修習専念資金

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目次
1 総論
2 修習給付金及び修習専念資金の金額の根拠
3 修習専念資金に関する契約書
4 日本学生支援機構の保証人の分別の利益に関する札幌地裁令和3年5月13日判決
5 修習資金利用者に対する請求書の誤送付,及びプライバシー権に関する最高裁判例
6 関連記事その他

1 総論
(1) 修習専念資金の額は原則として月額10万円ですが,司法修習生が扶養親族を有し,貸与額の変更を希望する場合,月額12万5000円となります(裁判所HPの「司法修習生に対する修習専念資金の貸与制の概要」参照)。
    ただし,配偶者又は子に収入がある場合でも,扶養加算は認められるみたいです(裁判所HPの「修習専念資金貸与FAQ ~これから貸与を受ける方へ~」参照)。
(2) 司法研修所の公式見解によれば,修習給付金は必要経費のない雑所得ですから,例えば,神戸修習であった71期の司法修習生の場合,平成31年度の税金及び国民健康保険料は最大で23万9100円+24万4160円=48万3260円となります(「修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い」参照)。
    また,修習専念資金を借りなくても健康保険の被扶養者から外されます(「修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い」参照)。
    そのため,司法修習終了翌年の税金及び国民健康保険料の支払資金を確保するという趣旨からしても,無利息の修習専念資金を借りておいた方がいいと思います。


2 修習給付金及び修習専念資金の金額の根拠
・ 「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」(平成29年1月付の,法務省大臣官房司法法制部の文書)の「修習給付金及び修習専念資金の金額について」には,修習専念資金に関して,以下の記載があります。

    修習専念資金については「司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって,修習給付金の支給を受けてもなお必要なもの」として司法修習生の希望者に貸与することを予定しており,その額については月額原則10万円程度を想定している。
    これは,司法修習生の修習実態等に鑑みたものであり,司法修習生の通常の支出のうち修習給付金では賄われない費用としては,前記の「修習実態アンケート」(日弁連)及び平成27年度の「家計調査」(総務省統計局)等によれば,以下のとおり,おおむね10万円程度が想定される。
(内訳)合計10.2万円
・社会保険料(約1.6万円)
・所得税・住民税等(約0.5万円)
・勉強会参加費を除く交際費(約1.7万円)
・奨学金返済費用(約0.6万円)
・教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。)(約1.5万円)
・理美容・嗜好品等(約1.4万円)
・自動車等関係費(約0.7万円)
・仕送り金(約0.3万円)
・家具家電・衣服購入費等(約1.9万円)
※ 社会保険料は,平成28年度の国民年金保険料月額。所得税・住民税等は,修習給付金の金額水準に基づく所得税の試算値。勉強会参加費を除く交際費及び奨学金返済費用は,「修習実態アンケート」に回答した全ての司法修習生の平均値。教養娯楽費,理美容・嗜好品等,自動車等関係費及び仕送り金は,「家計調査」における単身世帯の消費支出の平均額。家具家電・衣服購入費は,修習の開始に伴って必要となる初期購入費用(家具家電10万円,衣服費15万円)を月割で按分した金額として,日弁連が推計した金額。
    なお,現行貸与制では,司法修習生がその収集に専念することを確保するための資金として,月額23万円(基本額)が希望者に貸与されている。貸与制度は,修習給付金の創設に伴い,貸与額等を見直した上で併存することになるが,新制度の創設に伴って司法修習生の経済状況や生活実態に変更が生ずるわけではないから,現行貸与制下の貸与額そのものは引き続き相当性が認められる(注5)。現行貸与制下の貸与基本額である23万円から修習給付金の基本額である13.5万円を控除した金額とほぼ一致する10万円を修習専念資金の額とすることは,このような観点からも合理的といえる。
(注5)第69期の司法修習生1,788名のうち貸与申請者は1,205名(67.39%)であり,貸与申請者のうち基本額である月額23万円の貸与を申請した者が894名(74.19%)である(このほか,月額18万円が51名(4.23%)。なお,月額23万円を基礎に,一定要件を満たして加算が認められた月額25.5万円が235名(19.50%),月額28万円が25名(2.07%)となっている。)。司法修習生ごとに貸与を要する事情や使途は様々と思われるが,こうした実績に照らす限り,月額23万円程度が修習期間中の生活の基盤確保に一般的に必要な金額水準になっていると見ることができる。

3 修習専念資金に関する契約書
・ 以下の契約書を掲載しています。
① 修習資金貸与金事務管理システム用サーバ機等の賃貸借等に関する,最高裁判所と東京センチュリー株式会社の契約書(平成31年4月1日付)
→ 令和元年10月31日付の変更契約書が別にあります。
② 修習等資金の貸与に関するデータ入力及び通知書等作成発送等業務委託に関する,最高裁判所と東京ソフト株式会社の請負契約書(平成31年4月1日付)
→ 令和元年10月 4日付の変更契約書が別にあります。
③ 修習資金貸与金事務管理システムの運用保守等に関する,最高裁判所と株式会社プロフェース・システムズの請負契約書(平成31年4月1日付)
→ 令和元年10月31日付の変更契約書が別にあります。

4 日本学生支援機構の保証人の分別の利益に関する札幌地裁令和3年5月13日判決
(1) 札幌地裁令和3年5月13日判決(奨学金の保証人が提訴した,日本学生支援機構に対する不当利得返還請求訴訟の判決)の判示事項の概要は以下のとおりです。
① 民法456条は,「保証人は,・・・請求することができる。」(民法452条。いわゆる検索の抗弁),「保証人が・・・証明したときは・・・」(民法453条。いわゆる催告の抗弁)とは異なり,分別の利益発生に保証人の何らかの行為を要求していない。
    また,民法456条が保証人に分別の利益を認めた趣旨は,保証人の保護と法律関係の簡明のためであるが,かかる趣旨に照らしても,主たる債務が可分債務である場合には,各保証人は平等の割合をもって分割された額についてのみ保証債務を負担すると解するのが相当である。
② 保証人が,分別の利益を有していることを知らずに,自己の負担を超える部分を自己の保証債務と誤信して弁済した場合には,この超過部分に対する弁済は,保証債務を負っていないのに,錯誤に基づき自己の保証債務の履行として弁済をしたものといえるから,「債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合」(民法707条1項),すなわち非債弁済に他ならない。
    そのため,保証人による自己の負担を超える部分に対する弁済は無効であって,保証人は,債権者に対し,当該超過部分相当額の不当利得返還請求券を有するというべきである。
③ 札幌地裁令和3年5月13日判決が言い渡された日以降に限り,日本学生支援機構は悪意の受益者として,遅延利息の支払義務を負うものというべきである。
④ 保証人としては,主債務者等に後日求償権を講師したり,あるいは,単純に主債務者等を援助する趣旨などから,自己の負担部分を超える部分についても弁済を行うか否かを選択できる立場にあるのであるから,日本学生支援機構が保証人に対してその負担部分を超える金額について請求することが,直ちに不法行為に当たるということはできない。
(2) 日本学生支援機構HPの「分別の利益」の以下の記載は,前述した札幌地裁判決と異なる説明をしていることになります。
・ 保証人は、返還者本人が貸与を受けた奨学金(第二種奨学金の場合は、利息、延滞している場合は、延滞金を含む)を返還するという、返還者本人と同一内容の債務(保証債務)を負うことになります。
→ 札幌地裁判決によれば,保証人は2分の1についてのみ保証債務を負担します。
・ 保証人は、本機構からの請求に対し、請求額を2分の1にすることを申し出る(抗弁を主張する)ことができます。
→ 札幌地裁判決によれば,分別の利益発生について保証人の何らかの行為は不要です。
・ 保証人が本機構に返還した金額については、法的に有効であり、返還があった奨学金について、本機構の請求権がなくなっているため、本機構としては、返金の要求には応じかねます。
→ 札幌地裁判決によれば,保証人が本機構に返還した金額のうち,2分の1を超える部分に対する弁済は無効であって,保証人は,本機構に対し,返金の要求をすることができます。
(3) 札幌地裁令和3年5月13日判決に対する日本学生支援機構の控訴理由書(令和3年7月20日付け)を掲載しています。



5 修習資金利用者に対する請求書の誤送付,及びプライバシー権に関する最高裁判例
(1) 裁判所HPの「修習資金の返還に関する納入告知書の誤送付について」に以下の記載があります。
   司法修習期間中に修習資金の貸与を受けていた方(以下「被貸与者の方」といいます。)のうち,その返還期を迎えた方(修習期65期から68期)に対して,先般納入告知書を送付しましたが,そのうち一部の方(862名)については,事務手続上の誤りにより,現在お住まいの住所等ではなく,以前届け出て頂いていた住所等に発送したことが判明しました。
(2)ア 大学が講演会の主催者として学生から参加者を募る際に収集した参加申込者の学籍番号,氏名,住所及び電話番号に係る情報は,参加申込者のプライバシーに係る情報として法的保護の対象となります(最高裁平成15年9月12日判決)。
イ 通信教育等を目的とする会社が管理している未成年者の氏名,性別,生年月日,郵便番号,住所及び電話番号並びに保護者の氏名は,プライバシーに係る法的保護の対象となります(最高裁平成29年10月23日判決)。


6 関連記事その他
(1) 法務省の法曹養成制度改革連絡協議会の第8回協議会(平成29年10月11日開催)資料4-6「新旧対照条文(司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則)」が載っています。
(2) 平成29年11月13日付の司法行政文書不開示通知書によれば,「外国籍であり,通称の印鑑及び口座しか持っていない場合における,修習専念資金の貸与申請方法が分かる文書」は存在しません。
(3)ア 奨学金の返済に充てるための給付は、その奨学金が学資に充てられており、かつ、その給付される金品がその奨学金の返済に充てられる限りにおいては、通常の給与に代えて給付されるなど給与課税を潜脱する目的で給付されるものを除き、これを非課税の学資金と取り扱っても、課税の適正性、公平性を損なうものではないと考えられます(国税庁HPの「奨学金の返済に充てるための給付は「学資に充てるため給付される金品」に該当するか」参照)。
イ 日本学生支援機構HPに「企業の奨学金返還支援(代理返還)への対応」が載っています。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 修習専念資金の貸与申請状況
・ 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
・ 司法修習生と国民年金保険料の免除制度及び納付猶予制度
・ 修習給付金の確定申告に関する記事の一覧






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