◯以下の文書は,①法務省の理由説明書等(検事一級及び検事二級の基準)及び②検察庁の職員の配置定員について(令和7年4月1日付の法務省大臣官房人事課長の依命通達)に基づくAI作成文書です。
◯「検察官の種類等」も参照してください。
目次
第1 はじめに
第2 検事の「級」制度の概要と実態
1 歴史的経緯
2 現在の「級」の意義
3 法律上・運用上の実質的な違い(俸給及び役職)
第3 「一級」への叙級(昇級)基準
1 叙級の実務運用
2 裁判官からの出向者等の場合
3 基準文書の不存在
第4 (参考)検察庁の職員配置定員
第5 まとめ
第1 はじめに
検察官の「検事」には、「一級」と「二級」の区別があることをご存知でしょうか。検察庁法第15条によれば、検事総長、次長検事及び各検事長は1級、検事は1級又は2級、副検事は2級とされています。
では、この「一級」と「二級」の違いは具体的に何であり、どのような基準で分けられているのでしょうか。本稿では、情報公開・個人情報保護審査会に提出された法務省の理由説明書等の資料に基づき、この点について解説します。
第2 検事の「級」制度の概要と実態
1 歴史的経緯
法務省の理由説明書によれば、この検察官の「級」制度は、検察庁法(昭和22年法律第61号)が制定された当時に施行されていた「官吏任用叙級令(昭和21年勅令第190号)」による叙級制度の名残であるとされています。
2 現在の「級」の意義
重要な点として、法務省は、現在では「級」そのものに実質的な意味はないと説明しています。
現在、この「級」の区別は、検察庁法第19条、第9条第1項とあいまって、検事総長、次長検事、検事長、検事正といった一定の役職に就く際の形式的な要件として存置されているものに過ぎない、というのが法務省の見解です。
3 法律上・運用上の実質的な違い(俸給及び役職)
法務省は上記のように「実質的な意味はない」と説明していますが、これは主に「検事としての基本的な職務権限(捜査、公訴提起等)に差はない」という点を指していると考えられます。
一方で、法律上及び運用上、以下の点で明確な違いが存在します。
(1) 俸給(給与)の違い
「検察官の俸給等に関する法律」において、検事一級と検事二級では異なる俸給表(または号俸の適用範囲)が定められており、検事一級の方が高い俸給が支給されます。この「級」の区分は、検察官の給与体系における根幹的な区別の一つとなっています。
(2) 補され得る役職(ポスト)の違い
前述の法務省見解(形式的な要件)とも関連しますが、特定の役職に就くためには「検事一級」であることが法律上の要件とされています。
検事一級:高等検察庁の検事長(検察庁法第9条1項)、同庁の次長検事や検事、地方検察庁の検事正(各地方検察庁のトップ)など、主に上級庁の幹部や管理職ポストに補されるのが通例です。
検事二級:新任検事は原則として検事二級に任命され、主に地方検察庁や区検察庁において、捜査・公判実務の第一線を担います。経験を積んだ二級検事が、地方検察庁の次席検事や部長といった管理職的なポストに就くこともあります。
このように、「級」の区分は、検察官のキャリアパスや組織内の位置づけにおいて、俸給面及び補職面で実質的な影響を与えていると言えます。
第3 「一級」への叙級(昇級)基準
では、どのような場合に「二級」の検事が「一級」の検事になるのでしょうか。この点について、特定の基準を定めた文書は存在するのでしょうか。
1 叙級の実務運用
法務省によれば、検事の叙級に関しては極めて単純かつ機械的にその手続がなされているのが実務上の取扱いです。
具体的には、検察庁法第19条各号(例:司法修習終了後8年以上の実務経験等)に定められた資格を有する検事が、特定の号俸に昇給する際、機械的に1級への叙級を行っているとされています。
2 裁判官からの出向者等の場合
例えば、「裁判官から法務省への出向者のうち、どの裁判官を検事一級とし、どの裁判官を検事二級とするかの基準」についても、同様の運用がなされています。
法務省の説明では、裁判官の職にあった者を任用する場合においても、検察庁法第19条各号に定められた資格を有し、かつ任用する場合の俸給が特定の号俸以上であれば、1級の検事に叙級しているとのことです。
3 基準文書の不存在
上記のとおり、叙級は単純かつ機械的な手続として運用されているため、法務省は、叙級の基準に関して「殊更、行政文書を作成・取得・保存しているものではない」としています。
これは、令和7年(行情)諮問第1216号事件(事件名:裁判官から法務省への出向者に関する特定の基準が書いてある文書の不開示決定(不存在)に関する件)において、法務省が情報公開・個人情報保護審査会に提出した理由説明書の中で明らかにされています。当該事件では、開示請求された「基準が書いてある文書」について、「該当する行政文書を保有していない」ことを理由に不開示決定(不存在)がなされ、法務省はその決定が妥当であると主張しています。
第4 (参考)検察庁の職員配置定員
参考までに、令和7年4月1日付の法務省大臣官房人事課長による通達「検察庁の職員の配置定員について」(法務省人定第11号)に示された定員を見てみましょう。
これによると、検察庁全体の職員配置定員(合計)は以下のとおりです。
(1) 最高検察庁
- 検事:16人
- (その他、検事総長1人、次長検事1人)
(2) 高等検察庁(合計)
- 検事:122人
- (その他、検事長8人)
(3) 地方検察庁(合計)
- 検事:1,741人
- 副検事:879人
(4) 総計(検察官)
- 検事総長:1人
- 次長検事:1人
- 検事長:8人
- 検事:1,879人((1)+(2)+(3))
- 副検事:879人
- 検察官 合計:2,768人
この定員表においても、「検事」の定員は一括して計上されており、「一級検事」と「二級検事」の内訳は示されていません。このことからも、「級」の区別が少なくとも定員管理上は実質的な意味を持たず、対外的に区分して管理するほどの重要性を有していないことがうかがえます。
第5 まとめ
以上のとおり、検事の「一級」と「二級」の区別は、歴史的な制度の名残であり、法務省の説明によれば、検事としての基本的な職務権限に差がないという意味で現在では実質的な意味を持っていません。
現実の運用においては、この「級」の区分は「検察官の俸給等に関する法律」に基づく俸給(給与)や、検事正・高等検察庁検事といった特定のポストに補されるかどうかに直結する、実質的な意味を持つ区分でもあります。 その叙級 (昇級)は特定の号俸への昇給に伴い機械的に行われており、法務省によれば、その基準を明記した文書も存在しないとのことです。
弁護士の皆様の業務に直接影響することは稀かと存じますが、法曹界の制度に関する豆知識としてご参考にしていただければ幸いです。
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