令和元年の司法書士法及び土地家屋調査士法改正に関する法務省民事局の御説明資料


目次
第1 令和元年の司法書士法及び土地家屋調査士法改正に関する法務省民事局の御説明資料
第2 関連記事その他

第1 令和元年の司法書士法及び土地家屋調査士法改正に関する法務省民事局の御説明資料
司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(第198回国会閣法第46号)に関する御説明資料(法務省民事局)の本文は以下のとおりです。

1 趣旨
   近時の司法書士制度及び土地家屋調査士制度を取り巻く状況の変化を踏まえ,司法書士及び士地家屋調査士について,それぞれ,その専門職者としての使命を明らかにする規定を設けるとともに,懲戒権者を法務局又は地方法務局の長から法務大臣に改める等の懲戒手続に関する規定の見直しを行うほか,社員が一人の司法書士法人及び士地家屋調査士法人の設立を可能とする等の措置を講ずるため,司法書士法(昭和25年法律第197号)及び土地家屋調査士法(昭和25年法律第228号)について,一部改正を行う。

2 司法書士及び土地家屋調査士に関する概況
(1) 司法書士は,不動産登記のうちの権利に関する登記や商業登記,供託等についての法務局に対する申請の代理等のほか,裁判所に提出する書類の作成の代理等を行うことを主たる業務とするものであり(司法書士法第3条第1項),資格試験等を実施することにより,そのために必要な法律知識を備えていることを担保している。
   他方,土地家屋調査士は,不動産登記のうちの表示に関する登記の申請の代理等を行うことを主たる業務とするものであり(土地家屋調査士法第3条第1項) ,資格試験等を実施することにより,そのために必要な測量等の知識や法律知識を備えていることを担保している。
(2) 司法書士については,近時,簡裁訴訟代理等関係業務や成年後見・財産管理業務等への関与が増加している。
   また,土地家屋調査士については,表示に関する登記や筆界,測量に関する専門性を活用して法務局に備え付ける地図(不動産登記法(平成16年法律第123号)第14条第1項)の作成や国士調査法(昭和26年法律第180号)に基づく地籍調査等の分野においてもその活躍の場を広げている。
   加えて,司法書士及び土地家屋調査士ともに,少子高齢化の進展や大規模自然災害の発生等を背景として問題となっている空家問題・所有者不明土地問題への対策について,不動産に関する専門的知識を有する者として参画しているほか, 自然災害における復興支援にも参画するなど,近年その専門性を発揮することが求められる場面は大きく拡大している。
【参照条文】
○不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(地図等)
第十四条 登記所には,地図及び建物所在図を備え付けるものとする。
2~6 (略)

3 改正事項の概要
(1) 司法書士法の一部改正
ア 使命を明らかにする規定の新設(新第1条及び第46条第1項関係)
   司法書士法は第1条に目的規定を置き,「この法律は,司法書士の制度を定め,その業務の適正を図ることにより,登記,供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し,もって国民の権利の保護に寄与することを目的とする。」としている。この目的規定は昭和53年の司法書士法の一部改正により新設されたものであり,司法書士の業務範囲に関する規定が整備され,登記又は供託に関する手続についての申請代理や裁判所等に提出する書類の作成代理が業務内容であることが明示されたことを踏まえ,「登記,供託及び訴訟等に関する手続」の円滑な実施に資すること等を目的とすることとしたものである。
   平成14年の司法書士法の一部改正においては,簡裁訴訟代理権が付与された。
   上記2記載のとおり,司法書士制度を取り巻く状況の大きな変化に伴い,司法書士が実際に取り扱っている業務の内容は拡大し,社会における役割が増大していることに鑑みると,司法書士法の定めるところによりその業務とする法律事務の専門家として,より広い分野において,国民の権利の擁護等に資する活動を行う使命を負っていることを司法書士法の冒頭で宣明することが適切であると考えられる。
   また,このことにより,司法書士にその職責(司法書士法第2条)をよく自覚させることができ,資質の更なる向上を図ることにもつながると考えられる。
   そこで,司法書士は,司法書士法の定めるところによりその業務とする登記,供託,訴訟その他の法律事務の専門家として,国民の権利の擁護を図り, 自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする旨の規定を新設することとした。
   なお,士業法の中には目的規定と使命規定とを併存させるものはないことから, これと整合を図り,今般の使命規定の新設に伴い,目的規定を削除することとした。
(注)使命規定を有する他の職業専門資格士法
公認会計士法(昭和23年法律第103号),弁護士法(昭和24年法律第205号),税理士法(昭和26年法律第237号),弁理士法
【参照条文】
○公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)
(公認会計士の使命)
第一条 公認会計士は,監査及び会計の専門家として,独立した立場において,財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより,会社等の公正な事業活動,投資者及び債権者の保護等を図り,もって国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。
○弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)
(弁護士の使命)
第一条 弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする。
2 (略)
○税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)
(税理士の使命)
第一条 税理士は,税務に関する専門家として,独立した公正な立場において,申告納税制度の理念にそって,納税義務者の信頼にこたえ,租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
○弁理士法(平成十二年法律第四十九号)
(弁理士の使命)
第一条 弁理士は,知的財産(知的財産基本法(平成十四年法律第百二十二号)第二条第一項に規定する知的財産をいう。以下この条において同じ。)に関する専門家として,知的財産権(同条第二項に規定する知的財産権をいう。)の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し,もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。
イ 懲戒に関する規定の整備
(ア) 懲戒権者を法務大臣とすること(新第47条,第48条第1項,第49条第1項~第3項,第50条第1項・第2項,第51条,第60条,第70条,第71条の2関係)
   司法書士法は,司法書士及び司法書士法人(以下「司法書士等」という。)に対する懲戒を,事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長(以下「管轄法務局長」という。)の権限としている(同法第47条,第48条) 。一般に,懲戒権者は任命権者がなるのが通例であるが(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第84条第1項等),司法書士等の業務の中心が登記等の法務局における事務であることから, 司法書士法の制定当初である昭和25年から,司法書士等の懲戒事由の存否を最もよく知り得る管轄法務局長に懲戒権限を持たせたものとされている(注1) 。
   もっとも,近年は,簡裁訴訟代理等関係業務や成年後見・財産管理業務(注2)など,裁判所が所管しているために必ずしも管轄法務局長において懲戒事由の存否を把握することが容易であるとはいえないものが多くなっている。また,複数の法務局又は地方法務局にまたがって事務所を設置する大規模な司法書士法人の増加(注3)や,オンラインによる登記申請の増加等も背景とした活動の広域化により,管轄区域外の法務局又は地方法務局への申請を行う機会も増加していることから,管轄法務局長が懲戒事由をよく知り得るとはいえない状況が生まれている。
   他方で,司法書士等に対する懲戒処分については,法務大臣が量定の大枠の基準を定めているものの(司法書士等に対する懲戒処分に関する訓令(平成19年5月17日付け法務省民二訓第1081号)),近年司法書士等の活動領域が拡大していることに伴って,ある行為が懲戒事由に該当するかどうかの法的判断や量定にも困難を伴う例も増えてきている。
   そこで,司法書士等に対する懲戒権者を管轄法務局長からその上級行政庁と位置付けられる法務大臣に改める必要があると考えられる。
   加えて,活動範囲が広範な司法書士法人等を前提とすれば,管轄法務局長以外の法務局又は地方法務局の長(以下,単に「法務局長」という。)が法務大臣の一元的な指揮の下で連携・分担を図りながら対応を行うことも可能となるものと考えられる。
   そこで,一部の事実調査事務等については広く全国の法務局長に委ねることも可能とする規定を新設することとしつつ(法務大臣の権限の委任規定を設け,それにより,法務大臣の権限の一部を委譲する。),懲戒権者については管轄法務局長から法務大臣に変更する改正を行うこととした(注4)(注5) 。
   なお,委譲する法務大臣の権限は,具体的には,事実の調査に関する権限等にとどめ,懲戒手続全体の指揮のほか,懲戒処分の要否及びその内容の決定については,法務大臣が行うこととすることを想定している。
   また,懲戒権者を法務大臣に変更することに伴い,従たる事務所の所在地を管轄する法務局長の懲戒権に関する規定(司法書士法第48条第2項)が不要となることから,併せて,この規定を削除することとした。
(注1)現在の司法書士制度の出発点である司法代書人を法的資格として確立した「司法代書人法(大正8年法律第48号) 」においては, 「司法代書人ハ地方裁判所ノ所属トス」(第2条) ,「司法代書人ハ地方裁判所ノ監督ヲ受ク」(第3条第1項)とされていた。
(注2)後見・財産管理等業務の件数
平成23年: 1万4926件
→平成29年: 6万4461件(約4倍の増)
(注3)複数の法務局又は地方法務局にまたがって事務所を設置する司法書士法人の数の推移
平成20年4月1日時点: 95法人
→平成30年4月1日時点: 258法人(約3倍の増)
(注4)公共嘱託登記司法書士協会に対する懲戒権者について
   現行法上,法務局又は地方法務局の管轄区域ごとに,当該区域内に事務所を有する司法書士又は司法書士法人のみが社員となって,その専門的能力を結合して官公署等からの登記の嘱託(いわゆる「公共嘱託」)の適正かつ迅速な実施に寄与することを目的とする一般社団法人として,公共嘱託登記司法書士協会(以下「協会」という。)に関する規定が定められており,その成立については管轄法務局長への届出を要するとされている(司法書士法第68条及び第68条の2)。そして,協会に対しても懲戒権に関する規定があり,その懲戒権者は管轄法務局長である(同法第70条において準用する第48条)が,この懲戒権は,管轄法務局長による監督上の命令(同法第69条の2第2項)に協会が違反した場合の制裁等のためのものであり,司法書士又は司法書士法人に対する懲戒とはその意味を異にする。
   また,協会の業務や財産の状況の検査等の日常的な監督権の行使については, 引き続き管轄法務局長とするのが合理的であり,今次改正案において司法書士・司法書士法人について懲戒権者を法務大臣とする趣旨も当てはまらない。
   以上により,協会に対する懲戒権限は, 引き続き管轄法務局長の権限とすることとするなど改正の対象外とした。
   なお,今般の改正により,協会に対する懲戒権者が司法書士法人に対する懲戒権者と異なることとなる。このことを明らかにするため,同法第70条において準用する懲戒に関する規定については,「法務大臣」を「第六十九条の二第一項に規定する法務局又は地方法務局の長」と読み替える旨の規定を置くこととした。
(注5)懲戒を地方支分機関の長ではなく,所管大臣の権限としている他の職業専門資格士法)
公認会計士法(権限委任規定あり),税理士法,社会保険労務士法(昭和43年法律第89号。権限委任規定あり。),弁理士法
【参照条文】
○国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)
(懲戒権者)
第八十四条 懲戒処分は,任命権者が,これを行う。
2 人事院は,この法律に規定された調査を経て職員を懲戒手続に付することができる。
      ※他の参照条文は別紙の1のとおり。
(イ) 懲戒に係る除斥期間の新設(新第50条の2関係)
   司法書士法には,懲戒について,弁護士法のような除斥期間(同法第63条)に関する規定がない。そのため,業務を行ってから相当程度の期間を経過した後に懲戒の求めがされた際,当時の資料等の廃棄や記憶の忘失等により,司法書士等において十分な防御をすることができなくならないように,司法書士等は業務に関する資料等の保存に相当な費用を負担し続けなければならず,過大な負担となっているとの指摘がされている。
   そこで,司法書士等に対する懲戒について,除斥期間を新設することとした。
   なお,除斥期間の具体的な年数については,例えば弁護士については,3年の除斥期間が設けられているところである。これに対し, 司法書士の業務は,紛争性のない権利変動についての登記の申請の代理など,一般に懲戒の事由の発覚に時間がかかるものも少なくない。加えて,司法書士がその業務において作成する資料のうちには,法令の規定に基づき7年間保存する必要があるものも存在する(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)第6条第2項参照)。これらを踏まえると,今般,司法書士法において新たに除斥期間を設けるに当たっては,その年数を7年とすることが相当である。
【参照条文】
○弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)
(除斥期間)
第六十三条 懲戒の事由があったときから三年を経過したときは,懲戒の手続を開始することができない。
○犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)
(確認記録の作成義務等)
第六条 特定事業者は,取引時確認を行った場合には,直ちに,主務省令で定める方法により, 当該取引時確認に係る事項, 当該取引時確認のためにとった措置その他の主務省令で定める事項に関する記録(以下「確認記録」という。)を作成しなければならない。
2 特定事業者は,確認記録を,特定取引等に係る契約が終了した日その他の主務省令で定める日から,七年間保存しなければならない。
(ウ) 戒告における聴聞手続の必要的実施(新第49条第3項関係)
   司法書士法は,懲戒の内容として,司法書士については戒告,2年以内の業務の停止及び業務の禁止を,司法書士法人については戒告,2年以内の業務の全部又は一部の停止及び解散を定めている(同法第47条,第48条)。このうち,戒告以外の懲戒処分については聴聞が必要的なものであるが,戒告については聴聞の機会の付与は必要的なものではない(同法第49条第3項・第4項,行政手続法(平成5年法律第88号)第13条第1項第1号ロ) 。
   もっとも,戒告であっても,その処分内容が国民に開示され,司法書士等の経歴として記録されることなどからすれば,司法書士等に対して与える事実上の不利益が大きく,その手続保障を図る必要があるとの指摘がされている。
   そこで,司法書士等に対する戒告についても,聴聞手続を必要的なものとする改正を行うこととした(注) 。
(注)戒告について,法律上,聴聞手続を必要的としている他の職業専門資格士法
公認会計士法,海事代理士法(昭和26年法律第32号),社会保険労務士法,弁理士法
【参照条文】
○行政手続法(平成五年法律第八十八号)
(不利益処分をしようとする場合の手続)
第十三条 行政庁は,不利益処分をしようとする場合には,次の各号の区分に従い, この章の定めるところにより, 当該不利益処分の名あて人となるべき者について, 当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
一 次のいずれかに該当するとき聴聞
イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
ロ イに規定するもののほか,名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分,名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。
二 前号イから二までのいずれにも該当しないとき弁明の機会の付与
      ※他の参照条文については別紙の2のとおり。
(エ) 清算結了後の司法書士法人に対する懲戒規定の新設(新第48条第2項)
   司法書士法は,戒告以外の懲戒処分について,司法書士登録の取消しを制限する規定を設けているが,清算結了の登記をした司法書士法人に対して懲戒処分をすることができる旨の規定を設けていない。
   もっとも,現行の司法書士法においては,清算を結了した司法書士法人については,法人格が消滅し,処分の名宛て人が消滅するため,これに対しては,もはや懲戒処分をすることができないものと解される。そのため, このことを利用して,懲戒手続に付された司法書士法人が,清算を結了させて法人格を消滅させることによって,懲戒処分を免れようとする事態が生じ得る。
   そこで,このような脱法的な行為を防止し,懲戒処分の実効性を確保するため,懲戒手続に付された司法書士法人については,清算結了の登記をした場合であっても, なお存続しているものとみなして懲戒することができる旨の規定を新設することとした(注) 。
(注)清算結了後の職業専門資格法人に対する懲戒に関する規定を設けている他の職業専門資格士法
公認会計士法,弁護士法,行政書士法(昭和26年法律第4号),税理士法,社会保険労務士法
【参照条文】
○弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)
(登録換等の請求の制限)
第六十二条(略)
2~4 (略)
5 懲戒の手続に付された弁護士法人は,清算が結了した後においても,この章の規定の適用については,懲戒の手続が結了するまで,なお存続するものとみなす。
      ※他の参照条文については別紙の3のとおり。
ウ   一人司法書士法人の許容(新第22条第2項第2号,第32条第1項,第44条第1項第7号・第2項,第44条の2,第46条第3項関係)
   司法書士法は,社員が一人の司法書士法人の設立等を許容しておらず,社員が2人以上でなければ設立することができず, また,社員が一人になり,そのなった日から引き続き6月間その社員が2人以上にならなかった場合においても,その6月を経過した時に解散することとされている(司法書士法第22条第2項第2号,第32条第1項,第44条第2項)。これらの規定は,司法書士の利用者の多様なニーズに対応するため業務の質を向上させるとともに,司法書士による継続的かつ安定的な業務提供や賠償責任能力の強化等の観点から,平成14年の司法書士法の一部改正により司法書士の事務所の法人化が認められた際に設けられたものである。
   もっとも,上記改正当時において,一人司法書士法人を認める必要性に乏しく,弁護士法とは異なり,司法書士法には一人司法書士法人の設立等を許容する旨の規定が置かれなかった。
   しかし,近年では,例えば,親と子の2人が社員となって司法書士法人を設立していたケースにおいて,その親が死亡したものの,新たな社員を探すことができず,司法書士法人を清算しなければならなくなる事態が生ずるなど,一人法人を許容しないために法人制度の利便性が損なわれているとの指摘がされている(注1) 。また,法人化により経営・収支状況等の透明性が確保されれば,国や公共団体が行う競争入札に参加しやすくなるとの利点もあり, このような点をとらえて一人司法書士法人を設立したいとのニーズがあるとの指摘もされている(注2) 。
   そこで,社員が一人であっても司法書士法人を設立・維持することができるように規定を改めることとした(注3) 。
   具体的には,司法書士法人の設立や定款の定めは司法書士が「共同して」行う必要があると規定する部分を削除するほか,社員が一人になったことを解散事由とする規定を改めて「社員の欠亡」を解散事由とすることとした(弁護士法第30条の23第7号参照) 。
   加えて,依頼者保護等の観点から,社員の死亡により社員の欠亡に至った場合には, 当該社員の相続人の同意を得て,新たに社員を加入させて司法書士法人を継続することができる旨の規定も併せて設けることとした(弁護士法第30条の24参照) 。
(注1)平成25年度から平成29年度までの間に解散した司法書士法人のうち,社員が一人になった後に解散した司法書士法人の割合は50%
(注2)法人化により,個人と法人の財産が明確に分離されることなどにより経営・収支状況等の透明性が確保され,受託業務の履行の確実性を客観的に示すことが可能となるなど受託事業者としての信頼性が高まることにより,競争入札に参加しやすくなる。
(注3)一人法人を許容している他の職業専門資格士法
弁護士法,社会保険労務士法(なお,社会保険労務士法については,平成26年の同法改正により一人法人を許容している。)
【参照条文】
○弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)
(解散)
第三十条の二十三 弁護士法人は,次に掲げる理由によって解散する。
一~六(略)
七 社員の欠亡
(弁護士法人の継続)
第三十条の二十四 清算人は,社員の死亡により前条第一項第七号に該当するに至った場合に限り, 当該社員の相続人(第三十条の三十第二項において準用する会社法第六百七十五条において準用する同法第六百八条第五項の規定により社員の権利を行使する者が定められている場合にはその者)の同意を得て,新たに社員を加入させて弁護士法人を継続することができる。
      ※他の参照条文については別紙の4のとおり。
エ 権限委任規定の新設(新第71条の2関係)
   前記イ(ア)に記載のとおり,懲戒権者を法務大臣と変更することに伴い,一部の事実調査に係る権限については全国の法務局長に委ねることも可能とする規定を新設する必要がある。
   そこで,法務大臣の権限の委任を許容する規定を設けることとした。なお,権限の委任規定は細目的事項に関する省令委任規定の前に置かれる例が多いことから(国際観光旅客税法(平成30年法律第16号)第22条,所有者不明士地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号)第45条),第72条(法務省令への委任)の前に第71条の2として置くこととした。
【参照条文】
○国際観光旅客税法(平成三十年法律第十六号)
(税関長の権限の委任)
第二十二条 税関長は,政令で定めるところにより,その権限の一部を税関の支署その他の税関官署の長に委任することができる。
(財務省令への委任)
第二十三条 この法律に定めるもののほか, この法律の規定による書類の記載事項又は提出の手続その他この法律を実施するため必要な事項は,財務省令で定める。
○所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成三十年法律第四十九号)
(権限の委任)
第四十五条 この法律に規定する国士交通大臣の権限は,国士交通省令で定めるところにより,その一部を地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。
(省令への委任)
第四十七条 この法律に定めるもののほか, この法律の実施のため必要な事項は,国土交通省令又は法務省令で定める。
(2) 土地家屋調査士法の一部改正
   司法書士法と土地家屋調査士法は,主として登記の代理を業とする専門資格者に関する法律であり,ほぼ同様の構造となっている。そのため,司法書士法及び土地家屋調査士法の構造の同一性を維持するため,業務に関する規定など専門資格固有の内容を除き,両法律を併せて同内容の改正をしてきた経緯があり,例えば,司法書士法及び士地家屋調査士法の一部を改正する法律(昭和60年法律第86号)においては,公共嘱託登記司法書士協会及び公共嘱託登記土地家屋調査士協会の創設に係る改正を,司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(平成14年法律第33号)においては,司法書士法人及び土地家屋調査士法人制度の創設,国民一般からの懲戒申出制度の創設,報酬規定の削除等の改正をしている。今般の改正においても,引き続き司法書士法及び土地家屋調査士法の構造の同一性を維持するため,司法書士法の改正と併せて,土地家屋調査士法についても,同様の改正をすることとする。
ア 使命を明らかにする規定の新設(新第1条,第41条第1項関係)
   土地家屋調査士法も,司法書士法と同様に,第1条に目的規定を置き,「この法律は,土地家屋調査士の制度を定め,その業務の適正を図ることにより,不動産の表示に関する登記手続の円滑な実施に資し,もって不動産に係る国民の権利の明確化に寄与することを目的とする。」としている。
   この目的規定は,昭和54年の土地家屋調査士法の一部改正により,「この法律は,登記簿における不動産の表示の正確さを確保するため,土地家屋調査士の制度を定め,その業務の適正を図ることを目的とする。」という規定を改めたものである。
   もっとも,平成17年の土地家屋調査士法の一部改正により,筆界特定の手続についての代理業務等や,法務大臣が認定した者に限り,土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続において,弁護士との共同受任により代理等をする業務をすることができることとなるなどした。
   上記2記載のとおり,士地家屋調査士制度を取り巻く状況の大きな変化に伴い,士地家屋調査士が実際に取り扱っている業務の内容は拡大している。そこで,不動産の表示に関する登記に加えて土地の筆界を明らかにする業務の専門家として, より広い分野において,国民の権利の明確化に寄与し,国民生活の安定と向上に資する活動を行う使命を負っていることを土地家屋調査士法の冒頭で宣明することが適切であると考えられる。
   また, このことにより,土地家屋調査士にその職責(土地家屋調査士法第2条)をよく自覚させることができ,その資質の更なる向上を図ることにもつながると考えられる。
   そこで,不動産の表示に関する登記に加えて土地の筆界を明らかにする業務の専門家として,国民の権利の明確化に寄与し,国民生活の安定と向上に資することを使命とする旨の規定を設ける必要がある。
【参照条文】
○土地家屋調査士法施行規則(昭和五十四年法務省令第五十三号)
(調査士法人の業務の範囲)
第二十九条 法第二十九条第一項第一号の法務省令で定める業務は,次の各号に掲げるものとする。
一 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により,鑑定人その他これらに類する地位に就き,土地の筆界に関する鑑定を行う業務又はこれらの業務を行う者を補助する業務
二 土地の筆界の資料及び境界標を管理する業務
三~五(略)
イ 懲戒に関する規定の整備
(ア) 懲戒権者を法務大臣とすること(新第42条,第43条第1項,第44条第1項~第3項,第45条第1項・第2項,第46条,第55条,第65条,第66条の2条関係)
土地家屋調査士法は,土地家屋調査士及び土地家屋調査士法人(以下「土地家屋調査士等」という。)に対する懲戒を,司法書士法と同様に,管轄法務局長の権限としている(同法第42条,第43条) 。土地家屋調査士の制度は,昭和25年の士地家屋調査士法の制定により設けられたものであるが,その当初から,懲戒を,管轄法務局の権限としていた。
   その趣旨は,司法書士法と同様に,土地家屋調査士の業務の中心が登記等の法務局における事務であることから,土地家屋調査士等の懲戒事由の存否を最もよく知り得る管轄法務局長に懲戒権限を持たせたものとされている。
   もっとも,土地家屋調査士についても,近年はその活動領域が拡大し,管轄法務局長において懲戒事由の存否を把握することが容易であるとはいえない状況が生まれている。
   そこで,土地家屋調査士についても, 司法書士法と同様に,懲戒権者を管轄法務局長からその上級行政庁と位置付けられる法務大臣に改めることとした(注) 。
   また,一部の事実調査事務等については広く全国の法務局長に委ねることも可能とする規定を新設することとすること(法務大臣の権限の委任規定を設け,それにより,法務大臣の権限の一部を委譲する。) も,司法書士法と同様である。
   なお,懲戒権者を法務大臣に変更することに伴い,従たる事務所の所在地を管轄する法務局長の懲戒権に関する規定(士地家屋調査士法第43条第2項)が不要となることから,併せて, この規定を削除することとした。また,改正後の第43条第2項を準用しないことについては,司法書士法と同じ整理によるものである。
(注)公共嘱託登記土地家屋調査士協会に対する懲戒権者についても,司法書士法と同様, 引き続き管轄法務局長とする。また,土地家屋調査士法人に対する懲戒権者と異なることを明らかにするために, 「法務大臣」を「第六十四条の二第一項に規定する法務局又は地方法務局の長」と読み替える旨の規定を置くこととした。
(イ) 懲戒に係る除斥期間の新設(新第45条の2関係)
   土地家屋調査士法にも,司法書士法と同様に,弁護士法のような,懲戒に係る除斥期間の規定(同法第63条)はない。そこで,土地家屋調査士等に対する懲戒についても,司法書士法と同様に,除斥期間を新設することとした。
(ウ) 戒告における聴聞手続の必要的実施(新第44条第3項関係)
   土地家屋調査士法は,司法書士法と同様に,懲戒の内容として,士地家屋調査士については戒告, 2年以内の業務の停止及び業務の禁止を,士地家屋調査士法人については戒告, 2年以内の業務の全部又は一部の停止及び解散を定めているが(同法第42条,第43条),戒告については聴聞の機会の付与は必要的なものではない(同法第44条第3項・第4項,行政手続法第13条第1項第1号ロ) 。
   もっとも,戒告であっても,その処分内容が国民に開示され,司法書士等の経歴として記録されることなどからすれば,土地家屋調査士等に対して与える事実上の不利益が大きく,その手続保障を図る必要があるとの指摘がされている。
   そこで,土地家屋調査士等に対する戒告についても,司法書士等と同様に,聴聞手続を必要的なものとする改正を行うこととした。
(エ) 清算結了後の土地家屋調査士法人に対する懲戒規定の新設(新第43条第2項)
   土地家屋調査士法は, 司法書士法と同様に,戒告以外の懲戒処分について,土地家屋調査士登録の取消しを制限する規定を設けているが,清算結了の登記をした土地家屋調査士法人に対して懲戒処分をすることができる旨の規定を設けていない。
   そこで,司法書士法と同様に,脱法的な行為の防止の観点から,懲戒手続に付された土地家屋調査士法人については,清算結了の登記をした場合であっても,なお存続しているものとみなして懲戒することができる旨の規定を新設することとした。
ウ ー人土地家屋調査士法人の許容(新第26条,第31条第1項,第39条第1項第7号・第2項,第39条の2,第41条第3項関係)
   土地家屋調査士法は,司法書士法と同様に,平成14年の土地家屋調査士法改正により,士地家屋調査士法人の設立が認められたが,司法書士法人と同様に,一人土地家屋調査士法人の設立等を許容する旨の規定は置かれなかった(土地家屋調査士法第26条,第31条第1項,第39条第2項) 。
   しかし,土地家屋調査士法人においても, 司法書士法人と同様に,一人法人を許容しないために法人制度の利便性が損なわれているとの指摘がされている。また,法人化により経営・収支状況等の透明性が確保されれば,国や公共団体が行う競争入札に参加しやすくなるとの利点もあり, このような点をとらえて一人土地家屋調査士法人を設立したいとのニーズがあるとの指摘もされている。
   そこで,社員が一人であっても土地家屋調査士法人を設立・維持することができるように規定を改めることとした。
   具体的には,土地家屋調査士法人の設立や定款の定めは土地家屋調査士が「共同して」行う必要があると規定する部分を削除するほか,社員が一人になったことを解散事由とする規定を改めて「社員の欠亡」を解散事由とすることとした(弁護士法第30条の23第7号参照) 。
   加えて,社員の死亡により社員の欠亡に至った場合には, 当該社員の相続人の同意を得て,新たに社員を加入させて士地家屋調査士法人を継続することができる旨の規定も併せて設けることとした(弁護士法第30条の24参照) 。
エ 権限委任規定の新設(新66条の2関係)
   司法書士法と同様に,前記イ(ア)に記載のとおり,懲戒権者を法務大臣と変更することに伴い,一部の事実調査に係る権限については全国の法務局長に委ねることも可能とする規定を新設する必要があることから,法務大臣の権限の委任を許容する規定を設けることとした。なお,権限の委任規定は細目的事項に関する省令委任規定の前に置かれる例が多いことから,第67条(法務省令への委任)の前に第66条の2として置くこととした。

4 附則の概要
(1) 施行期日(附則第1条関係)
   附則第1条は,施行期日について,公布の日から1年6月を超えない範囲内において政令で定める日とするものである。
(2) 司法書士法人の継続に関する経過措置(附則第2条関係)
   附則第2条は,施行日前に社員が一人となったために解散したが,施行日までに清算手続が結了していない司法書士法人について,一人法人として継続することを許容することを定めるものである(注) 。
(注)それまで社員が複数いることが存続要件となっていた有限会社について,社員が一人の有限会社を許容する改正をした商法等の一部を改正する法律(平成2年法律第64号)においても, 同様の経過措置が設けられている。
【参照条文】
○商法等の一部を改正する法律(平成二年法律第六十四号)
附則
(有限会社の継続に関する経過措置)
第二十四条 この法律の施行前に改正前の有限会社法第六十九条第一項第五号の規定により解散した有限会社は, この法律の施行後は,新たに社員を加入させることをしないで,会社を継続することができる。ただし,資本の総額が三百万円に満たない有限会社については,この法律の施行後五年を経過した場合は,この限りでない。
○有限会社法(商法等の一部を改正する法律(平成二年法律第六十四号)による改正前のもの)
第六十九条有限会社ハ左ノ事由二因リテ解散ス
ー~四(略)
五 社員ガー人ト為リタルコト
六・七(略)
(3) 清算結了後の司法書士法人の懲戒に関する経過措置(附則第3条関係)
   附則第3条は,清算結了後の司法書士法人の懲戒について規定する新司法書士法第48条第2項の規定の適用に関して,施行日以後に同条第1項の規定による処分の手続に付された司法書士法人について適用することを定めるものである(注) 。
(注)清算結了後の職業専門資格法人に対する懲戒に関する規定を設けた他の職業専門資格者の法律の改正についてみると,平成15年の公認会計士法の一部を改正する法律の附則第27条第3項においても, 同様の経過措置が設けられている。
【参照条文】
○公認会計士法の一部を改正する法律(平成一五年六月六日法律第六七号)
附則
(監査法人に対する処分に関する経過措置)
第二十七条(略)
2 (略)
3 新法第三十四条の二十一第四項の規定は,施行日以後に同条第二項の規定による処分の手続に付された監査法人について適用する。
(注) 「新法第三十四条の二十一第四項の規定」は,現在,公認会計士法第34条の21第5項である。
(4) 司法書士又は司法書士法人の懲戒の事由に関する経過措置(附則第4条関係)
   附則第4条は,司法書士又は司法書士法人に対する新司法書士法第47条又は第48条第1項の規定による処分に関しては,施行日前に生じた事由については, なお従前の例によることを定めるものである。
(5) 司法書士又は司法書士法人の懲戒の手続の除斥期間に関する経過措置(附則第5条関係)
   附則第5条は,施行日前に生じた事実に基づく懲戒処分の手続について,除斥期間に関する規定(新第50条の2)の適用から,施行日前に処分の手続を開始したものを除くことを規定している。
   なお,「処分の手続を開始した」といえる時点としては,税理士法(昭和26年法律第237号)第48条の20第3項の「処分の手続に付された」という文言に関する解釈通達において「税理士法人に対し,違法行為等についての処分に係る聴聞又は弁明の機会の付与について行政手続法第15条第1項又は第30条に規定する通知がなされた場合をいう」とされていることと同様,現行の司法書士法上,聴聞の機会を付与することを要する処分については,行政手続法第15条第1項の通知又は同条第3項の掲示がされた時点,聴聞の機会の付与を要しない戒告については,戒告処分の通知がされた時点と考えられる。
【参照条文】
○税理士法(昭和26年法律第237号)
第四十八条の二十(略)
2 (略)
3 第一項の規定による処分の手続に付された税理士法人は,清算が結了した後においても, この条の規定の適用については, 当該手続が結了するまで,なお存続するものとみなす。
4 (略)
(6) 司法書士又は司法書士法人の懲戒の手続等に関する経過措置(附則第6条関係)
   附則第6条は,第1項において,司法書士又は司法書士法人の懲戒手続に関し,施行日前に旧司法書士法の規定により法務局又は地方法務局の長がした処分,手続その他の行為は,施行日以後は新司法書士法の相当規定により法務大臣がした処分,手続その他の行為とみなすことを規定し,第2項において,司法書士又は司法書士法人の懲戒手続に関し,この法律の施行の際現に旧司法書士法の規定により法務局又は地方法務局の長に対してされている通知その他の行為は,施行日以後は新司法書士法の相当規定により法務大臣に対してされた通知その他の行為とみなすことを規定し,第3項において,司法書士又は司法書士法人の懲戒手続に関し,施行日前に旧司法書士法又はこれに基づく命令の規定により法務局又は地方法務局の長に対して報告その他の手続をしなければならない事項で,施行日前にその手続がされていないものについては,施行日以後は,これを新司法書士法又はこれに基づく命令の相当規定により法務大臣に対してその手続をしなければならないとされた事項についてその手続がされていないものとみなして,当該相当規定を適用することを規定している。
(7) 土地家屋調査士に関する経過措置(附則第7条~第1 1条関係)
   土地家屋調査士に関する経過措置は,司法書士に関する経過措置(第2条から第6条まで)と同趣旨である。
(8) 政令への委任(附則第12条関係)
   附則第12条は,附則第2条から第11条までに規定するもののほか,この法律の施行に関し必要な経過措置は,政令で定めることとするものである。

5 今後のスケジュール
   本年通常国会への提出を予定

【別紙】
1 懲戒を地方支分機関の長ではなく,所管大臣の権限としている他の職業専門資格士法公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)
(虚偽又は不当の証明についての懲戒)
第三十条 公認会計士が,故意に,虚偽,錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽,錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合には,内閣総理大臣は,前条第二号又は第三号に掲げる懲戒の処分をすることができる。
2 公認会計士が,相当の注意を怠り,重大な虚偽,錯誤又は脱漏のある財務書類を重大な虚偽,錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合には,内閣総理大臣は,前条第一号又は第二号に掲げる懲戒の処分をすることができる。
3 監査法人が虚偽,錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽,錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合において,当該証明に係る業務を執行した社員である公認会計士に故意又は相当の注意を怠った事実があるときは,当該公認会計士について前二項の規定を準用する。
(一般の懲戒)
第三十一条 公認会計士がこの法律若しくはこの法律に基づく命令に違反した場合又は第三十四条の二の規定による指示に従わない場合には,内閣総理大臣は,第二十九条各号に掲げる懲戒の処分をすることができる。
2 公認会計士が,著しく不当と認められる業務の運営を行った場合には,内閣総理大臣は,第二十九条第一号又は第二号に掲げる懲戒の処分をすることができる。
(権限の委任)
第四十九条の四 内閣総理大臣は,この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を金融庁長官に委任する。
2~5 (略)
○税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)
(脱税相談等をした場合の懲戒)
第四十五条 財務大臣は,税理士が,故意に,真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき,又は第三十六条の規定に違反する行為をしたときは,二年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる。
2 財務大臣は,税理士が,相当の注意を怠り,前項に規定する行為をしたときは,戒告又は二年以内の税理士業務の停止の処分をすることができる。
(一般の懲戒)
第四十六条 財務大臣は,前条の規定に該当する場合を除くほか,税理士が,第三十三条の二第一項若しくは第二項の規定により添付する書面に虚偽の記載をしたとき,又はこの法律若しくは国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反したときは,第四十四条に規定する懲戒処分をすることができる。
○社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)
(不正行為の指示等を行った場合の懲戒)
第二十五条の二 厚生労働大臣は,社会保険労務士が,故意に,真正の事実に反して申請書等の作成,事務代理若しくは紛争解決手続代理業務を行ったとき,又は第十五条の規定に違反する行為をしたときは,一年以内の開業社会保険労務士若しくは開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士の業務の停止又は失格処分の処分をすることができる。
2 厚生労働大臣は,社会保険労務士が,相当の注意を怠り,前項に規定する行為をしたときは,戒告又は一年以内の開業社会保険労務士若しくは開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士の業務の停止の処分をすることができる。
(一般の懲戒)
第二十五条の三 厚生労働大臣は,前条の規定に該当する場合を除くほか,社会保険労務士が,第十七条第一項若しくは第二項の規定により添付する書面若しくは同条第一項若しくは第二項の規定による付記に虚偽の記載をしたとき,この法律及びこれに基づく命令若しくは労働社会保険諸法令の規定に違反したとき,又は社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行があったときは,第二十五条に規定する懲戒処分をすることができる。
(権限の委任)
第三十条 この法律に規定する厚生労働大臣の権限は,厚生労働省令で定めるところにより,地方厚生局長及び都道府県労働局長に委任することができる。
2 前項の規定により地方厚生局長に委任された権限は,厚生労働省令で定めるところにより,地方厚生支局長に委任することができる。
○弁理士法(平成十二年法律第四十九号)
(懲戒の種類)
第三十二条 弁理士がこの法律若しくはこの法律に基づく命令に違反したとき,又は弁理士たるにふさわしくない重大な非行があったときは,経済産業大臣は,次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 二年以内の業務の全部又は一部の停止
三 業務の禁止

2 戒告について聴聞手続を必要的としている他の職業専門資格士法
○公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)
(懲戒の種類)
第二十九条 公認会計士に対する懲戒処分は,次の三種とする。
一 戒告
二 二年以内の業務の停止
三 登録の抹消
(処分の手続)
第三十二条(略)
2 . 3 (略)
4 内閣総理大臣は,第三十条又は第三十一条の規定により第二十九条第一号又は第二号に掲げる懲戒の処分をしようとするときは,行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず,聴聞を行わなければならない。
5 第三十条又は第三十一条の規定による懲戒の処分は,聴聞を行った後,相当な証拠により第三十条又は第三十一条に規定する場合に該当する事実があると認めたときにおいて,公認会計士・監査審査会の意見を聴いて行う。ただし,懲戒の処分が第四十一条の二の規定による勧告に基づくものである場合は,公認会計士・監査審査会の意見を聴くことを要しないものとする。
○海事代理士法(昭和二十六年法律第三十二号)
(懲戒)
第二十五条 海事代理士が,この法律又はこの法律に基く処分に違反したときは,地方運輸局長は,左に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 一年以内の業務の停止
三 登録のまつ消
2 地方運輸局長は,前項第一号又は第二号に掲げる処分をしようとするときは,行政手続法第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず,聴聞を行わなければならない。
3 地方運輸局長は,第一項各号に掲げる処分に係る聴聞を行うに当たっては,その期日の七日前までに,行政手続法第十五条第一項の規定による通知をしなければならない。
○社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)
(聴聞の特例)
第二十五条の四 厚生労働大臣は,第二十五条の二又は第二十五条の三の規定による戒告又は業務の停止の懲戒処分をしようとするときは,行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず,聴聞を行わなければならない。
2 厚生労働大臣は,第二十五条の二又は第二十五条の三の規定による懲戒処分に係る聴聞を行うに当たっては,その期日の一週間前までに,行政手続法第十五条第一項の規定による通知をし,かつ,聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
3 前項の聴聞の期日における審理は,公開により行わなければならない。
○弁理士法(平成十二年法律第四十九号)
(懲戒の種類)
第三十二条 弁理士がこの法律若しくはこの法律に基づく命令に違反したとき,又は弁理士たるにふさわしくない重大な非行があったときは,経済産業大臣は,次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 二年以内の業務の全部又は一部の停止
三 業務の禁止
(懲戒の手続)
第三十三条(略)
2. 3 (略)
4 経済産業大臣は,前条の規定により戒告又は二年以内の業務の停止の処分をしようとするときは,行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず,聴聞を行わなければならない。
5 前条の規定による懲戒の処分は,聴聞を行った後,相当な証拠により同条に該当する事実があると認めた場合において,審議会の意見を聴いて行う。
○弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)
(行政手続法の適用除外)
第四十三条の十五 弁護士会がこの法律に基づいて行う処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章、第三章及び第四章の二の規定は、適用しない。
(行政手続法の適用除外)
第四十九条の二 日本弁護士連合会がこの法律に基づいて行う処分については、行政手続法第二章、第三章及び第四章の二の規定は、適用しない。
(懲戒委員会の審査手続)
第六十七条(略)
2 審査を受ける弁護士又は審査を受ける弁護士法人の社員は、審査期日に出頭し、かつ、陳述することができる。この場合において、その弁護士又は弁護士法人の社員は、委員長の指揮に従わなければならない。
3  (略)

3 清算結了後の職業専門資格法人に対する懲戒に関する規定を設けている他の職業専門資格士法
○公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)
(虚偽又は不当の証明等についての処分等)
第三十四条の二十一(略)
2~4 (略)
5 第二項及び第三項の規定による処分の手続に付された監査法人は,清算が結了した後においても, この条の規定の適用については,当該手続が結了するまで,なお存続するものとみなす。
6 . 7 (略)
○行政書士法(昭和二十六年法律第四号)
(行政書士法人に対する懲戒)
第十四条の二(略)
2 . 3 (略)
4 第一項又は第二項の規定による処分の手続に付された行政書士法人は,清算が結了した後においても, この条の規定の適用については,当該手続が結了するまで,なお存続するものとみなす。
5 (略)
○税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)
(違法行為等についての処分)
第四十八条の二十(略)
2 (略)
3 第一項の規定による処分の手続に付された税理士法人は,清算が結了した後においても, この条の規定の適用については, 当該手続が結了するまで,なお存続するものとみなす。
4 (略)
○社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)
(違法行為等についての処分)
第二十五条の二十四(略)
2 (略)
3 第一項の規定による処分の手続に付された社会保険労務士法人は,清算が結了した後においても, この条の規定の適用については, 当該手続が結了するまで, なお存続するものとみなす。
4 (略)

4 一人法人を許容している他の職業専門資格士法
○社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)
(設立)
第二十五条の六 社会保険労務士は,この章の定めるところにより,社会保険労務士法人(第二条第一項第一号から第一号の三まで,第二号及び第三号に掲げる業務を行うことを目的として,社会保険労務士が設立した法人をいう。以下同じ。)を設立することができる。
(設立の手続)
第二十五条の十一 社会保険労務士法人を設立するには,その社員になろうとする社会保険労務士が,定款を定めなければならない。
2 . 3 (略)
(解散)
第二十五条の二十二 社会保険労務士法人は,次に掲げる理由によって解散する。
一~六(略)
七 社員の欠亡
2 (略)
(社会保険労務士法人の継続)
第二十五条の二十二の二 清算人は,社員の死亡により前条第一項第七号に該当するに至った場合に限り,当該社員の相続人(第二十五条の二十五第二項において準用する会社法第六百七十五条において準用する同法第六百八条第五項の規定により社員の権利を行使する者が定められている場合にはその者)の同意を得て,新たに社員を加入させて社会保険労務士法人を継続することができる。


第2 関連記事その他
1 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(第198回国会閣法第46号)は,衆参両院において全会一致で成立しました(衆議院HPの「議案審議経過情報」,及び参議院HPの「議案情報」参照)。
2 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(令和元年6月12日法律第29号)は,公布の日から1年6月以内の政令で定める日である令和2年8月1日から施行されました(法務省HPの「司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律について」参照)。
3 登記はその記載事項につき事実上の推定力を有しますから,登記事項は反証のない限り真実であると推定されます(最高裁昭和46年6月29日判決(判例秘書に掲載))。
4 法務省の情報公開文書として以下の文書を掲載しています。
(法律案審議録に含まれている資料)
・ 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(第198回国会閣法第46号)の概要
・ 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(第198回国会閣法第46号) 説明要旨
・ 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(第198回国会閣法第46号)の準用読替表
・ 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(第198回国会閣法第46号)の新旧条文対照表
・ 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(第198回国会閣法第46号) 用例集目次
・ 法務省民事局の追加御説明資料(1頁だけです。)
(国会答弁資料)
・ 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(令和元年6月12日法律第29号)の国会答弁資料(平成31年4月11日の参議院法務委員会)1/22/2
・ 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(令和元年6月12日法律第29号)の国会答弁資料(令和元年5月31日の衆議院法務委員会)1/42/43/44/4
4 以下の記事も参照してください。
 司法書士資格の変遷
・ 司法書士の業務に関する司法書士法の定めの変遷
・ 弁護士以外の士業の懲戒制度
法律案審議録からの抜粋です。


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