目次
第1 総論
1 前科抹消の意義
2 前科が抹消される場合
3 前科抹消があった場合の効果
第2 前科抹消があった場合,犯罪経歴証明書に記載される前科ではなくなること
1 犯罪経歴証明書
2 前科抹消があった場合の取扱い
第3 前科抹消があった場合,犯罪人名簿に記載される前科ではなくなること
1 犯罪人名簿
2 本籍市区町村による犯罪歴の把握
3 検察庁に対して行う,刑の消滅等に関する照会
4 前科抹消があった場合の取扱い
第4 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと,及び最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
1 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと
2 最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
第5 就職希望者の前科前歴の秘匿に関する裁判例
第6 前科抹消とは関係のない事項
1 総論
2 検察庁の犯歴抹消
3 海外旅行における取扱い
第7 関連条文
1 刑法
2 少年法
3 公職選挙法
第8 関連記事その他
第1 総論
1 前科抹消の意義
昭和35年版犯罪白書の「四 前科の抹消」には,前科抹消の意義として以下の記載があります。
犯罪を犯し刑を科せられた者は,いわゆる前科者として,いろいろな面で不利益な取扱いをうけることがある。社会的には,前科者という烙印をおされ白眼視されることもあろうし,法律的には,前科者のうち懲役に処せられた者が,その執行をおわった後五年内にさらに罪を犯し,ふたたび懲役を科せられる場合には,累犯として,法定刑が二倍となるし,また,資格に関する法律(たとえば,弁護士法,弁理士法,医師法など,その数は少なくない)で,一定の資格を制限され,公共的な職業につけないとされているのが少なくない。
前科者は,かように,社会的ないし法律的に不利益な取扱いをうけるが,すでに罪の償いをして更生し,または更生しようとしている者に対しては,いつまでもこのような不利益をあたえておくべきでない。こうして,前科抹消の制度が設けられた。前科の抹消とは,禁錮以上の刑の執行をおわってから罰金以上の刑に処せられず一〇年を無事に経過したとき,また,罰金以下の刑の執行をおわってから罰金以上の刑に処せられずに五年を無事に経過したときは,いずれも,さきの刑の言渡が効力を失うという制度である。刑の言渡の効力がなくなるのだから,前科の烙印も当然に抹消されるわけである。
2 前科が抹消される場合
(1) 以下の場合,前科が抹消されます(「犯罪経歴証明書発給要綱について(通達)」6項参照)。
① 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過しているとき(刑の全部の執行猶予の場合につき刑法27条の2,刑の一部の執行猶予の場合につき刑法27条の7)
② 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け,罰金以上の刑に処せられないで10年を経過しているとき(刑法34条の2第1項前段)
③ 罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を受け,罰金以上の刑に処せられないで5年を経過しているとき(刑法34条の2第1項後段)
④ 恩赦法の規定により大赦若しくは特赦を受け,又は復権を得たとき
⑤ 少年のとき犯した罪により刑に処せられてその執行を受け終わり,又は執行の免除を受けたとき(少年法60条)
(2)ア 「刑の執行が終わった」というのは例えば,以下の場合です。
① 現実に全部の刑の執行を受けた場合
② 仮釈放を取り消されることなくその期間を満了した場合
③ 未決勾留日数が刑に満つるまで算入された場合
イ 「刑の執行を免除された」というのは例えば,以下の場合です。
① 刑の時効が完成した場合(刑法31条)
② 外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたことにより,刑の執行を免除された場合(刑法5条ただし書)
③ 恩赦としての「刑の執行の免除」を受けた場合(恩赦法8条)
(3)ア 「刑に処せられた」とは,その刑の執行を受けたことをいうものではありませんから,刑の執行が猶予された場合も「刑に処せられた」に該当します(最高裁昭和24年3月31日判決参照)。
ただし,刑の執行猶予の期間が満了して刑の言渡しの効力が失われた場合(刑法27条),禁錮以上の刑に処せられたことがないこととなります。
イ 刑の執行が終わった場合の起算日は,刑の執行終了日の翌日です(累犯加重を定める刑法56条1項に関する最高裁昭和57年3月11日判決参照)。
(4)ア 刑法34条の2第1項に「刑の言渡しは,効力を失う」とあるのは,刑の言渡しに基く法的効果が将来に向って消滅するという趣旨であって,その刑の言渡しを受けたという既往の事実そのものを量刑判断にあたって斟酌することは同条項に違反しません(最高裁昭和29年3月11日判決参照)。
イ 刑法34条の2は,刑法の一部を改正する法律(昭和22年10月26日法律第124号)によって追加された条文であり,施行前に刑の言渡しを受けた人にも適用されました。
(5)ア 道交法違反の罰金刑(いわゆる赤切符)は刑の消滅の中断事由ですから,例えば,2016年8月に公職選挙法違反で罰金刑に処せられて罰金を納付し,2018年8月に道交法違反で再び罰金刑に処せられて罰金を納付した人の場合,復権令(令和元年10月22日政令第131号)の対象にはなりませんでした。
イ この場合,再び罰金以上の刑に処せられなければ,2023年8月(最後の罰金納付日から5年後の日)に2個の罰金前科が同時に消滅することとなります。
3 前科抹消があった場合の効果
(1)ア 前科抹消があった場合,以下の効果が発生します。
① 警察庁が発行する犯罪経歴証明書(海外の大使館・移民局等に提出するもの)に記載される前科ではなくなります。
② 市区町村役場が作成する犯罪人名簿に記載される前科ではなくなります。
③ すべての懲役前科について前科抹消があった場合,懲役前科に基づく資格制限(例えば,弁護士の欠格事由を定める弁護士法7条1号)がなくなります。
イ すべての罪について前科抹消があった場合,法令上の資格制限がすべてなくなります。
(2) 刑の執行猶予の期間満了(刑法27条の2及び刑法27条の7),又は刑の消滅(刑法34条の2)があった犯罪については恩赦の対象とする必要がないため,恩赦の対象とはなりません(恩赦の実施について(平成元年2月6日付の法務事務次官の依命通達)参照)。
(3)ア 懲役前科について復権したにすぎない場合,刑の消滅と異なり,執行猶予,累犯前科,刑の消滅等の刑法総則の適用上何らの変更も生じません(法律のひろば1989年4月号33頁参照)。
ただし,令和の御即位恩赦の場合,特別基準恩赦においても懲役前科は復権の対象外となりました。
イ 懲役前科について特赦があった場合,執行猶予の欠格事由及び累犯前科の対象から外れます。
ただし,令和の御即位恩赦の場合,特別基準恩赦における特赦は実施されませんでした。
第2 前科抹消があった場合,犯罪経歴証明書に記載される前科ではなくなること
1 犯罪経歴証明書
(1) 犯罪経歴証明書は,海外の公的機関(大使館・移民局等)の求めに応じて取得するものであり(警視庁HPの「渡航証明(犯罪経歴証明書)の申請について」参照),無犯罪証明書ともいいます(大阪府警察HPの「犯罪経歴証明書の申請手続きについて」参照)。
(2) 以下の文書を掲載しています。
① 警察証明事務マニュアル(平成19年3月改訂)
② 犯罪経歴証明書発給事由一覧(平成31年4月1日改定分)
2 前科抹消があった場合の取扱い
(1) 前科抹消があった場合,警察庁が発行する犯罪経歴証明書に記載される前科ではなくなります。
(2) 恩赦法に基づく復権を得た場合,禁錮以上の刑について10年が経過する前,及び罰金以下の刑について5年が経過する前であっても,犯罪経歴証明書に記載される前科ではないこととなります。
ただし,この場合,犯罪経歴証明書発給申請書(別記様式第1号)の注記欄にあるとおり,同申請書と一緒に,特赦状,復権状等を提出する必要があります。
第3 前科抹消があった場合,犯罪人名簿に記載される前科ではなくなること
1 犯罪人名簿
(1) 犯罪人名簿は,もともと大正6年4月12日の内務省訓令第1号により市区町村長が作成保管すべきものとされてきたものですが,戦後においては昭和21年11月12日内務省発地第279号による同省地方局長の都道府県知事あて通達によって選挙資格の調査等の資料として引きつづき作成保管され,昭和22年に地方自治法が施行された後も明文上の根拠規定のないまま従来どおり継続して作成保管されています(最高裁昭和56年4月14日判決における裁判官環昌一の反対意見参照)。
(2) 本籍市区町村長は,地方公共団体の自治事務として犯罪人名簿を作成しているのであって,特段の法的整備がなされているわけではありません(衆議院議員木村太郎君提出犯罪人名簿に関する質問に対する内閣答弁書(平成22年3月12日付))。
(3) 大阪市の犯歴事務に関するマニュアル(令和元年11月に情報提供された文書)を掲載しています。
2 本籍市区町村による犯罪歴の把握
(1) 罰金以上の刑に処する裁判が確定した場合,地方検察庁の本庁の犯歴事務担当官は,本籍市区町村長に対し,既決犯罪通知書を送付してその裁判に関し必要な事項を通知します(犯歴事務規程3条4項)から,本籍市区町村長はこれによって犯罪歴を把握しています。
(2) 前科登録と犯歴事務(五訂版)9頁には,「昭和35, 6年ころから道路交通法違反事件が急増し,従来の方式のままではその犯歴を適正かつ的確に登録管理することが不可能になったため, 同37年6月には,道路交通法違反の罪に係る裁判で罰金以下の刑に処したものについては,市区町村長に対する既決犯罪通知をしない取扱いが実施され」と書いてあります。
そのため,道交法違反の罰金前科については,そもそも本籍市区町村の犯罪人名簿に記載されていません。
(3) 恩赦があった場合,地方検察庁の本庁の犯歴担当事務官は,本籍市区町村長に対し,恩赦事項通知書を送付して恩赦に関し必要な事項を通知します(犯歴事務規程4条及び8条)。
3 検察庁に対して行う,刑の消滅等に関する照会
(1) 罰金以上の刑に処せられたことが刑の消滅の中断事由になります(刑法34条の2)ところ,道交法違反の罰金(いわゆる赤切符です。)については,検察庁から本籍市区町村に対する既決犯罪通知が送付されません。
そのため,市区町村においては,犯罪人名簿に登録された犯歴について,刑の消滅の事実の有無を知る必要があるときは,その都度,有罪の確定裁判の言渡しを受けた者の本籍地を管轄する地方検察庁(本籍地検)に対し,その旨の照会を行わなければなりません。
(2) 市区町村が刑の消滅等に関する照会を行うのは,例えば,以下の場合です(前科登録と犯歴事務(五訂版)160頁及び161頁参照)。
① 行政官庁等から犯歴に関する身分証明の依頼があった場合
② 犯罪人名簿の整備・閉鎖を行う場合
(3) 令和元年10月10日付の総務省の行政文書開示決定通知書によって開示された,刑の消滅等に関する照会の書式について(昭和34年8月13日付の自治庁行政局行政課長の通知)を掲載しています。
4 前科抹消があった場合の取扱い
(1) 前科抹消の対象となった犯歴については,犯罪人名簿から削除されます。
(2) 例えば,那覇市犯罪人名簿事務取扱規程(昭和51年5月1日訓令第4号)には以下の条文があります。
① 1条(目的)
この訓令は、犯罪人名簿(以下「名簿」という。)の整備及び身分証明の手続等について規定し、もって身分証明及び選挙人名簿の調製事務の適正な処理に寄与することを目的とする。
② 2条(定義)
この訓令において「身分証明」とは、犯歴の有無に関する証明をいう。
③ 3条(名簿の取扱い)
名簿は、第1条の目的のためにのみ整備及び保管され、その登録されている事項は人権に重大な影響を与えるので取扱いを厳重にし、担当職員以外にみだりに閲覧させてはならない。
④ 6条(通知の取扱い)
1 市長は、犯歴票保管庁の犯歴係事務官、刑務所の長、更生保護委員会の委員長及び保護観察所の長から刑の執行状況等に関する各種通知書を受理したときは、次の各号により名簿に記載する。
(中略)
(2) 恩赦事項通知書を受理したときは、その通知に係る既記載事項を朱線で消除又は変更し、備考欄に恩赦事項を記載する。
(中略)
(9) 自由刑執行終了通知書を受理したときは、刑終了日の欄に刑終了の年月日を、備考欄に刑の始期年月日を記載する。
(中略)
(11) 仮出獄期間満了通知書を受理したときは、刑終了日の欄に仮出獄期間満了の年月日を、備考欄に仮出獄の年月日及び仮出獄期間満了の旨を記載する。
⑤ 10条(名簿の閉鎖)
1 名簿に記載された者が次の各号のいずれかに該当する場合は、名簿を閉鎖し、破棄又は焼却する。
(1) 刑法(明治40年法律第45号)第34条の2の期間を経過したとき。
(2) 刑法第27条の期間が満了したとき。
(3) 恩赦により刑の言渡しがその効力を失ったとき。
(4) 再審又は非常上告の結果無罪になったとき。
(5) 少年法(昭和23年法律第168号)第60条の適用を受けたとき。
(6) 本籍が他の市町村に異動したとき又は他の国籍を取得し、日本の国籍を離脱したとき。
(7) 死亡したとき。
2 前項(第6号及び第7号を除く。)の規定により名簿を閉鎖しようとするときは、犯歴票保管庁に照会し、確認した後に閉鎖するものとする。
第4 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと,及び最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
1 検察庁は行政官庁等からの前科照会に回答していないこと
前科登録と犯歴事務(五訂版)26頁ないし28頁には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 検察庁における前科の調査回答は,検察,裁判の事務処理上これを必要とするものについて行われるものであることは犯歴把握の目的からみて当然のことであり,みだりに前科が他の目的に利用されることはない。
したがって,一般人からの照会に対してはもちろん,法令に基づいて付与される特定の資格が前科のあることを欠格事由とする場合において, これを取り扱う主務官庁が欠格事由の有無の判断資料として前科を知る必要がある場合であっても,原則としてその照会には応じていない。
行政官庁等からの法令上の欠格事由の調査のための前科照会に対する回答事務は,従前から地方公共団体が行ってきた身分証明事務に属するものと考えられているからである。
② 市区町村の犯罪人名簿の記載のみでは,恩赦に該当しているか,刑の言渡しの効力が失われているか等が明確でないときは,市区町村長から検察庁に照会が行われれば回答することになるが, この場合でも,道交犯歴については原則としてその調査は行われない。
道交犯歴自体が法令上の欠格事由となることはごくまれにしかないからである。
③ 法令が罰金の刑を欠格事由としている場合及び叙位,叙勲又は褒章用の刑罰等調書作成のために道交犯歴の回答を必要とする場合は,道交犯歴をも調査するものとして運用されているので, この照会に際しては,照会書に前科の利用目的及び道交犯歴の回答を要する旨を,例えば「叙勲のため道交犯歴要回答」等と明記する必要がある。
なお,検察庁では,前科の利用目的が栄典を目的とするものであっても,各省の大臣表彰,知事表彰,市区町村長表彰等表彰を目的とする前科照会には一切応じていない。条例等で前科を表彰の欠格事由としている場合でも,検察庁における犯歴把握の目的外の利用と認められるからである。
したがって, この場合は,市区町村において,道交犯歴以外の前科を備付けの犯罪人名簿により回答するか否かは,市区町村が独自の判断で決することになる。
犯歴事務の運用面で,行政官庁等からの法人及び外国人の前科照会に対しては,個別的に人の名誉の保持.人権の尊重を十分に考慮しつつ,照会を求める事項,回答を必要とする理由, 回答の使用目的等を慎重に検討した上,他に調査の方法がなく,真にやむを得ないと認める場合には,前記の方針を若干緩和して照会に応ずる取扱いとしている。
④ 市区町村を含む行政官庁等からの前科の照会に対しては,特赦・大赦・復権のあった前科,刑法34条の2の規定により刑の言渡しの効力が失われた前科,執行猶予期間を経過した前科及び少年法60条1項又は2項の適用がある前科については回答されない。
しかし,照会事項が恩赦になっているか,刑が消滅しているか等ということであれば, これについて回答されることは当然である。
2 最高裁昭和56年4月14日判決の判示内容
(1) 最高裁昭和56年4月14日判決は以下のとおり判示しています(ナンバリングを追加しています。)。
① 前科及び犯罪経歴(以下「前科等」という。)は人の名誉、信用に直接にかかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するのであつて、市区町村長が、本来選挙資格の調査のために作成保管する犯罪人名簿に記載されている前科等をみだりに漏えいしてはならないことはいうまでもないところである。
② 前科等の有無が訴訟等の重要な争点となつていて、市区町村長に照会して回答を得るのでなければ他に立証方法がないような場合には、裁判所から前科等の照会を受けた市区町村長は、これに応じて前科等につき回答をすることができるのであり、同様な場合に弁護士法二三条の二に基づく照会に応じて報告することも許されないわけのものではないが、その取扱いには格別の慎重さが要求されるものといわなければならない。
(2) 最高裁昭和56年4月14日判決の判示と異なり,犯罪人名簿は,弁護士登録等のための資格調査でも利用されています(東京都HPの「○犯罪人名簿の取扱について」参照)。
第5 就職希望者の前科前歴の秘匿に関する裁判例
仙台地裁昭和60年9月19日判決(判例秘書に掲載)は,就職希望者の前科前歴の秘匿に関して以下のとおり判示しています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 使用者が雇用契約を締結するにあたつて相手方たる労働者の労働力を的確に把握したいと願うことは、雇用契約が労働力の提供に対する賃金の支払という有償双務関係を継続的に形成するものであることからすれば、当然の要求ともいえ、遺漏のない雇用契約の締結を期する使用者から学歴、職歴、犯罪歴等その労働力の評価に客額的に見て影響を与える事項につき告知を求められた労働者は原則としてこれに正確に応答すべき信義則上の義務を負担していると考えられ、したがつて、使用者から右のような労働力を評価する資料を獲得するための手段として履歴書の提出を求められた労働者は、当然これに真実を記載すべき信義則上の義務を負うものであつて、その履歴書中に「賞罰」に関する記載欄がある限り、同欄に自己の前科を正確に記載しなければならないものというべきである(なお、履歴書の賞罰欄にいう「罰」とは一般に確定した有罪判決(いわゆる「前科」)を意味するから、使用者から格別の言及がない限り同欄に起訴猶予事案等の犯罪歴(いわわゆる「前歴」)まで記載すべき義務はないと解される。)。
そして、刑の消滅制度が、犯罪者の更生と犯罪者自身の更生意欲を助長するとの刑事政策的な見地から一定の要件のもとに刑の言渡しの効力を将来に向かつて失効させ、これにより犯罪者に前科のない者と同様の待遇を与えることを法律上保障しているとはいえ、同制度は、犯罪者の受刑という既往の事実そのものを消滅させるものではないし、またその法的保障も対国家に関するもので直接私人間を規律するものではないことからみても、同制度の存在が、当然には使用者に対し、前科の消滅した者については前科のない者と同一に扱わなければならないとの拘束を課すことになるものでないことはいうまでもない。
② しかしながら、犯罪者の更生にとつて労働の機会の確保が何をおいてもの課題であるのは今更いうまでもないところであつて、既に刑の消滅した前科について使用者があれこれ詮策し、これを理由に労働の場の提供を拒絶するような取扱いを一般に是認するとすれば、それは更生を目指す労働者にとつて過酷な桎梏となり、結果において、刑の消滅制度の実効性を著しく減殺させ同制度の指向する政策目標に沿わない事態を招来させることも明らかである。
したがつて、このような刑の消滅制度の存在を前提に、同制度の趣旨を斟酌したうえで前科の秘匿に関する労使双方の利益の調節を図るとすれば、職種あるいは雇用契約の内容等から照らすと、既に刑の消滅した前科といえどもその存在が労働力の評価に重大な影響を及ぼさざるをえないといつた特段の事情のない限りは、労働者は使用者に対し既に刑の消滅をきたしている前科まで告知すべき信義則上の義務を負担するものではないと解するのが相当であり、使用者もこのような場合において、消滅した前科の不告知自体を理由に労働者を解雇することはできないというべきである。
第6 前科抹消とは関係のない事項
1 総論
前科抹消は,刑事事件の有罪判決を対象とするものです。
そのため,前科抹消によって,①交通違反の違反点数が消滅してゴールド免許を取得できるようになったり,②運転免許の取消し又は停止が救済されたり,③運転免許証の欠格期間が短縮されたり,④交通違反の反則金の支払義務が消滅したり,⑤医師法違反等を理由とする医師に対する行政処分が消滅したりすることはありません。
2 検察庁の犯歴抹消
前科調書作成のために検察庁が管理している犯歴の抹消は,有罪の判決を受けた人が死亡した時点で行われている(犯歴事務規程18条参照)のであって,前科抹消によって犯歴が抹消されるわけではないです。
3 海外旅行における取扱い
(1) 日本人が海外に行く場合
ア 執行猶予付の懲役刑又は禁錮刑に処せられた場合,執行猶予期間が満了するまでの間,旅券の発給を拒否される可能性があります(旅券法13条1項3号参照)。
イ 留置所ブログの「執行猶予中のパスポート取得について」には以下の記載があります。
執行猶予中のパスポート申請にはその他の書類が必要になり、また審査には1ヶ月以上の時間がかかり、その審査によってパスポートが発給されない場合もあります。
旅券法には「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」に対しては、一般旅券の発給をしないことができる(13条1項3号)という規定があるからです。
執行猶予中に外務省の審査により発給されるパスポートは、「渡航先」や「有効期限(8ヶ月)」が制限された特別なパスポートが発給されます。
ウ 実刑に処せれらた場合,仮釈放されていたとしても,刑期が満了するまでの間,旅券の発給を拒否される可能性があります(旅券法13条1項3号参照)。
エ 刑罰等について虚偽の申告をして旅券の交付を受けた場合,5年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられ,又はこれを併科されます(旅券法23条1項1号)。
オ アメリカ,カナダ,オーストラリア「以外の」国に渡航する場合,入国審査で犯罪歴の有無を質問されることはないみたいです(弁護士法人泉総合法律事務所HPの「前科の生活への影響とは~前科者の資格制限、仕事、履歴書、海外旅行」参照)。
カ 行政書士佐藤智代法務事務所ブログの「「前科があります」アメリカビザ申請」には以下の記載があります。
① 前科がある方は、ESTAでの入国は出来ません。米国への渡航には目的に応じたビザを取得する必要があります。
逮捕後に経過した期間に関係なく過去の犯罪歴はすべて申告しなくてはならないため、犯罪歴がある方は生涯米国への渡航にESTAを利用することはできません。
きっと大丈夫だろうと、ESTAで犯歴を申告しない「虚偽の申請」は絶対にお勧めしません。
我が国と同様、アメリカへの入国不適格事由に「犯罪者」と規定されています。
② ビザ申請時の逮捕歴や有罪の判決を受けたことがあるかの質問に対しては、「Yes」か「No」でしか回答できません。この質問に、「Yes」と回答した場合に、上記の犯罪者の規定にあてはまるのかどうかを領事部が審査します。
そして、
・ 18歳未満で犯罪の回数が1回だけの場合で
・ 犯罪発生日から5年以上経過しているか、拘禁刑の場合は、刑執行から5年以上経過している場合
・ または、法定刑が1年以下の犯罪で下された量刑が6か月以下の場合
であれば、発給してもらえる可能性はあります。
キ 事実上の問題として,刑の消滅等があった場合,警察庁の犯罪経歴証明書に記載されなくなるわけですから,海外の公的機関(大使館・移民局等)が警察庁の犯罪経歴証明書を通じて知ることはできなくなります。
また,道交法違反の罰金前科(いわゆる赤切符)については,そもそも市区町村の犯罪人名簿に記載されませんから,海外の公的機関(大使館・移民局等)が市区町村に照会して調査することはそもそも不可能です。
ク 警察証明事務マニュアル(平成19年3月改訂)末尾4頁には,「警察庁は、証明書に記載される犯罪経歴は捜査上の資料であり、我が国警察当局及び司法当局以外には開示されないものであることを理由として、現行法上は行政サービスの対象とはなり得ないとの立場を堅持している」と書いてあります。
(2) 外国人が日本に入国する場合
ア 出入国管理及び難民認定法(略称は「入管法」です。)5条1項4号は「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。」を無期限の上陸拒否事由としています。
イ 「刑に処せられた」とは,歴史的事実として刑に処せられたことをいうのであって,刑の確定があれば足り,刑の執行を受けたか否か,刑の執行を終えているか否かを問いません。
また,「刑に処せられたことのある者」には、執行猶予期間中の者、執行猶予期間を無事経過した者(刑法(明治四十年法律第四十五号)第二十七条)、刑法の規定により刑の言渡しの効力が消滅した者(同法第三十四条の二)及び恩赦法(昭和二十二年法律第二十号)の規定により刑の言渡しの効力が消滅した者(同法第三条及び第五条)も含まれます(出入国管理及び難民認定法逐条解説(改訂第四版)208頁)。
ウ 上陸拒否事由に該当する場合,上陸拒否の特例(平成22年7月1日施行の入管法5条の2)が適用されるか,上陸特別許可(入管法12条)を受けない限り,出入国港において日本国に上陸することができません。
上陸拒否の特例が適用される例としては,①在留資格認定証明書の交付を受けた場合(入管法7条の2),②再入国の許可を受けた場合(入管法26条1項)及び③在留特別許可を受けた場合(入管法50条1項)があります。この場合,法務大臣から,特定の事由のみによっては上陸を拒否しないこととした旨を記載した「通知書」を交付されますから,上陸審査時に入国審査官に対してこの通知書を提示すれば,通常の上陸審査手続により上陸を許可してもらえます。
上陸特別許可は,退去強制歴があるため上陸拒否期間中の外国人が,本国で日本人と出会って婚姻したような場合(入管法12条1項3号参照)に適用されることがあります(法務省HPの「「上陸を特別に許可された事例及び上陸を特別に許可されなかった事例について」の公表」参照)。この場合,入国審査官,特別審理官及び法務大臣という三段階の手続を経る必要があります。
エ Wikipediaの「指紋押捺」に以下の記載があります(指紋押捺制度が合憲であることにつき,最高裁平成7年12月15日判決(裁判所HPに掲載)参照)。
2007年(平成19年)11月20日、入管難民法改正が施行され、「特別永住者、外交官、政府招待者、16歳未満の者、日本国籍保持者」以外の訪日外国人は、入国審査にあたり、両手の人さし指の指紋採取と顔の写真撮影が義務・必須化された。同様の制度を導入するのはアメリカ合衆国のUS-VISITに続き、世界で2番目となった。
指紋と顔写真のデジタルデータは、空港から出入国在留管理庁のサーバに送られ、5秒前後でいわゆるブラックリストと照合される。同リストには国際刑事警察機構(ICPO)と日本の警察が指名手配した約1万4,000人と、過去に日本から強制退去となった約80万人の外国人の指紋や顔写真が登録されている。入国管理局は、ブラックリストに指紋が載っている人物がJ-BISを通過できる確率は、0.001%と試算をしている。
オ 出入国在留管理庁HPに「入国・帰国手続<査証・在留資格認定証明書>」が載っています。
恩赦の効果を含む前科抹消につき,この本を参照しながらブログ記事を作成しました。
第7 関連条文
1 刑法
・ 27条の2(刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
・ 27条の7(刑の一部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、その懲役又は禁錮を執行が猶予されなかった部分の期間を刑期とする懲役又は禁錮に減軽する。この場合においては、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日において、刑の執行を受け終わったものとする。
・ 34条の2(刑の消滅)
① 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
② 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
2 少年法
・ 60条(人の資格に関する法令の適用)
① 少年のとき犯した罪により刑に処せられてその執行を受け終り、又は執行の免除を受けた者は、人の資格に関する法令の適用については、将来に向つて刑の言渡を受けなかつたものとみなす。
② 少年のとき犯した罪について刑に処せられた者で刑の執行猶予の言渡を受けた者は、その猶予期間中、刑の執行を受け終つたものとみなして、前項の規定を適用する。
③ 前項の場合において、刑の執行猶予の言渡を取り消されたときは、人の資格に関する法令の適用については、その取り消されたとき、刑の言渡があつたものとみなす。
3 公職選挙法
・ 11条(選挙権及び被選挙権を有しない者)
① 次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
一 削除
二 禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
三 禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
四 公職にある間に犯した刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十七条から第百九十七条の四までの罪又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(平成十二年法律第百三十号)第一条の罪により刑に処せられ、その執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた者でその執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた日から五年を経過しないもの又はその刑の執行猶予中の者
五 法律で定めるところにより行われる選挙、投票及び国民審査に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者
② この法律の定める選挙に関する犯罪に因り選挙権及び被選挙権を有しない者については、第二百五十二条の定めるところによる。
③ 市町村長は、その市町村に本籍を有する者で他の市町村に住所を有するもの又は他の市町村において第三十条の六の規定による在外選挙人名簿の登録がされているものについて、第一項又は第二百五十二条の規定により選挙権及び被選挙権を有しなくなるべき事由が生じたこと又はその事由がなくなつたことを知つたときは、遅滞なくその旨を当該他の市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
・ 11条の2(被選挙権を有しない者)
公職にある間に犯した前条第一項第四号に規定する罪により刑に処せられ、その執行を終わり又はその執行の免除を受けた者でその執行を終わり又はその執行の免除を受けた日から五年を経過したものは、当該五年を経過した日から五年間、被選挙権を有しない。
・ 252条
(選挙犯罪による処刑者に対する選挙権及び被選挙権の停止)
① この章に掲げる罪(第二百三十六条の二第二項、第二百四十条、第二百四十二条、第二百四十四条、第二百四十五条、第二百五十二条の二、第二百五十二条の三及び第二百五十三条の罪を除く。)を犯し罰金の刑に処せられた者は、その裁判が確定した日から五年間(刑の執行猶予の言渡しを受けた者については、その裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間)、この法律に規定する選挙権及び被選挙権を有しない。
② この章に掲げる罪(第二百五十三条の罪を除く。)を犯し禁錮以上の刑に処せられた者は、その裁判が確定した日から刑の執行を終わるまでの間若しくは刑の時効による場合を除くほか刑の執行の免除を受けるまでの間及びその後五年間又はその裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間、この法律に規定する選挙権及び被選挙権を有しない。
③ 第二百二十一条、第二百二十二条、第二百二十三条又は第二百二十三条の二の罪につき刑に処せられた者で更に第二百二十一条から第二百二十三条の二までの罪につき刑に処せられた者については、前二項の五年間は、十年間とする。
④ 裁判所は、情状により、刑の言渡しと同時に、第一項に規定する者(第二百二十一条から第二百二十三条の二までの罪につき刑に処せられた者を除く。)に対し同項の五年間若しくは刑の執行猶予中の期間について選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用せず、若しくはその期間のうちこれを適用すべき期間を短縮する旨を宣告し、第一項に規定する者で第二百二十一条から第二百二十三条の二までの罪につき刑に処せられたもの及び第二項に規定する者に対し第一項若しくは第二項の五年間若しくは刑の執行猶予の言渡しを受けた場合にあつてはその執行猶予中の期間のうち選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用すべき期間を短縮する旨を宣告し、又は前項に規定する者に対し同項の十年間の期間を短縮する旨を宣告することができる。
4 旅券法
・ 13条(一般旅券の発給等の制限)
① 外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。
一 渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者
二 死刑、無期若しくは長期二年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾こう引状、勾こう留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者
三 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
四 第二十三条の規定により刑に処せられた者
五 旅券若しくは渡航書を偽造し、又は旅券若しくは渡航書として偽造された文書を行使し、若しくはその未遂罪を犯し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百五十五条第一項又は第百五十八条の規定により刑に処せられた者
六 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律(昭和二十八年法律第二百三十六号)第一条に規定する帰国者で、同法第二条第一項の措置の対象となつたもの又は同法第三条第一項若しくは第四条の規定による貸付けを受けたもののうち、外国に渡航したときに公共の負担となるおそれがあるもの
七 前各号に掲げる者を除くほか、外務大臣において、著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
② 外務大臣は、前項第七号の認定をしようとするときは、あらかじめ法務大臣と協議しなければならない。
・ 23条(罰則)
① 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 この法律に基づく申請又は請求に関する書類に虚偽の記載をすることその他不正の行為によつて当該申請又は請求に係る旅券又は渡航書の交付を受けた者
二 他人名義の旅券又は渡航書を行使した者
三 行使の目的をもつて、自己名義の旅券又は渡航書を他人に譲り渡し、又は貸与した者
四 行使の目的をもつて、他人名義の旅券又は渡航書を譲り渡し、若しくは貸与し、譲り受け、若しくは借り受け、又は所持した者
五 行使の目的をもつて、旅券又は渡航書として偽造された文書を譲り渡し、若しくは貸与し、譲り受け、若しくは借り受け、又は所持した者
六 第十九条第一項の規定により旅券の返納を命ぜられた場合において、同項に規定する期限内にこれを返納しなかつた者
七 効力を失つた旅券又は渡航書を行使した者
② 営利の目的をもつて、前項第一号、第四号又は第五号の罪を犯した者は、七年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
③ 第一項(第四号及び第五号の所持に係る部分並びに第六号を除く。)及び前項(第一項第四号及び第五号の所持に係る部分を除く。)の未遂罪は、罰する。
④ 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 一般旅券に記載された渡航先以外の地域に渡航した者
二 渡航書に帰国の経由地が指定されている場合において、経由地以外の地域に渡航した者
5 出入国管理及び難民認定法
(上陸の拒否)
第五条 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。
(中略)
四 日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。ただし、政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りでない。
第8 関連記事その他
1 司法研究の委嘱を受けた裁判官は,研究題目等によつては身分帳簿の内容を了知することが許される場合があるとされています(最高裁昭和57年1月28日決定)。
2 前科証拠は,自然的関連性があることに加え,証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに証拠能力が肯定され,前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合は,前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであるときに証拠能力が肯定されます(最高裁平成24年9月7日判決)。
3 以下の記事も参照してください。
・ 恩赦制度の存在理由
・ 恩赦の手続
・ 恩赦申請時に作成される調査書
・ 恩赦の効果