける権利は,憲法上保障されたものとはいえず,修習給付金を受ける権利についても同様であり,法曹養成制度の具体的内容をどのようなものにするかといった事柄については,立法府の政策的判断に委ねられているというべきことからすれば,71期司法修習生と新65期司法修習生との間に差異を設けることに合理的な根拠があるかどうかについては,立法府に広い裁量があることを前提に判断せざるを得ない。
    そして,前記1で原判決を補正の上引用して示した認定事実によれば,平成29年改正法により創設された給付金制は,法曹志望者が大幅に減少している中,法曹人材確保の充実強化の推進等を図るという目的で導入されたものであるから,新たに司法修習生として採用される者のみを対象とし,既に貸与制下での司法修習を終えた者は対象にしないとすることが直ちに不合理とはいえないし,貸与制の下で貸与を受けなかった者の取扱いをどうするか等の制度設計上の問題や事後的救済措置の実施に対して国民的理解が得られるかという懸念があること等も考慮して,新65期から70期までの司法修習生については修習給付金の対象としないこととし,71期司法修習生との間に差異を設けることに合理的根拠がないとはいえず,この差異が憲法14条1項に違反する合理的理由のない差別に当たるということはできない。
② 当裁判所としても,従前の司法修習制度の下で給費制が果たした役割の重要性及び司法修習生に対する経済的支援の必要性については,決して軽視されてはならないものであって,控訴人らを含めた新65期司法修習生及び66期から70期までの司法修習生(いわゆる「谷間世代」)の多くが,貸与制の下で経済的に厳しい立場で司法修習を行い,貸与金の返済も余儀なくされている(なお,例えば,N本人の供述によれば,貸与の申込みをしなかった者が必ずしも経済的に恵まれていたわけではなかったことが認められる。)などの実情にあり,他の世代の司法修習生に比し,不公平感を抱くのは当然のことであると思料する。法解釈としては,給費制及び給費を受ける権利が憲法上保障されているということはできないとしても,例えば谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは,立法政策として十分考慮に値するのではないかと感じられるが,そのためには,相当の財政的負担が必要となり,これに対する国民的理解も得なければならないところであるから,その判断は立法府に委ねざるを得ない。
    控訴人らを含む谷間世代の者らに対しては,事後的救済措置がどうなるかにかかわらず,給費制が廃止される中であえて法曹を志した初心を大切にして,それぞれの立場で信念をもって,法曹としての社会的責任を果たし,活躍していくことを切に願う次第である。

7 42期の金子修法務省大臣官房司法法制部長の,令和2年4月2日の参議院法務委員会における答弁(質問者は67期の安江伸夫参議院議員(公明党))
    従前の貸与制下で司法修習を終えたいわゆる谷間世代の司法修習生に対する救済措置につきましては、既に修習を終えている者に対して国の財政負担を伴う事後的な救済措置を実施することにつき、国民的理解を得ることは困難ではないかという問題があるように思われます。また、仮に何らかの救済措置を実施するとしても、従前の貸与制下において貸与を受けていなかった者等の取扱いをどうするかといった制度設計上の困難な問題もあるように思います。
    他方、従前の貸与制下の司法修習生が経済的な事情により法曹としての活動に支障を来すことがないようにするための措置として、貸与金の返還期限の猶予も制度上認められているところでございます。すなわち、災害、傷病その他やむを得ない事由により返還が困難となった場合、返還が経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由がある場合には、貸与を受けた者は最高裁判所に対して個別に貸与金の返還期限の猶予を申請することが可能となっており、このような個別の申請に対しては最高裁判所において適切に判断されるものと承知しております。
    以上のとおり、従前の貸与制の下で司法修習を終えた司法修習生に対して立法措置による抜本的な救済策を講ずることは困難であり、救済策を講じることは考えていないというところでございます。

8 田所嘉徳法務副大臣の,令和3年4月14日の衆議院内閣委員会における答弁

① 谷間世代が生じて不公平だろうということでありますけれども、確かに新六十五期から第七十期までの司法修習生については、旧六十五期までの給費制下の司法修習生や修習給付金制度の対象となる第七十一期以降の修習生とは、これは内容が違っているということは認識をしているわけであります。
    ただ、いずれの制度も、司法修習生が修習期間中の生活の基盤を確保して修習に専念できるように、修習の実効性を確保するための方策として採用されていますので、その状況下においては合理的なものであったというふうに判断しているわけであります。
    結果として時期によって経済的支援制度の内容が異なるからといって、それが不合理又は不公平な差異であるというふうには考えていないのであります。
② ただいま、立法府としての、どのようなこともできるんじゃないか、事後的な救済もできるだろうというようなことがあったということでございます。
    この裁判(山中注:名古屋高裁令和元年5月30日判決のこと。)の中では、給費制を復活させなかった立法不作為が違憲、違法であるとの主張も排斥しているわけでありまして、その中で、もちろん、今言われたように、憲法上保障された制度ではなくて、給費を受ける権利がそう解することはできないということでございまして、国賠法上の違法性を帯びることはない、こう言ったわけであります。
    それで、付言として、確かに今言われたようなことが言われているわけであります。谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済策を行うことは、立法政策として十分考慮に値するのではないかと感じられると。全く委員言われるとおりでございます。ただ、その後で、そのためには、相当の財政的負担が必要となり、これに対する国民的理解も得なければならないところであるから、その判断は立法府に委ねざるを得ないとも言っているわけでありまして、法務省ではそのように受け止めているところであります。
③ 従前の貸与制下で司法修習を終えたいわゆる谷間世代については、その者に対して国による相当の財政負担を伴う事後的な救済措置を実施することとなるわけですが、これに対する国民的理解を得ることが非常に難しい。さらには、何らかの救済策を講じたとしても、従前の貸与制下において貸与を受けていない者もおりまして、それらの者を含めた制度設計上の困難な課題もあります。
    他方、貸与制下の司法修習生が経済的な事情により法曹として活動に支障を来すことがないようにするための措置、貸与金の返済期間の猶予も制度上認められております。
    これは、最高裁判所が、災害、傷病その他やむを得ない理由により返済が困難となった場合や返済が経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由がある場合には、貸与を受けた者が個別に最高裁判所に対して貸与金の返還期間の猶予を申請することができますし、これは裁判所において適切に判断されるんだろうと思っております。
    以上から、谷間世代の修習生に対して立法措置による抜本的な救済策を事後的に講ずることはなかなか困難であるというふうに考えているわけであります。


9 齋藤健法務大臣の,令和4年11月17日の参議院法務委員会における答弁
・ 齋藤健法務大臣は,令和4年11月17日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 御指摘のように、貸与制下のいわゆる谷間世代の司法修習生につきましては、その前後の時期の司法修習生と比較すると経済的支援の内容に違いがあるのは認識しております。私自身も、貸与制が導入されるときに議員として多くの皆さんから御要請をいただいた記憶を持っております。
② もっとも、いずれの経済的支援策も、その時々の司法修習生の規模ですとか我が国の財政状況等の事情を考慮しつつ、司法修習生が修習期間中の生活の基盤を確保して修習に専念できるようにし、修習の実効性を確保するための方策として採用されたもので、その時々において合理的な内容になっていると理解をしています。
    司法修習生となった時期により、結果としてその時々の法律に基づき実施された経済的支援の内容が異なるからといって、それが直ちに不合理又は不公平な差異となるものではないと考えています。
③ また、谷間世代の司法修習生に対して金銭給付などの事後的な救済措置を講ずるということにつきましては、もう既に法曹となっている方に対して国による相当の財政負担を伴う金銭的な給付等を意味することとなりまして、国民的理解を得るのはなかなか困難ではないかと考えています。仮に何らかの救済措置を講ずるとしても、従前の貸与制下において貸与を受けていない者等の取扱いをどうするかといった制度設計上の困難な問題もございます。
    また、経済的事情によりまして法曹として活動に支障を来すことがないようにするための措置として、貸与金の返済期限の猶予なんかの制度的な対応も認められるところであります。
④ したがって、谷間世代の司法修習生に対してそのような改善措置を講ずることは困難でありまして、法務省としては、谷間世代の方々を含め、多くの法曹が様々な分野においてその資質、能力を十分に生かして活躍の場を更に広げていけるよう、そのための環境整備など、情報発信等に努めてまいりたいと考えています。

10 関連記事その他
(1) 平成29年11月14日付の不開示通知書によれば,司法修習資金貸与制の対象となった新65期ないし70期に対して,どのような救済措置を講ずべきかについて最高裁が検討した際に作成した文書は存在しません。
(2)ア 令和2年12月18日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
   本件決議は, 日本弁護士連合会から最高裁判所に対して参考として送付されたものであり; また,その内容も最高裁判所に対して何らかの応答を求めるものではないことから, 同決議に関し,最高裁判所としての検討内容を記載した文書は作成していない。
イ 本件決議は,安心して修習に専念するための環境整備を更に進め,いわゆる谷間世代に対する施策を早期に実現することに力を尽くす決議(平成30年5月25日の日弁連定期総会の決議)のことです。
(3)ア 日弁連は,谷間世代の経済的負担や不平等感を軽減し,日弁連が統一性のある組織を形成していることを確認等することを目的として,谷間世代のうち一定の要件を満たす会員に対し,一律20万円を給付する制度を平成31年4月1日から実施しています(2019年5月1日付の日弁連新聞第544号参照)。
イ 日弁連による一律20万円の給付金は一時所得となっています(国税庁HPの「司法修習生の修習期間中に給与等の支給を受けられなかった者に対して支払われる給付金の課税関係について」)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 修習資金貸与制に関する最高裁判所の当初の案
・ 修習資金貸与金の返還を一律に免除するために必要な法的措置,及びこれに関する国会答弁
 修習資金の返還の猶予
・ 修習資金の返還の免除

修習資金貸与金の返還を一律に免除するために必要な法的措置,及びこれに関する国会答弁

目次
1 総論
2 特例法による債権免除の実例
3 修習資金貸与金の返還義務の一律免除を実現するのは,修習給付金制度の創設以上に難しいと思われること
4 貸与制に基づく借金額に関する評価の例等
5 新65期ないし70期に対する救済措置は予定していないとする国会答弁
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1 総論
(1)   新65期から貸与制に移行したため,国が修習資金貸与金の返還義務を遡及的に免除する場合,国の債権の管理等に関する法律32条1項(歳入徴収官等による免除を定めた規定)に関する特例法が必要になります。
   そして,裁判所主管の歳入予算概算見積書(裁判所の予算参照)によれば,修習資金貸与金償還金は政府資産整理収入(租税印紙収入と同様に,歳入予算の「部」の一つ)に含まれますから,修習資金貸与金の返還義務を免除した場合,将来の政府資産整理収入が減少することとなります。
(2) 最高裁判所の場合,歳入徴収官は最高裁判所事務総局経理局長です(裁判所会計事務規程3条1項及び別表第二・1項)。

2 特例法による債権免除の実例
(1) 国の債権の管理等に関する法律32条1項の特例法としては,カネミ油症事件関係仮払金返還債権の免除についての特例に関する法律(平成19年6月8日法律第81号)があります。
   これは,「昭和四十三年に九州地方を中心に発生したカネミ油症事件をめぐる損害賠償請求訴訟に係る判決の仮執行の宣言に基づき国が支払った仮払金の返還に係る債権の債務者が当該事件による被害の発生から現在までの間に置かれてきた状況及び当該債権の債務者の多くが高齢者となっていることを踏まえ」(同法1条),国が,一定の収入基準及び資産基準を満たすカネミ油症被害者について債権免除を認めたものです。
(2) 国の債権の管理等に関する法律(昭和31年5月22日法律第114号)32条1項によれば,歳入徴収官が債権を免除できるのは,債務者が無資力又はこれに近い状態にあるため履行延期の特約等をした債権について,当初の履行期限から十年を経過した後において、なお債務者が無資力又はこれに近い状態にあり,かつ,弁済することができることとなる見込みがないと認められる場合に限られます。

3 修習資金貸与金の返還義務の一律免除を実現するのは,修習給付金制度の創設以上に難しいと思われること
   71期以降について修習給付金制度が創設されたものの,新65期ないし70期の修習資金の返還義務を免除するためには特例法が必要になります。
   また,カネミ油症被害者と異なり,新65期ないし70期の修習生は何らかの損害を被った被害者ではありませんし,高齢者でもありません。
   さらに,仮に修習資金返還義務の免除を認めた場合,修習資金の貸与を受けなかった同期の元修習生との間で発生する著しい不公平を解決する必要があります。
   そのため,修習資金貸与金の返還義務の一律免除を実現するのは,修習給付金制度の創設以上に難しいと思われます。


4 貸与制に基づく借金額に関する評価の例等
(1)ア 平成29年7月22日現在,司法修習ナビゲーションHP「貸与金を受けるか?」には,以下の記載があります。
   貸与制の借金を払い終えるころというのは、弁護士15年目ということになると思います。
   弁護士経験15年目の弁護士が「返済に悩むレベル」というのは、3千万から3億円というレベルです。
   貸与制の300万円というのは、悩みというには少額すぎる金額です。
   ゴーマンをかますというわけでもありませんが,15年目の弁護士にとっては,300万というのは鼻クソです。
   鼻クソのことで悩む必要は,普通は,ないと思います。
   そういうわけで、悩むことなく、堂々と借金して、精一杯に修習を経験して、楽々と借金を返済してください。
イ シュルジーブログの「15年目の弁護士にとっては,300万というのは鼻くそです。」(2017年9月29日付)には以下の記載があります。
   借金の条件が破格だということと、給費が貸与と同じかどうかは、別のことでしょう。
   返済しなければならない債務としての負担の重さは、利息の有無や返済期間とは関係なく、人によるとしか言いようがありません。
   同じく、15年目の弁護士にとって300万が鼻クソかどうかも、人によるとしか言えません。
   気安く貸与を推奨して、もしその人の人生が狂ったりした場合に、この先生は責任を取れるんでしょうか。
   本当の論点は、「貸与を受けるかどうか」などということでは、もはやないのですよ。
   我々に突きつけられる問題とは、「法曹は目指すべき職業なのかどうか」です。
(2) 『気になるあの人のウラ側一挙ご開帳SP』(平成30年6月15日,テレビ東京放送分)には以下の記載があります。
   弁護士の通帳を見せてもらう。弁護士の平均年収は1000万円でテレビに出演している弁護士先生は5000万円から1億円になるそうだ。今回、通帳を見せてくれるのは福永活也弁護士。通帳には1週間で6億円の賠償金が入金されていた。独身の福永弁護士は旅行が趣味で今まで旅先は130ヵ国だそうで、登山も趣味で780万円でエベレスト山頂を行っていた。


5 新65期ないし70期に対する救済措置は予定していないとする国会答弁
   40期の小山太士法務省大臣官房司法法制部長は,平成29年3月31日の衆議院法務委員会において,以下の答弁をしていますところ,要するに,新65期ないし70期に対する救済措置は予定していないと述べています。
① 委員から御指摘がございました、修習給付金制度の創設に伴いまして、現行の貸与制下の司法修習生、これは新六十五期から第七十期まででございますけれども、これに対しましても何らかの救済措置を講ずべきとの御意見があることは我々としても承知しております。
   ただ、修習給付金制度の趣旨でございますが、これは、先ほど御答弁申し上げましたとおり、法曹志望者が大幅に減少している中で、昨年六月の骨太の方針で言及されました、法曹人材確保の充実強化の推進等を図る点にあるわけでございまして、この趣旨に鑑みますと、修習給付金につきましては、今後新たに司法修習生として採用される者を対象とすれば足りるのではないかと考えられたところでございます。
   それからまた、加えて、仮に既に貸与で修習を終えられたような方に何らかの措置を実施するといたしましても、現行貸与制下において貸与を受けていらっしゃらない方もいらっしゃいまして、この取り扱いをどうするかといった制度設計上の困難な問題がございます。また、そもそも、既に修習を終えている人に対して事後的な救済措置を実施することにつき、国民的な理解が得られないのではないかという懸念もあるところでございます。
   ということで、本制度につきましては、救済措置を設けることは予定していないわけでございます。
② 本法案が可決、成立いたしますと、本年十一月に修習が開始される第七十一期の司法修習生から修習給付金を支給することになります。まずは新たな制度を導入していただきまして、その後はこの制度について継続的、安定的に運用していくことが重要であろうと考えております。御理解を賜りたいと考えております。

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・ 修習資金の返還の猶予
・ 修習資金の返還の免除
 谷間世代(無給修習世代)に対する救済策は予定していない旨の国会答弁

修習資金貸与制に関する,住所等届出書の提出状況等が分かる文書は存在しないこと

1   新65期から68期までの,期ごとの以下の文書は存在しません(平成28年度(最情)答申第32号(平成28年10月24日答申))。
  なお,→以下の記載は,最高裁判所事務総長の説明内容です。

① 年度ごとに,住所等届出書の提出状況が分かる文書(文書1)が存在しない理由
→ 住所等届出書は,修習資金貸与要綱(以下「貸与要綱」という。)31条により,修習資金貸与金全額の返還を終えるまで毎年4月30日を期限として,その年の4月1日における住所及び職業を最高裁判所に届け出るものであり,返還が始まった際,被貸与者宛てに確実に納入告知書を送付するために必要な情報を記載したものである。そこで,その提出を促すため,期限までに提出しない者に対して,督促を行っているが,この督促を行うために,その時点での未提出者の情報のみを把握すれば足り,年度ごと,期ごとに住所等届出書の提出状況を把握する必要はないから,申出に係る文書は作成又は取得していない。

② 年度ごとに,住所等届出書の提出を怠った結果,期限の利益を喪失した人の数が分かる文書(文書2)が存在しない理由
→ 住所等届出書の提出を相当期間怠ったときは,貸与要綱21条2項1号,司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(以下「貸与規則」という。)8条1項の規定により期限の利益を喪失し,返還未済額の全部を返還しなければならないこととなるが,期限の利益の喪失から未返還額の請求までの手続は,該当する被貸与者ごとに個別に行うものであり,年度ごと,期ごとに期限の利益を喪失した人数を把握する必要はないから,申出に係る文書は作成又は取得していない。
③ 年度ごとに,変更事項届出書の提出状況が分かる文書(文書3)が存在しない理由
→ 変更事項届出書は,住所の変更等,貸与要綱30条1項1号又は2号に定める事由が生じた場合に最高裁判所に届け出るものである。この変更事項届出書は,被貸与者の届出事項に変更が生じない限り,提出する必要はなく,また,同届出書が提出された場合には,個別に当該被貸与者の情報を変更し管理すれば足り,年度ごと,期ごとに変更事項届出書の提出状況を把握する必要はないから,申出に係る文書は作成又は取得していない。

④ 年度ごとに,繰上返還申請をした人の数が分かる文書(文書4)が存在しない理由
→ 繰上返還は,貸与規則7条ただし書により,年賦金の返還期限前に修習資金の返還を行うことができる制度であり,被貸与者から,繰上返還申請書が提出された場合,返還期限や返還額を当初の予定から変更するなどの処理を行い,繰上返還分の納入告知書を送付するものである。これらの事務処理は,申請者ごとに個別に行うものである。年賦金の返還開始までは,繰上返還の申請に基づいた返還のみであるため,収納済等一覧表(法定帳簿)で月別に収納された人数を数えることは可能であるが,年度ごと,期ごとに整理されたものではないことから,申出に係る文書には該当しない。
⑤ 年度ごとに,返還期限の猶予を受けた人の数が分かる文書(文書5)が存在しない理由
→ 返還期限の猶予は,裁判所法67条の2第3項に規定され,被貸与者からの申請に基づき,猶予が認められれば一定期間修習資金の返還が猶予されるが,猶予申請があった場合,申請者ごとに個別に事務処理を進めるものであり,年度ごと,期ごとに申請者の人数を把握した上で事務処理を進める必要がないから,申出に係る文書は作成又は取得していない。

⑥ 年度ごとに,返還免除を受けた人の数が分かる文書(文書6)が存在しない理由
→ 返還免除は,裁判所法67条の2第4項に規定され,被貸与者等からの申請に基づき,免除が認められれば修習資金の返還が免除されるが,免除申請があった場合,申請者ごとに個別に事務処理を進めるものであり,年度ごと,期ごとに申請者の人数を把握した上で事務処理を進める必要がないから,申出に係る文書は作成又は取得していない。

⑦ 年度ごとに,修習資金貸与金の回収状況が分かる文書(文書7)が存在しない理由
→ 修習資金の年賦金の返還は,平成30年から65期の年賦金の返還が開始されることから,現在は繰上返還を申請した者からの返還のみとなっている。繰上返還された金額の総額については,徴収簿総括表(法定帳簿)に年度末現在の記載はあるが,期ごとに整理されたものではないことから,申出に係る文書には該当しない。


2 答申書には以下の記載があります。
  本件各開示申出文書は,修習資金の貸与に関し,裁判所法,貸与規則又は貸与要綱に基づく届出書等の提出やその懈怠その他の手続上の行為があった者の数等を,期ごと,年度ごとに記載した文書であるところ,修習資金の貸与や修習資金貸与金の回収は,その性質上,いずれも,被貸与者ごとに個別に行われるものであると考えられるから,修習資金の貸与に関する事務処理上,上記のような者の数を,期ごと,年度ごとに把握する必要性があるとする事情はうかがわれず,苦情申出人もそのような事情を何ら主張しない。
  したがって,本件各開示申出文書をいずれも作成し,又は取得していないとする最高裁判所事務総長の説明は合理的であり,最高裁判所においては,本件各開示申出文書を作成し,又は取得をしていないと認められる。

3 「司法修習生の修習資金貸与制」も参照して下さい。

修習資金の返還の免除

目次
1 総論
2 修習資金貸与要綱29条の条文
3 修習資金の返還免除と税金
4 関連記事その他

1 総論
(1) 死亡又は精神若しくは身体の障害により修習資金を返還することができなくなった場合,その修習資金の全部又は一部の返還を免除してもらえます(裁判所法67条の2第4項)。
(2) 修習資金の返還の免除を申請する場合,最高裁に対し,被貸与者が死亡又は精神若しくは身体の障害により修習資金を返還することができなくなったことを証する資料を添付して,返還免除申請書を提出します(修習資金貸与要綱29条1項及び2項)。
(3)    裁判所HPの「ガイド~据置期間・返還期間中の手続について~」(リンク切れ)の「第6 返還期限の猶予について」によれば,提出書類は以下のとおりです。
① 返還免除申請書(PDF:225KB)
② 障害者手帳等(障害の有無及び程度を証明する書類)
③ 所得証明書,課税証明書,収入額を証明する書類,資産に関する申述書等

2 修習資金貸与要綱29条の条文
(返還の免除の手続)
第29条 法第67条の2第4項の規定による修習資金の全部又は一部の返還の免除の申請は,別紙様式第9による返還免除申請書を最高裁判所に提出してするものとする。
② 前項の返還免除申請書には,被貸与者が死亡又は精神若しくは身体の障害により修習資金を返還することができなくなったことを証する資料を添付しなければならない。
③ 最高裁判所の歳入徴収官が第1項に規定する申請の審査に際し必要と認める場合には,被貸与者は,医師による診断を受けなければならない。この場合において,最高裁判所の歳入徴収官は,当該医師を指定することができる。
④ 最高裁判所の歳入徴収官は,第1項に規定する免除をする場合には,当該免除を申請した者,被貸与者及びその保証人に対し,その旨を通知するものとする。

3 修習資金の返還免除と税金
(1) 学資に充てるために貸与された奨学金の返済を免除する場合,学資金として非課税となることがある(国税庁HPの「別紙 貸与制から給付制への移行に伴い奨学金返済債務が免除された場合等の税務上の取扱いについて」参照)ものの,修習資金はそもそも学資に充てるために貸与されたお金ではありません(「修習給付金は必要経費のない雑所得であるとした国税不服審判所令和3年3月24日裁決」参照)。
    そのため,修習資金の返還免除により生じる経済的利益は,一時所得として収入金額に計上する必要があると思います(国税庁HPの「問9-3 学生に対して大学等から助成金が支給された場合の取扱い〔令和2年5月15日追加〕」参照)。
(2) 一時所得は,その所得金額の1/2に相当する金額を給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後に納める税額を計算しますところ,一時所得に係る収入金額が50万円以下であれば,そもそも課税関係は発生しません(国税庁HPの「一時所得」参照)。

4 関連記事その他
1 司法修習生に対する修習資金及び修習専念資金の貸与・返済状況等に関するデータの提供について(令和2年11月16日付の最高裁総務局長回答)を掲載しています。
2 以下の記事も参照してください。
・ 修習資金貸与金の返還を一律に免除するために必要な法的措置,及びこれに関する国会答弁
・ 修習資金の返還の猶予

新65期の場合,平成30年7月25日から修習資金の返還が開始すること

1(1)   修習資金貸与金は,修習期間の終了した月の翌月から起算して5年を経過した後,10年の年賦により返還することになっています(修習資金の貸与等に関する規則7条本文)。
(2)   新65期の場合,修習期間が終了したのは平成24年12月ですから,翌月から起算して5年を経過した月は平成30年1月となります。
   そのため,平成30年7月25日(司法修習生の修習資金の貸与に関する規則7条・修習資金貸与要綱16条)に最初の年賦金を支払うこととなります。
(3) 最高裁判所の歳入徴収官(最高裁判所事務総局経理局長のことであることにつき裁判所会計事務規程3条及び別表第二・1項)は,年賦金等の督促(修習資金貸与要綱23条),保証人に対する請求(修習資金貸与要綱24条)又は返還未済額の全部の返還請求(修習資金貸与要綱
25条)をした後,相当の期間を経過してもなお当該督促又は請求を受けた被貸与者又はその保証人が履行しない場合,法務大臣に対し,訴訟手続(非訟事件の手続を含む。)により履行を請求することを求めるものとされています(修習資金貸与要綱26条)。

2(1) 平成28年7月8日開催の第4回法曹養成制度改革連絡協議会資料4-1法曹の収入・所得,奨学金等調査の集計結果(平成28年7月)の末尾33頁(PDF37頁)には,「イ 司法修習終了後5年6月経過時点(修習資金の返還開始時点)での残債務額」という記載があります。
(2) 平成29年6月7日付の司法行政文書不開示通知書によれば,裁判所HPに掲載しているものを除き,修習資金貸与金の管理マニュアルは存在しません。

3(1) 司法修習ナビゲーションHPの「貸与金制度は利用するべきでしょうか?」には,以下の記載があります。
   弁護士になって、売れっ子になれば、300万円や400万円というお金は、場合によっては、一か月の仕事で稼いでしまえるお金です。
   そう、実際、吉田は今年、一か月単位の売上は300万円よりは多いです。
   そういう、「それなりの弁護士」になることができたのは、やはり、司法修習という人生経験で弁護士としての基盤をしっかりとつくったからだと思います。
   貸与制の借金を払い終えるころというのは、弁護士15年目ということになると思います。
弁護士経験15年目の弁護士が「返済に悩むレベル」というのは、3千万から3億円というレベルです。 
   貸与制の300万円というのは、悩みというには少額すぎる金額です。 
   ゴーマンをかますというわけでもありませんが,15年目の弁護士にとっては,300万というのは鼻クソです。
   鼻クソのことで悩む必要は,普通は,ないと思います。
   そういうわけで、悩むことなく、堂々と借金して、精一杯に修習を経験して、楽々と借金を返済してください。 
(2) シュルジーブログ「15年目の弁護士にとっては,300万というのは鼻くそです。」(2017年9月29日付)には以下の記載があります。
   借金の条件が破格だということと、給費が貸与と同じかどうかは、別のことでしょう。
   返済しなければならない債務としての負担の重さは、利息の有無や返済期間とは関係なく、人によるとしか言いようがありません。
   同じく、15年目の弁護士にとって300万が鼻クソかどうかも、人によるとしか言えません。
   気安く貸与を推奨して、もしその人の人生が狂ったりした場合に、この先生は責任を取れるんでしょうか。
   本当の論点は、「貸与を受けるかどうか」などということでは、もはやないのですよ。
   我々に突きつけられる問題とは、「法曹は目指すべき職業なのかどうか」です。

4 「司法修習生の修習資金貸与制」も参照して下さい。