勤務延長制度(国家公務員法81条の3)の検察官への適用に関する法務省及び人事院の文書(文書の作成時期に関する政府答弁を含む。)

Pocket

目次
1 法務省の文書
2 人事院の文書
3 法務大臣及び内閣答弁書の説明
4 令和2年4月6日の政府答弁(法務省,人事院,内閣法制局及び内閣人事局の答弁)
5 昭和22年の政府文書に関する内閣答弁書の記載
6 関連記事その他

1 法務省の文書
・ 法務省が令和2年1月に作成した「勤務延長制度(国公法第81条の3)の検察官への適用について」は以下のとおりです。

   国家公務員法(以下「国公法』という。)第81条の3に規定される,定年による退職の特例(以下『勤務延長制度」という。)は,特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に,定年制度の趣旨を損なわない範囲で定年を超えて勤務の延長を認め,公務遂行に支障を生じさせないようにしようという趣旨から設けられている(森園幸男ほか編「逐条国家公務員法(全訂版)」698頁)。
   勤務延長制度は,職員が同法第81条の2第1項により退職する場合に適用されるところ,同項において,職員が定年に達したときは,定年に達した日以後の最初の3月31日又は任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日に退職する旨規定され,同条第2項において,職員の定年年齢が原則としてSO歳である旨規定されている。
   一方,検察官の定年については,検察庁法第22条において,一般の国家公務員とは異なり,検事総長は65歳,その他の検察官は63歳にそれぞれ達した時に退官する旨規定され,さらに,同法第32条の2において,同法第22条の規定は,国公法附則第13条の規定により,検察官の職務と責任の特殊性に基づいて,同法の特例を定めたものとする旨規定されている。
   このように,検察官の退職(退官)に関して国公法の特例となっているのは,定年年齢と退職時期であり(具体的には,同法第81条の2第1項に規定される「法律による『別段の定め』は,検察庁法(22条)により規定される定年年齢と定年による退職時期と解される。前記逐条国家公務員法1233頁も同旨。),検察官の定年による退職は,広く捉えれば,一般法たる国公法が規定する「定年による退職』に包含されるものと解される。そして,前記の勤務延長制度の趣旨は,検察官にも等しく及ぶというべきであり, 検察官についても国公法の定年制度を前提とする勤務延長制度の適用があると解される。
   この点,昭和56年の国公法改正により一般職の国家公務員全体に定年制度が導入される以前から,検察官については定年制度が設けられており,いわば検察官の定年制度そのものが国公法の特例であったところ(国公法の特例を定める検察庁法第32条の2は,国公法施行後の昭和24年に設けられ,その時点で既に検察官の定年に関する検察庁法第22条が国公法の特例とされていたことからも明らかである。),前記国公法改正により一般職の国家公務員全体に定年制度が導入されたことに伴い,その特例としての意味は,定年年齢と退職時期の2点に限られることとなったものであって,その意味でも,前記国公法改正以後は,国公法に規定される定年制度そのもの,そして, これを受けて規定されている勤務延長制度については,検察官にも(一般法である)国公法の規定が適用されると解するのが自然である。
   なお,勤務延長制度は,職員が同法第81条の2第1項により退職する場合を前提としているところ,前記のとおり,検察官の定年による退職に関する特例は,定年年齢と退職時期の2点であり,国家公務員が定年により退職するという規範そのものは,検察官であっても定年退職に関する一般法たる国公法に拠っていると言うべきであって,結局,検察官の定年による退職は,検察庁法第22条により前記2点につき修正された国公法第81条の2第1項に基づくものと解される。
以上

(注1)勤務延長制度に関する国公法第81条の3の検察官への適用にあっては,検察官につき前記2点に関しては本来検察庁法第22条により特例とされていることから,国公法81条のS第1項及び第2項のうち,「その職員に係る定年退職日」とあるものは,「その職員が定年に達した日」と修正されて適用されることとなる。
(注2) 再雰用制度に関する国公法第81条の4についても,勤務延長と同様,同法第81条の2により退職した者を対象としていることから,検察官にも観念的には適用があるものの,このうち,短時間再任用については,検察官は,犯罪の捜査や公訴の提起,刑事裁判への立会といった事務(検察事務)を自己の責任において行うこととされ,その職務内容が,週の一部や一日のうち限られた時間のみ勤務するといった短時間再任用になじまないこと,また, フルタイムの再任用についても, これまで,一般の国家公務員のような再任用職員のための俸給表が定められていないなど,法令上必要な手当てがなされていないことから,現状では適用できない状態にある。


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【送料無料】 逐条国家公務員法 / 森園幸男 【本】
価格:22000円(税込、送料無料) (2020/4/29時点)

楽天で購入

 

 

2 人事院の文書
・ 人事院が令和2年1月に作成した「勤務延長に関する規定(国公法第81条の3)の検察官への適用について」は以下のとおりです。

1.国公法における定年制度の導入以降、検察官の定年退職(退官)については、検察庁法第22条が国公法第81条の2第1項の「法律に別段の定めのある場合」に当たるものとして、勤務延長を含む国公法の定年制度全体が検察庁法により適用除外されていると解釈されてきたところ。
   今般、法務省から示された、検察庁法が検察官の定年退職(退官)に関して国公法の特例を定めているのは定年年齢と退職時期に限られ、勤務延長(国公法第81条の3)の規定は検察官にも適用されるという理解については、そのように検察庁法を解釈する余地もあることから、人事院として特に異論を申し上げない。
2. ただし、「注2」については、「フルタイム再任用と短時間再任用とにかかわらず、再任用は検察官の職務の特殊性に鑑み適用になじまないことから、国公法第81条の4及び第81条の5は適用されないと解される」とすべきである。

3 法務大臣及び内閣答弁書の説明
(1) 法務大臣の説明
・ 森まさこ法務大臣は,令和2年2月21日の法務大臣閣議記者会見において以下の説明をしています。
 国家公務員法に勤務延長制度が導入された昭和56年当時,検察官については,国家公務員法の勤務延長制度は検察庁法により適用除外されていると理解されていたものと認識しています。他方,検察官も一般職の国家公務員ですから,検察庁法に定められている特例以外については,一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にございます。
 したがって,国家公務員法と検察庁法の適用関係は,検察庁法に定められている特例の解釈に関わることであり,その解釈については検察庁法を所管する法務省において整理されるべきものでございます。国家公務員一般の定年の引上げに関する検討の一環として,検察官についても定年の検討を進める過程で,法務省において国家公務員法と検察庁法との関係を検討したところ,検察庁法が定める検察官の定年による退職の特例は,定年年齢と退職時期の2点であること,特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に,定年制度の趣旨を損なわない範囲で定年を超えて勤務の延長を認めるという勤務延長制度の趣旨は,検察官にも等しく及ぶというべきであること,この2点から,一般職の国家公務員である検察官の勤務延長については,一般法である国家公務員法の規定が適用されると解釈することとしたものでございます。
 その上で,法務省において,勤務延長制度の検察官への適用についての考え方をまとめた文書を作成し,省内で必要な決裁を経た上で,関係省庁に示し,具体的には,内閣法制局との間では,本年1月17日から同月21日にかけて,人事院との間では,本年1月22日から同月24日にかけて,文書を示して協議を行い,異論はない旨の回答を得て,最終的に結論を得たものです。
 なお,法令の解釈は,当該法令の規定の文言,趣旨等に即しつつ,立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮するなどして,論理的に確定されるべきものであり,検討を行った結果,従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には,これを変更することがおよそ許されないというものではないと承知しております。
 この点,社会経済情勢の多様化・複雑化に伴い,犯罪の性質も複雑困難化する状況下において,国家公務員一般の定年の引上げに関する検討の一環として,検察官についても改めて検討したところ,検察官の勤務延長について,一般法である国家公務員法の規定が適用されると解釈でき,問題はないものと考えます。今後とも,国会審議等を通じて,御理解をいただいてまいりたいと思います。
② 1月24日に政府としての統一見解を経て,解釈変更がなされたと認識しております。

(2) 内閣答弁書の説明
ア 参議院議員浜田聡君提出国家公務員法八十一条の三による検事長の定年延長等、公務員法に関する質問に対する答弁書(令和2年2月28日付)には以下の記載があります。
 一般職の国家公務員の定年制度の導入等を内容とする国家公務員法の一部を改正する法律(昭和五十六年法律第七十七号)が制定された昭和五十六年当時、検察官については、国家公務員法第八十一条の三の規定は適用されないと理解していたものと認識しているが、検察官も一般職の国家公務員であるから、本年一月、一般職の国家公務員に適用される同条の規定が適用されると解釈することとしたものである。
イ 衆議院議員川内博史君提出黒川検事長の勤務延長に関する質問に対する答弁書(令和2年4月3日付)には以下の記載があります(ナンバリングを追加しています。)。
① 憲法を始めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものであり、政府による法令の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような考え方を離れて政府が自由に法令の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えており、このようなことを前提に検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないと考えているが、その当否については、個別的、具体的に検討されるべきものである。
 お尋ねの今般の解釈変更(山中注:検察官についても国家公務員法81条の3に基づく勤務延長が認められるとする解釈変更)については、このような考え方に基づいて従前の解釈を変更したものである。
② 前段のお尋ねについては、お尋ねの「内閣法制局の審査を終えていた検察庁法改正案」の意味するところが必ずしも明らかではないが、令和元年十月時点における検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)の改正案に関するものも含め、法務大臣は、本年三月十三日に今国会に提出した国家公務員法等の一部を改正する法律案の閣議請議について決裁を行う以前には必要な報告を受けている。
 後段のお尋ねについては、法律案の立案の過程において作成された文書について、法務省において、法務省行政文書取扱規則(平成二十六年法務省秘法訓第一号大臣訓令)に定められた決裁を経ることを要しない取扱いとしている。
③ お尋ねの検討(山中注:令和元年12月頃に始められた,検察官についても国家公務員法81条の3に基づく勤務延長が認められるとする解釈変更の変更)については、法務大臣の指示により始められたものではない。
 また、お尋ねの担当者による検討が行われていることについては、本年一月十七日以前には把握していた。

4 令和2年4月6日の政府答弁(法務省,人事院,内閣法制局及び内閣人事局の答弁)
・ 令和2年4月6日の衆議院決算行政監視委員会第四分科会における政府答弁は以下のとおりです。
(1) 森まさこ 法務大臣の答弁
① 一月十七日から法制局と協議をするに当たり、その前に、一月十六日又は一月十七日に、事務方から私の方に説明に参りまして、そのときに私が了解したということでございます。
② 法令の解釈あるいはその変更というものについて、必ずしも決まった手続や方式があるわけではないものと承知をしております。
   その上で、検察官の勤務延長に関しては、検察庁法を所管する法務省において必要な検討等を行い、現行の国家公務員法の勤務延長の規定の検察官への適用について、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られたことでございますので、適正な手続を経たものと考えております。
(2) 川原隆司 法務省刑事局長の答弁
① ただいま大臣から答弁がございましたように、一月十六日又は十七日に事務方から関係省庁と協議をする旨の報告を大臣にいたしております。
   何日の何時ころに大臣のところにという記録が正確にはないのでございますが、既に国会にも御提出させていただいております一月十六日付のペーパーを作成後、十七日の協議開始までの間に大臣に御説明をしたということは間違いございませんので、十六日又は十七日というように日付を特定しているところでございます。
② 公文書管理法第四条に基づく規定であります法務省行政文書管理規則第十一条では、行政機関において法令の制定又は改廃について意思決定がなされた場合は、それに至る過程等について文書を作成しなければならないとされているところでございます。
   法務省では、今回、国家公務員法等の一部を改正する法律案につきまして成案が得られましたので、その作成の過程を明らかにするため、文書を適切に管理し、あるいは作成することとなります。そして、その一環といたしまして、解釈変更の経緯につきましても、既に存在する文書を管理するとともに、必要な文書を作成、管理してまいりたいと考えております。
③ 今回の解釈変更につきまして、委員御指摘のような通知は発出しておりません。
(3) 一宮なほみ 人事院総裁の答弁
① 一月二十二日に、法務事務次官から当方の事務総長に対し、検察庁法の解釈が示された文書で、人事院にも意見を伺いたいとのお話がございましたが、その理由等については伺っておらず、このほかにやりとりはございませんでした。
   一月二十四日に、当方の事務総長から法務事務次官に対し、人事院における議論の経過と結論をまとめた文書をお渡ししておりますが、その際、法務省から示された解釈がいつから適用されるかについては伺っておりません。
② 先ほどもお話しいたしましたように、一月二十四日に、私とほかの二人の人事官、事務総局との間で、国家公務員法で定める定年制度の検察官への適用に関する従来の理解、法務省が示した勤務延長等の規定の解釈に関する受けとめ、検察官の再任用に関する考えについて、認識の共有を図り、私の指示で経過と結論を文書化しておりますので、改めて議事録等を作成する必要はないと考えておりますが、今般の法務省とのやりとりにつきましては、一連の経過がわかるよう、関係する国会議事録等も含めて、行政文書ファイルを作成したいと考えております。
(4) 木村陽一 内閣法制局第二部長の答弁
① 法務省からは、法律案の審査の過程で、現行法の解釈として、検察官にも勤務延長制度を適用するということについて意見を求められたわけでございますが、その解釈をいつから適用するかということにつきましては、特段意見を求められておりません。
   本年一月二十一日に法務省に対して御回答した際に、いつから適用するのかということにつきまして、当局として意見は示しておらないということでございます。
② 解釈変更前の検察庁法改正の案文を含みます国家公務員法等の一部を改正する法律案でございますけれども、全体を審査する第三部、第三部長が了承いたしましたのが昨年の十二月の中旬。したがいまして、その後、長官、次長の審査を受けてよい、そういう判断になったということでございます。
③ 従前の解釈に基づきます案文が上がってはおりましたが、長官、次長の審査が終了したという事実はございません。

(5) 堀江宏之 内閣官房内閣人事局人事政策統括官の答弁
① 本年一月二十三日に、中央合同庁舎第八号館の内閣人事局におきまして、私が法務省の官房長から、検察庁法の解釈を改めることにつきまして、「勤務延長制度の検察官への適用について」と題する文書を提示され、相談を受けたものでございます。
   法務省からの説明を受けまして、局内で部下職員と検討を行った上で、同日中に私から法務省の官房長に対し電話で、意見がない旨の回答を行ったところでございます。
② 今後、法律案策定の経緯に関する文書を整理する際、先ほど申し上げた、本年一月二十三日に法務省から相談を受け、意見がない旨回答を行った旨について、公文書管理法等の規定を踏まえまして、必要な経緯を残したいと考えております。
③ 法務省から相談を受けた際、解釈変更について、いつから適用するかについての説明は受けておらず、当方において特段認識していなかったところでございます。


5 昭和22年の政府文書に関する内閣答弁書の記載
(1) 「検察官について公務員法の特例を認める必要ある理由」(昭和二十二年十月十日人補)においては,検察官を「準司法官」と位置付ける見解に基づき「検察官は公務員法では一応「一般職」に含まれて居るけれども、その任免転退等については、一般の行政官吏とは異る特別の措置を定める必要がある」としています。
(2) 参議院議員小西洋之君提出検察官は準司法官であるとした「検察官について公務員法の特例を認める必要ある理由」(昭和二十二年十月十日人補)に関する質問に対する答弁書(令和2年6月30日付)には以下の記載があります。
   勤務延長制度は、特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で定年を超えて勤務の延長を認めるという趣旨に基づくものであり、検察官に国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第八十一条の三の勤務延長の規定が適用されるとしても、内閣又は法務大臣が検察官を自由に罷免したり、検察官に対して身分上の不利益処分を行ったりするものではなく、その身分保障を害するものではないため、検察官に当該勤務延長の規定が適用できるとすることにより、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求するなどの検察権を行使する等、司法権の適正円滑な運営を図る上で極めて重大な職責を有する検察官の職務と責任の特殊性や準司法官的な性格に影響を与えることはなく、御指摘は当たらない。

6 関連記事その他
(1) 定年制の運用について(昭和59年7月2日付の人事院事務総長の通知)につき,令和2年3月31日改正後のものには以下の記載があります。
定年退職関係
1 国家公務員法(昭和22年法律第120号。以下「法」という。)第81条の2第1項の「別段の定め」に当たるものとしては、検察庁法(昭和22年法律第61号)第22条の規定がある。
2 法第81条の2第1項の規定により、職員(同条第3項に規定する職員を除く。)は、法第81条の3第1項の規定により引き続いて勤務する場合を除き、定年退職をすることとなる日の満了とともに当然退職する。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 東京高検検事長の勤務延長問題
・ 国家公務員法81条の3に基づき,検察官の勤務延長が認められる理由
・ 検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書

スポンサーリンク