司法研修所刑事裁判教官の名簿


目次
1 現職の司法研修所刑事裁判教官(着任日の新しい順番)
2 過去の司法研修所刑事裁判教官(離任日の新しい順番)
3 証拠書類の朗読又は要旨の告知
4 判決の宣告と訓戒
5 「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義
6 関連記事その他

1 現職の司法研修所刑事裁判教官(着任日の新しい順番)
60期の大西惠美裁判官(R6.3.14 ~ )
55期の向井亜紀子裁判官(R5.4.1 ~ )
57期の西山志帆裁判官(R5.4.1 ~ )
58期の福嶋一訓裁判官(R5.4.1 ~ )
46期の下津健司裁判官(R4.10.14 ~ )(上席)
59期の馬場崇裁判官(R4.7.25 ~ )
58期の田中昭行裁判官(R4.4.8 ~ )
57期の堀田佐紀裁判官(R3.12.13 ~)
57期の結城真一郎裁判官(R3.8.2 ~ )
55期の高森宣裕裁判官
(R3.3.18 ~ )
56期の伊藤大介裁判官(R3.3.18 ~)
58期の佐藤傑裁判官(R3.3.18 ~)

58期の小畑和彦裁判官(R2.4.1 ~ )


2 過去の司法研修所刑事裁判教官(離任日の新しい順番)
* 最高裁判事になった人は赤文字表記とし,高裁長官になった人は紫色文字表記としています
50期の細谷泰暢裁判官(H31.4.1 ~ R5.3.31)
54期の増尾崇裁判官(H31.4.1 ~ R5.3.31)
55期の薄井真由子裁判官(H31.4.1 ~ R5.3.31)
44期の河本雅也裁判官(R2.10.24 ~ R4.10.13)(上席)
57期の近藤和久裁判官(R2.4.1 ~ R4.7.24)
56期の渡辺美紀子裁判官(H29.4.1 ~ R4.4.7)
57期の林欣寛裁判官(R2.4.1 ~ R4.4.7)
53期の鎌倉正和裁判官H29.4.1 ~ R3.8.1,R3.12.13 ~ R4.3.17)
53期の蛯原意裁判官(H28.8.1 ~ R3.3.17)
54期の内田曉裁判官(H30.4.1 ~ R3.3.17)
54期の中村光一裁判官(H29.4.1 ~ R3.3.17)
41期の遠藤邦彦裁判官(H18.4.1 ~ H21.3.31,H30.7.12 ~ R2.10.23)
48期の佐藤弘規裁判官(H28.4.1 ~ R2.3.31)
49期の品川しのぶ裁判官(H28.4.1 ~ R2.3.31)
50期の丹羽芳徳裁判官(H30.4.1 ~ R2.3.31,R3.12.13 ~ R4.3.17)
49期の坂口裕俊裁判官(H28.4.1 ~ H31.3.31)
51期の加藤陽裁判官(H27.4.1 ~ H31.3.31)
54期の秋田志保裁判官(H27.4.1 ~ H31.3.31)
40期の細田啓介裁判官(H26.4.1 ~ H30.7.11)
50期の江口和伸裁判官(H26.4.1 ~ H30.3.31)
52期の井戸俊一裁判官(H26.4.1 ~ H30.3.31)
52期の戸苅左近裁判官(H28.4.1 ~ H30.3.31)
47期の神田大助裁判官(H25.2.8 ~ H29.3.31)
48期の島戸純裁判官(H25.4.1 ~ H29.3.31,R3.12.13 ~ R4.3.17)
51期の兒島光夫裁判官(H25.4.1 ~ H29.3.31)
52期の森喜史裁判官(H25.4.1 ~ H29.3.31)
46期の平出喜一裁判官(H25.4.1 ~ H28.7.31)
46期の染谷武宣裁判官(H27.11.27 ~ H28.3.31)
48期の友重雅裕裁判官(H26.4.1 ~ H28.3.31)
48期の西川篤志裁判官(H24.4.1 ~ H28.3.31)
50期の宮田祥次裁判官(H24.4.1 ~ H28.3.31)
52期の吉田智宏裁判官(H26.4.1 ~ H28.3.31)
50期の三村三緒裁判官(H24.4.1 ~ H27.11.26)
46期の吉井隆平裁判官(H23.4.1 ~ H27.3.31)
48期の渡部市郎裁判官(H23.4.1 ~ H27.3.31)
37期の中里智美裁判官(H16.3.22 ~ H19.9.30,H24.10.27 ~ H26.3.31)
48期の坂田威一郎裁判官(H22.4.1 ~ H26.3.31)
48期の中川綾子裁判官(H23.4.1 ~ H26.3.31)
48期の野村賢裁判官(H22.4.1 ~ H26.3.31)
48期の安永健次裁判官(H22.4.1 ~ H26.3.31)
43期の伊藤寿裁判官(H22.4.1 ~ H25.3.31)
45期の森島聡裁判官(H21.4.1 ~ H25.3.31)
46期の長瀬敬昭裁判官(H21.4.1 ~ H25.3.31)
47期の小池健治裁判官(H21.4.1 ~ H25.3.31)
48期の佐藤卓生裁判官(H21.4.1 ~ H25.3.31)
45期の吉崎佳弥裁判官(H24.4.1 ~ H25.2.17)
34期の秋吉淳一郎裁判官(H14.3.25 ~ H18.10.18,H22.1.1 ~ H24.10.26)
39期の金子武志裁判官(H20.4.1 ~ H24.3.31)
43期の栗原正史裁判官(H21.4.1 ~ H24.3.31)
44期の中山大行裁判官(H20.7.16 ~ H24.3.31)
47期の齋藤千恵裁判官(H20.7.16 ~ H24.3.31)
40期の松藤和博裁判官(H19.6.1 ~ H23.3.31)
42期の河原俊也裁判官(H19.4.1 ~ H23.3.31)
44期の平塚浩司裁判官(H19.6.1 ~ H23.3.31)
45期の景山太郎裁判官(H19.6.1 ~ H23.3.31)
37期の大熊一之裁判官(H18.4.1 ~ H22.3.31)
40期の斎藤正人裁判官(H18.4.1 ~ H22.3.31)
46期の下津健司裁判官(H18.4.1 ~ H22.3.31)
41期の島田一裁判官(H17.3.23 ~ H22.3.31)


32期の河合健司裁判官(H10.4.1 ~ H14.3.31,H19.1.15 ~ H21.12.31)
41期の田村政喜裁判官(H16.3.22 ~ H21.3.31)
44期の鈴木巧裁判官(H16.3.22 ~ H21.3.31)
45期の佐々木一夫裁判官(H17.3.22 ~ H21.3.31)
45期の守下実裁判官(H17.3.22 ~ H21.3.31)
35期の後藤真理子裁判官(H16.3.22 ~ H20.3.31)
40期の辻川靖夫裁判官(H15.11.1 ~ H20.3.31)
37期の伊名波宏仁裁判官(H16.3.22 ~ H19.9.20)
44期の小森田恵樹裁判官(H17.3.22 ~ H19.9.20)
29期の小川正持裁判官(H17.11.1 ~ H19.1.14)
41期の加藤学裁判官(H15.3.25 ~ H18.10.10)
36期の若園敦雄裁判官(H15.3.25 ~ H18.10.9)
38期の近藤宏子裁判官(H14.2.25 ~ H18.10.9)
40期の水野智幸裁判官(H15.3.25 ~ H18.10.9)
30期の三好幹夫裁判官(H14.3.18 ~ H17.6.30)
37期の登石郁朗裁判官(H14.3.18 ~ H17.6.30)
38期の大善文男裁判官(H13.3.26 ~ H17.6.30)
39期の植野聡裁判官(H13.3.26 ~ H17.6.30)
31期の伊藤納裁判官(H12.3.25 ~ H16.3.31)
32期の毛利晴光裁判官(H12.3.25 ~ H16.3.31)
34期の波床昌則裁判官(H12.3.25 ~ H16.3.31)
33期の栃木力裁判官(H10.9.1 ~ H15.10.31)
34期の秋山敬裁判官(H11.4.1 ~ H15.6.30)
38期の吉村典晃裁判官(H13.3.26 ~ H15.6.30)
34期の杉田宗久裁判官(H11.4.1 ~ H15.3.31 )
23期の田中康郎裁判官(H1.8.1 ~ H6.4.7,H12.3.25 ~ H15.2.12)
33期の小坂敏幸裁判官(H10.4.1 ~ H14.2.24)
27期の出田孝一裁判官(H10.4.1 ~ H14.1.20)
38期の瀧華聡之裁判官(H10.4.1 ~ H14.1.9)
33期の秋葉康弘裁判官(H9.4.1 ~ H13.3.31)
34期の藤井敏明裁判官(H9.4.1 ~ H13.3.31)
28期の八木正一裁判官(H8.4.1 ~ H12.7.31)
21期の三上英昭裁判官(H9.10.29 ~ H12.4.3)
31期の角田正紀裁判官(H7.4.1 ~ H11.4.4)
33期の中川博之裁判官(H7.4.1 ~ H11.4.4)
32期の大島隆明裁判官(H6.4.1 ~ H10.4.2)
34期の戸倉三郎裁判官(H6.4.1 ~ H10.4.2)
29期の大谷直人裁判官(H7.4.1 ~ H10.4.1)
34期の合田悦三裁判官(H6.3.25 ~ H10.8.31)
26期の川上拓一裁判官(H7.4.1 ~ H10.3.31)
19期の村上光鵄裁判官(S54.4.1 ~ S58.4.12,H5.4.2 ~ H9.10.28)
28期の上垣猛裁判官(H5.4.1 ~ H9.4.3)
23期の平谷正弘裁判官(H6.4.1 ~ H9.3.31)
26期の山室惠裁判官(S63.4.1 ~ H1.7.31,H5.4.1 ~ H9.3.31)
28期の山崎学裁判官(H4.4.1 ~ H8.4.4)
22期の大山隆司裁判官(H3.4.1 ~ H7.4.6)
28期の的場純男裁判官(H3.4.1 ~ H7.4.6)
30期の村上博信裁判官(H3.4.1 ~ H7.4.6)
26期の若原正樹裁判官(H2.4.1 ~ H6.7.31)
28期の松本芳希裁判官(H1.11.10 ~ H6.4.7)
15期の野間洋之助裁判官(S54.4.1 ~ S58.4.8,H2.4.1 ~ H5.4.1)
23期の千葉勝郎裁判官(H2.4.1 ~ H5.3.31)
23期の長島孝太郎裁判官(H1.4.1 ~ H5.3.31)
27期の木村烈裁判官(H1.4.1 ~ H4.3.31)


20期の田中正人裁判官(S61.4.1 ~ H3.3.31)
20期の中西武夫裁判官(S62.4.1 ~ H3.3.31)
28期の安井久治裁判官(S63.4.1 ~ H3.4.4)
19期の河邉義正裁判官(S61.4.1 ~ H2.4.5)
11期の小林充裁判官(S47.4.10 ~ S51.4.9,S62.4.1 ~ H2.4.3)
21期の北島佐一郎裁判官(S61.4.1 ~ H2.3.31)
26期の中山隆夫裁判官(S61.4.1 ~ H1.11.9)
24期の大野市太郎裁判官(S60.4.1 ~ H1.4.5)
15期の渡邊忠嗣裁判官(S61.4.1 ~ H1.3.31)
6期の藤島利行裁判官(S48.4.5 ~ S52.4.8,S61.8.21 ~ S63.4.24)
16期の松本昭徳裁判官(S59.4.1 ~ S63.4.6)
20期の中川武隆裁判官(S59.4.1 ~ S63.4.6)
9期の近藤和義裁判官(S53.4.1 ~ S57.4.13)
17期の福島裕裁判官(S58.4.1 ~ S62.4.5)
12期の花尻尚裁判官(S57.4.1 ~ S61.4.6)
13期の米澤敏雄裁判官(S57.4.1 ~ S61.4.6)
14期の小島裕史裁判官(S58.4.1 ~ S61.4.6)
21期の山田利夫裁判官(S57.4.1 ~ S61.4.6)
22期の白木勇裁判官(S59.4.1 ~ S61.4.6)
13期の新矢悦二裁判官(S56.4.14 ~ S60.4.7)
12期の本吉邦夫裁判官(S55.4.1 ~ S59.4.8)
16期の反町宏裁判官(S55.4.1 ~ S59.4.8)
16期の日比幹夫裁判官(S55.4.1 ~ S59.4.8)
12期の金谷利廣裁判官(S53.4.1 ~ S59.3.31)
21期の竹崎博允裁判官(S56.4.1 ~ S57.4.13)

13期の田崎文夫裁判官(S52.4.1 ~ S56.4.9)
16期の島田仁郎裁判官(S52.4.1 ~ S56.4.9)
9期の新谷一信裁判官(S51.4.1 ~ S55.4.7)
11期の神田忠治裁判官(S51.4.1 ~ S55.4.7)
15期の宮嶋英世裁判官(S50.7.15 ~ S55.4.7)
12期の松本時夫裁判官(S50.4.1 ~ S54.4.9)
13期の逢坂芳雄裁判官(S51.4.1 ~ S54.4.9)
3期の山本茂裁判官(S50.4.1 ~ S53.4.9)
11期の神垣英郎裁判官(S49.4.12 ~ S53.4.7)
15期の神作良二裁判官(S52.4.1 ~ S53.4.7)
8期の竪山眞一裁判官(S48.4.5 ~ S52.4.8)
14期の中山善房裁判官(S48.4.5 ~ S52.4.8)
7期の小野幹雄裁判官(S47.4.10 ~ S51.4.9)
8期の西村清治裁判官(S48.4.5 ~ S51.4.9)
2期の新関雅夫裁判官(S47.4.10 ~ S50.7.14)
5期の石丸俊彦裁判官(S47.4.1 ~ S50.4.10)
12期の早川義郎裁判官(S46.10.1 ~ S50.4.10)
3期の西川潔裁判官(S46.4.25 ~ S49.4.11)
3期の村上幸太郎裁判官(S44.4.1 ~ S48.4.11)
3期の藤野博雄裁判官(S45.4.1 ~ S48.4.9)
5期の金隆史裁判官(S44.4.7 ~ S48.4.9)
9期の猪瀬慎一郎裁判官(S46.7.16 ~ S48.4.9)
2期の萩原壽雄裁判官(S43.4.1 ~ S47.4.14)
7期の岡田光了裁判官(S43.4.10 ~ S47.4.14)
8期の小瀬保郎裁判官(S43.8.31 ~ S47.4.3)
2期の大澤博裁判官(S45.4.10 ~ S46.9.30)
3期の山本卓裁判官(S41.4.9 ~ S46.7.15)
3期の柳瀬隆次裁判官(S41.4.9 ~ S46.6.30)
高輪1期の岡村治信裁判官(S41.4.9 ~ S45.4.9)
2期の石松竹雄裁判官(S40.4.1 ~ S44.3.30)
1期の小野慶二裁判官(S39.11.28 ~ S44.4.9)
2期の粕谷俊治裁判官(S39.4.10 ~ S43.9.4)
3期の内藤丈夫裁判官(S39.3.31 ~ S43.4.7)
5期の萩原太郎裁判官(S39.4.3 ~ S43.4.7)
2期の柏井康夫裁判官(S36.4.1 ~ S41.4.8)


3 証拠書類の朗読又は要旨の告知
(1)ア 刑事訴訟法305条1項は以下のとおりです。
     検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させなければならない。ただし、裁判長は、自らこれを朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを朗読させることができる。
イ 刑事訴訟規則203条の2第1項は以下のとおりです。
     裁判長は、訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、請求により証拠書類又は証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについての朗読に代えて、その取調を請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にその要旨を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。
(2) 証拠書類等の取調べの方式について要旨の告知を定めた刑事訴訟規則203条の2は,証拠書類に対する取調べの方式は朗読であるとする刑事訴訟法305条を合目的に簡易化したものにすぎません(最高裁昭和29年6月19日決定参照)。
(3) 刑事訴訟規則逐条説明(公判)118頁には以下の記載があります。
   どの程度の要旨を告げればよいかは規定上明らかでなく,実務上の取扱いも区々に分かれている。証拠調べの方式として,朗読又は要旨の告知を必要とする理由は,公判廷において証拠内容の口頭伝達による証拠調べをすることを要するとする口頭主義や,証拠書類の内容を法廷に顕出することによって相手方の批判にさらし, さらには,裁判所が公判廷において正しい心証形成をし,かつ審理の進行に応じて適切に証拠調べの範囲,順序,方法等を定め,できるだけ審理を合理的,集中的に行うという公判中心主義等の公判の主要原則の建前から導かれるものであることを考慮すると,少なくともこれを聴く裁判官に的確な心証を得させるために必要な程度のもの及び相手方当事者にとって証拠書類の内容について十分認識できる程度のものは, これを告げることが必要である。また,事件の争点,内容に応じて,証拠書類の一部については朗読をし, その他の部分については要旨の告知で足りるとすることも許されるであろうし,争いのない事項や証拠書類の種類によっては,比較的簡単な要旨の告知で足りる場合もあるであろう。反面,相手方が要望する特定の事項については朗読又は詳細な要旨の告知を行うという運用も考えられよう。いずれにせよ,証拠請求書によって示されている立証趣旨のみを告知するという程度では,本条の趣旨からいって,一般的には適切な要旨の告知とはいい難いであろう。
     また,訴訟関係人から省略されたい旨の申出があった場合に,要旨の告知すら省略する運用もないではないようである。しかし,朗読又は要旨の告知を必要とする理由は,既に述べたように訴訟関係人の利益のためにのみ必要とされるものではなく,公判の主要原則との関係で要求されていることに注意しなければならない。したがって,たとい当事者双方の同意があったにせよ,証拠書類等の取調手続を全く省略し,又はこれに類する名ばかりの取調べで終えることは,本条の趣旨を没却することになり許されないというべきである。


4 判決の宣告と訓戒
(1) 刑事訴訟規則221条は「裁判長は、判決の宣告をした後、被告人に対し、その将来について適当な訓戒をすることができる。」と定めています。
(2)ア 最高裁昭和47年4月5日決定は以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
    判決の宣告は、すでに内部的に成立している判決を告知して、これを外部的にも成立させる手続であり、裁判官がかわつても、公判手続を更新することなしに判決の宣告をなしうることとされている(刑訴法三一五条参照)のも、これがためである。
また、裁判長の被告人に対する訓戒(刑訴規則二二一条)は、判決宣告に付随する処置の一つにすぎず、その性質上、審理および判決に関与した裁判官でなければこれをなしえないというものではない。

イ 判決主文朗読の際に告げられた刑と訓戒中に述べられた刑とが異なる場合を取り扱った大阪高裁平成元年2月28日判決(判例秘書に掲載)には,「原審裁判官は、別事件の審理終了後に法廷において、原判決の言渡しに立ち会った裁判所書記官、検察官の他、実務修習のため傍聴していた司法修習生三名に対し、被告人に対する判決宣告中に「懲役一年」と言ったかどうか質問したところ、司法修習生のうち一名を除く他の者は、「懲役一年」と言った記憶はないと答えたが、修習生一名が「最後の訓戒の際、『懲役一年』と言われたことをはっきり覚えている。」と答えた」と書いてあります。


5 「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義
・ 最高裁平成19年10月16日決定は以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
    刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要である。ここに合理的な疑いを差し挟む余地がないというのは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らして,その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には,有罪認定を可能とする趣旨である。
そして,このことは,直接証拠によって事実認定をすべき場合と,情況証拠によって事実認定をすべき場合とで,何ら異なるところはないというべきである。


6 関連記事その他
(1) 最高裁昭和28年4月21日決定には,「第一審の判決書によると、これに修習生A作成と記載してあることは所論のとおりであるが、同裁判書に関与裁判官全員が署名押印していること等に徴し、同裁判書の作成者は裁判官であつて、修習生は単にこれを起案したに過ぎないことは明白である。」と書いてあります。
(2) 東弁リブラ2013年3月号の「思い出深い修習時代」(筆者は41期の北村晴男弁護士)には以下の記載があります。
    刑事裁判修習では,ある公務執行妨害の否認事件で無罪判決を起案した。立会書記官は私に「あれはやってませんで。でも有罪ですわ。」と囁いた。指導裁判官は,判決期日を私の修習終了後に延期し,有罪を言渡した。自分なりに考え抜いた判決起案だったが,余程出来が悪かったせいか,起案についての指導は全くなかった。
(3)ア 早稲田大学HPに載ってある「河合健司元仙台高裁長官講演会講演録 裁判官の実像」8頁には,法廷での被告人の態度及び情状証人で出てきた奥さんが監督を誓っていること等を考慮して,実刑相当事案について懲役3年執行猶予5年・保護観察にしたという体験談が書いてあります。
イ 警察庁HPに「暴力団離脱者の口座開設支援について」(令和4年2月1日付の警察庁刑事局組織犯罪対策部暴力団対策課長の文書)が載っています。
(4) 最高裁平成23年7月25日判決の裁判官千葉勝美の補足意見には以下の記載があります。
    一般に,被害者の供述は,それがいわゆる狂言でない限り,被害体験に基づくものとして迫真性を有することが多いが,そのことから,常に,被害者の供述であるというだけで信用できるという先入観を持ったり,他方,被告人の弁解は,嫌疑を晴らしたいという心情からされるため,一般には疑わしいという先入観を持つことは,信用性の判断を誤るおそれがあり,この点も供述の信用性の評価に際しての留意事項であろう。
(5) 弁護士職務基本規程49条(国選弁護における対価受領等)は以下のとおりです。
① 弁護士は、国選弁護人に選任された事件について、名目のいかんを問わず、被告人その他の関係者から報酬その他の対価を受領してはならない。
② 弁護士は、前項の事件について、被告人その他の関係者に対し、その事件の私選弁護人に選任するように働きかけてはならない。 ただし、本会又は所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合は、この限りでない。
(6) 袴田事件第二次再審請求に関する即時抗告審としての東京高裁平成30年6月11日決定は以下の判示をしています(リンク先の29頁であり,改行を追加しています。ただし,棄却決定の結論自体は最高裁令和2年12月22日決定によって破棄されました。)。
    一般に,自然科学の分野では,実験結果等から一定の仮説が立てられると,他人にその仮説の正当性を理解してもらうために,その理論的根拠や実験の手法等を明らかにし,多くの者がその理論的正当性を審査し,同様の手法によりその仮説に基づいたとおりの結果が得られるか否かを確認する機会を付与して,多くの批判的な審査や実験的な検証にさらすことによって,その仮説が信頼性や正当性を獲得し,科学的な原理・手法として確立していくのである。
したがって,一般的には,未だ科学的な原理・知見として認知されておらず,その手法が科学的に確立したものとはいえない新規の手法を鑑定で用いることは,その結果に十分な信頼性をおくことはできないので相当とはいえず,やむを得ずにこれを用いた場合には,事情によっては直ちに不適切とはいえないとしても,科学的な証拠として高い証明力を認めることには相当に慎重でなければならないというべきである。

(7)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 刑事事件処理の心構え-簡裁フレッシュジャッジのための覚書-(平成14年10月の司法研修所の文書)
・ 検察官のための過誤防止上の留意点その1ないしその9→ 平成24年10月から平成25年10月までの検察月報からの抜粋
イ 以下の記事も参照してください。
・ 司法研修所民事裁判教官の名簿
・ 司法修習の場所とクラスの対応関係(67期以降)
 司法研修所教官
・ 司法研修所の教官組別表,教官担当表及び教官名簿
 司法研修所弁護教官の任期,給料等
・ 司法研修所弁護教官の業務は弁護士業務でないものの,破産管財人として行う業務は弁護士業務であること
・ 弁護人上告に基づき原判決を破棄した最高裁判決の判示事項(平成元年以降の分)
・ 検察官と裁判官の法廷外での面談
・ 法廷における弁護士の起立問題
・ 七訂版 検察庁法(平成31年3月の法務総合研究所の文書)
 司法研修所の職員配置図,各施設の配置及び平成24年8月当時の門限
 司法研修所教官会議の議題及び議事録


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